説明

既設柱切断保持方法及び荷重受け部材

【課題】既設柱への損傷を低減することができるとともに工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる既設柱切断保持方法及び荷重受け部材を提供すること。
【解決手段】建築物既設柱1の切断保持方法であって、端部傾斜面24,26を有する一対のブラケット12,14の対向する傾斜面頂角部30,32の間に既設柱1を配設し、端部傾斜面24,26と既設柱1との間には抗変形耐荷重部材16が配置されており、既設柱1を挟んだ状態で既設柱1を迂回する緊結手段18により頂角側側面34,36同士を緊結し、ブラケット12,14の頂角側側面34,36に既設柱1の長手方向荷重受けジャッキ80,82を配置し、ブラケット12,14の頂角側側面34,36の側の既設柱1を切断する既設柱切断保持方法及び荷重受け部材10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設柱を利用して建物を仮受けして、例えば、免震装置を取付ける免震レトロフィット工法の内の柱頭免震工法に用いられる既設柱切断保持方法及び荷重受け部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存建物の免震工事においては、基礎下を掘削して建物を仮受けして免震装置を取付ける基礎下免震が多く用いられてきたが、基礎下免震は、工事が大規模にあることや、コストが多くかかることから、基礎下を掘削せずに、建物の任意の階で構造材である既設柱を切断して免震装置を取付ける柱頭免震を行う工法を利用する場合が増加しつつある。その時、免震装置取り付け階の床又は天井に十分な強度が無い場合などに、既設柱に、仮受けを行うためのブラケットを取付けて建物の重量仮受けを行う必要がある。
【0003】
このような柱頭免震の一例として、既設柱に後施工アンカーを締め込むことで、ジャッキ設置用のブラケットを取付けるようにした既設柱切断保持方法及び荷重受け部材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に開示された既設柱切断保持方法及び荷重受け部材は、図5に示すように、既設柱102の両側面に、ジャッキ設置用のブラケット104をそれぞれ取付けている。ブラケット104は、ジャッキ106の一端を支持する水平板部108と、既設柱102の側面に対向する垂直板部110と、両板部108,110に連結された補強リブ112と、からなり、ねじ孔付き金具114を通じて、垂直板部110から既設柱102にあと施工アンカー116を締め込むことで固定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−112051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された既設柱切断保持方法及び荷重受け部材では、後施工アンカー116を既設柱102にねじ込ませることでブラケット104を既設柱102に固定しているために、後施工アンカー116のせん断強度及び既設柱102のコンクリートとの付着強度でもってジャッキアップ時の作用力に抵抗するようになっている。そのため、柱荷重や既設柱のコンクリート強度によっては、後施工アンカー116の本数を増加させる必要が生じたり、後施工アンカー116の径を増大させなければならなくなったり、後施工アンカー116用の孔加工の数を増加させなければならなくなったりして、柱としての強度不足や耐久性能の低下が生ずる虞がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、既設柱への損傷を低減することができるとともに工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる既設柱切断保持方法及び荷重受け部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記課題は、下記構成により達成される。
(1) 建築物既設柱の切断保持方法であって、
端部傾斜面を有する一対のブラケットの対向する傾斜面頂角部の間に前記既設柱を配設し、
前記傾斜面と前記既設柱との間には抗変形耐荷重部材が配置されており、
前記既設柱を挟んだ状態で当該既設柱を迂回する緊結手段により前記頂角側側面同士を緊結し、
前記ブラケットの前記頂角側側面に前記既設柱の長手方向荷重受けジャッキを配置し、
前記ブラケットの前記頂角側側面の側の前記既設柱を切断することを特徴とする既設柱切断保持方法。
【0009】
このように構成された既設柱切断保持方法によれば、
