既設タンクの改修方法
【課題】改修工事を小規模にすることが可能な既設タンクの改修方法を提供すること。
【解決手段】浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰材を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する工程と、を具備することを特徴とする。
【解決手段】浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰材を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設タンクの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所に設置されている石油タンクや化学プラントなどに設置されている貯留タンクに地震力が作用すると、タンク内に貯留されている液体(石油、原油、溶液など)にスロッシングが発生することがある。
【0003】
スロッシングの規模が大きくなると、液体の漏れやタンクの破壊などを招来する虞があることから、例えば特許文献1などに開示されているように、タンクの内部にスロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を設置する場合がある。
【0004】
特許文献1のスロッシング減衰装置は、液面を覆う浮き屋根の下側に配置されるフロート構造体と、液体の流速を減衰させる減衰体とを備えて構成されている。フロート構造体は、平面視格子状や放射状に組み合わされた複数の棒状要素を備えて構成されている。また、減衰体は、孔あき板や金網などからなる網状部材を備えて構成されていて、フロート構造体に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−8148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のスロッシング減衰装置は、新設タンクにも既設タンクにも適用することができるが、既設タンクに適用する場合には、浮き屋根を一旦撤去する必要があることから、改修工事が大規模なものになってしまう。
【0007】
このような観点から、本発明は、改修工事を小規模にすることが可能な既設タンクの改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために創案された本発明に係る既設タンクの改修方法は、浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する屋根降下工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
前記した課題を解決するために創案された本発明に係る他の既設タンクの改修方法は、浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数のリング構成材と複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備するものであり、前記組立工程では、前記浮き屋根の中心部に設けられた支柱を前記複数のリング構成材で抱囲しつつ前記リング構成材同士を接合することで中心部材を形成し、前記支柱を中心にして放射状に配置した複数の前記棒状要素を前記中心部材に接合し、前記中心部材に接合された前記棒状要素に前記減衰体を取り付ける、ことを特徴とする。
【0010】
前記した課題を解決するために創案された本発明に係るさらに他の既設タンクの改修方法は、浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素の下側に一対の斜材をV字状に配置して支持部材を構築し、前記減衰体の上端部を前記棒状要素に取り付け、前記減衰体の下端部を前記支持部材に取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
このような手順で既設タンクを改修すれば、浮き屋根を撤去せずとも、浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築することができるので、改修工事を小規模なものにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る既設タンクの改修方法によると、改修工事を小規模にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る既設タンクの改修方法によって構築されるスロッシング減衰装置を示す断面図、(b)は平面図である。
【図2】スロッシング減衰装置の拡大斜視図である。
【図3】(a)は平面架構の中心部を示す拡大斜視図、(b)は中心部材の分解斜視図である。
【図4】スロッシング減衰装置の拡大分解斜視図である。
【図5】(a)は放射方向フレームの分解斜視図、(b)は周方向フレームの分解斜視図である。
【図6】平面架構の外縁部を示す拡大断面図である。
【図7】支持部材を示す拡大斜視図である。
【図8】減衰体を示す分解斜視図である。
【図9】(a)〜(c)は本発明の実施形態に係る既設タンクの改修方法を説明するための模式図である。
【図10】(a)および(b)は中心部材の組み立て方法を説明するための平面図である。
【図11】(a)および(b)は平面架構の変形例を示す平面図である。
【図12】平面架構の他の変形例を示す平面図である。
【図13】(a)は減衰体および支持部材の変形例を示す断面図、(b)は畳まれた状態の減衰体を示す断面図である。
【図14】(a)は図13の(a)のア−ア線断面図、(b)は図13の(a)のイ−イ線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係るスロッシング減衰装置は、図1の(a)に示すように、タンクTに貯留された液体Lを覆う浮き屋根Rの下側に配置されるものであって、フロート構造体Fと、減衰体Dとを備えて構成されていて、液体Lの増減に伴って上下に移動する。
【0015】
フロート構造体Fは、減衰体Dを保持するものであって、本実施形態では、液体Lからの浮力によって、液体Lの上層部に浮遊している。フロート構造体Fは、図1の(b)に示すように、複数の棒状要素を組み合わせてなる平面架構1と、棒状要素に取り付けられた緩衝材2(図2参照)と、棒状要素から下方に向かって伸びる支持部材3(図2参照)と、平面架構1の外側に配置されたガイド部材4と、を備えて構成されている。なお、フロート構造体Fは、浮き屋根Rの下面に当接した状態で液体Lの上層部に浮遊するものでも差し支えないし、浮き屋根Rの下面から離れた状態で液体Lの上層部に浮遊するものでも差し支えない。
【0016】
平面架構1は、中心部材11を中心にして複数の棒状要素を組み合わせて構成した平面的な骨組構造体であり、その構面は、通常時においては、タンクTの底面と略平行になっている(図1の(b)参照)。複数の棒状要素には、平面架構1の中央部から外縁へ向かう方向(以下、「放射方向」という。)に沿って配置された複数の放射方向フレーム12,12,…と、中心部材11の外周側において平面視多角形状を成すように配置された複数の第一の周方向フレーム13,13,…と、平面架構1の外縁において平面視多角形状を成すように配置された複数の第二の周方向フレーム14,14,…と、が含まれている。なお、以下の説明においては、第一の周方向フレーム13を「内周フレーム13」と称し、第二の周方向フレーム14を「外周フレーム14」と称することとする。
【0017】
すなわち、平面架構1は、中心部材11と、この中心部材11を中心にして放射状に配置された複数の放射方向フレーム12,12,…と、この放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように配置された複数の外周フレーム14,14,…と、この外周フレーム14,14,…の内周側において中心部材11を取り囲むように配置された複数の内周フレーム13,13,…を備えて構成されている。
【0018】
中心部材11は、平面架構1の中央部に配置される部材であり、その周囲に位置する複数(本実施形態では八つ)の放射方向フレーム12,12,…を連結している。図2にも示すように、中心部材11は、平面視多角形を呈しており、各辺の中央部に放射方向フレーム12の端部が接合されている。図3の(a)に示すように、中心部材11は、平面視多角形を呈する環状部11aと、環状部11aの外周側に突出する複数の接続部11b,11b,・・・とを備えて構成されている。環状部11aは、外側に開口する断面溝形を呈している。接続部11bは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により環状部11aの溝部に固着されている。なお、本実施形態では、中心部材11の平面形状を、これに接続される放射方向フレーム12の数と同数の辺を有する正多角形(本実施形態では正八角形)としたが、これに限定されることはなく、放射方向フレーム12の数よりも多数あるいは少数の辺を有する多角形としてもよいし、円形としても差し支えない。
【0019】
中心部材11は、図3の(b)に示すように、略C字状を呈する二つのリング構成材11A,11Aからなる。すなわち、中心部材11は、分割可能に構成されている。ちなみに、二つのリング構成材11A,11Aの境界部分に位置する接続部11bについては、一方のリング構成材11Aの端部に設けられたた板状部材と他方のリング構成材11Aの端部に設けられた板状部材とで構成される。なお、図示は省略するが、中心部材11を三以上のリング構成材に分割可能に構成しても差し支えない。
【0020】
放射方向フレーム12は、図1の(b)に示すように、中心部材11の中心を通る直線に沿って配置される。放射方向に隣り合う放射方向フレーム12,12同士は、本実施形態では、中心部材11または内周フレーム13を介して互いに連結されている。なお、放射方向フレーム12には、中心部材11と内周フレーム13との間に配置されるものと、内周フレーム13と外周フレーム14との間に配置されるものとがあるが、どちらも同様の構成を具備しているので、以下では、中心部材11と内周フレーム13との間に配置される放射方向フレーム12について説明する。
【0021】
中心部材11に接続される複数の放射方向フレーム12,12,…は、周方向に等間隔に配置されている。すなわち、周方向に隣り合う放射方向フレーム12,12がなす角度は、総て同じになっている。
【0022】
放射方向フレーム12は、図4に示すように、内部に密閉された中空空間が形成されている本体部12aと、この本体部12aの端面に突設された継手部12bと、本体部12aの周面に突設された第一取付部12cとを備えて構成されている。
【0023】
本体部12aは、図5の(a)に示すように、円筒状を呈する中空パイプ121と、この中空パイプ121の両端部を閉塞する閉塞板122,122とを備えて構成されている。すなわち、放射方向フレーム12は、両端が閉塞された中空パイプ121を備えている。中空パイプ121は、アルミニウム合金製の押出形材からなり、閉塞板122は、全周溶接により中空パイプ121の端部に固着されている。
【0024】
継手部12bは、放射方向フレーム12の長手方向に隣接する他の部材(図4に示す中心部材11や内周フレーム13など)に接続される部位である。継手部12bは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により閉塞板122に固着される。図4に示すように、中心部材11と放射方向フレーム12とを接合するには、中心部材11の接続部11bと放射方向フレーム12の継手部12bとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0025】
