説明

既製杭建込み施工管理装置

【課題】高精度な施工管理を容易にできる既製杭の建て込み工法における施工管理装置の提供。
【解決手段】実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと所定の基本条件データとをコンピュータ29によるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示を表示手段36,37に表示させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、中堀工法及びプレボーリング工法によって既製杭を地中に建込み、その下端に拡大根固め球根を造成するようにした既製杭建込みにおける施工管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーガ掘削機等を使用して地盤を掘削し、杭を設置する際の施工管理装置としては、図8〜図9に示す中掘り根固め工法の施工管理装置がある。(特許文献1)
この施工管理装置は、中空の杭41の内側に通したオーガ42により地盤を掘削するとともに杭41を地盤中に沈降させ、オーガ42先端部から杭41先端部にセメントミルクを注入して根固めを行う中堀り根固め工法に用いる施工管理装置であり、オーガ42の変位を測定する変位計測手段43と、オーガ42を回転駆動するためのオーガモータ44の負荷電流を測定する負荷電流計測手段45と、ポンプ46によるセメントミルクの供給流量を測定する供給流量計測手段47を備え、変位計測手段43によって測定したオーガ42の変位速度と、負荷電流計測手段45によって測定したオーガモータ44の負荷電流とから、オーガ42が到達した地盤の支持力を検知することによって杭が支持地盤に達したかどうかを判別するようにしている。
【0003】
また、供給流量計測手段47により計測されるセメントミルクの供給流量と、セメントミルクの供給流路の容積とから、ポンプ46の作動開始後オーガ42の先端部からセメントミルクが杭先端部へ吐出されるまでの時間差を算出し、この時間差によるセメントミルク注入量の誤差を補正し、セメントミルクの積算注入量を算出して表示するようにしている。
【特許文献1】特開2000−240058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の管理装置では、地中に建て込まれる既製杭下端の根固めが、支持地盤に到達していること、及び根固めのためのセメントミルク注入量を適正に管理することができるものではあるが、拡大根固め球根形成のための掘削が適正になされているか、また、既製杭沈降のための掘孔がどのような経過をたどってなされているか等の既製杭毎の細かな建込み経過状況を施工時に経時的に把握するとともに、施工後において建込み経過状況を確認することはできなかった。
【0005】
また、既製杭の建込み施工には、既製杭沈降のための削孔工程、支持地盤位置での拡大根固め球根造成のための拡大掘り工程、拡大掘り後の固化材注入工程等、種々の異なった作業を、段階を追って施工するものであり、段階毎に予め設定された適正な作業が完了したか否かの確認は、オペレータの熟練によって経験則から判断していたため、沈設された杭毎に、その支持力その他の性能にばらつきが生じているという問題があった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、各既製杭の建込み毎に、その建込みに際しての経過情報を判別しながら作業ができると共に、打設後に杭毎の打設状態を確認でき、更に、各杭における建込み作業段階が予定された状態に追行されていることを自動的に確認しつつ施工することができる既製杭建込みの施工管理装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、縦向きの支柱に設置されたガイドレールに沿って上下に移動される昇降台と、該昇降台に設置された掘削軸回転駆動手段と、前記昇降台の下側に吊り下げ支持され、前記掘削軸回転駆動手段によって回転される掘削回転軸と、該掘削回転軸の下端に固定した掘削ヘッドとを備えるとともに、前記掘削ヘッドには、正転させることによって掘削土を上昇させるオーガスクリューと、逆転させることによって該オーガスクリューの外径より外側に突出する拡大掘削刃と、前記掘削回転軸内を通して掘削補助液やセメント系固化材等の液状材を吐出する液状材噴射ノズルとを備えた既製杭建込み用削孔装置を使用し、前記掘削ヘッドを既製杭内を通して地中に回転させつつ挿入し、既製杭建込み穴の形成及び既製杭の地中への建込み、該建込み穴下端の拡大球根形成部の形成、及び前記固