説明

日焼け止め化粧料

【課題】特定のジベンゾイルメタン誘導体からなる紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料において、該紫外線吸収剤の光安定性を顕著に増大させた日焼け止め化粧料を提供すること。
【解決手段】4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンと、下記一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体とを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料である。
一般式(I)


(但し、R1は水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基、R2は炭素数1〜7のアルキル基、R3は炭素数2〜10の二価のアルキレン基、又はオキシアルキレン基、R4は同一、又は異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はトリメチルシロキシ基、m、nは0〜3の整数、pは0又は1を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日焼け止め化粧料に関するものである。さらに詳しくは、特定のジベンゾイルメタン誘導体からなる紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料において、該紫外線吸収剤の光安定性を顕著に増大させた日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料による重要な紫外線吸収波長領域は、UV−A領域(320〜400nm)とUV−B領域(290〜320nm)である。そして、UV−A領域(320〜400nm)の紫外線は皮膚を黒く侵すが、UV−B領域(290〜320nm)の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。ところが近年になってUV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対してUV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることがわかってきた。
【0003】
今日までに使用されてきた化粧料用紫外線吸収剤は、構造面から分類すると、(1)安息香酸誘導体、(2)ケイ皮酸誘導体、(3)ベンゾフェノン誘導体、(4)ジベンゾイルメタン誘導体、(5)サリチル酸誘導体等がある。そして近年は、(2)と(4)の紫外線吸収剤が多用されている。
【0004】
しかしながら、上記にあげた紫外線吸収剤は、実用面から見るとそれぞれに問題がある。例えば、(1)の安息香酸誘導体では、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルは、液状、透明であり、扱いやすい長所はあるが、これらの誘導体を含めて安全性の疑いがあり、近年は使用されていない。また、極大吸収波長が290nm付近にあり、UV−B領域のみの紫外線を吸収する。
【0005】
(2)のケイ皮酸誘導体では、現在市販されているサンケア化粧品に最もよく使用されている紫外線吸収剤として、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルエステルがある。極大吸収波長は310nm付近にあり、吸収域がUV−A領域には及ばない。また、日光により変質して着色性や紫外線防御効果の持続性に問題がある。
【0006】
(3)のベンゾフェノン誘導体では、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンがUV−A、UV−B領域にわたって吸収があり、比較的皮膚外用剤基剤への溶解性も良いが、極大吸収波長がややUV−B領域に近いところにあり、吸光度もあまり大きくない。また近年では基本骨格の構造物(ベンゾフェノン)が環境ホルモンとして指摘されていて、その使用が敬遠されている。
【0007】
(4)のジベンゾイルメタン誘導体では、4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタンがよく皮膚外用剤に使用されている。極大吸収が360nm付近にあり、吸光度も大きく、UV−A領域の紫外線吸収剤として優れている。
【0008】
(5)のサリチル酸誘導体では、サリチル酸オクチルが使われている。UV−B領域に極大吸収波長をもち、オイル状であり、パラフィンオイル等の相溶性に優れるが吸光度が低いため、あまり実用化されていない。
【0009】
このため、UV−B領域においては、(2)のp−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルが、UV−A領域に関しては(4)の4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタンが使用されることが多い。特に近年では、UV−A領域の紫外線吸収に対する要求が高まっている。
【0010】
ところが、UV−A領域の紫外線吸収剤として周知な4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン誘導体の問題点として、光安定性が乏しく、光照射によって、その紫外線吸収効果が劣化し、所謂、紫外線吸収剤のスタミナダウンが生じてしまう致命的な欠点がある。また、化粧料用の油分に対しての相溶性が悪く、少量しか混合できないという問題点も存在する
【0011】
これに対して、ジベンゾイルメタン誘導体の光安定性を向上させるために、アミノ置換されたヒドロキシベンゾフェノン(特許文献1)や、アルキルβ,β−ジフェニルアクリレートまたはα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート(特許文献2)を含有させた化粧料が開発されている。しかしながら、安定性向上は必ずしも十分とは言えない。
【0012】
一方、一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体を紫外線吸収剤として配合した皮膚外用剤は、特許文献3や特許文献4にて開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−192559号公報
【特許文献2】特許第2975682号公報
【特許文献3】特開平5−194543号公報
【特許文献4】特開平11−269050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、上記観点から、UV−A紫外線吸収剤であるジベンゾイルメタン誘導体の問題点に着目して鋭意研究を重ねた結果、ジベンゾイルメタン誘導体のうち、4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンに、特定構造のアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体を配合すると、驚くべきことに該紫外線吸収剤の光安定性が向上し、紫外線吸収効果のスタミナダウンを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の目的は、UV−A領域の紫外線吸収剤として利用度の高いジベンゾイルメタン誘導体を配合した日焼け止め化粧料において、その光安定性を著しく向上させて、紫外線吸収効果のスタミナダウンを抑制し、UV−A領域の紫外線吸収特性に極めて優れた日焼け止め化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンと、下記一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体とを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料を提供するものである。
一般式(I)
【化1】