第一取付部12cは、減衰体Dが接続される部位であり、本実施形態では、本体部12aの下面に突設されている。取付部12cは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により本体部12aの周面に固着されている。第一取付部12cの位置や数に特に制限はないが、本実施形態では、本体部12aの両端部の各々に一つずつ配置されている。
【0026】
なお、本実施形態では、円筒状の中空パイプ121(図5の(a)参照)を利用して形成した放射方向フレーム12を例示したが、放射方向フレーム12の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、多角筒状の中空パイプを利用して放射方向フレーム12を形成してもよいし、中実な円柱状または多角柱状を呈する形材を利用して放射方向フレーム12を形成してもよく、さらには、断面H形や断面I形を呈する形材を利用して放射方向フレーム12を形成しても差し支えない。
【0027】
内周フレーム13,13,…は、図1の(b)に示すように、互いに接合されて平面視多角形を呈する中間リング1aを形成している。すなわち、周方向に隣り合う内周フレーム13,13(すなわち、多角形の隣接する二辺となる内周フレーム13,13)は、斜交した状態で接合され、多角形の角部を形成する。中間リング1aは、中心部材11に接続される放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように形成される。中間リング1aの平面形状は、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数と同数の辺を有する正多角形を呈している。すなわち、中間リング1aの平面形状は、中心部材11の平面形状と相似の関係にある。
【0028】
内周フレーム13は、図2にも示すように、一直線上に並ぶ放射方向フレーム12,12と直角に交差(十字状に交差)するように配置されている。図4に示すように、内周フレーム13は、内部に密閉された中空空間が形成されている本体部13aと、この本体部13aの端面に突設された継手部13bと、本体部13aの周面に突設された連結部13cと、同じく本体部13aの周面に突設された第二取付部13dと、を備えて構成されている。
【0029】
本体部13aは、図5の(b)に示すように、円筒状を呈する中空パイプ131と、この中空パイプ131の両端部を閉塞する閉塞板132,132とを備えて構成されている。すなわち、内周フレーム13は、両端が閉塞された中空パイプ131を備えている。中空パイプ131は、アルミニウム合金製の押出形材からなり、閉塞板132は、全周溶接により中空パイプ131の端部に固着される。
【0030】
継手部13bは、隣接する他の内周フレーム13に接続される部位である。継手部13bは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により閉塞板132に固着される。継手部13bは、隣接する他の内周フレーム13と斜交した状態で接合できるように屈曲している。なお、周方向に隣り合う内周フレーム13,13を接合するには、図4に示すように、一方の継手部13bと他方の継手部13bとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0031】
連結部13cは、放射方向フレーム12が接続される部位であり、本実施形態では、本体部13aの中央部の側面に突設されている。連結部13cは、本実施形態では、透孔を有する板状部材からなり、溶接により本体部13aの周面に固着されている。連結部13cには、中心部材11に向かって突出するものと、その反対側に向かって突出するものとがあるが、二つの連結部13c,13cは、一直線上に配置されている。なお、放射方向フレーム12と内周フレーム13とを接合するには、放射方向フレーム12の継手部12bと内周フレーム13の連結部13cとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0032】
第二取付部13dは、支持部材3が接続される部位であり、本実施形態では、本体部13aの下面に突設されている。第二取付部13dは、本実施形態では、透孔を有する板状部材からなり、溶接により本体部13aの周面に固着されている。なお、一対の第二取付部13d、13dは、本体部13aの中心軸線を含む鉛直面内に配置されている。また、各第二取付部13dは、連結部13c,13cと継手部13bの間に位置している。
【0033】
なお、本実施形態では、円筒状の中空パイプ131(図5の(b)参照)を利用して形成した内周フレーム13を例示したが、内周フレーム13の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、多角筒状の中空パイプを利用して内周フレーム13を形成してもよいし、中実な円柱状または多角柱状を呈する形材を利用して内周フレーム13を形成してもよく、さらには、断面H形や断面I形を呈する形材を利用して内周フレーム13を形成しても差し支えない。
【0034】
外周フレーム14,14,…は、図1の(b)に示すように、平面架構1の輪郭を形成するものであって、互いに接合されて平面視多角形を呈する外周リング1bを形成している。すなわち、周方向に隣り合う外周フレーム14,14(すなわち、多角形の隣接する二辺となる内周フレーム14,14)は、斜交した状態で接合され、多角形の角部を形成する。外周リング1bは、中間リング1aの外周側に接続される放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように配置される。外周リング1bの平面形状は、中間リング1aの外周側に接続される放射方向フレーム12の数の2倍の辺を有する正多角形を呈している。
【0035】
外周フレーム14には、放射方向フレーム12が接続されるものと、放射方向フレーム12が接続されないものとがある。放射方向フレーム12が接続される外周フレーム14は、放射方向フレーム12と直角に交差(T字状に交差)するように配置されている。なお、二種類の外周フレーム14は、どちらも同様の構成を具備しているので、以下では、放射方向フレーム12が接続される外周フレーム14について説明する。
【0036】
外周フレーム14は、図2に示すように、内部に密閉された中空空間が形成されている本体部14aと、この本体部14aの端面に突設された継手部14bと、本体部14aの周面に突設された連結部14cと、同じく本体部14aの周面に突設された第二取付部14dと、同じく本体部14aの周面に突設された第三取付部14eとを備えて構成されている。なお、本体部14a、継手部14bおよび第二取付部14cの構成は、それぞれ前記した内周フレーム13の本体部13a、継手部13bおよび第二取付部13cと同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0037】
第三取付部14eは、図6に示すように、ガイド部材4が接続される部位であり、本実施形態では、本体部14aの外周側の側面に突設されている。第三取付部14eは、取付座141と、ボルト142と、抜け止材143とを備えて構成されている。取付座141は、箱状を呈しており、溶接により本体部14aの周面に固着されている。ボルト142の頭部は、取付座141の内部にあり、軸部は、取付座141の先端面に設けられた図示せぬ長孔から突出している。抜け止材143は、取付座141の内部に固着されており、ボルト142の頭部に当接して、ボルト142の脱落を防止する。
【0038】
なお、本実施形態では、円筒状の中空パイプを利用して形成した外周フレーム14を例示したが、外周フレーム14の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、多角筒状の中空パイプを利用して外周フレーム14を形成してもよいし、中実な円柱状または多角柱状を呈する形材を利用して外周フレーム14を形成してもよく、さらには、断面H形や断面I形を呈する形材を利用して外周フレーム14を形成しても差し支えない。
【0039】
なお、放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14の総てを中実の形材で形成した場合には、フロート構造体の浮力を得るための別体のフロート(浮き)を配設する必要がある。また、複数の棒状要素(放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14)の一部を中空状とし、残りを中実とする場合には、フロート構造体の全体を浮遊させるのに必要な浮力が得られるように、中空状の棒状要素(すなわち、密閉された中空空間を有する棒状要素)の本数および各中空空間の体積を設定する必要があり、さらには、フロート構造体の全体がバランスよく液面に浮かぶように(すなわち、フロート構造体の一部ないし全部が液体内に沈まないように)、中空状の棒状要素をバランスよく配置する必要がある。例えば、総ての放射状フレーム12を中空状とするか、あるいは、内周フレーム13および外周フレーム14を中空状とするとバランスがよい。
【0040】
図2に示す緩衝材2は、浮き屋根R(図1の(a)参照)との接触による平面架構1の損傷を防止するものであって、棒状要素である放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14に環装されている。すなわち、緩衝材2は、地震により液面が揺れた際に、金属性の各フレーム材12,13,14と金属性の浮き屋根Rとが直接衝突することを防ぐものであり、直接的な衝突による損傷を防ぐ等の目的で取り付けられている。図5の(a)および(b)に示すように、緩衝材2は、前記した棒状要素の外径と略等しい内径を備えるリング状に成形されていて、前記した棒状要素に外嵌される。すなわち、本実施形態では、棒状要素に外嵌できるように、緩衝材2の内周形状が棒状要素の外周形状と略等しくなっている。
【0041】
緩衝材2の位置や数などに特に制限はないが、本実施形態では、一つの棒状要素につき四つの緩衝材2が環装されている。四つの緩衝材2,2,…は、等間隔に配置される(図4参照)。緩衝材2の材質は、棒状要素を構成する材料(本実施形態ではアルミニウム合金)や浮き屋根R(図1の(a)参照)を構成する材料よりも軟質で、かつ、貯留される液体によって腐食・劣化しないようなものであれば、特に制限はないが、例えば、液体が石油や重油である場合には、耐油性に優れたゴムや合成樹脂などを使用するとよい。耐油性のゴムには、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなどがある。また、例えば、液体が化学溶液である場合には、耐薬品性に優れたゴムや合成樹脂などを使用するとよい。
【0042】
なお、本実施形態では、外周形状が円形である棒状要素に対応して、内周形状が円形である緩衝材2を例示したが、緩衝材2の形態を限定する趣旨ではない。例えば、図示は省略するが、棒状要素の外周形状が多角形である場合には、緩衝材の内周形状を多角形にしてもよい。また、棒状要素が円形や多角形以外の形状である場合には、緩衝材の内周形状を棒状要素に適合する形状とすればよい。また、本実施形態では、リング状を呈する緩衝材2を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、C字状を呈する緩衝材であっても差し支えない。この場合にあっても、棒状要素の外周形状が円形で無い場合にあっては、それに合わせた形状とすればよい。
【0043】
