説明

既設地下構造物の拡幅方法

【課題】 軌条下を横断している既設地下構造物を能率よく拡幅することができる拡幅方法を提供する。
【解決手段】 既設地下構造物1の下床版11を両側壁1b、1bから切り離した状態にすると共にこの下床版11上に仮受体8を設置して該仮受体8により上床版1aを支持した状態で該上床版1aを両側壁1b、1bから切り離し、この状態にして既設地下構造物1にこの既設地下構造物1よりも幅広い既製横長函体2を突き合わせ状に後続させ、この既製横長函体2側から上記両側壁1b、1bを破壊しながら既製横長函体2を推進させると共に、上記上下床版1a、11と仮受体8とを一体的に前進移動させて軌条下の埋設位置から除去することにより既設地下構造物1を既製横長函体2に置換して拡幅された構造物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌条下や道路下を横断している地下道等の既設地下構造物を幅方向に拡げて大断面の地下道等に改築する既設地下構造物の拡幅方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軌条下や道路下を横断するように設けられている既設の地下道等の地下構造物の通路幅を拡げる場合には、従来から、該既設地下構造物をこの既設地下構造物よりも幅広い既製の構造物と置換する方法が行われている。例えば、特許文献1に記載されているように、既設地下構造物の上床の上面に複数の細長板を該既設地下構造物の長さ方向に並列に敷設すると共にこの上床の両側方における該上床と同じ高さ位置に細長板を載置した複数本のパイプを並列状態に打設したのち全ての細長板の端部を不動箇所に固定し、さらに、既設地下構造物の下床にレールを敷設してこのレール上に仮受台車を既設地下構造物の長さ方向に移動自在に載せて該既設地下構造物の両側壁から切り離された上床を支持させ、しかるのち、この既設地下構造物の後端面から上記パイプ列の後端面に亘って既製構造物の上床前端面を突き合わせ状に後続させてこの既製構造物を推進させることにより、既設地下構造物を既製構造物に置換する作業を行っている。
【0003】
この際、既製構造物の推進に先行して該既製構造物側から既設地下構造物の両側壁と上記下床とを破壊等の適宜な手段により撤去しながら既製構造物を推進させることにより、既設地下構造物の上床を支持している仮受台車を下床に敷設したレール上で前進させながら上床を到達側に押し出している。
【特許文献1】特公平06−105025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、鉄道等の軌条下や道路下において既設地下構造物を既製構造物に置換する工事を行う際には、道路や鉄道等を供用させた状態でその直下を横断する方向に既製構造物を推進させることになるので、既設地下構造物の上床を到達側に向かって押し進める際に、軌条や道路等の地表面が沈下することは安全上許されない。
【0005】
このため、上記従来工法においては、既設地下構造物の下床上にレールを敷設して、このレール上を前進移動する仮受台車によって上記上床を一定高さ位置に支持させているが、レールの上面に僅かでも高低差が生じていると、上床が推進中に上下に変位して地表面が変動する虞れがあると共に、レールの長さ方向と上床を押し進める既製構造物の推進方向とが正確に一致していなければ、上床が仮受台車上を横振れ方向に変動して仮受台車と上床間に摺接摩擦力が発生し、この摩擦力に打ち勝って上床を押し進めるには大きな推進力を必要とするため、予め、レールを精度よく敷設しておかなければならないばかりでなく、推進中においても上床の移動状態を管理しなければならないといった問題点がある。さらに、このような問題点は下床の表面の不陸が大きい場合にはより生じやすくなり、レールを精度良く敷設作業に困難性が増すことになる。
【0006】
