説明

日焼け止め化粧料

【課題】複数の紫外線散乱剤(金属酸化物)と紫外線吸収剤を含有し、保存安定性に優れ、べたつき感などを抑制した、使用感に優れた日焼け止め化粧料を提供すること。
【解決手段】シリコーン系乳化剤であるポリエーテル変性シリコーンオイルとポリグリセリン変性シリコーンオイル、紫外線B波(UV−B)吸収剤、紫外線A波(UV−A)吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Diethylamino hydroxybenzoyl hexyl benzoate DHHB)、金属酸化物を含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日焼け止め化粧量には高いSPF(Sun Protection Factor)効果を得るために、紫外線散乱剤や紫外線吸収剤を多く配合する傾向にある。紫外線散乱剤や紫外線吸収剤を配合した日焼け止め化粧料の技術が開示されている(例えば、特許文献1 特開平10−120543号、特許文献2 特表2002−521417号 )。
日焼け止め化粧料の重要な紫外線吸収波長領域は、UV−A領域(320〜400nm)とUV−B領域(290〜320nm)である。そして、UV−A領域の紫外線は皮膚を黒化させるが、UV−B領域の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。ところが近年になって、UV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対して、UV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることが分かってきた。このように、日焼け止め化粧料には、特にUV−A領域の紫外線吸収への要求が高まっている。このUV−A領域の紫外線吸収剤の一つとして、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(DHHB)が使用されている。DHHBは化粧品に多用される油剤に溶解するが、低温で析出し使用感を低下させることが指摘されている。また、紫外線散乱剤と使用される酸化チタンなどの金属酸化物は日焼け止め化粧料の凝集や沈殿を引き起こす。
紫外線吸収剤の高濃度配合や複数の紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を安定的に配合するためには、界面活性剤の配合量を増やすことが必要であるが、界面活性剤の配合量を増やすとべたつきを生じるなど使用感が悪くなることが指摘されている。このため界面活性剤の配合量を少なくして高分子化合物を配合し、組成物の粘度を高めることで保存安定性を向上させる技術がしばしば採用される。この場合、高分子化合物特有のべたつきが生じてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−120543号公報
【特許文献2】特開2002−521417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、UV−A領域の紫外線吸収剤であるDHHBとUV−B領域の紫外線吸収剤の、2種の紫外線吸収剤と、金属酸化物を含有し、保存安定性に優れ、べたつき感などを抑制した日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)シリ−コン系乳化剤であるポリエーテル変性シリコーンオイル(A)と、
ポリグリセリン変性シリコーンオイル(B)と、
紫外線B波(UV−B)吸収剤(C)と、
紫外線A波(UV−A)吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Diethylamino hydroxybenzoyl hexyl benzoate DHHB)(D)と、
金属酸化物(E)、
を含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。
(2)ポリエーテル変性シリコーンオイル(A)とポリグリセリン変性シリコーンオイル(B)の配合比が、10:1〜3:1であることを特徴とする(1)に記載の日焼け止め化粧料。
(3)日焼け止め化粧料中のポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの合計含有量が4質量%以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の日焼け止め化粧料。
(4)ポリエーテル変性シリコーンオイルがラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであり、ポリグリセリン変性シリコーンオイルがポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
(5)さらにアクリル酸アルキルコポリマー(F)を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0006】
40℃以上の高温の温度条件で6ヶ月保存しても分離や沈降がない保存安定性に優れた日焼け止め化粧料が得られる。また、高温から低温、低温から高温などの温度変化に伴うヒートショック耐性を有し、ベタツキ感がなく、優れた使用感の日焼け止め化粧料を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の乳化剤であるポリエーテル変性シリコーンオイル(以下(A)成分)は、油中水型乳化組成物の乳化剤として使用されている。たとえば化粧品表示名称で示すと次のとおりである。PEG−3ジメチコン、PEG−9メチルエーテルジメチコン、PEG−10ジメチコン、PEG−32メチルエーテルジメチコン、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG−10ジメチコンなどが例示できる。
特にラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが好ましい。
【0008】
本発明の第2の乳化剤であるポリグリセリン変性シリコーンオイル(以下(B)成分)は、油中水型乳化組成物の乳化剤として汎用されている。たとえば、化粧品表示名称で示すと次のとおりである。ポリグリセリル−3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどを挙げることができる。
特にポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンオイルとポリグリセリン変性シリコーンオイルは両者を同時に含有させ、その配合比率は10:1〜3:1とし、その総量を4質量%以下にすることが好ましい。
