説明

早炊き貯蔵米の製造方法及びその米粉の製造方法並びにそれらの装置

【課題】水を使わず米を洗浄殺菌し吸水時間も短縮し、小スペース化を図れ、良質の米飯を得る早炊き貯蔵米の製造方法及びその米粉の製造方法及びそれらの装置を提供する。
【解決手段】米の付着物を除去する乾式研米工程1Bと、研米後の米を前加熱した後常圧過熱蒸気で殺菌し更に後加熱してなる殺菌工程1Cと、殺菌後の米を湯にて10分程さらして水切りをする吸水工程1Dと、吸水米を飽和蒸気で蒸す蒸し工程1Eと、蒸し米を直ちに袋に入れ、開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、真空冷却で蒸し米を常温にしてから袋を密封する冷却包装工程1Fと、容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて48時間程放置しアルファー化した米澱粉を熟成させる熟成工程1Gとで、スムーズに良質な早炊き貯蔵米を得、加えて乾燥工程、粉化工程を経れば早炊き貯蔵米由来の良質な米粉を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたり保存出来、足りない分の水を早炊き貯蔵米に添加し加熱して含有させることにより、風味のある米飯を容易且つ短時間で得ることの出来る早炊き貯蔵米の製造方法及びその米粉の製造方法並びにそれらの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
早炊き貯蔵米の製造方法として、本発明者及び本出願人らによる以下のものが知られている。
【特許文献1】 特開平1−304856号公報
【特許文献2】 特開平3−123456号公報
【特許文献3】 特開平7−31391号公報
【特許文献4】 特開平7−31388号公報
【0003】
上記した特許文献1及び2の早炊き貯蔵米の製造方法は、洗った米を水に120分間以上浸漬してから水切りをし、その米を1.0kg/cm程度の飽和蒸気で蒸して少なくとも米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を外気に触れないように素早く容器に移して、その容器を収納庫に入れその収納庫を密封して、収納庫内を減圧し真空冷却して蒸し米の温度を常温まで下げ、収納庫を開けて冷却した蒸し米入りの容器を取り出し、5℃程度の低温且つ無菌状態を保持した低温無菌室に入れて2日間ほど放置し、アルファー化した米澱粉を熟成させる。熟成が終わった蒸し米は塊となっているから、ほぐし単粒化して所定量に計量し袋詰めして、製品化している。
【0004】
したがって、上記した特許文献1及び2の早炊き貯蔵米の製造方法は、工程中に人が介在し且つ外気に米が触れる機会が多いから、特に衛生管理の面で無菌状態を保持することが煩わしく、高度な衛生管理を常時しなければならないため、コスト高となりやすい。このような不都合な点を解消したのが、特許文献3の貯蔵米の製造方法である。
【0005】
この特許文献3の早炊き貯蔵米の製造方法は、洗米した米を常温の水に20分間〜120分間浸漬してから水切りをし、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気で蒸して少なくとも米澱粉の一部をアルファー化し、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに計量して袋に入れ、この袋を開封状態のまま容器内に入れてその容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして、蒸し米を常温にしたあと、容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋をシールし、そのあと容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し、常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、さらにこの袋入り蒸し米をそのままほぐして、米を単粒化した状態のアルファー化処理米とするものである。
【0006】
したがって、特許文献3の早炊き貯蔵米の製造方法は、人手間をかけず、外気に触れる機会もほとんどなく、衛生管理の面で無菌状態を保持することが容易であり、高度な衛生管理を常時行う必要性がなくなって、コストを下げることが可能となるものである。ところが、この早炊き貯蔵米の製造方法では、洗米機に水を供給して洗米するため、多量の水道水が必要であり、それがすべて洗米廃水となり、さらに米に含まれるビタミン類やその他の栄養分も流失する。このため、この早炊き貯蔵米の製造方法の洗浄部分に特許文献4の米の洗浄方法を採用して、水道水の節約や洗米廃水の大幅減、さらに米の栄養分の流失を避けることが可能となる。すなわち、この特許文献4の米の洗浄方法は、ネット上を所定量ずつ流通している米にエアーを吹き付け付着物を粗取りし、その後飽和蒸気を吹き付けて付着物の大半を除去して、さらにエアーを吹き付け米に残留している飽和蒸気によるミストや付着物を仕上げ取りするものであり、水の多量使用がなくなり、洗米廃水も劇的に減り、栄養分の流失も減らせるものである。
【0007】
しかしながら、特許文献4の洗米は、あくまで洗米であり殺菌要素はゼロであるから、次の浸漬水切り工程では、低水温、例えば15℃の水で浸漬して米に吸水させなければ、菌が増殖して米の味を変質させる虞がある。特に、夏場などでは日本各地で水道水の水温が25℃を越えることが度々あり、確かにその分浸漬時間が減るが、それでも少なくとも30分間以上は浸漬しなければならないから、どうしても菌の増殖を招く。その結果、低水温の水に米を浸漬して吸水させることから、勢い浸漬時間が長くなり、浸漬タンクの容量も大きなものとならざるを得ない。更に、この特許文献4の米の洗浄方法では、蒸気として飽和蒸気を使用するから、米粒に触れると結露し易く、米粒同士が付着するのを防ぎきれない。この状態になると、ネットで米粒をスムーズに移動しずらくなって、飽和蒸気も各米粒に行きわたらず、洗浄効果も低下するようになる。したがって、水をほとんど使用しないで米を洗浄殺菌でき、吸水時間も短縮できる早炊き貯蔵米の製造方法として、本発明者及び本出願人らによる以下のものが知られている。
【特許文献5】 特開2008−122号公報
【0008】