また、既製構造物の推進に先行して該既製構造物側から上記既設地下構造物の両側壁と上記下床とを破壊等の適宜な手段により撤去しながら既製構造物を推進させるものであるから、この既製構造物を一定長、推進させる前に、既設地下構造物をその両側壁から下床に亘ってそれらの後端部を所定長さ部分だけ、先に破壊、撤去しておかなければならないため、既設地下構造物を既製構造物に置換する作業能率が低下するといった問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、既設地下構造物を該既設地下構造物よりも広幅の既製横長函体と置換するに際して、既設地下構造物の上床版を上下に変動させることなく、正確に水平方向に押し進めながら円滑且つ確実に既設地下構造物と既製横長函体とを置換することができる既設地下構造物の拡幅方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の既設地下構造物の拡幅方法は、請求項1に記載したように、地中に築造されている上床板と両側壁とからなる既設地下構造物の拡幅方法であって、既設地下構造物の上床版の上面に複数の細長板を該既設地下構造物の長さ方向に並列に敷設すると共にこの上床版の側方における該上床版と同じ高さ位置に細長板を載置した複数本のパイプを並列状態に打設する工程と、上記工程と前後又は並行して、上記既設地下構造物の両側壁下端部間に下床版をこの既設地下構造物の長さ方向に摺動自在に設け、且つこの下床版と上記上床版間に仮受体を設けてこの仮受体により上床版を支持した状態で既設地下構造物の上床版と両側壁とを切り離す工程と、この既設地下構造物に該既設地下構造物よりも広幅の既製横長函体を後続させてこの既製横長函体の上床部の前端を既設地下構造物の上床版の後端及び上記パイプ列の後端に突き合わせ状に接合させると共に該既製横長函体の下床部の前端を上記下床版の後端に突き合わせ状に接合させる工程と、この工程後に既設地下構造物の両側壁を後端側から破壊等の適宜な手段により適宜長さ除去すると共にこの両側壁の除去長さに応じて不動箇所に固定された上記並列細長板の下面をガイド面として既設地下構造物の上床版を上記仮受体により支持させた状態で下床版と一体的に推進させることにより、既製横長函体と上記並列パイプとの推進を行って既設地下構造物と既製横長函体とを置換する工程とからなることを特徴とする。
【0009】
このように構成した既設地下構造物の拡幅方法において、請求項2に係る発明には、既設地下構造物の両側壁下端部間に下床版を設置する前に、この下床版の設置部分の下方に摺動面材を敷設しておき、この摺動面材上に下床版を摺動自在に載置することを特徴とし、請求項3に係る発明は、複数本の矩形パイプを上記摺動面材上に並列状態に設置することにより上記下床版を形成していることを特徴とする。
【0010】
一方、請求項4に係る発明は、既設地下構造物がその両側壁の下端部間に下床版を一体に設けてなる場合には、この下床版の下面に摺動面材を敷設したのち、該下床版を両側壁から切り離すことにより摺動面材上に摺動可能に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の既設構造物の拡幅方法によれば、地中に築造されている既設地下構造物の両側壁下端部間に下床版をこの既設地下構造物の長さ方向に摺動自在に設けたのち、この下床版既設地下構造物の上床版間に仮受体を設けて該仮受体により上床版を支持した状態で既設地下構造物の上床版と両側壁とを切り離し、この既設地下構造物に該既設地下構造物よりも広幅の既製横長函体を後続させると共に既設地下構造物の両側壁を破壊等によってその後端側から適宜長さずつ除去しながら細長板をガイドして既設地下構造物の上床版を下床版と一体的に推進させると共に既製横長函体とパイプ列とを推進させて既設地下構造物と既製横長函体とを置換させるものであるから、仮受体は下床版上を移動することなく上下床版と一体的に前進移動させられるので、上床版を下床版に対して仮受体により常に一定の高さ位置に保持した状態で押し進めることができ、従って、この上床版の上方の軌条や道路等の地表面が沈下したり、変動したりするのを防止しながら、円滑且つ確実に既設地下構造物を広幅の既製横長函体により置換して既設地下構造物の拡幅を行うことができる。
