説明

早産の合併症の治療

本発明は、未熟児が罹患する、早産の1つまたは複数の合併症を治療する方法を提供し、この方法は、臍帯血幹細胞と場合により胎盤幹細胞とを未熟児に投与するステップを含む。また、本発明は、未熟児を治療するために、臍帯血幹細胞、詳細には、自己由来の臍帯血細胞および胎盤幹細胞を組み合わせて投与する方法、およびそれらを含む組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年11月7日出願の米国仮特許出願第61/002,375号の利益を請求しており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、未熟児(premature infant)を含めた、乳児における1つまたは複数の障害または状態を、臍帯血ならびに場合により胎盤幹細胞および/または血液添加剤をそのような乳児に投与することによって治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
正期産児は、37〜42週を子宮内で過ごす。37週より前に出生した乳児は、未熟(premature)または早産(preterm)であるとみなされる。早産(premature birth)は、生後1ヵ月までの第1死亡原因であり、これには大きな社会的関心が寄せられている。March of Dimes Birth Defects Foundationによれば、2002年、米国内では480,812例の早産(全出生数の12.1%に相当する)が発生し、未熟児の医療費は、155億ドルであった。
【0004】
早期の分娩および出産についてのリスク因子には、母親の年齢(18歳未満または35歳超)、感染症、糖尿病、高血圧、喫煙、多胎妊娠および物質乱用がある。
【0005】
現在、妊娠約23〜約25週で出生した乳児の生存率には変動が見られ、妊娠23週の乳児についての約20パーセントから、妊娠25週の乳児についての約65パーセントまでとなっている。この年齢群の約3分の1の生存乳児は正常に発達し、約3分の1は、軽度または中等度の身体障害を発症し、約3分の1は、重度の身体障害を発症する。
【0006】
妊娠約26〜約29週で出生した未熟児の生存率は、妊娠26週の乳児については約75パーセントであり、妊娠29週の乳児については約85パーセントである。生存するそのような未熟児の約40パーセントは正常に発達し、一方、約40パーセントは軽度または中等度の身体障害を発症し、約20パーセントは、1つまたは複数の重度の身体障害を発症する。
【0007】
妊娠約30〜33週で出生した未熟児の90〜95パーセントが生存する。これらの未熟児の約65%は、正常に発達し、一方、約20パーセントは軽度または中等度の身体障害を発症し、これらの未熟児の約15パーセントは、1つまたは複数の重度の身体障害を発症する。
【0008】
妊娠約34〜約37週で出生した未熟児は、正期産児よりも未熟であるが、それらの生存率(約95パーセント)は、正期産児の生存率とほぼ同一であり、長期の見通しは、いずれの正期産児の見通しとも同程度に良好である。
【0009】
未熟児の身体的特徴として、例えば、小さなサイズ、低い出生体重、不規則な呼吸、ならびに肺、免疫系および脳等の未発達の臓器および系が挙げられる。未熟児に伴う共通の問題として、これらに限定されないが、貧血、低血圧、高ビリルビン血症、感染症、網膜症、呼吸促迫、ならびに肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓および腎臓等の特定の臓器の不完全な発達が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
未熟児に伴う障害および状態を治療するための種々の治療の選択肢が利用可能であるが、成功の程度は様々である。例えば、貧血を有する未熟児を、輸血および/または鉄の補充を用いて治療することができ、界面活性剤の投与が、早産に伴う呼吸促迫症候群を治療するために使用される。しかし、不完全な臓器の発達に対する治療の選択肢は存在しない。進歩にもかかわらず、未熟児に伴う障害および状態のための治療の開発が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う、未熟児の障害および状態を治療する方法を提供する。
【0012】
1つの態様では、本発明は、未熟児の障害または状態を治療する方法を提供し、前記障害または状態は早産によって引き起こされるまたは早産に伴うものであり、この方法は、臍帯血、例えば、同種の臍帯血を含む組成物を未熟児に投与するステップを含む。特定の実施形態では、この方法は、胎盤幹細胞および/または血液添加剤を未熟児に投与するステップをさらに含む。胎盤幹細胞および/または血液添加剤を投与する実施形態では、臍帯血は、自己由来または同種異系であってよい。より特定の実施形態では、前記血液添加剤は、エリスロポエチン、鉄補充物質、ビタミン、または臍帯血以外から得た同種異系の赤血球である。より特定の実施形態では、前記添加剤は、同種異系の赤血球であり、前記細胞は、移植片対宿主病を低減または防止するのに十分な程度まで放射線照射されている。特定の実施形態では、前記放射線照射は、少なくとも2,500cGyの放射線を用いる。別のより特定の実施形態では、前記添加剤は、同種異系の赤血球であり、前記細胞は、白血球が除去されている。
【0013】
未熟児(premature infant)は、妊娠37週未満で出生する乳児である。特定の実施形態では、未熟児は、出生時に妊娠約23〜約25週を経ている。特定の実施形態では、未熟児は、出生時に妊娠約26〜約29週を経ている。特定の実施形態では、未熟児は、出生時に妊娠約30〜約33週を経ている。特定の実施形態では、未熟児は、出生時に妊娠約34〜約37週を経ている。
【0014】
特定の実施形態では、出生時の未熟児の体重は、約800グラム以上である。特定の実施形態では、出生時の未熟児の体重は、約500グラム〜約800グラムである。特定の実施形態では、出生時の未熟児の体重は、約500グラム未満である。
【0015】
本発明に従って治療すべき障害または状態は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴うことが当技術分野で知られている任意の障害または状態であってよい。特定の実施形態では、障害または状態は、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。特定の実施形態では、障害または状態は、貧血である。特定の実施形態では、障害または状態は、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧または高ビリルビン血症である。特定の実施形態では、障害または状態は、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓等の臓器の不完全な発達によって引き起こされる。
【0016】
本発明において使用する臍帯血は、当技術分野で知られている任意の技法によって収集することができる。特定の実施形態では、臍帯血を、臍帯血バンクから得る。特定の実施形態では、臍帯血を、分娩後の哺乳動物の胎盤から収集する。一部の実施形態では、臍帯血を、正期産分娩後の哺乳動物の胎盤から得る。その他の実施形態では、臍帯血を、早産分娩後の哺乳動物の胎盤から得る。臍帯血は、単独で投与する場合には、治療すべき未熟児にとって同種異系であってもよく、あるいは胎盤幹細胞または血液添加剤と共に投与する場合には、同種異系もしくは自己由来、または両方の組合せであってもよい。
【0017】
本発明において使用する胎盤幹細胞は、当技術分野で知られている任意の方法によって単離し、処理することができる。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、正期産の胎盤から得る。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、早産の胎盤から得る。本発明の方法において有用な胎盤幹細胞は、治療すべき未熟児にとって同種異系もしくは自己由来、または両方の組合せであってよい。
【0018】
特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、放血させ、灌流して、残余の血液細胞を除去した状態にした胎盤から得る。次いで、放血させた胎盤を、胎盤に由来する内因性幹細胞の産生を可能にする適切な条件下で約2〜約24時間以上培養することができる。
【0019】
胎盤幹細胞を、培養した胎盤から得たら、これに限定されないが、特定の細胞表面マーカーを同定するための免疫化学を含めた、いくつかの方法によって特徴付けることができる。本発明に従って使用すべき好ましい幹細胞を、以下の細胞表面マーカーの存在によって同定することができる:CD34,OCT−4、CD73、CD105、CD200および/またはHLA−G。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD34細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD34細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、OCT−4細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD73、CD105およびCD200である細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD200またはOCT−4である細胞を含む。特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD200およびOCT−4である細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞には、CD73およびCD105である細胞であって、前記細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体(embryoid-like body)の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD73、CD105およびCD200である細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞には、OCT−4である細胞であって、当該幹細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる。
【0020】
臍帯血、または臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを未熟児に投与するステップは、当業者の判断に従って行うことができ、例えば、静脈内から行うことができる。投与は、未熟児の出生後の種々の時期において行うことができるが、一般に、出生後約2週以内が好ましい。種々の実施形態では、未熟児の出生後1、2、5、10、12もしくは24時間または1週間以内に、投与を行う。投与は、未熟児の出生後1または複数回行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】胎盤を灌流し、次いで、灌流液を収集するための、胎盤の静脈および動脈へのカニューレ挿入の横断面である。
【図2A】流し出し、灌流した胎盤を、収集し、クランプし、灌流し、収集および保管する様子を示す概略図である。
【図2B】流し出し、灌流した胎盤を、収集し、クランプし、灌流し、収集および保管する様子を示す概略図である。
【図2C】流し出し、灌流した胎盤を、収集し、クランプし、灌流し、収集および保管する様子を示す概略図である。
【図2D】流し出し、灌流した胎盤を、収集し、クランプし、灌流し、収集および保管する様子を示す概略図である。
【図2E】流し出し、灌流した胎盤を、収集し、クランプし、灌流し、収集および保管する様子を示す概略図である。
【図3】バイオリアクターとして使用するための装置中の灌流した胎盤の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1 未熟児の治療
本発明は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う、未熟児の障害および状態を治療する方法を提供する。この方法は、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを未熟児に投与するステップを含む。臍帯血を単独でまたは血液添加剤と共に投与する実施形態では、臍帯血は、治療すべき未熟児にとって同種異系である。臍帯血を胎盤幹細胞および/または血液添加剤と共に投与する実施形態では、臍帯血は、レシピエントの未熟児にとって自己由来または同種異系であってよい。
【0023】
乳児の出生体重が1kg(およそ2.3ポンド)未満である場合には、この乳児は、超低出生体重(ELBW)児とみなされる。特定の実施形態では、出生時の未熟児の体重は、約800グラム以上である。特定の実施形態では、出生時の未熟児の体重は、約500グラム〜約800グラムである。特定の実施形態では、出生時の未熟児の体重は、約500グラム未満である。
【0024】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、この場合、早産によって引き起こされるまたは早産に関係する障害または状態を癒す、修正する、あるいはそのような障害もしくは状態またはそのような障害もしくは状態の任意のパラメータもしくは症状の進行、重症度および/または持続期間を低下または寛解させることを指す。
【0025】
未熟児の、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを用いる治療は、未熟児が生存する場合、または早産によって引き起こされるもしくは早産に伴う障害もしくは状態が、治療の結果として何らかの形で測定可能に改善される場合に、効能を示すとみなすことができる。そのような改善は、例えば、1つまたは複数の測定可能な指標によって示すことができ、それらとして、例えば、特定の疾患、障害または状態に伴う(これらに限定されないが、血圧、心拍数、呼吸数、種々の血液細胞型の数、特定のタンパク質、炭水化物、脂質もしくはサイトカインの血中レベル、または疾患、障害もしくは状態に伴う遺伝子マーカーの発現の調節を含めた)生理的な状態または一連の生理的な状態の検出可能な変化が挙げられる。
【0026】
