説明

早期避難支援システム

【課題】所定短時間の雨量データを用いて雨量強度予測を行うことで観測対象河川付近の住民の早期避難を実現できる早期避難支援システムを提供する。
【解決手段】早期避難支援システムは、雨量観測サーバ1と雨量強度予測装置2とが通信ネットワークNを介して接続されている。雨量観測サーバ1は、観測対象河川の所定短時間毎の雨量データを記憶すると共に、その記憶した所定短時間毎の雨量データを前記雨量強度予測装置2に通信ネットワークNを介して配信してなり、前記雨量強度予測装置2は、前記配信された雨量データを取得する雨量データ取得生成部21と、前記雨量データ取得生成部21にて取得した雨量データから単位時間当たりの予測雨量強度を算出する予測雨量強度算出部24とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定短時間の雨量データを用いて雨量強度予測を行い、この雨量強度予測に基づいて観測対象河川付近の住民等の早期避難を実現できる早期避難支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の避難支援システムとして、特許公報などの具体的な公知文献を挙げることはできないが、現在使用されている避難支援システムは、計測した雨量データを記憶する配信サーバと、その配信サーバから通信ネットワークを介して10分間隔で配信される雨量データを表示する雨量表示装置とで構成されている。この雨量データは、累加雨量を表し、上記雨量表示装置は、この累加雨量を表示するものである。そしてこのシステムの使用者は、この表示を参照し、観測対象河川付近の住民等の避難勧告等を行うか否かを決定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の避難支援システムは、次のような問題があった。すなわち、上記従来の避難支援システムは、累加雨量情報しか提供しておらず、しかも、10分間隔の雨量情報であるため、観測対象河川における降雨の状況変化をリアルタイムに把握することができず、それゆえ、近年増加傾向にある局地的豪雨を捉えることができないという問題があった。そのため、観測対象河川付近の住民等への避難勧告等が遅れ、最悪の場合、多数の人命を失ってしまうという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、所定短時間の雨量データを用いて雨量強度予測を行うことで観測対象河川付近の住民等の早期避難を実現できる早期避難支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0006】
請求項1の発明にかかる早期避難支援システムは、雨量観測サーバ(1)と、雨量強度予測装置(2)とが通信ネットワーク(N)を介して接続されてなる早期避難支援システムであって、
前記雨量観測サーバ(1)は、観測対象河川の所定短時間毎の雨量データを記憶すると共に、その記憶した所定短時間毎の雨量データを前記雨量強度予測装置(2)に通信ネットワーク(N)を介して配信してなり、
前記雨量強度予測装置(2)は、前記配信された雨量データを取得する雨量データ取得手段(雨量データ取得生成部21)と、前記雨量データ取得手段(雨量データ取得生成部21)にて取得した雨量データから単位時間当たりの予測雨量強度を算出する予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)とを有してなることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、上記請求項1に記載の早期避難支援システムにおいて、前記雨量強度予測装置(2)は、さらに、設定された所定のサンプリング時間を格納するサンプリング時間格納手段(サンプリング時間設定格納部23)を有し、
前記予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)は、前記サンプリング時間格納手段(サンプリング時間設定格納部23)にて格納されたサンプリング時間の単位時間当たりの予測雨量強度を前記雨量データ取得手段(雨量データ取得生成部21)にて取得した雨量データから算出してなることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、上記請求項2に記載の早期避難支援システムにおいて、前記予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)は、前記雨量データ取得手段(雨量データ取得生成部21)にて取得した雨量データを基に所要時刻における前記サンプリング時間格納手段(サンプリング時間設定格納部23)にて格納されたサンプリング時間の雨量データの移動平均を算出し、