説明

日よけ雨よけ装置

【課題】 構造的な強度が高く、建物から大きく離隔する位置にまでシートを張り出すことができる日よけ雨よけ装置を提供する。
【解決手段】 建物200から所定距離離隔して立設された一対の柱40、50と、該柱のそれぞれから、建物に巻き取り巻き出し可能に張り渡されたワイヤ60、70と、これらワイヤ間に架け渡された前板30と、該前板に一端側が取り付けられるとともに他端側が建物側に巻き取り可能に構成されたシート部材20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラス、バルコニー、ベランダ等に好適に用いられる日よけ雨よけ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生活の洋風化が進み、住宅の分野においても、建物の開口部前面にテラス、バルコニー、ベランダ等を備えて、外気のもとで、読書をしたり、軽食事をとったりなどする生活を楽しむ機会が多くなってきている。
【0003】
テラス、バルコニー、ベランダ等は、通常屋根がないため、直射日光や雨をさえぎる手段があればさらに戸外で外気に触れる生活を快適にすることができる。
【0004】
かかる日よけ、雨よけの装置として特許文献1には、オーニング装置の一例が開示されている。オーニング装置は、建物などの躯体に巻き取り装置を取り付け、かかる巻き取り装置からアームなどを手がかりとして、シート状のテントを室外方向に張り出すものである。
【特許文献1】特開2000−96877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オーニング装置など従来の日よけ雨よけ装置は、アームを形成する部材の一端側が建物等に固定されているのみで、他端側は自由端となっているため、強度が不足することがあり、強風に弱いという問題があった。また建物等から大きく離隔した位置にまでテントを張り出すのは強度上困難であり、奥行きのある日よけ雨よけエリアを創造することが困難であるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、構造的な強度が高く、建物から大きく離隔する位置にまでシートを張り出すことができる日よけ雨よけ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、建物(200)から所定距離離隔して立設された一対の柱(40、50)と、該柱のそれぞれから、建物に巻き取り巻き出し可能に張り渡されたワイヤ(60、70)と、これらワイヤ間に架け渡された前板(30)と、該前板に一端側が取り付けられるとともに他端側が建物側に巻き取り可能に構成されたシート部材(20)とを備え、ワイヤを柱側に引き寄せることにより、前板が柱に向けて移動されるとともに、シート部材が柱方向に巻き出される、ことを特徴とする日よけ雨よけ装置(100)により前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、建物から所定距離離隔された位置に立設された一対の柱と建物との間に、一対のワイヤが張り渡され、これらワイヤの間に前板が架け渡されている。一方、前板は、シート部材の一端側に固定されているとともに、他端側は建物側に巻き採り可能に構成されている。かくしてワイヤを柱側に引き寄せることにより、前板が室外側に移動され、シート部材が建物側から外に向けて巻き出される。
【0010】
前板が柱に当接されるまで引き寄せられた場合(以下において「開いた状態」ということがある。)には、巻き取られていたシート部材が完全に巻き出され、二本の柱と前板とで、門形の構造を構成し、この前板にシート部材の一端側が固定されているので、シート部材の4隅が地上から立設された部材に直接固定された状態、あるいはそれに非常に近い状態となる。従って、この開いた状態においては、風などの影響を受けにくく、高い強度を保つことができる。また、開いた状態において高い強度を得ることができるので、柱の位置を建物から大きく離隔しても使用に耐え得る日よけ雨よけ装置とすることができる。従って、建物から離隔する方向に対して、奥行きの深い日陰、雨よけ可能な面積を得ることが可能となる。
【0011】
また、シート部材が完全に巻き取られた状態(以下において「閉じた状態」ということがある。)から、開いた状態に至る途中の状態(以下において、「半開き状態」ということがある。)に停止させて使用することができる。さらにこの半開き状態においても、前板は建物と柱との間に張り渡されたワイヤに支えられているので、建物に一端側のみ取り付けられたアームを有する従来の日よけ雨よけ装置と比較して、高い強度を保つことができる。
【0012】
加えて、前板は閉じた状態においては建物開口部の上方に配置することが可能であり、前板のデザインを適宜選択することにより、柱に装飾を施すことと加えて、建物開口部の意匠性を事後的に高めることが容易である。
【0013】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0015】
