説明

既設構造物の改修方法および改修建築物における電力制御方法並びにこれらに用いる電力制御盤

【課題】 既設建築物の改修を行うにあたり、既設建築物を建築した時点で想定したもの以外の分散型電源等の接続についても容易に対応することができ、省エネルギー化を図るための制約が少なく改修を行うことができる既設構造物の改修方法および改修建築物における電力制御方法並びにこれらに用いる電力制御盤を提供する。
【解決手段】既設建築物MBにおける改修を行う低層部MLに電力制御盤15を設置する。次に、電力制御盤15に対して、既存の商用電源22、電力負荷23を接続する。さらに、太陽光発電装置11Aおよび二次電池12Aを設け、電力制御盤15に接続する。この間、改修の対象でない中層部MMおよび高層部MHは、通常の状態で利用することができ、いわゆる「いながら改修」を行うことができる。以後、低層部MLの改修の終了後、順次中層部MMおよび高層部MHの改修を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設構造物の改修方法および改修された建築物における電力制御を行う電力制御方法並びにこれらに用いる電力制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル建築物などの既設構造物は、社会資産として捉えた場合、良質な社会資産としてストックしていくことが継続して求められる。このように既設構造物を社会資産として長らえるためには、時代の進化やニーズに合わせて既存建築物の改修を行いながらその価値を維持ないし向上させることが求められる。
【0003】
既設構造物を改修する目的は、一般的に耐震性向上、劣化更新、機能向上のいずれかに分類される。これらの目的の一項目である機能向上には、コンセント電源の増容量や空調設備の個別分散化といったものが挙げられる。これらの機能向上を目的とする改修の需要は根強いものがある。
【0004】
その一方で、建築物内での消費エネルギーを抑制し、省エネルギー化を促進することが社会的に求められている。既設構造物を改修する際には、機能向上等の目的とともに、省エネルギー化を図るための機器を増設することも行われる。省エネルギー化を図るための機器としては、たとえば太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用した電源や、発電した電力を蓄電する二次電池などが増設される。そして、商用電源などの外部電力の消費を抑えることにより、省エネルギー化を促進するというものである。
【0005】
このような既設構造物の改修に関する技術として、従来、分散型電源を設置可能にする建物が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。この建物は、各階に配電された系統電力に接続された切換装置を備えており、この切換装置に分散型電源を着脱可能としている。このため、建物のリニューアル時等に、建物オーナーなどの要望に応じて電力需要に柔軟に対応することができるというものである。
【0006】
さらには、停電時に商用電源からの電力供給が止まってしまった場合に、蓄電池や太陽電池からの電力を一般負荷よりも重要負荷に対して優先的に電力を供給するシステムもある(たとえば、特許文献2参照)。これらのシステムにおいては、停電時に商用電源が遮断された際の太陽電池および蓄電池の利用のほか、太陽電池によって発電された電力を建物で消費し、または商用電源の供給者等に売電することにより、省エネルギー化をも図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−166448号公報
【特許文献2】特開2011−10412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、地球温暖化の防止に向けて低炭素社会の実現が求められているが、建築物における年間の一次エネルギー消費量を正味(ネット)ゼロまたはおおむねゼロとなる建築物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)という。既存ビルの省エネルギー・CO削減による潜在的なエネルギーの削減効果は、新築ビルよりもはるかに大きい。このため、既存ビルの改修によるZEB実現は、低炭素化社会の実現には欠かせないものとなっている。
【0009】
しかし、上記特許文献1に開示された分散型電源を設置可能にする建物では、建物を建築する際に、各階に分電盤および切換装置を配設するものである。このため、将来的に想定される建物(既設構造物)のリニューアル(改修)に対応することはできるものの、建物を建築した時点で想定していたもの以外の分散型電源等を用いる場合には対応することができないという問題があった。
【0010】
また、既設構造物の改修を行うにあたり、上記特許文献2に開示されている技術を適用し、分電盤に太陽電池システムや蓄電池などを接続して商用電源と共用するシステムを構築することも考えられる。しかし、この方式では、リニューアル以前に設置された分電盤に太陽電池システムや蓄電盤を接続するのみであるので、好適な省エネルギー化を図るための制約が大きくなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、既設構造物の改修を行うにあたり、既設構造物を建築した時点で想定したもの以外の分散型電源等の接続についても容易に対応することができ、省エネルギー化を図るための制約が少なく改修を行うことができる既設構造物の改修方法および改修建築物における電力制御方法並びにこれらに用いる電力制御盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した本発明に係る既設構造物の改修方法は、既存電源から電力が供給される電力負荷が設けられた建築物を改修する既設構造物の改修方法であって、既設構造物を改修する際に、既設構造物に分散型電源および二次電池を設置するとともに、分散型電源および二次電池に対する電力制御を行う電力制御盤を設置し、電力制御盤に対して、分散型電源および二次電池を接続するとともに、既存電源および電力負荷を接続し、電力制御盤は、既設構造物の改修完了後、分散型電源および二次電池に対する電力制御を行うとともに、既存電源からの電力供給量の制御を行うものであることを特徴とする。
