説明

昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ活性に関わる有害生物の生理状態に変化を与える薬剤

【課題】標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等を提供すること。
【解決手段】有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤、並びに、被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、(1)下記の群Aから選択されるコリンアセチルトランスフェラーゼと被験物質との接触系内における該コリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する第一工程、及び(2)第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質の有害生物防除能力を評価する第二工程を有することを特徴とする方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ活性に関わる有害生物の生理状態に変化を与える薬剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
コリンアセチルトランスフェラーゼ(acetylCoA:choline O-acetyltransferase、EC 2.3.1.6、シノニム:Choline acetylase;Choline O-acetyltransferase;ChAT)は、アセチルCoAとコリンから神経伝達物質であるアセチルコリンを合成する反応を触媒する。
このアセチルコリンは、初めて報告された神経伝達物質であり、学習、記憶、睡眠のような脳の基本的なプロセスにおいて機能する。アセチルコリンは、特に末梢神経系及び中枢神経系のコリン作動性ニューロンにおいて機能し、末梢神経系においては神経筋接合部を通じて筋収縮を刺激し、中枢神経系においては学習と短期記憶の形成を促す。
【0003】
昆虫を含む無セキツイ動物由来のコリンアセチルトランスフェラーゼについては、次のような報告がある。C. elegans のコリンアセチルトランスフェラーゼは、コリン作動性ニューロンのシナプス部位に豊富に存在する(例えば、非特許文献1参照)。コリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cha-1)の機能欠損変異は、L1ステージにおける成育停止と致死を引き起こす(例えば、非特許文献2参照)。コリンアセチルトランスフェラーゼの活性が極度に低下した機能抑制変異体は、成育が遅くて体が小さいとともに、排泄サイクルが不規則になった。(例えば、非特許文献3参照)。また、該変異体は、アセチルコリンの量が低下しているため、aldicarbやtrichlorfonのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に耐性を示した(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
ショウジョウバエに関して、コリンアセチルトランスフェラーゼは、全ての成育ステージにおいて中枢神経系に広く分布していた(例えば、非特許文献4参照)。また、変異体の解析では、劣性の非条件型機能喪失変異体が胚発生の後期過程で致死となった(例えば、非特許文献5参照)。また、温度感受性機能抑制変異体では、制限温度でインキュベーションすると麻痺症状を示した(例えば、非特許文献6参照)。また、温度感受性機能喪失変異体を用いた実験により、正常なアセチルコリンの代謝は、神経組織の初期形成に必要ではないが、その後の成育期において神経組織が正常な構造と機能を維持するために必要であることが示された(例えば、非特許文献7)。
【0005】
ところで、農薬は、従来、化合物を昆虫、菌類、植物等の対象生物(有害生物)に直接作用させ、その生物学的活性を検定するランダムスクリーニングによって見出されてきた。この場合、農薬の安全性や環境への負荷を予測するため、有用な生物活性を有する化合物が特定された後に、該化合物が効力を示す作用機構や、該化合物が作用する標的等を分子レベルで詳細に研究する必要があった。
【0006】
【非特許文献1】Duerr et al., Midwest Worm Meeting abstract 39
【非特許文献2】Took and Jorgensen, West Coast Worm Meeting abstract 260
【非特許文献3】Rand and Russell, Genetics, 106(2):227-248, 1984
【非特許文献4】Gorczyca and Hall, J. Neurosci., 7(5):1361-1369, 1987
【非特許文献5】Greenspan, J. Comp. Physiol., 137(1):83-92, 1980
【非特許文献6】Kitamoto et al., J. Neurobiol., 42(2):161-171, 2000
【非特許文献7】Chase and Kankel, Dev. Biol., 125(2):361-380, 1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような農薬開発の問題点を解決するために、標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、このような状況下鋭意検討を行った結果、有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤が有害生物を防除することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤;
2.昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼが、ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼであることを特徴とする前項1記載の薬剤;
3.有害生物の生理状態に変化を与える薬剤が、有害生物防除剤であることを特徴とする前項1記載の薬剤;
4.昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの反応を阻害する能力であることを特徴とする前項1記載の薬剤;
5.有効成分として、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含有することを特徴とする有害生物防除剤;
6.化学物質が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの反応を阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする前項5記載の有害生物防除剤;
7.化学物質が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの無細胞反応系において、該化学物質の存在濃度が10μM以上の場合に、該化学物質が存在しない場合よりもコリンアセチルトランスフェラーゼの活性が低くなるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする前項6記載の有害生物防除剤;
8.化学物質が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの反応の無細胞反応系において、100μM以下のIC50となるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする前項6記載の有害生物防除剤;
9.被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、(1)下記の群Aから選択されるコリンアセチルトランスフェラーゼと被験物質との接触系内における該コリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する第一工程、及び(2)第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質の有害生物防除能力を評価する第二工程、を有することを特徴とする方法;
<群A>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(e)配列番号2又は3で示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質
(f)配列番号2又は3で示される塩基配列と50%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(g)配列番号2又は3で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(h)昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列からなる蛋白質
(i)ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列からなる蛋白質
10.前項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする有害生物防除能力を有する被験物質の探索方法;
11.前項10記載の探索方法により選抜された被験物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする有害生物防除剤;
12.前項5、6、7、8又は11のいずれか一項記載の有害生物防除剤の有効量を、保護すべき作物、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することを特徴とする有害生物防除方法;
13.前項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する被験物質を特定し、特定された有害生物防除能力を有する被験物質と有害生物とを接触させることを特徴とする有害生物防除方法;
14.下記の群Bのいずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ;
<群B>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(e)配列番号2又は3で示される塩基配列を有するアミノ酸配列
