説明

早期強度用セメント混和剤

【課題】分散性能(減水性能)に加えて、早期強度発現性に著しく優れるセメント組成物を与えることができ、生産性及び作業性を格段に向上することができるセメント混和剤及びそれを含むセメント組成物を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤とを必須とするセメント混和剤であって、該ポリカルボン酸系共重合体は、下記一般式(1):
YO(RO) (1)
で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(A)と、不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(B)とを含むセメント混和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期強度用セメント混和剤に関する。より詳しくは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等への添加成分等として有用なセメント混和剤及びセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物への添加成分として広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このようなセメント混和剤は減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、これに比べてポリカルボン酸系重合体を含むセメント混和剤は高い減水性能を発揮するため、高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
【0003】
このようなセメント混和剤として、最近では、セメント組成物に対する減水性能(分散性能)に加えて、硬化遅延を改善し、早期に強度を発現することを可能にするものが求められている。例えば、コンクリート2次製品(プレキャスト)は、工場で型枠にコンクリートを流し込んで作られた後、それを現場に運び、組み立てることになるが、生産性の向上や作業の効率化及び省力化を図るため、早期に型枠から脱型できるようにすることが求められている。また、生コンクリートの分野でも、コンクリートを打設後、速く硬化すれば次の工程に速やかに移ることができるため、早期に強度が発現するようなセメント混和剤が求められている。しかしながら、従来のセメント混和剤では硬化遅延の度合いが大きく、硬化初期に充分な強度を発現することができなかった。
【0004】
そこで、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を用いて得られる共重合体と硬化促進剤とを含むセメント混和剤が開発されており(特許文献1、2参照。)、これらの特許文献に記載の実施例では、硬化促進剤として亜硝酸カルシウムや塩化カルシウムといった無機系化合物を用いる形態が具体的に開示されている。また、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を用いて得られるポリカルボン酸系共重合体と、アルカノールアミン系化合物とを含むセメント混和剤も開発されている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−212623号公報
【特許文献2】特開2003−73158号公報
【特許文献3】特開2008−239416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、種々のセメント混和剤が開発されており、特に特許文献1〜3に記載のセメント混和剤は、当業界において極めて有用なものとなっているが、更に早期強度発現性を高めて生産性や作業性をより一層向上できるようにするための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、分散性能(減水性能)に加えて、早期強度発現性に著しく優れるセメント組成物を与えることができ、生産性及び作業性を格段に向上することができるセメント混和剤及びそれを含むセメント組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、セメント混和剤について種々検討したところ、ポリアルキレングリコール鎖を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和カルボン酸系単量体とを用いて得られる共重合体を含むものとすれば、不飽和カルボン酸系単量体に由来するカルボキシル基がセメント粒子を吸着する作用を有し、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体に由来するポリアルキレングリコール鎖がセメント粒子を分散させる分散基として作用するため、高い分散性能を発揮できることにまず着目した。そして、この不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体として、ポリアルキレングリコール鎖長が50を超えて長いものを用いれば、分散性能(減水性能)に加えて、早期強度発現性、すなわち硬化初期(例えば、1〜7日後)の圧縮強度に特に優れるものとなることを見いだし、更に当該共重合体と有機系硬化促進剤とを併用させると、その相乗効果によって、予測を超えるほど早期強度が著しく改善・向上されることを見いだした。また、有機系硬化促進剤として、アミン系の硬化促進剤、中でもアルカノールアミン系化合物を用いると、この効果が更に発揮されることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤とを必須とするセメント混和剤であって、該ポリカルボン酸系共重合体は、下記一般式(1):
YO(RO) (1)
(式中、Yは、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。ROは、同一又は異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、50を超え、300以下の数である。Rは、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(A)と、不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(B)とを含むセメント混和剤である。
本発明はまた、上記セメント混和剤、セメント及び水を含むセメント組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
(セメント混和剤)
本発明のセメント混和剤は、ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤とを必須とするものである限り、更に他の成分の1種又は2種以上を含んでもよい。また、ポリカルボン酸系共重合体及び有機系硬化促進剤は、各々1種又は2種以上を用いることができる。
上記セメント混和剤における上記ポリカルボン酸系共重合体の含有量(2種以上のポリカルボン酸系共重合体を含む場合は、その総含有量)は、特に制限されないが、セメント混和剤中の固形分(すなわち不揮発分)100質量%中、20質量%以上、100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。
なお、本明細書中、「セメント混和剤」とは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物へ添加されるセメント添加剤のことをいい、上記ポリカルボン酸系共重合体及び有機系硬化促進剤のみからなる剤であってもよいし、また、上記ポリカルボン酸系共重合体及び有機系硬化促進剤だけでなく、必要に応じて更に他の成分や添加剤等を含む剤であってもよい。
【0010】
上記セメント混和剤において、有機系硬化促進剤の含有量は、ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤との合計量100質量%に対し、50質量%以下であることが好適である。これによって、ポリカルボン酸系共重合体に由来する減水性能を発揮できるうえ、ポリカルボン酸系共重合体及び有機系硬化促進剤の双方に由来する早期強度発現性が相乗され、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。また、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0011】