そのような指標のうちの任意の1つが、例えば、正期産児についての正常値の範囲内の値、またはそのような(1つもしくは複数の)指標が、臍帯血および/もしくは胎盤幹細胞の投与がない場合に示すと予想されるよりも正常値に近い値に変化することによって、そのような治療に対して応答しているように見える場合に、未熟児の、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを用いる治療は有効とみなされる。正常値は、指標について当技術分野で知られている正常値または正常値範囲であってよい。例えば、未熟児が示す、1つまたは複数の代謝に関するまたは生化学的な指標を、(1つまたは複数の)指標の正常範囲と比較することができ、治療の結果、1つまたは複数の代謝に関するまたは生化学的な指標が、正常な正期産児についての参照範囲により密接に近づく、またはその範囲内に入る場合に、治療は有効とみなされる。そのような指標として、これらに限定されないが、17ヒドロキシプロゲステロン、25−ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)、アセト酢酸、酸性度(pH)、アルブミン、アンモニア、アミラーゼ、アスコルビン酸、炭酸水素、ビリルビン、血液量、カルシウム、炭素、二酸化炭素分圧、一酸化炭素、CD4細胞数、セルロプラスミン、塩素イオン、銅、クレアチンキナーゼ(CKまたはCPK)、クレアチニンキナーゼのアイソザイム、クレアチニン、赤血球沈降速度(ESRまたはSed−Rate)、グロブリン、グルコース、ヘマトクリット、ヘモグロビン、鉄、鉄結合能、乳酸塩(乳酸)(動脈)、乳酸デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、マグネシウム、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均赤血球容積(MCV)、浸透圧、酸素分圧、酸素飽和度(動脈)、ホスファターゼ、リン、血小板数、カリウム、タンパク質(総)、プロトロンビン(PTT)、ピルビン酸、赤血球数(RBC)、ナトリウム、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、トランスアミナーゼ(アラニンまたはアスパラギン酸)、尿素窒素(BUN)およびBUN/クレアチニンの比、尿酸、ビタミンA、WBC(白血球数(leukocyte count)および白血球数(white blood cell count))、亜鉛等のレベルまたは値が挙げられる。
【0027】
臍帯血の投与または臍帯血と胎盤幹細胞との投与の有効性を、行動試験によって判定することができる。例えば、出生後の最初の2〜3年以内に、例えば、Neonatal Neurobehavioral Examination、Alberta Infant Motor ScaleまたはBayley Scale of infant Development(第3版)等の1つまたは複数の試験によって、そのような試験についての未熟児によるスコアを、正常児および異なる在胎期間の未熟児についてのスコアまたはスコアの範囲と比較し、スコアが未熟児の在胎期間において予想されるスコアよりも高い場合には改善が生じていると決定することにより、未熟児の神経の発達の改善を判定することができる。特定の実施形態では、臍帯血、または臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを投与された未熟児は、そのスコアが、従来の治療のみを用いて治療した同じ在胎期間の未熟児のスコアまたはスコアの平均よりも高い場合に、改善を示しているとみなされる。
【0028】
1つの実施形態では、早産児(preterm infant)を、出生後間もなく(例えば、第1週以内に)、Neonatal Neurobehavioral Examination(NNE)によって判定し、最大スコアは81として、行動形質、原始反射、ならびに身体の調子および運動のパターンの発達を示すスコアを得る。乳児を、出生後2年以内に、好ましくは、約18〜約22月において1または複数回再判定する。この期間におけるNNEスコアの顕著な改善が、効能の証となる。種々の実施形態では、臍帯血、または臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを用いずに治療した未熟児と比較して、スコアが、例えば、未熟児が37〜42週の在胎期間で出生した場合には37〜42週の在胎期間の早産児の平均スコア(66.5)から改善した場合、未熟児が34〜36週の在胎期間で出生した場合には34〜36週の早産児の平均スコア(60.7)から改善した場合、または未熟児が34週以下の在胎期間で出生した場合には34週以下の在胎期間で出生した乳児の平均スコア(51.1)から改善した場合に、臍帯血と場合により胎盤幹細胞との投与は有効である。Morgan、「Neonatal Neurobehavioral Examination.A New Instrument For Quantitative Analysis of Neonatal Neurological Status」、Phys.Titer.68(9):1352−1358(1988)を参照されたい。
【0029】
1.1 早産によって引き起こされるまたは早産に伴う障害または状態
本発明を用いて治療すべき障害または状態は、当技術分野で知られている、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う任意の障害または状態であってよい。特定の実施形態では、障害または状態は、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。特定の実施形態では、障害または状態は、貧血である。特定の実施形態では、障害または状態は、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧または高ビリルビン血症である。特定の実施形態では、障害または状態は、これらに限定されないが、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓を含めた、臓器の不完全な発達によって引き起こされる。
【0030】
(急性)呼吸促迫症候群(ARDS/RDS)または(肺硝子膜症と以前は呼ばれていた)乳児呼吸促迫症候群(IRDS)は、界面活性剤の不十分な産生の結果生じる高い表面張力のために、乳児の肺中の気嚢(肺胞)の開いた状態が維持されない呼吸障害である。呼吸促迫症候群は、全未熟児の10%が発症するが、正期産児ではめったに発症しない。この疾患は、成熟した肺中に正常であれば出現する化学物質である肺の界面活性剤を欠くことによって引き起こされる。界面活性剤によって、気嚢の崩壊が妨げられ、気嚢が空気でより容易に膨張することが可能となる。呼吸促迫症候群では、気嚢が崩壊し、小児が適切に呼吸するのを妨げる。症状は通常、出生後間もなく出現し、進行性により重症化する。RDS/ARDSを有する乳児は通常、酸素を用いる補助および人工呼吸器を必要とするか、または界面活性を示す薬物を用いて治療されている。
【0031】
貧血は、酸素を身体に適切に運ぶための血中の赤血球またはヘモグロビンの不十分な数によって特徴付けられる障害である。未熟児は、出産の間の失血、鉄含有量の不足、および成人と比較した場合の赤血球のより短い半減期を含めた、いくつかの理由で貧血を発症する場合がある。現行の治療の選択肢には、(血液銀行からの、または血縁者から得た、指定されたドナーの血液からの)輸血、鉄の補充、および失血の防止がある。いずれかの特定の理論に縛られる意図はないが、臍帯血は輸血の良好な供給源となり得ると考えられている。臍帯血の自己性の注入には、血液銀行または血縁のドナーからの血液と比べて、いくつかの利点がある。すなわち、1)臍帯血は、酸素を運ぶ中等度の能力を有する赤血球の良好な供給源である;2)臍帯血は、容易に入手可能であり、最小限の試験しか必要としない;かつ3)臍帯血は、早産に起因して損傷を受けた、1つまたは複数の未熟な臓器のさらなる発達を支援することができる幹細胞および前駆細胞の豊富な供給源である。
【0032】
無呼吸は、未熟児が呼吸を一時的に停止する障害であり、通常、15〜20秒間の呼吸停止と定義されている。無呼吸は、妊娠34週以前に出生した乳児において発生する場合があり、最も未熟な早産児の間では頻度が増加する。無呼吸は、呼吸を制御する脳の部分が未熟であることが原因であると考えられている。無呼吸を有する乳児は、薬物(例えば、アミノフィリン、カフェインまたはドキサプラム)を用いて治療される、かつ/または持続的気道陽圧もしくは換気装置を用いて補助される。
【0033】
慢性肺疾患(気管支肺異形成症)は、機械的換気および/または高い酸素レベルの下に長期間置かれた未熟児において発症する状態である。慢性肺疾患は、酸素、薬物を用いて、かつ換気装置から乳児を徐々に離すことによって治療される。
【0034】
高ビリルビン血症は、新生児が遭遇する最も一般的な問題の1つであり、血中のビリルビンのレベルが異常に高まる。高ビリルビン血症は、5mg/dL超の全血清ビリルビンレベルと定義される。このレベルを上回るビリルビンは、神経毒性/細胞傷害性を示す。高ビリルビン血症は、未抱合のビリルビン色素が皮膚中および粘膜中に沈着した結果生じる。軽度の高ビリルビン血症であれば、治療する必要はない。より高いビリルビンレベルは、光線療法によって治療することができ、この場合、ビリルビン光の下に乳児が置かれる。
【0035】
未熟児は、正期産児よりも感染症を発症するリスクが高い。これは、未熟児の免疫系が未熟であるからである。未熟児において見られる重大な感染症には、敗血症、肺炎および髄膜炎(脳を囲む膜の感染)がある。現在、感染症は、抗生物質および抗ウイルス薬を用いて治療されている。
【0036】
脳室内出血は、脳の出血である。脳室内出血は、脳室に沿って存在する小さな血管が破裂した場合に発症する。脳室内出血は、未熟な新生児に最も頻繁に発症する。重度の出血は、脳の損傷を引き起こす場合があり、その結果、例えば、学習障害および/または行動に関する問題を生ずる恐れがある。
【0037】
壊死性腸炎は、腸の内部表面が傷害を受け、炎症を起こしている状態である。重度の場合には、腸の一部が死滅する場合があり、腸穿孔および腹膜炎に至る。壊死性腸炎は主として未熟児において発症する。この障害の原因は不明であるが、腸への血流の減少によって、腸の正常な保護粘膜の産生が妨げられていると考えられている。また、腸内細菌が原因である場合もある。壊死性腸炎は、摂食に関する問題、乳児の腹部の腫大、およびその他の合併症に至る恐れがある。壊死性腸炎は、薬物、および時には手術によって治療される。
【0038】
動脈管は、血液が、出生するまでは乳児の肺を迂回することを可能にする血管であり、動脈管開存(PDA)は、これが、出生後に閉鎖し損ねた状態である。動脈管開存は現在、薬物を用いて、必要であれば手術によって治療されている。
【0039】
未熟児網膜症は、未熟児において、眼の後部(網膜)にある血管が異常に発達する障害である。これらの血管から出血する場合があり、最も重度の症例では、網膜が剥離する恐れがあり、視力の喪失に至る。未熟児網膜症は主として、妊娠32週以前に出生した乳児において発症する。未熟児網膜症を発症する主要なリスク因子は、極度な未熟さである。呼吸に関する問題の治療に由来する血中の高い酸素レベルがリスクを増加させる場合がある。典型的には、両側性の網膜症が高い濃度の酸素を用いて治療した未熟児において発症し、これは、血管の拡張、増殖および蛇行、浮腫、ならびに網膜剥離によって特徴付けられ、最終的には、網膜は、高密度な後水晶体膜として認めることができる線維性の腫瘤に変換する。典型的には、眼の成長が停止し、その結果、小眼球症を発症する場合があり、失明に至る恐れがある。軽度の未熟児網膜症はしばしば、自発的に治癒する。現在、重度の網膜症を有する乳児は、レーザーまたは寒冷療法を用いて治療されている。寒冷療法では、網膜の周辺の部分を凍結する。
【0040】
さらに、本発明はまた、これらに限定されないが、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓および腎臓を含めた、特定の臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害および状態の治療も包含する。現在、不完全な臓器の発達のための治療の選択肢はない。
【0041】
1.2 臍帯血および胎盤幹細胞の未熟児への投与
臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを、未熟児、詳細には、未熟であることに伴うまたはそれによって引き起こされる任意の障害または状態を有するまたはそれらを示す未熟児に、注射または輸血を含めた、任意の薬学的または医学的に許容できる様式で投与することができる。特定の実施形態では、臍帯血および胎盤幹細胞を、未熟児に非経口的に投与する。本明細書で使用する場合、「非経口」という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、動脈内への注射、または注入の技法を含む。好ましい実施形態では、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを、未熟児に静脈内投与する。
【0042】
臍帯血または胎盤幹細胞は、任意の薬学的に許容できる担体中に含有することができる。臍帯血または胎盤幹細胞は、任意の薬学的または医学的に許容できる容器、例えば、血液バッグ、移動バッグ、プラスチック製チューブ、シリンジ、バイアル等中で輸送、保管または運搬することができる。
【0043】
臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを未熟児に投与するステップは、任意の医学的に許容できる様式で行うことができる。投与は、未熟児の出生後、種々の時期において行うことができる。種々の実施形態では、例えば、投与を、出生後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21もしくは24時間以内、または出生後2、3、4、5もしくは6日以内、または出生後1もしくは2週間以内に行う。
【0044】
臍帯血と場合により胎盤幹細胞との投与は、未熟児の出生後1または複数回行うことができる。特定の実施形態では、投与を、未熟児の出生後1回行う。特定の実施形態では、投与を、未熟児の出生後複数回行う。
【0045】
未熟児に投与する臍帯血および胎盤幹細胞の量または数は、使用する臍帯血および胎盤幹細胞の供給源、治療すべき障害または状態の重症度または性質、ならびに未熟児の年齢、体重および身体の状態等によって異なる。特定の実施形態では、未熟児の体重1キログラム当たり約0.01〜約0.1、約0.1〜約1、約1〜約10、約10〜約10、約10〜約10、約10〜約10、約10〜約10、約10〜約10、約10〜約10、約10〜約10または約10〜約10個の臍帯血細胞、胎盤幹細胞、または臍帯血細胞および胎盤幹細胞を投与する。特定の実施形態では、前記臍帯血細胞は、CD34細胞である。別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD34細胞である。好ましくは、体重1キログラム当たり少なくとも約10〜約10個のCD34細胞を投与する。そのようなCD34細胞は、臍帯血単独に由来してもよく、または臍帯血および胎盤に由来してもよい。種々の実施形態では、未熟児の体重1キログラム当たり少なくとも約0.1、1、10、10、10、10、10、10、10、10または10個の臍帯血細胞、胎盤幹細胞、または臍帯血細胞および胎盤幹細胞を投与する。種々の実施形態では、未熟児の体重1キログラム当たり最大約10、10、10、10、10または10個の臍帯血細胞、胎盤幹細胞、または臍帯血細胞および胎盤幹細胞を投与する。上記の実施形態の特定の実施形態では、臍帯血および/または胎盤幹細胞は、CD34細胞である。
【0046】