一対のブラケットの対向する傾斜面頂角部の間に既設柱が配設され、傾斜面と既設柱との間に抗変形耐荷重部材が配置され、既設柱を挟んだ状態で既設柱を迂回する緊結手段により頂角側側面同士が緊結され、ブラケットの頂角側側面に既設柱の長手方向荷重受けジャッキが配置される。そして、ブラケットの頂角側側面の側の既設柱が切断される。このとき、ブラケットは、傾斜面頂角部を支点とし、長手方向荷重受けジャッキが配置された頂角側側面の位置を力点とした回転モーメントが与えられることで既設柱に対する緊結力が得られて保持されるために、長手方向荷重受けジャッキを配置する以前には、ブラケットが落下しない程度の緊結力を緊結手段より加えるだけとなる。また、既設柱と傾斜面との間に抗変形耐荷重部材が配置されるために、既設柱に傷を殆ど与える虞がない。これにより、従来のものと比べて、既設柱への損傷を低減することができるとともに、ブラケット取り外しとその後処理も容易且つ綺麗に処理でき、しかも工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる。
【0010】
(2) 前記抗変形耐荷重部材が前記傾斜面と前記既設柱との間に流し込まれて固化した後に使用されることを特徴とする上記(1)記載の既設柱切断保持方法。
【0011】
このように構成された既設柱切断保持方法によれば、
抗変形耐荷重部材が傾斜面と既設柱との間に流し込まれて固化した後に使用されることで、抗変形耐荷重部材の特性を生かして既設柱に対する損傷をさらに低減することができる。このような処理は抗変形耐荷重部材として主にモルタルを使用することにより実行される。
【0012】
(3) 前記抗変形耐荷重部材が予め前記ブラケットの前記傾斜面に保持されていることを特徴とする上記(1)記載の既設柱切断保持方法。
【0013】
このように構成された既設柱切断保持方法によれば、
抗変形耐荷重部材がブラケットの傾斜面に予め保持されていれば、ブラケットを既設柱に組み付けた後に抗変形耐荷重部材を組み込む必要がなくなるので、作業性をさらに向上させることができる。
【0014】
(4) 前記一対の傾斜面頂角部の間への前記既設柱配設時に、当該頂角部と当該既設柱との間に緩衝部材を挿入することを特徴とする上記(1)〜上記(3)のいずれかに記載の既設柱切断保持方法。
【0015】
このように構成された既設柱切断保持方法によれば、
一対の傾斜面頂角部の間への既設柱配設時に、頂角部と既設柱との間に緩衝部材が挿入されれば、緩衝部材により傾斜面頂角部が既設柱に食い込むようなことがなくなり、既設柱への損傷をさらに低減することができる。
【0016】
(5) 建築物既設柱の切断時に当該既設柱を保持する荷重受け部材であって、
対向する端部傾斜面を有する一対のブラケットと、
前記各端部傾斜面それぞれに配置されて前記既設柱との接触面を有する抗変形耐荷重部材と、
前記一対のブラケットの前記傾斜面頂角側側面に備えられて前記既設柱を挟む所定間隔を以て前記既設柱を迂回しつつ当該ブラケットを緊結可能な緊結手段と、
を有することを特徴とする荷重受け部材。
【0017】
このように構成された荷重受け部材によれば、
抗変形耐荷重部材が一対のブラケットの対向する端部傾斜面のそれぞれに配置されて接触面が既設柱へ接触され、緊結手段が一対のブラケットの傾斜面頂角側側面に備えられて既設柱を挟む所定間隔を以て既設柱を迂回しつつブラケットを緊結する。これにより、従来のものと比べて、既設柱への損傷を低減することができるとともに工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる。
【0018】
(6) 前記傾斜面頂角部と前記既設柱との間に配置される緩衝部材を備えることを特徴とする上記(5)記載の荷重受け部材。
【0019】
このように構成された荷重受け部材によれば、
一対のブラケットの傾斜面頂角部と既設柱との間の間に緩衝部材が配置されれば、緩衝部材により傾斜面頂角部が既設柱に食い込むようなことがなくなるので、既設柱への損傷をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の既設柱切断保持方法及び荷重受け部材によれば、既設柱への損傷を低減することができるとともに工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる既設柱切断保持方法及び荷重受け部材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る既設柱切断保持方法及び荷重受け部材の複数の実施の形態例について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1〜図3は本発明に係る既設柱切断保持方法及び荷重受け部材の第1実施形態を説明するものであり、図1は本発明の第1実施形態に係る既設柱切断保持方法を適用した荷重受け部材の正面図、図2は図1の平面・底面図、図3は図1のI−I線断面図である。