その算出した移動平均値から単位時間当たりの予測雨量強度を算出してなることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の早期避難支援システムにおいて、前記雨量強度予測装置(2)は、さらに、災害発生等の危険度に応じて設定された雨量強度を格納する閾値格納手段(閾値設定格納部27)と、前記予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)にて算出された予測雨量強度が、前記閾値格納手段(閾値設定格納部27)にて格納された雨量強度のうちどの危険度の閾値に該当するかを少なくとも判別できる判別手段(判別部28)とを有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明にかかる早期避難支援システムによれば、雨量強度予測装置(2)は、通信ネットワーク(N)を介して配信されてくる雨量観測サーバ(1)からの観測対象河川の所定短時間毎の雨量データを雨量データ取得手段(雨量データ取得生成部21)にて取得し、その取得した雨量データから単位時間当たりの予測雨量強度を予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)にて算出している。そのため、この算出した単位時間当たりの予測雨量強度を表示部(29)等によって本システムの使用者に報知してあげれば、使用者は、観測対象河川の降雨状況の変化をいち早く察知することができる。それゆえ、本発明によれば、観測対象河川付近の住民等の早期避難を実現することができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、サンプリング時間格納手段(サンプリング時間設定格納部23)にて格納されたサンプリング時間の単位時間あたりの予測雨量強度を予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)にて算出している。そのため、この算出した予測雨量強度を表示部(29)等によって本システムの使用者に報知してあげれば、使用者は、高精度な降雨状況の変化を知ることができる。それゆえ、使用者は、より的確な避難指示等を観測対象河川付近の住民等にすることができる。
【0012】
さらに、請求項3の発明によれば、サンプリング時間格納手段(サンプリング時間設定格納部23)にて格納されたサンプリング時間の単位時間あたりの予測雨量強度を、移動平均を用いて予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)にて算出している。そのため、この算出した予測雨量強度を表示部(29)等によって本システムの使用者に報知してあげれば、使用者は、より高精度な降雨状況の変化を知ることができる。それゆえ、使用者は、さらに的確な避難指示等を観測対象河川付近の住民等にすることができる。
【0013】
そして、請求項4の発明によれば、閾値格納部(閾値設定格納部27)にて災害発生等の危険度に応じて設定された雨量強度において、予測雨量強度算出手段(予測雨量強度算出部24)にて算出した予測雨量強度が、どの危険度の雨量強度の閾値に該当するかを判別手段(判別部28)にて判別することができる。そのため、その判別結果を表示部(29)等によって本システムの使用者に報知してあげれば、使用者は、現在の降雨状況がどの危険度なのかを瞬時に判断することができる。それゆえ、使用者は、より速やかな避難勧告等を観測対象地域の住民等に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る早期避難支援システムの概略構成図である。
【図2】図1に示す雨量強度予測装置の表示部に表示される画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る早期避難支援システムの一実施形態について、図1及び図2を参照して具体的に説明する。
【0016】
本実施形態に係る早期避難支援システムは、図1に示すように、雨量観測サーバ1と、雨量強度予測装置2とで構成され、その雨量観測サーバ1と雨量強度予測装置2とは、通信ネットワークNを介して接続されている。この雨量観測サーバ1は、観測対象河川に設置されている雨量計(図示せず)にて計測した所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量データ(パルス信号)を記憶する記憶部10と、その記憶部10に記憶されている雨量データ(パルス信号)を、通信ネットワークNを介して雨量強度予測装置2に配信する通信部11とで構成されている。
【0017】