臍帯血と場合により胎盤幹細胞とは、好ましくは、未熟児のサイズに適した体積で送達する。未熟児の典型的な血液量は、約85〜100mL/kg体重である。したがって、未熟児の血液量は、およそ40mL〜およそ300mLの範囲である。種々の実施形態では、したがって、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを、約0.5mL、1.0mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mLまたは約20mL以上の総体積で投与する。そのような体積の投与は、単回の投与であっても、または複数回の投与であってもよい。乳児の出生体重が特に低い場合(例えば、1kg未満)、所望の体積の臍帯血または所望の数の臍帯血細胞と、場合により胎盤幹細胞とを、複数回に分けて投与して乳児に提供することができる。そのような体積の臍帯血または臍帯血と胎盤幹細胞との組合せの投与にかけることができる時間は、例えば、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間または4時間以上にわたって変化させてよい。
【0047】
一般に、20mLを下回る少量の輸血は、ポンプを必要とせず、乳児の体積許容度を考慮しながら、シリンジを介して、例えば、間欠的な少量ボーラスによって押し入れることができる。より大きな体積の輸血は、好ましくは、注入装置によって、2〜4時間の期間以内に投与する。輸血の間隔が4時間を超える場合には、血液の構成成分を再分割し、その第2の部分を、必要になるまで、例えば、血液銀行に保管すべきである。
【0048】
1.3 血液添加剤
特定の実施形態では、臍帯血の未熟児への投与は、1つまたは複数の添加剤を含む。例えば、そのような添加剤として、例えば、エリスロポエチン、鉄補充物質、ビタミンまたは同種異系の赤血球が挙げられる。
【0049】
特定の実施形態では、血液添加剤は、エリスロポエチンである。エリスロポエチンは、任意の医学的に許容できる形態で投与することができる。エリスロポエチンは、生物学的な供給源から精製した天然のエリスロポエチンであっても、またはEPOGEN(登録商標)、ARANESP(登録商標)もしくはPROCRIT(登録商標)等の操作されたエリスロポエチンであってもよい。エリスロポエチンは、天然のヒトエリスロポエチンの配列を有しても、または血清半減期を延長させるために操作されたエリスロポエチンであってもよい。エリスロポエチンの典型的な投与量は、500〜1500単位/kg/週の範囲である。
【0050】
別の特定の実施形態では、血液添加剤は、鉄または鉄補充物質である。鉄または鉄補充物質は、任意の、代謝されて利用可能となる、医学的に許容できる形態であってよいが、好ましくは、元素鉄(elemental iron)である。早産児のための典型的な投与量は、早産児の体重が約1500グラム以下である場合には約4.0mg/kg/日〜約4.5mg/kg/日であり、早産児の体重が約1500グラム〜約2500グラムである場合には約2mg/kg/日である。
【0051】
別の特定の実施形態では、血液添加剤は、1つまたは複数のビタミンであるか、または1つまたは複数のビタミンを含む。好ましい実施形態では、1つまたは複数のビタミンは、これらに限定されないが、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、葉酸、ビタミンB12および/またはビタミンEを含めた、血液の発生に必要なビタミンである。1つの実施形態では、約25IUのビタミンEを未熟児に投与する。そのようなビタミンは、成人について確立されているものとおよそ同じ1キログラム当たりの投与量で未熟児に投与することができる。種々の実施形態では、臍帯血と場合により胎盤幹細胞との単回投与は、約150μgのリボフラビン;約100μgのピリドキシン;約25μgの葉酸;約0.4μgのビタミンB12;および/または約3.6IUのビタミンEを含む。また、血液添加剤は、1つまたは複数のその他のビタミン、例えば、ビタミンA(例えば、投与1回当たり約460IU);ビタミンD(例えば、投与1回当たり約70IU);ビタミンK(例えば、投与1回当たり約11μg);チアミン(ビタミンB1、例えば、投与1回当たり約220μg);ナイアシン(例えば、投与1回当たり約1950μg);パントテン酸(例えば、投与1回当たり約800μg);ビオチン(例えば、投与1回当たり約9μg);ビタミンC(アスコルビン酸、例えば、投与1回当たり約15mg);イノシトール(例えば、投与1回当たり約6mg);および/またはリノール酸(例えば、投与1回当たり約750mg)であってもよい。血液添加剤は、前述のビタミンの任意の組合せであってもよく、または前述のビタミンの任意の組合せを含んでもよい。
【0052】
別の特定の実施形態では、血液添加剤は、臍帯血以外の供給源、例えば、抹消血に由来する赤血球からの同種異系の赤血球である。好ましい実施形態では、ドナーが、第一度近親または第二度近親であり、赤血球は、移植片対宿主病を低減または防止するのに十分な程度まで放射線照射されている。例えば、1つの実施形態では、赤血球は、投与前に、少なくとも2,500cGyで放射線照射される。そのような放射線照射されている赤血球を、好ましくは、照射後24時間以内に投与する。その他の実施形態では、臍帯血と共に未熟児に投与する赤血球は、血縁関係のないドナーに由来する。好ましくは、そのような赤血球は、単一の血縁関係のないドナーに由来する。好ましい実施形態では、赤血球を、血縁関係のないドナーから、マルチパック採血システムを使用して収集する。マルチパック採血システムによって、同じドナーからの未熟児への複数回の投与が可能となり、免疫学的合併症が低下する。別のより特定の実施形態では、前記添加剤は、同種異系の赤血球であり、前記細胞は、例えば、白血球除去フィルターを使用して白血球が除去されている。例えば、米国特許第5,728,306号を参照されたい。赤血球を血液添加剤として使用する全ての実施形態では、赤血球は投与までに5日以上保管されていないことが好ましい。好ましい実施形態では、赤血球は、アデニン−食塩水(AS−3)抗凝固薬を含む。
【0053】
別の好ましい実施形態では、赤血球は、少なくとも以下の病原体:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)−I、HIV−II、C型肝炎ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)−IおよびHTLV−II、B型肝炎ウイルス(HBV、例えば、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)が存在しないことによって証明される)、サイトメガロウイルス、ならびに梅毒が存在しないこと、または以下の病原体に対する抗体が存在しないことが試験されている献血された血液の単位に由来する。
【0054】
1.4 併用療法
本明細書に提供する方法の特定の実施形態では、未熟児の障害または状態の治療において、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを、第1の療法として、1つまたは複数の第2の療法と組み合わせて使用する。そのような第2の療法として、これらに限定されないが、手術、ホルモン療法、免疫療法、光線療法、または特定の薬物を用いる治療が挙げられる。
【0055】
「併用療法」という用語の使用は、提供する方法における、治療を未熟児に投与する順番を制限しない。例えば、併用療法の薬剤を、同時に、任意の順番で順次に、または周期的に未熟児に投与することができる。一部の実施形態では、併用療法の2つの構成成分を、同時に未熟児に投与する。
【0056】
併用療法の構成成分を、同じ医薬組成物として未熟児に投与することができる。あるいは、併用療法の構成成分を、別個の医薬組成物として未熟児に投与することもでき、これらの別個の組成物は、例えば、経口、非経口(例えば、眼から、鼻から、皮膚から、筋肉から、または腹腔からの(1つもしくは複数の)経路等)、あるいは外用等を含めた、同じまたは異なる投与経路によって投与することができる。
【0057】
特定の第2の療法を、療法それぞれの標準、または当技術分野で認識されている用量および投与スケジュールに従って行う。
【0058】
特定の実施形態では、第2の治療剤、および/または任意選択の第3の治療剤を、未熟児の障害または状態の治療における臍帯血および胎盤幹細胞との、その相加効果について選択する。
【0059】
特定の実施形態では、第2の治療剤、および/または任意選択の第3の治療剤を、未熟児の障害または状態の治療における臍帯血および胎盤幹細胞との、その相乗効果について選択する。
【0060】
臍帯血と場合により胎盤幹細胞との投与と組み合わせて使用することができる例示的な療法として、環境温度の制御;酸素を用いる補助;人工呼吸器または換気装置;末梢血の輸血;鉄の補充;経静脈栄養;光線療法;手術;無呼吸を治療するための薬剤(例えば、アミノフィリン、カフェインもしくはドキサプラム等);ARDSまたはRDSを治療するために薬剤(例えば、界面活性を示す薬物、例えば、CUROSURF(登録商標)(Poractant Alfa;Douglas Pharmaceuticals)等);抗生物質または抗ウイルス薬、抗炎症剤(例えば、ステロイド系抗炎症性化合物、非ステロイド系抗炎症性(NSAID)化合物)、一酸化窒素;抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、免疫調節化合物(例えば、TNF−α阻害剤);(例えば、未熟児網膜症を治療するための)レーザー治療等が挙げられる。未熟児の治療は、当技術分野では周知であり、当業者であれば、臍帯血の投与と組み合わせて使用するために適切な特定の療法を臨機応変に選択することができる。
【0061】
2 臍帯血
臍帯血は、任意の医学的または薬学的に許容できる様式で収集することができる。臍帯血を収集するための種々の方法が記載されている。例えば、米国特許第6,102,871号;米国特許第6,179,819Bl号;および米国特許第7,147,626号を参照されたい。これらの各全内容は、参照により組み込まれている。臍帯血を収集するための従来の技法は、針またはカニューレの使用に基づいており、これは、胎盤から臍帯血を流し出すために、重力の助けを借りて使用される。例えば、米国特許第5,192,553号;第5,004,681号;第5,372,581号および第5,415,665号を参照されたい。通常、針またはカニューレを、臍帯静脈中に配置し、胎盤を穏やかにマッサージして、胎盤から臍帯血を流し出すのを助ける。臍帯血を、例えば、血液バッグ、移動バッグまたは無菌のプラスチック製チューブの中に収集することができる。
【0062】
一部の実施形態では、臍帯血は、商業的な臍帯血バンク(例えば、LifeBankUSA等)から得られる。別の実施形態では、臍帯血を、分娩後の哺乳動物の胎盤から収集し、直ちに(例えば、収集後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12時間以内に)使用する。その他の実施形態では、未熟児を治療するために使用する臍帯血は、凍結保存されていた臍帯血である。臍帯血は、単一の胎盤または複数の胎盤から収集することができる。
【0063】
未熟児に投与する臍帯血は、自己由来または異種であってよい。特定の実施形態では、臍帯血を、治療すべき未熟児の胎盤から得る。特定の実施形態では、臍帯血を、正期産の分娩後の哺乳動物の胎盤から得る。その他の実施形態では、臍帯血を、早産の分娩後の哺乳動物の胎盤、例えば、未熟児の胎盤から得る。一部の実施形態では、胎盤は、妊娠約23〜約25週で出生した乳児の胎盤である。一部の実施形態では、実施形態、胎盤は、妊娠約26〜約29週で出生した乳児の胎盤である。一部の実施形態では、実施形態、胎盤は、妊娠約30〜約33週で出生した乳児の胎盤である。一部の実施形態では、実施形態、胎盤は、妊娠約34〜約37週で出生した乳児の胎盤である。
【0064】
臍帯血またはそれに由来する幹細胞は、投与のために、単一の個人から(すなわち、単一の単位として)収集して、保管してもよく、またはその他の単位と共にプールしてもよい。臍帯血を複数の胎盤からプールする場合、プールした臍帯血は、正期産のみに由来する臍帯血、正期産の組合せに由来する臍帯血、または早産のみに由来する臍帯血を含むことができる。例えば、未熟児の胎盤に由来する臍帯血は、例えば、その他の未熟児に由来する臍帯血、正期産のみに由来する臍帯血、または早産の胎盤および正期産の胎盤の両方に由来する臍帯血の組合せと組み合わせることができる。また、自己由来の臍帯血または同種異系の臍帯血を含めて、臍帯血は、末梢血と組み合わせることもできる。早産に由来する臍帯血が好ましく、したがって、臍帯血は、正期産の臍帯血と比較して、単位体積当たり、比較的多数のCD34幹細胞を含む。
【0065】
一部の実施形態では、臍帯血中に存在する総有核細胞は、少なくとも5%、10%、15%または20%以上のCD38CD45細胞を含む。追加の実施形態では、臍帯血中に存在する総有核細胞は、少なくとも25%、30%、40%または50%以上のCD38CD45細胞を含む。一部の実施形態では、臍帯血を、早産の胎盤から調製する。その他の実施形態では、臍帯血を、正期産の胎盤から調製する。
【0066】
3 胎盤幹細胞
本明細書で使用する場合、「胎盤幹細胞」という用語は、形態、細胞表面マーカー等にかかわらず、哺乳動物の胎盤またはその一部(例えば、羊膜、絨毛膜等)から得られるまたはそれらに由来する、組織培養用プラスチック接着性幹細胞(例えば、多分化能細胞(multipotent cell))を指す。この句は、例えば、胎盤灌流液中もしくは消化された胎盤組織(消化産物)中の胎盤細胞集団の一部として胎盤から直接得られた幹細胞、または1もしくは複数回拡大および/もしくは継代されている胎盤細胞集団の一部である幹細胞を包含する。しかし、この用語は、別の組織、例えば、胎盤の血液または臍帯血のみに由来する幹細胞を包含しない。胎盤は、例えば、明確に異なる一連のマーカーを有し、それらによって相互に識別可能な幹細胞集団を含む。胎盤幹細胞、およびそれを得る方法が、米国特許第7,045,148号;第7,255,879号;および2006年12月26出願の米国特許出願公開第2007/0275362号に詳細に記載されている。これらの開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0067】
胎盤幹細胞は、出産および胎盤の娩出の成功に続いて、回収して、1×10個もの数の有核細胞を得ることができ、これらから、50〜100×10個の多分化能幹細胞および多能性幹細胞(pluripotent stem cell)が得られる。
【0068】
本発明の方法および組成物において有用な胎盤幹細胞として、例えば、胎盤由来の多能性細胞、多分化能細胞、方向付けされた前駆細胞、造血前駆細胞および間葉系様幹細胞(mesenchymal-like stem cell)が挙げられる。1つの実施形態では、胎盤幹細胞は、胎盤灌流液内に含有されるか、またはそれに由来する。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、1つまたは複数の組織消化性酵素(例えば、コラーゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ等)を用いて消化されている胎盤組織内部に含有されるか、またはそれに由来する。
【0069】