−ポリカルボン酸系共重合体−
上記セメント混和剤において、ポリカルボン酸系共重合体は、上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(A)と、不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(B)とを含むものであるが、後述する他の単量体(c)由来の構成単位(C)を更に含んでいてもよい。各構成単位は、それぞれ1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
以下では、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)を「単量体(a)」ともいい、「不飽和カルボン酸系単量体(b)」を「単量体(b)」とも称す。
【0012】
上記ポリカルボン酸系共重合体において、構成単位(A)及び(B)が占める割合としては、全構成単位100質量%に対し、それぞれ1質量%以上であることが好適である。構成単位(A)が1質量%未満であると、早期強度発現性がより充分に発揮できないおそれがあり、構成単位(B)が1質量%未満であると、ポリカルボン酸系共重合体に存在するカルボキシル基の割合が少なすぎ、充分な分散性を発揮できないおそれがある。構成単位(A)及び(B)の合計量100質量%中に占める構成単位(A)の含有割合としては、好ましくは60〜96質量%、より好ましくは70〜95質量%、更に好ましくは80〜94質量%、特に好ましくは84〜94質量%である。また、構成単位(A)及び(B)の合計量100質量%中に占める構成単位(B)の含有割合としては、好ましくは4〜60質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは6〜20質量%、特に好ましくは6〜16質量%である。
上記のような範囲に設定することによって、早期強度発現性能及び減水性能と同時に、流動性の保持性能を顕著に発揮できるという本発明の作用効果を更に発現することが可能になる。
【0013】
また上記構成単位(A)及び(B)の合計の比率(質量%)としては、全構成単位100質量%に対し、70〜100質量%であることが好適である。すなわち、他の単量体(c)由来の構成単位(C)の含有割合は、全構成単位100質量%に対し、0〜30質量%であることが好ましい。全構成単位100質量%中の構成単位(A)及び(B)の合計の比率としてより好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。
【0014】
ここで、本明細書中、上記不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(B)の割合を計算する場合は、構成単位(B)が、完全に中和された単量体(塩)由来の構成単位であるとして計算するものとする。例えば、上記単量体(b)としてアクリル酸を用い、重合反応において水酸化ナトリウムで完全中和する場合には、単量体(b)としてアクリル酸ナトリウムを用いたとして、質量割合(質量%)の計算をする。
【0015】
上記ポリカルボン酸系共重合体ではまた、構成単位(A)が占める割合が、全構成単位100モル%に対して、50モル%以下であることが好適である。これは、構成単位(A)を構成する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)の重合性が充分ではなく、分散性の高いポリカルボン酸系共重合体を高収率で得るために、当該単量体(a)の使用割合を、全単量体成分100モル%に対して50モル%以下とすることが好適であることに起因する。より好ましくは48モル%以下である。
【0016】
次に、ポリカルボン酸系共重合体を構成する単量体成分について、更に説明する。なお、各単量体は、各々1種又は2種以上を使用することができる。
<不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)>
上記単量体(a)は、上述した一般式(1)で表される単量体であるが、上記単量体(a)由来の構成単位(A)とは、単量体(a)が有する不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)部分が、単結合となった構造を意味する。
上記一般式(1)において、ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。中でも、炭素数2〜8のオキシアルキレン基が好ましく、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシメチルエチレン基、オキシオクチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。より好ましくは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、特に好ましくはオキシエチレン基である。また、(RO)で表されるポリアルキレングリコール鎖は、2種以上のオキシアルキレン基により形成されるものであってもよく、この場合は、2種以上のオキシアルキレン基がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0017】
上記一般式(1)ではまた、全オキシアルキレン基100モル%中に占めるオキシエチレン基の割合が、50モル%以上であることが好適である。これによって、充分な分散性を発揮できる。より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%、すなわちオキシエチレン基のみによって、(RO)nで表されるポリアルキレングリコール鎖が形成されることである。また、2種以上のオキシアルキレン基を有する場合の組み合わせとしては、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基、オキシブチレン基)、(オキシエチレン基、オキシスチレン基)が好適である。中でも、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)がより好ましい。
【0018】
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数(ポリアルキレングリコール鎖の平均鎖長)nは、50を超え、300以下の数である。このようにnが50を超える長鎖のポリアルキレングリコール鎖を有することによって、ポリカルボン酸系共重合体が早期強度発現性を充分に発揮でき、有機系硬化促進剤との併用によって、硬化遅延を更に著しく改善することが可能になる。早期強度発現性能及び分散性能の観点から、nの下限値としては、次の順で特定値以上であることが好ましい(次の数値が大きくなる順に好ましい。)。すなわち、60以上、75以上、100以上、110以上、120以上、130以上が好ましい。また、nが300を超えると、共重合性が充分とはならず、分散性の保持性能を充分に発揮できなくなるおそれがある。よって、nの上限値としては、次の順で特定値以下であることが好ましい(次の数値が小さくなる順に好ましい。)。すなわち、280以下、250以下、225以下、200以下、180以下、170以下、160以下が好ましい。
なお、ポリアルキレングリコール鎖の平均鎖長(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、ポリカルボン酸系共重合体が有する、上記ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)に由来するポリアルキレングリコール鎖1モル中に付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0019】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表すが、炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が充分とはならないため、炭化水素基の炭素原子数としては、1〜20が好ましい。より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。
