説明

日本芝に対する薬害を軽減させた芝生用除草剤

【課題】日本芝に対する選択性の無いトリアジン系除草剤を使用しながらも、日本芝に対する薬害を軽減させ、日本芝生内に発生する雑草に除草効果を有する、日本芝に対する安全性の高い除草剤を提供すること。
【解決手段】有効成分としてシアナジンを含有し、粒径が0.5乃至1.0mmの粒剤の形態を有する、芝生用除草剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン系除草剤を含有し、完全土壌処理する製剤である粒剤または細粒剤にすることにより、日本芝に対する薬害を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芝生用除草剤としては洋芝用、日本芝用に、トリアゾール誘導体を有効成分とする芝生地雑草防除剤組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照)。日本芝用で、イネ科一年生雑草、広葉雑草を防除対象とし、イソプロチュロンを有効成分とする芝生用除草剤も報告されている(例えば、特許文献2参照)。これら特許文献中の実施例では、製剤形態は水和剤、フロアブル剤、乳剤、サスポエマルション剤等すべて液剤である。
【0003】
アトラジン、シマジンといった日本芝に対し生理的選択性を有するトリアジン系除草剤は、日本芝に対する薬害がないため、使用時期を選ばず大量に使用されているが、環境への流出等の懸念があるため、使用を制限したり、使用禁止となったりする地域が出てきている。
【0004】
一方、同様の化学的基本構造を持ちながら芝地内雑草に対し高い除草効果を有するものの、日本芝に対する安全性が十分ではないために、シアナジンは日本芝が冬枯れする晩秋に低薬量を処理し、日本芝地内の1年生広葉雑草の防除を行うという、極めて制約された使用がなされている。
【0005】
薬害軽減に着目した、芝用発芽前土壌処理除草剤も報告されている(例えば、特許文献3参照)。酢酸ビニル系重合体エマルジョンを散布することで、除草剤の土壌中移行距離を減少させるのであるが、重合体の一部が土壌中に残留する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−124417号公報
【特許文献2】特開2001−199814公報
【特許文献3】特開平9−77609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、トリアジン系除草剤の中でも日本芝に対し生理的選択性を有さない有効成分を使用し、土壌処理製剤である粒剤または細粒剤とすることにより、日本芝内に発生する雑草に対する除草効果を有し、日本芝に対する薬害を軽減させた、日本芝に対する安全性の高い除草剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、トリアジン系除草剤の中でも日本芝に対し生理的選択性を有さない有効成分を完全土壌処理し、有効成分を日本芝および芝地内雑草の根から吸収させることにより、日本芝に対する生理的選択性が出現して、日本芝に対する薬害がなく、芝地内の雑草を防除できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、有効成分としてシアナジンを含有し、粒径が0.5乃至1.0mmの粒剤の形態を有する、芝生用除草剤である。
【0010】
本発明の芝生用除草剤中のシアナジンの含有量は、0.1%〜10%である。本発明の除草剤は、モノクロロトリアジン系除草剤の一つである。モノクロロトリアジン系除草剤とは、トリアジン骨格の2位にクロロ基を有し、4位と6位に置換アミノ基を有する除草剤のことである。日本芝に対し生理的選択性を有さないモノクロロトリアジン系除草剤の除草剤有効成分の中で好ましいのはシアナジン、化学名2−(4−クロロ−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ−2−メチルプロピオニトリルである。
【0011】