本発明の方法において使用する胎盤由来幹細胞は、単一の胎盤または複数の胎盤に由来することができる。
【0070】
特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、正期産の胎盤から得る。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、早産の胎盤から得る。一部の実施形態では、胎盤は、妊娠約23〜約25週で出生した乳児の胎盤である。一部の実施形態では、胎盤は、妊娠約26〜約29週で出生した乳児の胎盤である。一部の実施形態では、胎盤は、妊娠約30〜約33週で出生した乳児の胎盤である。一部の実施形態では、胎盤は、妊娠約34〜約37週で出生した乳児の胎盤である。
【0071】
胎盤幹細胞は、治療すべき特定の未熟児にとって、自己由来または同種異系であってよい。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、治療すべき未熟児から得る。
【0072】
本発明の方法において使用する胎盤幹細胞は、任意の方法によって得ることができる。胎盤幹細胞は、例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,045,148号に開示されているように、灌流によって得ることができる。そのような灌流は、皿法(pan method)による灌流であってよく、灌流液を、力を加えて胎盤の血管構造に通し、胎盤、典型的には母体側から浸出する灌流液を、胎盤を含有する皿中に収集する。また、灌流は、閉回路型の灌流であってもよく、灌流液を、胎盤の胎児の血管構造のみを通して通過させ、そこから収集する。特定の実施形態では、そのような灌流は、連続的であってよく、すなわち、胎盤を通過させた、複数の胎盤細胞を含む灌流液を、1または複数回さらに通過させてから、胎盤細胞を単離する。
【0073】
また、胎盤由来幹細胞は、胎盤を、物理的にか、または例えば、プロテアーゼおよび/もしくはその他の組織破壊性の酵素を使用して酵素的に破壊して、胎盤の多細胞構造を破壊することによって得ることもできる。そのようなプロテアーゼは、中性プロテアーゼまたは金属プロテアーゼ、例えば、コラーゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、エラスターゼ等を含むことができる。また、胎盤幹細胞は、例えば、粘膜溶解性酵素、例として、ヒアルロニダーゼを使用する、胎盤の物理的な破壊によって得ることもできる。
【0074】
本発明の灌流し、単離した胎盤は、CD34幹細胞、例えば、CD34CD38幹細胞、およびCD34幹細胞、例えば、CD34CD38幹細胞が豊富な、大量の幹細胞の供給源となる。胎盤から最初に収集した血液は、臍帯血と呼ばれ、これは、CD34CD38造血前駆細胞を圧倒的に含有する。分娩後の灌流の最初の24時間以内に、胎盤から、CD34CD38造血前駆細胞を、CD34CD38細胞と共に単離することができる。約24時間灌流すると、胎盤から、CD34CD38細胞を、前述の細胞と共に単離することができる。24時間以上灌流してから単離した胎盤は、CD34CD38幹細胞が豊富な、大量の幹細胞の供給源となる。
【0075】
少なくとも1つのクラスのヒト胎盤幹細胞が、胚性幹細胞または胚性生殖細胞の特徴を示す。例えば、このクラスの幹細胞は、SSEA3(段階特異的胚性抗原3)、SSEA4、OCT−4(幹細胞転写因子)、および/またはABC−p(ATP−結合カセット(ABC)トランスポータータンパク質)であり、これは、まだ分化を経ていない多能性幹細胞が示すマーカープロファイルである。したがって、1つの実施形態では、本発明の方法において有用な胎盤幹細胞は、SSEA3、SSEA4、OCT−4、および/またはABC−pである。別の実施形態では、本発明の胚性様幹細胞(embryonic-like stem cell)は、OCT−4およびABC−pである。別の実施形態では、ヒト胎盤幹細胞は、MHCクラス2抗原を発現しない。
【0076】
本発明の方法において使用可能な好ましい胎盤幹細胞は、CD10、CD38、CD29、CD34、CD44、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、OCT−4および/またはABC−pである。
【0077】
本発明に従って使用すべき好ましい幹細胞は、CD34、OCT−4、CD73、CD105、CD200およびHLA−Gである。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD34細胞を含む。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、OCT−4細胞を含む。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD73、CD105およびCD200である細胞を含む。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD200またはHLA−Gである細胞を含む。その他の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD200およびOCT−4である細胞を含む。その他の実施形態では、胎盤幹細胞には、CD73およびCD105である細胞であって、前記細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD73、CD105およびHLA−Gである細胞を含む。その他の実施形態では、胎盤幹細胞には、OCT−4である細胞であって、前記細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる。
【0078】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、未熟児を治療する方法を提供し、この方法は、未熟児臍帯血および胎盤幹細胞を投与するステップを含む。特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD200またはHLA−Gである。特定の実施形態ではまた、幹細胞は、CD200およびHLA−Gでもある。いくつかの特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD73およびCD105でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34、CD38またはCD45でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34、CD38およびCD45でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34、CD38、CD45、CD73およびCD105でもある。別の特定の実施形態では、前記CD200またはHLA−Gである幹細胞は、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で、当該幹細胞を含む胎盤由来細胞集団中における胚様体様の物体の形成を促進する。
【0079】
別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD73、CD105およびCD200である。より特定の実施形態では、前記幹細胞はまたHLA−Gでもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34、CD38またはCD45でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34、CD38およびCD45でもある。より特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34、CD38、CD45およびHLA−Gでもある。別のより特定の実施形態は、CD73、CD105およびCD200である幹細胞は、当該幹細胞を含む胎盤由来細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、当該細胞集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する。
【0080】
別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD200およびOCT−4である。より特定の実施形態では、幹細胞はまた、CD73およびCD105でもある。別のより特定の実施形態では、前記細胞はまた、HLA−Gでもある。別の特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34、CD38またはCD45である。別の特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34、CD38およびCD45である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34、CD38、CD45、CD73、CD105およびHLA−Gである。別の特定の実施形態では、こうした胎盤幹細胞は、当該幹細胞を含む胎盤由来細胞集団を胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、当該集団による1つまたは複数の胚様体様の物体の産生を促進する。
【0081】
別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD73、CD105およびHLA−Gである。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34、CD38またはCD45である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34、CD38およびCD45である。別のより特定の実施形態では、前記CD73、CD105およびHLA−Gである幹細胞は、OCT−4である。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD200である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34、CD38、CD45、OCT−4およびCD200である。別のより特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、前記幹細胞を含む胎盤細胞集団を胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、当該集団中における胚様体様の物体の形成を促進する。
【0082】
別の特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、SSEA3、SSEA4、OCT−4およびABC−pのうちの1つまたは複数であってよい。別の実施形態では、胎盤幹細胞は、OCT−4およびABC−pである。1つの実施形態では、ヒト胎盤幹細胞は、MHCクラスII抗原を発現しない。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD10、CD38、CD29、CD34、CD44、CD45、CD54、CD90、SH2、SH3、SH4、SSEA3、SSEA4、OCT−4および/またはABC−pのうちの1つまたは複数である。
【0083】
別の実施形態では、胎盤幹細胞は、均一かつ無菌である。別の特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、ヒトへの投与に適した医薬品等級の溶液中に存在する。
【0084】
細胞表面マーカー等のマーカーを、当技術分野でよく知られている方法にしたがって、例えば、フローサイトメトリーまたは蛍光標示式細胞分取(FACS)解析により、洗浄し、適切なフルオロフォアで標識された抗細胞表面マーカー抗体を用いて染色することによってルーチンに決定することができる。例えば、CD34またはCD38の存在を決定するために、細胞をPBS中で洗浄し、次いで、抗CD34フィコエリトリンおよび抗CD38フルオレセインイソチオシアネート(Becton Dickinson、Mountain View、CA)を用いて二重染色することができる。次いで、細胞を、標準的なフローサイトメーターを使用して解析する。あるいはまた、細胞内マーカーを、標準的な方法によって試験することもできる。
【0085】
4.胎盤幹細胞の収集および特徴付け
胎盤幹細胞を、当業者に知られている任意の技法によって収集し、単離することができる。好ましい実施形態では、胎盤幹細胞を、米国特許第7,045,148号、または2006年12月26日出願の米国特許出願第2007/0275362号の記載に従って単離し、収集する。これらの各全内容は、参照により組み込まれている。胎盤幹細胞を収集する方法を、以下に記載する。
【0086】
4.1 胎盤幹細胞の灌流による単離
4.1.1 胎盤の前処理
胎盤幹細胞の収集は、胎盤、例えば、ヒトの胎盤を収集することから始まる。特定の実施形態では、ヒトの胎盤を、その娩出後間もなく回収し、特定の実施形態では、胎盤中の臍帯血を回収する。特定の実施形態では、未熟児の治療の補助として、従来の臍帯血回収プロセス、例えば、特定の未熟児の必要性に応答しての臍帯血の回収を、胎盤に対して行う。また、臍帯血は、臍帯血銀行、例えば、LifeBankUSA、Cedar Knolls、NJの商業的なサービスから得ることもできる。
【0087】
典型的には、臍帯血の収集は、以下のように進行する。分娩後(帝王切開または自然分娩のいずれかの後)、胎盤を、例えば、臍帯血を流し出して、放血させる。臍帯血の収集まで、胎盤を、無菌条件下で、例えば、約5℃〜約25℃、または室温付近の温度で保管することができる。特定の実施形態では、近位の臍帯を、臍帯血の回収前に、好ましくは、胎盤(placental disc)中への挿入部の4〜5cm(センチメートル)以内においてクランプする。その他の実施形態では、近位の臍帯を、臍帯血の回収後ではあるが、胎盤をさらに処理する前にクランプする。臍帯血を収集するための従来の技法を使用することができる。典型的には、針またはカニューレを使用して、重力の助けを借りて胎盤から臍帯血を流し出す(すなわち、放血させる)(例えば、Boyseら、米国特許第5,192,553号;Boyseら、米国特許第5,004,681号;Anderson、米国特許第5,372,581号;Hesselら、米国特許第5,415,665号を参照されたい)。針またはカニューレを通常、臍帯静脈中に配置し、胎盤を穏やかにマッサージして、胎盤から臍帯血を流し出すのを助ける。
【0088】
次いで、胎盤は、約1時間〜約72時間、好ましくは、約4〜約24時間の期間にわたり保管し、それから、胎盤を灌流していずれの残余の臍帯血も除去することができる。
【0089】
臍帯血を収集した後、胎盤を、好ましくは、抗凝固薬溶液中で、約5℃〜約25℃、例えば、室温付近の温度で保管する。適切な抗凝固薬溶液は、当技術分野ではよく知られている。例えば、ヘパリンまたはワルファリンナトリウムの溶液を使用することができる。好ましい実施形態では、抗凝固薬溶液は、ヘパリン溶液(1:1000溶液中、1%w/w)を含む。流し出した胎盤は、好ましくは、以下の記載に従って胎盤幹細胞を収集するまで、36時間以上は保管しない。