化材の注入を行う中堀式既製杭建込みにおける既製杭建込み施工管理装置であって、前記既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め入力しておく基本条件データ記録手段と、前記掘削ヘッド先端の深度を計測する掘削ヘッド深度計測手段、前記既製杭の先端深度を計測する既製杭深度計測手段及び/又は前記液状材噴射ノズルへの液状材注入量を計測する注入量計測手段等の実施工データ計測手段と、該実施工データ計測手段による計測データ及び前記施工段階毎の基本条件データを表示するデータ表示手段と、前記計測データを経時的に記録する記録手段と、を備え、前記実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと前記所定の基本条件データとをコンピュータによるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示を前記表示手段に表示させるようにしたことにある。
【0008】
請求項2に記載の発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記実施工データ計測手段として、前記掘削回転軸の回転速度を計測する手段である回転速度計測手段と、前記液状材の吐出圧力を計測する手段である注入圧力計測手段とを備えていることにある。
【0009】
請求項3に記載の発明の特徴は、縦向きの支柱に設置されたガイドレールに沿って上下に移動される昇降台と、該昇降台に設置された掘削軸回転駆動手段と、前記昇降台の下側に吊り下げ支持され、前記掘削軸回転駆動手段によって回転される掘削回転軸と、該掘削回転軸の下端に固定した掘削ヘッドとを備えるとともに、前記掘削ヘッドには、正転させることによって掘削土を上昇させるオーガスクリューと、逆転させることによって該オーガスクリューの外径より外側に突出する拡大掘削刃と、前記掘削回転軸内を通して掘削補助液やセメント系固化材等の液状材を吐出する液状材噴射ノズルとを備えた既製杭建込み用削孔装置を使用し、前記掘削ヘッドを地中に回転させつつ挿入する既製杭建込み穴の形成、該建込み穴下端の拡大球根形成部の形成、前記固化材の注入及び既製杭の前記建込み穴への建込みを行うプレボーリング式既製杭建込みにおける既製杭建込み施工管理装置であって、前記既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め入力しておく基本条件データ記録手段と、前記掘削ヘッド先端の深度を計測する掘削ヘッド深度計測手段、前記既製杭の先端深度を計測する既製杭深度計測手段及び/又は該液状材噴射ノズルへの液状材注入量を計測する注入量計測手段等の実施工データ計測手段と、該実施工データ計測手段による計測データ及び前記施工段階毎の基本条件データを表示するデータ表示手段と、前記計測データを経時的に記録する記録手段と、を備え、前記実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと前記所定の基本条件データとをコンピュータによるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示を前記表示手段に表示させるようにしたことにある。
【0010】
請求項4に記載の発明の特徴は、前記請求項1,2又は3の何れか1項の構成に加え、前記表示手段には、施工段階毎に必要なデータを表示させる段階毎表示画面に切り換え表示させるようにし、その段階毎表示画面に、当該施工段階の前記予め入力された基本条件データと実施工時計測データとを表示させるようにしたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る既製杭の建て込み工法における施工管理装置は、中堀式及びプレボーリング式の既製杭建込みにおける既製杭建込みに際し、既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め入力しておく基本条件データ記録手段と、前記掘削ヘッド先端の深度を計測する掘削ヘッド深度計測手段、前記既製杭の先端深度を計測する既製杭深度計測手段、該液状材噴射ノズルへの液状材注入量を計測する注入量計測手段等の実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと前記所定の基本条件データとをコンピュータによるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できるように表示手段に表示させるようにしたことにより、各施工段階を予め定められた条件を常に満足した後に次の段階に移行することができ、既製杭建込みの施工状況が杭毎に均質化され、支持力等の性能のばらつきがなくなる。