【0012】
さらに、既製横長函体の推進に先行して該既製横長函体側から既設地下構造物の両側壁の後端部を所定長さだけ破壊、撤去するが、下床版は破壊されることなく、上床版と一体的に到達側に押し出して到達側で破壊、撤去するので、既設地下構造物の両側壁の後端部を所定長さだけ破壊、撤去したのち、直ちに既製横長函体の推進による既設地下構造物の置換作業を行うことができ、既設地下構造物の拡幅作業が能率よく行うことができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、既設地下構造物の両側壁下端部間に上記下床版を設置する前に、この下床版の設置部分の下方に摺動面材を敷設しておき、この摺動面材上に下床版を前後方向に摺動自在に載置するので、摺動面材を、その上面が上床版の下面に平行となるように容易に敷設することができると共にこの摺動面材上で下床版を前進移動させるので、下床版上に設置した仮受体を介して上床版を一定の高さ位置に保持しながら該下床版を上床版と一体的に摺動面材上を円滑に到達側に向かって摺動移動させることができる。
【0014】
上記下床版としては、請求項3に係る発明によれば、複数本の矩形パイプを上記摺動面材上に並列状態に設置することにより形成しているので、下床版を容易に形成することができると共に、仮受体を介して上床版を強固に支持することができる一定厚みの下床版を形成することができる。
【0015】
一方、請求項4に係る発明によれば、両側壁の上端部間と下端部間とにそれぞれ上床版と下床版とを一体に設けてなる断面矩形状の既設地下構造物を既製横長函体と置換することにより拡幅する方法であって、この既設地下構造物の下床版の下面に摺動面材を敷設したのち、該下床版を両側壁から切り離すことにより摺動面材上で摺動可能な下床版とするものであるから、新たな下床版を設けることなく、この下床版上に仮受体を設置して、既設地下構造物の両側壁から切り離された上床版を該仮受体により支持させることができ、この状態で上記同様に該既設地下構造物の両側壁の後端部を所定長さだけ破壊、撤去しながら、この既設地下構造物の推進と後続する既製横長函体の推進とを一体に又は別々に行うことにより、上床版を下床版に対して仮受体により常に一定の高さ位置に保持した状態で押し進めて、既設地下構造物と既設地下構造物との置換による拡幅作業が能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は既設地下構造物1を、この既設地下構造物1と同じ高さを有し且つ横幅が該既設地下構造物1よりも広いRCコンクタート構造物からなる既製横長函体2と置換することによって既設地下構造物1を拡幅している状態の簡略縦断側面図であり、図2はその拡大縦断正面図であって、既設地下構造物1は全長に亘って一定幅と一定厚みを有する上床版1aと、この上床版1aの両側端の下面に上端面を一体に連設している一定高さの両側壁1b、1bとからなる断面門形状のコンクリート製構造物であり、この既設地下構造物1を軌条下又は通路下(以下、軌条3とする)を横断するようにこの軌条3の下方の地中に築造されていてその長さ方向の前後両端開口部を軌条3の両側方に開口させている。
【0017】
この既設地下構造物1を上記既製横長函体2と置換することによって拡幅するには、既設地下構造物1に既製横長函体2を後続させる側を発進側4とし、既設地下構造物1を押し出す側を到達側5として、まず、既設地下構造物1の上床版1aの上面に複数枚の鋼板製細長板6、6、6・・・6を互いにその長さ方向の両側端面同士が接した状態で並列に敷設する。この細長板6の敷設作業は、軌条3下の地盤を掘削して既設地下構造物1の上床版1aを露出させ、この上床版1a上に敷き並べたのち、地盤を埋め戻すことにより行ってもよく、又、地盤をそのままにして既設地下構造物1の上床版1a上に発進側4から到達側5に向かって貫通させるように細長板6を圧入、又は、到達側5からワイヤ等で牽引することにより行ってもよい。
【0018】
