説明

既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法並びに既設井戸の再生工法

【課題】ケーシングパイプの破壊を生じることなく底部だけを除去する既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法並びにこの底部除去工法によって底部を除去した後、砂利を移動させて効果的な目詰まり除去を行うことができる既設井戸の再生工法を提供すること。
【解決手段】駆動源により回転可能で且つ先端が略平坦面形状の研削面5となる構成の底部除去具4を、前記ケーシングパイプ2内に挿通してケーシングパイプ2の底部3に接触させると共に、この底部除去具4を駆動源により回転させて前記研削面5でケーシングパイプ2の底部3を回転研削除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設井戸の再生工法を行うための前処理としての既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法並びに既設井戸の再生工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
井戸1は、図11に示すように、帯水層13に設置されたケーシングパイプ2内側にストレーナー2Aを介して地下水を誘導し、このケーシングパイプ2内の地下水を水中ポンプにより揚水しているが、ポンプで地下水を強制的に揚水すると、地下水の流れは自然の状態に比べて数百倍もの流速となる。
【0003】
この時、帯水層13内の砂や礫が地下水の流れによって移動し、帯水層13そのものを閉塞させたり、ストレーナー2Aを閉塞(目詰まり)させてしまう場合があり、このように帯水層13やストレーナー2Aの目詰まり現象で揚水量が低下した状況を、井戸1の枯渇と勘違いしてしまうケースも少なくない。
【0004】
また、井戸1は、掘削裸坑14内に揚水用のケーシングパイプ2を配置し、この掘削裸坑14とケーシングパイプ2との間にフィルターの役割をする砂利11を充填した構造となっているが、この充填した砂利11間の目詰まりによる閉塞現象も多々見受けられる。そして、この砂利11間の閉塞現象を生じた場合には、砂利11自体を洗浄するなどしないと閉塞状態を解消できないが、ケーシングパイプ2の外側にある砂利11の洗浄は非常に困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ケーシングパイプ2周囲の砂利11を動かすことができれば、砂利11に付着したスケールや粘土、砂が細かく破砕されて除去できるのではないかと考えられる。
【0006】
しかし、地中深く充填されている砂利11を全部掘り出すようなことは、あまりにも非現実的である。
【0007】
そこで、井戸1の坑底を少し掘り下げて砂利11を下方に落下移動させるようにすれば、砂利11が下方へ難なく自重落下移動して効果的に砂利11間のスケールなどを除去できるのではないかと出願人は着眼した。
【0008】
しかしながら、ケーシングパイプ2には、このケーシングパイプ2建て込み中に崩壊した玉石や砂利がケーシングパイプ2の坑底セット時にケーシングパイプ2内に進入することを防止するために、底部にボトム処理がなされている(底板3が設けられている)ため、井戸1を掘り下げするためには、先ずこのケーシングパイプ2の底板3を除去する必要がある。
【0009】
このようなケーシングパイプ2の底板3の除去は、例えば、特開2003−35084号で示したような、枯渇した井戸を更に深く掘削(追掘)することで井戸機能の再生を図る工法を行う前にも行われており、従来は、ウェイト付のワイヤーに接続した槍状の破壊具を井戸1内に落下させて底板3を破壊したり、掘削ビットを用いて底板3を打ち抜いたりしていたが、このような方法の場合、底板3が壊れずにケーシングパイプ2の接続部分が破断してしまう危険性があり、このケーシングパイプ2の破断を生じてしまうと、その井戸1は再利用不可能となってしまうという問題があった。
【0010】
本出願人は、このような現状に鑑み、ケーシングパイプの破壊を生じることなく底部だけを除去する方法について研究を進め試行錯誤した末に、本発明の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法を完成させた。