図2に示す支持部材3は、減衰体Dの下端部を支持するものであり、本実施形態では、棒状要素である内周フレーム13と外周フレーム14とに取り付けられている。支持部材3は、V字状に配置された一対の斜材31,31と、この斜材31,31の先端部同士を連結する繋ぎ材32とを備えて構成されていて、棒状要素とともにトラス構造を形成している。なお、内周フレーム13に取り付けられる支持部材3は、放射方向に隣り合う二つの減衰体Dを支持し、外周フレーム14に取り付けられる支持部材3は、内周フレーム13と外周フレーム14との間にある一つの減衰体Dを支持するが、基本的な構成に差異はないので、以下では、内周フレーム13に取り付けられる支持部材3について詳細な説明を行うこととする。
【0044】
斜材31は、図7に示すように、接続される内周フレーム13を含む鉛直面に沿って配置されていて、かつ、内周フレーム13から斜め下方に向かって張り出している。斜材31は、両端に透孔を有する断面L字状の形材からなり、その上端部が内周フレーム13に接続され、下端部が繋ぎ材32に接続される。なお、内周フレーム13と斜材31とを接合するには、内周フレーム13の第二取付部13dと斜材31の上端部とを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0045】
繋ぎ材32は、放射方向フレーム12と内周フレーム13との接合部分の直下に配置されていて、本実施形態においては、減衰体Dの下端部と同じ高さに位置している。繋ぎ材32は、斜材31の下端部が接続される一対の第一接続部32a,32aと、この第一接続部32aから減衰体D,Dに向かって張り出す一対の第二接続部32b,32bと、を備えて構成されている。第二接続部32b,32bは、断面L字形の形材からなり、それぞれ減衰体Dに接続される。すなわち、放射方向に隣り合う減衰体D,Dが第二接続部32bによって連結される。第一接続部32aは、第二接続部32bとなる形材に溶接により固着された板状部材からなる。なお、斜材31と繋ぎ材32とを接合するには、斜材31の下端部と繋ぎ材32の第一接続部32aとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0046】
なお、本実施形態では、支持部材3で減衰体Dの下端部を支持する場合を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、減衰体Dの高さ方向の中間部を支持するものであっても差し支えない。
【0047】
図1の(b)に示すガイド部材4は、タンクTの内周面への接触による平面架構1の損傷やタンクTの内周面の損傷を防止するものであり、タンクTの内周面に対峙するように設置されている。ガイド部材4は、平面視多角形を呈する外周リング1bの角部(本実施形態では、周方向に隣り合う外周フレーム14,14の接合部分)に配置されている。図6を参照してより詳細に説明すると、ガイド部材4は、サンドイッチパネル41と、このサンドイッチパネル41の左右に取り付けられたブラケット42,42とを備えて構成されていて、周方向に隣り合う外周フレーム14,14の一方の第三取付部14eと他方の第三取付部14eとに架設されている。
【0048】
サンドイッチパネル41は、ハニカム状コア材または筒状体の集合体よりなるコア材41aと、この集合体を取り囲むように配置されたパネル枠41bと、これらを挟み込むように対向して配置された一対の面板41c,41cとを備えて構成されている。コア材41aと面板41c、41cとはろう付けあるいは接着されている。
【0049】
ブラケット42は、断面L字形を呈する形材からなり、溶接によりパネル枠41bに固着されている。
【0050】
ガイド部材4を平面架構1に取り付けるには、ブラケット42に設けられた透孔に外周フレーム14の第三取付部14eのボルト142を挿通させ、ナットで締結すればよい。
【0051】
図2に示す減衰体Dは、液体L(図1の(a)参照)の流速を減衰させるものであって、本実施形態では、棒状要素である放射方向フレーム12を含む鉛直面に沿って配置されている。減衰体Dは、放射方向フレーム12に吊設されるとともに、少なくとも一方の側部が支持部材3によって支持されている。
【0052】
なお、複数の放射方向フレーム12の総てに減衰体Dを吊設する必要はなく、一部の放射方向フレーム12に減衰体Dを吊設してもよい。また、本実施形態では、放射方向フレーム12に減衰体Dを吊設した場合を例示するが、減衰体Dの取付位置を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、放射方向フレーム12に代えてあるいは加えて、内周フレーム13や外周フレーム14に減衰体Dを吊設しても差し支えない。
【0053】
放射方向に隣り合う減衰体D,Dは、支持部材3の繋ぎ材32で連結されている。なお、図示は省略するが、周方向に隣り合う減衰体D,Dの下端部同士または高さ方向の中間部同士を形材や線材などで連結してもよい。
【0054】
減衰体Dは、図4に示すように、上下方向に連設された複数(本実施形態では二つ)の網ユニット5,5と、この網ユニット5,5を連結する吊材6,6とを備えて構成されている。
【0055】
網ユニット5は、図8に示すように、正面視長方形を呈する網状部材51と、この網状部材51を保持する矩形状の枠組52と、網状部材51を枠組52に押し付ける固定板53と、を備えて構成されている。
【0056】
網状部材51は、金網や孔あき板など多数の孔(開口)を有する面状の部材からなり、リベットにより枠組52に固着されている。
【0057】
枠組52は、網状部材51の外周縁に沿って配置されるものであり、縦枠材52a,52aと横枠材52b,52bとを備えて構成されている。縦枠材52aおよび横枠材52bは、それぞれ角パイプからなり、溶接により互いに接合されている。
【0058】
固定板53は、略三角形を呈する板状部材からなり、本実施形態では、網状部材51の四隅の各々に配置されていて、ボルト・ナットにより枠組52に固着されている。
【0059】
吊材6は、上下方向に隣り合う網ユニット5,5を連結するものであり、本実施形態では、網ユニット5,5の側端面に沿って配置されている。吊材6は、本実施形態では、断面L字形の形材からなり、ボルト・ナットにより枠組52の縦枠52aに固着される。図4に示すように、吊材6の上端部は、最上段の網ユニット5の上端部まで延出していて、放射方向フレーム12に接続される。放射方向フレーム12と吊材6とを接合するには、放射方向フレーム12の第一取付部12cと吊材6の上端部とを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。また、吊材6の下端部は、最下段の網ユニット5の下端部まで延出していて、支持部材3に接続される。支持部材3と吊材6とを接合するには、支持部材3の第二接続部32bと吊材6の下端部とを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0060】
次に、図9を参照して、スロッシング減衰装置を用いた既設タンクTの改修方法を説明しつつ、スロッシング減衰装置の構築方法を説明する。
【0061】
本実施形態に係る改修方法は、浮き屋根Rを備える既設のタンクTの内部に、スロッシング減衰装置を構築することで、タンクTの耐震性を向上させるものであり、浮き屋根降下工程と、資材搬入工程と、組立工程とを含むものである。
【0062】
浮き屋根降下工程は、図9の(a)に示すように、タンクTに貯留された液体を排出して浮き屋根Rを下降させ、浮き屋根RとタンクTの底面との間に作業空間Kを確保する工程である。
【0063】
資材搬入工程は、図9の(b)に示すように、タンクTに設けられた図示せぬ点検口から作業空間Kの内部にスロッシング減衰装置を構成する部材を小分けにして搬入する工程である。すなわち、資材搬入工程は、図2に示す複数の棒状要素(放射方向フレーム12、内周フレーム13、外周フレーム14)、支持部材3、減衰体Dなどを搬入する工程である。なお、緩衝材2は、工場等において予め棒状要素に環装しておくとよい。
【0064】
組立工程は、作業空間Kの内部で複数の棒状要素を組み合わせてタンクTの底面と略平行な平面架構1を構築するとともに、棒状要素に減衰体Dを取り付けるなどして、浮き屋根Rの下側にスロッシング減衰装置を構築する工程である。
【0065】
このような手順で既設タンクを改修すれば、浮き屋根Rを撤去せずとも、浮き屋根Rの下側にスロッシング減衰装置を構築することができるので、改修工事を小規模なものにすることが可能となる。
【0066】
ここで、前記した組立工程(すなわち、スロッシング減衰装置の構築方法)を詳細に説明する。
【0067】
作業空間Kに複数の棒状要素(放射方向フレーム12、内周フレーム13、外周フレーム14)を搬入したら、これらをボルト・ナットにより互いに接合して、図1の(b)に示すような平面架構1を組み立てる。棒状要素同士を接合する際には、図2に示すように、第一取付部12cや第二取付部13d,14dなどを下にする必要があるので、棒状要素に支持部材3や吊材6を取り付けて仮の支柱とし、棒状要素を宙に浮かせた状態にするとよい(図9の(c)参照)。なお、浮き屋根Rの中心部に支柱R1がある場合には、図10の(a)に示すように、中心部材11をリング構成材11A,11Aに分割した状態で搬入し、その後、図10の(b)に示すように、支柱R1をリング構成材11A,11Aで抱囲しつつこれらを互いに接合するとよい。このようにすると、支柱R1を持ち上げなくとも、リング状の中心部材11を支柱R1に環装することができるので、改修工事を小規模なものにすることが可能になる。
【0068】
その後、ガイド部材4を平面架構1に取り付けるとともに(図1の(b)参照)、網ユニット5を吊材6に取り付けると(図2参照)、スロッシング減衰装置の構築が完了する。
【0069】
以上説明した本実施形態に係るスロッシング減衰装置によれば、図2などに示したように、緩衝材2をリング状にして棒状要素に環装したので、緩衝材2が棒状要素から脱落する可能性が極めて小さくなり、ひいては、浮き屋根Rとの接触による平面架構1の損傷を長期間に亘って防止することが可能となる。特に、緩衝材2を完全なリング状としているので、引きちぎる等しない限り棒状要素から脱落することがない。また、接着剤やボルトなどを使用せずとも、棒状要素にしっかりと緩衝材2を固定することが可能となるので、部品点数と組付工数とを削減することが可能となり、ひいては、スロッシング減衰装置の製作コストを削減することが可能となる。
【0070】
加えて、本実施形態に係るスロッシング減衰装置によれば、以下のような有用な効果を奏する。
平面架構1を複数の棒状要素に分解することが可能となるので、搬入経路が狭小な場合であっても、容易に搬入することが可能となる。
【0071】
中心部材11を介して複数の放射方向フレーム12,12,…を連結することで、平面架構1の中心部における剛性・強度を向上させたので、液体Lの流動抵抗によって発生する平面架構1の変形や歪みを防止することが可能となる。
【0072】
複数の内周フレーム13,13,…からなる内周リング1aと複数の外周フレーム14,14,…からなる外周リング1bとで複数の放射方向フレーム12,12,…を連結したので、減衰体Dに大きな液圧が作用したとしても、放射方向フレーム12,12,…の周方向の間隔を一定に保持することが可能となる。
【0073】
放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14を両端が閉塞されたアルミニウム合金製の中空パイプで構成したので、平面架構1が軽量になり、加えて、放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14が「浮き」として機能することになるので、スロッシング減衰装置に浮力を与える部材を省略あるいは削減することが可能となる。