【0012】
また、前記表示手段には、施工段階毎に必要なデータを表示させる段階毎表示画面に切り換え表示させるようにし、その段階毎表示画面に、当該施工段階の前記予め入力された基本条件データと実施工時計測データとを表示させるようにすることにより、段階毎の施工条件項目のみが表示されることなり、全体の施工条件を表示させる場合に比べ、表示項目数が少なくなり、表示されたデータを把握しやすいものとできる。
【0013】
掘削回転軸の回転速度を計測する手段である回転速度計測手段と、前記液状材の吐出圧力を計測する手段である注入圧力計測手段とを備えていることにより、拡大球根形成部の築造において、所望の品質を得るための細やかな施工管理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明における中堀式既製杭建込みに際しての実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明で使用する中堀式既製杭建込み装置の一例を示している。この杭建込み装置は、クローラーからなる走行手段によって移動可能な装置本体1の端部に立設された支柱2を有している。支柱2には縦向きにガイドレール3が固定され、これに昇降台4が上下に移動可能に支持されている。この昇降台4は、支柱2の上端部を経由させたワイヤーロープ5に吊り下げられ、装置本体1上のウインチ6によって昇降操作されるようになっている。
【0016】
昇降台4下には回転駆動軸7が垂下されており、この回転駆動軸7は昇降台4上に設置した掘削軸回転駆動手段である電動モータ8によって正逆方向に回転されるようになっている。回転駆動軸7の下端には掘削回転軸用ジョイント9が固定されており、このジョイント9を介して掘削回転軸10の上端が連結されている。この例では掘削回転軸10としてオーガスクリューが使用されている。
【0017】
昇降台4下には、排土ホッパー11が昇降ウインチ12を介して吊り下げられ、オーガスクリューからなる掘削回転軸10は、この排土ホッパー11を上下に貫通している。また、排土ホッパー11の底面下には、既製杭固定具13が固定されており、この既製杭固定具内に円筒状の既製杭Aの上端が固定されて吊り下げられるようになっている。そして、前述したオーガスクリューからなる掘削回転軸10は、既製杭A内に挿通され、その上端が排土ホッパー11内を通りジョイント9に連結されている。
【0018】
掘削回転軸10の下端には掘削ヘッド20が固定されている。この掘削ヘッド20は中心軸21の上端が掘削回転軸10に対してジョイントを介して連結されるようになっている。掘削ヘッド20には、図2に示すように、オーガスクリュー22が一体に備えられ、その下端に下向きの掘削刃23が多数備えられている。
【0019】
そしてオーガスクリュー22を掘削土上昇側の方向に回転、即ち正転させることによって、掘削刃23によって地盤が掘削され、オーガスクリュー22によって掘削土が上昇され、既製杭A内に挿通されている掘削回転軸10であるオーガスクリューによって既製杭A内を揚土され、排土ホッパー11内に排出されるようになっている。
【0020】
掘削ヘッド20には、拡大掘削刃25,25が備えられている。この拡大掘削刃25,25は、既製杭Aの外径より大きな拡大球根形成部を掘削形成するためのものであり、掘削ヘッド20を正転させている状態ではオーガスクリュー22の外径より内側に畳まれた状態にあり、掘削ヘッドを逆転させることによってオーガスクリュー22の外径より外側に突出し、先端が既製杭の外径より外側に拡開されるようになっている。
【0021】
掘削ヘッド20には、その中心軸21の側面及び下端面に液体噴射ノズル26が備えられ、このノズルから掘削を補助する水等の掘削補助液又はセメントミルク等のセメント系の固化材等の液状材が噴射されるようになっている。これらの掘削補助液及び固化材は、高圧の液体注入ポンプ27から、注入ホース28、掘削回転軸10内及び掘削ヘッド20の中心軸21内を通り、ノズル26から噴射されるようになっている。
【0022】
上述のような中堀式既製杭建込み装置を使用し、掘削ヘッド20を既製杭A内を通して、既製杭Aの先端から突出させ、この掘削ヘッド20を回転させて地盤を掘削し、既製杭建込み穴の形成及び既製杭の地中への建込みを行う。そして、既製杭建て込み穴の下端に拡大球根形成部の形成、及び固化材の注入を行う。
【0023】
次に上述した既製杭建込み装置による既製杭建込みに使用する施工管理装置について説明する。
【0024】