【0011】
また、この既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法によって底部を除去した後、砂利を移動させて効果的な目詰まり除去を行うことができる画期的な既設井戸の再生工法を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
既設井戸1の有底ケーシングパイプ2の底部3を除去する既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法であって、駆動源により回転可能で且つ先端が略平坦面形状の研削面5となる構成の底部除去具4を、前記ケーシングパイプ2内に挿通してケーシングパイプ2の底部3に接触させると共に、この底部除去具4を駆動源により回転させて前記研削面5でケーシングパイプ2の底部3を回転研削除去することを特徴とする既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法に係るものである。
【0014】
また、前記底部除去具4の研削面5の略中心部に、空気を研削面5の外方へ向けて圧送出する送出孔6を設けると共に、この研削面5に、前記送出孔6から研削面5の外周方向に向けて案内溝7を凹設した構成として、前記送出孔6より空気を圧送出しながら研削面5を前記ケーシングパイプ2の底部3に接触させてこの底部除去具4で前記ケーシングパイプ2の底部3を回転研削すると、前記研削面5で研削したケーシングパイプ2底部3の研削屑が、前記送出孔6からの空気圧により前記案内溝7を介して井戸1外へと排出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法に係るものである。
【0015】
また、既設井戸1の有底ケーシングパイプ2の底部3を除去する既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法であって、駆動源により回転可能で且つ先端の外周部に切断刃8を突設した構成の底部除去具4を、前記ケーシングパイプ2内に挿通して前記切断刃8をケーシングパイプ2の底部3に接触させると共に、この底部除去具4を駆動源により回転させて前記切断刃8によりケーシングパイプ2の底部3を切断し、この切断した底部3をケーシングパイプ2内から取り去ることを特徴とする既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法に係るものである。
【0016】
また、前記底部除去具4に、前記切断刃8で切断した前記ケーシングパイプ2の底部3をこの底部除去具4に吸着若しくは係止して捕捉する底部捕捉手段9を設けて、この底部捕捉手段9により切断したケーシングパイプ2の底部3を底部除去具4と共にケーシングパイプ2内から取り去ることを特徴とする請求項3記載の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法に係るものである。
【0017】
また、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法を行ってケーシングパイプ2の底部3を除去した後、このケーシングパイプ2内に掘削ビット10を挿通してこの掘削ビット10で井戸1坑底を更に数m掘り下げすると共に、この掘り下げによってケーシングパイプ2周囲に充填されている砂利11の下方の土を掘り崩して砂利11を降下移動させ、この砂利11の降下によって砂利11不足を生じた部位には地上からケーシングパイプ2の周囲に砂利11を補充することを特徴とする既設井戸の再生工法に係るものである。
【0018】