一方、雨量強度予測装置2は、図1に示すように、CPU等からなる中央制御部20と、雨量データ取得生成部21と、累加雨量算出部22と、サンプリング時間設定格納部23と、予測雨量強度算出部24と、マウスやキーボード等からなる入力部25と、上記雨量観測サーバ1から通信ネットワークNを介して配信された雨量データ(パルス信号)を受信する通信部26と、閾値設定格納部27と、判別部28と、液晶ディスプレイ等からなる表示部29とで構成されている。
【0018】
雨量データ取得生成部21は、通信部26にて受信した雨量データ(パルス信号)から所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量を生成するものである。具体的には、使用者が、入力部25を用いて設定した図2の画面P1に示す上記雨量データ(パルス信号)の1パルスが0.5mmか1mmかの設定値(図示では0.5mmが選択されている)に、通信部26にて受信した所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量データ(パルス信号)を乗算することで所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量を生成している。すなわち、図2の画面P1に示す設定値が0.5mmで、通信部26にて受信した1分間の雨量データ(パルス信号)のパルス数が3であれば、0.5mm×3パルス=1.5mm/minとなり、1分間の雨量を算出することができる。そのため、このような乗算を繰返していくことにより、所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量を生成することができる。そして、この生成された雨量が図2に示す画面P3のように表示部29を介して表示されていくこととなる。なお、0.5mmか1mmかの設定は、図示しない雨量計の仕様に合せて設定されることは言うまでもない。
【0019】
また、累加雨量算出部22は、上記雨量データ取得生成部21にて生成した所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量を累加するものである。そして、この累加された雨量が図2に示す画面P4のように表示部29を介して表示される。より具体的に、図2に示す画面P2の時刻15:12に着目して説明すると、当該時刻15:12における1分間の雨量が1.5mm/min(画面P3参照)で、その1分前の時刻15:11における累加雨量が21.0mm(画面P4参照)である。そのため、累加雨量算出部22は、時刻15:12における累加雨量として、上記累加雨量21.0mmと時刻15:12における1分間の雨量1.5mmを加算することで、22.5mmと生成することができる。このようにして、累加雨量算出部22は、上記雨量データ取得生成部21にて生成した所定短時間毎(例えば、1分毎)の雨量を累加することで、累加雨量を生成することができる。そしてこの生成された累加雨量が図2に示す画面P4のように表示部29を介して表示されることとなる。
【0020】
一方、サンプリング時間設定格納部23は、使用者に入力部25を用いてサンプリング時間を設定するのを促すと共に、その設定されたサンプリング時間を格納するものである。そして、この設定されたサンプリング時間が図2の画面P5に示す雨量強度のうち画面P50のように表示部29を介して表示される。具体的には、サンプリング時間設定格納部23は、使用者が入力部25を用いて設定した図2の画面P50に示す行方向の数値(単位は分)「1」,「3」,「5」,「7」,「10」,「20」,「30」,「40」,「50」,「60」を格納している。使用者はこれら数値を変更する際、変更したい所望の数値を、入力部25を用いて図2に示す画面P50に表示されている数値上に直接書き込むことにより変更することができる。そしてこの上書き変更された数値が、画面P50に表示されると共に、サンプリング時間設定格納部23に格納される。なお、これら数値は自由に変更することができ、最大で、360まで設定することができる。最大で360まで設定できるようにしたのは、降った雨が河川に流出し、その河川の水位が上昇するまで一般的に最大で6時間観測しておけばよいためである。それゆえ、勿論、360以上設定できるようにしても良い。また、本実施形態においては、サンプリング時間を自由に設定できるようにしたが、予め設定しておき変更できないようにしても良い。しかしながら、サンプリング時間を自由に設定できるようにした方が、観測対象河川地域に合せたサンプリング時間を設定することができるため、自由に設定できるようにした方が好ましい。
【0021】
