説明

旨味フレーバー付与剤としてのオキサルアミド誘導体

式(1)


で表される化合物は、新規であり、食料品および飲料品などの消費組成物に旨味を付与するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規分子および旨味フレーバーを作り出すためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
旨味は、一般にアジア料理と関連するフレーバーの感覚である。加えて、改善された旨味の味は、低塩製品をより良い味にする助けとなる。旨味のフレーバーは伝統的に、グルタミン酸ナトリウム(MSG)の食料品への添加により達成されてきた。しかしながら、食料品におけるMSGの存在は、広く歓迎されるわけではなく、通常の場合より低比率のMSGによる旨味の味の達成に関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0003】
低減された比率のMSGによって、さらには旨味の完全排除によって、旨味を達成することが可能であることが、今や見出された。これは、新規化合物により達成される。したがって、式(1)
【化1】

で表される化合物を提供する。
【0004】
さらに、フレーバー成分および旨味を増強するまたは提供する比率の式(1)で表される化合物を含む旨味フレーバー組成物を提供する。
さらに、旨味フレーバーを有する消費組成物を提供し、前記旨味フレーバーが、その中に式(1)で表される化合物が存在することによって少なくとも部分的に提供される。
さらに、組成物への式(1)で表される化合物の添加を含む、消費組成物に旨味フレーバーを付与する方法を提供する。
【0005】
式(1)で表される化合物(以下、「旨味化合物」とする)は、2種の異性体型、E−型およびZ−型で存在する。これらの化合物の両方は、式(1)により包含され、両方を純粋な形態でまたは異性体の混合物として使用してもよい。E−型は、N1−ネリル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミドであり、Z−型は、N1−ゲラニル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミドである。
【0006】
旨味化合物を、当該技術分野において周知の方法により調製してもよい。1つのかかる方法は、ゲラニルアミンのシュウ酸ジエチルとの反応による、(E)−エチル−2−(3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニルアミノ)−2−オキソアセテート
【化2】

の調製を伴う。そして、この生成物を、次に2−(ピリジン−2−イル)エタンアミンと反応させる。正確な詳細は、例に示す。
【0007】
驚くべきことに、旨味化合物が、高い旨味フレーバーを低用量で付与するのみならず、このフレーバーが、混じり気のない非人工的な味の並はずれた質であることが見出された。これは、多くの他の非MSG旨味フレーバラント(flavourant)とは対照的である。
【0008】
旨味化合物は、単独で使用してもよく、あるいは消費組成物へ添加することができる状態になっているフレーバー付与組成物を提供するために他のフレーバー付与成分と混合してもよい。フレーバー付与成分は、MSGを含む他の旨味フレーバラントを含んでもよい。旨味化合物の使用により、MSGレベルの大幅な低減、およびいくつかの場合にはMSGの完全排除が可能になる。
【0009】
本願において有用な他の旨味化合物の特定の例は、式(2)
【化3】