【0074】
フロート構造体Fに支持部材3が備わっているので、減衰体Dをしっかりと保持することが可能となり、その結果、減衰体Dに作用する流動抵抗が大きい場合であっても、流体の流速を確実に減衰させることが可能となる。特に、本実施形態においては、支持部材3が、V字状に配置された一対の斜材31,31を備えて構成されていて、棒状要素(内周フレーム13)とともにトラス構造を形成しているので、減衰体Dをより一層しっかりと保持することが可能となる。
【0075】
放射方向に沿って配置された複数の放射方向フレーム12,12,…の各々に減衰体Dを配置したので、振動方向が変わっても、スロッシングを減衰させることが可能となる。
【0076】
図1の(b)に示したように、平面架構1の外側にガイド部材4を配置したので、タンクTの内周面への接触による平面架構1の損傷を防止することが可能となる。しかも、ハニカム状コア材または筒状体の集合体よりなるコア材41aの集合体を内包するサンドイッチパネル41を利用しているので、フロート構造体Fの重量の増加を最小限に抑えることが可能となる。
【0077】
なお、前記したスロッシング減衰装置の構成は、適宜変更しても差し支えない。
例えば、図1の(b)に示す平面架構1においては、内周リング1aの角部(すなわち、内周フレーム13,13の接合部)および外周リング1bの角部(すなわち、外周フレーム14,14の接合部)を、周方向に隣り合う放射方向フレーム12,12の間に位置させていたが、図11の(a)に示す平面架構101のように、内周リング101aの角部および外周リング101bの角部の位置を、放射方向フレーム12と一致させてもよい。このようにすると、平面架構101に、棒状要素を平面視三角形状に組み合わせてなるトラス構造が形成されることになるので、トラス構造のない平面架構1(図1の(b)参照)に比べて剛性・強度が向上し、平面架構101に変形や撓みが生じ難くなる。
【0078】
なお、図11の(a)の平面架構101も、中心部材11と、この中心部材11を中心にして放射状に配置された複数の放射方向フレーム12,12,…と、この放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように配置された複数の外周フレーム14,14,…と、この外周フレーム14,14,…の内周側において中心部材11を取り囲むように配置された複数の内周フレーム13,13,…を備えて構成されているが、中心部材11と外周フレーム14との間に亘る一本の放射方向フレーム12が配置されている点と、周方向に隣り合う内周フレーム13,13が放射方向フレーム12を介して連結されている点が前記した平面架構1(図1の(b)参照)と相違する。
【0079】
また、図1の(b)に示す平面架構1においては、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数を中心部材11の辺の数と同数としたが、これに限定されることはなく、例えば、図11の(b)に示す平面架構201のように、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数を中心部材11の辺の数よりも多くしてもよい。図11の(b)においては、平面架構201では、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数を中心部材11の辺の数の2倍としている。なお、平面架構201では、平面視多角形を呈する中心部材11の辺の中央部と角部とに放射方向フレーム12を接続している。
【0080】
また、図1の(a)に示す平面架構1および図11の(a)に示す平面架構101においては、内周リング1a,101aの一辺を、一本の内周フレーム13で構成したが、図11の(b)に示す平面架構201では、複数(図示のものは二本)の内周フレーム13で内周リング201aの一辺を構成している。
【0081】
また、図1の(a)に示す平面架構1においては、内周リング1aが一つである場合を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、内周リング1aを省略してもよいし、あるいは、図12に示す平面架構301のように、二以上の内周リング301aを配置しても差し支えない。
【0082】
なお、液面と浮き屋根Rとの間に空間が形成されると、液体Lが気化して前記した空間に充満することになるので、液体Lが引火性である場合などにおいては、浮き屋根Rを常に液面に密着させておく必要があるが、減衰体Dを棒状要素に吊設する場合には、減衰体Dの下端がタンクTの底面に当接した段階で、浮き屋根Rおよびスロッシング減衰装置の下方向への移動が規制され、これ以上液体Lを減少させると、液面と浮き屋根Rとの間に空間が形成されてしまうので、タンクTの底部に貯まった液体Lを活用できない場合がある。このような場合には、図13に示す減衰体D’のように、高さ寸法を調節可能にしておけば、より下方までスロッシング減衰装置を降下させることができるので、タンクTの底部に貯留された液体を有効に活用することが可能となる。
【0083】
減衰体D’は、図13の(a)に示すように、上側網ユニット105と下側網ユニット205とを備えて構成されていて、棒状要素である放射方向フレーム12に吊設されている。
【0084】
上側網ユニット105は、図14の(a)に示すように、正面視長方形を呈する網状部材51(図8参照)と、この網状部材51を保持する一対のガイド枠材54,54と、網状部材51をガイド枠材54に押し付ける固定板55と、を備えて構成されている。
【0085】
ガイド枠材54は、他方のガイド枠材54と対向する面が開口したガイド溝54aを有するものであり、本実施形態では、断面リップ溝形の形材を利用して構成されている。なお、図13の(a)に示すように、ガイド枠材54の上端面には、放射方向フレーム12に接続される接続部54bが突設されている。
【0086】
固定板55は、図14の(a)に示すように、ガイド枠材54の正面に沿って配置されていて、リベット等によりガイド枠材54に固着されている。
【0087】
下側網ユニット205は、図14の(b)に示すように、正面視長方形を呈する網状部材51と、この網状部材51を保持する左右一対のスライド枠材56,56と、このスライド枠材56,56の下端部同士を連結する下枠材57とを備えて構成されている。
【0088】
スライド枠材56は、ガイド枠材54のガイド溝54aの内部を上下方向(図14の(b)では紙面垂直方向)にスライド可能なスライド部56aと、このスライド部56aの他方のスライド枠材56と対向する面に突設された一対の挟持部56b,56bとを備えて構成されている。挟持部56bは、網状部材51を挟持するものであり、本実施形態では、断面L字形の形材からなり、リベット等によりスライド部56aに固着されている。
【0089】
なお、図13の(a)および(b)に示すように、減衰体D’の下端部も、V字状に配置された一対の斜材33,33を具備する支持部材103によって支持されているが、斜材33は、屈曲可能な線状部材にて構成されている。なお、屈曲可能な線状部材には、例えば、鋼、炭素繊維、合成樹脂などからなる単線、より線(ストランド)、ロープ、鎖などが含まれる。
【0090】
そして、スロッシング減衰装置が下降して減衰体D’の下端(すなわち、下側網ユニット205の下端面)がタンクTの底面に当接すると、上側網ユニット105のガイド溝54a(図14の(a)参照)に下側網ユニット205のスライド部56a(図14の(b)参照)が入り込み、最終的には、図13の(b)に示すように、上側網ユニット105の内部に下側網ユニット205が収容されるので、平面架構1をタンクTの底面に近づけることが可能となり、ひいては、タンクTの底部に貯留された液体を有効に活用することが可能となる。なお、斜材33は、屈曲可能な線状部材で構成されているので、下側網ユニット205の上側網ユニット105への入り込みを阻害することはない。
【0091】
液面の上昇に伴ってスロッシング減衰装置が上昇する際には、下側網ユニット205がその自重によって上側網ユニット105から抜け出し、自動的に図13の(a)の状態に復元する。
【0092】
なお、本実施形態では、複数の網ユニット(本実施形態では上側網ユニット105と下側網ユニット205)を上下方向にスライド可能に連設することで、高さ寸法を調節可能な減衰体D’を形成したが、高さ寸法を調節可能な減衰体の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、例えば、複数の網ユニットを折り畳み可能に連設することでも、高さ寸法を調節可能な減衰体を形成することができる。
【符号の説明】
【0093】
F フロート構造体
D 減衰体
1 平面架構
11 中心部材
12 放射方向フレーム
12a 中空パイプ
13 内周フレーム(周方向フレーム)
13a 中空パイプ
14 外周フレーム(周方向フレーム)
14a 中空パイプ
2 緩衝材
3 支持部材
31,33 斜材
4 ガイド部材
41 サンドイッチパネル
41a 筒状コア
T タンク
R 浮き屋根
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設タンクの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所に設置されている石油タンクや化学プラントなどに設置されている貯留タンクに地震力が作用すると、タンク内に貯留されている液体(石油、原油、溶液など)にスロッシングが発生することがある。
【0003】
スロッシングの規模が大きくなると、液体の漏れやタンクの破壊などを招来する虞があることから、例えば特許文献1などに開示されているように、タンクの内部にスロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を設置する場合がある。
【0004】
特許文献1のスロッシング減衰装置は、液面を覆う浮き屋根の下側に配置されるフロート構造体と、液体の流速を減衰させる減衰体とを備えて構成されている。フロート構造体は、平面視格子状や放射状に組み合わされた複数の棒状要素を備えて構成されている。また、減衰体は、孔あき板や金網などからなる網状部材を備えて構成されていて、フロート構造体に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−8148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のスロッシング減衰装置は、新設タンクにも既設タンクにも適用することができるが、既設タンクに適用する場合には、浮き屋根を一旦撤去する必要があることから、改修工事が大規模なものになってしまう。
【0007】
このような観点から、本発明は、改修工事を小規模にすることが可能な既設タンクの改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために創案された本発明に係る既設タンクの改修方法は、浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する屋根降下工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