予測雨量強度算出部24は、上記サンプリング時間設定格納部23に格納されているサンプリング時間の単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の予測雨量強度を上記雨量データ取得生成部21にて生成した雨量を用いて算出してなるものである。具体的には、予測雨量強度算出部24は、設定されたサンプリング時間毎に、下記数式1を用いて雨量データの単純移動平均を夫々算出し、そして、その算出した単純移動平均値、夫々に、単位時間を乗算することで、単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の予測雨量強度を算出するものである。
【0022】
(数1)
(S+S+S+・・・・・・+SN−1)/N
は、ある時刻における1分間の雨量を示し、S,S,・・・・,Sn−1は、Sに示す時刻より1分前毎の時刻における1分間の雨量を示すものであり、Nは、サンプリング時間を示すものである。
【0023】
すなわち、より具体的に、予測雨量強度算出部24における算出方法を、図2に示す画面P2の時刻15:17に着目して説明する。まず、サンプリング時間「1」における単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の予測雨量強度の算出方法を説明する。
【0024】
サンプリング時間は「1」であるため、数式1におけるNは1となる。それゆえ、数式1は、S/1となる。このSは、時刻15:17における1分間の雨量(画面P3参照)を示すものであるため、移動平均値は、1.5/1=1.5となる。そして、この算出された移動平均値1.5に「60」(1時間当たり)を乗算すると、1.5×60=90.0となり、サンプリング時間「1」における1時間当たりの予測雨量強度が90.0mm/hと算出されることとなる。
【0025】
次いで、サンプリング時間「3」における単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の予測雨量強度の算出方法を説明する。この時、サンプリング時間は「3」であるため、数式1におけるNは3となる。それゆえ、数式1は、(S+S+S)/3となる。このSは、時刻15:17における1分間の雨量(画面P3参照)であり、Sは時刻15:17の1分前の時刻15:16における1分間の雨量(画面P3参照)であり、Sは時刻15:16の1分前の時刻15:15における1分間の雨量(画面P3参照)であるため、移動平均値は、(1.5+0+0)/3=0.5となる。そしてこの算出された移動平均値0.5に「60」(1時間当たり)を乗算すると0.5×60=30.0となり、サンプリング時間「3」における1時間当たりの予測雨量強度が30.0mm/hと算出されることとなる。
【0026】
そしてさらに、サンプリング時間「5」における単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の予測雨量強度の算出方法を説明する。この時、サンプリング時間は「5」であるため、数式1におけるNは5となる。それゆえ、数式1は、(S+S+S+S+S)/5となる。このSは、時刻15:17における1分間の雨量(画面P3参照)であり、Sは時刻15:17の1分前の時刻15:16における1分間の雨量(画面P3参照)であり、Sは時刻15:16の1分前の時刻15:15における1分間の雨量(画面P3参照)であり、Sは時刻15:15の1分前の時刻15:14における1分間の雨量(画面P3参照)であり、Sは時刻15:14の1分前の時刻15:13における1分間の雨量(画面P3参照)であるため、移動平均値は、(1.5+0+0+0+0)/5=0.3となる。そしてこの算出された移動平均値0.3に「60」(1時間当たり)を乗算すると0.3×60=18.0となり、サンプリング時間「5」における1時間当たりの予測雨量強度が18.0mm/hと算出されることとなる。
【0027】
しかして、上記同一の算出方法を繰返すことにより、予測雨量強度算出部24にて、サンプリング時間「7」、「10」、「20」・・・における1時間当たりの予測雨量強度が算出され、図2の画面P5に示すように、画面P2の時刻毎の予測雨量強度が夫々算出されることとなる。このように、サンプリング時間を設定し、この設定したサンプリング時間の単位時間あたりの予測雨量強度を算出することにより、高精度な降雨状況の変化を表示部29に表示させることができる。また、設定したサンプリング時間の単位時間あたりの予測雨量強度を、移動平均を用いて算出しているため、より高精度な降雨状況の変化を表示部29に表示させることができる。
【0028】