【0023】
図1に示すように、既設柱切断保持方法を適用した荷重受け部材10は、一対のブラケット12,14と、抗変形耐荷重部材16と、緊結手段18と、を含んで構成されており、建築物既設柱1の切断時に既設柱1を保持するのに用いられる。
【0024】
ブラケット12,14は、それぞれH鋼であり、既設柱1側の端部に、予め定められた角度でもって傾斜したブラケット端部プレート20,22がそれぞれ固定されている。これらブラケット端部プレート20,22は、対向する端部傾斜面24,26をそれぞれ有し、これら端部傾斜面24,26上に、複数の7本ずつの荷重部材固定用丸棒28が等間隔で水平に取付けられている。この丸棒28は図1では7本であるが、この数は必要とされる作用力やブラケットの大きさにより変わり、また、材料としては、基本的には鋼棒で、断面形状は丸形以外に、多角形としてもよい。ブラケット端部プレート24,26は、図1中下方側に、鋭角の傾斜面頂角部30,32をそれぞれ有する。
【0025】
ブラケット12,14は、頂角側側面34,36が図1中の下方側にそれぞれ配置され、これら頂角側側面34,36の傾斜面頂角部30,32寄りに、緊結手段18の一部を構成するロット固定用プレート38,40が一対ずつ固定されている。ブラケット12,14は、既設柱1に対して傾斜面頂角部30,32をそれぞれ対向させて配置される。
【0026】
抗変形耐荷重部材16は、セメント系無収縮グラウト材等の無収縮モルタル材であり、流動性に優れ、ブリーディング等の空隙を生ずることなく、確実な充填とスムースな施工を行うことができる材料である。抗変形耐荷重部材16は、ブラケット12,14の端部傾斜面24,26と既設柱1との間に流し込まれて固化した後に使用される。なお、抗変形耐荷重部材16としては、上記のモルタル材に代えて、硬化樹脂や硬質ゴムや炭素素材等を選択して用いることができる。
【0027】
図2に示すように、緊結手段18は、上述した二対のロット固定用プレート38,40と、2本のロット42,44と、2本のロット保護用鋼菅部材46,48と、2本のブラケット緊結用鋼棒50,52と、4個の座金54と、4個の締結部材56と、からなる。
【0028】
ロット固定用プレート38,40は、頂角側側面34,36から下方に所定距離だけ離れたロット挿通孔58,60をそれぞれ有し、これらロット挿通孔58,60にロット42,44がそれぞれ回動自在に挿通されている。ロット挿通孔58,60の頂角側側面34,36からの離間距離は、図1に示す距離より大きくても良い。
【0029】
ロット42,44は、金属製の丸棒であり、それぞれの両端部側に緊結部材挿通孔62,64を有する。ロット42,44は、ロット固定用プレート38,40の間に円筒形状のロット保護用鋼管部材46,48がそれぞれ外装され、緊結部材挿通孔62,64がロット固定用プレート38,40の外側に露出されている。
【0030】
ブラケット緊結用鋼棒50,52は、両端部に雄ねじ部66,68を有するPC鋼棒である。ブラケット緊結用鋼棒50,52は、ロット固定用プレート38,40の外側に露出しているロット42,44の緊結部材挿通孔62,64にそれぞれ挿通され、座金54を介して雄ねじ部66,68に締結部材56がそれぞれ締め込まれることで、既設柱1を迂回した両外側でもってブラケット12,14がそれぞれ接近する方向に緊結される。
【0031】
図3に示すように、ブラケット12,14は、竪框70の両側部に補強用の一対のリブプレート72,74がそれぞれ固定されている。
【0032】
次に、荷重受け部材10を用いた既設柱切断保持方法について説明する。
【0033】
まず、既設柱1の所定位置に、既設柱1を水平方向に挟むようにブラケット12,14の対向する傾斜面頂角部30,32を突き当てて配置する。
【0034】
次に、ブラケット12,14のブラケット端部プレート20,22と既設柱1とのそれぞれの間の空間に抗変形耐荷重部材16を流し込み、その後に固化させることで、抗変形耐荷重部材16の接触面76,78が既設柱1の両側面に密着する。このとき、抗変形耐荷重部材16をブラケット12,14のブラケット端部プレート20,22上に予め保持してから、既設柱1の所定位置に、ブラケット12,14の対向する傾斜面頂角部30,32を突き当てて配置するようにしても良い。
【0035】
抗変形耐荷重部材16が固化したところで、ロット固定用プレート38,40のロット挿通孔58,60にロット42,44をそれぞれ挿通し、ブラケット緊結用鋼棒50,52をロット42,44の緊結部材挿通孔62,64にそれぞれ挿通して、座金54を介して雄ねじ部66,68に締結部材56をそれぞれ締め込んでいく。これにより、ブラケット12,14の傾斜面頂角部30,32が既設柱1の所定位置にそれぞれ当接される。