この特許文献5の早炊き貯蔵米の製造方法では、ネット上を所定量ずつ流通している米にエアー及び霧を吹き付け洗浄し、さらに常圧過熱蒸気を吹き付けて濡らさず米の品温も上げその状態で殺菌してから、30℃〜48℃の湯にて吸水させるものであり、スムーズに洗浄出来て水をほとんど使用しないから、多量の水道水を使わず洗米廃水も生じず、しかも、殺菌もしてあるから湯でさらしたり、浸漬させても菌の繁殖がなく短時間で米に吸水させることができるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献5の早炊き貯蔵米の製造方法は、水をほとんど使用しないで洗浄、殺菌が出来る点で優れているが、霧といえども水であり、米の表面に付着している糠やゴミと共に水をエアーにて吹き飛ばして洗浄しているが、米の表面に水が僅かながら残る。その状態の米を殺菌するために、常圧過熱蒸気を吹き付けると、米の品温が低いから米の表面が結露し易く、上述の米の表面に僅かながら残留している水と相俟って、ネット上を所定量ずつ流通している米同士が付着し、以後の殺菌工程がスムーズに行かないことになってしまう。さらに、殺菌後の米に大気が急に触れるとやはり米の表面が結露して次工程にスムーズに行かないことになる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、本発明者及び本出願人らによる特許文献5の早炊き貯蔵米の製造方法を改良することであり、水を全く使用しないで糠やゴミなどを除去し且つスムーズに殺菌でき、吸水時間も短縮できて、設備構成の小型化、単純化及び小スペース化を図れて、風味のある米飯を常に簡単容易に得ることが出来、その処理米を容易に粉化出来る早炊き貯蔵米の製造方法及びその米粉の製造方法並びにそれらの装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、米に付着した糠、ゴミなどを除去する乾式研米工程と、該乾式研米工程から所定量ずつ受け入れた研米後の米を前加熱した後、100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、そのあと後加熱してなる殺菌工程と、その殺菌後の米を25℃〜65℃の湯にて5分間〜10分間さらしてから水切りをする吸水工程と、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気で蒸し少なくとも米澱粉の一部をアルファー化する蒸し工程と、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに袋に入れ、該袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして蒸し米を常温にしたあと、前記容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋を密封する冷却包装工程と、そのあと前記容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、前記米をアルファー化処理米とする熟成工程とを、少なくとも含んでなることを特徴とする早炊き貯蔵米の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、米貯留タンクから所定量ずつ受け入れた米に付着した糠、ゴミなどを除去する乾式研米部と、該乾式研米部から所定量ずつ受け入れた研米後の米を前加熱した後、100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、更に後加熱する殺菌部と、その殺菌後の米を25℃〜65℃の湯に5分間〜10分間さらしてから水切りをする吸水水切り部と、吸水水切り後の米を一定量貯留するタンクの底板及び側板の多数の孔より0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気を吹き込んで蒸しかつ内部に米を一定量排出する定量フィーダーを有してなる蒸し機と、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機と、計量された蒸し米を袋にて受け入れ開封のまま容器内に入れて該容器を閉じ690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしたあと前記容器内に無菌エアーを入れ大気圧とし袋を密封して前記容器内から袋入り蒸し米を取り出す真空冷却包装機と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと袋入り蒸し米を本ほぐしして単粒化した状態のアルファー化処理米にする熟成ほぐし部とを、少なくとも含んでなることを特徴とする早炊き貯蔵米の製造装置が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記蒸し工程後の蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥する乾燥工程と、その乾燥米を粉砕して粉にする粉化工程とを、少なくとも含んでなることを特徴とする米粉の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、前記蒸し工程と前記乾燥工程との間に、蒸し米を急速に真空冷却して常温にする冷却工程と、その常温の蒸し米を無菌状態にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させる熟成工程とを、付加させた米粉の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記蒸し機から排出した後の蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥する乾燥機と、その乾燥米を粉砕して粉にする粉化部とを、少なくとも含んでなることを特徴とする米粉の製造装置が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記蒸し機と前記乾燥機との間に、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機と、計量された蒸し米を容器内に入れ閉じて690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにして常温にしたあと前記容器内から蒸し米を取り出す真空冷却機と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと蒸し米を本ほぐしして単粒化した状態とする熟成ほぐし部とを、付加させた米粉の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の早炊き貯蔵米の製造方法によれば、乾式研米により糠、ゴミなどを除去し、その米を前加熱して結露を防ぎ、常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、後加熱により再び結露を防ぎ、25℃〜65℃の湯に最大10分間さらし水切りして、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気で蒸して米澱粉をアルファー化し、その蒸し米を熱いまま袋に入れ開封状態で容器に入れ容器を密封して、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようになると20℃程度になるから、容器内に無菌エアーを送り大気圧としたあと袋をシールして、米や袋内にゴミ、細菌などを付着や混入させない。袋詰めされた状態であるから、広大な低温の無菌室が無くても常温にて24時間〜48時間放置して、アルファー化した米澱粉を熟成させることができる。さらに、無菌エアーで大気圧とした容器内で袋を密封するから無菌エアーが袋に入った状態のアルファー化処理米になる。したがって、水を使用しないで糠やゴミなどを除去するから、全く洗米廃水が生じず、しかも、米を結露させないからスムーズに殺菌出来、湯でさらしたり浸漬させても菌の繁殖がなく短時間で米に吸水させることができて、廃水処理施設も含めた設備構成の小型化、単純化及び小スペース化を図れて、風味のある米飯を、常に簡単容易に得ることができる効果がある。
【0018】
また、本発明の早炊き貯蔵米の製造装置によれば、上記発明の早炊き貯蔵米の製造方法を効率良く且つスムーズに実施でき、効率良く且つスムーズに早炊き貯蔵米を製造することができるから、その分従来のものよりメリットがある。
【0019】
また、本発明の米粉の製造方法によれば、乾式研米により糠、ゴミなどを除去し、その米を前加熱して結露を防ぎ、常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、後加熱により再び結露を防ぎ、25℃〜65℃の湯に最大10分間さらし水切りして、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気で蒸して米澱粉をアルファー化し、その蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥し、さらに粉砕して米粉を得る。したがって、スムーズに殺菌出来且つ短時間で吸水させ得た蒸し米を常圧過熱水蒸気により乾燥して粉にするだけなので、処理構成が単純であり、その処理工程の管理も容易なのに、原料米の種類を問わず自在に設定したアルファー化度の米粉を得ることが可能である。加えて、飽和水蒸気の蒸し時間を調整することで、米澱粉のアルファー化度を容易に変えることが出来、また、常圧過熱水蒸気はほぼ無酸素状態であるから、ビタミンや酵素などに対して酸素による影響がほとんど無く、殺菌効果も高く、このような米粉は今後その利用範囲が拡大すると期待できる。
【0020】
また、本発明の米粉の製造方法によれば、飽和水蒸気による蒸し米を、乾燥する前に急速に真空冷却して常温にし、その常温蒸し米を無菌状態にて24時間〜48時間放置してアルファー化米澱粉を熟成させてから、その熟成米に対し常圧過熱水蒸気を吹き付けて乾燥し、さらに粉砕して早炊き貯蔵米の米粉を得る。したがって、上記効果に加えて、米澱粉のアルファー化状態を均質に固定でき、米粉にした後の利用を品質面で支えることができる。
【0021】
また、本発明の米粉の製造装置によれば、上記発明の米粉の製造方法をより効率よく実施でき、効率よくアルファー化した米粉を得ることが出来るから、その分従来のものよりメリットがある。
【0022】
また、本発明の米粉の製造装置によれば、蒸し機から出た蒸し米を計量機により予備ほぐし及び計量してから、真空冷却機に投入し常温にして、さらに熟成ほぐし部によりアルファー化米澱粉を熟成させて、その熟成米に本ほぐしを施して単粒化してから、乾燥機に送る。したがって、上記効果に加えて、米澱粉のアルファー化状態を均質にし、且つ米粉の利用を品質面で支えることを、装置的に可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の早炊き貯蔵米の製造方法を示すフロシート図、図2は図1の早炊き貯蔵米の製造方法を具体化した製造装置のフロシート図である。図面において、早炊き貯蔵米の製造方法1Aは、米に付着した糠、ゴミなどを除去する乾式研米工程1Bと、該乾式研米工程1Bから所定量ずつ受け入れた研米後の米を前加熱した後、100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、そのあと後加熱してなる殺菌工程1Cと、その殺菌後の米を25℃〜65℃の湯にて5分間〜10分間さらしてから水切りをする吸水工程1Dと、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気で蒸し少なくとも米澱粉の一部をアルファー化する蒸し工程1Eと、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに袋に入れ、該袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして蒸し米を常温にしたあと、前記容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋を密封する冷却包装工程1Fと、そのあと前記容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、前記米をアルファー化処理米とする熟成工程1Gとを、少なくとも含んでなるものである。
【0025】
前記乾式研米工程1Bは、従来公知の乾式研米機を使用するが、主として米の表面に付着している糠、ゴミ、酸化皮膜などを除去する程度のものであり、清酒などの醸造の際の精米歩合50〜65%、すなわち、米を50〜65%も削り取るようなものとは異なる。