この施工管理装置は、実際の施工の際のデータを測定する各種の実施工データ計測手段と、この計測手段によって計測されるデータや、その他のデータを表示するデータ表示手段と、各データを記録する記録手段を有している。また、前記各種実施工データ計測手段としては、次の計測手段を有している。
a.掘削ヘッド深度計測手段
この手段は、掘削ヘッド20の下端の深さ位置である掘削ヘッド深度を計測するものである。この掘削ヘッド深度は、中掘式既製杭建込み装置の昇降台4を吊り下げているワイヤーロープ5の送り出し量、巻き戻し量及び、掘削回転軸の長さ等のデータからコンピュータ29によって算出するようにしている。また、ワイヤーロープ5の送り出し、巻き戻し量は、ウインチ6に設置したローラ型検出器30によって計測している。このローラ型検出器30は、ワイヤーロープ5にローラ型検出器30に備えられたローラを当接させて、ワイヤーロープ5の移動量をローラの回転量として計測するものである。
b.掘削速度計測手段
この手段は、掘削ヘッドによる掘削速度、即ち、単位時間当たりどれだけの深さを掘削したかを計測するものである。この掘削速度は、ワイヤーロープ5の送り出し速度から計測している。ワイヤーロープ5の送り出し速度は、前述のローラ型検出器30で送り出し量とともに計測している。
c.掘削負荷計測手段
この手段は、地盤を掘削する際に掘削軸回転駆動手段に掛かる負荷を深度毎に計測するものである。この掘削軸回転駆動手段に掛かる負荷の深度毎の分布は、掘削している地盤の固さの分布と対応するものであり、掘削軸回転駆動手段に掛かる負荷として電動モータ8に供給される電流を計測している。この電流は、装置本体1に設置した電流検出器31によって計測しており、この電流検出器31によって計測された電流値と掘削速度から一定掘削距離毎の積算電流値を計算し、予め地盤調査によって測定したN値とともに、深度毎にデータ表示手段にグラフ表示するようになっている。そして、作業者は、このグラフを参考に、掘削ヘッド20が支持地盤に達したかどうかを判断するようになっている。尚、電動モータ8の電流値ではなく電力値を計測してもよい。
d.注入量計測手段
この手段は、固化材もしくは掘削補助液である液状材の液体噴射ノズル26から噴射する量を計測するものである。この注入量計測手段は、固化材もしくは掘削補助液が流れる配管に設置した流量検出器32によって、単位時間当たりに配管を流れる液状材の流量である瞬時流量と、それまでに供給された液状材の全体の量である積算流量を計測している。そして、コンピュータ29により、積算流量から段階毎の流量を算出し記録手段に記録するようになっている。尚、流量検出器32は、液体注入ポンプ27の一次側(液体吸入側)の配管に設置している。
e.注入圧力計測手段
この手段は、液体噴射ノズル26から噴射するセメント系固化材もしくは掘削補助液等の液状材の注入圧力を計測するものである。この注入圧力計測手段は、液状材を高圧で送り出す液体注入ポンプ27の排出口側に取り付けた圧力検出器33によって液状材の圧力を計測している。
f.既製杭深度計測手段
この手段は、既製杭Aを地中に建て込む際に、既製杭Aの下側先端の位置する深度である既製杭深度を計測するものである。この既製杭深度の計測の際には、昇降台4と排土ホッパー11間の距離を昇降台4に設置したレーザー式の距離計測器34によって計測し、この昇降台4と排土ホッパー11間の距離と、掘削ヘッド20の先端の深さ位置である掘削ヘッド深度から、既製杭深度を算出している。
g.回転速度計測手段
この手段は、回転駆動軸7(掘削回転軸10)の単位時間当たりの回転数(回転速度)を掘削軸回転駆動手段である電動モータ8内部に設置した回転検出器35により測定するものである。
【0025】
また、施工管理装置には、次の判別手段を備えている。
h.逆転可不可判別手段
この手段は、掘削ヘッド20を逆転させて拡大掘削刃25,25を突出させた際に、この拡大掘削刃25,25が既製杭Aと干渉しないかを判別するものである。即ち、コンピュータ29により、既製杭深度計測手段によって計測された既製杭Aの下端の深度である既製杭深度と、掘削ヘッド深度計測手段によって計測された掘削ヘッド深度から算出した拡大掘削刃25,25の深度位置とを比較し、掘削ヘッド20を逆回転させてもよいかをデータ表示手段に表示するものである。逆転させてもよいかの判別は、掘削ヘッド20に備えられている拡大掘削刃25,25が、既製杭Aの下端より、深い位置にある場合は逆転可能とし、拡大掘削刃25,25が既製杭A内にある場合は逆転不可と判別するようになっている。
【0026】
また、施工管理装置には、その他の手段として次の手段を備えている。