前記した課題を解決するために創案された本発明に係る他の既設タンクの改修方法は、浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数のリング構成材と複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備するものであり、前記組立工程では、前記浮き屋根の中心部に設けられた支柱を前記複数のリング構成材で抱囲しつつ前記リング構成材同士を接合することで中心部材を形成し、前記支柱を中心にして放射状に配置した複数の前記棒状要素を前記中心部材に接合し、前記中心部材に接合された前記棒状要素に前記減衰体を取り付ける、ことを特徴とする。
【0010】
前記した課題を解決するために創案された本発明に係るさらに他の既設タンクの改修方法は、浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素の下側に一対の斜材をV字状に配置して支持部材を構築し、前記減衰体の上端部を前記棒状要素に取り付け、前記減衰体の下端部を前記支持部材に取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
このような手順で既設タンクを改修すれば、浮き屋根を撤去せずとも、浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築することができるので、改修工事を小規模なものにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る既設タンクの改修方法によると、改修工事を小規模にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る既設タンクの改修方法によって構築されるスロッシング減衰装置を示す断面図、(b)は平面図である。
【図2】スロッシング減衰装置の拡大斜視図である。
【図3】(a)は平面架構の中心部を示す拡大斜視図、(b)は中心部材の分解斜視図である。
【図4】スロッシング減衰装置の拡大分解斜視図である。
【図5】(a)は放射方向フレームの分解斜視図、(b)は周方向フレームの分解斜視図である。
【図6】平面架構の外縁部を示す拡大断面図である。
【図7】支持部材を示す拡大斜視図である。
【図8】減衰体を示す分解斜視図である。
【図9】(a)〜(c)は本発明の実施形態に係る既設タンクの改修方法を説明するための模式図である。
【図10】(a)および(b)は中心部材の組み立て方法を説明するための平面図である。
【図11】(a)および(b)は平面架構の変形例を示す平面図である。
【図12】平面架構の他の変形例を示す平面図である。
【図13】(a)は減衰体および支持部材の変形例を示す断面図、(b)は畳まれた状態の減衰体を示す断面図である。
【図14】(a)は図13の(a)のア−ア線断面図、(b)は図13の(a)のイ−イ線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係るスロッシング減衰装置は、図1の(a)に示すように、タンクTに貯留された液体Lを覆う浮き屋根Rの下側に配置されるものであって、フロート構造体Fと、減衰体Dとを備えて構成されていて、液体Lの増減に伴って上下に移動する。
【0015】
フロート構造体Fは、減衰体Dを保持するものであって、本実施形態では、液体Lからの浮力によって、液体Lの上層部に浮遊している。フロート構造体Fは、図1の(b)に示すように、複数の棒状要素を組み合わせてなる平面架構1と、棒状要素に取り付けられた緩衝材2(図2参照)と、棒状要素から下方に向かって伸びる支持部材3(図2参照)と、平面架構1の外側に配置されたガイド部材4と、を備えて構成されている。なお、フロート構造体Fは、浮き屋根Rの下面に当接した状態で液体Lの上層部に浮遊するものでも差し支えないし、浮き屋根Rの下面から離れた状態で液体Lの上層部に浮遊するものでも差し支えない。
【0016】
平面架構1は、中心部材11を中心にして複数の棒状要素を組み合わせて構成した平面的な骨組構造体であり、その構面は、通常時においては、タンクTの底面と略平行になっている(図1の(b)参照)。複数の棒状要素には、平面架構1の中央部から外縁へ向かう方向(以下、「放射方向」という。)に沿って配置された複数の放射方向フレーム12,12,…と、中心部材11の外周側において平面視多角形状を成すように配置された複数の第一の周方向フレーム13,13,…と、平面架構1の外縁において平面視多角形状を成すように配置された複数の第二の周方向フレーム14,14,…と、が含まれている。なお、以下の説明においては、第一の周方向フレーム13を「内周フレーム13」と称し、第二の周方向フレーム14を「外周フレーム14」と称することとする。
【0017】
すなわち、平面架構1は、中心部材11と、この中心部材11を中心にして放射状に配置された複数の放射方向フレーム12,12,…と、この放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように配置された複数の外周フレーム14,14,…と、この外周フレーム14,14,…の内周側において中心部材11を取り囲むように配置された複数の内周フレーム13,13,…を備えて構成されている。
【0018】
中心部材11は、平面架構1の中央部に配置される部材であり、その周囲に位置する複数(本実施形態では八つ)の放射方向フレーム12,12,…を連結している。図2にも示すように、中心部材11は、平面視多角形を呈しており、各辺の中央部に放射方向フレーム12の端部が接合されている。図3の(a)に示すように、中心部材11は、平面視多角形を呈する環状部11aと、環状部11aの外周側に突出する複数の接続部11b,11b,・・・とを備えて構成されている。環状部11aは、外側に開口する断面溝形を呈している。接続部11bは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により環状部11aの溝部に固着されている。なお、本実施形態では、中心部材11の平面形状を、これに接続される放射方向フレーム12の数と同数の辺を有する正多角形(本実施形態では正八角形)としたが、これに限定されることはなく、放射方向フレーム12の数よりも多数あるいは少数の辺を有する多角形としてもよいし、円形としても差し支えない。
【0019】
中心部材11は、図3の(b)に示すように、略C字状を呈する二つのリング構成材11A,11Aからなる。すなわち、中心部材11は、分割可能に構成されている。ちなみに、二つのリング構成材11A,11Aの境界部分に位置する接続部11bについては、一方のリング構成材11Aの端部に設けられたた板状部材と他方のリング構成材11Aの端部に設けられた板状部材とで構成される。なお、図示は省略するが、中心部材11を三以上のリング構成材に分割可能に構成しても差し支えない。
【0020】
放射方向フレーム12は、図1の(b)に示すように、中心部材11の中心を通る直線に沿って配置される。放射方向に隣り合う放射方向フレーム12,12同士は、本実施形態では、中心部材11または内周フレーム13を介して互いに連結されている。なお、放射方向フレーム12には、中心部材11と内周フレーム13との間に配置されるものと、内周フレーム13と外周フレーム14との間に配置されるものとがあるが、どちらも同様の構成を具備しているので、以下では、中心部材11と内周フレーム13との間に配置される放射方向フレーム12について説明する。
【0021】
中心部材11に接続される複数の放射方向フレーム12,12,…は、周方向に等間隔に配置されている。すなわち、周方向に隣り合う放射方向フレーム12,12がなす角度は、総て同じになっている。
【0022】
放射方向フレーム12は、図4に示すように、内部に密閉された中空空間が形成されている本体部12aと、この本体部12aの端面に突設された継手部12bと、本体部12aの周面に突設された第一取付部12cとを備えて構成されている。
【0023】
本体部12aは、図5の(a)に示すように、円筒状を呈する中空パイプ121と、この中空パイプ121の両端部を閉塞する閉塞板122,122とを備えて構成されている。すなわち、放射方向フレーム12は、両端が閉塞された中空パイプ121を備えている。中空パイプ121は、アルミニウム合金製の押出形材からなり、閉塞板122は、全周溶接により中空パイプ121の端部に固着されている。
【0024】
継手部12bは、放射方向フレーム12の長手方向に隣接する他の部材(図4に示す中心部材11や内周フレーム13など)に接続される部位である。継手部12bは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により閉塞板122に固着される。図4に示すように、中心部材11と放射方向フレーム12とを接合するには、中心部材11の接続部11bと放射方向フレーム12の継手部12bとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0025】
第一取付部12cは、減衰体Dが接続される部位であり、本実施形態では、本体部12aの下面に突設されている。取付部12cは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により本体部12aの周面に固着されている。第一取付部12cの位置や数に特に制限はないが、本実施形態では、本体部12aの両端部の各々に一つずつ配置されている。
【0026】
なお、本実施形態では、円筒状の中空パイプ121(図5の(a)参照)を利用して形成した放射方向フレーム12を例示したが、放射方向フレーム12の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、多角筒状の中空パイプを利用して放射方向フレーム12を形成してもよいし、中実な円柱状または多角柱状を呈する形材を利用して放射方向フレーム12を形成してもよく、さらには、断面H形や断面I形を呈する形材を利用して放射方向フレーム12を形成しても差し支えない。
【0027】
内周フレーム13,13,…は、図1の(b)に示すように、互いに接合されて平面視多角形を呈する中間リング1aを形成している。すなわち、周方向に隣り合う内周フレーム13,13(すなわち、多角形の隣接する二辺となる内周フレーム13,13)は、斜交した状態で接合され、多角形の角部を形成する。中間リング1aは、中心部材11に接続される放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように形成される。中間リング1aの平面形状は、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数と同数の辺を有する正多角形を呈している。すなわち、中間リング1aの平面形状は、中心部材11の平面形状と相似の関係にある。
【0028】
内周フレーム13は、図2にも示すように、一直線上に並ぶ放射方向フレーム12,12と直角に交差(十字状に交差)するように配置されている。図4に示すように、内周フレーム13は、内部に密閉された中空空間が形成されている本体部13aと、この本体部13aの端面に突設された継手部13bと、本体部13aの周面に突設された連結部13cと、同じく本体部13aの周面に突設された第二取付部13dと、を備えて構成されている。
【0029】
本体部13aは、図5の(b)に示すように、円筒状を呈する中空パイプ131と、この中空パイプ131の両端部を閉塞する閉塞板132,132とを備えて構成されている。すなわち、内周フレーム13は、両端が閉塞された中空パイプ131を備えている。中空パイプ131は、アルミニウム合金製の押出形材からなり、閉塞板132は、全周溶接により中空パイプ131の端部に固着される。
【0030】