【0009】
本発明の(A)成分と(B)成分としてラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンとポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを用いた場合は、合計で1.3〜2.9質量%の範囲で配合すると、安定性に優れ、かつべたつきがない日焼け止め化粧料とすることができるので好ましい。この範囲をはずれた配合量だと、べたつきが生じたり、安定性が損なわれたりする恐れがある。
【0010】
本発明の紫外線A波吸収剤であるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Diethylamino hydroxybenzoyl hexyl benzoate DHBB、以下(D)成分)は、本発明の日焼け止め化粧料に配合される紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の種類や量に応じて適宜配合量を調整することができる。紫外線A波を確実に遮蔽するためには1〜5質量%配合する。
【0011】
本発明の金属酸化物(以下(E)成分)は、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化ジルコニウム等の無機粉末を例示することができる。脂肪酸やシリコーンなどで表面処理(被覆処理)しているものを用いても良い。シリコーンで表面処理(被覆処理)しているものを用いることが好ましい。これらの金属酸化物は、単体を入手して用いても良いが、金属酸化物が揮発性シリコーン基材中に安定に低次粒子化されたペースト状の市販品を用いても良い。金属酸化物は、化粧品の目的に応じて適宜決定されるが、5〜10質量%配合することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、目的に応じてDHHB以外の紫外線B波(UV−B)も吸収する紫外線吸収剤を(C)成分として配合する。このような紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、パラアミノ安息香酸(以後、PABAと略す)、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、サリチル酸ホモメンチル、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチルヘキシルジメチルPABA、サリチル酸エチルヘキシル、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、サリチル酸トリエタノールアミン、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェニン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、ジメトキシケイ皮酸イソオクタン酸グリセリドや、これらの高分子誘導体、シラン誘導体、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等が挙げられる。
UV−A領域の紫外線吸収剤とUV−B領域の紫外線吸収剤を組み合わせることによって、広いUV領域で高い紫外線防効果を発揮する。特にUV−B領域の紫外線吸収剤としてメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを用いると、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを析出させず溶解するので組み合わせて配合すると好ましい日焼け止め化粧料とすることができる。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの市販品としては、DSMニュートリションジャパン(株)製のパルソールMCXや、日清オイリオグループ(株)製のノムコートTABを入手して用いることができる。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの配合量は適宜決定されるが、2〜10質量%配合することが好ましい。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルに対して2倍量以上配合するとジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出を防止することができる。
【0013】
本発明においては、上記の構成に加えて(F)成分としてアクリル酸アルキルコポリマーを配合する。アクリル酸アルキルコポリマーは実施例の試験結果に示すように、50℃での安定性を高めるので、さらに高温やヒートショックなどに対して保存安定性の優れた日焼け止め化粧料を得ることが出来る。アクリル酸アルキルコポリマーの市販品としては、松本油脂製薬(株)製のマツモト マイクロスフェアS−100を入手して用いることができる。アクリル酸アルキルコポリマーの配合量は同時に配合される紫外線吸収剤や金属酸化物の配合量に応じて適宜決定されるが、1〜10質量%配合することが好ましい。
【0014】
本発明の日焼け止め化粧料には、必要に応じて多価アルコールを配合することができる。多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどが例示できる。
【0015】
本発明の日焼け止め化粧料には、炭化水素油、エステル油、ロウ、シリコーン油、動植物油等の化粧料に通常用いられる油剤を用いることができる。
【0016】
油剤を配合する場合には、難溶性であり低温で結晶が析出しやすい(D)成分のUV−A吸収剤であるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを安定に溶解することを目的として油剤を選択して配合することが好ましい。具体的にはイソノナン酸イソトリデシル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸ジトリメチロールプロパン、トリエチルヘキサン酸エリスチル、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、乳酸オクチルドデシル、ジ(カプリル・カプリン酸)ブチレングリコール、ジオクチルエーテル、ジ縮合ヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジイソプロピルなどが例示できる。特に好ましくは、イソノナン酸イソトリデシル、ジ(カプリル・カプリン酸)ブチレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジイソプロピルである。