上記炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール等が好適である。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)が好ましい。
上記Rとして特に好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0020】
上記一般式(1)において、Yは、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、例えば、ビニル基等の炭素原子数2のアルケニル基;アリル基等の炭素原子数3のアルケニル基;メタリル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基等の炭素原子数4のアルケニル基;3−メチル−3−ブテニル基、4−ペンテニル基、3−ペンテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基等が好適である。中でも、炭素数4〜5のアルケニル基が好適であり、より好ましくはメタリル基、3−メチル−3−ブテニル基である。
【0021】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、例えば、不飽和アルコールにアルキレングリコール(アルキレンオキサイド)を付加反応して得ることができる。不飽和アルコールとしては、不飽和結合を有する基及び水酸基を有するものであれば特に限定されないが、二重結合を有する基と水酸基とを有するものが好ましく、二重結合を有する基と水酸基とをそれぞれ1つずつ有するものがより好ましい。更に好ましくは、上記不飽和アルコールが、下記一般式(2):
YO−(RO)−H (2)
(式中、Yは、上述したYに相当する。pは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0〜300の数である。ROは、上記ROと同様である。)で表される化合物である形態である。
【0022】
上記一般式(2)において、pは、0〜300の数であるが、pの範囲としては、0〜200が好ましい。より好ましくは0〜100、更に好ましくは0〜50、より更に好ましくは0〜25、特に好ましくは0〜10、最も好ましくは0〜4である。また、pは、1以上であることも好適である。pが1以上の場合、1〜50が好ましい。より好ましくは1〜25、更に好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜5、より更に好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。更に、pは0の場合も好適である。pが0の場合、上記一般式(2)で表される化合物は、Yが炭素原子数2〜5の不飽和アルコールに相当する。
【0023】
上記不飽和アルコールの具体例としては、例えば、メタリルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のアルコールの他、これらアルコールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、アルキレンオキサイド付加物としては、その平均付加モル数pが比較的少ないものが好適である。
上記不飽和アルコールの中でも、メタリルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、メタリルアルコール−1EO(メタリルアルコールにエチレンオキサイドが1モル付加したもの)、アリルアルコール−1EO(アリルアルコールにエチレンオキサイドが1モル付加したもの)、3−メチル−3−ブテン−1−オール−1EO(3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドが1モル付加したもの)、メタリルアルコール−2EO(メタリルアルコールにエチレンオキサイドが2モル付加したもの)、アリルアルコール−2EO(アリルアルコールにエチレンオキサイドが2モル付加したもの)、3−メチル−3−ブテン−1−オール−2EO(3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドが2モル付加したもの)がより好ましい。
【0024】
上記アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドが好ましい。より好ましくは炭素数2〜8のアルキレンオキサイドであり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。中でも、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが好ましく、特に好ましくはエチレンオキサイドである。また、2種以上のアルキレンオキサイドを用いてもよく、この場合、付加反応形態としては、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。
【0025】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)として具体的には、例えば、ビニルアルコールアルキレンオキサイド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキサイド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物、イソプレニルアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキサイド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキサイド付加物等が好適である。
【0026】
より具体的には、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、プロポキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1−ジメチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル等が好適である。
【0027】
<不飽和カルボン酸系単量体(b)>
上記単量体(b)としては、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩とを含む単量体である。なお、不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(B)とは、単量体(b)が有する不飽和二重結合部分が、単結合となった構造を意味する。
【0028】
ここで、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩を含むとは、−COOZ(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を、1分子中に1個又は2種以上有することを意味する。金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が挙げられる。上記カルボン酸塩としては、これらの中でも、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。
【0029】
上記不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、1分子内に不飽和二重結合と1つのカルボキシル基又はカルボン酸塩とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体や、1分子内に不飽和二重結合と2つのカルボキシル基又はカルボン酸塩とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体が好適である。