【0026】
前記殺菌工程1Cは、乾式研米後の米を前加熱して品温を上げ結露を防いで米同士が付着しないようにしてから、100℃〜350℃の常圧過熱水蒸気を吹き付けて殺菌する。さらに、殺菌後の米を後加熱して大気に触れて品温が急激に低下しないようにして結露を防ぎ、米同士が付着しないようにして、次工程に送る。
【0027】
次工程の前記吸水工程1Dは、殺菌後の米を25℃〜65℃の湯にて5分間〜10分間さらしてから水切りをする。殺菌工程1Cにて米の品温が上昇しているから、冬場を除き水を特に加温しなくても25℃〜65℃の湯となる。なお、この吸水工程1Dは、常温の水にて20分間〜120分間浸漬し吸水させてから水切りすることを、排除するものではない。
【0028】
前記蒸し工程1Eは、米の蒸し時間を、例えば、1分間〜15分間の範囲で調整することで、米澱粉のアルファー化度を0%に近い値から100%に近い値まで自在に調整できる。したがって、米粉の使用目的に合わせたアルファー化度になるように蒸し時間を調整する。
【0029】
前記冷却包装工程1Fは、蒸し米を真空冷却して急速に常温にするものであり、しかも大気に触れないようにして雑菌、その他のゴミなどが入らないように、工夫がなされているものである。
【0030】
前記熟成工程1Gは、アルファー化した米澱粉を熟成させるものであり、前記冷却包装工程1Fと相俟って、これら2工程は、アルファー化した米澱粉を均質にし、早炊き貯蔵米の品質向上に資するものである。なお、早炊き貯蔵米の原料米は、粳米や糯米、新米や古米、玄米や精白米、ジャポニカ種やインディカ種など、特に限定がない。
【0031】
次に、上記した早炊き貯蔵米の製造方法を具体的に実施する早炊き貯蔵米の製造装置について説明する。
図2において、早炊き貯蔵米の製造装置1は、米貯留タンク2から所定量ずつ受け入れた米に付着した糠、ゴミなどを除去する乾式研米部3と、この乾式研米部3から所定量ずつ受け入れた研米後の米を前加熱した後、100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、更に後加熱する殺菌部4と、その殺菌後の米を25℃〜65℃の湯に5分間〜10分間さらしてから水切りをする吸水水切り部5と、吸水水切り後の米を一定量貯留するタンク6の底板6a及び側板6bの多数の孔6cより0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気を吹き込んで蒸しかつ内部に米を一定量排出する定量フィーダー7を有してなる蒸し機8と、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機9と、計量された蒸し米を袋10にて受け入れ開封のまま容器11内に入れてこの容器11を閉じ690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしたあと容器11内に無菌エアーを入れ大気圧とし袋10を密封して容器11内から袋入り蒸し米を取り出す真空冷却包装機12と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと袋入り蒸し米を本ほぐしして単粒化した状態のアルファー化処理米にする熟成ほぐし部13とを、少なくとも含んでなるものである。
【0032】
前記米貯留タンク2はその下部にロータリーバルブ20を設け、その下に搬送装置21を設けてあり、乾式研米部3における研米機の受入タンクに米を供給する。研米機は公知の乾式のものを使用する。その目的は、文字どおり「米を研ぐ」もので、米の表面に残留付着している糠、ゴミ、酸化皮膜などを除去するためのものであり、削る要素は無いものがよい。なお、乾式研米部3の研米機下に研米後の米を貯めるための一時貯留タンク22が設けられ、さらに、その下部にロータリーバルブ23を設け、その下に搬送装置24を設けてあり、殺菌部4における定量供給機25に米を供給する。
【0033】
前記殺菌部4は、過熱蒸気室30と、この中を走行すると共に定量供給機25により供給した米を受け入れる蒸気室コンベアー31と、さらに、過熱蒸気室30の前部及び後部に取り付けられた前ヒーター32及び後ヒーター33とからなる。この過熱蒸気室30は、蒸気ボイラー34に常圧過熱蒸気発生装置35を経由して接続している。この常圧過熱蒸気発生装置35は、常圧過熱蒸気を発生するものであり、この常圧過熱蒸気は、通常の蒸気ボイラーから出た飽和蒸気を種々の手段にてさらに加熱して、100℃を優に越える高温状態にしたものであり、酸素がほとんど含まれていないので不活性であり、それでいて常圧過熱蒸気の単位容積の熱量は、同温度の熱風空気の約4倍あると言われ、温度も500℃以上に容易に出来るものである。したがって、この常圧過熱蒸気発生装置35は、常圧過熱蒸気を発生出来るものであれば特に限定がないが、例えば、特開2004−251605に示す電磁誘導式のものが採用される。
【0034】
蒸気室コンベアー31は、そのコンベアーベルトに米が通過しない程度の孔が開き、常圧過熱蒸気が自在に通過出来て、米に付着している高温菌、例えば、バチルス菌や土壌菌などを死滅させる。また、前ヒーター32及び後ヒーター33は、いずれも米の品温を結露しない程度に保持して、米同士の付着を防いでこの殺菌部4での米の移動をスムーズにするためのものである。なお、前ヒーター32及び後ヒーター33の方式は、米の品温を結露しない程度に効率よく加温し保持出来るものであれば、特に限定がない。
【0035】
前記吸水水切り部5は、25℃〜65℃の湯40に殺菌後の米をさらし、吸水させるものであり、水槽41に張った25℃〜65℃の湯40内を走行するバケットコンベア42により構成する。すなわち、殺菌部4からの殺菌後の米をバケットコンベア42の個々のネット状物で形成しているバケット43で受け、このバケット43が湯40中を走行する5分間〜10分間浸漬して、その間に米に湯40を吸水させ、さらに、個々のバケット43が湯40から出て、水切りコンベアー44を経由して、蒸し機8に米を投入する間に米の水切りをするものである。米は上述の方法で殺菌され且つ品温も上昇しているから、25℃〜65℃の湯40の温度を下げることなく、短時間の浸漬で吸水し、しかも米を殺菌してあるから水槽41内での菌の繁殖がなく、吸水して減った分の湯40を水槽41内に供給してやれば良いのである。したがって、従来のように、120分間滞留させ得るだけの容量のタンクが2基必要になるようなことがない。なお、この吸水水切り部5は25℃〜65℃の湯40内に米を浸漬して吸水させているが、米に25℃〜65℃の湯40をシャワーリングして吸水させても、何ら差し支えない。