i.過トルク警告手段
この手段は、掘削軸回転駆動手段のトルクが設定トルク以上になったら警告を発するものであり、事前に登録された掘削軸回転駆動手段である電動モータ8のアンペア−トルク曲線の情報を元に、電流からトルクを算出し、設定トルク以上になったら警告をデータ表示手段に表示し、警告音を鳴らすようになっている。尚、この処理はコンピュータ29によって行っている。
【0027】
また、記録手段としては、上述した手段によって得られるデータである実施工時計測データやその他データを記録する記録手段及び、後述する基本条件データを記録する基本条件データ記録手段備えている。尚、これらの記録手段としては、コンピュータ29を使用している。また、これらの記録手段としては、コンピュータ29に外付けできるものを使用しても良い。
【0028】
データ表示手段としては、掘削機本体内部に設置された作業者用データ表示手段36と、掘削機本体外部に設置された管理者用データ表示手段37とを備えている。また、管理者用データ表示手段37はタッチパネル式となっており、入力手段も兼ねている。また、データ表示手段としては、警告音等を発生させることもできるものを使用している。
【0029】
上述したローラ型検出器30、電流検出器31、回転検出器35、距離計測器34、圧力検出器33、流量検出器32は、図3に示すようにコンピュータ29に接続されている。データに基づく計算処理等は、このコンピュータ29において行われる。また、このコンピュータ29は、各種データを保持するようになっている。さらに、コンピュータ29は入力手段を有し、データ表示手段と接続されている。
【0030】
施工の際には、既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め基本条件データ記録手段に入力しておく。また、施工段階毎に、目標となる目標データ、例えば、掘削速度、回転駆動軸7の回転数、掘削ヘッド20を正回転させるか逆回転させるか等を設定しておく。
【0031】
そして、これらの基本条件データ及び目標データを段階毎にデータ表示手段に表示するとともに、同一画面(段階毎表示画面)に実施工時計測データをデータ表示手段に表示する。作業者は、この段階毎表示画面の基本条件データ及び目標データと実施工時計測データを見比べつつ作業を行うことができる。図4は、段階毎表示画面の一例を示している。
【0032】
また、コンピュータ29により、実施工データ計測手段で測定される実施工時計測データと基本条件データをデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示をデータ表示手段に表示するようになっている。更に、各施工段階の終了を音で報せるようになっている。
【0033】
本実施例においては、コンピュータ29により、実施工データ計測手段で測定される実施工時計測データと基本条件データを比較し、実施工時計測データと基本条件データが略等しい場合に、段階毎表示画面に表示されている基本条件データと目標データを次の段階の基本条件データ及び目標データに切り替えるようになっている。
【0034】
また、コンピュータ29には、その他のデータとして、杭番号、段階名、回転軸の種類、回転駆動手段の種類、ワイヤー掛け本数、杭径、拡大掘削刃上端位置、拡大掘削刃クリアランス、ノズル位置、N値、支持層深度、開始深度等のデータを設定することができるようになっている。尚、このコンピュータ29は、段階毎表示画面を任意に切り替えることもできるようになっている。
【0035】
また、コンピュータ29によって、回転速度計測手段により計測された回転駆動軸7の単位時間当たりの回転数(回転速度)と、目標データとして予め設定されている回転数とを比較し、その差を表示するようになっている。そうすることにより、現在の回転速度が遅いか速いかを視覚的に判断できるようになっている。
【0036】
また、球根築造の際には、コンピュータ29により、計測されるデータに基づいて、球根築造状態を表示手段に、球根築造画面として球根築造を模擬した表示をするようになっている。このようにして、施工を視覚的に捉えられるようになっている。
【0037】
次に、中掘り式既製杭建込みの一連の工程を複数の施工段階に区分けした例を図5〜図6に基づき説明する。この例においては、基本条件データとして、施工段階毎に、掘削ヘッド20の下端の到達目標深度を設定している。従って、掘削ヘッド20の下端部が目標深度に達すると、データ表示手段に表示されている基本条件データ及び目標データが、次の施工段階のものへと切り替わるようになっている。
【0038】