式中、
は、H、メチルおよびエチルから選択され、
は、H、OH、フッ素、C〜C直鎖状または分枝状のアルキル、C〜Cアルコキシ、ここで、アルキル基は、直鎖状または分枝状であるか、またはC〜Cシクロアルキル部分を含むまたはからなる、から選択され、
は、Hおよびメトキシから選択されるか、
あるいはRおよびRは一緒に、それらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成し、
は、OHおよびメトキシから選択され、および
およびRは独立して、Hおよびメチルから選択され、
、R、R、R、RおよびRは、
(i)RおよびRが一緒にそれらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成するとき、R、R、RはHであり、およびRはOHであり、および
(ii)RがOHであり、およびR〜RがHであるとき、R、Rの少なくとも1つはメチルである、
ように選択される、
で表される化合物(その塩を含む)である。
【0010】
特定の態様において、Rは、H、OH、フッ素、メチル、C〜Cアルコキシから選択され、ここで、アルキル基は、直鎖状または分枝状であるか、またはC〜Cシクロアルキル部分を含むまたはからなる。
さらなる特定の態様において、Rは、メチル、メトキシおよびイソブチルオキシから選択され、Rは、Hであり、Rは、OHであり、およびRおよびRは、Hである。
【0011】
かかる化合物は、英国特許出願第0913804号に記載されている。かかる化合物の特定の非限定の例は、
1−(2−ヒドロキシ−4,5−ジメチルフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オン、
1−(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オン、
1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オン、
1−(2−ヒドロキシ−4−イソブトキシフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オン
を含む。
【0012】
好適な化合物の他の非限定の例は、
N1−(2−メトキシ−4−メチルベンジル)−N2−(2−ピリジン−2−イル−エチル)オキサルアミド、
N1−(2,4−ジメトキシベンジル)−N2−(2−ピリジン−2−イル−エチル)オキサルアミド、
N1−(2−メトキシ−3−メチルベンジル)−N2−(2−(−5メチル)ピリジン−2−イル−エチル)オキサルアミド、
N−ヘプタン−4−イルベンゾ(D)−1,3−ジオキソール5−カルボキサミド、
N(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−イル)シクロプロピルカルボキサミド、
シクロプロパンカルボン酸2−イソプロピル−5−メチル−シクロヘキシルアミド
を含む。
【0013】
旨味化合物と共に使用してもよい旨味のフレーバー付与および増強化合物の他の非限定の例は、欧州特許第1642886号、国際公開パンフレットWO2005/015158、欧州特許第1312268号、国際公開パンフレットWO2003/088768、欧州特許第1291342号および国際公開パンフレットWO2006/003107に記載されているものを含む。
【0014】
旨味化合物の比率は、使用の性質および所望の効果に依存するであろう。例えば、MSGの部分的置換に必要な比率は当然、完全なMSGの置換よりも低い。比率は広い限界の間でさまざまであり、典型的には、消費組成物の重量あたり0.1ppmおよび10ppmの間、より特定すると0.5ppmおよび5ppmの間である。しかしながら、これらは有用な比率の一般的指針のみであり、特定の効果のために、熟練したフレーバリストは、これらの範囲外で使用してもよい。
【0015】
「消費組成物」は、最終的に吐き出されるか摂取される、口に取り入れられるあらゆる組成物を意味する。組成物は、固体、液体または気体のあらゆる物理的形状であってもよい。非限定の例は、すべての食品製品、食品添加物、栄養補助食品、薬剤および口の中に入れるあらゆる製品を含み、チューイングガム、オーラルケア製品および口腔衛生製品を含み(しかしこれらに限定されず)、穀物製品、米製品、タピオカ製品、サゴ製品、パン屋の製品、ビスケット製品、ペストリー製品、パン製品、菓子製品、デザート製品、ガム、チューインガム、フレーバーまたはフレーバーで被覆した食品/飲料用容器、酵母製品、ベーキングパウダー、塩およびスパイス製品、スナック食品、風味製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、スープ、香辛料、インスタント食品、グレイビー、ナッツおよびナッツ製品、加工食品、野菜製品、肉および肉製品、卵製品、牛乳および乳製品、ヨーグルト、チーズ製品、バターおよびバター代用製品、ミルク代用製品、大豆製品、食用油製品および食用脂製品、飲料、炭酸飲料、ビール、ワインおよび蒸留酒などのアルコール飲料、ソフトドリンクなどのノンアルコール飲料を含むが、これらに限定されず、粉末飲料、ミルクベースの粉末飲料、無糖の粉末飲料、飲料用シロップ、濃縮飲料、コーヒーおよび茶、食用抽出物、植物抽出物、肉抽出物、調味料、ゼラチン、薬用のガムおよび薬用ではないガム、錠剤、トローチ剤、あめ玉、エマルジョン、エリキシル剤、シロップおよび飲料を作るための他の調製品を含むがこれらに限定されない再構成が必要な形状を含み、またそれらの組合せを含む。
【0016】
本開示を、特定の態様を描写する以下の非限定の例を参照にさらに記載する。
例1
N1−ゲラニル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミドの調製手順
ステップ1:(E)−エチル−2−(3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニルアミノ)−2−オキソアセテートの調製
【化4】