さらに、この既設地下構造物1の上床版1aの両側方における該上床版1aと同じ高さ位置に、上面に上記細長板6と同大、同形の細長板6を載置した複数本の断面矩形状の鋼製パイプ7を並列状態に打設して横方向に連なった並列パイプを形成すると共に、この並列パイプの両側端から下方に向かって、上記パイプ7と同大、同形の複数本の鋼製のパイプ7を、このパイプ7に載置している細長板6を外側に向けた状態で縦方向に順次並列に打設することにより、一列状に積み重なった並列パイプを形成する。細長板6の前端はパイプ7の先端に切り離し可能に固着してあり、各パイプ7を地中に打設するにはパイプ7内にオーガー(図示せず)を挿入して前方の地盤を掘削しながら発進側4から到達側5に向かって推進させることにより行われる。なお、既設地下構造物1の上床版1aの両側方に並列したパイプ列における最外側のパイプ7、7間の幅を置換すべき既製横長函体2の横幅に等しくなるように打設されている。
【0019】
これらの並列パイプの前端と上記上床版1aの上面に敷設している細長板6の前端とは到達側5に突出させてあり、並列パイプ上の全ての細長板6の前端をパイプ7から切り離したのち、これらの互いに横一列に並んでいる全ての細長板6の前端と縦方向に並んでいる全ての細長板6の前端とをこれらの細長板6が突出した地盤の側面に密着、支持させている定着枠12に溶接等によって一体に固着させる一方、発進側4においては後方に突出している全ての細長板6をこれらの細長板6上に直交して配設したH形鋼等よりなる連結部材13を全ての細長板6に溶接等によって固着することにより一体に連結する。なお、細長板6の前端をパイプ7から切り離す作業や端部の固定作業は、既設地下構造物1と既製横長函体2との置換を開始する前の任意の時期でよい。
【0020】
また、上記既設地下構造物1の両側壁1b、1bの下端部間における床面に下床版11を既設地下構造物1の長さ方向に摺動移動自在に敷設する。この際、下床版11の摺動移動が円滑且つ上下方向に変動することなく正確に摺動可能にするために、この下床版11の設置部分の下方の地盤に上面が平滑面に形成された一定厚みを有する摺動面材9を下床版11の略全幅に亘って敷設、固定し、この摺動面材9上に下床版11を長さ方向に摺動自在に敷設している。なお、この摺動面材9は図1に示すように、発進側4の地表面上にまで連続的に水平面一状に敷設、固定している。
【0021】
上記下床版11としては、鋼板によって一定厚みを有する横長矩形枠状に形成してなる形状のものを使用してもよいが、図2に示すように上記パイプ7と同じ断面矩形状の鋼製パイプ11a を複数本、上記摺動面材9上に並列状態に設置し、これらのパイプ11a 、11a を順次互いに連結しながら打設することによって上面が一定高さの平滑な面に形成された下床版11を構成している。なお、このパイプ11a の打設作業も上記パイプ7と同様にその内部にオーガー(図示せず)を挿入して前方の地盤を掘削しながら発進側4から到達側5に向かって推進させることにより行われる。
【0022】
既設地下構造物1の下端部間に上記下床版11を敷設したのち、この下床版11上に仮受体8を設置し、この仮受体8によって上床版1aを支持した状態で既設地下構造物1の上床版1aと両側壁1b、1bとを切り離す。仮受体8は下床版11の上面にその下側台板8a1 を支持させている固定基台8aと、この固定基台8aの上側台板8a2 上に長さ方向及び幅方向に所定間隔毎に立設、支持している複数本のジャッキ8bとこれらのジャッキ8b、8bの上端面間に架設、固定している複数本の支持桁8cとからなり、ジャッキ8bの伸長によって支持桁8cの上面を全長に亘って上床版1aの下面に押し付けてこの上床版1aを両側壁1b、1bから切り離される前の高さ位置に保持するように構成している。なお、上床版1aと両側壁1b、1bとの切り離しはワイヤソー(図示せず)によって行われる。
【0023】