図1は、閉じた状態の日よけ雨よけ装置を概略的に示す斜視図、図2は開いた状態の日よけ雨よけ装置を概略的に示す斜視図である。図示の日よけ雨よけ装置100(以下に「日よけ装置100」と省略して記載することがある。)は、通常出入り口等の開口部300の前面にデッキ400を有する建物200に取り付けられるものである。建物200の開口部300室外側に配置されるデッキ400には、建物400から所定の距離離隔された位置に、一対の柱40、50が略鉛直に立設されている。柱40、50それぞれの頂部近傍から、建物200にワイヤ60、70が架け渡されている。建物200へのワイヤ60、70の取り付け部位2点を結ぶ線分は開口部300の上方に水平に配置されている。この線分に沿って建物200外壁にはシート巻き取り装置10が取り付けられている。シート巻き取り装置10にはシート部材20が巻き取られている。図2に明確に示されているように、シート部材20の一端側には、前板30が取り付けられている。前板30は、その両端がワイヤ60、70にそれぞれ固定されている。
【0016】
次に、図1及び図2を参照しつつ、シート部材20の巻き出し、巻き取り動作について説明する。後に図3、4により説明するように、柱40、50には、ワイヤ60、70を巻き取りかつ巻き出すことができるワイヤ巻き取り巻き出し装置80(または90)が取り付けられている。
【0017】
図1に示すように、閉じた状態にある日よけ装置100の前板30は建物200に近接して配置されている。この状態から、ワイヤ巻取り巻き出し装置80(または90)により、ワイヤ60、70を柱40、50方向に引き寄せると、それにつれて前板30も柱40、50方向に引き寄せられ、前板30に一端側が固定されているシート部材20が、巻き取り装置10から巻き出される。
【0018】
図2は、ワイヤ巻取り巻き出し装置80(または90)の上記動作を継続して行い、前板30が柱40、50の上端近傍まで引き寄せられた状態(開いた状態)を示すものである。この状態では、シート部材20のほぼ全体が巻き取り装置10から巻き出されて、シート部材20により、デッキ400が覆われている。従って、デッキに日陰を造ることができ、また雨をさえぎることが可能となる。
【0019】
図2に示す日よけ装置100の開いた状態では、一対の柱40、50の上端に前板30が架け渡された状態になり、門形の強度が高い構造ができている。従って、全体が巻き出されたシート部材20に強風があたっても、吹き上げられにくい強固な構造を得ることができる。また、かかる強固な構造を得ることができるため、建物200と柱40、50との距離を長くとることができ、シート部材20により創造される日陰、あるいは雨よけスペースを深く大きくとることができる。
【0020】
図3は、ワイヤ巻き取り装置の一例を示す図である。図3(A)に示されているとおり、ワイヤ巻き取り装置80は、柱側ユニット80Aと、建物側ユニット80Bとからなる。図3(B)に概略的に断面が示されている柱側ユニット80Aは、柱50(柱40にも、同様のユニットが取り付けられているので、その説明は省略する。)の上部に取り付けられている。柱50には、ボックス86が取り付けられ、ボックス86には、車輪85が回転自在に取り付けられている。ボックス86の上下の面は、開口されており、これら開口から車輪85が露出している。一方ボックス86の側部には小ボックス82が取り付けられており、小ボックス82には回転体180が回転自在に取り付けられている。回転体180は鉛直方向に軸心を有しており、その最下部には輪81が形成されている。この輪81に、手動回転治具181の先端を引っ掛けて回転させると、回転体180の上部に回転体180の一部として形成されている円盤83が回転する。円盤83の上面には、放射状に歯車が形成されている。一方、車輪85と同軸上には円盤83の歯車と噛み合う歯が形成された小歯車84が形成されている。従って、回転体180が回転されることにより、小歯車84が回転し、車輪85もそれにつれて回転される。
【0021】
建物側ユニット80Bは、建物200に直接取り付けられるボックス87と、ボックス87内に回転自在に取り付けられた車輪88とを備えている。ボックス87の上下の面も開口しており、これら開口から車輪88が露出している。そして二つの車輪85、88間にワイヤ70Aが架け渡されている。
【0022】
かかる構成により、手動回転治具181を回転体180の輪81に引っ掛けて回転させることにより、二つの車輪85、88が回転されて、それらに架け渡されたワイヤ70Aを建物側と柱側との間で移動させることができる。
【0023】
図4は、ワイヤ巻き取り装置の他の一例を示す図である。図4(A)に示されているように、ワイヤ巻き取り装置90は、柱側ユニット90Aと、建物側ユニット90Bとからなる。図4(B)に概略的な断面が示されている柱側ユニット90Aは、柱50(柱40にも、同様のユニットが取り付けられているので、その説明は省略する。)の上部に取り付けられている。柱側ユニット90Aの構成は次のとおりである。クランク状の手回し部材91が柱50に回転自在に取り付けられている。手回し部材91の柱50内部側には、側面に歯面が形成された歯車92が備えられている。
【0024】