【0090】
典型的には、胎盤を、分娩室または産室から、別の場所、例えば、実験室へ運搬して、臍帯血を回収しかつ/または流し出し、例えば、胎盤組織を灌流するまたは酵素によって消化することによって、幹細胞を収集する。胎盤を、好ましくは、無菌の熱的に絶縁された運搬装置中で(胎盤の温度を、例えば、約20℃と約28℃との間に維持して)運搬する。例えば、図2a〜eに示すように、胎盤を、近位の臍帯をクランプした状態で無菌のジップロック(zip-lock)プラスチック製袋中に配置し、次いで、これを、断熱容器中に配置することによって運搬する。
【0091】
好ましい実施形態では、胎盤を、インフォームドコンセントを得た患者から回収し、また、患者の妊娠の前、間および後の完全な病歴も得、これを当該胎盤に付随させる。これらの診療記録を使用して、胎盤またはそこから収穫した幹細胞のそれに続く使用を調整することができる。例えば、次いで、そのようなヒト胎盤幹細胞を、治療すべき未熟児のための個別化医療のために容易に使用することができる。
【0092】
4.1.2 胎盤の放血および残余細胞の除去
臍帯血の回収後、胎盤幹細胞を、胎盤から、例えば、灌流によって回収する。1つの態様では、放血させた胎盤を、適切な灌流水溶液を用いて灌流して、残余の臍帯血を除去する。灌流溶液は、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ワルファリンナトリウム)が好ましくは溶解している任意の等張水溶液であってよい。そのような灌流のための等張水溶液は、当技術分野ではよく知られており、それらとして、例えば、栄養培地、食塩水、例えば、リン酸緩衝食塩水または好ましくは0.9N塩化ナトリウム溶液が挙げられる。灌流液は、好ましくは、抗凝固薬を、いずれの残余の臍帯血の血餅形成も防止するのに十分である濃度で含む。特定の実施形態では、1〜100単位の濃度のヘパリンを利用し、好ましくは、1ml当たり1〜10単位の濃度のヘパリンを利用する。1つの実施形態では、アポトーシス阻害剤、例として、フリーラジカル消去剤、詳細には、酸素フリーラジカル消去剤を、放血の間および直後に使用することができ、次いで、これらの薬剤は、胎盤から洗浄することができる。本発明のこの実施形態によれば、単離した胎盤は、アポトーシスを防止または阻害するために、体温を下回る条件下で保管することができる。
【0093】
好ましくは、胎盤幹細胞を収集する前に、胎盤を、例えば、10〜100mLの灌流液を用いて洗い流して、実質的に全ての残留する臍帯血を除去する。典型的には、灌流液を、胎盤中への重力による流れを使用して、臍帯動脈および臍帯静脈のいずれかまたは両方を通して通過させることによって、そのような洗い流しを行う。好ましくは、臍帯動脈および臍帯静脈が胎盤の最も高い点に位置するように、胎盤の位置を定める(例えば、胎盤をぶら下げる)。好ましい実施形態では、図1に示すように、臍帯動脈および臍帯静脈を、柔軟なコネクタを介して灌流液のリザーバに接続しているピペットに、同時に接続させる。灌流液を、臍帯静脈および臍帯動脈の内部を通過させ、妊娠中には母体の子宮につながっていた胎盤の表面から、適切な開放槽中に収集する。また、灌流液を、臍帯の開口部を通して導入し、母体の子宮壁と界面を形成していた胎盤壁中の開口部から流すまたは染み出させることもできる。
【0094】
好ましい実施形態では、近位の臍帯を、灌流の間クランプし、より好ましくは、臍帯の、胎盤中への挿入部の4〜5cm(センチメートル)以内においてクランプする。
【0095】
1つの実施形態では、全ての残余の臍帯血を除去し、それに続いて、これらに限定されないが、臍帯血の除去後に胎盤中に残留する、胚性様幹細胞および前駆細胞を含めた、胎盤細胞を収集または回収するのに十分な量の灌流液を使用する。
【0096】
洗い流しの間に胎盤から灌流液を最初に収集すると、この灌流液は、臍帯血の残余の赤血球で着色していることが観察されている。灌流が進行し、残余の臍帯血細胞が胎盤から洗い出されるにつれて、灌流液は、より清澄になる傾向がある。一般に、30〜100ml(ミリリットル)の灌流液が、胎盤を放血させ、胎盤から胚性様細胞の最初の集団を回収するために適しているが、それより多いまたは少ない灌流液を、観察される結果に依存して使用することができる。
【0097】
4.1.3 胎盤の培養
好ましい実施形態では、胎盤を、容器またはその他の適切な槽の中で、無菌的条件下で培養(culture)するかまたは育て(cultivate)、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ワルファリンナトリウム、クマリン、ビスヒドロキシクマリン)を有するもしくは有しない、かつ/または抗菌剤(例えば、β−メルカプトエタノール(0.1mM);抗生物質、例として、ストレプトマイシン(例えば、40〜100μg/ml)、ペニシリン(例えば、40単位/ml)、アンホテリシンB(例えば、0.5μg/ml)等を有するもしくは有しない、灌流溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水(「PBS」)または好ましくは、0.9N食塩水等の生理食塩水)を用いて灌流する。ウシ胎仔血清(FBS)、全ヒト血清(WHS)、または胎盤の分娩時に収集したヒト臍帯血清を補った、DMEM、Ham’s F−12、M199、RPMI、Fisher’s、Iscove’s、McCoy’sおよびそれらの組合せ等の、種々の培地を、胎盤を培養するまたは育てるための灌流液として使用することができる。胎盤から残余の臍帯血を放血させるために使用した同じ灌流液を使用して、抗凝固薬を添加せずに、胎盤を培養するまたは育てることができる。
【0098】
溶出灌流液は、胎盤循環を通って流れた循環灌流液、および血管壁から胎盤の周囲組織中に浸出する、または血管壁を通過して胎盤の周囲組織中に至る血管外遊走灌流液の両方を含む。溶出灌流液もしくは循環灌流液、または好ましくは循環灌流液および血管外遊走灌流液の両方を、好ましくは、無菌のレセプタクル中に収集する。胎盤を維持する条件および灌流液の性質を変更して、溶出灌流液の体積および組成を調節することができる。
【0099】
次いで、収集した灌流液から、当業者に知られている技法、例えば、これらに限定されないが、密度勾配遠心分離、磁気細胞分離、FACSよる細胞選別、親和性による細胞分離、または示差的な接着の技法を利用して、細胞型を単離する。
【0100】
1つの実施形態では、胎盤を、無菌の盆中に配置し、500mlのリン酸緩衝食塩水を用いて洗浄する。次いで、洗浄液を捨てる。次いで、臍帯静脈に、無菌のチューブ等の無菌の接続装置に接続している、カニューレ、例えば、TEFLON(登録商標)製またはプラスチック製のカニューレを用いてカニューレ挿入する。図3に示すように、無菌の接続装置を、灌流マニフォールドに接続する。次いで、胎盤を含有する容器に蓋をし、胎盤を、室温(20〜25℃)で、所望の期間、好ましくは2〜24時間、好ましくは48時間以下にわたり維持する。胎盤を、連続的に灌流し、等しい体積の灌流液を導入し、溶出灌流液を除去または収集することができる。あるいは、胎盤を、培養の間、定期的に、例えば、2時間毎、すなわち、第4、8、12および24時に;またはその他の間隔で、ある体積の灌流液、例えば、100mlの灌流液(1000単位/lのヘパリンおよび/またはEDTAおよび/またはCPDA(クレアチンリン酸デキストロース)を補ったまたは補わない無菌の食塩水)を用いて灌流することができる。定期的な灌流の場合、好ましくは、胎盤が安定した体積の灌流液に常時浸かるように、等しい体積の灌流液を導入し、胎盤の培養環境から除去する。
【0101】
胎盤、例えば、胎盤の反対側表面から漏れた溶出灌流液を収集し、処理して、胚性様幹細胞、前駆細胞またはその他の対象とする細胞を単離する。
増殖した細胞の数および型は、形態および細胞表面マーカーの変化を、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学(例えば、組織特異的抗体もしくは細胞マーカー特異的抗体を用いる染色)、蛍光標示式細胞分取(FACS)、磁気細胞分離(MACS)等の標準的な細胞検出の技法を使用して測定することによって、細胞の形態を、光学顕微鏡法もしくは共焦点顕微鏡法を使用して調べることによって、または遺伝子発現の変化を、PCRおよび遺伝子発現プロファイリング等の技術分野でよく知られている技法を使用して測定することによって容易にモニターすることができる。
【0102】
1つの実施形態では、胎盤幹細胞を、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して選別することができる。蛍光標示式細胞分取(FACS)は、細胞を含めて、粒子を、その蛍光特性に基づいて分離するための周知の方法である(Kamarch、1987、Methods Enzymol、151:150〜165)。個々の粒子中の蛍光分子をレーザーによって励起すると、小さな電荷が生じ、混合物からの正の粒子および負の粒子の電磁気的な分離が可能となる。1つの実施形態では、細胞表面マーカーに特定の抗体またはリガンドを、明確に異なる蛍光標識を用いて標識する。細胞を、細胞分取器を通して処理すると、使用した抗体に結合する細胞の能力に基づいた、細胞の分離が可能となる。FACSによって選別された粒子は、96ウエルプレートまたは384ウエルプレートの個々のウエル中に直接堆積させて、分離およびクローニングを促進することができる。
【0103】
別の実施形態では、電磁ビーズを使用して、細胞を分離することができる。電磁ビーズ(0.5〜100μmの直径)に結合する粒子の能力に基づいて、粒子を分離するための方法である磁気細胞分離(MACS)の技法を使用して、細胞を選別することができる。細胞−固相表面分子またはハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合による付加を含めた、多様な有用な改変を、電磁マイクロスフェア上で行うことができる。次いで、磁場をかけて、選択されたビーズを物理的に操作する。次いで、ビーズを細胞と混合して、結合させる。次いで、細胞を、磁場に通して、細胞表面マーカーを有する細胞を分取する。次いで、これらの細胞を単離し、追加の細胞表面マーカーに対する抗体にカップルしている電磁ビーズと再度混合する。細胞を磁場に再度通し、両方の抗体に結合している細胞を単離する。次いで、そのような細胞を、別個の皿、例として、クローン分離のためのマイクロタイター皿中に希釈することができる。
【0104】
本発明の特定の実施形態では、流し出し、放血させた胎盤を、バイオリアクター、すなわち、胎盤幹細胞を増殖させるためのex vivo系として培養する。胎盤バイオリアクター中に導入し、そこから増殖細胞を回収することができる培地または灌流液の一部を定期的または連続的に除去することによって、胎盤バイオリアクター中の増殖細胞の数を、増殖が釣り合った状態に連続的に維持することができる。新鮮な培地または灌流液を、同じ速度または同じ量で導入する。胎盤をバイオリアクターとして使用するために、胎盤を、無菌条件下で、本明細書に開示する灌流溶液を用いて、様々な期間にわたり灌流することによって培養することができる。特定の実施形態では、胎盤を、少なくとも約12、24、36もしくは48時間、または3〜5日、6〜10日の間、または1〜2週間培養する。好ましい実施形態では、胎盤を、約48時間培養する。培養する胎盤は、好ましくは、使用済み培地および培地中に懸濁する細胞を除去し、新鮮な培地を添加することによって定期的に「養われる」。培養する胎盤を、好ましくは、汚染の可能性を低下させるために無菌条件下で保管し、間欠的かつ定期的な加圧下に維持して、栄養素の胎盤細胞への適切な供給を維持する条件を生み出す。胎盤の灌流および培養は、効率化および生産量の増加のために、自動化しかつコンピュータで処理することができる。
【0105】
特定の実施形態では、栄養素、ホルモン、ビタミン、増殖因子またはそれらの任意の組合せを灌流溶液中に導入することによって、胎盤幹細胞を誘導して、胎盤バイオリアクター中で増殖させる。血清およびその他の増殖因子を、増殖の灌流溶液または培地に添加することができる。増殖因子は通常タンパク質であり、それらとして、これらに限定されないが、サイトカイン、リンホカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン、ケモカインおよびインターロイキンが挙げられる。使用することができるその他の増殖因子には、リガンドを含めた、組換えヒト造血増殖因子、幹細胞因子、トロンボポエチン(Tpo)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、白血病抑制因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、胎盤由来増殖因子、および上皮増殖因子がある。
【0106】
4.1.4 胎盤からの細胞の収集
上記で開示したように、胎盤の放血および灌流後、流し出し、空にした微小循環中に、胚性様幹細胞が遊走する。ここで、本発明の方法に従って、それらの細胞を、好ましくは、溶出灌流液を収集槽中に収集することによって収集する。
【0107】
好ましい実施形態では、胎盤中で培養した細胞を、溶出灌流液から、例えば、密度勾配遠心分離、磁気細胞分離、FACSによる選別等の当業者に知られている技法、または当技術分野でよく知られている、その他の細胞を分離もしくは選別する方法を使用して単離し、例えば、図4に示すスキームに従って選別する。
【0108】
特定の実施形態では,胎盤から収集した細胞を、溶出灌流液から、例えば、約5000×g、室温で約15分間遠心分離することによって回収することができる。これによって、細胞が、汚染デブリおよび血小板から分離される。細胞ペレットを、例えば、2単位/mlヘパリンおよび2mM EDTAを含有するIMDM無血清培地(GibcoBRL、NY)中に再懸濁させる。総単核細胞画分を、アフェレーシス、好ましくは、LYMPHOPREP(商標)(Nycomed Pharma、Oslo、ノルウェー)等の市販の収集キットを使用して単離することができる。次いで、細胞を、例えば、血球計数器を使用して数える。生存率を典型的には、トリパンブルー色素排除によって評価する。細胞の単離を、好ましくは、「示差的トリプシン処理」によって、例えば、0.2%EDTAを有する0.05%トリプシン溶液(Sigma、St.Louis Mo.)を使用して達成する。この様式でトリプシン処理された線維芽細胞様細胞(fibroblastoid cell)は、プラスチック製の細胞培養表面から約5分以内に脱離し、一方、その他の接着性の集団は、トリプシンを用いたインキュベーションを約20〜30分超必要とすることから、示差的トリプシン処理が可能となる。トリプシン処理、およびTrypsin Neutralizing Solution(TNS、BioWhittaker)を使用するトリプシンの中和に続いて、脱離した線維芽細胞様細胞を収穫する。次いで、細胞を、H.DMEM等の栄養培地中で洗浄し、例えば、MSCGM中に再懸濁させることができる。
【0109】