【0036】
前記蒸し機8は、図3に示すように、下部がV字状なったタンク6内の底部に定量フィーダー7を設け、この定量フィーダー7はモータ7aに直結し、タンク6の側面には定量フィーダー7の排出管50が設けられている。この排出管50は、水平に設けた直管51とその先端に曲管52を取り付けてなる。そして、このタンク6は、そのV字状になった底板6a及び側板6bの外側を板にて覆い蒸気室53を形成し、さらに、タンク6内にある定量フィーダー7の上方に蒸気吹出管54を設けている。これら蒸気室53及び蒸気吹出管54は前記蒸気ボイラー34に直結している。この蒸気ボイラー34は、タンク6及び前記常圧過熱蒸気発生装置35内に0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気を吹き込むことができるものが選択される。
【0037】
前記計量機9は、図4に示すように、蒸し機8の排出管50からの蒸し米を一旦受け入れるホッパー55と、このホッパー55下に取り付けた予備ほぐし機56と、この予備ほぐし機56を通過したあとの蒸し米を計量する計量部57とからなる。この計量機9は、蒸し機8の排出管50から定量フィーダー7によりほぼ定量的に送られてくる蒸し米をホッパー55にて受け入れ、予備ほぐし機56の2本のパドル56aとほぐしドラム56bとにより予備ほぐしを行い、さらに計量部57にて予め定めた量を計量すると、排出管50からの蒸し米の供給を一時的に止め、袋10に計量した量の蒸し米を入れる。なお、袋10に蒸し米を入れる際、脱酸素剤供給機58により脱酸素剤59も入れる。この脱酸素剤59は酸化鉄などであり、袋10内の酸素を吸収し蒸し米の保存性を向上させるものである。
【0038】
前記真空冷却包装機12は、既に述べたように、複数の容器11を少なくとも4個有している。これらの容器11には、自動的に開閉し密封できるフタが設けられ、順次以下に示す工程60、61、62、63を踏み循環するようになっている。第1の工程60は、容器11のフタを開いて、蒸し米を収容した袋10を開封のままの状態で容器11内に入れる工程である。第2の工程61は、容器11のフタを閉じて密封し、真空発生機64に接続して690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにする工程である。第3の工程62は、無菌エアー発生機65に接続して容器11内を大気圧にすると共に、容器11内に設けたシール機(図示せず)により袋10をシールする工程である。第4の工程63は、容器11を開いて袋10を取り出し搬送コンベアー66に載せる工程である。
【0039】
上記真空冷却包装機12の冷却負荷を軽減するために、すなわち、真空発生機64の容量を小さくするために、排出管50から排出した蒸し米を計量して袋10に入れるまでの間に、バルブ67を開いて前述の無菌エアー発生機65から無菌エアーを蒸し米に吹き付けるのが良い。このようにすることにより、排出管50から排出した直後の蒸し米は98℃ぐらいであるが、直ちに80℃〜70℃に低下させることができる。
【0040】
前記熟成ほぐし部13は、搬送コンベアー66により搬送された袋10入りの20℃程の蒸し米を、常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させる熟成ヤード14と、この袋入りの熟成させた蒸し米をそのまま本ほぐしを行い、単粒化した状態にする本ほぐし機15と、からなる。この熟成ヤード14は、常温でも良いから、夏場などで著しく気温が上昇しない倉庫であれば、その役割を果たすことができる。この熟成ヤード14において、袋10入り蒸し米は、アルファー化状態、すなわち、通常の炊き上がった状態である澱粉分子が水分子と結合しそれらを媒介にして互いに連なった状態が安定化し離しょう現象が生じない状態となる。この袋10入りアルファー化処理米は、予備ほぐしされてはいるものの、米粒子が付着して塊状態になっている。
【0041】
そこで、前記本ほぐし機15により、袋10入りアルファー化処理米は更にほぐされ、単粒化した状態とされる。すなわち、この本ほぐし機15は、上部コンベアー68と下部コンベアー69とからなり、これら双方のコンベアー68及び69のローラ68a及び69aが千鳥状に配置されている。上記の通り、塊状のアルファー化処理米は、既に予備ほぐしされているので米粒子の付着力が弱く、これらコンベアー68及び69のローラ68a及び69aの間に袋10を通すことで実施される本ほぐしにより、さらにほぐされてほぼ完全に単粒化し、通常の生米とほとんど変わらないような状態となって、製品17になる。この製品17は前記製品ヤード16に積まれる。
【0042】
次に、上記構成になる早炊き貯蔵米の製造装置1により、その製造方法を説明する。
生米が貯留されている貯留タンク2の下部にあるロータリーバルブ20及び搬送装置21を作動させ、乾式研米部3における研米機の受入タンクに米を供給する。研米機により米から糠、ゴミ、酸化皮膜などを除去して、一時貯留タンク22に研米後の米を貯めて、前記乾式研米工程1Bを終了する。
【0043】
一時貯留タンク22下のロータリーバルブ23及び搬送装置24を作動させ、殺菌部4における定量供給機25に米を供給する。この定量供給機25から殺菌部4の蒸気室コンベアー31上に定量的に米が供給され、前ヒーター32により米の品温を上げ結露を止めて、米同士の付着を防いでスムーズに過熱蒸気室30内を通過させ、その過程で殺菌する。そして、過熱蒸気室30内を通過して殺菌した米を後ヒーター33により、米の品温の急速低下を止め結露を防いで、以後の米の移動をスムーズして、吸水水切り部5のバケットコンベア42のバケット43に投入して、前記殺菌工程1Cを終了する。
【0044】
バケットコンベアー42は、25℃〜65℃の湯40の入った水槽41内を5分間〜10分間程かけてゆっくり走行し、この浸漬時間内で米に湯40を吸水させ、さらに、バケットコンベア42が湯40から出て水切りコンベアー44を経由して、蒸し機8に米を投入する間に米の水切りして、前記吸水工程1Dを終了する。なお、米は、殺菌部4で殺菌され且つ品温も上昇しているから、湯40の温度を下げず短時間の浸漬で充分吸水し、しかも水槽41内での菌の繁殖がなく、吸水して減った分の湯40を水槽41内に供給すれば良い。