また、前記掘削ビット10は、一方向に回転力を加えると外径が大きくなり、他方向に回転力を加えると外径が小さくなる構成の掘削ビット10を採用し、この掘削ビット10を外径が小さい状態で前記ケーシングパイプ2に挿通し、この掘削ビット10を井戸1坑底で外径が大きくなる方向に回転させてケーシングパイプ2周囲に充填されている砂利11の下方の土を掘り崩しつつ、この掘削ビット10で井戸1坑底を更に2〜3m程掘り下げすることを特徴とする請求項5記載の既設井戸の再生工法に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように、回転研削若しくは回転切断することでケーシングパイプの底部を除去するので、ケーシングパイプの底部に槍状の破壊具を落下させて孔を穿ったり、掘削ビットで底部を打ち抜いたりする底部の除去方法に比べてケーシングパイプに加わる衝撃が小さく、よってケーシングパイプの接続部分などに破損を生じにくく、信頼性の高いケーシングパイプの底部除去工事を行うことができ、これにより井戸を破損することなく引き続いて後述する井戸の再生工法を行うことができる極めて実用性に秀れた画期的な既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法となる。
【0020】
また、請求項2記載の発明においては、底部の研削と同時に研削屑を空気圧によって井戸外部へと排出できるので、底部研削後に別途研削屑の回収工程を要せず、作業効率が向上することとなり、しかも送出空気が切削面に設けた案内溝を通って底部除去具の外方へと排出されるので、空気送出中であってもこの空気圧によって切削面が底部に対し浮いて(離反して)しまうようなことがなく、切削面が常に底部に接触して効率の良い研削が行われることになるなど、一層実用性に秀れた既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法となる。
【0021】
また、請求項4記載の発明においては、底部除去具の切断刃で切断したケーシングパイプの底部を、別途回収工程を要することなく、そのままこの底部除去具に吸着若しくは係止して底部除去具と共にケーシングパイプ内から取り去ることができるために、作業効率が向上することになる一層実用低に秀れた既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法となる。
【0022】
また、請求項5記載の発明においては、ケーシングパイプ周囲に充填された砂利を降下移動させるために、この砂利間の目詰まりを効果的に除去できて、この目詰まりにより低下した井戸機能を回復することができる極めて実用性に秀れた画期的な既設井戸の再生工法となる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、井戸坑底の掘り下げ作業がわずか2〜3mで済むので容易に行われる上、確実にケーシングパイプ周囲の砂利を降下移動させることができて砂利の目詰まりを極めて良好に除去できることになるなど、一層実用性に秀れた既設井戸の再生工法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
例えば、水位低下した既設井戸1の再生を行う場合、先ず、有底ケーシングパイプ2内に、先端に略平坦面形状の研削面5を有する底部除去具4を挿通してこの研削面5をケーシングパイプ2の底部3に接触させ、この底部除去具4を駆動源により回転させて研削面5でケーシングパイプ2の底部3を回転研削除去するか、若しくは、有底ケーシングパイプ2内に、先端の外周部に切断刃8を有する底部除去具4を挿通してこの切断刃8をケーシングパイプ2の底部3に接触させ、この底部除去具4を駆動源により回転させて切断刃8でケーシングパイプ2の底部3を切断し、この切断した底部3をケーシングパイプ2内から取り去る。
【0026】
このような底部除去具4の回転研削若しくは回転切断によるケーシングパイプ2の底部3の除去工法によれば、ケーシングパイプ2の底部3に槍状の破壊具を落下させて孔を穿ったり、掘削ビット10で底部3を打ち抜いたりする底部3の除去方法に比べてケーシングパイプ2に加わる衝撃が小さく、よってケーシングパイプ2の接続部分などに破断を生じにくく、信頼性の高いケーシングパイプ2の底部3除去工事を行うことができる。
【0027】
ケーシングパイプ2の底部3除去後、このケーシングパイプ2内に掘削ビット10を挿通してこの掘削ビット10で井戸1坑底を更に数m掘り下げし、この掘り下げによってケーシングパイプ2周囲に充填されている砂利11の下方の土を掘り崩して砂利11を降下移動させる。この井戸1坑底の掘り下げは、砂利11下方の土を掘り崩すことが目的であるため、数十mも深く掘り下げする必要はなく、例えば、2〜3m程の掘り下げで良い。尚、請求項5中の「数m」なる記載は、1乃至9mを意味するものとして用いている。
