説明

日射量の評価方法および評価装置

【課題】地形条件を考慮することにより精度を高めることができる日射量の評価方法および評価装置の提供を目的とする。
【解決手段】静止衛星画像データ1を3次元地図モデル2と結合させて静止衛星画像データ1の地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュ3を設定し、
3次元地図モデル2と撮像日時データにより特定される太陽位置とに基づいて日影領域4を演算し、前記メッシュ3の各セル8が日影領域4に属するか否かを判定するとともに、
静止衛星画像データ1における各画素の画素値5と各画素に対応する領域の日射量評価要素6とを対応づけたテーブル7を参照して評価対象領域内の各セル8の日射量評価要素6を取得し、且つ、当該セル8が日影領域4に属すると判定されている場合には日射量評価要素6に所定の補正計算を加えて算出される地形条件補正後評価要素を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日射量の評価方法および評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定領域についての日射量の評価に静止衛星画像を用いるものとしては、従来、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例は静止衛星画像の画素値から各画素に対応する領域のアルベード値や輝度温度を取得するもので、予め取得しておいた過去における同一時間帯の晴天時のアルベード値等と比較することにより晴天か雲天かを判別し、晴天か雲天かに応じてそれぞれ所定の計算式により日射量を算出する。計算式には太陽天頂角や太陽定数、太陽-地球間の距離、オゾンの吸収に関する透過率等の各種透過率、雲の日射吸収係数などが用いられるほか、上記アルベード値も用いられる。なお、上記アルベード値は画素の反射率を太陽天頂角の余弦で除算して得られる。
【0003】
また、特許文献2には、反射量と日射量が統計的な関係に基づいた回帰係数によって直接的に結びつけられることを利用し、反射量、すなわち静止気象衛星画像の画素値に基づいて直接的に日射量を推定する手法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-211560号公報
【特許文献2】特開2004-118639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の従来例のように、静止衛星画像を日射量の評価に用いる場合、画素値のみ、あるいはこれに加えて太陽や大気の性状といった天体、気象条件ばかりが考慮されるに過ぎず、地形条件を考慮していなかったために精度に劣り、例えば農業の作柄やヒートアイランド現象の解析などの用途においては評価が有効に機能することができなかった。
【0006】
本発明はかかる欠点を解消すべくなされたものであって、地形条件を考慮することにより精度を高めることができる日射量の評価方法および評価装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
静止衛星画像データ1を撮像日時データとともに取得した後、
前記静止衛星画像データ1を3次元地図モデル2と結合させ、
次いで、結合データに静止衛星画像データ1の地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュ3を設定し、該メッシュ3に従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定し、
この後、前記3次元地図モデル2と前記撮像日時データにより特定される太陽位置とに基づいて前記評価対象領域内に生じる日影領域4を演算し、所定の判定基準に従って前記メッシュ3の各セル8が日影領域4に属するか否かを判定するとともに、
静止衛星画像データ1における各画素の画素値5と各画素に対応する領域の日射量評価要素6とを対応づけたテーブル7を参照して前記評価対象領域内の各セル8の日射量評価要素6を取得し、且つ、当該セル8が日影領域4に属すると判定されている場合には前記日射量評価要素6に所定の補正計算を加えて算出される地形条件補正後評価要素を前記日射量評価要素6に代えて取得して評価対象領域の日射量を評価する日射量の評価方法を提供することにより達成される。
【0008】