(f)配列番号2又は3で示される塩基配列と50%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(g)配列番号2又は3で示される塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(h)ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼが有するアミノ酸配列
15.有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの使用;
16.有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、前項14記載の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの使用;
17.前項14記載のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
18.配列番号2又は3で示される塩基配列からなることを特徴とする前項17記載のポリヌクレオチド;
19.前項17又は18記載のポリヌクレオチドが有する塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
20.前項17又は18記載のポリヌクレオチドの部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
21.配列番号4又は5で示される塩基配列からなることを特徴とする前項20記載のポリヌクレオチド;
22.コリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、前項20又は21記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程、増幅された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、を有することを特徴とする方法;
23.コリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、前項19、20又は21のいずれか一項記載のポリヌクレオチドをプローブとして用いたハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、を有することを特徴とする方法;
24.前項17又は18記載のポリヌクレオチドを、バクテリオファージ由来のプロモーターに機能可能な形で連結してなることを特徴とする環状ポリヌクレオチド;
25.バクテリオファージ由来のプロモーターが、T7RNAポリメラーゼ遺伝子のプロモーターであることを特徴とする前項24記載の環状ポリヌクレオチド;
26.前項24又は25記載の環状ポリヌクレオチドであって、宿主細胞内で自己複製の為の複製開始点を有することを特徴とする環状ポリヌクレオチド;
27.前項17又は18記載のポリヌクレオチドをベクターに連結することを特徴とする環状ポリヌクレオチドの製造方法;
28.前項17又は18記載のポリヌクレオチドが導入されてなることを特徴とする形質転換体;
29.形質転換体が形質転換大腸菌であることを特徴とする前項28記載の形質転換体;
30.前項17又は18記載のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体の製造方法;
31.前項28又は29記載の形質転換体を培養し、産生された昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼを回収する工程を有することを特徴とするコリンアセチルトランスフェラーゼの製造方法;
32.研究ツールとしての、前項14記載の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ或いは前項17〜21のいずれか一項記載のポリヌクレオチドの使用;
33.研究ツールが有害生物防除剤をスクリーニングするための実験ツールであることを特徴とする前項32記載のポリヌクレオチドの使用;
34.被験物質について、該被験物質が有する昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力、蓄積、又は管理する手段、該データ情報を所望の条件に基づき照会又は検索する手段、及び、照会又は検索された結果を表示又は出力する手段、を具備することを特徴とするシステム;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、対象生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等が提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、詳細に本発明を説明する。
【0011】
本発明において「有害生物」とは、人畜に直接害を与え、又は、作物等を害することによって人間生活に害や不快感を与える小動物を示し、例えば、昆虫やダニ等の節足動物及び線虫等の線形動物があげられ、具体的には例えば、以下に示すものがあげられる。
【0012】
半翅目害虫:ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)等のヨコバイ類、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)等のアブラムシ類、カメムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類、カイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等;
鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)等のメイガ類、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属(Trichoplusia spp.)、ヘリオティス属(Heliothis spp.)、ヘリコベルパ属(Helicoverpa spp.)、エアリアス属(Earias spp.)等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)等のシロチョウ類、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyes orana fasciata)、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、コドリングモス(Cydia pomonella)等のハマキガ類、モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類、モモハモグリガ(Lyonetia clerkella)等のチビガ類、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)等のホソガ類、ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella)等のコハモグリガ類、コナガ(Plutela xylostella)等のスガ類、ピンクボールワーム(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類、ヒトリガ類、ヒロズコガ類等;
双翅目害虫:アカイエカ(Culex pipiens pallens)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等のイエカ類、(Aedes aegypti)、(Aedes albopictus)等のエーデス属、(Anopheles sinensis)等のアノフェレス属、ユスリカ類、イエバエ(Musca domestica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ヒメイエバエ類、タネバエ(Delia platura)、タマネギバエ(Delia antiqua)等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類、ハモグリバエ類等;
鞘翅目害虫:ウエスタンコーンルートワーム(Diabrotica virgifera virgifera)、サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi)等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等のコガネムシ類、メイズウィービル(Sitophilus zeamais)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、アズキゾウムシ(Callosobruchuys chienensis)等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等のゴミムシダマシ類、イネドロオイムシ(Oulema oryzae)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)等のエピラクナ類、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)等;
アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)等のスリップス属、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)等のフランクリニエラ属、チャノキイロアザミウマ(Sciltothrips dorsalis)等のシルトスリップス属等のアザミウマ類、クダアザミウマ類等;
膜翅目害虫:ハバチ類、アリ類、スズメバチ類等;
網翅目害虫:ゴキブリ類、チャバネゴキブリ類等;
直翅目害虫:バッタ類、ケラ類等;
隠翅目害虫:ヒトノミ等;
シラミ目害虫:ヒトジラミ等;
シロアリ目害虫:シロアリ類等;