【0028】
すると、この砂利11の降下移動によってケーシングパイプ2周囲の他の砂利11の降下移動が誘発され、降下移動した砂利11に付着しているスケールや粘土、砂などが細かく破砕されて、砂利11間の閉塞状態が解消することになる。
【0029】
そして、地下の水位が井戸1の坑底よりも下方に低下しているような枯渇状況となっていなければ、この砂利11の閉塞状態の解消によって井戸機能が再生(回復)する。
【0030】
最後に、砂利11の降下移動によって沈下し砂利11不足を生じた部位には地上からケーシングパイプ2の周囲に砂利11を補充して、工事終了となる。
【0031】
井戸1が異常な水位低下を生じてしまっていて、前述の再生工法で井戸機能が回復しないような場合には、例えば、特開2003−35084号のように、底部3を除去したケーシングパイプ2に掘削ビット10を挿通して、更に深くまで追掘することで井戸機能を再生しても良い。
【実施例1】
【0032】
本発明の具体的な実施例1について図1〜図6に基づいて説明する。
【0033】
本実施例は、エアーハンマー工法(ダウンザホールハンマー工法とも称される。)に用いる井戸掘削装置(図示省略)のボーリングロッド15先端に、掘削ビット10に替えて底部除去具4を装備することで既設井戸1のケーシングパイプ2の板状底部3(以下、底板3と称す。)の除去を行うものである。
【0034】
本実施例の底部除去具4は、図2に示すように、ケーシングパイプ2内に挿入可能な径寸法の丸棒形であって、基端に井戸掘削装置のボーリングロッド15先端に連結し得る連結部4Aを具備すると共に、先端に円形で且つ略平坦面形状の研削面5を具備する形状に構成している。
【0035】
また、この底部除去具4の研削面5は、市販のコンポジットロッドをろう付して非常に高い強度を発揮するように構成しており、この高強度の研削面5でケーシングパイプ2の底板3を良好に研削除去できるようにしている。
【0036】
また、この底部除去具4の略中心部には、基端の連結部4Aから先端の研削面5にかけて送出孔6を貫通形成しており、前記連結部4Aに連結した前記ボーリングロッド15を通じて井戸掘削装置から送出される空気がこの送出孔6を介して研削面5の先端から外方へ圧送出される構成としている。
【0037】
また、この研削面5に、前記送出孔6から研削面5の外周方向に向けて放射状に複数の案内溝7を凹設すると共に、この各案内溝7は、底部除去具4先端側の側面部にまで延設してこの底部除去具4先端側の側面部では縦設する構成としている。
【0038】
従って、前記送出孔6より空気を圧送出しながら研削面5を前記ケーシングパイプ2の底板3に接触させてこの研削面5で前記ケーシングパイプ2の底板3を回転研削すると、前記研削面5で研削したケーシングパイプ2底板3の研削屑や井戸1内の泥水などが、前記送出孔6からの空気圧により前記案内溝7を介して上方へと圧送されて井戸1外へと排出するようにしている。
【0039】
本実施例の、エアーハンマー工法用の井戸掘削装置を用いた既設井戸ケーシングパイプ2の底板3の除去工法を、図1を用いて説明する。
【0040】
井戸掘削装置のボーリングロッド15の先端に、底部除去具4の基端の連結部4Aを連結する。
【0041】
次いで、この底部除去具4を既設井戸1のケーシングパイプ2の上部開口部から深く挿入して研削面5を底板3に面接当接し、井戸掘削装置(の駆動源)を駆動させて底部除去具4を回転させつつ徐々に降下移動させると共に、送出孔6に空気を送出する。
【0042】
すると、研削面5が底板3を回転研削していき、この際発生する研削屑や井戸1内の泥水などは送出孔6からの空気圧によって案内溝7を介して井戸1内を上昇し井戸1外部へと排出される。
【0043】
この底部除去具4の回転研削によって穴が開いたら(底板3を完全に研削除去したら)、底部除去具4をケーシングパイプ2から抜き去り、工事終了となる。
【0044】
尚、このケーシングパイプ2の底板3除去工法は、ロータリー工法用の井戸掘削装置を用いて行うことも可能である。
【0045】
このケーシングパイプ2の底板3除去工法は、枯渇した井戸1の再生工法の前処理として行うものである。
【0046】
次に、前記底板3除去工法に引き続いて行う本実施例の既設井戸1の再生工法について説明する。
【0047】