【0030】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和カルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩、及び、これらの無水物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性の観点から、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及びこれらの塩が好適である。中でも、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩がより好ましい。すなわち、上記カルボン酸系単量体(b)としては、(メタ)アクリル酸又はその塩を含むことが好適である。より好ましくはアクリル酸又はその塩であり、アクリル酸又はその塩由来の構造を含むことによって、得られるポリカルボン酸系共重合体が、より少量で更に優れた分散性を発揮することが可能になる。
なお、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」という。
【0031】
<その他の単量体(c)>
上述したように、上記ポリカルボン酸系共重合体はまた、必須単量体成分である上記(a)及び(b)以外のその他の単量体(c)に由来する構成単位(C)を含むものであってもよい。このような単量体(c)は、上記単量体(a)及び/又は(b)と共重合可能な単量体であればよく、例えば、下記化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボンジカルボン酸系単量体と炭素原子数2〜18のアルキレングリコール若しくは該アルキレングリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドの1〜500モル付加物類;
【0032】
マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類及びこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;
【0033】
ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
次に、上記ポリカルボン酸系共重合体を得る方法について、説明する。
上記ポリカルボン酸系共重合体を得る方法としては、重合開始剤を用いて、単量体(a)及び単量体(b)、並びに、必要に応じて単量体(c)を含む単量体成分を共重合させればよいが、ポリカルボン酸系共重合体を構成する構成単位が上述した範囲内となるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することが好ましい。すなわち、上記ポリカルボン酸系共重合体を構成する構成単位の割合が上述した好適な範囲となるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することが好ましい。
【0035】
したがって、上記ポリカルボン酸系共重合体を得るために使用される全単量体成分100質量%に対し、単量体(a)及び(b)のそれぞれの含有量を1質量%以上とすることが好適である。また、単量体(a)及び(b)の合計量100質量%中に占める単量体(a)の含有割合としては、好ましくは60〜96質量%、更に好ましくは70〜95質量%、特に好ましくは80〜94質量%、最も好ましくは94〜94質量%である。また、単量体(a)及び(b)の合計量100質量%中に占める単量体(b)の含有割合としては、好ましくは4〜60質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは6〜20質量%、特に好ましくは6〜16質量%である。
【0036】
また上記単量体(a)及び(b)の合計の比率(質量%)としては、全単量体成分100質量%に対し、70〜100質量%であることが好適である。すなわち、他の単量体(c)の含有割合は、全単量体成分100質量%に対し、0〜30質量%であることが好ましい。全単量体成分100質量%中の単量体(a)及び(b)の合計の比率としてより好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。
また分散性の高いポリカルボン酸系共重合体を高収率で得るためには、全単量体成分100モル%に対して単量体(a)が占める割合が、50モル%以下であることが好適である。より好ましくは48モル%以下である。
【0037】
上記共重合は、溶液重合や塊状重合等の通常の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、原料単量体及び得られる重合体の溶解性の観点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも、水が脱溶剤工程を省略できる点でより好ましい。
【0038】
上記共重合を水溶液重合法にて行う場合には、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等を使用することが好適である。また、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記共重合において、反応温度は、特に限定されないが、例えば、過硫酸塩を開始剤とした場合、反応温度は30〜100℃の範囲が好ましく、40〜95℃の範囲がより好ましく、45〜90℃の範囲が更に好ましい。また、過酸化水素と促進剤としてL−アスコルビン酸(塩)とを組み合わせて開始剤とした場合、反応温度は30〜100℃の範囲が好ましく、40〜95℃の範囲がより好ましく、45〜90℃の範囲が更に好ましい。
共重合の際の重合時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜10時間の範囲が好ましい。重合時間が、この範囲より長すぎたり短すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらすおそれがあり、好ましくない。より好ましくは0.5〜8時間、更に好ましくは1〜6時間の範囲である。
共重合の際の全単量体成分の使用量は、他の原料及び重合溶媒を含む全原料100質量%に対して10〜99質量%の範囲が好ましい。特に、全単量体成分の使用量がこの範囲より低すぎると、重合率の低下や生産性の低下をもたらすおそれがあり好ましくない。より好ましくは20〜98質量%、更に好ましくは25〜95質量%、より更に好ましくは30〜90質量%、特に好ましくは30〜80質量%、最も好ましくは40〜70質量%の範囲である。
【0040】
上記共重合において、各単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法等が挙げられる。また、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的又は段階的に変化させることにより、単量体比が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0041】
上記共重合ではまた、得られるポリカルボン酸系共重合体の分子量調整のため、連鎖移動剤を用いることができる。特に、全単量体成分の使用量が、重合時に使用する原料の全量100質量%に対して30質量%以上となる高濃度で重合反応を行う場合には、連鎖移動剤を用いるのが好ましい。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤を用いることができ、2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。更に、共重合体の分子量調整のためには、上記単量体(c)として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0042】
上記共重合反応において、溶媒を用いる場合、重合をpH5以上で行ってもよいが、その場合、重合率の低下が起こると同時に共重合性がより充分とはならず、セメント混和剤としての性能をより充分に発揮できないおそれがあるため、pH5未満で共重合反応を行うことが好ましい。pHの調整は、例えば、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩や、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア、有機アミン等のアルカリ性物質性物質;塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類等のpH調整剤を用いて行うことができる。これらのpH調整剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0043】