【0045】
次に、水切りコンベアー44から蒸し機8のタンク6内に一定量の米が投入されたら、蒸気ボイラー34からタンク6の外側にある蒸気室53及び蒸気吹出管54に0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気を送り込み、タンク6の底板6a及び側板6bの多数の孔6c並びに蒸気吹出管34から飽和蒸気を吹き出し、米を蒸す。この間、定量フィーダー7を稼働させると、排出管50から予め設定した蒸し具合まで蒸していない米を排出することになるので、タンク6内の米を攪拌する程度に定量フィーダー7を間欠的に稼働させさせたり、正逆回転させたりして予め設定した蒸し具合の蒸し米になるまで、排出管50から米を排出しないようにしている。
【0046】
蒸し機8内で米が、予め設定した蒸し具合まで蒸し上がったら、定常的な定量フィーダー7の運転に入る。すなわち、米が蒸し機8のタンク6内に投入され排出管50から排出されるまでの時間、すなわち、予め設定した蒸し具合まで蒸し上がる所定の時間滞留するように設定する。この滞留時間は、米の浸漬時間、換言すれば、米に水がどの程度吸収しているか、蒸気圧、米澱粉のアルファー化度をどの程度にするか、などのファクターにより大きく変化する。
【0047】
定常運転に入った蒸し機8の排出管50から、蒸し米が計量機9のホッパー55に投入されるが、排出管50の先端が曲管52になっているから、排出管50内に蒸し米が充満した状態になり、蒸し米がかなり高い精度で定量的にホッパー55に投入され、前記蒸し工程1Eが終了することになる。
【0048】
そして、ホッパー55下の予備ほぐし機56により蒸し米を予備ほぐしする。この予備ほぐしは、回転している2本のパドル56aの間を蒸し米が通り、さらに回転しているドラム56bを通過することにより実施され、蒸し米は一旦バラける。この予備ほぐしにより一旦バラけた蒸し米は、計量部57により計量が行われる。すなわち、計量部57が蒸し米を予め定めた量に計量すると、排出管50からの蒸し米の供給を一時的に止めると共に、計量部57の下部を開き計量した量の蒸し米を袋10に入れ、さらに脱酸素剤供給機58により脱酸素剤59も袋10に入れる。
【0049】
この蒸し米及び脱酸素剤59入りの袋10は、その口を開いたまま前記真空冷却包装機12の第1の工程60の位置にある容器11内にセットされ、その一方で計量部57の下方に空の袋11がセットされる。さらに、排出管50から排出した蒸し米に、バルブ67を開いて無菌エアー発生機65から無菌エアーを吹き付ければ、排出した直後の98℃程度の蒸し米の温度を直ちに80℃〜70℃に低下させ得るから、真空冷却包装機12の冷却負荷を大幅に軽減することができる。
【0050】
次に、真空冷却包装機12の第1の工程60の位置にある容器11は、フタを閉じ第2の工程61に進み、ここで真空発生機64に接続して減圧して行き蒸し米の温度を急速に下げ、690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持することができるようになると、蒸し米の温度は常温、約20℃程になる。
【0051】
容器11が第3の工程62に進むと、無菌エアー発生機65により容器11内に無菌エアーを送り大気圧にしてから、容器11内に設けたシール機(図示せず)により袋10をシールして密封する。さらに、容器11は第4の工程63に進み、容器11のフタを開いて袋10を取り出し搬送コンベアー66に載せ、熟成ほぐし部13の熟成ヤード14に袋10を搬送することで、前記冷却包装工程1Fが終了する。
【0052】
この熟成ヤード14にて、袋10を常温で24時間〜48時間放置し、その間に袋10内の蒸し米は熟成し、米澱粉のアルファー化状態が安定化すると共に、予備ほぐしにより一旦バラけた米粒同士が再び付着して塊となっている。したがって、本ほぐし機15の上部コンベアー68及び下部コンベアー69のローラ68a及び69aの間に袋10を通すことにより、塊状のアルファー化処理米はほぐされて、ほぼ完全に単粒化し、通常の生米とほとんど変わらないような状態になり、製品17、すなわち早炊き貯蔵米となって、前記熟成工程1Gが終了する。この早炊き貯蔵米である製品17は、製品ヤード16に積まれ保管される。
【実施例2】
【0053】
そして、図5は本発明の米粉の製造方法を示すフロシート図、図6は図5の米粉の製造方法を具体化した製造装置のフロシート図である。米粉の製造方法1Aaは、早炊き貯蔵米の製造方法1Aにおける蒸し工程1Eからの蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥する乾燥工程1Hと、その乾燥米を粉砕して粉にする粉化工程1Iとを、少なくとも含んでなるものである。なお、この米粉の製造方法1Aaにおける乾式研米工程1B、殺菌工程1C、吸水工程1D、蒸し工程1Eは、早炊き貯蔵米の製造方法1Aと同様であり、それらを具体化した製造装置の乾式研米部3、殺菌部4、吸水水切り部5、蒸し機8も同様なので、それらの説明を省略する。
【0054】
この乾燥工程1Hは、米の乾燥時間及び常圧過熱水蒸気の温度を調整することで、米の水分を自在に設定できる。したがって、米粉の使用目的に合わせた乾燥後水分、例えば、3重量%〜10重量%の範囲になるように、乾燥時間及び常圧過熱水蒸気の温度を調整する。ここでは、常圧過熱水蒸気を使用して乾燥させるから、熱含量が高いため乾燥が早く出来、無酸素状態であるから米に含有するビタミンや酵素などに対し、酸素による影響がほとんど無く、また、常圧過熱水蒸気の温度が120℃以上であれば殺菌効果も高く、仮に乾燥工程1Hに至る前に雑菌などが混入しても死滅し無菌状態となる。
【0055】
前記粉化工程1Iは、単に乾燥米を粉砕して粉にできれば良く、その方式、粉径に限定がない。米粉の使用目的に合わせて粉砕方式や粉径を設定する。
【0056】
次に、上記した米粉の製造方法を具体的に実施する米粉の製造装置について説明する。
図6において、米粉の製造装置70は、前記蒸し機8から排出した後の蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥する乾燥機71と、その乾燥米を粉砕して粉にする粉化部72とを、少なくとも含んでなるものである。