【0036】
次に、ブラケット12,14の頂角側側面34,36における傾斜面頂角部30,32から離れた所定位置に、長手方向荷重受けジャッキ(図1参照)80,82をそれぞれ配置し、ブラケット12,14の頂角側側面34,36の側における既設柱1の切断位置(図1参照)2において切断する。このとき、ブラケット12,14は、傾斜面頂角部30,32を支点とし、長手方向荷重受けジャッキ80,82が配置された頂角側側面34,36の所定位置を力点とした回転モーメントが与えられることで、既設柱1に対する十分な緊結力が得られて保持されるものとなる。
【0037】
そして、長手方向荷重受けジャッキ80,82で既設柱1の上部側を微小距離だけジャッキアップしたところで、その間に不図示の免震装置を挿入し、免震装置を挿入し終わったら長手方向荷重受けジャッキ80,82をジャッキダウンして取り外し、必要に応じて緊結手段18を分解して撤去することとなる。このとき、長手方向荷重受けジャッキ80,82の下端部を支持するために、既設柱1の切断位置2の下側に、上述した荷重受け部材10を上下反対にして既設柱1に取付けるようにしても良い。もちろん、その場合にも、既設柱1に対して簡単に取付けを行うことができる。
【0038】
上述したように、第1実施形態の既設柱切断保持方法によれば、一対のブラケット12,14の対向する傾斜面頂角部30,32の間に既設柱1が配設され、端部傾斜面24,26と既設柱1との間に抗変形耐荷重部材16がそれぞれ配置され、既設柱1を挟んだ状態で既設柱1を迂回する緊結手段18により頂角側側面34,36同士が緊結され、ブラケット12,14の頂角側側面34,36に既設柱1の長手方向荷重受けジャッキ80,82がそれぞれ配置される。そして、ブラケット12,14の頂角側側面34,36の側の既設柱1が切断位置2において切断される。このとき、ブラケット12,14は、傾斜面頂角部30,32を支点とし、長手方向荷重受けジャッキ80,82が配置された頂角側側面34,36の位置を力点とした回転モーメントが与えられることで既設柱1に対する緊結力が得られて保持されるために、長手方向荷重受けジャッキ80,82を配置する以前には、ブラケット12,14が落下しない程度の緊結力を緊結手段18より加えるだけとなる。また、既設柱1と傾斜面頂角部30,32との間に抗変形耐荷重部材16が配置されるために、既設柱1に傷を殆ど与える虞がない。これにより、従来のものと比べて、既設柱1への損傷を低減することができるとともに工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる。さらに、0基礎下での仮受けが困難な建築物の補強や補修に用いることもできる。
【0039】
また、本実施形態の既設柱切断保持方法によれば、抗変形耐荷重部材16が傾斜面頂角部30,32と既設柱1との間に流し込まれて固化した後に使用されることで、抗変形耐荷重部材16の特性を生かして既設柱1に対する損傷をさらに低減することができる。更に、ブラケット取り外しとその後処理も容易且つ綺麗に処理できる。
【0040】
また、本実施形態の既設柱切断保持方法によれば、抗変形耐荷重部材16がブラケット12,14の端部傾斜面24,26に予め保持されるようにすれば、ブラケット12,14を既設柱1に組み付けた後に抗変形耐荷重部材16を組み込む必要がなくなるので、作業性をさらに向上させることができる。
【0041】
また、第1実施形態の荷重受け部材10によれば、抗変形耐荷重部材16が一対のブラケット12,14の対向する端部傾斜面24,26のそれぞれに配置されて接触面76,78が既設柱へそれぞれ接触され、緊結手段18が一対のブラケット12,14の傾斜面頂角部30,32側の側面に備えられて既設柱1を挟む所定間隔を以て既設柱1を迂回しつつブラケット12,14を緊結する。これにより、従来のものと比べて、既設柱1への損傷を低減することができるとともに工事に係る手間及びコストを縮減することができ、狭小空間での作業の安全性を向上させることができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。図4は本発明の第2実施形態に係る既設柱切断保持方法を適用した荷重受け部材の正面図なお、以下の第2実施形態において、上述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは流用する。
【0043】
図4に示すように、第2実施形態に係る荷重受け部材90は、ブラケット12,14の傾斜面頂角部30,32と既設柱1との間に緩衝部材92を組み付けている。