上記共重合反応では特に、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩を必須に用いて共重合中のpHを制御(調整)することが好適である。すなわち、上記共重合反応では、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩を含むpH調整剤の存在下で、共重合中のpHを制御することが好ましい。より好ましくは、共重合中のpHを3以下に制御して共重合を行うことであり、これにより、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)についてより充分な共重合性を容易に発現でき、製造するポリカルボン酸系共重合体の製造コストを低減でき、セメント混和剤を更に高性能のものとすることが可能になる。更に好ましくはpHを2〜3に制御して共重合を行うことである。
【0044】
上記非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩としては、例えば、下記一般式(5):
10−(Ph)m−SOH (5)
(式中、R10は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。Phは、フェニル基を表す。mは、0又は1を表す。)で表される有機スルホン酸、及び/又は、該一般式(5)で表される有機スルホン酸の塩であることが好適である。
上記塩としては、特に限定されず、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩(有機アンモニウム塩)等が挙げられる。金属塩を構成する金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が好適である。有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩等のポリアミン塩等が好適である。
【0045】
上記一般式(5)中、R10は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表すが、炭素原子数1又は2のアルキル基であることが特に好適である。具体的にはメチル基及びエチル基が好適であるが、R10が炭素原子数1又は2のアルキル基である有機スルホン酸及び/又はその塩を用いることによって、本発明のセメント混和剤の分散性を更に向上することができる。
【0046】
上記非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩としては、分子量300以下の低分子化合物であることが好適であるが、分散性をより充分に発揮するという効果を更に発現させるため、分子量250以下であることがより好ましい。更に好ましくは分子量200以下である。
【0047】
上記分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩として具体的には、例えば、パラトルエンスルホン酸及び/又はその水和物、メタンスルホン酸及び/又はその塩等が好適である。
【0048】
上記pH調整剤において、非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩の使用割合としては、pH調整剤の総量100質量%に対し、非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩を50質量%以上用いることが好適である。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
上記非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩の使用量は、単量体成分の総量100重量部に対し、0.01〜5重量部とすることが好適である。非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩の使用量が多すぎると、共重合中のpHが下がり過ぎてしまい、好ましい重合条件とはならないおそれがある。より好ましくは0.05〜4重量部、更に好ましくは0.05〜2.5重量部である。
なお、上記の単量体成分の総量100重量部に対するpH調整剤の使用量の割合は、実質的に、得られる組成物中における、共重合体100重量部に対するpH調整剤の含有割合(重量部)と同じである。
【0049】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、そのままでもセメント混和剤の主成分として用いることもできるが、取り扱い性の観点からは、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。上述したようにpH5未満で共重合反応を行うことが好ましく、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行うことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。また、上記ポリカルボン酸系共重合体は、水溶液の形態でそのままセメント混和剤の主成分として使用してもよいし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用してもよい。
【0050】
上記ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、その取り扱い性やセメント組成物の保持性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が50万以下であることが好適である。より好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、特に好ましくは10万以下である。また、ある程度セメント粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは3000以上であることが好ましい。より好ましくは5000以上であり、更に好ましくは7000以上であり、特に好ましくは1万以上、最も好ましくは2万以上である。
なお、上記ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
【0051】
−有機系硬化促進剤−
上記有機系硬化促進剤とは、有機化合物の硬化促進剤であり、例えば、アミン系化合物の他、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機酸のカルシウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、アミン系化合物が好適である。アミン系化合物としては、例えば、トリアルカノールアミン系化合物、テトラアルカノールアミン系化合物等のアルカノールアミン系化合物等が挙げられ、これらの中でも、アルカノールアミン系化合物が好ましく、アルカノールアミン系化合物の中でも、トリアルカノールアミン系化合物及びテトラアルカノールアミン系化合物が特に好ましい。これらを用いることで、早期強度発現性を更に高めることが可能になる。このように上記アルカノールアミン系化合物がトリアルカノールアミン系化合物及びテトラアルカノールアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0052】
上記トリアルカノールアミン系化合物としては、例えば、下記一般式(3):
【0053】
【化1】