【0013】
たとえば、既設構造物の建築時に電力制御盤を設置してしまうと、電力制御盤に接続することができる分散型電源等の種類や容量等が限定されてしまい、将来的な改修時に適切に利用できないことが考えられる。この点、本発明に係る既設構造物の改修方法においては、既設構造物に分散型電源および二次電池を設置するとともに、分散型電源および二次電池に対する電力制御を行う電力制御盤を設置し、電力制御盤に対して、分散型電源および二次電池を接続するとともに、既存電源および電力負荷を接続して制御を行っている。このため、改修時に用いる分散型電源に応じた電力制御盤を設置することができるので、既設構造物の改修を行うにあたり、既設構造物を建築した時点で想定したもの以外の分散型電源等の接続についても容易に対応することができ、省エネルギー化を図るための制約が少なく改修を行うことができる。
【0014】
ここで、既設構造物を複数のエリアに分割し、既設構造物を改修する際に、複数に分割したそれぞれのエリアに対して電力制御盤を設置し、電力制御盤に対して、分散型電源および二次電池を接続するとともに、既存電源および電力負荷を接続することができる。
【0015】
本発明においては、既設構造物を複数のエリアに分割し、既設構造物を改修する際に、複数に分割したそれぞれのエリアに対して電力制御盤を設置している。このため、改修を行っていないエリアについては、通常どおりに使用者が使用した状態で改修を進めることができる。
【0016】
また、上記課題を解決した本発明に係る改修建築物における電力制御方法は、上記既設構造物の改修方法で改修された改修建築物において、電力制御盤で電力制御を行うにあたり、電力負荷における消費電力が分散型電源および二次電池からの供給電力以下の場合には、既存電源から電力負荷に対する電力供給を遮断し、電力負荷における消費電力が分散型電源および二次電池からの供給電力を超える場合には、分散型電源および二次電池のうちの少なくとも一方とともに既存電源から電力負荷に電力を供給する制御を行う。
【0017】
本発明に係る改修建築物における電力制御方法においては、上記改修方法によって改修された改修建築物において、電力負荷における消費電力が分散型電源および二次電池からの供給電力の電力量以下の場合には、既存電源から電力負荷に対する電力供給を遮断する電力制御を行っている。このため、改修後における改修建築物の省エネルギー化を好適に促進することができる。
【0018】
また、上記既設構造物の改修方法で改修された改修建築物において、電力制御盤で電力制御を行うにあたり、複数のエリアのうち、改修が完了したエリアから順に、電力負荷における消費電力が分散型電源および二次電池からの供給電力の電力量以下の場合には、既存電源から電力負荷に対する電力供給を遮断し、電力負荷における消費電力が分散型電源および二次電池からの供給電力の電力量を超える場合には、分散型電源および二次電池のうちの少なくとも一方とともに既存電源から電力負荷に電力を供給する制御を行うことができる。
【0019】
本発明においては、改修が完了したエリアから順に、電力負荷における消費電力が分散型電源および二次電池からの供給電力の電力量以下の場合には、既存電源から電力負荷に対する電力供給を遮断する制御を行っている。このため、改修が済んだエリアから順に省エネルギー化に向けた制御を開始することができる。従って、効率よく省エネルギー化の促進を図ることができる。
【0020】
さらに、電力負荷によって消費される消費電力または消費電力に基づく二酸化炭素排出量をモニターに表示するようにすることができる。
【0021】
このように、電力負荷によって消費される消費電力または消費電力に基づく二酸化炭素排出量をモニターに表示することにより、改修建築物の使用者に省エネルギーに対する意識付けを行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る電力制御盤は、上記既設構造物の改修方法または改修建築物における電力制御方法に用いられる電力制御盤である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る既設構造物の改修方法および改修建築物における電力制御方法並びにこれらに用いる電力制御盤によれば、既設構造物の改修を行うにあたり、既設構造物を建築した時点で想定したもの以外の分散型電源等の接続についても容易に対応することができ、省エネルギー化を図るための制約が少なく改修を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る既設構造物の改修方法により改修された改修建築物の一部の概要を示す図である。
【図2】改修建築物に設置するモニターの例を示す図である。
【図3】電力制御盤の構成を示すブロック図である。
【図4】既設構造物を改修する手順を示す工程図である。
【図5】図4に示す工程に応じた改修部分等の電力供給状況を示す配電図である。
【図6】電力制御盤におけるコントローラの制御手順を示すフローチャートである。
【図7】スイッチ素子の開閉パターンと開閉状態との関係を示す表である。
【図8】電力制御を行った際における電力量の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る既設構造物の改修方法により改修された改修建築物の一部の概要を示す図である。図1に示すように、既設構造物である既設建築物を改修した改修建築物MAは、建物躯体1を有し、室内には天井2が設けられている。また、天井2には、室内空調に用いる空調機3および室内照明4が設けられている。さらには、室内には、図示しないコンセント等が設けられている。これらの設備は、既設構造物の改修前から設けられていたものである。空調機3や室内照明4、さらには図示しないコンセント等が本発明の電力負荷となる。