(但し、R1は水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基、R2は炭素数1〜7のアルキル基、R3は炭素数2〜10の二価のアルキレン基、又はオキシアルキレン基、R4は同一、又は異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はトリメチルシロキシ基、m,nは0〜3の整数、pは0又は1を表わす。)
【0017】
また、本発明は、前記アルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体が、下記式(II)または(III)で表される化合物であることを特徴とする上記の日焼け止め化粧料を提供するものである。
式(II)
【化2】

式(III)
【化3】

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ジベンゾイルメタン誘導体を配合した日焼け止め化粧料において、その光安定性を著しく向上させ、紫外線吸収効果のスタミナダウンを抑制し、UV−A領域の紫外線吸収特性に極めて優れた日焼け止め化粧料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
「4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン」
本発明に用いるジベンゾイルメタン誘導体は、下記式で示される4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンである。本発明においては、市販品(パルソール1789:DSM Nutritional Products製)を利用できる。
【化4】

【0021】
「一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体」
一般式(I)のアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体は公知化合物である(特許第3229383号公報参照)。
1の例として水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−アミロキシ基、イソアミロキシ基、n−ヘキシロキシ基、2−エチルブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−オクチロキシ基、2−エチルヘキシロキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
2は炭素数が1〜7のアルキル基であればいずれでもよいが、カルボキシル基との結合炭素原子が二級又は三級のものが好ましい。特に好適なR2の例として、イソプロピル基、tert−ブチル基、エチルプロピル基又はエチルペンチル基等が挙げられる。
3は炭素数2〜10のアルキル基であればいずれでもよく、R3の例としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH2CH(CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、ヘキシレン、シクロヘキシレン、デシレン基等が挙げられるが、特に、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。R4の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシロキシ基等が挙げられるが、原料の入手のしやすさ等の理由からメチル基又はその一部がフェニル基であること又はトリメチルシロキシ基であることが好ましい。
【0022】
また、mは置換基の数を表わし0〜3の整数である。nはシロキサンの繰り返し単位数を表し、0〜3の整数である。pは0又は1である。
4は同一、又は異なってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシロキシ基等が挙げられるが、メチル基又はその一部がフェニル基であること、あるいはトリメチルシロキシ基であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いるアルキル−アリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体は、分子量により室温で液体ないし樹脂状の固体のものがあり、いずれもUV−A吸収剤として利用することができる。本発明のアルキル−アリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体は、下記第一段階のクライゼン縮合反応及び第二段階のヒドロシリル化反応の二段階反応により合成することができる。
第一段階
【化5】