尚、本実施例では、引き続きエアーハンマー工法用の井戸掘削装置を用いた場合を示している。
【0048】
ケーシングパイプ2の底板3を除去した後、図3に示すような一方向に回転力を加えると先端の外径が井戸1のケーシングパイプ2の径より大きくなり、他方向に回転力を加えると先端の外径が井戸1のケーシングパイプ2の径より小さくなる構成の掘削ビット10をボーリングロッド15の先端に連結する。
【0049】
図4に示すように、この掘削ビット10を先端の外径が小さい状態でケーシングパイプ2内に挿通して坑底に位置させた上、この掘削ビット10を外径が大きくなる方向に駆動源により回転させながら掘削してケーシングパイプ2周囲に充填されている砂利11の下方に存する土を掘り崩しつつ、この掘削ビット10で井戸1坑底を更に2〜3m程掘り下げして、この掘り下げ穴12に向かって砂利11の下層部分を落下させる。
【0050】
すると、この砂利11の下層部分の落下によってケーシングパイプ2周囲の他の砂利11の降下移動が誘発され、降下した砂利11に付着したスケールや粘土、砂が細かく破砕されて砂利11間の閉塞状態が解消する。
【0051】
また、この際、図5に示すように、送出孔6から送出される空気のエアリフト作用によって、掘り下げ穴12の掘削屑や泥水や掘り下げ穴12に向かって落下する砂利11も地上へと排出される。
【0052】
掘り下げ穴12の掘削終了後、この掘削ビット10を外径が小さくなる方向に回転させてケーシングパイプ2から抜き去り、図6に示すように、径が5〜10cm程度の大きめの石16を掘り下げ穴12に多数投入して掘り下げ穴12を埋め、砂利11の落下を防止する。
【0053】
また、砂利11の落下移動によってケーシングパイプ2の周囲に砂利11の沈下を生じている箇所があるが、ポンプピット内のコンクリートを壊して砂利投入口17を形成し、この砂利投入口17から新たに砂利11を補充して砂利11の不足を解消し、砂利投入口17をコンクリートで埋めて工事完了となる。
【0054】
この井戸再生工法によって砂利11の閉塞状態が解消すると、地下の水位が井戸1坑底よりも下方に低下しているような枯渇状況となっていなければ、井戸機能が再生(回復)する。
【0055】
井戸1が異常な水位低下を生じていて井戸機能が回復しない場合には、底板3を除去したケーシングパイプ2に掘削ビット10を挿通して、更に深くまで追掘することで井戸機能を再生しても良い。
【実施例2】
【0056】
本発明の具体的な実施例2について図7に基づいて説明する。
【0057】
本実施例は、ケーシングパイプ2の底板3除去に用いる底部除去具4の構成を、前記実施例1と異ならせた場合である。
【0058】
即ち、本実施例の底部除去具4は、駆動源により回転可能で且つ先端の外周部に切断刃8を突設した構成としている。
【0059】
また、本実施例の底部除去具4には、前記切断刃8で切断した前記ケーシングパイプ2の底板3をこの底部除去具4に吸着して捕捉する底部捕捉手段9を設けて、この底部捕捉手段9により切断したケーシングパイプ2の底板3を底部除去具4と共にケーシングパイプ2内から取り去ることができるように構成している。
【0060】
具体的には、本実施例の底部除去具4は、ケーシングパイプ2内に挿入可能な径寸法の円筒形であって、基端に井戸掘削装置のボーリングロッド15先端に連結し得る連結部4Aを具備する形状としている。
【0061】
また、この底部除去具4の先端の開口縁部全周に、市販のコンポジットロッドをろう付してこの開口縁部を前記切断刃8とし、この高強度を発揮する切断刃8でケーシングパイプ2の底板3の周縁部を良好に切断(研削)して切断された円板状の底板3を除去できるようにしている。この切断刃8は、凹凸刃形状としても良い。
【0062】
また、本実施例の底部除去具4は、前記底部捕捉手段9として永久磁石9Aを内装した構成としており、前記切断刃8により切断した吸磁金属製の底板3をこの永久磁石9Aが吸着して捕捉できる。
【0063】
また、本実施例の底部除去具4にも略中心部に送出孔6を貫通形成しており、前記実施例1と同様にエアーハンマー工法に用いる井戸掘削装置を採用した場合には、前記連結部4Aに連結した前記ボーリングロッド15を通じて井戸掘削装置から送出される空気がこの送出孔6を介して研削面5の先端から外方へ圧送出される構成としている。
【実施例3】