ダニ目害虫:ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、オリゴニカス属等のハダニ類、ミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、リンゴサビダニ(Aculus schlechtendali)等のフシダニ類、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)等のホコリダニ類、ヒメハダニ類、ケナガハダニ類、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)、ヤマトチマダニ(Haemaphysalis flava)、タイワンカクマダニ(Dermacentor taiwanicus)、ヤマトマダニ(Ixodes ovatus)、シュルツマダニ(Ixodes persulcatus) 、オウシマダニ(Boophilus microplus)等のマダニ類、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)等のコナダニ類、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides ptrenyssnus)等のヒョウヒダニ類、ホソツメダニ(Cheyletus eruditus)、クワガタツメダニ(Cheyletus malaccensis)、ミナミツメダニ(Cheyletus moorei)等のツメダニ類、ワクモ類等;
線虫類:ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus fallax)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)等。
【0013】
本発明において「有害生物の生理状態に変化を与える」とは、有害生物において、生きていくために維持されている様々な体内での現象、例えば、呼吸・消化・排泄・体液循環・代謝・神経伝達等の働き、又はその仕組み等の状態を、通常の状態から逸脱した状態に変化させることを示す。例えば、呼吸を停止させることによって有害生物の体内代謝に必要な酸素等が供給されなくなるように変化させること、又は、有害生物の神経伝達の働きを停止させることによって有害生物の種々の運動等を停止させるよう変化させること、等である。
【0014】
本発明において「有害生物の生理状態に変化を与える薬剤」とは、有害生物に投与することによって有害生物の生理状態に変化を与えることができる薬剤である。
【0015】
本発明において「昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ」とは、様々な生物に存在するコリンアセチルトランスフェラーゼの中で、昆虫に存在するコリンアセチルトランスフェラーゼを示す。
【0016】
昆虫とは、動物界、節足動物門、昆虫綱の属する動物であり、例えば、原尾目、粘菅目、双尾目、総尾目、蜉蝣目、蜻蛉目、積翅目、欠翅目、直翅目、ナナフシ目、革翅目、蟷螂目、網翅目、シロアリ目、紡脚目、噛虫目、食毛目、シラミ目、アザミウマ目、半翅目、脈翅目、長翅目、毛翅目、鱗翅目、鞘翅目、双翅目、膜翅目、隠翅目、撚翅目等に属する節足動物が挙げられる。
【0017】
コリンアセチルトランスフェラーゼ(acetylCoA:choline O-acetyltransferase、EC 2.3.1.6、シノニム:Choline acetylase;Choline O-acetyltransferase;ChAT)は、アセチルCoAとコリンから神経伝達物質アセチルコリンを合成する反応を触媒する。
【0018】
コリンアセチルトランスフェラーゼの活性は、放射活性を基にしたin vitroアッセイにより測定が可能である。例えば、Heo Ho-Jin et al., 2003 Biosci. Biotechnol. Biochem., 67(6), 1284-1291に記載されるように、放射能ラベルした14C-アセチルCoAを用いて、アセチルCoA及びコリンを基質としたコリンアセチルトランスフェラーゼの酵素反応の後、テトラフェニルボロン(TPB)を用いて、生成した14C-アセチルコリンを抽出する。2相に分かれた上相の放射活性を液体シンチレーションカウンターにより測定する。
【0019】
同様に、コリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定するために用いられる方法として、吸光度アッセイが存在する。
吸光度アッセイの原理は、DTNB(5,5'-dithio-bis(2-nitrobenzoic acid))を用いて、コリンアセチルトランスフェラーゼの酵素反応によって生じた遊離のCoAを定量することにより、コリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する。DTNBは、チオール基と反応し、412nmの波長に吸収極大を持つ黄色のTNB(5-thio-2-nitrobenzoic acid)を生成する。405nmの波長での吸光度によって、この着色したTNBを測定することが可能である。
以上のようなコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定方法の中で、多検体のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を機械的に効率よく測定する方法としては、前記のDTNBを用いた方法が望ましい。具体的には、例えば、アセチルCoA及びコリンを基質としたコリンアセチルトランスフェラーゼの酵素反応の後、DTNBを添加して、酵素反応によって生じた遊離のCoAを、405nmの波長での吸光度を測定することによって定量する方法に準じた方法等が挙げられる。
【0020】
また、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する方法は、上記の方法と同様な方法で実施することができる。
【0021】
既知の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、これまでに、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster isoform A、accession No. NP_477004;isoform B、accession No. NP_996239)、
コクヌストモドキ(Tribolium castaneum、accession No. XP_975503)、
ミツバチ(Apis mellifera、accession No. XP_392463)、
ネッタイシマカ(Aedes aegypti 、accession No. XP_001660851)及び
ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae 、accession No. XP_312586)等
のものが公共のデータベースに開示されている。
【0022】
また、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子の塩基配列は、これまでに、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster isoform A、accession No. NM_057656;isoform B、accession No. NM_206517)、
コクヌストモドキ(Tribolium castaneum、accession No. XM_970410)、
ミツバチ(Apis mellifera、accession No. XM_392463)、
ネッタイシマカ(Aedes aegypti 、accession No. XM_001660801)及び
ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae 、accession No. XM_312586)等
のものが公共のデータベースに開示されている。
【0023】
また、後述の方法によって、これまで未知であったワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列を明らかにすることが可能となり、それらの方法によって得られたアミノ酸配列を配列番号1に、遺伝子の塩基配列を配列番号2にそれぞれ開示している。
【0024】
一方、昆虫以外のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、
線虫(Ceanorhabditis elegans 、accession No. AAB88370)、
ヒト(Homo sapiens 、accession No. NP065574)等において、及び、
遺伝子の塩基配列は、
線虫(Ceanorhabditis elegans 、accession No. ZC416.8)、
ヒト(Homo sapiens 、accession No. NM_020549)等において、
それぞれ公共のデータベースに開示されている。
【0025】
ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列に対する既知配列との同一性及び類似性を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力とは、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を増加又は減少させる能力をさし、即ち、コリンアセチルトランスフェラーゼの活性化能力又は活性阻害能力を意味する。そして、前記のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定反応系に被験物質を添加して、被験物質がコリンアセチルトランスフェラーゼの反応に与える影響を調べることができる。
【0028】
また、コリンアセチルトランスフェラーゼの阻害能力を有する物質としてBromoacetylcholine(Sastry and Janson, J. Ocular Pharmacol., 10:203-215, 1994)、Theaflavin(Sugatani et al., Int. Arch. Allergy Immunol., 134:17-28, 2004)、α−NETA(Sastry et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 245:72-80, 1988)等が知られている。
【0029】
該反応における被験物質のIC50値とは、該反応の活性を50%阻害する被験物質の濃度を意味する。被験物質のIC50値は、前記のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定反応系に異なる濃度の被験物質を添加して、各添加濃度(用量)でのコリンアセチルトランスフェラーゼ活性(反応)を算出し、用量-反応曲線(dose response curve)を作成して、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性を50%阻害する被験物質の添加濃度を算出することによって決定できる。より具体的には、4パラメーターロジスティックモデル(4 Parameter Logistic Model)或いは、シグモイド用量-反応モデル(Sigmoidal Dose-Response Model)