【0057】
前記乾燥機71は、前記蒸し機8の排出管50から定量フィーダー7によりほぼ定量的に送られてくる蒸し米を一旦受け入れるホッパー55aと、蒸し米を乾燥させる乾燥室73と、上記ホッパー55aからの蒸し米を受け且つ乾燥室73内を通過走行する乾燥室コンベアー74と、からなるバンド乾燥機である。上記ホッパー55aはその下部に前記予備ほぐし機56(図4参照)が設けられ、乾燥室73は常圧過熱水蒸気発生装置35に接続されている。乾燥室コンベアー74は、ステンレス製の無端ベルト75が駆動機76によって走行するものであり、乾燥室73に入る手前に無端ベルト75を挟んで押圧ロール77及び受圧ロール78が設置されて、蒸し米を平板化する役目を担っている。
【0058】
前記粉化部72は、米粉の使用目的などに鑑み、乾燥米を予め設定された粒度に粉砕するものであり、従来公知の粉砕機、例えば、ロール式粉砕機、衝撃式粉砕機などが採用される。粉砕して得られた米粉は、直ちに袋79に詰められ、米粉製品80となり、この米粉製品80は製品ヤード81に積まれる。
【0059】
次に、上記構成になる米粉の製造装置70により、その製造方法1Aaを説明する。
まず、ホッパー55aにて蒸し機8からほぼ定量的に送られてくる蒸し米を一旦受け入れ、ホッパー55a下部の予備ほぐし機56により予備ほぐしを行い、乾燥室コンベアー74の無端ベルト75上に蒸し米を供給し、押圧ロール77と受圧ロール78との間を通して、蒸し米を平板化する。無端ベルト75上の板状となった蒸し米は、そのまま乾燥室73に送られその中を走行する過程で、乾燥室73内を流れる常圧過熱蒸気により、予め設定された水分値まで乾燥されて前記乾燥工程1Hが終了し、前記粉化部72に投入される。板状の乾燥米は、従来公知の粉砕機により粉砕されて米粉となり、直ちに袋79に詰められ米粉製品80となって、この米粉製品80は製品ヤード81に積まれる。
【実施例3】
【0060】
また、図6の米粉の製造方法1Abは、同図における米粉の製造方法1Aaの蒸し工程1Eと乾燥工程1Hとの間に、蒸し米を急速に真空冷却して常温にする冷却工程1Jと、その常温の蒸し米を無菌状態にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させる熟成工程1Kとを、付加させたものである。なお、米粉の製造方法1Abにおける冷却工程1Jは、上述の早炊き貯蔵米の製造方法1Aの冷却包装工程1Fにおける袋10の存在に拘泥せず、急速冷却出来れば良く、さらに、最大48時間の熟成期間における早炊き米の変質を防止すれば良いから、必ずしも脱酸素剤を添加しなくても良いものである。また、熟成工程1Kも上述の早炊き貯蔵米の製造方法1Aの熟成工程1Fのように、脱酸素剤入りの袋10のアルファー化処理米でなくても良い。
【0060】
次に、上記した米粉の製造方法1Abを具体的に実施する米粉の製造装置70aは、前記蒸し機8と前記乾燥機71との間に、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機9と、計量された蒸し米を容器11内に入れ閉じて690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにして常温にしたあと容器11内から蒸し米を取り出す真空冷却機12と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと蒸し米を本ほぐしを行って単粒化した状態とする熟成ほぐし部13と、を付加させたものである。
【0061】
前記計量機9は、袋10に定量を入れるためのものであり、真空冷却機12は袋10入りの蒸し米を急速冷却するためのもであり、熟成ほぐし部13はアルファー化した米澱粉の安定化、均質化を図るためのものであって、脱酸素剤を添加しないこと以外、早炊き貯蔵米の製造装置1の場合とほぼ同様である。
【0062】
したがって、米粉の製造装置70aは、図7に示すように、本ほぐし機15により本ほぐしされた袋10入りの早炊き貯蔵米が直接袋開封機82にて開封されるか、図2の製品ヤード16に積まれ保管されている製品17の早炊き貯蔵米が袋開封機82により開封されて、一旦受入タンク83に投入されてから、乾燥機71の無端ベルト75上に供給される。無端ベルト75上の早炊き貯蔵米は、上記の蒸し米の場合と同様に、押圧ロール77と受圧ロール78との間を通過することで板状にされ、さらに、無端ベルト75上の板状の早炊き貯蔵米は、そのまま乾燥室73に送られ、乾燥室73内を流れる常圧過熱蒸気により、予め設定された水分値まで乾燥されて、平板化工程1J及び乾燥工程1Eが終了し、前記粉化部14に投入される。板状の乾燥米は、上記と同様に、従来公知の粉砕機により粉砕されて米粉となり、直ちに袋79に詰められ米粉製品80となって、この米粉製品80は製品ヤード81に積まれる。
【0063】
以上、本発明を実施するための最良の形態を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、例えば、米についてのみ説明したが、うるち米、もち米を問わず、さらに麦、そばなどの穀物についても適用出来ることは言うまでもなく、さらに、平板化してから乾燥したがこれ以外の乾燥方式を採用しても差し支えなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の早炊き貯蔵米の製造方法及びその装置は、水を全く使用しないで糠、ゴミなどを除去し且つスムーズに殺菌でき、吸水時間も短縮できて、設備構成の小型化、単純化及び小スペース化を図れて、風味のある米飯を常に簡単容易に得たく、さらに、その処理米を容易に粉化したいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】 本発明の早炊き貯蔵米の製造方法を示すフロシート図(実施例1)である。
【図2】 図1の早炊き貯蔵米の製造方法を具体化した製造装置のフロシート図(実施例1)である。
【図3】 本発明の早炊き貯蔵米の製造装置における蒸し機の一部を切欠した斜視図(実施例1)である。
【図4】 本発明の早炊き貯蔵米の製造装置における計量機を示す断面図である(実施例1)。
【図5】 本発明の米粉の製造方法を示すフロシート図(実施例2、3)である。