施工の目安となる目標データとしては、施工段階毎に、掘削速度、回転駆動軸7の回転数、掘削ヘッド20を正回転させるか逆回転させるか、水を噴射するかセメントミルクを噴射するか、等を設定している。
【0039】
これらデータ表示手段に表示される基本条件データ及び目標データと、実施工事計測データを目視により比較しながら施工を行う。
第一段階
この第一段階は図5の工程1に対応するものであり、図6(a)〜(b)に示すように、中空の既製杭Aの中に、先端に掘削ヘッド20が備えられた回転駆動軸7を挿入し、この掘削軸回転駆動手段である電動モータ8により回転駆動軸7を正回転させて、掘削ヘッド20の液体噴射ノズル26より掘削補助液として水を注出しながら地盤を掘削するとともに、既製杭Aを沈降させる。
第二段階
この第二段階は、図5の工程2に相当するものであり、図6(b)〜(c)に示すように、所定の深度に達したら杭の沈設を止め、掘削ヘッド20先端部より水を注出しながら杭より下側を最終掘削深度付近に達するまで掘削する。
第三段階
この第三段階は、図5の工程3に相当するものであり、図6(c)〜(d)に示すように、掘削ヘッド20を正転させながら、最終掘削深度付近から拡大球根形成部Bの上部まで掘削ヘッド20を引き上げる。
第四段階
この第四段階は、図5の工程4に相当するものであり、図6(d)〜(e)に示すように、拡大球根形成部Bの上部から、掘削ヘッド20を正転させたまま、再度、最終掘削深度付近まで掘削する。
第五段階
この第五段階は、図5の工程5に相当するものであり、図6(e)〜(g)に示すように、最終掘削深度付近において掘削ヘッド20を逆回転させて拡大掘削刃25,25を突出させ、拡大球根形成部Bの上部まで拡大掘削を行う。
第六段階
この第六段階は、図5の工程6に相当するものであり、図6(g)〜(h)に示すように、拡大球根形成部Bの上部において、掘削ヘッド20を正回転に戻し、セメントミルクを噴射しながら、既製杭Aを沈設する。
第七段階
この第七段階は、図5の工程7に相当するものであり、図6(h)〜(i)に示すように、掘削ヘッドが地盤中の支持層付近に達したら、セメントミルクの噴射圧を上げ、既製杭Aを拡大球根形成部B内の最終沈設位置付近まで沈降させる。
第八段階
この第八段階は、図5の工程8に相当するものであり、図6(i)〜(j)に示すように、セメントミルクを高圧で噴射しながら、掘削ヘッド20のみを最終掘削深度まで降ろす。
第九段階
この第九段階は、図5の工程9に相当するものであり、図6(j)〜(m)に示すように、最終掘削深度から再び、掘削ヘッド20を逆回転させて拡大掘削刃25,25を突出させ、セメントミルクを高圧で噴射しながら、既製杭Aの下端付近の拡大掘削刃25,25が既製杭Aと干渉しない所まで上昇させる。
第十段階
この第十段階は、図5の工程10に相当するものであり、図6(m)〜(n)に示すように、既製杭Aの先端付近掘削ヘッド20を正回転させ、拡大掘削刃25,25を収納し、既製杭Aの中空部内にセメントミルクを充填しながら所定の位置まで上昇させる。この時、セメントミルクの噴射圧は多少弱める。
第十一段階
この第十一段階は、図5の工程11に相当するものであり、図6(n)〜(o)に示すように、既製杭A内の所定の位置から、掘削ヘッド20を引き上げる。この際には、掘削ヘッド20から既製杭A内に注水しながら引き上げる。
【0040】
次に、本発明である施工管理装置をプレボーリング式既製杭建込みに使用した例について説明する。このプレボーリング式既製杭建込みは、地盤を掘削し、既製杭建込み穴を形成し、その穴の先端部分に拡大球根形成部Bを形成し、固化材を注入した後に、既製杭Aを建て込む工法である。
【0041】
このプレボーリング式既製杭建込み工法に使用するプレボーリング式既製杭建込み装置は、図1に示されている中掘り式既製杭建込み装置と同様の装置であって、排土ホッパー11の無い装置を使用する。また、このプレボーリング式既製杭の建て込みにおいては、既製杭Aを建て込む際に、掘削回転軸10等を取り外して、昇降台4の底面下に既製杭固定具13を取り付けて既製杭Aを吊り下げるようになっている。
【0042】
また、このプレボーリング式既製杭建込みにおいては、掘削回転軸10であるオーガスクリューの径は、中掘り式の場合よりも大きなものを使用できる。オーガスクリューの先端に設置する掘削ヘッド20の径も同様である。また、拡大掘削刃25,25を突出させた際の拡大掘削刃25,25の突出量も少なくてよい。即ち、拡大掘削刃の長さは、中掘り式の場合と比べて小さくてよい。
【0043】