又は、
【化6】

第二段階
{上記丸数字3の化合物}+{分子内に一つのSi−H基を含有する繰り返し単位数2〜5のシロキサン}→ 一般式(II)
【0024】
なお、前記反応式において、R1、R2、m、n、pは前記化2により定義されたものであり、Aは炭素数1〜5のアルキル基、Bは炭素数2〜10のアルケニル基又はオキシアルケニル基である。第一段階のクライゼン縮合反応は、R.Hauerらの「Organic Reactions」8巻、p59,John Wiley and Sons Inc., New York 1954に記載されており、本発明ではこれに準じた。
【0025】
すなわち、メチルアルキルケトン(丸数字1)又は置換アセトフェノン(丸数字5)と、脂肪酸又は置換安息香酸のアルキルフェニル(丸数字4)又は丸数字2の化合物を塩基の存在下で、例えばアルカリアルコレート、水酸化物又はアミド化合物、水素化ナトリウムの存在下で、トルエン、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドのような溶媒中、室温から沸点の間で反応を行ない、アルキル−アリール1,3−プロパンジオン誘導体(丸数字3)を得ることができる。第二段階反応はヒドロシリル化反応である。この反応は通常白金族金属、白金族金属の化合物、或いは該金属の錯化合物により促進されることが知られている(特開昭60−108431、特開昭60−210632、特開平1−50711等参照)
アルキルアリール1,3−プロパンジオン誘導体(丸数字3)と、一つのSiH基を含有する繰り返し単位数2〜5のシロキサンとの反応も、通常の触媒、例えば炭素に担持された白金、塩化白金酸、アセチルアセトン白金錯体、不飽和化合物類との白金錯体、不飽和シロキサン類白金錯体、ロジウム化合物及び白金化合物の錯体で反応が促進される。
【0026】
4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンの配合量は、目的の製品に応じて適宜決定されるが、日焼け止め化粧料全量に対して0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
また、一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体の配合量は、目的の製品に応じて適宜決定されるが、日焼け止め化粧料全量に対して0.5〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の日焼け止め化粧料には、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、その他の紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合して常法により製造することができる。例えば配合成分としては次のようなものが挙げられる。
【0028】
アボカド油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、月見草油、ヒマシ油、ヒマワリ油、茶実油、コメヌカ油、ホホバ油、カカオ脂、ヤシ油、スクワレン、牛脂、モクロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、流動パラフィン、ポリオキシエチレン(8モル)オレイルアルコールエーテル、モノオレイン酸グリセリル、シクロメチコン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどの油分。
カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの高級アルコール。
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸などの高級脂肪酸。
ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサンなどの保湿剤。
メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの増粘剤。
エタノール、1,3−ブチレングリコールなどの有機溶剤。
ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸などの酸化防止剤。
安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェンなどの抗菌防腐剤。
グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸と塩酸塩。
アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの有機酸。
ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチンなどのビタミン類。
ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニンなど)、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、セファランチン、プラセンタエキスなどの各種薬剤。
ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、タイム、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラなどの有機溶剤、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコールなどで抽出した天然エキス。
ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤。
エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤。
香料、スクラブ剤、精製水など。
【0029】
本発明の日焼け止め化粧料の特に好ましい基剤は、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソノナン酸イソノニル、ジメチルポリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、流動パラフィン、スクワラン、イソオクタン酸セチル、イソオクタン酸トリグリセライド、コハク酸ジ2−エチルヘキシルの油分である。本発明は特にデカメチルシクロペンタシロキサンを主成分基剤とする日焼け止め化粧料に好ましく利用される。
【0030】
本発明の日焼け止め化粧料は、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック等、その製品形態は問わない。またその剤型も特に問わない。
【実施例】
【0031】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0032】
<一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体
の合成例>
好ましい具体的化合物として下記化合物1〜9が挙げられるが、そのうち化合物1、化合物2、化合物5、化合物7、化合物8、化合物9の製造例を示す。
「化合物1」
【化7】