また、固定基台8aの上記上側台板8a2 はその幅をジャッキ8dによって拡縮可能に構成してあり、支持桁8cによって上床版1aを支持する前にこの上側台板8a2 の両側端面を、その側端面に塗布又は貼付したグリス等の滑材を介して、或いは、その側端面に装着したローラを介して上記両側壁1b、1bの内側面に摺動自在に押接させ、両側壁1b、1bが内側方に傾倒するのを防止している。なお、既設地下構造物1の下端部間に下床版11を敷設し、且つこの下床版11と上床版1a間に仮受体8を設けてこの仮受体8により上床版1aを支持した状態で上床版1aと両側壁1b、1bとを切り離す工程は、既設地下構造物1の上床版1aの上面に上記複数の細長板6を該既設地下構造物1の長さ方向に並列に敷設すると共にこの上床版1aの側方における該上床版1aと同じ高さ位置に細長板6を載置した複数本のパイプ7を並列状態に打設する工程の前後であってもよく、並行して行ってもよい。
【0024】
このように、両側壁1b、1bの上端から切り離された上床版1aを仮受体8によって支持させたのち、この既設地下構造物1の後方の発進側4上に、該既設地下構造物1と同一高さで且つ横幅がこの既設地下構造物1よりも広い既製横長函体2を設置して既設地下構造物1に後続させ、既製横長函体2の上床部2aの前端面を既設地下構造物1の後端面とこの後端面から両側方に並設している並列パイプ7、7の後端面と亘って突き合わせ状に接合させると共にこの並列パイプ7、7の両側端から下方に向かって縦方向に並列しているパイプ7、7の後端面に該既製横長函体2の両側壁部2b、2bの前端面を突き合わせ状に接合させ、さらに、この既製横長函体2の下床部2cにおける幅方向の中央部前端面を上記下床版11の後端面に突き合わせ状に接合させる。
【0025】
なお、既設地下構造物1の後端面に既製横長函体2の前端面を直接、突き合わせた状態で後続させてもよいが、本実施例においては、図1に示すように、既製横長函体2の前端面にこの既製横長函体2の断面形状と同一形状の刃口枠14を装着し、さらに、この刃口枠14の前端面に既設地下構造物1の上床版1aと下床版11の後端面及び並列パイプ7、7の後端面を押圧する複数本の中押しジャッキ15を装着している。
【0026】
一方、既製横長函体2の後方の摺動面材9上に反力受止壁部材10を立設し、この反力受止壁部材10の上端に上記細長板6列の後端に固着している上記連結部材13をアンカー等の連結材16で連結すると共に、反力受止壁部材10の前面に複数本の推進ジャッキ17を装着し、この推進ジャッキ17と既製横長函体2の後端面間に押枠18を介在させる。反力受止壁部材10は摺動面材9上に固定してもよいし、前方に向かって移動自在に設置してもよい。
【0027】
このように既製横長函体2や反力受止壁部材10等を発進側4に配設したのち、上記中押しジャッキ15を伸長させると、既設地下構造物1の上床版1aと並列パイプ7、7は、定着枠12や連結部材13等によって不動状態に固定されている細長板6をガイドとしてその対向面雨に摺接しながら一定長、到達側5に向かって前進すると共にこの既設地下構造物1の下床版11も摺動面材9上を摺動して上記上床版1aと一体的に同時に一定長、前進する。この際、上床版1aを支持している仮受体8も上床版1aを一定の高さ位置に保持しながら上下床版1a、11と共に前進移動する。
【0028】
このように、既設地下構造物1の上下床版1a、11と並列パイプ7、7とを一定長、到達側5に推進させると、既設地下構造物1の両側壁1b、1bの後端部が上下床版1a、11の後端から上下床版1a、11の推進長だけ露出することになり、この露出した両側壁1b、1bの後端部を既製横長函体2内からハンマーなどによる破壊等の適宜な手段によって撤去する。しかるのち、発進側4に配設している推進ジャッキ17を伸長させることにより、既製横長函体2を細長板6と摺動面材9をガイドとして上記既製横長函体2と略同じ推進長だけ推進させる。この際、その推進速度に応じて上記中押しジャッキ15を収縮させることにより、既設地下構造物1側に推進ジャッキ17による推進力が伝達しないようにする。
【0029】