【0027】
また、改修建築物MAは、分散型電源であり、自然エネルギー電源である太陽光発電装置11および二次電池12を備えている。太陽光発電装置11は、太陽電池パネル等を備えており、太陽光のエネルギーを電力に変換する装置である。また、二次電池12は、充電された電気を蓄電する装置であり、二次電池12としては、たとえばリチウムイオン電池が用いられている。
【0028】
太陽光発電装置11には、第1パワーコンディショナー(PCS)13が接続されており、二次電池12には、第2パワーコンディショナー14が接続されている。第1パワーコンディショナー13および第2パワーコンディショナーは、いずれもAC−DC変換機能や電力保護機能を備えており、太陽光発電装置11で発電された電力を直流から交流に変換したり、二次電池12に充電する電力を交流から直流に変換したりする。
【0029】
さらに、太陽光発電装置11および二次電池12は、それぞれ第1パワーコンディショナー13および第2パワーコンディショナー14を介して電力制御盤15に接続されている。電力制御盤15は、改修建築物MAをいわゆるゼロエネルギービルとするための電力制御を行うZEB電源盤である。
【0030】
また、建物躯体1における室内には、モニター16が設けられている。モニター16は、「みえる化モニター」と称されるものであり、図2に示すように、モニター16には、現在の消費電力から算出されるCO排出量等が「空調」「照明」「コンセント」といった電力負荷の種類ごとに表示されている。また、これらのCO消費量が時間毎に表示されるとともに、前日比、料金なども表示される。
【0031】
太陽光発電装置11、二次電池12、第1パワーコンディショナー13、第2パワーコンディショナー14、電力制御盤15、およびモニター16は、いずれも既設建築物を改修する際に設けられたものである。その他、建物躯体1には、タスク照明17、人感センサ18なども設けられている。
【0032】
次に、電力制御盤15の構成について説明する。図3は、電力制御盤の構成を示すブロック図である。図3に示すように、太陽光発電装置11および二次電池12は、それぞれ第1パワーコンディショナー13および第2パワーコンディショナー14を介して、電力制御盤15に接続されている。また、電力制御盤15には、本発明の既存電源である商用電源22も接続されている。なお、図3においては、天井2に設けられた空調機3および室内照明4および図示しないコンセント等を合わせて電力負荷23と総称する。
【0033】
さらに、回路には、5つのスイッチ素子SW1〜SW5および4つの電力量計Wh1〜Wh4が設けられている。また、回路には、停電信号検出素子FPが設けられている。このうち、第1スイッチ素子SW1は、商用電源22と電力負荷23、商用電源22と太陽光発電装置11、および商用電源22と二次電池12の間に設けられている。
【0034】
また、第2スイッチ素子SW2は、第1スイッチ素子SW1と電力負荷23との間に設けられている。さらに、第3スイッチ素子SW3は、第1スイッチ素子SW1と太陽光発電装置11との間であり、第1スイッチ素子SW1と二次電池12との間である位置に設けられている。また、第4スイッチ素子SW4は、第3スイッチ素子SW3と太陽光発電装置11との間に設けられ、第5スイッチ素子SW5は、第3スイッチ素子SW3と二次電池12との間に設けられている。
【0035】
第1電力量計Wh1は、第4スイッチ素子SW4と太陽光発電装置11との間に設けられ、第2電力量計Wh2は、第2スイッチ素子SW2と電力負荷23との間に設けられている。さらに、第3電力量計Wh3は、商用電源22と第一スイッチ素子SW1の間に設けられ、第4電力量計Wh4は、第5スイッチ素子SW5と二次電池12との間に設けられている。さらに、停電信号検出素子FPは、商用電源22と第3電力量計Wh3との間に設けられている。
【0036】
電力量計Wh1〜Wh4は、それぞれ設置されている位置の電力量を検出している。このうち、第1電力量計Wh1は、太陽光発電装置11の発電による電力量を検出し、第2電力量計Wh2は、電力負荷23が消費する電力量を検出している。また、第3電力量計Wh3は、商用電源22から供給される電力量を検出し、第4電力量計Wh4は、二次電池12の蓄電量を検出している。電力量計Wh1〜Wh4は、スマートコントローラ(以下「コントローラ」という)21に電気的に接続されており、検出した電力量をコントローラ21にそれぞれ送信する。停電信号検出素子FPは、商用電源22から供給される電力を監視し、商用電源22から供給される電力が遮断された場合に、停電信号をコントローラ21に送信する。
【0037】
コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5に対して電気的に接続されている。コントローラ21では、電力量計Wh1〜Wh4および停電信号検出素子FPから送信された各種信号に基づいて、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5の開閉状態を判断し、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5の開閉制御を行う。また、コントローラ21にモニター16が接続されている。
【0038】
次に、本実施形態に係る既設建築物の改修方法について説明する。図4は、既設建築物を改修する手順を示す工程図である。また、図5は、図4に示す工程に応じた改修部分等の電力供給状況を示す配電図である。図4(a)は、建築物Mの改修前の状態である既設建築物MBを示している。建築物Mの改修を行うにあたっては、建築物Mを複数のエリア、本実施形態では、低層部ML、中層部MM、高層部MHに分割し、それぞれのエリア毎に順に改修を行っていく。このとき、図5(a)に示すように、既設建築物MBには、第1単相トランス31、第2単相トランス32、第1三相トランス33、および第2三相トランス34が設けられている。これらの各トランス31〜34には、図3に示す商用電源22が接続されている。