本発明の完全土壌処理の製剤として、粒剤または細粒剤に製剤化し、完全土壌処理化することによって、有効成分を日本芝および芝地内雑草の根から吸収させることにより、日本芝に対し生理的選択性を有さないモノクロロトリアジン系除草剤の有効成分であるにもかかわらず、日本芝に対する生理的選択性が出現し、日本芝に対する薬害がなく、芝地内の雑草を防除することができるのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モノクロロトリアジン系除草剤であって、日本芝に対し生理的選択性を有さない有効成分を含有する粒剤または細粒剤を、芝地内に散布することにより水和剤またはゾル剤に比べ日本芝に対する薬害を軽減させることができ、日本芝に対する優れた安全性を有し、芝地内に発生する1年生イネ科雑草および1年生広葉雑草に対して高い除草効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
除草剤の製剤形態としては、日本芝の茎葉には製剤が付着せず、処理した製剤のほとんどが土壌に落下する製剤形態である粒剤または細粒剤が採用される。
【0014】
粒剤および細粒剤の担体としては、ベントナイト、珪藻土、乾式クレー、湿式クレー、タルク、ゼオライト、珪石、珪砂、炭酸カルシウム、オリビンサンド、バーミキュライト、シラスアタパルジャナイト、蝋石、酸性白土、活性白土、フライアッシュ等があるが単品又は2種類以上の組合せで使用することが出来る。
【0015】
粒剤および細粒剤に混合する界面活性剤としては、具体的に粒剤及び細粒剤用の活性剤として、陰イオン系では一般的にアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル型、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を使用出来る。非イオン系ではポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル型が使用出来る。
【0016】
界面活性剤の添加量は陰イオン系、非イオン系単品、あるいは2種類以上の組合せで、0.5〜10部の界面活性剤を有効成分の物理的、化学的特性に合わせ選択し添加する。
【0017】
(実施例1)
[粒剤の作製]
始めに粉末物であるシアナジン原体5.0部、ベントナイト−Na30部、勝光山クレー62部、トリポリリン酸ナトリウム1.0部、活性剤ソルポール5060(スルホネート型/リン酸塩配合品)〜1.0部を仕込み、卓上型双腕ニーダー(PNV−5型:入江商会製)を約25〜51rpm/分で回転させて粉末物を十分に混合し、次に液状物の活性剤ペグノールTH−6( POEトリデシルエーテル:東邦化学(株)製)1.0部、水分量として10〜20%の上水を加えて十分に練合した。しっとり団子状になったところでニーダーより取り出してドームグランDG−L1型(不二パウダル(株)製)にドームダイスクリーン径0.8mmをセットして押出し造粒した。造粒後のWet状粒剤をバット上に広げて10〜60分間自然乾燥した後に、整粒して粒長を整えた粒剤を、循環式恒温乾燥機を用い70℃以下で3時間乾燥した。乾燥後に篩振とう機300−MM2形(筒井理化学機器(株)製)台上に1000ミクロン、500ミクロンの受皿篩を重ねてセットし、振とうさせて1000ミクロン以上、500ミクロン以下の塊、異物、粉末物を除去し、歩留率95%のシアナジン5%粒剤を得た。
【0018】
(実施例2)
[細粒剤の作製]
180〜710ミクロン範囲内のゼオライトの細粒担体の単品93.5部に10ミクロン以下に微粉化したシアナジン原体3部を加え、ニューグラマシン混合機(SEG−350型セイシン企業(株)製)で回転羽を約200〜300rpm/分で回転させながら、活性剤のペグノールTH−8(POEラウリルエーテル:東邦化学(株)製)1.0部およびプロピレングリコール2.0部を滴下又はスプレー添加して細粒表面に均一に付着吸着させた後、さらにカープレックス0.5部を添加して細粒に流動性を与えた。この細粒剤を篩振とう機300−MM2形台上に1000ミクロン、180ミクロンの受皿篩を重ねてセットし、振とうさせて1000ミクロン以上、180ミクロン以下の粒子を除去し、歩留率95%のシアナジン3%細粒剤を得た。
【0019】
(実施例3)
[吹き付け粒剤の作製]