継手部13bは、隣接する他の内周フレーム13に接続される部位である。継手部13bは、透孔を有する板状部材からなり、溶接により閉塞板132に固着される。継手部13bは、隣接する他の内周フレーム13と斜交した状態で接合できるように屈曲している。なお、周方向に隣り合う内周フレーム13,13を接合するには、図4に示すように、一方の継手部13bと他方の継手部13bとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0031】
連結部13cは、放射方向フレーム12が接続される部位であり、本実施形態では、本体部13aの中央部の側面に突設されている。連結部13cは、本実施形態では、透孔を有する板状部材からなり、溶接により本体部13aの周面に固着されている。連結部13cには、中心部材11に向かって突出するものと、その反対側に向かって突出するものとがあるが、二つの連結部13c,13cは、一直線上に配置されている。なお、放射方向フレーム12と内周フレーム13とを接合するには、放射方向フレーム12の継手部12bと内周フレーム13の連結部13cとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0032】
第二取付部13dは、支持部材3が接続される部位であり、本実施形態では、本体部13aの下面に突設されている。第二取付部13dは、本実施形態では、透孔を有する板状部材からなり、溶接により本体部13aの周面に固着されている。なお、一対の第二取付部13d、13dは、本体部13aの中心軸線を含む鉛直面内に配置されている。また、各第二取付部13dは、連結部13c,13cと継手部13bの間に位置している。
【0033】
なお、本実施形態では、円筒状の中空パイプ131(図5の(b)参照)を利用して形成した内周フレーム13を例示したが、内周フレーム13の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、多角筒状の中空パイプを利用して内周フレーム13を形成してもよいし、中実な円柱状または多角柱状を呈する形材を利用して内周フレーム13を形成してもよく、さらには、断面H形や断面I形を呈する形材を利用して内周フレーム13を形成しても差し支えない。
【0034】
外周フレーム14,14,…は、図1の(b)に示すように、平面架構1の輪郭を形成するものであって、互いに接合されて平面視多角形を呈する外周リング1bを形成している。すなわち、周方向に隣り合う外周フレーム14,14(すなわち、多角形の隣接する二辺となる内周フレーム14,14)は、斜交した状態で接合され、多角形の角部を形成する。外周リング1bは、中間リング1aの外周側に接続される放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように配置される。外周リング1bの平面形状は、中間リング1aの外周側に接続される放射方向フレーム12の数の2倍の辺を有する正多角形を呈している。
【0035】
外周フレーム14には、放射方向フレーム12が接続されるものと、放射方向フレーム12が接続されないものとがある。放射方向フレーム12が接続される外周フレーム14は、放射方向フレーム12と直角に交差(T字状に交差)するように配置されている。なお、二種類の外周フレーム14は、どちらも同様の構成を具備しているので、以下では、放射方向フレーム12が接続される外周フレーム14について説明する。
【0036】
外周フレーム14は、図2に示すように、内部に密閉された中空空間が形成されている本体部14aと、この本体部14aの端面に突設された継手部14bと、本体部14aの周面に突設された連結部14cと、同じく本体部14aの周面に突設された第二取付部14dと、同じく本体部14aの周面に突設された第三取付部14eとを備えて構成されている。なお、本体部14a、継手部14bおよび第二取付部14cの構成は、それぞれ前記した内周フレーム13の本体部13a、継手部13bおよび第二取付部13cと同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0037】
第三取付部14eは、図6に示すように、ガイド部材4が接続される部位であり、本実施形態では、本体部14aの外周側の側面に突設されている。第三取付部14eは、取付座141と、ボルト142と、抜け止材143とを備えて構成されている。取付座141は、箱状を呈しており、溶接により本体部14aの周面に固着されている。ボルト142の頭部は、取付座141の内部にあり、軸部は、取付座141の先端面に設けられた図示せぬ長孔から突出している。抜け止材143は、取付座141の内部に固着されており、ボルト142の頭部に当接して、ボルト142の脱落を防止する。
【0038】
なお、本実施形態では、円筒状の中空パイプを利用して形成した外周フレーム14を例示したが、外周フレーム14の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、多角筒状の中空パイプを利用して外周フレーム14を形成してもよいし、中実な円柱状または多角柱状を呈する形材を利用して外周フレーム14を形成してもよく、さらには、断面H形や断面I形を呈する形材を利用して外周フレーム14を形成しても差し支えない。
【0039】
なお、放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14の総てを中実の形材で形成した場合には、フロート構造体の浮力を得るための別体のフロート(浮き)を配設する必要がある。また、複数の棒状要素(放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14)の一部を中空状とし、残りを中実とする場合には、フロート構造体の全体を浮遊させるのに必要な浮力が得られるように、中空状の棒状要素(すなわち、密閉された中空空間を有する棒状要素)の本数および各中空空間の体積を設定する必要があり、さらには、フロート構造体の全体がバランスよく液面に浮かぶように(すなわち、フロート構造体の一部ないし全部が液体内に沈まないように)、中空状の棒状要素をバランスよく配置する必要がある。例えば、総ての放射状フレーム12を中空状とするか、あるいは、内周フレーム13および外周フレーム14を中空状とするとバランスがよい。
【0040】
図2に示す緩衝材2は、浮き屋根R(図1の(a)参照)との接触による平面架構1の損傷を防止するものであって、棒状要素である放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14に環装されている。すなわち、緩衝材2は、地震により液面が揺れた際に、金属性の各フレーム材12,13,14と金属性の浮き屋根Rとが直接衝突することを防ぐものであり、直接的な衝突による損傷を防ぐ等の目的で取り付けられている。図5の(a)および(b)に示すように、緩衝材2は、前記した棒状要素の外径と略等しい内径を備えるリング状に成形されていて、前記した棒状要素に外嵌される。すなわち、本実施形態では、棒状要素に外嵌できるように、緩衝材2の内周形状が棒状要素の外周形状と略等しくなっている。
【0041】
緩衝材2の位置や数などに特に制限はないが、本実施形態では、一つの棒状要素につき四つの緩衝材2が環装されている。四つの緩衝材2,2,…は、等間隔に配置される(図4参照)。緩衝材2の材質は、棒状要素を構成する材料(本実施形態ではアルミニウム合金)や浮き屋根R(図1の(a)参照)を構成する材料よりも軟質で、かつ、貯留される液体によって腐食・劣化しないようなものであれば、特に制限はないが、例えば、液体が石油や重油である場合には、耐油性に優れたゴムや合成樹脂などを使用するとよい。耐油性のゴムには、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなどがある。また、例えば、液体が化学溶液である場合には、耐薬品性に優れたゴムや合成樹脂などを使用するとよい。
【0042】
なお、本実施形態では、外周形状が円形である棒状要素に対応して、内周形状が円形である緩衝材2を例示したが、緩衝材2の形態を限定する趣旨ではない。例えば、図示は省略するが、棒状要素の外周形状が多角形である場合には、緩衝材の内周形状を多角形にしてもよい。また、棒状要素が円形や多角形以外の形状である場合には、緩衝材の内周形状を棒状要素に適合する形状とすればよい。また、本実施形態では、リング状を呈する緩衝材2を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、C字状を呈する緩衝材であっても差し支えない。この場合にあっても、棒状要素の外周形状が円形で無い場合にあっては、それに合わせた形状とすればよい。
【0043】
図2に示す支持部材3は、減衰体Dの下端部を支持するものであり、本実施形態では、棒状要素である内周フレーム13と外周フレーム14とに取り付けられている。支持部材3は、V字状に配置された一対の斜材31,31と、この斜材31,31の先端部同士を連結する繋ぎ材32とを備えて構成されていて、棒状要素とともにトラス構造を形成している。なお、内周フレーム13に取り付けられる支持部材3は、放射方向に隣り合う二つの減衰体Dを支持し、外周フレーム14に取り付けられる支持部材3は、内周フレーム13と外周フレーム14との間にある一つの減衰体Dを支持するが、基本的な構成に差異はないので、以下では、内周フレーム13に取り付けられる支持部材3について詳細な説明を行うこととする。
【0044】
斜材31は、図7に示すように、接続される内周フレーム13を含む鉛直面に沿って配置されていて、かつ、内周フレーム13から斜め下方に向かって張り出している。斜材31は、両端に透孔を有する断面L字状の形材からなり、その上端部が内周フレーム13に接続され、下端部が繋ぎ材32に接続される。なお、内周フレーム13と斜材31とを接合するには、内周フレーム13の第二取付部13dと斜材31の上端部とを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0045】
繋ぎ材32は、放射方向フレーム12と内周フレーム13との接合部分の直下に配置されていて、本実施形態においては、減衰体Dの下端部と同じ高さに位置している。繋ぎ材32は、斜材31の下端部が接続される一対の第一接続部32a,32aと、この第一接続部32aから減衰体D,Dに向かって張り出す一対の第二接続部32b,32bと、を備えて構成されている。第二接続部32b,32bは、断面L字形の形材からなり、それぞれ減衰体Dに接続される。すなわち、放射方向に隣り合う減衰体D,Dが第二接続部32bによって連結される。第一接続部32aは、第二接続部32bとなる形材に溶接により固着された板状部材からなる。なお、斜材31と繋ぎ材32とを接合するには、斜材31の下端部と繋ぎ材32の第一接続部32aとを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0046】
なお、本実施形態では、支持部材3で減衰体Dの下端部を支持する場合を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、減衰体Dの高さ方向の中間部を支持するものであっても差し支えない。
【0047】
図1の(b)に示すガイド部材4は、タンクTの内周面への接触による平面架構1の損傷やタンクTの内周面の損傷を防止するものであり、タンクTの内周面に対峙するように設置されている。ガイド部材4は、平面視多角形を呈する外周リング1bの角部(本実施形態では、周方向に隣り合う外周フレーム14,14の接合部分)に配置されている。図6を参照してより詳細に説明すると、ガイド部材4は、サンドイッチパネル41と、このサンドイッチパネル41の左右に取り付けられたブラケット42,42とを備えて構成されていて、周方向に隣り合う外周フレーム14,14の一方の第三取付部14eと他方の第三取付部14eとに架設されている。