プレボーリング式既製杭建込みにおいて、本発明である既製杭施工管理装置は、中掘り式の場合と同様の装置を使用する。また、その際には、前述の手段の中でも、回転速度計測手段、逆転可不可判別手段、注入圧力計測手段以外の手段を使用し、コンピュータ29によってデータ処理を行い、施工管理をするようになっている。尚、このプレボーリング式既製杭建込みの場合、排土ホッパーを使用していないので、既製杭深度計測手段は、ローラ型検出器30によって測定されたワイヤーロープ5の移動量と、既製杭Aの長さ等から既製杭の下端の深度を計測するようになっている。また、固化材又は掘削補助液を送り出すポンプ27は、中掘り式既製杭建込みの場合よりも低圧のポンプを使用できるので、流量検出器32は、ポンプ27の2次側、即ち固化材又は掘削補助液排出側に取り付ける。
【0044】
次に、このプレボーリング式既製杭建込みによる施工工程を複数の施工段階に区分けした例を図7に基づき説明する。この例においては、基本条件データとして、中掘り式既製杭の建込みと同様、掘削ヘッド20の下端部の到達目標深度を段階毎に設定している。
【0045】
また、その他に、施工の目安となる目標データとして、施工段階毎に、掘削速度、掘削ヘッド20を正回転させるか逆回転させるか、等を設定している。
第一段階
この第一段階は、図7の工程1に相当するものであり、掘削ヘッド20の液体噴射ノズル26から掘削補助液として水を注出しながら、最終掘削深度まで掘削する。
第二段階
この第二段階は、図7の工程2に相当するものであり、掘削ヘッド20を正回転させながら、拡大球根形成部Bの上部と下部、即ち、最終掘削深度と支持層より少し上方の部分との間を往復させる。その後に、引き続き水を注出しながら、掘削ヘッドを逆回転させて拡大掘削刃25,25を突出させた状態で、掘削ヘッドを上下させて拡大球根形成部Bを形成する。
第三段階
この第三段階は、図7の工程3に相当するものであり、掘削ヘッドを正回転、或いは、逆回転させつつ、拡大球根形成部Bに固化材としてセメントミルクを注入する。
第四段階
この第四段階は、図7の工程4に相当するものであり、掘削ヘッドの回転を正回転させ、掘削ヘッドからセメントミルクを注出しつつ、掘削ヘッドを引き上げる。
第五段階
この第五段階は、図7の工程5に相当するものであり、杭の建込みを行う。
【0046】
以上のように施工を複数の段階に区分けする。
【0047】
尚、第二段階から第三段階に入るときは、到達目標深度を拡大球根形成部B外に設定しておき、段階を進めるときに、掘削ヘッド20をその到達目標深度まで移動させて、段階を進めるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明で使用する既製杭建込み装置の一例を示す側面図である。
【図2】同上の掘削ヘッドの一例を示す正面図である。
【図3】本発明に係る施工管理装置の説明図である。
【図4】同上のデータ表示画面に表示される画面の一例を示す図である。
【図5】中掘り式既製杭建込みの施工を複数の工程に区分けした一例を示す説明図である。
【図6】(a)〜(o)同上の施工工程を説明するための略図的断面図である。
【図7】プレボーリング式既製杭建込みの施工を複数の工程に区分けした一例を示す説明図である。
【図8】従来の施工管理装置を示す説明図である。
【図9】同上の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
A 既製杭
B 拡大球根形成部
1 装置本体
2 支柱
3 ガイドレール
4 昇降台
5 ワイヤーロープ
6 ウインチ
7 回転駆動軸
8 電動モータ
9 掘削回転軸用ジョイント
10 掘削回転軸
11 排土ホッパー
12 昇降ウインチ
13 既製杭固定具
20 掘削ヘッド
21 中心軸
22 オーガスクリュー
23 掘削刃
25 拡大掘削刃
26 液体噴射ノズル
27 液体注入ポンプ
28 注入ホース
29 コンピュータ
30 ローラ型検出器
31 電流検出器
32 流量検出器
33 圧力検出器
34 距離計測器
35 回転検出器
36 作業者用データ表示手段
37 管理者用データ表示手段
41 杭
42 オーガ
43 変位計測手段
44 オーガモータ
45 負荷電流計測手段
46 ポンプ
47 供給流量計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きの支柱に設置されたガイドレールに沿って上下に移動される昇降台と、該昇降台に設置された掘削軸回転駆動手段と、前記昇降台の下側に吊り下げ支持され、前記掘削軸回転駆動手段によって回転される掘削回転軸と、該掘削回転軸の下端に固定した掘削ヘッドとを備えるとともに、前記掘削ヘッドには、正転させることによって掘削土を上昇させるオーガスクリューと、逆転させることによって該オーガスクリューの外径より外側に突出する拡大掘削刃と、前記掘削回転軸内を通して掘削補助液やセメント系固化材等の液状材を吐出する液状材噴射ノズルとを備えた既製杭建込み用削孔装置を使用し、前記掘削ヘッドを既製杭内を通して地中に回転させつつ挿入し、既製杭建込み穴の形成及び既製杭の地中への建込み、該建込み穴下端の拡大球根形成部の形成、及び前記固化材の注入を行う中堀式既製杭建込みにおける既製杭建込み施工管理装置であって、