別の実施形態では、単離した胎盤を、灌流液を収集せずに、一定期間にわたり灌流する。したがって、胎盤を、灌流液を収集する前に、2、4、6、8、10、12、20もしくは24時間にわたり、または数日間にもわたり灌流することができる。そのような実施形態では、例えば、灌流液を、胎盤中に導入し、胎盤の血管構造をある期間にわたり占有させてから収集してもよく、または循環灌流液の場合には、灌流液を、そのような期間にわたり再度循環させてもよい。
【0110】
別の実施形態では、胎盤バイオリアクター中で培養した細胞を、胎盤から細胞を物理的に解体して離すことによって、胎盤から単離する。
【0111】
別の実施形態では、当技術分野で既知の細胞を分離または選別する方法、例として、密度勾配遠心分離、磁気細胞分離、FACSによる選別等により、胎盤バイオリアクター中で培養した細胞を回収することによって、培養細胞を胎盤から単離する。
【0112】
好ましい実施形態では、回収した有核細胞が100個の細胞/ml未満になるまで、胎盤の灌流および溶出灌流液の収集を、胎盤を培養する間に1または2回繰り返す。灌流液をプールし、軽く遠心分離して、血小板、デブリおよび脱核細胞膜を除去する。次いで、有核細胞を、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、洗浄後、HDMEM中に再懸濁させる。接着性細胞を単離するために、5〜10×10個の細胞の一定分量を、いくつかのT−75フラスコのそれぞれの中に入れ、BioWhittakerから入手した市販の間葉系幹細胞増殖倍地(MSCGM)を用いて培養し、組織培養インキュベーター(37℃、5%CO)中に置く。10〜15日後、非付着性細胞を、PBSを用いて洗浄することによって、フラスコから除去する。次いで、PBSを、MSCGMで置き換える。フラスコは、好ましくは、種々の付着性の細胞型の存在、特に、線維芽細胞様細胞のクラスターの同定および拡大について毎日調べる。
【0113】
その他の実施形態では、胎盤から収集した細胞を、その後のある時期に使用するために凍結保存する。幹細胞等の細胞を凍結保存する方法は、当技術分野ではよく知られており、例えば、Boyseら(1993年3月9日発行の米国特許第5,192,553号)またはHuら(2000年12月7日公開のWO00/73421)の方法を使用する凍結保存がある。
【0114】
4.2 胎盤幹細胞の物理的破壊による単離
胎盤幹細胞を、哺乳動物の胎盤から、臓器を物理的に破壊する、例えば、酵素により消化することによって収集することができる。例えば、胎盤またはその一部を、本発明の幹細胞収集組成物と接触させながら、それらに対して、例えば、砕く、せん断する、細かに切る、さいの目に切る、みじんに切る、浸して柔らかくすること等を行い、それに続いて、組織を、1つまたは複数の酵素を用いて消化することができる。また、胎盤またはその一部を、物理的に破壊し、1つまたは複数の酵素を用いて消化し、次いで、得られた材料を、本発明の幹細胞収集組成物中に浸漬する、またはその中に混合することもできる。物理的に破壊する任意の方法を使用することができ、ただし、破壊する方法は、例えば、トリパンブルー色素排除によって決定した場合、前記臓器中の細胞のうち、複数、好ましくは大多数、より好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%を生存した状態で残す。
【0115】
胎盤を構成成分に解体してから、物理的に破壊し、かつ/または酵素により消化し、幹細胞を回収することができる。例えば、胎盤由来幹細胞を、羊膜、絨毛膜、臍帯、胎盤葉、またはそれらの任意の組合せから得ることができる。好ましくは、胎盤由来幹細胞を、羊膜および絨毛膜を含む胎盤組織から得る。典型的には、胎盤由来幹細胞は、胎盤組織の小さなブロック、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900または約1000立方ミリメートルの体積である胎盤組織のブロックを破壊することによって得ることができる。
【0116】
好ましい幹細胞収集組成物は、1つまたは複数の組織破壊性酵素を含む。酵素による消化は、好ましくは、酵素の組合せ、例えば、マトリックス金属プロテアーゼと中性プロテアーゼとの組合せ、例えば、コラーゲナーゼとディスパーゼとの組合せを使用する。1つの実施形態では、胎盤組織の酵素による消化は、マトリックス金属プロテアーゼと中性プロテアーゼとヒアルロン酸を消化するための粘膜溶解性酵素との組合せ、例として、コラーゲナーゼとディスパーゼとヒアルロニダーゼとの組合せ、またはLIBERASE(登録商標)(Boehringer Mannheim Corp.、Indianapolis、Ind.)とヒアルロニダーゼとの組合せを使用する。胎盤組織を破壊するために使用することができるその他の酵素には、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、トリプシン、キモトリプシン等のセリンプロテアーゼ、またはエラスターゼがある。セリンプロテアーゼを、血清中のアルファ2ミクログロブリンが阻害する恐れがあり、したがって、消化のために使用する培地は通常、無血清である。一般に、EDTAおよびデオキシリボヌクレアーゼを、細胞の回収の効率を高めるために、酵素による消化手順において使用する。好ましくは、幹細胞が、粘稠な消化物内部に捕捉されるのを回避するように、消化産物を希釈する。
【0117】
組織消化性酵素の任意の組合せを使用することができる。組織消化性酵素の典型的な濃度として、例えば、コラーゲナーゼIおよびコラーゲナーゼIVについては50〜200単位/mL、ディスパーゼについては1〜10単位/mL、エラスターゼについては10〜100単位/mLが挙げられる。プロテアーゼを、組み合わせて、すなわち、2つ以上のプロテアーゼを同じ消化反応中で使用してもよく、または胎盤幹細胞を遊離させるために、順次に使用してもよい。例えば、1つの実施形態では、37℃で、胎盤またはその一部を最初に、2mg/mlの適切な量のコラーゲナーゼIを用いて30分間消化し、それに続いて、0.25%トリプシンを用いて、10分間消化する。セリンプロテアーゼは、好ましくは、その他の酵素に続いて継続的に使用する。
【0118】
別の実施形態では、幹細胞を、幹細胞収集組成物を用いて単離する前に、幹細胞を含む幹細胞収集組成物にか、または組織を破壊し、かつ/もしくは消化した溶液に、キレート剤、例えば、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’N’−四酢酸(EGTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加することによって、組織をさらに破壊することができる。
【0119】
胎盤の全体または一部が、胎児細胞および母体細胞の両方を含む場合(例えば、胎盤の一部が、絨毛膜または胎盤葉を含む場合)、収集した胎盤由来幹細胞は、胎児および母体の両方の供給源に由来する胎盤由来幹細胞の混合物を含むことを理解されたい。胎盤の一部が、母体細胞(例えば、羊膜)を、全く含まない場合またはごくわずかな数含む場合、収集する胎盤由来幹細胞は、胎児の胎盤由来幹細胞をほとんど独占的に含む。
【0120】
例えば、消化した胎盤組織中の胎盤幹細胞を、消化した組織中のその他の細胞と共に培養し、本明細書の他所で記載した示差的なトリプシン処理により単離することによって、そのような細胞を単離することができる。あるいは、胎盤幹細胞マーカーに対する1つまたは複数の抗体を使用し、それに続いて、例えば、電磁ビーズにより分離して、そのような細胞を精製することもできる。セクション4.1.4を参照されたい。
【0121】
5 臍帯血と胎盤幹細胞との組合せ
本発明は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う障害または状態を、臍帯血と胎盤幹細胞との組合せ使用することによって治療する方法を提供する。胎盤幹細胞は、胎盤灌流液内に含有される幹細胞;胎盤灌流液から最初に収集した胎盤幹細胞;胎盤組織の消化から収集した胎盤幹細胞;胎盤灌流液もしくは胎盤組織の消化に由来する胎盤幹細胞、または前述の任意の組合せであってよく、胎盤幹細胞は、細胞培養物中で、胎盤幹細胞が増殖するのに十分な、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40回の集団の倍加に要する期間にわたり培養されている。未熟児の治療において臍帯血と組み合わせるべき胎盤幹細胞は、単一の胎盤または複数の胎盤に由来することができる。
【0122】
臍帯血と胎盤幹細胞との比は、当業者の判断に従って決定することができる。特定の実施形態では、各集団中の有核細胞の総数を比較した場合、または各集団中の幹細胞の総数を比較した場合、臍帯血の胎盤幹細胞に対する比は、約100,000,000:1、50,000,000:1、20,000,000:1、10,000,000:1、5,000,000:1、2,000,000:1、1,000,000:1、500,000:1、200,000:1、100,000:1、50,000:1、20,000:1、10,000:1、5,000:1、2,000:1、1,000:1、500:1、200:1、100:1、50:1、20:1、10:1、5:1、2:1、1:1;1:2;1:5;1:10;1:100;1:200;1:500;1:1,000;1:2,000;1:5,000;1:10,000;1:20,000;1:50,000;1:100,000;1:500,000;1:1,000,000;1:2,000,000;1:5,000,000;1:10,000,000;1:20,000,000;1:50,000,000;または約1:100,000;000である。好ましい実施形態では、臍帯血の、胎盤幹細胞に対する比は、約20:1と約1:20との間、または約1:10、約1:5、約1:1、約5:1もしくは約10:1である。
【0123】
胎盤幹細胞と臍帯血とを、未熟児への投与の前に組み合わせてもよく、または別個に投与してもよい。
【0124】
5.1 医薬組成物
本発明はまた、臍帯血および胎盤幹細胞、ならびに薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物も包含する。
【0125】
この実施形態によれば、本発明の臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを、注射用組成物として製剤化することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO96/39101)。別の実施形態では、本発明の臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを、例えば、米国特許第5,709,854号;第5,516,532号;第5,654,381号に記載されているように、重合可能なまたは架橋結合性のヒドロゲルを使用して製剤化することができる。
【0126】
別の実施形態では、本発明は、組み合わせる臍帯血および胎盤幹細胞のうちのそれぞれの幹細胞集団を、順次にかまたは合わせて投与して、組み合わせた幹細胞の集団をin vivoにおいて生み出すための別個の医薬組成物として、個人に投与するまで維持することを提供する。それぞれの構成成分を、別個の容器、例えば、単一の袋(例えば、Baxter、Becton−Dickinson、Medcep、National Hospital Products、Terumo等製の血液保存袋)、または別個のシリンジの中に保管し、かつ/またはその中において使用することができ、こうした別個の容器は、単一の型の細胞または細胞集団を含有する。特定の実施形態では、臍帯血、または臍帯血由来の有核細胞もしくは幹細胞を、1つの袋中に含有させ、胎盤灌流液または胎盤灌流液由来の胎盤幹細胞を、第2の袋中に含有させる。
【0127】
胎盤幹細胞集団を濃縮することができる。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を含む細胞集団を、標準的な方法に従って、赤血球および/または顆粒球を除去することによって濃縮し、その結果、残留する有核細胞集団は、胎盤灌流液中のその他の細胞型と比べて、胎盤幹細胞について濃縮されている。そのような濃縮した胎盤幹細胞集団は、凍結せずに使用してもよく、またはその後の使用のために凍結してもよい。細胞集団を凍結しようとする場合、標準的な凍結保存剤(例えば、DMSO、グリセロール、Epilife(商標)Cell Freezing Medium(Cascade Biologics))を、濃縮した細胞集団に添加してから、細胞集団を凍結する。
【0128】
本発明の医薬組成物は、細胞分化を誘導する1つまたは複数の物質を含むことができる。特定の実施形態では、分化を誘導する薬剤として、これらに限定されないが、Ca2+、EGF、α−FGF、β−FGF、PDGF、角化細胞増殖因子(KGF)、TGF−β、サイトカイン(例えば、IL−1α、IL−1β、IFN−γ、TFN)、レチノイン酸、トランスフェリン、ホルモン(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、インスリン、プロラクチン、トリヨードチロニン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン)、酪酸ナトリウム、TPA、DMSO、NMF、DMF、マトリックス成分(例えば、コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸、Matrigel(商標))、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0129】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、細胞分化を抑制する1つまたは複数の薬剤を含むことができる。特定の実施形態では、分化を抑制する物質として、これらに限定されないが、ヒトDelta−1ポリペプチドおよびヒトSerrate−1ポリペプチド(Sakanoら、米国特許第6,337,387号を参照されたい)、白血病抑制因子(LIF)、幹細胞因子、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0130】
本発明の医薬組成物は、個人に投与する前に、TNF−αの活性を調節する化合物を用いて処置することができる。好ましいそのような化合物が、例えば、その開示の全体が本明細書に組み込まれている米国出願公開第2003/0235909号に詳細に開示されている。好ましい化合物は、IMiD(免疫調節化合物)およびSELCIDS(登録商標)(Selective Cytokine Inhibitory Drugs)と呼ばれており、特に好ましい化合物が、ACTIMID(商標)、REVIMID(商標)およびREVLIMID(商標)の商品名の下で入手可能である。
(実施例)
【実施例1】
【0131】
臍帯血および胎盤幹細胞の収集
この実施例は、臍帯血および胎盤幹細胞の収集を例示する。
【0132】
1 臍帯血の収集
臍帯血を、臍帯血収集キット、例として、全内容が参照により組み込まれている米国特許出願公開第2006/0060494号、標題「Cord Blood Collection Kit and Methods of Use Therefor」を使用して収集する。
【0133】