本発明によれば、地形による日影の発生を考慮して日射量を評価することができるため、地形による日影の影響が及ぶような領域の評価精度を極めて高めることができる。日影の発生は、精密な位置情報を付与するために従来より静止衛星画像データ1に結合されていた2次元地図データに代えて3次元地図データ21を用い、3次元地図モデル2と太陽位置とにより日影領域4を演算することで把握することができる。
【0009】
したがって本発明によれば、農業の作柄、作物適地選定、精密農業のパラメータや、ヒートアイランド現象の解析といった際に要求される精度に応えることができる日射量評価を行うことができる。
【0010】
また、日影領域4の判定は、静止衛星画像データ1と3次元地図モデル2とを結合して形成される結合データに静止衛星画像データ1の地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュ3を設定し、このメッシュ3のセル8単位で行うことにより、比較的高い分解能が見込まれる3次元地図データ21と、比較的低い分解能しか期待しにくい静止衛星画像データ1との間で分解能を徒に低下させることなく行うことができる。この場合、セル8の中心を判定代表点28とし、太陽位置との関係で日影領域4が演算される3次元地図モデル2上において、上記判定代表点28が日影領域4に属するか否かをセル8単位の日影判定基準にすることができる。
【0011】
以上のようにして日影領域4に属すると判定されたときの日射量の評価への反映は、日影の発生を考慮していなかった従来技術において導き出される日射量評価要素6に所定の補正計算を加えれば足りる。この補正計算は、日影による直達日射量の喪失を考慮したり、経験則に基づいた統計に従って設定したりするなどして適宜行うことが可能である。
【0012】
また、日射量評価に対する地形条件の考慮は、以上の地形による日影発生のほか、傾斜地形に対するものとしても有用であり、この場合、
静止衛星画像データ1を撮像日時データとともに取得した後、
前記静止衛星画像データ1を3次元地図モデル2と結合させ、
次いで、結合データに静止衛星画像データ1の地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュ3を設定し、該メッシュ3に従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定し、
この後、前記3次元地図モデル2に基づいて所定の判定基準に従って評価対象領域内のメッシュ3の各セル8の代表傾斜角および代表傾斜方位を求め、前記撮像日時データにより特定される太陽位置から各セル8が日射方向に垂直な平面(水平面)と仮定された場合に受ける日射量評価から前記代表傾斜角および代表傾斜方位をとるときに受ける日射量評価へと変換する傾斜補正係数を各セル8毎に演算し、
且つ、静止衛星画像データ1における各画素の画素値5と各画素に対応する領域を水平面に仮定したときの領域毎の日射量評価要素6とを対応づけたテーブル7を参照して前記評価対象領域内の各セル8の日射量評価要素6を取得した後、該日射量評価要素6を前記補正係数により補正計算して算出されたセル8毎の地形条件補正後評価要素を取得して評価対象領域の日射量を評価するように日射量の評価方法を構成することができる。
【0013】
この発明において、日射量の評価は、日射を受ける評価対象領域の地表面の傾斜を考慮してなされ、これにより傾斜地の日射量の評価精度を極めて高めることができる。傾斜情報は3次元地図データ21から取得することが可能であり、例えば、上述同様、セル8の中心を判定代表点28とし、各セル8の代表傾斜角および代表傾斜方位を周辺セル8の判定代表点28の標高データにおける差分に基づいて演算して判断することが可能である。
【0014】
したがってこの発明においても、上述同様、農業の作柄、作物適地選定、精密農業のパラメータや、ヒートアイランド現象の解析といった際に要求される精度に応えることができる日射量評価を行うことができる。
【0015】
傾斜情報の日射量評価への反映は、傾斜情報から日射量評価の補正係数を演算しておけばよく、地表面の傾斜を考慮していなかった従来技術において導き出される評価値に補正係数により補正計算を加えれば足りる。補正係数は、例えばランベルトの余弦則を考慮するなどして適宜決定することが可能である。
【0016】
また、以上のように地表面の傾斜情報を得ておくことにより、太陽位置と地表面の傾斜情報に基づいて太陽光の地表面からの反射日射量を演算し、日射量の評価に加えることも可能である。
【0017】