【図6】 本発明の米粉の製造装置を示すフロシート図(実施例2)である。
【図7】 本発明の米粉の製造装置を示すフロシート図(実施例3)である。
【符号の説明】
【0066】
1 早炊き貯蔵米の製造装置
1A 早炊き貯蔵米の製造方法
1Aa、1Ab 米粉の製造方法
1B 乾式研米工程
1C 殺菌工程
1D 吸水工程
1E 蒸し工程
1F 冷却包装工程
1G、1K 熟成工程
1H 乾燥工程
1I 粉化工程
1J 冷却工程
2 貯蔵タンク
3 乾式研米部
4 殺菌部
5 吸水水切り部
6 タンク
6a 底板
6b 側板
6c 孔
7 定量フィーダー
7a モーター
8 蒸し機
9 計量機
10、79 袋
11 容器
12 真空冷却包装機
12a 真空冷却機
13 熟成ほぐし部
14 熟成ヤード
15 本ほぐし機
16 製品ヤード
17 製品
20、23 ロータリーバルブ
21、24 搬送装置
22 一時貯留タンク
25 定量供給機
30 過熱蒸気室
31 蒸気室コンベアー
32 前ヒーター
33 後ヒーター
34 蒸気ボイラー
35 常圧過熱蒸気発生装置
40 湯
41 水槽
42 バケットコンベアー
43 バケット
44 水切りコンベアー
50 排出管
51 直管
52 曲管
53 蒸気室
54 蒸気吹出管
55、55a ホッパー
56 予備ほぐし機
56a パドル
56b ほぐしドラム
57 計量部
58 脱酸素剤供給機
59 脱酸素剤
60 第1の工程
61 第2の工程
62 第3の工程
63 第4の工程
64 真空発生機
65 無菌エアー発生機
66 搬送コンベアー
67 バルブ
68 上部コンベアー
68a、69a ローラ
69 下部コンベアー
70、70a 米粉の製造装置
71 乾燥機
72 粉化部
73 乾燥室
74 乾燥室コンベアー
75 無端ベルト
76 駆動機
77 押圧ロール
78 受圧ロール
80 米粉製品
81 製品ヤード
82 袋開封機
83 受入タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米に付着した糠、ゴミなどを除去する乾式研米工程と、該乾式研米工程から所定量ずつ受け入れた研米後の米を前加熱した後、100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、そのあと後加熱してなる殺菌工程と、その殺菌後の米を25℃〜65℃の湯にて5分間〜10分間さらしてから水切りをする吸水工程と、その米を0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気で蒸し少なくとも米澱粉の一部をアルファー化する蒸し工程と、その蒸し米を熱い状態のまま直ちに袋に入れ、該袋を開封状態のまま容器内に入れて容器を密封し、該容器内で690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持出来るようにして蒸し米を常温にしたあと、前記容器内に無菌エアーを送り大気圧としてから容器内で袋を密封する冷却包装工程と、そのあと前記容器を開いて袋入り蒸し米を取り出し常温にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させ、前記米をアルファー化処理米とする熟成工程とを、少なくとも含んでなることを特徴とする早炊き貯蔵米の製造方法。
【請求項2】
米貯留タンクから所定量ずつ受け入れた米に付着した糠、ゴミなどを除去する乾式研米部と、該乾式研米部から所定量ずつ受け入れた研米後の米を前加熱した後、100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて殺菌し、更に後加熱する殺菌部と、その殺菌後の米を25℃〜65℃の湯に5分間〜10分間さらしてから水切りをする吸水水切り部と、吸水水切り後の米を一定量貯留するタンクの底板及び側板の多数の孔より0.25kg/cm〜1.5kg/cmの飽和蒸気を吹き込んで蒸しかつ内部に米を一定量排出する定量フィーダーを有してなる蒸し機と、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機と、計量された蒸し米を袋にて受け入れ開封のまま容器内に入れて該容器を閉じ690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにしたあと前記容器内に無菌エアーを入れ大気圧とし袋を密封して前記容器内から袋入り蒸し米を取り出す真空冷却包装機と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと袋入り蒸し米を本ほぐしして単粒化した状態のアルファー化処理米にする熟成ほぐし部とを、少なくとも含んでなることを特徴とする早炊き貯蔵米の製造装置。
【請求項3】
請求項1記載の蒸し工程後の蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥する乾燥工程と、その乾燥米を粉砕して粉にする粉化工程とを、少なくとも含んでなることを特徴とする米粉の製造方法。
【請求項4】
前記蒸し工程と前記乾燥工程との間に、蒸し米を急速に真空冷却して常温にする冷却工程と、その常温の蒸し米を無菌状態にて24時間〜48時間放置しアルファー化した米澱粉を熟成させる熟成工程とを、付加させた請求項3記載の米粉の製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の前記蒸し機から排出した後の蒸し米に100℃〜350℃の常圧過熱蒸気を吹き付けて乾燥する乾燥機と、その乾燥米を粉砕して粉にする粉化部とを、少なくとも含んでなることを特徴とする米粉の製造装置。
【請求項6】
前記蒸し機と前記乾燥機との間に、蒸し米を受け入れ予備ほぐしを行うと共にその所定量を計量する計量機と、計量された蒸し米を容器内に入れ閉じて690mmHg以上の真空状態を10秒間〜30秒間保持するようにして常温にしたあと前記容器内から蒸し米を取り出す真空冷却機と、アルファー化した米澱粉を熟成させたあと蒸し米を本ほぐしして単粒化した状態とする熟成ほぐし部と、を付加させた請求項5記載の米粉の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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