【0030】
f(x) = (A+((B-A)/(1+((C/x)^D)))
【0031】

【0032】
を用いて用量-反応曲線を作成し、IC50を算出することができる。また実務的には、市販の計算ソフトウェアであるXLfit (IDBS社製)を用いて算出することが可能である。
【0033】
昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤とは、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を変化させる能力を有する物質を有効成分とする薬剤である。
【0034】
本発明において「有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤」とは、前記の測定方法で昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を特定された薬剤であり、有害生物の生理状態に変化を与えることができる薬剤を意味する。
該薬剤として、望ましくは、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼがワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼである薬剤が挙げられる。
また、該薬剤として、望ましくは、有害生物の生理状態に変化を与える薬剤が、有害生物防除剤である薬剤が挙げられる。
また、該薬剤として、望ましくは、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力が、アセチルCoA及びコリンを基質とした反応を阻害する能力である薬剤が挙げられる。
【0035】
本発明において「有害生物防除剤」とは、前記有害生物を防除する能力を有する薬剤を示す。
【0036】
有害生物防除能力を測定する方法の一つとして、本発明で開示される方法の他に、例えば、前記有害生物に対する殺虫活性を測定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、以下の方法に従い、測定することができる。
【0037】
下記の組成(表2)からなる滅菌済み人工飼料を調製し、供試薬剤のDMSO溶液を該人工飼料の0.5%容量添加し、混合する以外は、Handbook of Insect Rearing Vol.1 (Elsevier Science Publisers 1985) 35頁〜36頁に記載される方法に準じてワタアブラムシを飼育し、6日後にワタアブラムシの生存数を調査し、次の式により防除価を求める。
【0038】
【表2】

【0039】
防除価(%)={1−(Cb×Tai)/(Cai×Tb)}×100
尚、式中の文字は以下の意味を表す。
Cb:無処理区の処理前の虫の生存数
Cai:無処理区の観察時の虫の生存数
Tb:処理区の処理前の虫の生存数
Tai:処理区の観察時の虫の生存数
有意に高い防除価を示す供試薬剤については、有害生物防除活性があると言える。また、より好ましくは、該防除価が30%以上の供試薬剤は実質的な殺虫活性があると判断でき、該防除価が30%未満の供試化合物は実質的な殺虫活性が無いと判断できる。
【0040】
本発明における有害生物防除剤は、有効成分として昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含んでいてもよい。
【0041】
本発明において、農学的に許容される塩とは、防除剤としての製造、及び該製造物の施用に関して、その製造及び施用が不可能とならない形態の塩を指し、どのような形態の塩でもあってもよい。かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム等の無期塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0042】
本発明において「有効成分として、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含有することを特徴とする有害生物防除剤」とは、前記の測定方法で昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を特定された化学物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有することにより有害生物を防除することができる薬剤を意味する。
該化学物質として、望ましくは、コリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoA及びコリンとの反応を阻害する能力を有する化学物質を挙げることができる。
また、より望ましくは、コリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoA及びコリンとの無細胞反応系において、化学物質の存在濃度が10μM以上の場合に、該化学物質が存在しない場合よりもコリンアセチルトランスフェラーゼの活性が低くなるように阻害する能力を有する化学物質が挙げられる。
また、更に望ましくは、コリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoA及びコリンとの無細胞反応系において100μM以下のIC50となるようにコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を阻害する化学物質を挙げることができる。
【0043】
本発明において「被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、群Aから選択されるコリンアセチルトランスフェラーゼと被験物質との接触系内におけるコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する第一工程と、第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき被験物質の有害生物防除能力を評価する第二工程を有することを特徴とする方法」とは、被験物質が有する有害生物防除能力を検定する様々な方法の中で、前記の第一工程及び第二工程を有することを特徴とする方法を示す。
ここで、群Aとは、
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(e)配列番号2又は3で示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質
(f)配列番号2又は3で示される塩基配列と50%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(g)配列番号2又は3で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(h)昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列からなる蛋白質
(i)ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列からなるを示す(以下、群Aと記す。)。
【0044】
第一工程とは、前記の様々なコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定反応系に被験物質を添加することによってコリンアセチルトランスフェラーゼと被験物質を接触させた状態でコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する工程である。
【0045】
また、第二工程は、被験物質を測定した時の活性と対照における活性を比較しその差異に基づいて有害生物防除能力を評価する工程である。
ここで対照とは、例えば被験物質を溶媒に溶解した状態で反応系に添加した場合には、被験物質を溶解した該溶媒のみを添加した試験区を意味する。
【0046】
第一工程及び第二工程を有する、被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法に使用されるコリンアセチルトランスフェラーゼは、前記群Aに示す蛋白質である。上記の群Aの蛋白質のうち、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)に示される蛋白質のアミノ酸配列において、(a)に示されるアミノ酸配列との間に認められることのある相違は、一部のアミノ酸の欠失、置換、付加等である。これらには、例えば、上記の(a)で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシングによる欠失が含まれる。また、該蛋白質が由来する生物の種差や個体差等により天然に生じる遺伝子変異や、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、突然変異処理等によって人為的に導入される遺伝子変異等により生じるアミノ酸の欠失、置換、付加等が含まれる。
【0047】
かかる欠失、置換、付加等を受けるアミノ酸の数は、コリンアセチルトランスフェラーゼのアセチルトランスフェラーゼ活性を見出すことのできる範囲内の数であれば良い。
また、アミノ酸の置換としては、例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似したアミノ酸への置換をあげることができる。このような置換としては、具体的には例えば、(1)グリシン、アラニン;(2)バリン、イソロイシン、ロイシン;(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、(4)セリン、スレオニン;(5)リジン、アルギニン;(6)フェニルアラニン、チロシン等のグループ内での置換が挙げられる。
【0048】
かかるアミノ酸の欠失、付加若しくは置換(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。
【0049】
ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0050】
