既設セグメントの補強方法

【課題】既設セグメントを容易かつ安価に補強できる既設セグメントの補強方法を提供する。
【解決手段】既設のシールドトンネル1の既設セグメント53の内面に補強材(モルタル2)を吹き付けてセグメント補強部3を形成した。また、既設セグメント53の内面より立ち上がるように設けられた板で囲まれた一端開口の有底箱部(中子56)内に補強材を吹き付ける場合に、有底箱部内に吹き付けられる補強材の脱落を防止するための補強材脱落防止具を、有底箱部の互いに対向する一対の壁に突っ張るように設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設トンネルを構成する既設セグメントの補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した既設トンネルの内壁面を形成する既設セグメントの内面にライニング体を設けて既設セグメントを補強する方法が知られている(例えば特許文献1等参照)。
ライニング体は、既設セグメントの内面に沿って対向するように設置される内装パネルと、既設セグメントの内面と内装パネルとの間に配筋される鉄筋と、既設セグメントの内面と内装パネルとの間に充填されるコンクリートと、により構成される。
内装パネルとしては、プレキャストコンクリート版、FRP板、繊維強化材料からなる軽量パネル等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−271599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、上述したように、内装パネルの設置作業、配筋作業、コンクリート充填作業が必要となるので、施工性、施工時間、施工コスト等の面で課題があった。
本発明は、既設セグメントを容易かつ安価に補強できる既設セグメントの補強方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る既設セグメントの補強方法は、既設のシールドトンネルの既設セグメントの内面に補強材を吹き付けてセグメント補強部を形成したので、既設セグメントを容易かつ安価に補強できる。
また、既設セグメントの内面より立ち上がるように設けられた板で囲まれた一端開口の有底箱部内に補強材を吹き付ける場合に、有底箱部内に吹き付けられる補強材の脱落を防止するための補強材脱落防止具を、有底箱部の互いに対向する一対の壁に突っ張るように設置したので、補強材が補強材脱落防止具に付着し、有底箱部内に吹き付けられた補強材の脱落を防止できるので、良好なセグメント補強部を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】補強された既設セグメントの断面図(実施形態1)。
【図2】補強された既設セグメントの断面図(実施形態2)。
【図3】補強材脱落防止具を示す斜視図(実施形態2)。
【図4】補強材の吹付け工程を示す断面図(実施形態3)。
【図5】補強材の吹付け工程を示す斜視図(実施形態3)。
【図6】シールドトンネルの施工方法を示す断面図(実施形態1乃至3)。
【図7】セグメントピースを示す斜視図(実施形態1乃至3)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
シールドトンネルは、図6に示すように、シールド掘進機50のカッターヘッド51によって地山52を掘進して形成された筒状空洞部(トンネル空洞部)の内側に当該筒状空洞と同心状に一次覆工としての筒状のセグメント53を構築してなる。
即ち、シールド掘進機の50後方に形成される筒状空洞内において複数の弧状のセグメントピース54を筒状空洞の周方向に延長するように設置して環状のセグメントリング55を組立て、シールド掘進機50の推進ジャッキ60のピストンロッド61を環状のセグメントリング55の前面56に接触させ、推進ジャッキ60のピストンロッド61を伸ばすことで環状のセグメントリング55を反力受けとして使用してシールド掘進機50を前方に推進させる。そして、推進ジャッキ60のピストンロッド61を縮めて環状のセグメントリング55の前方に当該環状のセグメントリング55と接続される新しい環状のセグメントリング55を組み立てる。このように、シールド掘進機50を前方に推進させるとともにシールド掘進機50の後方に環状のセグメントリング55が順番に組み立てられて前後に隣り合う環状のセグメントリング55;55同士が連結されることで複数の環状のセグメントリング55;55・・・により筒状のセグメント53が構築される。