粒子径500〜1000ミクロン範囲内のガレオナイト練り込み粒状空玉品90部を、アイリッヒインテシブミキサー混合機(RV02E型日本アイリッヒ(株)製)に仕込み、混合機の回転羽を約100〜150rpm/分で回転させながら、別に密閉型湿式粉砕機(ダイノミルKDL型シンマルエンタープライゼス(株)製)で粒子径1〜3ミクロンに湿式粉砕したシアナジン(成分量50%)の水性懸濁分散液10部を、スプレー吹き付けして、粒状空玉品に付着吸着含浸させ、歩留率98%の吹き付けシアナジン5%粒剤を得た。
【0020】
(実施例4)
[コウライシバに対するトリアジン系除草剤の薬害試験]
茨城県において6月に慣行の生育管理を行っているコウライシバ圃場内に1m×1mの区画を作製し、区画内にメヒシバを播種した。
実施例1、2、および3に準じた方法により調製したシアナジン5%製剤を用い、メヒシバが2葉まで生育した6月上旬に、区画内に所定施用量を均一に散布した。
比較薬剤として市販シアナジン水和剤(商品名:グラメックス水和剤)を、1平方m当たり散布水量200mlの水道水で希釈し、電動散布器で区画内に均一に散布した。
薬剤処理後11、20、38日後にコウライシバに対する薬害程度、およびメヒシバに対する除草効果程度を観察調査し、本剤の有効性を調査した。同時に広葉雑草であるコニシキソウに対する除草効果程度も観察調査した。
結果は、表−1に示す通りである。
【0021】
芝地内の雑草に対する除草効果は、以下に示す観察基準に従い行った。
0:無処理区同様除草効果は観察されない。
1:無処理区に対し20%程度の防除効果を示す。
2:無処理区に対し40%程度の防除効果を示す。
3:無処理区に対し60%程度の防除効果を示す。
4:無処理区に対し80%程度の防除効果を示す。
5:完全枯死。
【0022】
日本芝に対する薬害程度の調査は、以下に示す観察基準に従い行った。
0:無処理区同様(影響なし)
1:僅かな薬害症状有り
2:薬害症状が観察され、実用できないと判断される程度
3:中程度の薬害症状が観察され、実用できないと判断される程度
4:薬害症状は甚大であり実用できないと判断される程度
5:薬害症状により完全に枯死している程度
【0023】
【表1】

【0024】
(実施例5)
[ノシバに対する薬害試験]
茨城県において6月に慣行の生育管理を行っているノシバ圃場内に1m×1mの区画を作製し、区画内にメヒシバを播種した。
実施例1、2、および3に準じた方法により調製したシアナジン5%製剤を用い、メヒシバが2葉まで生育した6月上旬に区画内に所定施用量を均一に散布した。
比較薬剤として市販シアナジン水和剤(商品名:グラメックス水和剤)を、1平方m当たり散布水量200mlの水道水で希釈し、電動散布器で区画内に均一に散布した。
薬剤処理後11、20、38日後にノシバに対する薬害程度、およびメヒシバに対する除草効果程度を観察調査し、本剤の有効性を調査した。同時に広葉雑草であるコニシキソウに対する除草効果程度も観察調査した。
結果は、表−2に示す通りである。
【0025】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、モノクロロトリアジン系除草剤であって、日本芝に対し生理的選択性を有さない有効成分であっても、粒剤または細粒剤として芝生内に散布することにより、水和剤またはゾル剤に比べ日本芝に対する薬害を軽減させることができ、日本芝に対し優れた安全性を有し、芝地内に発生する1年生イネ科雑草および1年生広葉雑草に対して高い除草効果を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてシアナジンを含有し、粒径が0.5乃至1.0mmの粒剤の形態を有する、芝生用除草剤。
【請求項2】
前記芝生用除草剤中のシアナジンの含有量が、0.1%〜10%であることを特徴とする請求項1記載の芝生用除草剤。

【公開番号】特開2012−126754(P2012−126754A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85315(P2012−85315)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【分割の表示】特願2006−19028(P2006−19028)の分割
【原出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】