また、アミノ酸の改変を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対してランダムに変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法も挙げられる。ここでランダムに変異を導入する手法としては、例えば、上記のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNAを鋳型とし、それぞれのDNAの全長を増幅できるようなプライマー対を用い、基質に用いるdATP、dTTP、dGTP、dCTPの各々の添加濃度を通常とは変化させた反応条件や、或いはポリメラーゼの反応を促進させるMg2+の濃度を通常よりも増加させた反応条件でPCRを行う方法等が挙げられる。このようなPCRの手法としては、例えば、Method in Molecular Biology, (31), 1994, 97-112 に記載される方法があげられる。また、WO0009682号公報に記載される方法をあげることもできる。
【0051】
ここで「配列同一性」とは、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列間の同一性をいう。該「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいては、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。具体的には例えば、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)」を用い、Lipman-Pearson法[Lipman, D. J. and Pearson, W.R., Science, 227, 1435-1441,(1985)]により相同性解析を行ってアラインメントを作成することにより算出することができる。
【0052】
また、前述の最適な状態にアライメントされた2つのアミノ酸配列において、同類アミノ酸置換によって配列が異なる場合、置換されたアミノ酸の同類性を調整するために、「配列類似性」が用いられる。同類アミノ酸置換によって差異が生じる配列同士は、配列類似性を持つとされる。このような配列類似性は、例えば、前述のようなFASTA等のプログラムを用いて算出することができる。アミノ酸は、疎水性アミノ酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の4グループに分けることができ、各グループ内のアミノ酸で置換されることを同類アミノ酸置換という。
疎水性アミノ酸:アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)
中性アミノ酸:グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
酸性アミノ酸:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
塩基性アミノ酸:リジン(K)、ヒスチジン(H)、アルギニン(R)
【0053】
(g)に記載される「ストリンジェントな条件」としては、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーションにおいて、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSC(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSC(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0054】
(i)記載の「蛋白質」は、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの中で、ワタアブラムシに存在するコリンアセチルトランスフェラーゼを示し、(a)記載のアミノ酸配列からなる蛋白質も含まれる。
また、群Aの蛋白質には、(c)記載の配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が含まれるが、より望ましくは、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上の配列同一性を有し、更により望ましくは、85%、90%、95%以上の配列同一性を有し、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が用いられる。
同様に、群Aの蛋白質には、(d)記載の配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質も含まれるが、より望ましくは、80%以上の配列類似性を有し、更により望ましくは、85%、90%、95%以上の配列類似性を有し、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が用いられる。
【0055】
有害生物防除能力を有する物質は、例えば前記の有害生物に対する殺虫活性又は防除効果を測定することによる有害生物防除能力の検定方法を用いることによって探索することができる。
また、前記のコリンアセチルトランスフェラーゼを用いた有害生物防除能力の検定方法によっても有害生物防除能力を有する物質を探索することが可能である。具体的には、前記のコリンアセチルトランスフェラーゼを用いた有害生物防除能力の検定方法を用いて、被験物質の有害生物防除能力がある一定値以上、又は一定値以下であることが特定された場合、該物質を選抜することによって有害生物防除能力を有する物質を探索できる。
【0056】
また該探索方法によって選抜された物質は、有害生物防除能力を有することから、その物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有する有害生物防除剤となり得る。
【0057】
有害生物の防除は、通常、有害生物防除剤の有効量を保護すべき作物、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することにより行われる。
有害生物防除剤を農林用として用いる場合には、その施用量は通常1000m2有害生物防除剤の量で0.1〜1000gである。有害生物防除剤が乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤等に製剤化されたものである場合には、通常有効成分濃度が1〜10000ppmとなるように水で希釈して散布することにより施用し、有害生物防除剤が粒剤、粉剤等に製剤化されたものである場合には、通常そのまま施用する。
有害生物防除剤は有害生物から保護すべき作物等の植物に対して茎葉処理することにより使用することができ、作物の苗を植え付ける前の苗床や植付けの時に植穴や株元に処理することにより使用することもできる。更に、耕作地の土壌に生息する有害生物を防除する目的で該土壌に処理することにより使用してもよい。また、シート状やひも状等に加工した樹脂製剤を作物に巻き付ける、作物の近傍に張り渡す及び/又は株元の土壌表面に敷く等の方法で使用することもできる。
【0058】
有害生物防除剤を防疫用害虫防除剤として用いる場合には、乳剤、水和剤、フロアブル等は、通常、有効成分濃度が0.01〜10000ppmになるように水で希釈して施用し、油剤、エアゾール、燻煙剤、毒餌等についてはそのまま施用する。
【0059】
有害生物防除剤の用途の一つとして、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ラット、マウス等の小動物の外部寄生虫防除があげられ、この場合は獣医学的に公知の方法で動物に投与する事ができる。具体的な投与方法としては、全身的抑制(systemic control)を目的とする場合には、例えば錠剤、飼料混入、坐薬、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内等)等により投与され、非全身的抑制(non-systemic control)を目的とする場合には、例えば油剤若しくは水性液剤を噴霧する、ポアオン若しくはスポットオン処理を行う、シャンプー製剤で動物を洗う又は樹脂製剤を首輪や耳札にして動物につける等の方法により用いられる。動物体に投与する場合の有害生物防除剤の量は、通常動物1kgに対して、化合物Aと化合物Bとの合計量で、0.1〜1000mgの範囲である。
【0060】
これらの施用量、施用濃度は、いずれも製剤の種類、施用時期、施用場所、施用方法、有害生物の種類、被害程度の等の状況によって異なり、上記の範囲にかかわることなく増減させることができ、適宜選択することができる。
【0061】
以上に示した有害生物防除の方法に、前記の有害生物防除剤を用いることができる。
また一方、前記の、群Aから選択されるコリンアセチルトランスフェラーゼを用いた第一工程、第二工程を有する、被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法、によって評価された有害生物防除能力を有する物質を特定し、特定された有害生物防除能力を有する物質と有害生物とを接触させることによって有害生物を防除することも可能である。
【0062】
ここで特定された有害生物防除能力を有する物質と有害生物とを接触させる方法としては、前記の製剤方法、施用方法等を用いることが出来る。
【0063】
群Bで示されるアミノ酸配列は、下記の(a)〜(g)いずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列である。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(e)配列番号2又は3で示される塩基配列を有するアミノ酸配列
(f)配列番号2又は3で示される塩基配列と49%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(g)配列番号2又は3で示される塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(h)ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼが有するアミノ酸配列
【0064】
上記の群Bのに示されるアミノ酸配列のうち、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)に示される蛋白質のアミノ酸配列において、(a)に示されるアミノ酸配列との間に認められることのある相違は、一部のアミノ酸の欠失、置換、付加等である。これらには、例えば、上記の(a)で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシングによる欠失が含まれる。また、該蛋白質が由来する生物の種差や個体差等により天然に生じる遺伝子変異や、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、突然変異処理等によって人為的に導入される遺伝子変異等により生じるアミノ酸の欠失、置換、付加等が含まれる。