【0039】
建築物Mの改修を行う手順として、まず、図4(b)に示すように、建築物Mにおける下層の一部分である低層部MLの改修を行う。低層部MLの改修を行う際には、建築物Mにおける中層部MMおよび高層部MHについては、改修を行わない。このため、建築物Mにおける中層部MMおよび高層部MHは、改修工事の影響を受けることなく、通常の状態で利用することができ、いわゆる「いながら改修」を行うことができる。
【0040】
低層部MLの改修を行う際には、図5(b)にも示すように、低層用電力制御盤15Aを低層部MLに設置する。低層用電力制御盤15Aは、図3に示す電力制御盤15と同一の構成を有している。低層用電力制御盤15Aは、単相用既存電源盤41Aを介して第1単相トランス31に接続される。この場合、電力負荷23は単相負荷であるが、電力負荷23が三相負荷の場合には、低層用電力制御盤15Aは、三相用既存電源盤42Aを介して第1三相トランス33に接続される。さらに、電力負荷23が単相および三相負荷の双方からなる場合には、低層用電力制御盤15Aは、単相と三相からなる複合盤として接続される。第1単相トランス31および第1三相トランス33のいずれに接続されるかは、太陽光発電装置11の容量や電力負荷23の内容によって決められる。
【0041】
さらに、低層部MLには、低層用太陽光発電装置11Aおよび低層用第1パワーコンディショナーを設けるとともに、低層用二次電池12Aおよび低層用第2パワーコンディショナーも設ける。低層用太陽光発電装置11Aは、たとえば建築物Mの屋上に配設し、低層用第1パワーコンディショナー、低層用二次電池12Aおよび低層用第2パワーコンディショナーは、低層部MLの室内に配設する。
【0042】
さらには、これらの素子を低層用電力制御盤15Aに接続することにより、改修後における建築物Mの低層部MLに対してゼロエネルギー制御を行う。ゼロエネルギー制御とは、自然エネルギー電源で発電される電力によって電力負荷を賄い、商用電源などの外部エネルギーを不要とすることの実現を目指す制御をいう。また、低層部MLの改修を行う際には、図2に示すモニター16を改修後の室内における所定位置、たとえば壁面に設置する。
【0043】
ここで、低層部MLを改修するにあたって、電力制御盤15を低層用電力制御盤15Aとして新たに設置する。この低層用電力制御盤15Aは、既存電源盤41A,42Aや電力負荷23、さらには第1単相トランス31、第2単相トランス32、第1三相トランス33、および第2三相トランス34といった既存設備と接続可能とされている。
【0044】
さらに、低層用電力制御盤15Aは、これらの既存設備のほかに、新たに設置される低層用太陽光発電装置11Aや低層用二次電池12Aと接続可能とされている。このため、建築物Mの改修にあたって、低層用太陽光発電装置11Aや低層用二次電池12Aといった設備を増設することにより、いわゆる機能向上のための改修に対しても適切に対応することができる。
【0045】
さらには、建築物Mを改修する際に、電力制御盤15を新たに設置するようにしている。このため、たとえば改修前の建築物に電力制御盤がすでに設置されている場合と比較して、増設する設備に応じた電力制御盤を用いることができる。したがって、建築物Mの改修の規模等に応じて柔軟に対応することができる。
【0046】
低層部MLの改修が完了したら、図4(c)に示すように、中層部MMの改修を開始する。中層部MMの改修を行うにあっては、低層部MLを改修する場合と同様、図5(c)にも示すように、中層用電力制御盤15Bを中層部MMに設置する。中層用電力制御盤15Bは、図3に示す電力制御盤15と同一の構成を有している。中層用電力制御盤15Bは、単相用既存電源盤41Bを介して第1単相トランス31に接続される。この場合、電力負荷23は単相負荷であるが、電力負荷23が三相負荷の場合には、中層用電力制御盤15Bは、三相用既存電源盤42Bを介して第1三相トランス33に接続される。さらに、電力負荷23が単相および三相負荷の双方からなる場合には、中層用電力制御盤15Bは、単相と三相からなる複合盤として接続される。
【0047】
さらに、中層部MMには、中層用太陽光発電装置11Bおよび中層用第1パワーコンディショナーを設けるとともに、中層用二次電池12Bおよび中層用第2パワーコンディショナーも設ける。中層用太陽光発電装置11Bは、たとえば建築物Mの屋上に低層用太陽光発電装置11Aの横に並設する。また、中層用第1パワーコンディショナー、中層用二次電池12Bおよび中層用第2パワーコンディショナーは、中層部MMの室内に配設する。さらには、これらの素子を中層用電力制御盤15Bに接続することにより、改修後における建築物Mの中層部MMに対してゼロエネルギー制御を行う。
【0048】
その一方、改修作業が終了した低層部MLでは、通常の状態で利用を再開することができるようになっている。ここで、低層部MLは、改修作業が完了していることから、新たに設置した低層用電力制御盤15Aを用いた制御が可能となっている。この低層用電力制御盤15Aを用いることにより、いわゆるゼロエネルギー制御を行うことができる。ゼロエネルギー制御の手順については後に説明する。
【0049】
こうして中層部MMの改修が完了したら、図4(d)に示すように、高層部MHの改修を開始する。高層部MHの改修を行うにあっては、低層部MLを改修する場合と同様、図5(d)にも示すように、高層用電力制御盤15Cを高層部MHに設置する。高層用電力制御盤15Cは、図3に示す電力制御盤15と同一の構成を有している。高層用電力制御盤15Cは、単相用既存電源盤41Cを介して第1単相トランス31に接続される。この場合、電力負荷23は単相負荷であるが、電力負荷23が三相負荷の場合には、高層用電力制御盤15Cは、三相用既存電源盤42Cを介して第1三相トランス33に接続される。さらに、電力負荷23が単相および三相負荷の双方からなる場合には、高層用電力制御盤15Cは、単相と三相からなる複合盤として接続される。
【0050】