以上の2発明において、静止衛星画像データ1の画素値5と一対一対応して導き出されるようにされる日射量評価要素6としては、上述した従来例のように、日射量をそのまま適用したり、あるいは日射量を把握する際の主要要素となり得る雲の日射透過係数等を適用したりすることが可能であり、また、日射量評価のための評価量としては、同様に日射量をそのまま適用したり、あるいは適宜の指数を採用することが可能である。この場合において、日射量の評価指数として機能させることが可能な上述の雲の日射透過係数を採用した場合、特定されている太陽位置から雲の日射透過係数を用いて日射量を演算して評価することもできる。
【0018】
また、以上においては地形による日影情報や、地表面の傾斜情報を各々用いることにより地形条件を考慮した日射量評価を行う場合を示したが、これら双方の情報を合わせて考慮することによって評価精度をさらに向上させることができる。加えて、以上において評価要因とする静止衛星画像データ1について撮像時間を異ならせたものを複数用い、複数の静止衛星画像データ1から複数の日射量評価要素6、補正後評価要素を取得し、これらを平均して所定時間当たりの日射量評価要素6等を算出したり、日射量評価要素6等の時間的な変化を把握することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、地形条件を考慮することにより精度を高めた日射量の評価方法および評価装置を提供することができ、農業の作柄、作物適地選定、精密農業のパラメータや、ヒートアイランド現象の解析を日射量評価に基づいて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る大まかな処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るコンピュータのブロック図である。
【図3】日射量の演算ステップにおける詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図4】日射量の演算に係る処理の構成を示す図で、(a)は演算の対応モデルを示す図、(b)は画素値・雲の日射透過係数テーブル7の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明に係る日射量評価の処理手順の大まかな流れを、図2にこの処理手順を実行するコンピュータのブロック図を示す。このコンピュータは、取得手段9を備えた入力部20と、3次元地図データ21を格納する記憶部22と、演算部23と、図外のモニタ等に演算結果を出力する出力部24とを備えて構成される。日射量評価の処理は、先ず最初にコンピュータが上記取得手段9により例えばインターネットあるいは適宜の記憶媒体を介して日本気象協会等から静止衛星画像データ1を取得するステップ(ステップS1)を実行することにより開始される。この静止衛星画像データ1の取得に際しては、アノテーションデータとして同時に撮影日時情報や撮影領域の緯度や経度からなる座標情報も取得される。
【0022】
上記静止衛星画像データ1は地上解像度に従った密度の画素の集合であり、各画素は輝度データ等からなる画素値5を備える。この画素値5は撮影対象からの反射データであり、したがって例えば反射率の大きく異なる陸と海では大きく異なり、このため線状に画素値5が大きく異なって配置される部位を海岸線等として判断することが可能である。
【0023】
以上の静止衛星画像データ1に基づいて日射量を評価するために、上述した演算部23は、図2に示すように、地図モデル結合手段10、評価対象領域設定手段11、日影判定手段12、傾斜補正演算手段14、日射量評価手段13を有して構成される。
【0024】
地図モデル結合手段10は、静止衛星画像データ1を上述した3次元地図データ21と結合させるものであり、静止衛星画像データ1に幾何補正を施し、上述した座標情報を媒介にして3次元地図データ21に位置合わせして結合する。なお、この位置合わせは静止衛星画像データ1の座標精度が低いことからやや精度に劣るため、地図モデル結合手段10には上述した海岸線等を結合ポイントとして抽出する図示しない結合ポイント設定部が設けられ、位置合わせに際して結合ポイントのマッチングによる誤差修正が加えられる。
【0025】
評価対象領域設定手段11は、日射量を評価する領域を設定するものであり、図2に示すように、メッシュ設定手段25と、代表値設定手段26と、領域設定手段27とを有して構成される。メッシュ設定手段25は静止衛星画像データ1、より正確には上述したように静止衛星画像データ1を3次元地図データ21と結合した合成データ上にメッシュ3を設定するもので、このメッシュ3は静止衛星画像データ1の地上解像度、すなわち静止衛星画像データ1上の1画素が対応している地上領域に合わせられる。また、代表値設定手段26は、形成されたメッシュ3の各セル8、8、・・に単一の代表的な座標情報を設定するものであり、この実施の形態においては各セル8の中心点が判定代表点28とされてその座標情報が適用される。領域設定手段27は、上述した入力部20に含まれる図示しないマウス等からの入力により指定された領域、言い換えれば指定した領域に対応する単数あるいは複数のセル8のみを合成データ内における評価対象領域に設定するものである。なお、入力部20からの評価対象領域の指定がない場合には、静止衛星画像データ1上の全領域を評価対象領域に設定して処理を進めるようにすることも可能である。