【0065】
かかる欠失、置換、付加等を受けるアミノ酸の数は、コリンアセチルトランスフェラーゼのアセチルトランスフェラーゼ活性を見出すことのできる範囲内の数であれば良い。また、アミノ酸の置換としては、例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似したアミノ酸への置換をあげることができる。このような置換としては、具体的には例えば、(1)グリシン、アラニン;(2)バリン、イソロイシン、ロイシン;(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、(4)セリン、スレオニン;(5)リジン、アルギニン;(6)フェニルアラニン、チロシン等のグループ内での置換が挙げられる。
【0066】
かかるアミノ酸の欠失、付加若しくは置換(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0067】
また、アミノ酸の改変を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対してランダムに変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法も挙げられる。ここでランダムに変異を導入する手法としては、例えば、上記のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNAを鋳型とし、それぞれのDNAの全長を増幅できるようなプライマー対を用い、基質に用いるdATP、dTTP、dGTP、dCTPの各々の添加濃度を通常とは変化させた反応条件や、或いはポリメラーゼの反応を促進させるMg2+の濃度を通常よりも増加させた反応条件でPCRを行う方法等が挙げられる。このようなPCRの手法としては、例えば、Method in Molecular Biology, (31), 1994, 97-112 に記載される方法があげられる。また、WO0009682号公報に記載される方法をあげることもできる。
【0068】
ここで「配列同一性」とは、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列間の同一性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいては、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。具体的には例えば、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)」を用い、Lipman-Pearson法[Lipman, D. J. and Pearson, W.R., Science, 227, 1435-1441,(1985)]により相同性解析を行ってアラインメントを作成することにより算出することができる。
【0069】
また、前記の最適な状態にアライメントされた2つのアミノ酸配列において、同類アミノ酸置換によって配列が異なる場合、置換されたアミノ酸の同類性を調整するために、「配列類似性」が用いられる。同類アミノ酸置換によって差異が生じる配列同士は、配列類似性を持つとされる。このような配列類似性は、例えば、前述のようなFASTA等のプログラムを用いて算出することができる。アミノ酸は、疎水性アミノ酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の4グループに分けることができ、各グループ内のアミノ酸で置換されることを同類アミノ酸置換という。
疎水性アミノ酸:アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)
中性アミノ酸:グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
酸性アミノ酸:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
塩基性アミノ酸:リジン(K)、ヒスチジン(H)、アルギニン(R)
【0070】
(g)に記載される「ストリンジェントな条件」としては、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーションにおいて、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSC(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSC(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0071】
(h)記載の「蛋白質」は、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの中で、ワタアブラムシに存在するコリンアセチルトランスフェラーゼを示し、(a)記載のアミノ酸配列からなる蛋白質も含まれる。
【0072】
また、群Bの蛋白質には、(c)記載の配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が含まれるが、より望ましくは、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上の配列同一性を有し、更により望ましくは、85%、90%、95%以上の配列同一性を有し、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が用いられる。同様に、群Aの蛋白質には、(d)記載の配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質も含まれるが、より望ましくは、80%以上の配列類似性を有し、更により望ましくは、85%、90%、95%以上の配列類似性を有し、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が用いられる。
【0073】
群Bに示されるアミノ酸配列を有する蛋白質は、例えば、群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを用いて後述の方法に従い調製することができる。
【0074】
昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼは、有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬として使用することができる。具体的には、例えば昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼは、前記のコリンアセチルトランスフェラーゼを用いた有害生物防除能力を検定する方法において用いるコリンアセチルトランスフェラーゼとして使用することによって、有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬として使用することが可能である。また、より具体的な方法については、前記の、コリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定方法に従い実施できる。
【0075】
また、有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬として昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼを使用する場合において、より好ましくは、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼは、前記の群Bに示されるアミノ酸配列を有するコリンアセチルトランスフェラーゼであることが望ましい。
【0076】
前記群Bに示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(以下、ポリヌクレオチド群Bと記すこともある。)は、生物の細胞内或いは試験管内の翻訳系において、該群Bに示されるアミノ酸配列を有する蛋白質を生成できる塩基配列を持つ。ポリヌクレオチド群Bとしては、自然界からクローニングされたDNAであってもよいし、自然界からクローニングされたDNAに、例えば部位特異的変異導入法やランダム変異導入法等によって塩基の欠失、置換又は付加が導入されたDNAであってもよく、また、人為的に合成されたDNAであってもよい。具体的には、配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0077】
<第1の取得方法>
例えば、ポリヌクレオチド群Bに含まれる配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む配列番号3で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの取得方法を以下に示す。工程としては、ワタアブラムシから全RNAを取得し、cDNAライブラリーを合成して、PCR増幅を行うことによって目的のポリヌクレオチドを取得できる。
ポット植えのキュウリ葉上で飼育されたワタアブラムシ(Aphis gossypii)の成虫及び幼虫の混合した集団630mgを葉上から細筆又は小さなハケでかきとり、これを液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて粉末状になるまで破砕し、凍結された破砕粉体からRNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを単離する。次に乳鉢中の凍結された破砕粉体に10mlのISOGENを加え10分間磨砕する。この時、乳鉢は氷上に置いた状態で操作する。磨砕後、液体状の試料をピペットにて15mlチューブに移し、2mlのクロロホルム(和光純薬工業社製)を加え、直ちに15秒間激しく混和し、室温で3分間静置する。4℃、15分間、12,000×gで遠心分離後、上層の水相を5mlずつ2本の新しいチューブに移し、ぞれぞれのチューブにISOGENを5ml加え、直ちに15秒間激しく混和し、室温で3分間静置する。4℃、15分間、12,000×gで再度遠心分離後、上層の水相10mlをそれぞれ新しい50mlチューブに移し、続いて、イソプロパノール(和光純薬工業社製)を10ml加え、氷上で30分間静置する。次に4℃、10分間、12,000×gで遠心分離し、RNAを沈殿させ、上清を除いて20mlの70%エタノールを加えて、4℃、5分間、10,000×gで遠心分離する。上清を除き、チューブの口を下にして3分間静置し、沈殿した全RNAを軽く乾燥させてから、市販のRNase-free water(ナカライテスク社製)1mlに沈殿を溶解させる。こうして調製した全RNAは260 nmの吸光度を測定し、常法に従い濃度を算出する。