標準的なチャック、無菌のガーゼパッド、ポピドンヨードスワブ、無菌のアルコールパッド、プラスチック製臍帯血用クランプ、スライドクリップまたは止血用クランプ、および漏れ防止型ジッパー付き袋または小型の缶を含有する収集キットを使用する。
【0134】
胎盤の分娩前(子宮内での収集)、胎盤の分娩後(子宮外での収集)、または胎盤の分娩に先立つ帝王切開の間に収集を行うことができる。
【0135】
手短にいうと、臍帯上の遠位における静脈穿刺部位を滅菌する。大型の収集袋から伸びる収集チューブをクランプし、針からキャップを外し、針を先端面取り部を下に向けて、臍帯静脈に向かって用いて、臍帯静脈にカニューレ挿入する。クランプを外して、血液を流れさせ、収集袋をカニューレ挿入部位より下まで下げ、血液が収集袋を重力によって満たすのを可能にする。
【0136】
血液の流れが止まったら、静脈穿刺部位をクランプし、臍帯静脈から針を引き抜く。収集袋にラベルを付け、断熱された発送容器中に入れる。
【0137】
臍帯血がクランプされた状態の胎盤を、漏れ防止型ジッパー付き袋中に置き、次いで、袋を適切に閉じ、ラベルを付ける。
【0138】
収集後、臍帯血細胞の生存率を、トリパンブルー染色後に血球計数器によって決定する。
【0139】
2 胎盤幹細胞の単離
臍帯および胎盤の放血に続いて、胎盤を、室温の、無菌の断熱された容器中に入れ、実験室に出産後4時間以内に届けた。胎盤に、臓器の分裂または臍帯血管の裂離等の物理的な損傷の証拠が視診で認められる場合には、胎盤を廃棄した。胎盤を、無菌の容器中、2〜20時間、室温(23±2℃)で維持するかまたは冷蔵した(4℃)。定期的に、胎盤を25±3℃の無菌の食塩水中で浸漬および洗浄し、いずれの眼に見える表面の血液またはデブリも除去した。臍帯を、臍帯の胎盤内への挿入部からおよそ5cm横切し、胎盤の双方向性の灌流および溶出液の回収を可能にする無菌の流路に接続しているTEFLON(登録商標)ポリマー製またはポリプロピレン製のカテーテルを用いて、臍帯血管にカニューレ処理した。本発明において利用するシステムによって、制御された周囲大気条件下で実施すべき馴化、灌流および溶出収集の全ての態様、さらに血管内の圧力および流速、コアおよび灌流液の温度、ならびに回収した溶出体積のリアルタイムのモニタリングが可能であった。様々な馴化プロトコールを、分娩後の24時間の期間にわたり評価し、溶出液の細胞組成を、フローサイトメトリー、光学顕微鏡法およびコロニー形成単位アッセイによって解析した。
【0140】
胎盤の馴化:胎盤を、残余の細胞の増殖および動員のための生理学的に適合性の環境を模し、持続させようとして、様々な条件下で維持した。カニューレを、2単位/mlヘパリン(EJkins−Sinn、NJ)を含有するIMDM無血清培地(GibcoBRL、NY)を用いて洗い流した。胎盤の灌流を、およそ150mLの灌流液を収集するまで、1分当たり50mLの速度で続けた。この体積の灌流液には、「早期の画分」とラベルを付けた。胎盤の灌流を同じ速度で続けて、およそ150mLの第2の画分を収集し、これには「後期の画分」とラベルを付けた。手順を進める間、胎盤を穏やかにマッサージして、灌流プロセスを助け、細胞材料の回収を援助した。溶出液を、灌流回路から、重力による流し出しおよび動脈カニューレを通した吸引の両方によって収集した。
【0141】
書面による親の同意を得てから、胎盤を臍帯血と共に、分娩室から得、分娩後12〜24時間以内に室温で処理した。処理する前に、膜を除去し、母体側を洗浄し、残余の血液を除いた。血液試料を収集するために使用する20ゲージの翼状針で作製されたカテーテルを用いて、臍帯血管にカニューレ挿入した。次いで、胎盤を、ヘパリン処置(2単位/mL)ダルベッコ変法イーグル培地(H.DMEM)を用いて、15mL/分の速度で、10分間灌流し、灌流液を、母体側から1時間以内に収集し、有核細胞を数えた。灌流および収集の手順は、回収した有核細胞がl00個/mL未満になるまで、1または2回繰り返した。灌流液をプールし、軽く遠心分離して、血小板、デブリおよび脱核細胞膜を除去した。次いで、有核細胞を、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、洗浄後、H.DMEM中に再懸濁させた。接着性細胞を単離するために、5〜10×10個の細胞の一定分量を、いくつかのT−75フラスコのそれぞれの中に入れ、BioWhittakerから入手した市販の間葉系幹細胞増殖倍地(MSCGM)を用いて培養し、組織培養インキュベーター(37℃、5%CO)中に置いた。10〜15日後、非付着性細胞を、PBSを用いて洗浄することによって除去し、次いで、このPBSを、MSCGMで置き換えた。フラスコを、種々の付着性の細胞型の存在、特に、線維芽細胞様細胞のクラスターの同定および拡大について毎日調べた。
【0142】
細胞の回収および単離:細胞を、灌流液から、約100×g、室温で約15分間遠心分離することによって回収した。この手順によって、汚染デブリおよび血小板から細胞を分離した。細胞ペレットを、2単位/mlヘパリンおよび2mM EDTAを含有するIMDM無血清培地(GibcoBRL、NY)中に再懸濁させた。総単核細胞画分を、LYMPHOPREP(商標)(Nycomed Pharma、Oslo、ノルウェー)を使用して、製造元の推奨手順に従って単離し、この単核細胞画分を再懸濁させた。細胞を、血球計数器を使用して数えた。生存率を、トリパンブルー色素排除によって評価した。間葉系細胞の単離を、示差的トリプシン処理によって、0.2%EDTAを有する0.05%トリプシン溶液(Sigma)を使用して達成した。胎盤幹細胞を含めて、線維芽細胞様細胞は、プラスチック表面から約5分以内に脱離し、一方、その他の接着性の集団は、インキュベーションを20〜30分超必要とすることから、示差的トリプシン処理が可能となった。トリプシン処理、およびTrypsin Neutralizing Solution(TNS、BioWhitaker)を使用するトリプシンの中和に続いて、脱離した線維芽細胞様細胞を収穫した。細胞を、H.DMEM中で洗浄し、MSCGM中に再懸濁させた。フローサイトメトリーを、Becton−Dickinson FACSCalibur機器を使用して実施した。CD10、CD34、CD44、CD45、CD54、CD90、SSEA3およびSSEA4に対する抗体を含めた、FITCおよびPEで標識したモノクローナル抗体を、Becton−Dickinson and Caltag laboratories(S.San Francisco、CA.)、またはその他の供給元から購入し、SH2抗体、SH3抗体およびSH4抗体を産生するハイブリドーマを、American Type Culture Collectionから入手し、モノクローナル抗体の、それらの培養上清中における反応性を、FITCまたはPEで標識したF(ab)’2ヤギ抗マウス抗体によって検出した。系列分化を、市販の誘導培地および維持培地(BioWhittaker)を使用し、製造元の指示にしたがって使用して実施した。
【0143】
胎盤幹細胞の単離:培養フラスコ中の接着性細胞を顕微鏡により調べると、紡錘状の細胞、大きな核および多数の核周囲の小さな空胞を有する丸い細胞、ならびにいくつかの突起を有する星型の細胞を含めて、形態学的に異なる細胞型が明らかになり、こうした突起のうちの1つを介して、細胞はフラスコに付着していた。類似の非幹細胞を、骨髄、臍帯血および末梢血の培養物中に観察した。したがって、これらの細胞を、非幹細胞性であるとみなした。線維芽細胞様細胞は大部分、クラスターとして出現し、間葉系様幹細胞となる候補であり、これらを、示差的トリプシン処理によって単離し、第2のフラスコ中で継代培養した。トリプシン処理後、丸くなった細胞の位相差顕微鏡法によって、これらの細胞は、高度な顆粒化を示し、実験室で産生されたまたは商業的な供給元から購入した骨髄由来MSCに類似することが明らかになった。胎盤幹細胞は、継代培養すると、早期の場合とは対照的に、数時間以内に付着し、特徴的な線維芽細胞様細胞の形状を示し、参照の骨髄由来MSCと同一の増殖パターンを形成した。さらに、継代培養および栄養補充の間に、ゆるく結合していた単核細胞は洗い流され、培養物は、均一かついずれの非線維芽細胞様細胞の汚染物質も目視では認められない状態を保った。
【0144】
フローサイトメトリー:CD10、CD29、CD34、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、SSEA3およびSSEA4を含めた、胎盤幹細胞の表面マーカーの発現を、フローサイトメトリーによって判定した。OCT−4およびABC−pの発現を、RT−PCRにより、これらのマーカーについての既知のプライマーを使用して判定した。
【実施例2】
【0145】
未熟児の臍帯血および胎盤幹細胞を用いた治療
23週〜36週の間の在胎期間で出生し、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓の不完全な発達を示す6人の未熟児を、臍帯血および胎盤幹細胞を用いて治療する。
【0146】
臍帯血を、実施例1の記載に従って収集し、胎盤幹細胞を、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2006年12月26日出願の米国特許出願公開第2007/0275362号の記載に従って、灌流または酵素による消化によって得る。臍帯血および胎盤幹細胞を、1:1の比で組み合わせる。臍帯血および胎盤幹細胞を、FACS解析によって特徴付ける。臍帯細胞および胎盤幹細胞を未熟児に、未熟児の体重1キログラム当たり約1×10〜l×10個のCD34細胞の投与量で、分娩1週間後および分娩2週間後に静脈内から注射する。
【0147】
臍帯血および胎盤幹細胞の投与の前および後に、未熟児の血圧、心拍数、呼吸数および種々の血液細胞型の数を測定する。
【実施例3】
【0148】
臍帯血および胎盤灌流液に由来する細胞の特徴付け
以下の実験を実施して、正期産胎盤から単離した細胞と比較して、早産胎盤からHPPとUCBとの組合せを産生することの実現可能性を実証し、組み合わせた産物の細胞組成を決定した。
【0149】
全体的な結果から、(1)早産胎盤からHPPおよびUCBを収集することは実現可能であり;(2)早産胎盤から単離した総核細胞は、正期産胎盤から単離したものに匹敵し;(3)早産胎盤から単離したHPP/UCBのTNC含有量は、類似の体重に対して正規化した場合、正期産胎盤中に示されるものよりも顕著に高く;(4)早産胎盤から単離した臍帯血細胞の細胞組成は、正期産胎盤からのものとは異なり;CD38CD45細胞は、正期産胎盤中では、早産胎盤と比較して統計学的に有意に高く(p値、0.0146)、一方、CD38CD45細胞は、早産胎盤中では、統計学的に有意に高く(p値、0.0335);(5)早産胎盤から単離したHPPの細胞組成は、正期産胎盤と顕著に異なることはないことが示されている。
【0150】
早産胎盤からHPPおよびUCB幹細胞を大量に得ることは実現可能であり、これは、UCB幹細胞を単離するための従来の方法を実質的に上回る。組み合わせた細胞産物は、早産に伴う合併症を治療するために有用であるはずである。これは、それが、低酸素により内因性細胞が死滅するのを保護するための栄養能およびin vivoにおいて血液、血管新生細胞および神経細胞を形成する分化能を有するいくつかの前駆細胞の豊富な供給源となり得るからである。
【0151】
1 方法:
対象:帝王切開を予定して待機している女性を、出生前診療所において募集し、自然分娩した女性を、分娩室において募集した。
【0152】
臍帯血および胎盤の収集:胎盤を収集し、臍帯を切断し、クランプした。可能な限りの臍帯血を、臍帯から流し出した。次いで、臍帯を再度クランプして、さらなる失血を防止し、胎盤および臍帯血を、実験室に直ちに届けた。
【0153】
実験室における処理:胎盤が届いたら、到着後10〜15分以内に)、胎盤の重量を測定し、胎盤膜を除去した。胎盤およびコアを判定して、それらが灌流のために適切であるかどうか、例えば、臍帯が胎盤に完全につながっており、裂傷の徴候がなく、また、胎盤の中に深い裂傷もないことを確かめた。次いで、胎盤を、保存溶液を用いて覆う。次いで、胎盤を、冷蔵庫中に48時間置く。臍帯血を、Cell−DynおよびFACS解析について直ちに検査した。
【0154】
胎盤の灌流:胎盤を灌流し、灌流液を凍結保存した。圧力を制御した灌流を、Masterflex L/S7523プログラム可能蠕動ポンプを使用して達成した。臍帯用カテーテルを、胎盤の臍帯静脈のそれぞれの中に挿入し、三方活栓に接続した。次いで、このアセンブリを、Utah medical製のDPT100使い捨て圧力変換器に、次いで、これを、Masterflex L/S16蠕動ポンプチューブに接続した。このポンプを、さらに、注射用等級の食塩水の袋に接続した。血液収集袋からのチューブを、臍帯静脈中に挿入し、胎盤の血液を収集した。Labviewソフトウエアによって、灌流の圧力をモニターし、Masterflexポンプを、所望の圧力に手作業で加減した。灌流を、3時間に限定し、体積およびNOCの試験を、灌流が1時間終わる毎に完了した。
【0155】
胎盤灌流液細胞の生存率試験:ヒト胎盤灌流液(HPP)を含有する袋を、十分に混合し、少しの一定分量のHPPを、袋から取り出した。次いで、試料を、酢酸を用いて処置することによって、汚染赤血球を溶解させた。赤血球の溶解が完了した後、それぞれの試料に対して、トリパンブルー染色またはCell Dyne3200による計数のいずれかを行った。生存細胞のパーセントを決定するために、トリパンブルーを取り込まない、顕微鏡視野中の完全なままの細胞の数を、三つ組みで決定した。生存細胞の数を、総細胞数で割り、100をかけた。
【0156】
フローサイトメトリー:フローサイトメトリー研究を、HPPもしくはUCB、または細胞の組合せを使用し、以下の抗体を使用して実施した。
【0157】
【表1】

【0158】
細胞を、緩衝液を用いて洗浄し、次いで、緩衝液中に、設定した濃度範囲(すなわち、100μL当たり1×10個の生存細胞)で再懸濁させた。次いで、細胞を、蛍光標識抗体を用いて染色、インキュベートし、次いで、緩衝液を用いて洗浄して、過剰な抗体を除去した。染色した細胞を、フローサイトメーター上で試験して、対象とするマーカーの発現の陽性または陰性を決定した。
【0159】
2 結果
早産の胎盤と正期産の胎盤とは、重量が有意に異なることを見い出した(それぞれ、平均345gおよび731g;p=0.0001)。細胞の生存率については、早産の胎盤と正期産の胎盤とで、有意には異ならないことを見い出した(それぞれ、93.13%および90.84%の生存率;p=0.0724)。しかし、早産から得られる総有核臍帯血細胞は、有意に異なった(p=0.0001)。平均5.277×10個の細胞が、早産の胎盤から得られ、平均1.9498×10個の細胞が、正期産の胎盤から得られた。同様に、早産から得られる総有核灌流液細胞も、有意に異なった(p=0.0016)。平均1.28×10個の細胞が、早産の胎盤から得られ、平均3.76×10個の細胞が、正期産の胎盤から得られた。したがって、胎盤組織1グラム当たりから得られる有核細胞の数は、早産胎盤の場合、正期産の胎盤よりも有意に多かった(p=0.0001)。早産胎盤から得ることができる灌流液有核細胞と臍帯血有核細胞との総数は、1.79×10個である。これは、正期産の胎盤の場合の5.71×10個と比較して極めて有意に異なる(p=0.0001)。胎盤組織1グラム当たりの組み合わせた総有核細胞の数は、有意には異ならないことを見い出した。