「化合物2」
【化8】


「化合物3」
【化9】


「化合物4」
【化10】


「化合物5」
【化11】


「化合物6」
【化12】




「化合物7」
【化13】


「化合物8」
【化14】


「化合物9」
【化15】


なお、前記化合物1〜9中、Si2、Si3、Si5はそれぞれ次の化学式で示される。
「Si2
【化16】


「Si3
【化17】








「Si5
【化18】

【0033】
「化合物1の製造例」
1−(3−メトキシ−4−アリロキシフェニル)−3−tert−ブチル1,3−プロパンジオン2.5g、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン1.7g、トルエン20mlの混液にヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物0.5mgを添加し、攪拌下に100〜105℃で6時間反応させた。反応終了後トルエンを減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2v/v%酢酸エチル−ヘキサン混液で溶出)で分離精製して無色の油状物2.6gを得た。収率は68.4%であった。λmax:335nm(ε=24090)、マススペクトルM+m/e 438
【0034】
「化合物2の製造例」
1−(3−メトキシ−4−アリロキシフェニル)−3−tert−ブチル1,3−プロパンジオン13.0g、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン11.0g、トルエン30mlの溶液にテトラメチルジビニルジシロキサン白金錯体トルエン溶液(白金含量4w/w%含有)0.03gを添加し、5時間攪拌下に還流した。反応終了後トルエンを減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(2v/v%酢酸エチル−ヘキサン混液で溶出)で分離精製して10.2gの目的物を得た。収率は47.1%であった。λmax:334nm(ε=23550)、マススペクトルM+m/e 512
【0035】
「化合物5の製造例」
1−(3−アリル−4,5−ジメトキシフェニル)−3−(1−エチルペンチル)−1,3−プロパンジオン3.4g、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン2.4g、トルエン20mlの溶液に、テトラメチルビニルジシロキサン白金錯体トルエン溶液(白金含量4w/w%含有)0.01gを添加し、還流下に6時間反応させた。反応終了後トルエンを減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムに付した。1v/v酢酸エチル−ヘキサン混液で溶出して目的物4.1gが得られた。収率は73.2%であった。
無色油状λmax:334nm(ε=23500)、マススペクトルM+m/e 568
【0036】
「化合物7の製造例」
1−{3−メトキシ−4−(2−メチル−2−プロペノキシ)フェニル}−3−tert−ブチル−1,3−プロパンジオン25.1g、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン20.2g、トルエン50mlの溶液に実施例2に記載の白金触媒0.05gを添加し、100℃〜110℃で18時間反応を行った。反応終了後、トルエンを留去し、残渣を減圧蒸留することにより目的物を分離精製した。収量28.8g、淡黄色油状、沸点bp182〜184℃/2mmHg、λmax:334nm(ε=27350)、マススペクトルM+m/e 526
【0037】
「化合物8の製造例」
1−{3−メトキシ−4−(4−ペンテノキシ)フェニル}−3−tert−ブチル−1,3−プロパンジオン38.7g、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン29.7g、実施例2に記載の白金触媒0.02gをトルエン70mlに溶かし、95℃〜100℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエンを留去し、残渣を減圧下に蒸留して目的とする化合物39.7gを得た。淡黄色油状、沸点bp215〜225℃(バス温)/2mmHgλmax:334nm(ε=23220)、マススペクトルM+m/e 540
【0038】
「化合物9の製造例」
1−(3−メトキシ−4−アリロキシフェニル)−3−tert−ブチル−1,3−プロパンジオンのクライゼン転移反応により得た1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−アリルフェニル)−3−tert−ブチル−1,3−プロパンジオン(淡黄色結晶、融点115〜116℃)18.4g、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン15.5g、実施例2記載の白金触媒0.02gをトルエン50mlに溶かし、100℃〜110℃で6時間反応を行った。反応終了後、トルエンを留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(7v/v%酢酸エチル−ヘキサン混液で溶出)により分離精製して、目的物21.7gを得た。淡黄色固体、融点38〜39℃λmax:342nm(ε=24000)、マススペクトルM+m/e 512
【0039】
下記「表1」に示す配合量の4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンを、化粧料用油分のトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルに溶解して、光照射による紫外線吸収特性の劣化について調べた。その結果を、図1に示す。
「測定方法及び条件」
調製したサンプル50μLをナイロン製の膜に均一に塗布した。15分放置後、分光光度計により358nmの吸光度を測定した(初期値)。測定後、SUNTEST XLS+(Atlas社製)にて2h照射(3900kJ/m2)を実施し、照射したサンプルを再度分光光度計にて測定した(試験後)。試験結果は次の式に従い算出した。
残存量(%)=試験後の吸光度(358nm)/試験前の吸光度(358nm)×100
【0040】
【表1】

A:4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン
B:ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
【化19】

(特許文献1記載のアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン誘導体)





C:1−(3−メトキシ−4−アリロキシフェニル)−3−tert−ブチル1,3−プロパンジオン{一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体}
【化20】


D:トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル
【0041】
図1は、光照射による紫外線吸収特性の劣化(スタミナダウン)を残存率で評価したグラフである。このグラフから分かるように、4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンに、一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体を組み合わせると、光安定性が向上し、紫外線吸収効果の劣化が著しく抑制できることが分かる。
【0042】
以下に本願発明の日焼け止め化粧料の処方例を挙げる。
「実施例4:日焼け止め化粧料 W/O乳液」
質量%
1.ジメチルポリシロキサン 1
2.デカメチルシクロペンタシロキサン 25
3.トリメチルシロキシケイ酸 5
4.ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1
5.ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
6.イソノナン酸イソノニル 5
7.ジプロピレングリコール 5
8.グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
9.グルタチオン 1
10.チオタウリン 0.05
11.クララエキス 1
12.パラベン 適量
13.フェノキシエタノール 適量
14.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7.5
15.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
16.球状ポリアクリル酸アルキル粉体 5
17.ブチルエチルプロパンジオール 0.5
18.4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン 2
19.式(II)のアルキル−アリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体

20.疎水化処理酸化亜鉛または疎水処理酸化チタン 15
21.精製水 残余
製造方法
油相に水相を徐々に添加し添加終了後、攪拌機を用いて乳化粒子が均一になるように調製した。
【0043】
「実施例5:日焼け止め化粧料 O/W乳液」
質量%
1.ポリオキシエチレン硬化ひまし油 1
2.ジメチコンコポリオール 0.5
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 15
4.イソステアリン酸 0.5
5.フェニルトリメチコン 1
6.疎水化処理酸化チタン 5
7.4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン 3
8.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5
9.式(III)のアルキル−アリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体

10.シリカ 1
11.クエン酸 0.01
12.クエン酸ナトリウム 0.09
13.パラベン 適量
14.フェノキシエタノール 適量
15.アルコール 5
16.ダイナマイトグリセリン 1
17.サクシノグルカン 0.2
18.セルロースガム 1
19.イオン交換水 残余
製造方法
9〜18の水相を調製後、1〜8の油相に徐々に添加し、最後にホモミキサーを用いて攪拌した。
【0044】
「実施例6:日焼け止め化粧料 O/W/O乳液」
質量%
1.ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.5
2.イソステアリン酸 0.2
3.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7.5
4.式(III)のアルキル−アリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体
2.0
5.4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン 2.0
6.デカメチルシクロペンタシロキサン 35
7.ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール 2.0
8.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
9.疎水化処理酸化チタン 12.0
10.クエン酸 0.04
11.クエン酸ナトリウム 0.06
12.ジプロピレングリコール 2.0
13.メチルグルコース 1.0
14.ダイナマイトグリセリン 1.0
15.食塩 0.1
16.メチルパラベン 適量
17.フェノキシエタノール 適量
18.イオン交換水 残余
製造方法
1〜5の油相を10〜18の水相に徐々に添加してO/W製剤を得た。この製剤を6〜9の油相中に徐々に添加後、ホモミキサーで攪拌を行い目的のサンプルを得た。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、ジベンゾイルメタン誘導体である4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンを配合した日焼け止め化粧料において、その光安定性を著しく向上させ、紫外線吸収効果のスタミナダウンを抑制し、UV−A領域の紫外線吸収特性に極めて優れた日焼け止め化粧料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルに溶解した4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンの光安定性を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンと、下記一般式(I)で示されるアルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体とを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。
一般式(I)
【化1】

(但し、R1は水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基、R2は炭素数1〜7のアルキル基、R3は炭素数2〜10の二価のアルキレン基、又はオキシアルキレン基、R4は同一、又は異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はトリメチルシロキシ基、m,nは0〜3の整数、pは0又は1を表わす。)
【請求項2】
前記アルキルアリール1,3−プロパンジオンシリコーン誘導体が、下記式(II)または(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の日焼け止め化粧料。
式(II)
【化2】

式(III)
【化3】


【図1】
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【公開番号】特開2007−106701(P2007−106701A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299516(P2005−299516)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】