【0026】
日影判定手段12は、上述した合成データに含まれる3次元地図データ21の3次元地図モデル2を利用して日影領域4を判定するものであり、日影演算手段29と、セル判定手段30とを備える。日影領域4を演算するための太陽位置は上述した撮影日時情報により特定することが可能であり、日影演算手段29は、記憶部22に設けられた日時・太陽座標テーブル31を参照して撮影日時情報から太陽位置を取得し、3次元地図モデル2上に日射をシミュレートして評価対象領域内の日影領域4を演算する。セル判定手段30は、日影領域4に属するか否かを評価対象領域内においてセル8単位で判定するものであり、この実施の形態においては上述したセル8の中心点を判定代表点28とし、この判定代表点28が日影領域4に属しているか否かにより判定する。
【0027】
傾斜補正演算手段14は、上述した3次元地図モデル2に基づいて評価対象領域内の各セル8の傾斜情報、すなわち各セル8の代表傾斜角、代表傾斜方位を設定する傾斜抽出手段32と、この代表傾斜角、代表傾斜方位をとるときに各セル8が受ける日射量を各セル8が水平面と仮定したときに受けるであろう仮定日射量から算出するための傾斜補正係数をセル8毎に設定する傾斜補正係数設定手段33とを有する。傾斜抽出手段32は、この実施の形態において、各セル8の傾斜情報を当該セル8の縦・横・斜めの周辺8方向に位置する8セルからなる周辺セル8の標高情報に基づいて決定する。より具体的には、例えば、周辺セル8と中心に位置する中心セル8との標高差分を8方向全てについて求め、差分の8方向全てについての合計が最も小さくなるときの中心セル8の傾斜角、傾斜方位を代表傾斜角、代表傾斜方位に決定する。また、傾斜補正係数設定手段33は、各セル8を水平面と仮定したときの日射量から代表傾斜角、代表傾斜方位をとるときの日射量に変換する傾斜補正係数をセル8毎に設定する。この傾斜補正係数は、セル8の水平面に対する傾斜情報の関数であり、例えば撮影日時情報により特定される太陽位置を逐次利用して算出するように構成してもよい。
【0028】
日射量評価手段13は、この実施の形態においては評価対象領域内の日射量自体を算出するものとして構成され、また、この実施の形態において評価対象領域の日射量は、評価対象領域内の各セル8の日射量を平均して算出される。さらにまた、撮影時間の異なる複数の静止衛星画像データ1、1、・・における日射量を平均することにより、1時間当たり、1日当たり、1ヶ月当たりなどの適宜時間単位の日射量が算出される。
【0029】
セル8毎の日射量の算出は、算出対象領域を水平面に仮定し、且つ、地形による日影の発生を考慮しない既存の日射量算出手法により算出される推定日射量に対し、上述した日影や傾斜による減衰を反映してなされる。上記推定日射量の算出は、具体的には、記憶部22の画素値・雲の日射透過係数テーブル7を参照して各セル8に対応する静止衛星画像データ1の画素値5から各セル8の雲の日射透過係数(日射量評価要素6)を取得し、また、上述した太陽位置を利用して太陽天頂角等を導き出し、あるいは記憶部22から読み出す等、公知の日射量計算式に必要な各種計算パラメータを適宜入手して計算することによってなされる。
【0030】
なお、上記画素値・雲の日射透過係数テーブル7は、一定の関連性が認められる画素値5と雲の日射透過係数6とを対応づけたものであり、図4(b)に示すように構成することが可能で、例えば過去における画素値5と実測日射量を蓄積して統計的手法により対応付けを導き出すことなどにより形成することが可能である。また、上述したセル8に対応する画素値5とは、一般には上述した合成データにおいて当該セル8の画素値5となるが、地表面に対する太陽光の入射角が極めて鈍角になる太陽位置の場合には、当該セル8の地表面に入射する太陽光が他のセル8上の雲を通過している場合も考えられることから、入射角に対応する他のセル8の画素値5に基づく雲の日射透過係数6を採用することも可能である。
【0031】