【0044】
緩衝部材92は、例えば略三角柱形状に形成された金属製や樹脂製等の間隙部材であり、ブラケット12,14の傾斜面頂角部30,32と既設柱1との間に水平に挟み込まれることで、傾斜面頂角部30,32を既設柱1に非接触に配置する。
【0045】
この場合、抗変形耐荷重部材16は、ブラケット12,14のブラケット端部プレート20,22と緩衝部材92と既設柱1とから形成される空間に流し込まれて、その後に固化される。
【0046】
第2実施形態に係る既設柱切断保持方法は、第1実施形態の既設柱切断保持方法と同様の作用効果を奏するが、特に、第2実施形態の既設柱切断保持方法及び荷重受け部材90によれば、一対の傾斜面頂角部30,32の間への既設柱1配設時に、傾斜面頂角部30,32と既設柱1との間に緩衝部材92がそれぞれ挿入されることで、緩衝部材92により傾斜面頂角部30,32が既設柱1に食い込むようなことがなくなり、既設柱1への損傷をさらに低減することができる。
【0047】
なお、本発明に係る既設柱切断保持方法及び荷重受け部材は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良等が可能である。
例えば、従来技術では免震装置に関して説明したが、建築物の既設柱を切断することは他の工事でも実施されており、そのような場合には、利用可能である。
【0048】
更に、図示した緊結手段は、一例であって何ら限定されることはなく、一対のブラケットの頂角側側面にL字形状で円筒部材を接合した鋼板を対向して取り付け、それら鋼板における既設柱の外側において、既設柱を迂回しつつ、円筒部材にロットを挿通し、鋼板を緊結用鋼棒等でもって緊結するようにしても良く、そうすれば、より一層簡素な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る既設柱切断保持方法を適用した荷重受け部材の正面図である。
【図2】図1の半平面・半底面図である。
【図3】図1のI−I線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る既設柱切断保持方法を適用した荷重受け部材の正面図である。
【図5】従来の既設柱切断保持方法及び荷重受け部材を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 既設柱(建築物既設柱)
10,90 荷重受け部材
12,14 ブラケット
16 抗変形耐荷重部材
18 緊結手段
24,26 端部傾斜面
30,32 傾斜面頂角部
34,36 頂角側側面
80,82 長手方向荷重受けジャッキ
92 緩衝部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物既設柱の切断保持方法であって、
端部傾斜面を有する一対のブラケットの対向する傾斜面頂角部の間に前記既設柱を配設し、
前記傾斜面と前記既設柱との間には抗変形耐荷重部材が配置されており、
前記既設柱を挟んだ状態で当該既設柱を迂回する緊結手段により前記頂角側側面同士を緊結し、
前記ブラケットの前記頂角側側面に前記既設柱の長手方向荷重受けジャッキを配置し、
前記ブラケットの前記頂角側側面の側の前記既設柱を切断することを特徴とする既設柱切断保持方法。
【請求項2】
前記抗変形耐荷重部材が前記傾斜面と前記既設柱との間に流し込まれて固化した後に使用されることを特徴とする請求項1記載の既設柱切断保持方法。
【請求項3】
前記抗変形耐荷重部材が予め前記ブラケットの前記傾斜面に保持されていることを特徴とする請求項1記載の既設柱切断保持方法。
【請求項4】
前記一対の傾斜面頂角部の間への前記既設柱配設時に、当該頂角部と当該既設柱との間に緩衝部材を挿入することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の既設柱切断保持方法。
【請求項5】
建築物既設柱の切断時に当該既設柱を保持する荷重受け部材であって、
対向する端部傾斜面を有する一対のブラケットと、
前記各端部傾斜面それぞれに配置されて前記既設柱との接触面を有する抗変形耐荷重部材と、
前記一対のブラケットの前記傾斜面頂角側側面に備えられて前記既設柱を挟む所定間隔を以て前記既設柱を迂回しつつ当該ブラケットを緊結可能な緊結手段と、
を有することを特徴とする荷重受け部材。
【請求項6】
前記傾斜面頂角部と前記既設柱との間に配置される緩衝部材を備えることを特徴とする請求項5記載の荷重受け部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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