説明

既存住宅の補強方法および住宅

【課題】補強板や鋼鈑で既存住宅の周囲を覆う場合よりも津波や地震等に対し抵抗でき、均一に補強することができる既存住宅の補強方法および住宅を提供する。
【解決手段】既存住宅1の1階部分の玄関や勝手等の出入り口11や、窓12、換気口13等の開口部以外の外壁15をRC壁2により覆う。これにより、補強板や鋼鈑で既存住宅1の周囲を覆う場合よりも津波や地震等に対し抵抗できると共に、複雑な形状にも対応して既存住宅1全体を均一ないしは自在に補強することができる。特に、1階部分の開口部以外の外壁15をRC壁2により覆っているので、1階部分の層崩壊を防止でき、3m程度の津波に対し有効な補強となる。なお、既存住宅1の外壁15とRC壁2との間に緩衝材を挿入しても良い。また、RC壁2は地中に埋設された杭に連結したり、その既存住宅1の基礎に定着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物などの既存住宅の補強方法およびその方法によって補強された住宅に関し、特に、津波等に対する抵抗力を向上させることができる既存住宅の補強方法および住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存住宅の補強方法として、例えば、木造建物の1階部分の外周に沿って、土台から所定高さに渡って構造用合板を補強材として取付けるとともに、1階部分と2階部分の境目の外周にもその構造用合板を取付けて既存住宅を補強する方法(例えば、特許文献1参照。)や、鋼板を溶接して一体構造とした外壁を基礎上に構築し、外壁には水密構造とした採光窓を設け、内部を居室部分とした完全防水構造の一階部分と、簡易防水構造の2階部分とした補強方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−125069号公報
【特許文献2】実用新案登録第3061212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1,2に記載された既存住宅の補強方法は、構造用合板等の補強板や鋼鈑で建築物の周囲を覆って補強しているため、コンクリートに較べると強度が弱いという欠点がある。また、合板や鋼鈑は素材自体の強度差もさることながら、例えば玄関周りのような複雑な形状に対応することが難しく、場所によって補強効果が高い場所と低い場所ができ易いという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、補強板や鋼鈑で既存住宅の周囲を覆う場合よりも津波や地震等に対し抵抗できると共に、複雑な形状にも対応して既存住宅全体を均一ないしは自在に補強することができる既存住宅の補強方法および住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る既存住宅の補強方法は、既存住宅の外壁に沿って、その開口部を残してRC壁(鉄筋コンクリート)を増設したことを特徴とする。この方法によると、既存住宅の外壁における開口部以外の部分がRC壁により包囲されるので、補強板や鋼鈑で既存住宅の周囲を覆う場合よりも津波や地震等に対し抵抗力が向上すると共に、複雑な形状の建物にも対応(追従)して既存住宅全体を均一ないしは自在に補強することができる。
また、請求項2に記載の発明に係る既存住宅の補強方法は、請求項1記載の既存住宅の補強方法において、前記RC壁を増設する既存住宅の外壁は、1階部分の外壁のみであることを特徴とする。この方法によると、既存住宅の1壁部分が、開口部を残して増設したRC壁により囲まれるので、3m程度の波であれば、1階部分の開口部以外の外壁には波が直接当らないので、津波による既存住宅の倒壊を少なくすることができる。
また、請求項3に記載の発明に係る既存住宅の補強方法は、請求項1または請求項2記載の既存住宅の補強方法において、既存住宅の外壁と増設したRC壁との間に、緩衝材が挿入されていることを特徴とする。この方法によると、津波や地震等の力を受けて既存住宅が傾いたり変形しようとしても、既存住宅がRC壁により外側から囲まれるとともに、外壁とRC壁との間に存在する緩衝材の効果によりその傾きや変形を吸収ないしは緩和するので、既存住宅全体の傾きや変形をより効果的に抑えることができる。また、小さな地震や微弱振動等が発生しても、RC壁が住宅の外壁に傷を付けたり、軋み音の発生を防止でき、さらに断熱性の向上にもつながる。
また、請求項4に記載の発明に係る既存住宅の補強方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の既存住宅の補強方法において、前記RC壁は、地中に埋設された杭に連結されていることを特徴とする。この方法によると、RC壁は地中に埋設された杭に連結されているため、津波や地震に対する抵抗力がより大きくなる。
また、請求項5に記載の発明に係る既存住宅の補強方法は、請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の既存住宅の補強方法において、前記RC壁は、基礎に定着されていることを特徴とする。この方法によると、RC壁は基礎に定着されているので、津波や地震に対する抵抗力がより大きくなる。