次いで、再び、中押しジャッキ15を伸長させることにより、既設地下構造物1の上下床版1a、11と並列パイプ7、7とを一体に一定長、到達側5に推進させたのち、その推進によって露出した既設地下構造物2の後部を破壊、撤去し、しかるのち、推進ジャッキ17を伸長させることによって既設地下構造物1に後続して既製横長函体2を同一長さだけ推進させ、この作業を繰り返し行うことによって既設地下構造物1と既製横長函体2とを置換し、軌条下に既設地下構造物1を拡幅した既製横長函体2からなる通路を築造するものである。
【0030】
この拡幅作業において、到達側5に押し出される既設地下構造物1の上下床版1a、11とパイプ7は、一定長、到達側5に突出する毎に切除する。また、既設地下構造物1の両側壁1b、1bの外側面から外側方に突出する既製横長函体2の両側部の前方の地盤は、既製横長函体2内からシャベル等の適宜な掘削具によって掘削、排除する。なお、既製横長函体2は長さ方向に数分割しておき、この既製横長函体2を既設地下構造物1に後続して継ぎ足しながら順次、推進して既設地下構造物1と置換してもよい。
【0031】
また、中押しジャッキ15を設けることなく、既製横長函体2の推進力によって既設地下構造物1を一体的に推進させてもよく、この場合にも既設地下構造物1の両側壁1b、1bをその後端側から適宜長さ、破壊等により除去する作業を先行して行い、この作業後に既設地下構造物1を既製横長函体2と一体的に上記両側壁1b、1bの破壊した長さ分だけ推進させるものであり、いずれにしても既設地下構造物1に既製横長函体2を後続させたのち、既設地下構造物の両側壁を後端側から破壊等の適宜な手段により適宜長さ除去する工程と、この両側壁の除去長さに応じて上記並列細長板の下面をガイド面として既設地下構造物の上床版を上記仮受体により支持させた状態で下床版と一体的に推進させると共に既製横長函体と上記並列パイプとの推進を行って既設地下構造物1と既製横長函体2とを置換するものである。
【0032】
図3は、軌条3下に築造されている既設地下構造物1’は、上床版1aと両側壁1b、1bと下床版1cとを一体に設けてなる断面矩形状のコンクリート製構造物からなり、この既設地下構造物1'を該既設地下構造物1’と同じ高さを有し、且つ、横幅がこの既設地下構造物1’よりも広いRCコンクタート構造物からなる既製横長函体2'と置換することによって拡幅する方法を説明するための縦断正面図であって、この既設地下構造物1’を上記既製横長函体2と置換することによって拡幅するに際して、既設地下構造物1’の上床版1aの上面に複数枚の鋼板製細長板6、6、6・・・6を敷設することや、既設地下構造物1’の上床版1aの両側方における該上床版1aと同じ高さ位置に、上面に細長板6を載置した複数本の断面矩形状の鋼製パイプ7を並列状態に打設すると共にこの並列パイプの両側端から下方に向かってパイプ7をその細長板6を外側に向けた状態で縦方向に順次並列に打設すること、全ての細長板6をの端部を不動箇所に固定すること、発進側に推進ジャッキ17等の推進手段を配設する点などは上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
上記実施例と異なる構成は、この既設地下構造物1’には下床版1cが一体に設けられていること点であり、この下床版1cの下面に接して摺動面材9を埋設すると共に該下床版1c上に上記実施例で説明した同一構造の仮受体8を設置し、この仮受体8によって上床版1aを支持した状態で既設地下構造物1の上床版1aと両側壁1b、1bとをワイヤソーによって切り離し、さらに、下床版1cを両側壁1b、1bの下端からワイヤソーによって切り離すことにより、この下床版1cを上記上床版1aと共に既設地下構造物1’の長さ方向に移動可能にする。なお、摺動面材9はこの既設地下構造物1’の築造時に下床版1cの下面側に敷設されている場合には新たに埋設する必要とない。
【0034】
このように、既設地下構造物1’の下床版1cを両側壁1b、1bから切り離したのち、上記実施例と同様に既設地下構造物1’に既製横長函体2'を後続させ、既設地下構造物1’の両側壁1b、1bを後端側から一定長さ部分、破壊等によって除去しながら、この両側壁1b、1bの一定長さ部分の除去毎に、細長板6と摺動面材9とをガイドとして既設地下構造物1’の上下床版1a、1bを仮受体8と共に一体に一定長さ推進させると共に、並列パイプ7と既製横長函体2'も一定長さ推進させることにより既設地下構造物1’と既製横長函体2'とを置換するものである。