また、このようにして推定日射量を得た後は、セル判定手段30の当該セル8に対する判定が日影判定であった場合には、日射量を0にし、あるいは所定割合減衰させ、さらに、上述した傾斜補正係数による補正計算を重ねてセル8毎の日射量(地形条件補正後評価要素)が算出される。上述したように評価対象領域に属する全セル8の日射量を平均し、あるいはさらに、複数の静止衛星画像データ1からの算出結果を平均して得た日射量は、出力部24から出力されて図外のモニタに表示される。表示は、例えば、日射量に応じて選定される色を評価対象領域に重ねて地図データ上に表現するなどにより行うことができる。
【0032】
以上の演算部23によるコンピュータの動作手順を図1に従って説明する。演算部23は、上述したように静止衛星画像データ1等が取得手段9により取得されると、記憶部22から3次元地図データ21を読み出し、地図モデル結合手段10により静止衛星画像データ1と3次元地図データ21とを結合させるステップ(ステップS2)を実行し、次に、このようにして得られた結合データ上に、メッシュ設定手段25により、例えば予め静止衛星画像データ1の地上解像度に合わせて設定されたメッシュ3を平面座標に従って設定するステップを実行する(ステップS3)。
【0033】
次いで、代表値設定手段26により、上記3次元地図データ21に含まれる3次元座標情報を利用してメッシュ3の各セル8の判定代表点28の3次元座標情報を参照し、この座標情報を各セル8に座標に関する属性等として設定するステップ(ステップS4)を実行するとともに、領域設定手段27により、日射量の評価対象領域について、上述した3次元地図データ21に含まれる地図や座標情報を利用して、メッシュ3の区画に基づいて設定するステップ(ステップS5)を実行する。
【0034】
この後、日影演算手段29により、取得手段9により取得されている撮影日時情報により日時・太陽座標テーブル31を参照して太陽位置を特定し、この太陽位置と上記3次元地図データ21により構成可能な3次元地図モデル2とから評価対象領域に発生する日影領域4を演算するステップ(ステップS6)を実行した後、セル判定手段30により、評価対象領域内の各セル8が日影領域4に属するか否かの判定がなされ、判定結果を各セル8の日影に関する属性として設定するステップ(ステップS7)を実行する。したがって例えば図4(a)に示すように、静止衛星画像データ1面と、3次元地図データ21面と、この3次元地図データ21に基づく3次元地図モデル2とが相互に位置合わせされ、図において点線で示すように画素の地上解像度に対応してメッシュ3が設定され、上記3次元地図モデル2に対して撮影日時情報により特定される位置をとる太陽34からの光が入射して図においてハッチングで示すような日影領域4が発生する場合、3次元地図モデル2の輪郭線上に白丸で示す各セル8の判定代表点28が日影領域4に属するセル8は3次元地図データ21面上に太線で示すように日影と判定され、残余のセル8は日影でないと判定される。
【0035】
一方、傾斜抽出手段32により、3次元地図データ21を参照して得られる隣接するセル8との標高値差分から各セル8の代表傾斜角、代表傾斜方位を抽出するステップ(ステップS8)が実行された後、この傾斜情報と太陽位置とから特定される各セル8への太陽光の入射角等に基づいて、静止衛星画像データ1の画素値5と日射量との傾斜補正係数を演算し、傾斜補正係数を各セル8の傾斜に関する属性として設定するステップ(ステップS9)が実行される。
【0036】
そして最後に、日射量評価手段13により、各セル8の画素値5、座標情報、日影に関する属性、傾斜補正係数、および太陽位置に基づいて、評価対象領域の日射量を算出するステップ(ステップS10)が実行される。具体的には、図3に示すように、先ず、画素値・雲の日射透過係数テーブル7を参照して各セル8の画素値5から雲の透過係数6を取得し、この雲の透過係数6と太陽位置、各セル8の座標情報等から各セル8を地形によって日影になることがなく、かつ水平面と仮定したときの推定日射量が算出される(ステップS10-1)。次に、各セル8の日影に関する属性等を参照し(ステップS10-2)、日影ではないと判定されているセル8については、さらにそのまま傾斜補正係数を参照して該傾斜補正係数を用いて推定日射量から日射量を算出する(ステップS10-4)。
【0037】