前記の方法で得られたワタアブラムシの全RNA鋳型として、ランダムプライマー(Invitrogen社製)及びSuperscript III(Invitrogen社製)を用いて、該試薬に付属される説明書に従いRT−PCRを実施し、cDNA第1鎖を合成する。
前記の方法で得られたワタアブラムシのcDNA第1鎖を鋳型として、配列番号4及び5で示されるオリゴヌクレオチドプライマーとPfu Ultra HF Taq polymerase (Stratagene社製)とを用いてかつ前述のcDNAを鋳型として、該試薬に付属される説明書に従ってPCR増幅を行う。PCRの条件は、94℃、10分間、続いて94℃、20秒間、53℃、20秒間、72℃、3分間を35サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。
以上のようにして配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む配列番号3で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを取得することが可能である。
【0078】
<第2の取得方法>
ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、配列番号2又は3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを基にして、前記の部位特異的変異導入法であるアンバー変異を利用する方法、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等によって変異が導入されたポリヌクレオチドを作製することによっても得ることが可能である。
【0079】
<第3の取得方法>
ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、配列番号2又は3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等をプローブとしたハイブリダイゼーション法によっても取得可能である。より具体的には、前記のSambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーション法に従い実施可能である。
【0080】
<第4の取得方法>
ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、既知の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を基にプライマーを作製し、PCRによって取得することも可能である。具体的には、チャバネゴキブリ(Blatella germanica)等の他の昆虫種におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ相同遺伝子を得るために、Codehop program(Fred Hutchinson Cancer Research Center が運営するBlocks Protein Analysis Server のウェブサイトから公的に利用可能 http://blocks.fhcrc.org/blocks/codehop.html)を利用してディジェネレートプライマーを設計する。この時、前述のワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子配列及び既に公知であるキイロショウジョウバエ(NCBI accession number P07668)、線虫 Caenorhabditi elegans(P32756)、ガンビエハマダラカ(XP_312586)等のアミノ酸配列を参考にする。選択した昆虫種におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ相同遺伝子の部分配列は、該昆虫種由来のcDNA第1鎖を鋳型とした一連のPCRにより増幅する。ここで、鋳型とするcDNA第1鎖は前述のSuperscript IIIを用いた方法により調製する。PCRには、フォワード及びリバースプライマーとしてそれぞれのディジェネレートプライマーと、Amplitaq Gold (Applied Biosystems社製)とを用いて、該試薬に付属される説明書に従って行う。PCRの条件は後述のようなタッチダウンPCRとする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、60℃から1サイクルにつき1℃の減少を伴い11サイクルで50℃まで変化させて、1分間、72℃、1分30秒間を10サイクルとし、更に94℃、30秒間、50℃、1分間、72℃、1分30秒間を25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。PCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、塩基配列を決定する。
次に、得られた昆虫のコリンアセチルトランスフェラーゼ相同遺伝子の部分配列に対する特異的プライマーを設計し、全長配列を獲得するために3' RACE PCR 又は5' RACE PCRを行う。
3’RACE PCRは、SMART PCR cDNA Synthesis Kit (Clontech社製)を用いて、昆虫の全RNAより調製されたcDNA第1鎖を鋳型として、該キットに付属の説明書に従って行う。5’RACE PCRは、5’/3’RACE Kit, 2nd Generation (Roche社製)を用いて、昆虫の全RNAより調製されたcDNA第1鎖を鋳型として、該キットに付属の説明書に従って行う。
3’RACE反応には、目的の遺伝子配列に特異的なフォワードプライマーと、SMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているuniversal primer mix (UPM)をリバースプライマーとして用いる。PCRの条件は後述のようなタッチダウンPCRとする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、20秒間、60℃から1サイクルにつき1℃の減少を伴い11サイクルで50℃まで変化させて20秒間、72℃、2分間を10サイクルとし、更に94℃、20秒間、50℃、20秒間、72℃、3分間を25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
1回目のPCRで明確な増幅産物が得られない場合には、1回目のPCR産物を鋳型としてnested PCRを行う。プライマーは、1回目のPCRに用いた特異的プライマーよりも内側に設計された特異的なフォワードプライマーと、SMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているNUP primerをリバースプライマーとして用いる。PCRの条件は、95℃、10分間、続いて95℃、20秒間、50℃、20秒間、72℃、3分間を35サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
5’RACE反応には、5’/3’RACE Kit, 2nd Generationに同梱されているOligo-d(T)-anchor primer1をフォワードプライマーとし、目的の遺伝子配列に特異的なリバースプライマーを用いる。PCRの条件は後述のようなタッチダウンPCRとする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、58℃から1サイクルにつき1℃の減少を伴い11サイクルで48℃まで変化させて30秒間、72℃、2分間を10サイクルとし、更に94℃、30秒間、48℃、1分間、72℃、2分間を25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
1回目のPCRで明確な増幅産物が得られない場合には、1回目のPCR産物を鋳型としてnested PCRを行う。プライマーは、5’/3’RACE Kit, 2nd Generationに同梱されているPCR Anchor Primerをフォワードプライマーとし、1回目のPCRに用いた特異的プライマーよりも内側に設計された特異的なリバースプライマーを用いる。PCRの条件は後述のようにする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、15秒間、55℃、30秒間、72℃、40秒間を10サイクルとし、更に94℃、15秒間、55℃、30秒間、72℃、40秒から1サイクルにつき20秒の増加を伴い、25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
以上の配列決定により、昆虫のコリンアセチルトランスフェラーゼのN末端領域をコードする5'末端配列及びC末端領域をコードする3'末端配列を明らかにする。
このようにして、ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、既知の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を基にプライマーを作製し、PCRによって取得することができる。
【0081】
ポリヌクレオチド群Bの塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション法を用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得に使用することができる。
本発明における取得方法には、ハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、が含まれる。以降に各工程を具体的に説明する。
【0082】
ハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、及び検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程は、例えば「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols In Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons,Inc.ISBN0-471-50338-X等に記載される方法に準じて、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドをプローブとして用いることによって実施可能である。