図7に示すように、セグメントピース54は、弧状の内面71及び弧状の外面72を有した基板70と、リング継手板73と、セグメント継手板74と、補強リブ75とを備える。リング継手板73、セグメント継手板74、補強リブ75は、基板70の内面71側に設けられる。リング継手板73は、基板70の相対向する両端の直線縁76;76より立ち上がるように形成される。セグメント継手板74は、基板70の相対向する両端の弧状縁77;77より立ち上がるように形成される。補強リブ75は、相対向する一方のセグメント継手板74と他方のセグメント継手板74とに跨がって延長するように設けられる。
従って、基板70の内面71側には、一端開口の複数の有底箱部(以下、中子76と言う)が形成される。
中子76は、相対向する一対のセグメント継手板74;74とリング継手板73と補強リブ75と基板70とで囲まれた一端開口の有底箱部、又は、相対向する一対のセグメント継手板74と相対向する一対の補強リブ75と基板70とで囲まれた一端開口の有底箱部により形成される。即ち、中子76は、既設セグメント53の内面71より立ち上がるように設けられた板で囲まれた一端開口の有底箱部により形成される。
尚、リング継手板73には、筒状空洞の周方向に隣り合うセグメントピース54;54を接続するためのボルトを通す孔78が設けられる。セグメント継手板74には、シールド掘削機の推進方向に隣り合うセグメントピース54;54を接続するためのボルトを通す孔79が設けられる。
【0008】
実施形態1においては、図1に示すように、トンネル1を形成する既設セグメント53において、セグメントピース54の中子56内、即ち、既設セグメント53の内面71に補強材の一例としてのモルタル2を吹き付けてセグメント補強部3を形成した。
【0009】
モルタル2を吹付けるための吹付装置3は、材料を混練してモルタル2を作るミキサー4と、モルタル投入ホッパー5と、ポンプ6と、噴射装置7と、ポンプ6の吐出口と噴射装置7のモルタル受口とを連通可能に接続するホース(接続管)8とを備える。
ミキサー4で作成され、モルタル投入ホッパー5に投入されたモルタル2がポンプ6によりホース8を介して噴射装置7に圧送され、噴射装置7の噴射ノズル9から噴射される。
【0010】
実施形態1によれば、トンネル1を形成する既設セグメント53の各セグメントピース54の中子56内にモルタル2を吹き付けて補強層3を形成することにより、従来のように内装パネルの設置作業、配筋作業、コンクリート充填作業が必要となる補強方法と比べて、既設セグメント53を簡単かつ安価に補強できる。
【0011】
実施形態2
既設セグメント53の座屈を防止するために、シールドトンネル1を形成する既設セグメント53の左右壁部分に位置するセグメントピース54の中子56内にモルタル2を吹き付けてセグメント補強層3を形成する。
例えば、図2に示すように、電力線、電話線、通信線などの各種ケーブル10等を地中にまとめて収容するための電線共同溝(CCBOX)を形成するシールドトンネル1の既設セグメント53、電力線、電話線、通信ケーブル、ガス管、上下水道管等をまとめて収容する図外の共同溝を形成するシールドトンネルの既設セグメントなどにおいて、既設セグメント53の左右壁部分53A;53Bに位置する各セグメントピース54の中子56内にモルタル2を吹き付けてセグメント補強層3を形成することにより、既設セグメント53の座屈を防止できるようになる。
尚、例えば、図2に示すように、電線共同溝の既設セグメント53の左右壁部分53A;53B側には各種ケーブル10などの設置板11が固定されたラック12が設置されており、ラック12と壁部分53Aとの間、及び、ラック12と壁部分53Bとの間が狭小空間20になっていることが多い。このような狭小空間20内に作業者が入って従来技術のように内装パネルの設置作業、配筋作業、コンクリート充填作業を行うことは困難であるが、実施形態2によれば、既設セグメント53の左右壁部分53A;53Bに位置する各セグメントピース54の中子56内に補強材としてのモルタル2を吹き付ける作業を行うだけでよいので、既設セグメント53を簡単かつ安価に補強でき、既設セグメント53の座屈を防止できる。
【0012】
実施形態3
実施形態1;2のように、セグメントピース54の中子56内にモルタル2を吹き付けて補強層3を形成する方法において、コンクリート製のセグメントピース54が用いられた既設セグメント53の場合には、セグメントピースの中子56内にモルタル2が付着するが、ダクタイル(鋳鉄)製やスチール(鋼)製等の金属製のセグメントピース54が用いられた既設セグメント53の場合には、セグメントピース54にモルタル2が付着しにくく、セグメントピース54の中子56内からモルタル2が脱落しやすくなる。
そこで、実施形態3では、ダクタイル製やスチール製等の金属製のセグメントピース54が用いられた既設セグメント53の場合においては、中子56内にモルタル脱落防止具(補強材脱落防止具)25を設置して、モルタル2の脱落を防止するようにした。