【0160】
3 フローサイトメトリー
CD34細胞、CD38CD45細胞またはCD38CD45細胞のパーセントについては、早産の臍帯血と正期産の胎盤との間では、統計学的に有意な差は見いだされなかった。正期産の胎盤において、有意により高い数のCD38CD45細胞が見い出され(16.68%TNCに対して、早産における2.0%TNC)、早産胎盤において、有意により高い数のCD38CD45細胞が見い出された(56.52%に対して、正期産の胎盤の場合の24.58%)。灌流液由来のCD38CD45細胞、CD38CD45細胞、CD38CD45細胞またはCD38CD45細胞のパーセントについては、早産の臍帯血と正期産の胎盤との間では、統計学的に有意な差は見い出されなかった。
【0161】
均等物:
本発明の範囲が、本明細書に記載する特定の実施形態によって制限されてはならない。実際に、本明細書に記載するものに加えて、本発明の種々の改変形態が、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲に属することを意図する。
【0162】
本明細書に引用した参照文献は全て、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願を特異的かつ個々に、その全体を全ての目的で参照により本明細書に組み込むのと同じ程度に、それらの全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれている。
【0163】
いずれの刊行物の引用も、本出願日前のその開示に関するものであり、これによって、本発明が、先行発明によるそのような刊行物に先行するものではないことを認めると解釈してはならない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未熟児の障害または状態を治療する方法であって、臍帯血を前記未熟児に投与するステップを含み、前記障害または状態が早産によって引き起こされるまたは早産に伴うものである、方法。
【請求項2】
胎盤幹細胞を未熟児に投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液添加剤を投与するステップをさらに含み、前記血液添加剤は、エリスロポエチン、鉄補充物質、ビタミン、または臍帯血以外の供給源からの赤血球である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
血液添加剤を投与するステップをさらに含み、前記血液添加剤は、エリスロポエチン、鉄補充物質、ビタミン、または臍帯血以外の供給源からの赤血球である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記血液添加剤がエリスロポエチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記エリスロポエチンが、組換えエリスロポエチンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組換えエリスロポエチンが、天然のエリスロポエチンと比較して、血清半減期を延長されるように遺伝子操作されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記血液添加剤がビタミンである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ビタミンが、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、葉酸、ビタミンB12またはビタミンEである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記血液添加剤が鉄補充物質である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記鉄補充物質が、元素鉄(elemental iron)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血液添加剤が、臍帯血から得られたものではない赤血球である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記赤血球が、少なくとも2500cGyの放射線を照射されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記赤血球から、白血球が除去されている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記未熟児が、出生時に妊娠約23〜約25週を経ている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記未熟児が、出生時に妊娠約26〜約29週を経ている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記未熟児が、出生時に妊娠約30〜約33週を経ている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記未熟児が、出生時に妊娠約34〜約37週を経ている、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
出生時の前記未熟児の体重が、約800グラム以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
出生時の前記未熟児の体重が、約500グラム〜約800グラムである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
出生時の前記未熟児の体重が、約500グラム未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記障害または状態が、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記障害または状態が貧血である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記障害または状態が神経学的な欠損である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記障害または状態が、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧または高ビリルビン血症である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記障害または状態が、臓器の不完全な発達によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記臓器が、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記臍帯血が、未熟児にとって自己由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
胎盤幹細胞が、未熟児にとって自己由来である、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記臍帯血が、正期産分娩後の哺乳動物の胎盤から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記臍帯血が、早産分娩後の哺乳動物の胎盤から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記胎盤が、前記未熟児の胎盤である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記胎盤が、妊娠約23〜約25週で出生した乳児の胎盤である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記胎盤が、妊娠約26〜約29週で出生した乳児の胎盤である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記胎盤が、妊娠約30〜約33週で出生した乳児の胎盤である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記胎盤が、妊娠約34〜約37週で出生した乳児の胎盤である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記臍帯血が、臍帯血バンクから得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記胎盤幹細胞が、前記投与するステップの前に胎盤灌流液から単離された幹細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
前記胎盤幹細胞が、胎盤灌流液内に含有される幹細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項40】
前記胎盤幹細胞が、CD34細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項41】
前記胎盤幹細胞が、CD34細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項42】
前記胎盤幹細胞が、OCT−4細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項43】
前記胎盤幹細胞が、CD73、CD105およびCD200である細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項44】
前記胎盤幹細胞が、CD200またはHLA−Gである細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項45】
前記胎盤幹細胞が、CD200およびOCT−4である細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項46】
前記胎盤幹細胞には、CD73およびCD105である細胞であって、前記細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項47】
前記胎盤幹細胞が、CD73、CD105およびHLA−Gである細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項48】
前記胎盤幹細胞には、OCT−4である細胞であって、前記幹細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項49】
前記胎盤幹細胞が、正期産分娩後の哺乳動物の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項50】
前記胎盤幹細胞が、早産分娩後の哺乳動物の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項51】
前記胎盤幹細胞が、前記未熟児の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項52】
前記胎盤幹細胞が、妊娠約23〜約25週で出生した乳児の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項53】
前記胎盤幹細胞が、妊娠約26〜約29週で出生した乳児の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項54】
前記胎盤幹細胞が、妊娠約30〜約33週で出生した乳児の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項55】
前記胎盤幹細胞が、妊娠約34〜約37週で出生した乳児の胎盤から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項56】
前記臍帯血または前記胎盤幹細胞の免疫型が、前記投与するステップの前に決定されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記投与するステップが、未熟児の出生後1回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記投与するステップが、未熟児の出生後複数回行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記投与するステップが、未熟児の出生後1時間以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記投与するステップが、未熟児の出生後12時間以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
前記投与するステップが、未熟児の出生後24時間以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項62】
前記投与するステップが、未熟児の出生後1週間以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項63】
前記臍帯血が、前記未熟児の体重1キログラム当たり約1×10〜約1×10個のCD34細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項64】
前記胎盤幹細胞および前記臍帯血が併せて、前記未熟児の体重1キログラム当たり約1×10〜約1×10個のCD34細胞を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項65】
前記投与するステップが、静脈内注射による、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
前記投与するステップが、出生後1時間以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記投与するステップが、出生後12時間以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
前記投与するステップが、出生後2日以内に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項69】
前記投与するステップが、出生後2週間以内に行われる、請求項1に記載の方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−503064(P2011−503064A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533099(P2010−533099)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/012540
【国際公開番号】WO2009/061447
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510124250)アンスロジェネシス コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】