【0048】
サンドイッチパネル41は、ハニカム状コア材または筒状体の集合体よりなるコア材41aと、この集合体を取り囲むように配置されたパネル枠41bと、これらを挟み込むように対向して配置された一対の面板41c,41cとを備えて構成されている。コア材41aと面板41c、41cとはろう付けあるいは接着されている。
【0049】
ブラケット42は、断面L字形を呈する形材からなり、溶接によりパネル枠41bに固着されている。
【0050】
ガイド部材4を平面架構1に取り付けるには、ブラケット42に設けられた透孔に外周フレーム14の第三取付部14eのボルト142を挿通させ、ナットで締結すればよい。
【0051】
図2に示す減衰体Dは、液体L(図1の(a)参照)の流速を減衰させるものであって、本実施形態では、棒状要素である放射方向フレーム12を含む鉛直面に沿って配置されている。減衰体Dは、放射方向フレーム12に吊設されるとともに、少なくとも一方の側部が支持部材3によって支持されている。
【0052】
なお、複数の放射方向フレーム12の総てに減衰体Dを吊設する必要はなく、一部の放射方向フレーム12に減衰体Dを吊設してもよい。また、本実施形態では、放射方向フレーム12に減衰体Dを吊設した場合を例示するが、減衰体Dの取付位置を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、放射方向フレーム12に代えてあるいは加えて、内周フレーム13や外周フレーム14に減衰体Dを吊設しても差し支えない。
【0053】
放射方向に隣り合う減衰体D,Dは、支持部材3の繋ぎ材32で連結されている。なお、図示は省略するが、周方向に隣り合う減衰体D,Dの下端部同士または高さ方向の中間部同士を形材や線材などで連結してもよい。
【0054】
減衰体Dは、図4に示すように、上下方向に連設された複数(本実施形態では二つ)の網ユニット5,5と、この網ユニット5,5を連結する吊材6,6とを備えて構成されている。
【0055】
網ユニット5は、図8に示すように、正面視長方形を呈する網状部材51と、この網状部材51を保持する矩形状の枠組52と、網状部材51を枠組52に押し付ける固定板53と、を備えて構成されている。
【0056】
網状部材51は、金網や孔あき板など多数の孔(開口)を有する面状の部材からなり、リベットにより枠組52に固着されている。
【0057】
枠組52は、網状部材51の外周縁に沿って配置されるものであり、縦枠材52a,52aと横枠材52b,52bとを備えて構成されている。縦枠材52aおよび横枠材52bは、それぞれ角パイプからなり、溶接により互いに接合されている。
【0058】
固定板53は、略三角形を呈する板状部材からなり、本実施形態では、網状部材51の四隅の各々に配置されていて、ボルト・ナットにより枠組52に固着されている。
【0059】
吊材6は、上下方向に隣り合う網ユニット5,5を連結するものであり、本実施形態では、網ユニット5,5の側端面に沿って配置されている。吊材6は、本実施形態では、断面L字形の形材からなり、ボルト・ナットにより枠組52の縦枠52aに固着される。図4に示すように、吊材6の上端部は、最上段の網ユニット5の上端部まで延出していて、放射方向フレーム12に接続される。放射方向フレーム12と吊材6とを接合するには、放射方向フレーム12の第一取付部12cと吊材6の上端部とを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。また、吊材6の下端部は、最下段の網ユニット5の下端部まで延出していて、支持部材3に接続される。支持部材3と吊材6とを接合するには、支持部材3の第二接続部32bと吊材6の下端部とを重ね合わせたうえで、これらに設けられた透孔にボルトを挿通し、ナットで締結すればよい。
【0060】
次に、図9を参照して、スロッシング減衰装置を用いた既設タンクTの改修方法を説明しつつ、スロッシング減衰装置の構築方法を説明する。
【0061】
本実施形態に係る改修方法は、浮き屋根Rを備える既設のタンクTの内部に、スロッシング減衰装置を構築することで、タンクTの耐震性を向上させるものであり、浮き屋根降下工程と、資材搬入工程と、組立工程とを含むものである。
【0062】
浮き屋根降下工程は、図9の(a)に示すように、タンクTに貯留された液体を排出して浮き屋根Rを下降させ、浮き屋根RとタンクTの底面との間に作業空間Kを確保する工程である。
【0063】
資材搬入工程は、図9の(b)に示すように、タンクTに設けられた図示せぬ点検口から作業空間Kの内部にスロッシング減衰装置を構成する部材を小分けにして搬入する工程である。すなわち、資材搬入工程は、図2に示す複数の棒状要素(放射方向フレーム12、内周フレーム13、外周フレーム14)、支持部材3、減衰体Dなどを搬入する工程である。なお、緩衝材2は、工場等において予め棒状要素に環装しておくとよい。
【0064】
組立工程は、作業空間Kの内部で複数の棒状要素を組み合わせてタンクTの底面と略平行な平面架構1を構築するとともに、棒状要素に減衰体Dを取り付けるなどして、浮き屋根Rの下側にスロッシング減衰装置を構築する工程である。
【0065】
このような手順で既設タンクを改修すれば、浮き屋根Rを撤去せずとも、浮き屋根Rの下側にスロッシング減衰装置を構築することができるので、改修工事を小規模なものにすることが可能となる。
【0066】
ここで、前記した組立工程(すなわち、スロッシング減衰装置の構築方法)を詳細に説明する。
【0067】
作業空間Kに複数の棒状要素(放射方向フレーム12、内周フレーム13、外周フレーム14)を搬入したら、これらをボルト・ナットにより互いに接合して、図1の(b)に示すような平面架構1を組み立てる。棒状要素同士を接合する際には、図2に示すように、第一取付部12cや第二取付部13d,14dなどを下にする必要があるので、棒状要素に支持部材3や吊材6を取り付けて仮の支柱とし、棒状要素を宙に浮かせた状態にするとよい(図9の(c)参照)。なお、浮き屋根Rの中心部に支柱R1がある場合には、図10の(a)に示すように、中心部材11をリング構成材11A,11Aに分割した状態で搬入し、その後、図10の(b)に示すように、支柱R1をリング構成材11A,11Aで抱囲しつつこれらを互いに接合するとよい。このようにすると、支柱R1を持ち上げなくとも、リング状の中心部材11を支柱R1に環装することができるので、改修工事を小規模なものにすることが可能になる。
【0068】
その後、ガイド部材4を平面架構1に取り付けるとともに(図1の(b)参照)、網ユニット5を吊材6に取り付けると(図2参照)、スロッシング減衰装置の構築が完了する。
【0069】
以上説明した本実施形態に係るスロッシング減衰装置によれば、図2などに示したように、緩衝材2をリング状にして棒状要素に環装したので、緩衝材2が棒状要素から脱落する可能性が極めて小さくなり、ひいては、浮き屋根Rとの接触による平面架構1の損傷を長期間に亘って防止することが可能となる。特に、緩衝材2を完全なリング状としているので、引きちぎる等しない限り棒状要素から脱落することがない。また、接着剤やボルトなどを使用せずとも、棒状要素にしっかりと緩衝材2を固定することが可能となるので、部品点数と組付工数とを削減することが可能となり、ひいては、スロッシング減衰装置の製作コストを削減することが可能となる。
【0070】
加えて、本実施形態に係るスロッシング減衰装置によれば、以下のような有用な効果を奏する。
平面架構1を複数の棒状要素に分解することが可能となるので、搬入経路が狭小な場合であっても、容易に搬入することが可能となる。
【0071】
中心部材11を介して複数の放射方向フレーム12,12,…を連結することで、平面架構1の中心部における剛性・強度を向上させたので、液体Lの流動抵抗によって発生する平面架構1の変形や歪みを防止することが可能となる。
【0072】
複数の内周フレーム13,13,…からなる内周リング1aと複数の外周フレーム14,14,…からなる外周リング1bとで複数の放射方向フレーム12,12,…を連結したので、減衰体Dに大きな液圧が作用したとしても、放射方向フレーム12,12,…の周方向の間隔を一定に保持することが可能となる。
【0073】
放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14を両端が閉塞されたアルミニウム合金製の中空パイプで構成したので、平面架構1が軽量になり、加えて、放射方向フレーム12、内周フレーム13および外周フレーム14が「浮き」として機能することになるので、スロッシング減衰装置に浮力を与える部材を省略あるいは削減することが可能となる。
【0074】
フロート構造体Fに支持部材3が備わっているので、減衰体Dをしっかりと保持することが可能となり、その結果、減衰体Dに作用する流動抵抗が大きい場合であっても、流体の流速を確実に減衰させることが可能となる。特に、本実施形態においては、支持部材3が、V字状に配置された一対の斜材31,31を備えて構成されていて、棒状要素(内周フレーム13)とともにトラス構造を形成しているので、減衰体Dをより一層しっかりと保持することが可能となる。
【0075】
放射方向に沿って配置された複数の放射方向フレーム12,12,…の各々に減衰体Dを配置したので、振動方向が変わっても、スロッシングを減衰させることが可能となる。
【0076】
図1の(b)に示したように、平面架構1の外側にガイド部材4を配置したので、タンクTの内周面への接触による平面架構1の損傷を防止することが可能となる。しかも、ハニカム状コア材または筒状体の集合体よりなるコア材41aの集合体を内包するサンドイッチパネル41を利用しているので、フロート構造体Fの重量の増加を最小限に抑えることが可能となる。
【0077】
なお、前記したスロッシング減衰装置の構成は、適宜変更しても差し支えない。
例えば、図1の(b)に示す平面架構1においては、内周リング1aの角部(すなわち、内周フレーム13,13の接合部)および外周リング1bの角部(すなわち、外周フレーム14,14の接合部)を、周方向に隣り合う放射方向フレーム12,12の間に位置させていたが、図11の(a)に示す平面架構101のように、内周リング101aの角部および外周リング101bの角部の位置を、放射方向フレーム12と一致させてもよい。このようにすると、平面架構101に、棒状要素を平面視三角形状に組み合わせてなるトラス構造が形成されることになるので、トラス構造のない平面架構1(図1の(b)参照)に比べて剛性・強度が向上し、平面架構101に変形や撓みが生じ難くなる。
【0078】
なお、図11の(a)の平面架構101も、中心部材11と、この中心部材11を中心にして放射状に配置された複数の放射方向フレーム12,12,…と、この放射方向フレーム12,12,…を取り囲むように配置された複数の外周フレーム14,14,…と、この外周フレーム14,14,…の内周側において中心部材11を取り囲むように配置された複数の内周フレーム13,13,…を備えて構成されているが、中心部材11と外周フレーム14との間に亘る一本の放射方向フレーム12が配置されている点と、周方向に隣り合う内周フレーム13,13が放射方向フレーム12を介して連結されている点が前記した平面架構1(図1の(b)参照)と相違する。
【0079】
また、図1の(b)に示す平面架構1においては、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数を中心部材11の辺の数と同数としたが、これに限定されることはなく、例えば、図11の(b)に示す平面架構201のように、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数を中心部材11の辺の数よりも多くしてもよい。図11の(b)においては、平面架構201では、中心部材11に接続される放射方向フレーム12の数を中心部材11の辺の数の2倍としている。なお、平面架構201では、平面視多角形を呈する中心部材11の辺の中央部と角部とに放射方向フレーム12を接続している。