【0054】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜20の2価のアルキレン基又は炭素数6〜20の2価のアリーレン基を表す。)で表される化合物が好適に使用される。このような化合物として具体的には、例えば、トリエタノールアミン、ヒドロキシエチルジ−(ヒドロキシプロピル)−アミン、ジ−(ヒドロキシエチル)−ヒドロキシプロピルアミン、トリ−(ヒドロキシプロピル)−アミン、ヒドロキシエチルジ−(ヒドロキシ−n−ブチル)−アミン、トリ−(2−ヒドロキシブチル)−アミン、ヒドロキシブチルジ−(ヒドロキシプロピル)−アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシブチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)−アミン等が挙げられる。これらの中でも、下記式(3−1)で表されるトリエタノールアミン及び下記式(3−2)で表されるトリイソプロパノールアミンが特に好適である。
【0055】
【化2】

【0056】
【化3】

【0057】
上記テトラアルカノールアミン系化合物としては、例えば、下記一般式(4):
【0058】
【化4】

【0059】
(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜20の2価のアルキレン基又は炭素数6〜20の2価のアリーレン基を表す。)で表される化合物が好適に使用される。このような化合物として具体的には、例えば、下記式(4−1)で表されるテトラエタノールアミンや、式(4−2)で表されるテトライソプロパノールアミンが好適である。
【0060】
【化5】

【0061】
【化6】

【0062】
上記有機系硬化促進剤としては、上述した化合物等の1種又は2種以上を使用することができるが、中でも、2種以上の有機系硬化促進剤を用いることが特に好適である。これによって、早期強度発現性をより一層高めることができる。より好ましくは、アルカノールアミン系化合物を2種以上用いることであり、更に好ましくは、トリアルカノールアミン系化合物及びテトラアルカノールアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも2種以上を用いることである。
【0063】
−その他の成分−
本発明のセメント混和剤はまた、更に、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩を含むことが好適である。これによって、分散性をより充分に発揮できる。このようなセメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体を得る際の上記単量体成分の重合を、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩の存在下で行うことによって得ることができる。
なお、上記分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩の好ましい形態については、上述したとおりである。
【0064】
上記分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩の含有量としては、上記セメント混和剤中に含まれるポリカルボン酸系共重合体100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好適である。これによって、上記ポリカルボン酸系共重合体及び有機系硬化促進剤が奏する効果に、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩によって奏される効果が相乗されて、より優れた性能を有するセメント混和剤を得ることが可能になる。より好ましくは0.05〜4重量部、更に好ましくは0.05〜2.5重量部である。
【0065】
本発明のセメント混和剤はまた、更にポリアルキレングリコールを含むことが好適である。ポリアルキレングリコールの含有量としては、上記ポリカルボン酸系共重合体100重量部に対して1〜50重量部とすることが好ましい。ポリアルキレングリコールを更に含むことにより、モルタルやコンクリート等のセメント組成物のワーカビリティをより向上させることができるが、1重量部未満であると、このワーカビリティの向上効果がより充分とはならず、50重量部を超えると、セメントに対する分散性をより向上することができないおそれがある。より好ましくは2〜50重量部、更に好ましくは2〜40重量部、特に好ましくは3〜30重量部である。
【0066】
上記セメント混和剤はまた、上記ポリカルボン酸系共重合体を含むことに起因して、流動性(流し込んだときの流れやすさ)及び早期強度発現性に加え、粘性(作業性、例えば、モルタルを練る際の練りやすさやコンクリートの現場でのスコップワーク)を良好にすることもできる。
【0067】
上記セメント混和剤はまた、通常使用される他のセメント分散剤を更に含有していていてもよく、複数の併用も可能である。他のセメント分散剤としては特に限定されず、例えば、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤等が挙げられる。また、例えば、下記(1)〜(21)に例示するようなセメント添加剤(材)の1種又は2種以上を含んでいてもよい。これらセメント分散剤やセメント添加剤(材)の配合割合は、その合計量が、上記ポリカルボン酸系共重合体の固形分100重量部に対し、10重量部以下となるように設定することが好適である。
【0068】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレンの重合体又はそれらの共重合体等。
【0069】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸等。
【0070】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキサイド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキサイド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0071】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0072】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0073】
(16)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
(21)上記(1)〜(20)以外のセメント添加剤(材);セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等。
【0074】
上記セメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と上記セメント混和剤とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。これらの水硬性組成物の中でも、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も好ましく、上記セメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含むセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0075】
(セメント組成物)
上記セメント組成物において、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0076】
上記セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7であることが好ましい。より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.65である。このように本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0077】
なお、本発明のセメント混和剤は、高減水率領域においても優れた諸性能を高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に適用できるものである。また、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0078】