また、請求項6に記載の発明に係る住宅は、請求項1〜請求項5のいずれか一の請求項に記載の既存住宅の補強方法に補強されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の既存住宅の補強方法および住宅によれば、既存住宅の開口部以外の外壁部分が増設したRC壁により包囲されるので、補強板や鋼鈑で周囲を覆う場合よりも津波や地震等に対し抵抗できると共に、複雑な形状にも対応して既存住宅全体を均一ないしは自在に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る既存住宅の補強方法により補強された既存住宅の斜視図である。
【図2】図1に示す既存住宅の1階部分の断面図である。
【図3】実施形態2の既存住宅の補強方法の特徴部分を示す断面図である。
【図4】実施形態2の既存住宅の補強方法の他の例を示す断面図である。
【図5】実施形態2の既存住宅の補強方法の他の例を示す断面図である。
【図6】実施形態2の既存住宅の補強方法のさらに他の例を示す断面図である。
【図7】実施形態2の既存住宅の補強方法のさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1.
図1は、本発明に係る既存住宅の補強方法により補強された既存住宅1の斜視図、図2は、同方法により補強された既存住宅1の1階部分の断面図である。図1および図2に示すように、本発明に係る既存住宅の補強方法は、例えば木造住宅等の既存住宅1の1階部分の玄関や勝手等の出入り口11や、窓12、換気口13等の開口部以外の外壁15(なお、外壁15が真壁の場合には、柱14が屋外に露出するのでその露出した柱14の露出部分も外壁15に含まれる。)の表面に沿って、RC(鉄筋コンクリート)壁2を増設、すなわち新規のRC壁2で覆うようにしたことを特徴とする。ここで、RC壁2の打設は、いわゆる現場打ちや、PC(プレキャストコンクリート)での乾式施工により行うことができる。これにより、既存住宅1の外壁15における開口部以外がRC壁2により覆われるので、補強板や鋼鈑で既存住宅1の周囲を覆う場合よりも津波や地震等に対し抵抗力が向上する。また、玄関などの複雑な形状にも対応(追従)可能なため、既存住宅1全体を均一ないしは自在に補強することができると共に、補強箇所により強度的な差をなくすことが可能となる。特に、ここでは、1階部分の開口部以外の外壁15をRC壁2により包囲しているので、1階部分の層崩壊を防止でき、建物としての耐力が向上する。その結果、既存住宅1でも簡単かつ効果的に補強でき、3m程度の津波に対し有効な補強手段となる。
【0010】
ここで、図2に示すように、既存住宅1の開口部以外の外壁15とRC壁2との間には、ゴムや粘弾性体や樹脂発泡体等の緩衝材3が挿入されている。これにより、津波や地震等の力を受けて既存住宅1が傾いたり変形しようとしても、建物(既存住宅)1を外側から包囲するRC壁2に基づく保護機能に加え、緩衝材3がその傾きや変形を吸収ないしは緩和するので、既存住宅1全体の傾きや変形をより効果的に抑えることができる。特に、既存住宅1の外壁15とRC壁2とは、その間に緩衝材3が挿入されているだけで、それらが直接連結されてなくそれぞれ独立しているので、津波や地震等が発生した際、独立した動きや変形をする。しかし、既存住宅1の外壁15とRC壁2との間には、緩衝材3が存在するので、既存住宅1が傾いたり変形した際、そのエネルギーを緩衝材3が吸収することによって、既存住宅1全体の傾きや変形を効果的に抑えることが可能となる。また、小さな地震や微弱振動等が発生した際に、RC壁2が既存住宅1の外壁15を傷付けたり、軋み音が発生することを防止できる。また、緩衝材3は、1階部分の開口部以外の外壁15とRC壁2との間に設けられるので、1階部分の断熱材の役割を果たすことになり、1階部分の断熱性も向上させることができる。なお、本実施形態では、既存住宅1の1階部分のみRC壁2により補強したが、2階部分、さらには3階建て以上であれば3階以上の部分まで同様に補強しても良い。その場合、緩衝材3も2階や3階の外壁15とRC壁2との間に設けることができる。
【0011】
以上説明したように、この既存住宅の補強方法によれば、既存住宅1の1階部分の玄関や勝手等の出入り口11や、窓12、換気口13等の開口部以外の外壁15をRC壁2により覆うようにしたので、津波や地震等による既存住宅1の破壊部分をなるべく少なくすることができる。また、RC壁2により補強するので、従来の合板や鉄板等による補強と比較して、素材自体の強度もさることながら、例えば玄関周りのような複雑な形状に対応して補強することも容易である。その結果、場所によって補強効果が高い場所と低い場所ができ難い等、施工面における強度の差もでき難く、既存住宅1のバランスを保ったまま補強することができる。また、外壁15とRC壁2との間に設けた緩衝材3の緩衝作用により、既存住宅1全体の傾きや変形を効果的に抑えることができると共に、断熱性等も向上させることができる。
【0012】
実施形態2.