【0080】
また、図1の(a)に示す平面架構1および図11の(a)に示す平面架構101においては、内周リング1a,101aの一辺を、一本の内周フレーム13で構成したが、図11の(b)に示す平面架構201では、複数(図示のものは二本)の内周フレーム13で内周リング201aの一辺を構成している。
【0081】
また、図1の(a)に示す平面架構1においては、内周リング1aが一つである場合を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、内周リング1aを省略してもよいし、あるいは、図12に示す平面架構301のように、二以上の内周リング301aを配置しても差し支えない。
【0082】
なお、液面と浮き屋根Rとの間に空間が形成されると、液体Lが気化して前記した空間に充満することになるので、液体Lが引火性である場合などにおいては、浮き屋根Rを常に液面に密着させておく必要があるが、減衰体Dを棒状要素に吊設する場合には、減衰体Dの下端がタンクTの底面に当接した段階で、浮き屋根Rおよびスロッシング減衰装置の下方向への移動が規制され、これ以上液体Lを減少させると、液面と浮き屋根Rとの間に空間が形成されてしまうので、タンクTの底部に貯まった液体Lを活用できない場合がある。このような場合には、図13に示す減衰体D’のように、高さ寸法を調節可能にしておけば、より下方までスロッシング減衰装置を降下させることができるので、タンクTの底部に貯留された液体を有効に活用することが可能となる。
【0083】
減衰体D’は、図13の(a)に示すように、上側網ユニット105と下側網ユニット205とを備えて構成されていて、棒状要素である放射方向フレーム12に吊設されている。
【0084】
上側網ユニット105は、図14の(a)に示すように、正面視長方形を呈する網状部材51(図8参照)と、この網状部材51を保持する一対のガイド枠材54,54と、網状部材51をガイド枠材54に押し付ける固定板55と、を備えて構成されている。
【0085】
ガイド枠材54は、他方のガイド枠材54と対向する面が開口したガイド溝54aを有するものであり、本実施形態では、断面リップ溝形の形材を利用して構成されている。なお、図13の(a)に示すように、ガイド枠材54の上端面には、放射方向フレーム12に接続される接続部54bが突設されている。
【0086】
固定板55は、図14の(a)に示すように、ガイド枠材54の正面に沿って配置されていて、リベット等によりガイド枠材54に固着されている。
【0087】
下側網ユニット205は、図14の(b)に示すように、正面視長方形を呈する網状部材51と、この網状部材51を保持する左右一対のスライド枠材56,56と、このスライド枠材56,56の下端部同士を連結する下枠材57とを備えて構成されている。
【0088】
スライド枠材56は、ガイド枠材54のガイド溝54aの内部を上下方向(図14の(b)では紙面垂直方向)にスライド可能なスライド部56aと、このスライド部56aの他方のスライド枠材56と対向する面に突設された一対の挟持部56b,56bとを備えて構成されている。挟持部56bは、網状部材51を挟持するものであり、本実施形態では、断面L字形の形材からなり、リベット等によりスライド部56aに固着されている。
【0089】
なお、図13の(a)および(b)に示すように、減衰体D’の下端部も、V字状に配置された一対の斜材33,33を具備する支持部材103によって支持されているが、斜材33は、屈曲可能な線状部材にて構成されている。なお、屈曲可能な線状部材には、例えば、鋼、炭素繊維、合成樹脂などからなる単線、より線(ストランド)、ロープ、鎖などが含まれる。
【0090】
そして、スロッシング減衰装置が下降して減衰体D’の下端(すなわち、下側網ユニット205の下端面)がタンクTの底面に当接すると、上側網ユニット105のガイド溝54a(図14の(a)参照)に下側網ユニット205のスライド部56a(図14の(b)参照)が入り込み、最終的には、図13の(b)に示すように、上側網ユニット105の内部に下側網ユニット205が収容されるので、平面架構1をタンクTの底面に近づけることが可能となり、ひいては、タンクTの底部に貯留された液体を有効に活用することが可能となる。なお、斜材33は、屈曲可能な線状部材で構成されているので、下側網ユニット205の上側網ユニット105への入り込みを阻害することはない。
【0091】
液面の上昇に伴ってスロッシング減衰装置が上昇する際には、下側網ユニット205がその自重によって上側網ユニット105から抜け出し、自動的に図13の(a)の状態に復元する。
【0092】
なお、本実施形態では、複数の網ユニット(本実施形態では上側網ユニット105と下側網ユニット205)を上下方向にスライド可能に連設することで、高さ寸法を調節可能な減衰体D’を形成したが、高さ寸法を調節可能な減衰体の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、例えば、複数の網ユニットを折り畳み可能に連設することでも、高さ寸法を調節可能な減衰体を形成することができる。
【符号の説明】
【0093】
F フロート構造体
D 減衰体
1 平面架構
11 中心部材
12 放射方向フレーム
12a 中空パイプ
13 内周フレーム(周方向フレーム)
13a 中空パイプ
14 外周フレーム(周方向フレーム)
14a 中空パイプ
2 緩衝材
3 支持部材
31,33 斜材
4 ガイド部材
41 サンドイッチパネル
41a 筒状コア
T タンク
R 浮き屋根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、
前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、
前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする既設タンクの改修方法。
【請求項2】
浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、
前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数のリング構成材と複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、
前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする既設タンクの改修方法。
前記組立工程では、前記浮き屋根の中心部に設けられた支柱を前記複数のリング構成材で抱囲しつつ前記リング構成材同士を接合することで中心部材を形成し、前記支柱を中心にして放射状に配置した複数の前記棒状要素を前記中心部材に接合し、前記中心部材に接合された前記棒状要素に前記減衰体を取り付ける、ことを特徴とする既設タンクの改修方法。
【請求項3】
浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、
前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、
前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素の下側に一対の斜材をV字状に配置して支持部材を構築し、前記減衰体の上端部を前記棒状要素に取り付け、前記減衰体の下端部を前記支持部材に取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする既設タンクの改修方法。
【請求項1】
浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、
前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、
前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする既設タンクの改修方法。
【請求項2】
浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、
前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数のリング構成材と複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、
前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素に前記減衰体を取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする既設タンクの改修方法。
前記組立工程では、前記浮き屋根の中心部に設けられた支柱を前記複数のリング構成材で抱囲しつつ前記リング構成材同士を接合することで中心部材を形成し、前記支柱を中心にして放射状に配置した複数の前記棒状要素を前記中心部材に接合し、前記中心部材に接合された前記棒状要素に前記減衰体を取り付ける、ことを特徴とする既設タンクの改修方法。
【請求項3】
浮き屋根を備える既設タンクの内部に、スロッシングを減衰させるスロッシング減衰装置を構築することで、既設タンクの耐震性を向上させる既設タンクの改修方法であって、
前記既設タンクに貯留された液体を排出して前記浮き屋根を下降させ、前記既設タンクの底面と前記浮き屋根との間に作業空間を確保する浮き屋根降下工程と、
前記既設タンクに設けられた点検口から前記作業空間の内部に複数の棒状要素と前記流体の流速を減衰させる減衰体とを搬入する資材搬入工程と、
前記作業空間の内部で前記複数の棒状要素を組み合わせて前記既設タンクの底面と略平行な平面架構を構築するとともに、前記棒状要素の下側に一対の斜材をV字状に配置して支持部材を構築し、前記減衰体の上端部を前記棒状要素に取り付け、前記減衰体の下端部を前記支持部材に取り付けることで、前記浮き屋根の下側にスロッシング減衰装置を構築する組立工程と、を具備することを特徴とする既設タンクの改修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−178471(P2011−178471A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136460(P2011−136460)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【分割の表示】特願2006−187248(P2006−187248)の分割
【原出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500538715)株式会社住軽日軽エンジニアリング (58)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【分割の表示】特願2006−187248(P2006−187248)の分割
【原出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500538715)株式会社住軽日軽エンジニアリング (58)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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