上記セメント組成物において、本発明のセメント混和剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分であるポリカルボン酸系共重合体が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜5質量%であり、更に好ましくは0.05〜3質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
(固形分測定方法)
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固定分の質量を除することで固形分を測定する。
【発明の効果】
【0079】
本発明のセメント混和剤は、上述のような構成であるので、分散性能(減水性能)に加えて、早期強度発現性に著しく優れるセメント組成物を与えることができ、生産性及び作業性を格段に向上することができるものである。したがって、このようなセメント混和剤を含むセメント組成物は、土木・建築分野等で好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記実施例等において、重量平均分子量の測定条件(GPC測定法)及びコンクリート試験条件は、以下のようにした。
【0081】
<GPC測定条件>
GPC測定条件は以下の通りである。
使用カラム:東ソ一社製
TSK guard column SWXL
TSKgel G4000SWXL
TSKgel G3000SWXL
TSKgel G2000SWXLをこの順で連結させたもの。
溶離液:アセトニトリル6001g、水10999gの溶液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に酢酸でpH6.0に調整したものを使用した。
サンプル:重合体水溶液を上記溶離液にて重合体濃度が0.5質量%となるように溶解させたもの。
サンプル打ち込み量:100μL
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:日本Waters社製 Empower Software
検量線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470]
検量線:上記のポリエチレングリコールのMp値と溶出時間を基にして3次式で作成した。
【0082】
<コンクリート試験条件A>
(コンクリート試験配合)
単位セメント量:399.0Kg/m
単位フライアッシュ量:100.0Kg/m
単位水量:164.0Kg/m(共重合体、硬化促進剤、消泡剤等の混和剤を含む。)
単位細骨材量:751Kg/m
単位粗骨材量:1038Kg/m
水/結合材(※)比(W/B):32.9%
骨材量比(s/a):42.0%
セメント:振興 普通ポルトランドセメント
フライアッシュ:邯峰
細骨材:安徽省河砂
粗骨材:安徽省産砕石
※「結合材」とは、一般に、水と反応し、コンクリートの強度発現に寄与する物質を生成するものの総称であり、セメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等を含めたものを意味する。ここでは、セメントと、フライアッシュとを合わせたものを意味する。
【0083】
(コンクリート組成物の調製)
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、強制練り一軸ミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の混練を実施した。
まず細骨材、粗骨材、セメント及びフライアッシュを10秒間混練した後、セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて180秒間混練し、コンクリート組成物を得た。
(セメント混和剤の調製)
所定量の共重合体水溶液及び硬化促進剤を量り採り、消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤(BASFポゾリス社製、マイクロエア404)を用い、空気量が1.0±0.5vol%(体積%)となるように調整した。
【0084】
(評価試験項目と測定方法)
下記の方法でスランプフロー値、空気量、圧縮強度を測定した。なお、コンクリート組成物の温度が20℃の試験温度になるように、試験に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類をこの試験温度雰囲気下で調温し、混練及び各測定もこの試験温度雰囲気下で行った。
スランプフロー値:JIS−A−1101(2005年改正)
圧縮強度:GB8076−1997
空気量:JIS−A−1128(2005年改正)
【0085】
<コンクリート試験条件B>
(コンクリート試験配合)
単位セメント量:573.0Kg/m
単位水量:172.0Kg/m(共重合体、消泡剤、硬化促進剤等の混和剤を含む。)
単位細骨材量:736.0Kg/m
単位粗骨材量:866.0Kg/m
水/セメント比(W/C):30.0%
骨材量比(s/a):47.0%
セメント:太平洋セメント社製 普通ポルトランドセメント
細骨材:君津産山砂と掛川水系産陸砂とを5/5で混合したもの
粗骨材:青梅産砕石
【0086】
(コンクリート組成物の調製)
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の混練を実施した。
まず細骨材及びセメントを10秒間混練した後、セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて60秒間混練した。そこへ粗骨材を加えて90秒間混練し、コンクリート組成物を得た。
(セメント混和剤の調製)
所定量の共重合体水溶液及び硬化促進剤を量り採り、消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤(BASFポゾリス社製、マイクロエア404)を用い、空気量が1.0±0.5vol%(体積%)となるように調整した。
【0087】
(評価試験項目と測定方法)
下記の方法でスランプフロー値、空気量、圧縮強度を測定した。なお、コンクリート組成物の温度が20℃の試験温度になるように、試験に使用する材料、パン型ミキサー、測定器具類をこの試験温度雰囲気下で調温し、混練及び各測定もこの試験温度雰囲気下で行った。
スランプフロー値:JIS−A−1101(2005年改正)
圧縮強度:JIS−A−1108(2006年改正)(供試体作製:JIS−A−1132(2006年改正))
空気量:JIS−A−1128(2005年改正)
【0088】
製造例1(共重合体1)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水144.3g、メタリルアルコールに平均150モルのエチレンオキサイドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(メタリルアルコール150EO付加物)152g、アクリル酸1.37g、パラトルエンスルホン酸5.32gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、5%過酸化水素水溶液25.0gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、メタリルアルコール150EO付加物の45%水溶液1351gを1時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水10.9gにアクリル酸43.5gを溶解させた水溶液を、全量の3分の2を1時間かけて、3分の1を引き続く2時間で滴下し、更にそれと同時に、イオン交換水60.3gにL−アスコルビン酸3.36g及び3−メルカプトプロピオン酸3.08gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6.5に中和し、重量平均分子量が48000の共重合体1の水溶液を得た。得られた共重合体1の水溶液には、パラトルエンスルホン酸(塩)を含んでいた。
【0089】