実施形態2は、実施形態1を改良したものである。図3は、実施形態2の既存住宅の補強方法により補強した既存住宅1の基礎16の周辺を示す図である。つまり、実施形態2では、既存住宅1の開口部以外の外壁15を覆うRC壁2は、地中に埋設されたコンクリート杭や鋼管杭等の杭4に連結したことを特徴とする。これにより、RC壁2が強固に自立することになるため、津波や地震に対する抵抗力がより大きくなる。ここで、この杭4は、既存住宅1の基礎16とは別に設けたものである。そのため、津波や地震等の際、既存住宅1にかかる外力は、既存住宅1の基礎16と、RC壁2を介し基礎16とは別の杭4とが負担することになる。そのため、津波や地震に対する抵抗力がより大きくなると共に、基礎16が脆弱な場合でも、基礎16とは独立した杭4によりRC壁2を支持することができる。
【0013】
また、既存住宅1の基礎16が強固な場合、杭4を使用せずに、図4や図5に示すよう、基礎16の側面にあと施工アンカー等のアンカー5を用いてRC壁2を直接定着させることもできる。アンカー5の頭部は座金51を介してナット52等により締め付ける。この場合、杭4を打設する必要がないので、その杭打ちの分だけコストを抑えることができる。なお、図4の場合には、基礎16とRC壁2との間に緩衝材3を介在させずにアンカー5により直接定着させる一方、図5の場合には、基礎16とRC壁2との間にも緩衝材3を介在させ、アンカー5により直接定着させている。図4の場合でも基礎16から上方の開口部以外の外壁15とRC壁2との間には緩衝材3が介在するので、外壁15の変形を抑えることができると共に、基礎16とRC壁2との定着力が向上する。また、図5に示す場合は、開口部以外の外壁15とRC壁2との間だけでなく、基礎16とRC壁2との間にも緩衝材3が介在するので、図4に示す場合よりも基礎16とRC壁2との定着力は弱くなるものの、緩衝材3の緩衝作用により基礎16も含めた既存住宅1全体の傾きや変形を抑えることが可能となる。なお、図6や図7に示すように座金51およびナット52を現場打ちによるRC壁2内に埋設させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0014】
1…既存住宅、11…出入り口、12…窓、13…換気口、14…柱、15…外壁、16…基礎、2…RC壁、3…緩衝材、4…杭、5…アンカー、51…座金、52…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存住宅の外壁に沿って、その開口部を残してRC壁を増設したことを特徴とする既存住宅の補強方法。
【請求項2】
請求項1記載の既存住宅の補強方法において、
前記RC壁を増設する既存住宅の外壁は、1階部分のみであることを特徴とする既存住宅の補強方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の既存住宅の補強方法において、
既存住宅の外壁と前記RC壁との間に、緩衝材が挿入されていることを特徴とする既存住宅の補強方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の既存住宅の補強方法において、
前記RC壁は、地中に埋設された杭に連結されていることを特徴とする既存住宅の補強方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の既存住宅の補強方法において、
前記RC壁は、基礎に定着されていることを特徴とする既存住宅の補強方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一の請求項に記載の既存住宅の補強方法に補強されたことを特徴とする住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104219(P2013−104219A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248466(P2011−248466)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】