他方、閾値設定格納部27は、使用者に入力部25を用いて、災害発生等の危険度に応じた累加雨量及び雨量強度の閾値の設定を促すと共に、その設定された閾値を格納するものである。そして、この設定された閾値が図2に示す画面P6及び画面P7のように表示部29を介して表示される。具体的には、閾値設定格納部27は、使用者が入力部25を用いて設定した図2の画面P60〜P64に示す累加雨量の閾値を格納しており、使用者はこれら画面P60〜P64に示す数値を変更する際、変更したい所望の数値を、入力部25を用いて図2に示す画面P60〜P64に表示されている数値上に直接書き込むことにより変更することができる。また、これら画面P60〜P64に設定された数値に対応した画面P4の累加雨量の背景色が、夫々画面P60a〜P64aのように予め設定され、閾値設定格納部27に格納されている。
【0029】
また一方、閾値設定格納部27は、使用者が入力部25を用いて設定した図2の画面P70〜P74に示す雨量強度の閾値を格納しており、使用者はこれら画面P70〜P74に示す数値を変更する際、変更したい所望の数値を、入力部25を用いて図2に示す画面P70〜P74に表示されている数値上に直接書き込むことにより変更することができる。また、これら画面P70〜P74に設定された数値に対応した画面P5の雨量強度の背景色が、夫々画面P70a〜P74aのように予め設定され、閾値設定格納部27に格納されている。なお、本実施形態においては、累加雨量及び雨量強度の閾値を自由に設定できるようにしたが、予め設定しておき変更できないようにしても良い。しかしながら、閾値を自由に設定できるようにした方が、観測対象河川地域に合せた閾値を設定することができるため、自由に設定できるようにした方が好ましい。また、本実施形態においては、画面P60a〜P64aのように、画面P60〜P64に設定された数値に対応した画面P4の累加雨量の背景色が予め設定され、画面P70a〜P74aのように、画面P70〜P74に設定された数値に対応した画面P5の雨量強度の背景色が予め設定されているが、自由に設定できるようにしても良い。
【0030】
一方、判別部28は、累加雨量算出部22にて算出した累加雨量が、上記閾値設定格納部27にて災害発生等の危険度に応じて設定された累加雨量の閾値において、どの危険度の累加雨量の閾値に該当するかを判別する。そして、この判別結果に応じて、判別部28は、図2に示す画面P4の累加雨量の背景色を、画面P60〜P64に設定された数値に対応した画面P60a〜P64aの背景色に変更する。これにより、図2の画面P4に示すように変更された背景色の画面が表示部29を介して表示されることとなる。具体的に図2に示す画面P2の時刻15:20に着目して説明すると、その時刻15:20における累加雨量が32.5mm(画面P4参照)である。そのため、判別部28は、この累加雨量が、図2に示す画面P62の30以上50未満の閾値の範囲であると判別し、その画面P62の数値に対応した画面P62aの背景色に当該累加雨量の背景色を変更する(画面P4参照)。このようにして、他の時刻における累加雨量の背景色も変更されることとなる。
【0031】
また一方、判別部28は、予測雨量強度算出部24にて算出した予測雨量強度が、上記閾値設定格納部27にて災害発生等の危険度に応じて設定された雨量強度の閾値において、どの危険度の雨量強度の閾値に該当するかを判別する。そして、この判別結果に応じて、判別部28は、図2に示す画面P5の雨量強度の背景色を、画面P70〜P74に設定された数値に対応した画面P70a〜P74aの背景色に変更する。これにより、図2の画面P5に示すように変更された背景色の画面が表示部29を介して表示されることとなる。具体的に図2に示す画面P2の時刻15:20に着目して説明すると、その時刻15:20におけるサンプリング時間「1」の雨量強度は、180.0mm/h(画面P5参照)である。そのため、判別部28は、この雨量強度が、図2に示す画面P74の80以上の閾値の範囲であると判別し、その画面P74の数値に対応した画面P74aの背景色に当該雨量強度の背景色を変更する(画面P5参照)。このようにして、他のサンプリング時間及び他の時刻における雨量強度の背景色も変更されることとなる。
【0032】
しかして、閾値設定格納部27にて災害発生等の危険度に応じて設定された累加雨量又は雨量強度の閾値において、累加雨量算出部22にて算出した累加雨量又は予測雨量強度算出部24にて算出した予測雨量強度が、どの危険度の累加雨量又は雨量強度の閾値に該当するかを判別部29にて判別することにより、現在の降雨状況がどの危険度なのかを使用者に瞬時に報知することができる。それゆえ、使用者は、より速やかな避難勧告等を観測対象河川地域の住民等に行うことができる。なお、本実施形態においては、閾値設定格納部27にて累加雨量の閾値を設定できるようにし、判別部29にて累加雨量の判別を行えるようにしたが、雨量強度のみの閾値を設定し、判別できるようにしても良い。ただし、累加雨量の判別も行えた方が、より正確な状況を使用者に報知することができる。
【0033】