製造例2(共重合体2)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水116g、メタリルアルコールに平均120モルのエチレンオキサイドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル225g、アクリル酸0.163gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液17.1gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、イオン交換水17.4gにアクリル酸11.3gを溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水41.3gにL−アスコルビン酸0.887g及び3−メルカプトプロピオン酸0.770gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で、水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を用いてpH6.5、固形分が45%になるよう調整し、重量平均分子量が50000の共重合体2の水溶液を得た。
【0090】
比較製造例1(比較共重合体1)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水440g、3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均50モルのエチレンオキサイドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル1025g、アクリル酸1.85gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液49.7gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、イオン交換水17.8gにアクリル酸71.1gを溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水191.2gにL−アスコルビン酸1.29g及び3−メルカプトプロピオン酸2.02gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で、水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を用いてpH7.0、固形分が40%になるよう調整し、重量平均分子量が38000の比較共重合体1の水溶液を得た。
【0091】
<コンクリート試験>
実施例1〜4及び比較例1〜6では、コンクリート試験条件Aにてコンクリート試験を行い、実施例5及び比較例7〜9では、コンクリート試験条件Bにてコンクリート試験を行った。
【0092】
実施例1〜4
製造例1で得た共重合体1の水溶液と、表1に示す有機系硬化促進剤(トリエタノールアミン又はトリイソプロパノールアミン)とからなるセメント混和剤を用い、コンクリート試験を実施した。硬化促進剤の種類、混和剤の配合比及び試験結果を表1に示す。
【0093】
比較例1〜2
表1に示す共重合体(共重合体1の水溶液又は比較共重合体1の水溶液)をセメント混和剤として用い、硬化促進剤は使用しないで、コンクリート試験を実施した。共重合体の種類、混和剤の配合比及び試験結果を表1に示す。
【0094】
比較例3〜6
比較製造例1で得た比較共重合体1の水溶液と、表1に示す有機系硬化促進剤(トリエタノールアミン又はトリイソプロパノールアミン)とからなるセメント混和剤を用い、コンクリート試験を実施した。硬化促進剤の種類、混和剤の配合比及び試験結果を表1に示す。
【0095】
実施例5
製造例2で得た共重合体2の水溶液及びトリイソプロパノールアミンからなるセメント混和剤を用い、コンクリート試験を実施した。混和剤の配合比及び試験結果を表2に示す。
【0096】
比較例7〜8
表2に示す共重合体(共重合体2の水溶液又は比較共重合体1の水溶液)をセメント混和剤として用い、硬化促進剤は使用しないで、コンクリート試験を実施した。共重合体の種類、混和剤の配合比及び試験結果を表2に示す。
【0097】
比較例9
比較製造例1で得た比較共重合体1の水溶液及びトリイソプロパノールアミンからなるセメント混和剤を用い、コンクリート試験を実施した。混和剤の配合比及び試験結果を表2に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
表1及び2において、「添加量(%)/セメント」とは、セメント質量100質量%に対する、共重合体(共重合体水溶液の固形分、不揮発分)又は有機系硬化促進剤それぞれの添加量(質量%)を意味する。また、「(イ)/{(ア)+(イ)}(%)」とは、共重合体(ア)と有機系硬化促進剤(イ)との合計量100質量%に対する、有機系硬化促進剤(イ)の量(質量%)を意味する。
表1中、「PTS含有量(%対共重合体)」とは、セメント混和剤中の、共重合体固形分100質量%に対するパラトルエンスルホン酸(塩)(PTS)の含有量(質量%)を意味する。
【0101】
表1及び2より、特定のポリカルボン酸系共重合体及び有機系硬化促進剤(好ましくはアルカノールアミン系化合物)を用いた実施例1〜4及び5は、有機系硬化促進剤を用いない比較例1及び7とそれぞれ比較して、1日後の圧縮強度が約3〜20%大きくなり、特に、適正量(有機系硬化促進剤の含有量として好ましくは、ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤との合計量100質量%に対し、10〜50質量%である。)のアルカノールアミン系化合物を使用する実施例2、4及び5においては、約15〜20%大きくなることが分かる。また、実施例1〜4及び5は、比較共重合体1を用いた比較例2〜6並びに8及び9とそれぞれ比較して、圧縮強度が約10〜45%大きくなることが分かる。したがって、特定のポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤とを必須とするセメント混和剤とすることによって、早期強度に著しく優れるセメント硬化物が得られることが明らかになったといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤とを必須とするセメント混和剤であって、
該ポリカルボン酸系共重合体は、下記一般式(1):
YO(RO) (1)
(式中、Yは、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。ROは、同一又は異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、50を超え、300以下の数である。Rは、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(A)と、不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(B)とを含むことを特徴とするセメント混和剤。
【請求項2】
前記有機系硬化促進剤は、アミン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和剤。
【請求項3】
前記アミン系化合物は、アルカノールアミン系化合物であることを特徴とする請求項2に記載のセメント混和剤。
【請求項4】
前記アルカノールアミン系化合物は、トリアルカノールアミン系化合物及びテトラアルカノールアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のセメント混和剤。
【請求項5】
前記有機系硬化促進剤は、前記ポリカルボン酸系共重合体と有機系硬化促進剤との合計量100質量%に対し、1質量%以上、50質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセメント混和剤。
【請求項6】
更に、分子量300以下の非重合性の有機スルホン酸及び/又はその塩を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセメント混和剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。

【公開番号】特開2011−79721(P2011−79721A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235170(P2009−235170)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】