【0064】
本発明の具体的な実施例3について図8に基づいて説明する。
【0065】
本実施例は、前記実施例2の底部除去具4において、底部捕捉手段9を異ならせた場合である。
【0066】
具体的には、本実施例の底部捕捉手段9は、底部除去具4の先端付近の内周面の数箇所(図面では内周方向に等間隔を置いて四箇所)に夫々が内側に向かって四角錐形に突出する係止突起9Bを突設し、この底部除去具4でケーシングパイプ2の底板3を前記切断刃8によって回転切断した後、更にこの底部除去具4を井戸1坑底に向けて降下させると、切断された円形状の底板3の周縁部に数箇所の前記係止突起9Aが係止して底板3を捕捉する構成としている。
【実施例4】
【0067】
本発明の具体的な実施例4について図9,図10に基づいて説明する。
【0068】
本実施例は、前記実施例1において、既設井戸1のケーシングパイプ2の底板3除去後に行う井戸1の再生工法を、パーカッション工法用の井戸掘削装置を用いて行う場合である。尚、ロータリー工法用の井戸掘削装置を用いて井戸1の再生工法を行う場合も、本実施例と同様にして行うことができる。
【0069】
具体的には、先ず、予め井戸1坑内をベントナイト液で満たしておく。
【0070】
次いで、図9に示すように、ロータリー工法用の掘削ビット18をケーシングパイプ2内に挿通して井戸1坑底に位置させ、この掘削ビット18で坑底を更に2〜3m程掘り下げする。
【0071】
すると、この掘り下げの振動などによってケーシングパイプ2周囲の砂利11下方の土崩れが誘発されるが、この際井戸1坑内にはベントナイト液が満たされているため、土崩れによる砂利11の崩落は防止されている。
【0072】
掘り下げ穴12の掘削が完了したら、掘削ビット18をケーシングパイプ2から抜き去り、ベーラー洗浄、ベーリング+ブラッシング洗浄(ピストン洗浄)、エアリフト洗浄などを組み合わせて、井戸1坑内のベントナイト液や掘削屑などを除去すると、図10に示すようにケーシングパイプ2周囲の砂利11下方の土が崩れて掘り下げ穴12内に砂利11の下層部分が落下する。
【0073】
すると、この砂利11の下層部分の落下によってケーシングパイプ2周囲の他の砂利11の降下移動が誘発され、この降下した砂利11に付着していたスケールや粘土、砂が細かく破砕されて砂利11間の閉塞状態が解消する。
【0074】
次いで、掘り下げ穴12に落下した砂利11を適宜な手法で回収除去し、前記実施例1の図6と同様に、径が5〜10cm程度の大きめの石16を掘り下げ穴12に多数投入して掘り下げ穴12を埋め、砂利11の落下を防止する。
【0075】
最後に、ポンプピット内のコンクリートを壊して砂利投入口17を形成し、この砂利投入口17から沈下した分の砂利11を補充して砂利11の不足を解消し、砂利投入口17をコンクリートで埋めて工事完了となる。
【0076】
尚、本発明は、実施例1〜4に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1の底板除去工法を示す説明図である。
【図2】実施例1の底部除去具を示す説明斜視図である。
【図3】実施例1の掘削ビットを示す説明斜視図である。
【図4】図1の後、井戸坑底を掘削ビットで掘り下げた様子を示す説明図である。
【図5】図4の後、井戸坑底を更に掘り下げし、落下してくる砂利を空気圧で井戸外へと排出する様子を示す説明図である。
【図6】図5の後、掘り下げ穴を石で埋めると共に、沈下分の砂利を新たに充填する様子を示す説明図である。
【図7】実施例2(底部除去具)を示す説明斜視図である。
【図8】実施例3(底部除去具)を示す説明斜視図である。
【図9】実施例4の、底部除去後に井戸坑底を掘削ビットで掘り下げた様子を示す説明図である。
【図10】図9の後、井戸坑内からベントナイト液を除去して、掘り下げ穴に砂利が落下する様子を示す説明図である。
【図11】既存の井戸を示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 井戸
2 ケーシング
3 底部
4 底部除去具
5 研削面
6 送出孔
7 案内溝
8 切断刃
9 底部捕捉手段
10 掘削ビット
11 砂利