一方、柱50の内部には垂直方向に長さを有する回転軸94が水平面に回転自在に取り付けられている。回転軸94の上下には、それぞれ下面、上面側に歯面が形成されている円盤93、95が設けられている。歯車92の歯面と円盤93の歯面とは噛み合っている。
【0025】
手回し部材91の上方には、柱50に回転自在に取り付けられた回転体98が備えられている。回転体98の回転面は鉛直方向である。回転体98の外部側には車輪97が、柱50の内部側には歯車96が固定されている。歯車96は円盤95の歯面と噛み合っている。一方建物側ユニット90Bの構成は上記第一例の建物側ユニット80Bと同一であり、車輪99を備えている。そして車輪97、99間にはワイヤ70Bが架け渡されている。
【0026】
かかる構成のワイヤ巻き取り装置90において、手回し部材91を手動で回転させることにより、二つの車輪97、99が回転されて、それらに架け渡されたワイヤ70Bを建物側と柱側との間で移動させることができる。
【0027】
図5は、日よけ雨よけ装置100の実施例を示す鳥瞰図であり、閉じた状態を示すものである。また、図6は、日よけ雨よけ装置100の実施例を示す鳥瞰図であり、開いた状態を示すものである。これらの図にも示されているように、柱40、50には各種の装飾を施すことが可能である。まず、柱自体の形状を、断面形状が一定の円形ではなく、先細り形状となすことができる。柱の先端に装飾を施してもよい。また柱に例えばプランターなどをぶら下げるための部材を取り付けてもよい。柱にポストを取り付けてもよい。さらに、犬をつないでおく紐をかけることができる部材などを取り付けてもよい。これら柱に取り付ける部材により、日よけ雨よけ装置下をよりゆとりある空間にすることができる。
【0028】
次に、本発明の日よけ雨よけ装置を構成する各部材について簡単に説明する。本発明の日よけ雨よけ装置を構成する各部材は特に限定されるものではないが、シート部材は、日よけとして使用する場合、耐侯性、強度、コストなどの観点から、アクリル繊維や、ポリエステル繊維を使用することが好ましい。また、日よけと雨よけとを兼用する場合には、耐水性のフィルム(例えばポリエチレン)を積層したシートを使用することができる。
【0029】
ワイヤは防錆性に優れるという観点からステンレス鋼製のワイヤを使用することが好ましい。また、一対の柱は、美観や生産性の観点から、アルミニウム押し出し材を使用することが好ましい。前板は、押し出し材を使用して簡素なデザインに仕上げることも可能であるが、デザイン上のポイントとなるべき部材でもあるので、鋼、アルミニウム、銅など金属製の鋳造品を使用しても良い。
【0030】
なお、柱は上記実施形態においては円柱状の押し出し材を使用した例を示しているが、四角形状等他の断面形状をとっても良い。また、柱に照明、ポスト、植栽用ポット等を取り付けるための部材を設け、あるいは取り付けてもよい。
【0031】
ワイヤ巻き取り装置80、90は手動のものについて説明したが、電動機により作動するものであってもよい。
【0032】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う日よけ雨よけ装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】閉じた状態の日よけ雨よけ装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】開いた状態の日よけ雨よけ装置を概略的に示す斜視図である。
【図3】ワイヤ巻き取り装置の一例を示す図である。
【図4】ワイヤ巻き取り装置の他の一例を示す図である。
【図5】日よけ雨よけ装置の実施例を示す鳥瞰図であり、閉じた状態を示すものである。
【図6】日よけ雨よけ装置の実施例を示す鳥瞰図であり、開いた状態を示すものである。
【符号の説明】
【0034】
10 巻き取り装置
20 シート部材
30 前板
40、50 柱
60、70 ワイヤ
80、90 ワイヤ巻き取り巻き出し装置
100 日よけ雨よけ装置
200 建物
300 開口部
400 デッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物から所定距離離隔して立設された一対の柱と、該柱のそれぞれから、前記建物に巻き取り巻き出し可能に張り渡されたワイヤと、これらワイヤ間に架け渡された前板と、該前板に一端側が取り付けられるとともに他端側が前記建物側に巻き取り可能に構成されたシート部材と、を備え、
前記ワイヤを前記柱側に引き寄せることにより、前記前板が前記柱に向けて移動されるとともに、前記シート部材が前記柱方向に巻き出される、ことを特徴とする日よけ雨よけ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−169835(P2006−169835A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364557(P2004−364557)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】