本発明の日焼け止め化粧料には、このような油剤を1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。
【0017】
本発明の(D)成分のDHHBは、シリコーン油に難溶性であり、例えばシクロメチコンにはジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルが0.4質量%しか溶解しない。したがってDHHBを配合するために、油剤としてシリコーン油を配合する場合は、シリコーン油に加えてDHHBを溶解する油剤や上述したように紫外線吸収剤(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)を組み合わせて配合することでDHHBの低温での析出を未然に防ぐことができ、使用感の優れた日焼け止め化粧料とすることができる。
【0018】
本発明の日焼け止め化粧料には、体質顔料、有機粉末、パール剤、無機顔料、有機顔料等を用いることができる。例えば、タルク、マイカ、カオリン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、スチレンパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、デンプン、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄雲母チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ等が挙げられる。
【0019】
さらに、本発明の日焼け止め化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられる成分、例えば、酸化防止剤、保湿剤、香料、保香剤、防腐剤、pH調整剤、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
【0020】
本発明の日焼け止め化粧料の形態として、サンスクリーンクリーム、サンスクリーンローション、サンケアスプレー、サンスクリーンエマルジョン、サンスクリーンムース、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、メーキャップベース、リキッドアイシャドウ、リキッドチークカラー等が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例、効果確認の試験例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
表1の組成の日焼け止め化粧料を調製し、保存安定性と使用感(べたつきの評価)の試験を行った。
【0023】
[比較例、実施例製品の製法]
成分6に、成分1、2、3、7と成分9の一部をあらかじめ混合してペースト状にする(aと呼ぶ)。別の容器に成分4、5の紫外線吸収剤を加温して溶解混合する。次に、成分8、9、10、(a)を加えて撹拌混合し油相を調製する。別の容器に成分11〜14を撹拌混合し水相を調製する。常温で油相に水相を加えて乳化する。
尚、実施例9において、成分7の欄にあるアクリル酸アルキルコポリマー(成分F)は、成分8、9、10、(a)と共に添加して油相とする。
【0024】
[安定性試験]
調製した日焼け止め化粧料を瓶に入れ密封し、5℃、25℃、40℃、50℃、サイクル(40℃⇔5℃)に保管し、分離、沈降(ケーキング)の有無を1ヶ月毎に6か月まで観察し、以下の基準で評価した。
○:6か月間、分離、沈降(ケーキング)のいずれもない
△:3か月後の観察では変化はないが、4か月後に、分離、沈降(ケーキング)のい ずれかがある
×:1か月以内に分離、沈降(ケーキング)のいずれかがある
【0025】
[官能評価試験]
専門パネル10名で、実施例および比較例の日焼け止め化粧料の使用感(べたつき感の有無)を官能評価した。評価結果を以下の基準により判定した。
○:10人中、7名以上がべたつかないと評価
△:10人中、4〜6名がべたつかないと評価
×:10人中、1〜3名がべたつかないと評価
【0026】
【表1】

【0027】
[試験結果]
結果を表1、下欄に示す。
比較例の処方は、ポリエーテル変性シリコーンオイル(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)とポリグリセリン変性シリコーンオイル(ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)のどちらか一方を1.5〜3質量%の範囲で含有する処方である。これらの処方はいずれも40℃の保存試験で分離や沈降が発生した。
また実施例では保存安定性は良好であった。しかしながら、ポリエーテル変性シリコーンオイル(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)とポリグリセリン変性シリコーンオイル(ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)の合計含有量が3%を超えると使用感に劣るものも出現した(実施例7、8)。乳化剤としてポリエーテル変性シリコーンオイル(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)とポリグリセリン変性シリコーンオイル(ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)の配合量の上限は、両者の合計が3%付近にあるものと推定した。
実施例1〜5は、ポリエーテル変性シリコーンオイル(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)とポリグリセリン変性シリコーンオイル(ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)を合計で2質量%含有する。実施例6は合計で2.5質量%含有する。これらは、40℃で6か月間保管したものに分離や析出が全くみられず、しかも10名中9名がべたつかないと評価し、優れた使用感であった。
【0028】
また、ポリエーテル変性シリコーンオイル(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)又はポリグリセリン変性シリコーンオイル(ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)を用いた乳化系では、その他の界面活性剤を増量させると、かえって40℃での保管安定性を損ね、使用感もべたつかせてしまうことが確認された(比較例1〜3)。