さらに、高層部MHには、高層用太陽光発電装置11Cおよび高層用第1パワーコンディショナーを設けるとともに、高層用二次電池12Cおよび高層用第2パワーコンディショナーも設ける。高層用太陽光発電装置11Cは、たとえば建築物Mの屋上に中層用太陽光発電装置11Bの横に並設する。
【0051】
また、高層用第1パワーコンディショナー、高層用二次電池12Cおよび高層用第2パワーコンディショナーは、高層部MHの室内に配設する。さらには、これらの素子を高層用電力制御盤15Cに接続することにより、改修後における建築物Mの高層部MHに対してゼロエネルギー制御を行う。こうして、分割改修エリアごとの順次改修を経て建築物Mの改修が完了し、改修建築物MAとなる。
【0052】
それでは、改修建築物MAの屋上に設けられた電力制御盤15における制御について説明する。改修建築物MAには、3つの電力制御盤15A〜15Cが設けられている。これらの電力制御盤15A〜15Cは、互いに独立して同様の制御を行っている。以下のその制御の手順について説明する。
【0053】
図6は、電力制御盤におけるコントローラの制御手順を示すフローチャートである。図6に示すに、電力制御盤15におけるコントローラ21においては、最初に、電力量計Wh1〜Wh4および停電信号検出素子FPから送信される各種データを受信して取得する(S1)。
【0054】
次に、コントローラ21は、建築物Mに停電が発生したか否かを判断する(S2)。この判断は、停電信号検出素子FPから停電信号を受信したか否かによって行われる。その結果、停電が発生したと判断した場合には、商用電源22からの電力の供給が遮断される。このため、電力負荷23に供給する電力を太陽光発電装置11が発電する電力および二次電池12が充電されている電力によって賄う必要がある。したがって、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン6」による開閉制御を行う(S3)。
【0055】
コントローラ21による第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5の開閉制御のパターンを図7に示す。「パターン6」の制御は、第1スイッチ素子SW1を「OFF」とし、第2スイッチ素子SW2〜第5スイッチ素子SW5を「ON」にする。各スイッチ素子SW1〜SW5の開閉パターンを「パターン6」とすることにより、電力負荷23に供給する電力は、太陽光発電装置11が発電する電力および二次電池12に充電されている電力によって賄われる。このとき、二次電池12からは充電された電力が放電されることとなる。
【0056】
また、ステップS2において、停電が発生していないと判断した場合には、第1電力量計Wh1が検出した電力量と第2電力量計Wh2が検出した電力量とを比較し、太陽光発電装置11による発電量が、電力負荷23が消費する電力量以上となっているか否かを判断する(S4)。
【0057】
その結果、太陽光発電装置11による発電量が、電力負荷23が消費する電力量以上となっていると判断した場合には、電力負荷23による消費電力を、太陽光発電装置11による発電量で全て賄うことができる。さらには、太陽光発電装置11で発電した電力に余剰が発生することとなる。
【0058】
この場合には、商用電源22から電力負荷23に対する電力供給を遮断し、電力負荷23による消費電力を太陽光発電装置11による発電量で全て賄うとともに、発生した余剰電力を二次電池12に充電する。ただし、二次電池12の充電量が許容上限値である場合には、二次電池12に対する充電を行うことができなくなる。このため、第4電力量計Wh4の検出値を参照し、二次電池12の充電量が上限値となっているか否かを判断する(S5)。
【0059】
その結果、二次電池12の充電量が上限値となっていない場合には、二次電池12に対する充電を行うことができる。したがって、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン1」による開閉制御を行う(S6)。一方、二次電池12の充電量が上限値となっている場合には、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン2」による開閉制御を行う(S7)。
【0060】
「パターン1」の制御は、第1スイッチ素子SW1を「OFF」とし、第2スイッチ素子SW2〜第5スイッチ素子SW5を「ON」にする。各スイッチ素子SW1〜SW5の開閉パターンを「パターン1」とすることにより、建築物M内の電力は、太陽光発電装置11が発電する電力によって賄われる。このとき、太陽光発電装置11による発電量が、電力負荷23が消費する電力量以上であることから、二次電池12には電力負荷23で消費した電力の余剰分が充電されることとなる。
【0061】
また、「パターン2」の制御は、第1スイッチ素子SW1〜第4スイッチ素子SW4を「ON」とし、第5スイッチ素子SW5を「OFF」にする。各スイッチ素子SW1〜SW5の開閉パターンを「パターン2」とすることにより、建築物M内の電力は、太陽光発電装置11が発電する電力によって賄われる。このとき、太陽光発電装置11による発電量が、電力負荷23が消費する電力量以上であるが、二次電池12の充電量が上限値となっているため、二次電池12に対する充電を行うことができない。したがって、この場合には、商用電源22を経路して売電したり、他の充電設備、たとえば二次電池が図5(d)に示す高層用二次電池12Cである場合の中層用二次電池12Bまたは低層用二次電池12Aに対して充電したりすることができる。
【0062】
さらに、ステップS4において、太陽光発電装置11による発電量が、電力負荷23が消費する電力量以上となっていないと判断した場合には、太陽光発電装置11による発電量では、電力負荷23における消費電力を太陽光発電装置11による発電では賄えないこととなる。この場合には、太陽光発電装置11による発電量が0を超えているか否かを判断する(S8)。
【0063】