一方、上述とは逆に日影と判定されているセル8については、上述した日射量から日影を考慮した日射量に変換する日影補正係数を設定し(ステップS10-3)、この後、上述した傾斜補正係数と合わせて日影補正係数を用いて推定日射量から日射量を算出する(ステップS10-4)。以上の日射量の算出は評価対象領域内の全てのセル8、8・・について繰り返され(ステップS10-5)、評価対象領域内の全てのセル8、8・・について日射量が得られたらこれを平均して評価対象領域の日射量(S10-6)を演算する。また、撮像時間が異なる静止衛星画像データ1の複数を用いて単位時間の比較的長い日射量を求めるこの発明において、以上の評価対象領域の日射量の算出は複数の静止衛星画像データ1に対して繰り返し行われ(ステップS10-7)、この後、各々算出される評価対象領域の日射量の複数を平均して単位時間の長い日射量が求められる(ステップS10-8)。
【0038】
なお、以上においては日影の判定や、セル8に対する日影判定結果の反映を傾斜の演算やセル8に対する傾斜演算結果の反映に先立って処理する場合を示したが、傾斜の演算等を日影の判定等に先だって処理することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 静止衛星画像データ
2 3次元地図モデル
3 メッシュ
4 日影領域
5 画素値
6 日射量評価要素
7 テーブル
8 セル
9 取得手段
10 地図モデル結合手段
11 評価対象領域設定手段
12 日影判定手段
13 日射量評価手段
14 傾斜補正演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止衛星画像データを撮像日時データとともに取得した後、
前記静止衛星画像データを3次元地図モデルと結合させ、
次いで、結合データに静止衛星画像データの地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュを設定し、該メッシュに従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定し、
この後、前記3次元地図モデルと前記撮像日時データにより特定される太陽位置とに基づいて前記評価対象領域内に生じる日影領域を演算し、所定の判定基準に従って前記メッシュの各セルが日影領域に属するか否かを判定するとともに、
静止衛星画像データにおける各画素の画素値と各画素に対応する領域の日射量評価要素とを対応づけたテーブルを参照して前記評価対象領域内の各セルの日射量評価要素を取得し、且つ、当該セルが日影領域に属すると判定されている場合には前記日射量評価要素に所定の補正計算を加えて算出される地形条件補正後評価要素を前記日射量評価要素に代えて取得して評価対象領域の日射量を評価する日射量の評価方法。
【請求項2】
静止衛星画像データを撮像日時データとともに取得した後、
前記静止衛星画像データを3次元地図モデルと結合させ、
次いで、結合データに静止衛星画像データの地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュを設定し、該メッシュに従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定し、
この後、前記3次元地図モデルに基づいて所定の判定基準に従って評価対象領域内のメッシュの各セルの代表傾斜角および代表傾斜方位を求め、前記撮像日時データにより特定される太陽位置から各セルが水平面と仮定された場合に受ける日射量評価から前記代表傾斜角および代表傾斜方位をとるときに受ける日射量評価へと変換する傾斜補正係数を各セル毎に演算し、
且つ、静止衛星画像データにおける各画素の画素値と各画素に対応する領域を水平面に仮定したときの領域毎の日射量評価要素とを対応づけたテーブルを参照して前記評価対象領域内の各セルの日射量評価要素を取得した後、該日射量評価要素を前記補正係数により補正計算して算出されたセル毎の地形条件補正後評価要素を取得して評価対象領域の日射量を評価する日射量の評価方法。
【請求項3】
前記各セルには、セルの中心点を基準にした3次元座標データが各々設定され、
且つ、前記撮像日時データにより特定される太陽位置で各セルが日影領域に属するか否かを前記中心点の3次元座標が3次元地図モデルにおいて日影領域に属するか否かで判定する請求項1記載の日射量の評価方法。
【請求項4】
前記各セルには、セルの中心点を基準にした3次元座標データが各々設定され、
且つ、各セルの代表傾斜角および代表傾斜方位を周辺セルの中心点の標高データと中心セルの中心点の標高データとの差分に基づいて演算する請求項2記載の日射量の評価方法。
【請求項5】
前記テーブルには、日射量評価要素として雲の日射透過係数が設定され、
前記撮像日時データにより特定される太陽位置と前記日射透過係数に基づいて日射量が演算される請求項1ないし3のいずれかに記載の日射量の評価方法。
【請求項6】