ところで、上記のように構成される早期避難支援システムの作動開始は、使用者が図2の画面P8に示す「データ取得」を、入力部25を用いて押下することにより、作動が開始される。すなわち、通信部26が上記雨量観測サーバ1から通信ネットワークNを介して雨量データ(パルス信号)を受信して上記説明した処理を開始する。一方、作動停止は、使用者が図2の画面P9に示す「終了」を、入力部25を用いて押下することにより作動が停止される。すなわち、上記説明した処理を終了すると共に、上記雨量観測サーバ1からの雨量データ(パルス信号)の受信を終了する。
【0034】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、雨量強度予測装置2は、通信ネットワークNを介して配信されてくる雨量観測サーバ1からの観測対象河川の所定短時間毎の雨量データを雨量データ取得生成部21にて取得し、その取得した雨量データから単位時間当たりの予測雨量強度を予測雨量強度算出部24にて算出している。そのため、この算出した単位時間当たりの予測雨量強度を表示部29等によって本システムの使用者に報知してあげれば、使用者は、観測対象河川の降雨状況の変化をいち早く察知することができる。それゆえ、本実施形態によれば、観測対象河川付近の住民の早期避難を実現することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、雨量観測サーバと雨量強度予測装置を夫々、1台設ける例を示したが、勿論、雨量観測サーバ及び/又は雨量強度予測装置を複数台設けても良い。また、本実施形態においては、雨量強度予測装置における処理を1台の雨量強度予測装置で全て処理する例を示したが、処理を分散させ、複数台の雨量強度予測装置で処理させても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 雨量観測サーバ
2 雨量強度予測装置
21 雨量データ取得生成部(雨量データ取得手段)
23 サンプリング時間設定格納部(サンプリング時間格納手段)
24 予測雨量強度算出部(予測雨量強度算出手段)
27 閾値設定格納部(閾値格納手段)
28 判別部(判別手段)
29 表示部
N 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨量観測サーバと、雨量強度予測装置とが通信ネットワークを介して接続されてなる早期避難支援システムであって、
前記雨量観測サーバは、観測対象河川の所定短時間毎の雨量データを記憶すると共に、その記憶した所定短時間毎の雨量データを前記雨量強度予測装置に通信ネットワークを介して配信してなり、
前記雨量強度予測装置は、前記配信された雨量データを取得する雨量データ取得手段と、前記雨量データ取得手段にて取得した雨量データから単位時間当たりの予測雨量強度を算出する予測雨量強度算出手段とを有してなることを特徴とする早期避難支援システム。
【請求項2】
前記雨量強度予測装置は、さらに、設定された所定のサンプリング時間を格納するサンプリング時間格納手段を有し、
前記予測雨量強度算出手段は、前記サンプリング時間格納手段にて格納されたサンプリング時間の単位時間当たりの予測雨量強度を前記雨量データ取得手段にて取得した雨量データから算出してなることを特徴とする請求項1に記載の早期避難支援システム。
【請求項3】
前記予測雨量強度算出手段は、前記雨量データ取得手段にて取得した雨量データを基に所要時刻における前記サンプリング時間格納手段にて格納されたサンプリング時間の雨量データの移動平均を算出し、その算出した移動平均値から単位時間当たりの予測雨量強度を算出してなることを特徴とする請求項2に記載の早期避難支援システム。
【請求項4】
前記雨量強度予測装置は、さらに、災害発生等の危険度に応じて設定された雨量強度を格納する閾値格納手段と、前記予測雨量強度算出手段にて算出された予測雨量強度が、前記閾値格納手段にて格納された雨量強度のうちどの危険度の閾値に該当するかを少なくとも判別できる判別手段とを有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の早期避難支援システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−16065(P2013−16065A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149179(P2011−149179)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(510105916)有限会社 ネックス (1)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】