その結果、太陽光発電装置11による発電量が0を超えていると判断した場合には、太陽光発電装置11による発電量では電力負荷23における消費電力の全てを賄うことはできない一方で、太陽光発電装置11によって発電した電力を電力負荷23に供給することはできる。
【0064】
このため、電力負荷23に対して太陽光発電装置11による発電した電力の不足分は、二次電池12に充電された電力や商用電源22から供給される電力で賄うこととなる。ここで、ゼロエネルギー制御では、極力商用電源22からの電力の供給を抑制して、分散型電源や二次電池による電力で賄うことが求められる。したがって、太陽光発電装置11による発電量では電力負荷23における消費電力の全てを賄うことができない場合、原則的には、二次電池12に充電された電力でその不足分を補うことが求められる。
【0065】
このとき、二次電池12に充電された電力が残っている場合には電力負荷23に対する電力の供給を行うことができる。しかし、二次電池12の充電量が下限値となっている場合には、電力負荷23に対する電力の供給を行うことができないこととなる。したがって、ステップS8において、太陽光発電装置11による発電量が0を超えていると判断した場合には、二次電池12の充電量が下限値となっているか否かを判断する(S9)。
【0066】
その結果、二次電池12の充電量が下限値となっていないと判断した場合には、二次電池12によって放電を行い、二次電池12から電力負荷23に対する電力の供給を行うことができる。したがって、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン3」による開閉制御を行う(S10)。一方、二次電池12の充電量が下限値となっている場合には、二次電池12から電力負荷23に対する電力の供給を行うことができない。よって、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン2」による開閉制御を行う(S7)。この場合、商用電源22から供給される電力を利用する。
【0067】
「パターン3」の制御は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5を「ON」にする。各スイッチ素子SW1〜SW5の開閉パターンを「パターン3」とすることにより、電力負荷23に供給される電力には、太陽光発電装置11が発電する電力および二次電池12に充電された電力が用いられる。そして、太陽光発電装置11や二次電池12での電力で電力負荷23の消費電力が賄えない場合に、商用電源22から供給される電力を利用する。
【0068】
さらに、ステップS8において、太陽光発電装置11による発電量が0を超えていないと判断した場合には、太陽光発電装置11による発電量が0となる。この場合、太陽光発電装置11での発電が行われておらず、太陽光発電装置11からの電力の供給を行うことができなくなっている。この場合も原則的には二次電池12から電力を供給することとなるが、二次電池12の充電量が下限値となっている場合には、電力負荷23に対する電力の供給を行うことができない。そこで、二次電池12の充電量が下限値となっているか否かを判断する(S11)。
【0069】
その結果、二次電池12の充電量が下限値となっていないと判断した場合には、二次電池12によって放電を行い、二次電池12から電力負荷23に対する電力の供給を行うことができる。したがって、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン4」による開閉制御を行う(S12)。一方、二次電池12の充電量が下限値となっている場合には、二次電池12から電力負荷23に対する電力の供給を行うことができない。よって、コントローラ21は、第1スイッチ素子SW1〜第5スイッチ素子SW5について、「パターン5」による開閉制御を行う(S13)。
【0070】
「パターン4」の制御は、第1スイッチ素子SW1〜第3スイッチ素子SW3および第5スイッチ素子SW5を「ON」にする。各スイッチ素子SW1〜SW5の開閉パターンを「パターン4」とすることにより、電力負荷23に供給される電力には、主に二次電池12に充電された電力が用いられる。このときに、不足する分を商用電源22から供給される電力で補うこととなる。
【0071】
また、「パターン5」の制御は、第1スイッチ素子SW1〜第3スイッチ素子SW3を「ON」とし、第4スイッチ素子SW4および第5スイッチ素子SW5を「OFF」にする。各スイッチ素子SW1〜SW5の開閉パターンを「パターン5」とすることにより、電力負荷23に供給される電力には、商用電源22から供給される電力となる。こうして、コントローラ21による処理を終了する。
【0072】
他方、電力制御盤15における電力制御が行われている間、モニター16には、電力負荷23における電力消費に応じたCO排出量、電力消費量、および電気料金等が表示されている。このように、モニター16にCO排出量等を表示することにより、建築物Mの使用者に対して、COの排出量の視認を介して建築物Mにおける電力消費量を実感させ、環境配慮、消費エネルギーに対する意識の向上を図ることができる。
【0073】
次に、電力制御盤15を用いた電力制御を行った際における電力量の変化の一例について説明する。図8は、電力制御を行った際における電力量の経時変化の一例を示すグラフである。図8に示すように、時刻t1では、二次電池12の充電量CQが上限値となっており、太陽光発電装置11の発電量CEおよび電力負荷23による電力の消費量SEは最低値となっている。この状態から制御を開始する。
【0074】
時刻t1から太陽光発電装置11による発電が開始するとともに、電力負荷23による電力の消費が始まる。ここでは、電力負荷23による電力の消費量SEが太陽光発電装置11による発電量CEを上回っており、二次電池12の充電量CQが下限値ではない。このため、コントローラ21による制御パターンは、図7に示す「パターン3」となり、太陽光発電装置11が発電する電力および二次電池12に充電された電力によって電力負荷23が消費する電力を賄っている。
【0075】