前記既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め入力しておく基本条件データ記録手段と、
前記掘削ヘッド先端の深度を計測する掘削ヘッド深度計測手段、前記既製杭の先端深度を計測する既製杭深度計測手段及び/又は前記液状材噴射ノズルへの液状材注入量を計測する注入量計測手段等の実施工データ計測手段と、
該実施工データ計測手段による計測データ及び前記施工段階毎の基本条件データを表示するデータ表示手段と、
前記計測データを経時的に記録する記録手段と、を備え、
前記実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと前記所定の基本条件データとをコンピュータによるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示を前記表示手段に表示させるようにしたことを特徴としてなる既製杭建込み施工管理装置。
【請求項2】
前記実施工データ計測手段として、前記掘削回転軸の回転速度を計測する手段である回転速度計測手段及び前記液状材の吐出圧力を計測する手段である注入圧力計測手段を備えてなる請求項1に記載の既製杭建込み施工管理装置。
【請求項3】
縦向きの支柱に設置されたガイドレールに沿って上下に移動される昇降台と、該昇降台に設置された掘削軸回転駆動手段と、前記昇降台の下側に吊り下げ支持され、前記掘削軸回転駆動手段によって回転される掘削回転軸と、該掘削回転軸の下端に固定した掘削ヘッドとを備えるとともに、前記掘削ヘッドには、正転させることによって掘削土を上昇させるオーガスクリューと、逆転させることによって該オーガスクリューの外径より外側に突出する拡大掘削刃と、前記掘削回転軸内を通して掘削補助液やセメント系固化材等の液状材を吐出する液状材噴射ノズルとを備えた既製杭建込み用削孔装置を使用し、前記掘削ヘッドを地中に回転させつつ挿入する既製杭建込み穴の形成、該建込み穴下端の拡大球根形成部の形成、前記固化材の注入及び既製杭の前記建込み穴への建込みを行うプレボーリング式既製杭建込みにおける既製杭建込み施工管理装置であって、
前記既製杭建込み穴の形成から固化材の注入完了までの一連の工程を複数の施工段階に区分けし、施工段階毎に掘削ヘッド深度、固化材注入量等の所定の基本条件データを予め入力しておく基本条件データ記録手段と、
前記掘削ヘッド先端の深度を計測する掘削ヘッド深度計測手段、前記既製杭の先端深度を計測する既製杭深度計測手段及び/又は該液状材噴射ノズルへの液状材注入量を計測する注入量計測手段等の実施工データ計測手段と、
該実施工データ計測手段による計測データ及び前記施工段階毎の基本条件データを表示するデータ表示手段と、
前記計測データを経時的に記録する記録手段と、を備え、
前記実施工データ計測手段によって計測された実施工時計測データと前記所定の基本条件データとをコンピュータによるデータ処理によって比較し、実施工時計測データが各施工段階の前記基本条件データを満足することによって各施工段階の終了を判別できる表示を前記表示手段に表示させるようにしたことを特徴としてなる既製杭建込み施工管理装置。
【請求項4】
前記表示手段には、施工段階毎に必要なデータを表示させる段階毎表示画面に切り換え表示させるようにし、その段階毎表示画面に、当該施工段階の前記予め入力された基本条件データと実施工時計測データとを表示させるようにしてなる請求項1,2又は3の何れか1項に記載の既製杭建込み施工管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−243186(P2009−243186A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92148(P2008−92148)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000229667)日本ヒューム株式会社 (70)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000201504)前田製管株式会社 (35)
【Fターム(参考)】