ゲラニルアミン(5g、32.6mmol)を、シュウ酸ジエチル(15g、103mmol)に滴加し、無色の溶液を得た。溶液を120℃に加熱し、この温度で2時間加熱した。生成されたエタノールを反応中に留去した。過剰のシュウ酸ジエチルを、160℃/1mbarまで真空蒸留することにより除去した。8.1g(93%収率)の茶色がかった残留オイルが得られた。生成物は、NMR分析によると約95%純度である。
【化5】

【0017】
ステップ2:N1−ゲラニル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミドの調製
【化6】

エチル2−(3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニルアミノ)−2−オキソアセテート(1.5g、5.92mmol)を、エタノール(20ml)中2−(ピリジン−2−イル)エタンアミン(1g、8.19mmol)と反応させ、黄色の溶液を得た。反応混合物を、還流で1.5時間攪拌した。そして、溶媒を蒸発により除去した。残りの残留固形物をエタノール/ペンタンで洗浄し、標的化合物を、白色結晶として提供した(1.3g;65%収率)。生成物は、NMR分析によると約97%純度であった。
【化7】

【0018】
例2
化合物の試験
2種の溶液を調製した。
A − 0.3%NaClおよび0.05%MSGの溶液
B − 0.3%NaClおよび3ppmのN1−ゲラニル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミドの溶液
サンプルが、30歳および60歳の間の女性2名および男性3名で構成される専門のパネリストにより味見された。パネリストは、両方の溶液が旨味の味がしたことに同意した。彼らはまた、溶液Bがわずかにより強い旨味があり、よりジューシーでより甘みがあり、より長引く風味のノートがあったことに同意した。
【0019】
例3
化合物の試験
2種の溶液を調製した。
A − 0.5%NaCl、0.15%MSGおよび0.025%リボヌクレオチド混合物の溶液
B − 0.5%NaCl、0.05%MSG、0.010%リボヌクレオチド混合物および1.5ppmのN1−ゲラニル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミドの溶液
サンプルが、30歳および60歳の間の女性2名および男性3名で構成される専門のパネリストにより味見された。パネリストは、両方の溶液が同等の旨味の強さであったことに同意した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

で表される化合物。
【請求項2】
化合物N1−ネリル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド。
【請求項3】
化合物N1−ゲラニル−N2−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド。
【請求項4】
フレーバー成分および旨味を増強するまたは提供する比率の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を含む、旨味フレーバー組成物。
【請求項5】
組成物がさらに、式(2)
【化2】

式中、
は、H、メチルおよびエチルから選択され、
は、H、OH、フッ素、C〜C直鎖状または分枝状のアルキル、C〜Cアルコキシ、ここで、アルキル基は、直鎖状または分枝状であるか、またはC〜Cシクロアルキル部分を含むまたはからなる、から選択され、
は、Hおよびメトキシから選択されるか、
あるいはRおよびRは一緒に、それらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成し、
は、OHおよびメトキシから選択され、および
およびRは独立して、Hおよびメチルから選択され、
、R、R、R、RおよびRは、
(i)RおよびRが一緒にそれらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成するとき、R、R、RはHであり、およびRはOHであり、および
(ii)RがOHであり、およびR〜RがHであるとき、R、Rの少なくとも1つはメチルである、
ように選択される、
で表される少なくとも1種の化合物(その塩を含む)をさらに含む、請求項4に記載の旨味フレーバー組成物。
【請求項6】
旨味フレーバーを有する消費組成物であって、前記旨味フレーバーが、その中に請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物が存在することによって少なくとも部分的に提供される、前記消費組成物。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物が、消費組成物の重量あたり0.1ppmから10ppmの範囲、より特定すると0.5ppmおよび5ppmの間で存在する、請求項6に記載の消費組成物。
【請求項8】
組成物への請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の添加を含む、消費組成物に旨味フレーバーを付与する方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物が、消費組成物の重量あたり0.1ppmから10ppmの範囲、より特定すると0.5ppmおよび5ppmの間で存在する、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518850(P2013−518850A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551614(P2012−551614)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051528
【国際公開番号】WO2011/095533
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】