次に、時刻t2となり、太陽光発電装置11による発電量CEが電力負荷23による電力の消費量SEを超えると、太陽光発電装置11による発電量CEによって電力負荷23で消費される電力の消費量SEを賄うことができる。このため、コントローラ21による制御パターンは「パターン1」となり、太陽光発電装置11の発電量CEによって電力負荷23が消費する電力の消費量SEを賄うとともに、余剰電力を二次電池12に充電する。このため、二次電池12の充電量CQが増加する。
【0076】
さらに、時刻t3となり、再び電力負荷23における電力の消費量SEが太陽光発電装置11による発電量CEを上回ったときには、「パターン3」の制御を行い、太陽光発電装置11が発電する電力および二次電池12に充電された電力によって電力負荷23が消費する電力を賄う。それから、時刻t4となると、二次電池12の充電量CQが下限値となる。二次電池12の充電量CQが下限値となると、二次電池12の放電による電力供給を行うことができなくなる。このときには、コントローラ21による制御パターンは、「パターン2」となり、太陽光発電装置11が発電する電力および商用電源22からの供給電力量MEによって電力負荷23における電力の消費量SEを賄う。
【0077】
その後、時刻t5となり、太陽光発電装置11による発電量CEが電力負荷23による電力の消費量SEを上回ったときには、「パターン1」の制御を行い、余剰電力の二次電池12への充電を行う。この充電により、二次電池12の充電量は下限値から徐々に増加する。それから、時刻t5と時刻t6との間、および時刻t7と時刻t8との間で「パターン1」の制御を行い、時刻t6と時刻t7との間、および時刻t8と時刻t9との間で「パターン3」の制御を行う。
【0078】
時刻t9では、二次電池12の充電量CQが再び下限値となる。このときに「パターン2」による制御を行い、太陽光発電装置11による発電量CEおよび商用電源22からの供給電力量MEによって電力負荷23における電力の消費量SEを賄う。その後、時刻t10では、太陽光発電装置11による発電量CEが日没によって0となる。このとき、二次電池12の充電量は未だ下限値であるので、コントローラ21は、「パターン5」による制御を行い、商用電源22からの供給電力量MEのみで電力負荷23における電力の消費量SEを賄っている。
【0079】
続いて、時刻t11となり、電力負荷23が最低値となると、商用電源22からの供給電力量MEも最低値となる。そして、時刻t11以後、電力負荷23が最低値であり、二次電池12の充電量が上限値となっていないので、特別な電力制御を行い、商用電源22からの供給電力量MEを二次電池12に供給して二次電池12に充電する。この特別な電力制御では、第1スイッチ素子SW1、第3スイッチ素子SW3、および第5スイッチ素子SW5が「ON」となり、第2スイッチ素子SW2および第4スイッチ素子SW4が「OFF」となる。その後、時刻t12で二次電池12の充電量が上限値となり、商用電源22からの電力の供給が終了する。
【0080】
以上の説明のように、本実施形態に係る既設構造物の改修方法では、既設建築物MBを改修する際に、電力制御盤15を設置し、既存の商用電源22や電力負荷23に接続するとともに、新たに設置する太陽光発電装置11や二次電池12に接続している。この電力制御盤15を改修時に新たに設置することにより、新設する太陽光発電装置11や二次電池12の容量や数量によらず、対応が可能となる。したがって、既設建築物MBの改修を行うにあたり、既設建築物MBを建築した時点で想定したもの以外の分散型電源等の接続についても容易に対応することができ、省エネルギー化を図るための制約が少なく改修を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態に係る既設構造物の改修方法では、既設建築物MBを改修するにあたり、既設建築物MBを3つのエリアに分割し、各エリアの改修を順次行うようにしている。このため、改修を行っていないエリアについては、通常どおりに使用者が使用することができる。したがって、既設建築物MBを通常どおり使用しながら、既設建築物MBの改修を進めることができる。
【0082】
さらに、既設建築物MBを改修した改修建築物MAにおいては、電力制御盤15を用いた制御が行われる。ここで、電力制御盤15による制御では、電力負荷23における消費電力が太陽光発電装置11および二次電池12からの供給電力以下の場合には、商用電源22から電力負荷23に対する電力供給を遮断する電力制御を行っている。このため、改修後における改修建築物の省エネルギー化を好適に促進することができる。
【0083】
加えて、このような電力制御盤15による制御を建築物Mにおけるエリア毎に行うようにし、改修が完了したエリアから順に電力制御盤15による制御を開始するようにしている。このため、改修が済んだエリアから順に省エネルギー化に向けた制御を開始することができる。従って、効率よく省エネルギー化の促進を図ることができる。
【0084】
また、改修建築物MAにおいては、電力負荷23による電力に応じたCO排出量を表示するモニター16が設けられている。このモニター16が設けられていることにより、改修建築物MAの使用者は、改修建築物MAにおける電力負荷23による電力消費量を視認することができる。したがって、改修建築物の使用者に省エネルギーに対する意識付けを行うことができる。
【0085】
特に、モニター16においては、電力負荷23の種類に応じたCO排出量、具体的に、空調機3、室内照明4、およびコンセントのCO排出量を表示している。このため、使用者に対して、どの電力負荷の電力消費量が大きいかを認知させることができる。さらには、CO排出量の目標値や前日比をも合わせて表示している。このため、より一層省エネルギーに対する意識を高めることができる。
【0086】