【0029】
次に、本発明を、さらに50℃やサイクル(40℃⇔5℃)に保管した場合でも、安定性に優れたものにする為の組成について検討した。表2の各処方を同様に調製し保存安定性と使用感の試験を行った。
【0030】
[製法]
上記と同様にして、成分(F)を含有する実施例9、10を調製した。
【0031】
〔試験結果〕
結果を表2下欄に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
アクリル酸アルキルコポリマーを含有した実施例9、10の日焼け止め化粧料は、50度に6か月保管、サイクル(5度⇔40度)に6か月保管しても分離や沈降が全くなく、べたつき感もなかった。
【0034】
以上の結果から、本発明の構成を採用することにより、安定性、使用感ともに優れた日焼け止め化粧料を提供することができることが明らかになった。
また、本発明の構成に、さらにアクリル酸アルキルコポリマーを含有すると、真夏のレジャー先の車内など、高温になることが予想される環境下により適した日焼け止め化粧料を提供することができることが明らかになった。
【0035】
以下に本発明の実施の1形態であるサンスクリーンローションの処方例を示す。
[処方例1]サンスクリ−ンローション
(組成) (質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(2)ステアリン酸処理微粒子酸化チン 5
(3)シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 5
(4)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 3
(5)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
(6)メチルポリシロキサン 5
(7)イソノナン酸イソトリデシル 5
(8)ポリオキシエチレン変性シリコーン(KF-6038 信越化学工業製) 1.7
(9)ポリグリセリン変性シリコーン(KF-6104 信越化学工業製) 0.4
(10)アクリル酸アルキルコポリマー(マツモト マイクロスフェアーS-100 松本油脂 製) 10 (11)グリセリン 5
(12)1,2−ペンタンジオール 2
(13)精製水 残余
(製法)
成分2、3に、成分8、9と成分1の一部をあらかじめ混合してペースト状にする(aと呼ぶ)。別の容器に成分4、5の紫外線吸収剤を加温して溶解混合する。次に、成分6、7、10、(a)を加えて撹拌混合し油相を調製する。別の容器に成分11〜13を撹拌混合し水相を調製する。常温で油相に水相を加えて乳化する。

処方例1のサンスクリーンローションは、保存安定性に優れ、優れた使用感であった。
【0036】
[処方例2]メーキャップベース
(組成) (質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(2)メチルポリシロキサン 30
(3)シリコーン処理酸化チタン 7
(4)シリコーン処理酸化鉄 0.5
(5)シリコーン処理酸化亜鉛 1
(6)シリコーン処理群青 2
(7)パルミチン酸デキストリン 0.5
(8)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
(9)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 3
(10)ポリエーテル変性シリコーン (KF-6038 信越化学工業製) 2
(11)ポリグリセリン変性シリコーン (KF-6104 信越化学工業製) 0.5
(12)アクリル酸アルキルコポリマー(マツモト マイクロスフェアーS-100 松本油脂 製) 3
(13)シリカ 2
(14)1,3−ブチレングリコール 5
(15)硫酸マグネシウム 2
(16)水 残余
(製法)
成分3、5に、成分10、11と成分1の一部をあらかじめ混合してペースト状にする(aと呼ぶ)。別の容器に成分8、9の紫外線吸収剤を加温して溶解混合する。次に、成分2、4、6、7、12、13、(a)を加えて撹拌混合し油相を調製する。別の容器に成分14〜16を撹拌混合し水相を調製する。常温で油相に水相を加えて乳化する。

処方例2のメーキャップベースは、保存安定性に優れ、優れた使用感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリ−コン系乳化剤であるポリエーテル変性シリコーンオイル(A)と、
ポリグリセリン変性シリコーンオイル(B)と、
紫外線B波(UV−B)吸収剤(C)と、
紫外線A波(UV−A)吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Diethylamino hydroxybenzoyl hexyl benzoate DHHB)(D)と、
金属酸化物(E)、
を含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。
【請求項2】
ポリエーテル変性シリコーンオイル(A)とポリグリセリン変性シリコーンオイル(B)の配合比が、10:1〜3:1であることを特徴とする請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
日焼け止め化粧料中のポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの合計含有量が4質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
ポリエーテル変性シリコーンオイルがラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであり、ポリグリセリン変性シリコーンオイルがポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【請求項5】
さらにアクリル酸アルキルコポリマー(F)を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。


【公開番号】特開2012−193138(P2012−193138A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57371(P2011−57371)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】