【0013】
モルタル脱落防止具25としては、例えば、図3に示すように、一端部に右ねじ部26を備えるとともに他端部に左ねじ部27を備えた胴部28と、胴部28の右ねじ部26に挿入されたねじ部29を有した一方の棒体30と、胴部28の左ねじ部27に挿入されたねじ部31を有した他方の棒体32とを備えた所謂ターンバックルを用いる。
ターンバックルにより構成されたモルタル脱落防止具25は、一方の棒体30と他方の棒体32とが互いに離れる方向に移動するよう胴部28を操作することにより、図5(b)に示すように、一方の棒体30の一端面30aと一方のセグメント継手板74の内面とを接触させるとともに他方の棒体32の一端面32aと他方のセグメント継手板74の内面とを接触させ、一方の棒体30及び他方の棒体32が互いに対向する一対のセグメント継手板74;74間で突っ張るように設置される。
【0014】
実施形態3のモルタル脱落防止具25を用いる場合の吹付け方法を図4;図5に基づいて説明する。尚、図5は既設セグメント53のうちの1つのセグメントピース54のみを抜粋して吹き付け方法を示した。
まず、既設セグメント53のセグメントピース54の中子56内の基板70の内面71にモルタル2を吹付けて内面71から厚さ10mm〜20mm程度の第1補強層35を形成する(図4(a);図5(a)参照)。第1補強層35の硬化を確認した後(例えば480分養生した後)、中子56内でかつ第1補強層35の外側にモルタル脱落防止具25を上述のように一対のセグメント継手板74;74間で突っ張らせて設置する(図4(b);図5(b)参照)。モルタル脱落防止具25を埋めるように第1補強層35の上に厚さ50mm程度の第2補強層36を形成する(図4(c);図5(c)参照)。第2補強層36の硬化を確認した後(例えば120分養生した後)、第2補強層36の上に厚さ50mm程度の第3補強層37を形成する(図4(d);図5(d)参照)。即ち、前層のモルタル2の硬化を待って前層の上に次層を形成するモルタル2を吹き付けて3層のモルタル層からなる3層の補強層35;36;37を形成した。
尚、モルタル2の充填性を向上させるため、吹付け順序は、中子56の隅部から吹付けを行い、最後に中子56の中央部の吹付けを行うようにした。
【0015】
実施形態3によれば、中子56内にモルタル脱落防止具25を設置して補強層35;36;37を形成したので、モルタル2がモルタル脱落防止具25に付着し、中子56内に吹き付けられたモルタル2の脱落を防止できるので、良好なセグメント補強部3を形成できる。
また、3層の補強層35;36;37によりセグメント補強部3を形成したので、中子56内のモルタル2の充填性が向上し、空洞の少ないセグメント補強部3を形成できる。
【0016】
尚、モルタル脱落防止具25としては、中子56の互いに対向する一対の壁に突っ張るように設置されるものを用いればよい。
本発明は、上述した電線共同溝、共同溝以外の、地下鉄、道路などのシールドトンネルを形成する既設セグメントの補強にも適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 シールドトンネル、2 モルタル(補強材)、3 セグメント補強部、
25 モルタル脱落防止具(補強材脱落防止具)、53 既設セグメント、
56 中子(有底箱部)、71 既設セグメントの内面、
74;74 一対のセグメント継手板(一対の壁)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のシールドトンネルの既設セグメントの内面に補強材を吹き付けてセグメント補強部を形成したことを特徴とする既設セグメントの補強方法。
【請求項2】
既設セグメントの内面より立ち上がるように設けられた板で囲まれた一端開口の有底箱部内に補強材を吹き付ける場合に、有底箱部内に吹き付けられる補強材の脱落を防止するための補強材脱落防止具を、有底箱部の互いに対向する一対の壁に突っ張るように設置したことを特徴とする請求項1に記載の既設セグメントの補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−49965(P2013−49965A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187605(P2011−187605)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(596118530)テクノス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】