さらには、電力量計Wh1で計測された電力量、太陽光発電量などを表示させ、自然エネルギーによって賄っている状況を表示させることもできる。さらには、第3電力量計Wh3で計測された電力量を表示することにより、ゼロエネルギー化の達成度合を表示することもできる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、既設建築物MBをエリアに分割するにあたり、上下方向に分割するようにしているが、平面方向に分割することもできる。また、上下方向に分割するにしても、フロア毎にエリアを区切ることもできるし、複数のフロアを1エリアとして分割することもできる。
【0088】
また、上記実施形態では、分散型電源として、自然エネルギー電源である太陽光発電装置11を用いているが、その他の電源、たとえば風力発電装置を用いることもできる。あるいは、自然エネルギー電源以外の電源を用いることもできる。さらに、上記実施形態においては、既設建築物MBをエリアに分割して改修を行っているが、エリアに分割することなく改修を行うこともできる。
【0089】
また、上記実施形態では、エリア毎に電力制御盤15を設置してエリア毎に電力制御を行っているが、複数のエリアについて共通の電力制御盤を用いた制御を行うこともできる。さらに、上記実施形態における電力制御の一例では、電力負荷23の電力消費量が最低値となった後に、商用電源22から二次電池12に対して電力供給を行っているが、このような電力供給を行わないようにすることもできる。この場合、二次電池12に充電するための電力は、太陽光発電装置11で発電される電力によることとなる。
【符号の説明】
【0090】
1…建物躯体
2…天井
3…空調機
4…室内照明
11…太陽光発電装置
11A…低層用太陽光発電装置
11B…中層用太陽光発電装置
11C…高層用太陽光発電装置
12…二次電池
12A…低層用二次電池
12B…中層用二次電池
12C…高層用二次電池
13…第1パワーコンディショナー
14…第2パワーコンディショナー
15…電力制御盤
15A…低層用電力制御盤
15B…中層用電力制御盤
15C…高層用電力制御盤
16…モニター
17…タスク照明
18…人感センサ
21…コントローラ
22…商用電源
23…電力負荷
31…第1単相トランス
32…第2単相トランス
33…第1三相トランス
34…第2三相トランス
41A〜41C…単相用既存電源盤
42A〜42C…三相用既存電源盤
FP…停電信号検出素子
M…建築物
MA…改修建築物
MB…既設建築物
MH…高層部
ML…低層部
MM…中層部
CE…太陽光発電装置の発電量
CQ…二次電池の充電量
ME…商用電源からの供給電力量
SE…電力負荷で消費される電力の消費量
SW1…第1スイッチ素子
SW2…第2スイッチ素子
SW3…第3スイッチ素子
SW4…第4スイッチ素子
SW5…第5スイッチ素子
Wh1…第1電力量計
Wh2…第2電力量計
Wh3…第3電力量計
Wh4…第4電力量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存電源から電力が供給される電力負荷が設けられた建築物を改修する既設構造物の改修方法であって、
前記既設構造物を改修する際に、前記既設構造物に分散型電源および二次電池を設置するとともに、前記分散型電源および前記二次電池に対する電力制御を行う電力制御盤を設置し、
前記電力制御盤に対して、前記分散型電源および前記二次電池を接続するとともに、前記既存電源および前記電力負荷を接続し、
電力制御盤は、前記既設構造物の改修完了後、前記分散型電源および前記二次電池に対する電力制御を行うとともに、前記既存電源からの電力供給量の制御を行うものであることを特徴とする既設構造物の改修方法。
【請求項2】
前記既設構造物を複数のエリアに分割し、
前記既設構造物を改修する際に、複数に分割したそれぞれのエリアに対して前記電力制御盤を設置し、
前記電力制御盤に対して、前記分散型電源および前記二次電池を接続するとともに、前記既存電源および前記電力負荷を接続する請求項1に記載の既設構造物の改修方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の既設構造物の改修方法で改修された改修建築物において、前記電力制御盤で電力制御を行うにあたり、
前記電力負荷における消費電力が前記分散型電源および前記二次電池からの供給電力の電力量以下の場合には、前記既存電源から前記電力負荷に対する電力供給を遮断し、
前記電力負荷における消費電力が前記分散型電源および前記二次電池からの供給電力の電力量を超える場合には、前記分散型電源および前記二次電池のうちの少なくとも一方とともに前記既存電源から前記電力負荷に電力を供給する制御を行う改修建築物における電力制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の既設構造物の改修方法で改修された改修建築物において、前記電力制御盤で電力制御を行うにあたり、
前記複数のエリアのうち、改修が完了したエリアから順に、
前記電力負荷における消費電力が前記分散型電源および前記二次電池からの供給電力の電力量以下の場合には、前記既存電源から前記電力負荷に対する電力供給を遮断し、
前記電力負荷における消費電力が前記分散型電源および前記二次電池からの供給電力の電力量を超える場合には、前記分散型電源および前記二次電池のうちの少なくとも一方とともに前記既存電源から前記電力負荷に電力を供給する制御を行う改修建築物における電力制御方法。
【請求項5】
前記電力負荷によって消費される消費電力または前記消費電力に基づく二酸化炭素排出量をモニターに表示する請求項3または請求項4に記載の改修建築物における電力制御方法。
【請求項6】
請求項1もしくは2に記載の既設構造物の改修方法または請求項3〜5のうちのいずれか1項に記載の改修建築物における電力制御方法に用いられる電力制御盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27127(P2013−27127A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159032(P2011−159032)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】