【0035】
この際、上記実施例で述べたように、既設地下構造物1’と既製横長函体2'との間に中押しジャッキ15を介在させている場合には、既設地下構造物1’の上下床版1a、1cを両側壁1b、1bの除去長さに応じて一定長、推進させたのち、既製横長函体2'を推進ジャッキ17によって一定長、推進させるが、中押しジャッキ15を設けることなく既設地下構造物1’の後端に既製横長函体2'を直接、突き合わせ状に接合させて既製横長函体2'を推進ジャッキ17によって推進させることにより、既設地下構造物1’の上下床版1a、1cを同時に一定長、既製横長函体2'と一体に推進させてもよい。この場合には、並列パイプ7も既製横長函体2'の前端面によって到達側5に推進されて押し出される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】既設地下構造物を拡幅している状態の簡略縦断側面図。
【図2】そのA−A線における拡大縦断正面図。
【図3】別な構造の既設地下構造物を拡幅している状態の簡略縦断側面図。
【符号の説明】
【0037】
1 既設地下構造物
1a 上床版
1b 側壁
2 既製横長函体
3 軌条
4 発進側
5 到達側
6 細長板
7 パイプ
8 仮受体
9 摺動面材
11 下床版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に築造されている上床板と両側壁とからなる既設地下構造物の拡幅方法であって、既設地下構造物の上床版の上面に複数の細長板を該既設地下構造物の長さ方向に並列に敷設すると共にこの上床版の側方における該上床版と同じ高さ位置に細長板を載置した複数本のパイプを並列状態に打設する工程と、上記工程と前後又は並行して、上記既設地下構造物の両側壁下端部間に下床版をこの既設地下構造物の長さ方向に摺動自在に設け、且つこの下床版と上記上床版間に仮受体を設けてこの仮受体により上床版を支持した状態で既設地下構造物の上床版と両側壁とを切り離す工程と、この既設地下構造物に該既設地下構造物よりも広幅の既製横長函体を後続させてこの既製横長函体の上床部の前端を既設地下構造物の上床版の後端及び上記パイプ列の後端に突き合わせ状に接合させると共に該既製横長函体の下床部の前端を上記下床版の後端に突き合わせ状に接合させる工程と、この工程後に既設地下構造物の両側壁を後端側から破壊等の適宜な手段により適宜長さ除去すると共にこの両側壁の除去長さに応じて不動箇所に固定された上記並列細長板の下面をガイド面として既設地下構造物の上床版を上記仮受体により支持させた状態で下床版と一体的に推進させることにより、既製横長函体と上記並列パイプとの推進を行って既設地下構造物と既製横長函体とを置換する工程とからなることを特徴とする既設地下構造物の拡幅方法。
【請求項2】
既設地下構造物の両側壁下端部間に下床版を設置する前に、この下床版の設置部分の下方に摺動面材を敷設しておき、この摺動面材上に下床版を摺動自在に載置することを特徴とする請求項1に記載の既設地下構造物の拡幅方法。
【請求項3】
下床版は、複数本の矩形パイプを摺動面材上に並列状態に設置することにより形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の既設地下構造物の拡幅方法。
【請求項4】
既設地下構造物は、上床版と両側壁と下床版とからなり、この下床版の下面に摺動面材を敷設したのち、該下床版を両側壁から切り離すことにより摺動面材上に摺動可能に設けることを特徴とする請求項1に記載の既設地下構造物の拡幅方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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