静止衛星画像データを撮像日時データとともに取得する取得手段と、
前記静止衛星画像データを3次元地図モデルと結合させる地図モデル結合手段と、
結合データに静止衛星画像データの地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュを設定し、該メッシュに従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定する評価対象領域設定手段と、
前記3次元地図モデルと前記撮像日時データにより特定される太陽位置とに基づいて前記評価対象領域内に生じる日影領域を演算し、所定の判定基準に従って前記メッシュの各セルが日影領域に属するか否かを判定する日影判定手段と、
前記静止衛星画像データにおける各画素の画素値と各画素に対応する領域の日射量評価要素とを対応づけたテーブルを参照して前記評価対象領域内の各セルの日射量評価要素を取得し、且つ、当該セルが日影領域に属すると判定されている場合には前記日射量評価要素に所定の補正計算を加えて算出される地形条件補正後評価要素を前記日射量評価要素に代えて取得して評価対象領域の日射量を評価する日射量評価手段とを有する日射量の評価装置。
【請求項7】
静止衛星画像データを撮像日時データとともに取得する取得手段と、
前記静止衛星画像データを3次元地図モデルと結合させる地図モデル結合手段と、
結合データに静止衛星画像データの地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュを設定し、該メッシュに従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定する評価対象領域設定手段と、
前記3次元地図モデルに基づいて所定の判定基準に従って評価対象領域内のメッシュの各セルの代表傾斜角および代表傾斜方位を求め、前記撮像日時データにより特定される太陽位置から各セルが水平面と仮定された場合に受ける日射量評価から前記代表傾斜角および代表傾斜方位をとるときに受ける日射量評価へと変換する補正係数を各セル毎に演算する傾斜補正演算手段と、
前記静止衛星画像データにおける各画素の画素値と各画素に対応する領域を水平面に仮定したときの領域毎の日射量評価要素とを対応づけたテーブルを参照して前記評価対象領域内の各セルの日射量評価要素を取得した後、該日射量評価要素を前記補正係数により補正計算して算出されたセル毎の地形条件補正後評価要素を取得して評価対象領域の日射量を評価する日射量評価手段とを有する日射量の評価装置。
【請求項8】
静止衛星画像データを撮像日時データとともに取得した後、
前記静止衛星画像データを3次元地図モデルと結合させ、
次いで、結合データに静止衛星画像データの地上解像度に従って平面座標に基づくメッシュを設定し、該メッシュに従って結合データ中の所定領域を評価対象領域として設定し、
この後、前記3次元地図モデルと前記撮像日時データにより特定される太陽位置とに基づいて前記評価対象領域内に生じる日影領域を演算し、所定の判定基準に従って前記メッシュの各セルが日影領域に属するか否かを判定するとともに、
前記3次元地図モデルに基づいて所定の判定基準に従って評価対象領域内のメッシュの各セルの代表傾斜角および代表傾斜方位を求め、前記太陽位置から各セルが水平面と仮定された場合に受ける日射量評価から前記代表傾斜角および代表傾斜方位をとるときに受ける日射量評価へと変換する補正係数を各セル毎に演算し、
且つ、静止衛星画像データにおける各画素の画素値と各画素に対応する領域を水平面に仮定したときの領域毎の日射量評価要素とを対応づけたテーブルを参照して前記評価対象領域内の各セルの日射量評価要素を取得した後、当該セルが日影領域に属すると判定されている場合には前記日射量評価要素に所定の補正計算を加えるとともに、前記補正係数によりさらに補正計算して算出される地形条件補正後評価要素を前記日射量評価要素に代えて取得して評価対象領域の日射量を評価する日射量の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−217107(P2010−217107A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66770(P2009−66770)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【特許番号】特許第4425983号(P4425983)
【特許公報発行日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)