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設井戸の有底ケーシングパイプの底部を除去する既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法であって、駆動源により回転可能で且つ先端が略平坦面形状の研削面となる構成の底部除去具を、前記ケーシングパイプ内に挿通してケーシングパイプの底部に接触させると共に、この底部除去具を駆動源により回転させて前記研削面でケーシングパイプの底部を回転研削除去することを特徴とする既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法。
【請求項2】
前記底部除去具の研削面の略中心部に、空気を研削面の外方へ向けて圧送出する送出孔を設けると共に、この研削面に、前記送出孔から研削面の外周方向に向けて案内溝を凹設した構成として、前記送出孔より空気を圧送出しながら研削面を前記ケーシングパイプの底部に接触させてこの底部除去具で前記ケーシングパイプの底部を回転研削すると、前記研削面で研削したケーシングパイプ底部の研削屑が、前記送出孔からの空気圧により前記案内溝を介して井戸外へと排出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法。
【請求項3】
既設井戸の有底ケーシングパイプの底部を除去する既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法であって、駆動源により回転可能で且つ先端の外周部に切断刃を突設した構成の底部除去具を、前記ケーシングパイプ内に挿通して前記切断刃をケーシングパイプの底部に接触させると共に、この底部除去具を駆動源により回転させて前記切断刃によりケーシングパイプの底部を切断し、この切断した底部をケーシングパイプ内から取り去ることを特徴とする既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法。
【請求項4】
前記底部除去具に、前記切断刃で切断した前記ケーシングパイプの底部をこの底部除去具に吸着若しくは係止して捕捉する底部捕捉手段を設けて、この底部捕捉手段により切断したケーシングパイプの底部を底部除去具と共にケーシングパイプ内から取り去ることを特徴とする請求項3記載の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の既設井戸ケーシングパイプの底部除去工法を行ってケーシングパイプの底部を除去した後、このケーシングパイプ内に掘削ビットを挿通してこの掘削ビットで井戸坑底を更に数m掘り下げすると共に、この掘り下げによってケーシングパイプ周囲に充填されている砂利の下方の土を掘り崩して砂利を降下移動させ、この砂利の降下によって砂利不足を生じた部位には地上からケーシングパイプの周囲に砂利を補充することを特徴とする既設井戸の再生工法。
【請求項6】
前記掘削ビットは、一方向に回転力を加えると外径が大きくなり、他方向に回転力を加えると外径が小さくなる構成の掘削ビットを採用し、この掘削ビットを外径が小さい状態で前記ケーシングパイプに挿通し、この掘削ビットを井戸坑底で外径が大きくなる方向に回転させてケーシングパイプ周囲に充填されている砂利の下方の土を掘り崩しつつ、この掘削ビットで井戸坑底を更に2〜3m程掘り下げすることを特徴とする請求項5記載の既設井戸の再生工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−127343(P2009−127343A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305282(P2007−305282)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月27日 インターネットアドレス「http://www.gi−ken.jp/index.htm」「http://www.gi−ken.jp/sub2.html」「http://www.gi−ken.jp/zoukutu.pdf」に発表
【出願人】(501124108)株式会社 NNCエンジニアリング (2)
【出願人】(507390239)株式会社 ナカヨシコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】