具体的には例えば、配列番号2で示される塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するDNAを、Random Primed DNA Labelling Kit(ベーリンガー社製)、Random Primer DNA Labelling Kit Ver.2(宝酒造社製)、ECL Direct Nucleic Acid Labelling and Ditection System(Amersham biosciences社製)、Megaprime DNA-labelling system(Amersham biosciences社製)等を用いた公知の方法によってラジオアイソトープ標識又は蛍光標識することによって、これをプローブとして使用することができる。
【0083】
ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、ストリンジェントな条件をあげることができ、具体的には例えば、6×SSC(0.9M NaCl、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1%(w/v) フィコール400、0.1%(w/v) ポリビニルピロリドン、0.1%BSA)、0.5%(w/v) SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、又は100μg/ml変性サケ精子DNAを含むDIG EASY Hyb溶液(ベーリンガーマンハイム社)中で、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、更に0.1×SSC(0.015M NaCl、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件をあげることができる。
【0084】
より具体的には、例えば、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドを鋳型にしてMegaprime DNA-labelling system(アマシムファルマシアバイオテク社製)を用いてキット指定の反応液を用いることにより32Pでラベルしたプローブを作成することが出来る。このプローブを用いて定法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行い、6×SSC(0.9M NaCl、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1%(w/v) フィコール400、0.1%(w/v) ポリビニルピロリドン、0.1%BSA)、0.5%(w/v) SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、又は100μg/ml変性サケ精子DNAを含むDIG EASY Hyb溶液(ベーリンガーマンハイム社)中で、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、更に0.1×SSC(0.015M NaCl、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、68℃で30分間保温することでハイブリダイズするポリヌクレオチド(を含むコロニー)を検出することができる。こうして、ハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出し、また検出された所望のポリヌクレオチドを特定することができる。
【0085】
特定された所望のポリヌクレオチドを回収するためには、前記の方法で検出、特定されたポリヌクレオチドを含むコロニーから、例えば「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されるアルカリ法等の方法に準じて、プラスミドDNAを回収することによって実施することができる。尚、回収された所望のポリヌクレオチド(プラスミドDNA)の塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol., 94, 441, 1975、Sanger,F, & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 5463, 1977等に記載される)により確認することができる。この際、例えば市販のTermo Seqenase II dye terminator cycle sequencing kit(Amersham biosciences社製)、Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)等を用いることができる。
【0086】
ポリヌクレオチド群Bの塩基配列の部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドは、PCRを用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得に使用することができる。より具体的には、配列番号4又は5で示される塩基配列からなるポリペプチドが挙げられる。本発明における取得方法には、PCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程、増幅された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、が含まれる。以降に各工程を具体的に説明する。
【0087】
PCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程では、具体的には、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列の部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列から、約20bpから約40bp程度の塩基配列、例えば配列番号2及び配列番号2に対して相補性を有する配列から選択した塩基配列に基づいて設計、合成したDNAをプライマーのセットとして用いることができ、例えば、配列番号4で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと配列番号5で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとのセットをプライマーのセットとして挙げることができる。PCR反応液は例えば前記のような方法で調製したcDNAライブラリーに市販のPCRキット指定の反応液を添加して調製する。反応条件は使用するプライマーセットによって変えることができるが、例えば、94℃で10秒間保温した後、94℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で3分間のサイクルを40サイクル程度繰り返し、更に72℃で3分間保温する条件や、94℃で2分間保温し、その後約8℃で3分間保温した後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で4分間のサイクルを40サイクル程度繰り返す条件、或いは、94℃で5秒間次いで72℃で4分間の保温を1サイクルとしてこれを5から10サイクル行い、更に、94℃で5秒間次いで70℃で4分間の保温を1サイクルとしてこれを20から40サイクル程度行う条件を使用することができる。かかるPCRには、例えば、PfuUltra High Fidelity polymerase (Stratagene社製)、Amplitaq Gold (Applied Biosystems社製)、Takara HeraculaseTM(宝酒造社製)、Advantage cDNA PCR Kit(クロンテック社製)に含まれるDNAポリメラーゼ、TaKaRa Ex Taq(宝酒造社製)、PLATINUMTM PCR SUPER Mix(ライフテックオリエンタル社製)等を用いることができる。
【0088】
PCRによって増幅された所望のポリヌクレオチドを特定するためには、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される方法等に準じたアガロースゲル電気泳動によって分子量を測定することにより実施することが可能である。また、増幅された所望のポリヌクレオチドを、市販のDNAシーケンシング反応キット、例えば、Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)等を用いて、該キットに付属される説明書に従ってシーケンシング反応を行い、DNAシーケンサー3100(Applied Biosystems社製)等を用いて解析することによって、増幅断片の塩基配列を読解することもできる。
【0089】
特定された所望のポリヌクレオチドを回収する方法としては、例えば前記のアガロースゲル電気泳動によって特定されたポリヌクレオチドを、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される方法等に準じてアガロースゲルから精製、回収することができる。また、こうして回収されたポリヌクレオチドやPCRによって増幅された所望のポリヌクレオチドは、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、や「Current Protocols In Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons,Inc.ISBN0-471-50338-X等に記載される通常の方法に準じてベクターにクローニングすることができる。用いるベクターとしては例えば、pUCA119(宝酒造社製)、pTVA118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)等を利用することができる。尚、クローニングされた前記DNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol., 94, 441, 1975、Sanger,F, & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 5463, 1977等に記載される)により確認することができる。この際、例えば市販のTermo Seqenase II dye terminator cycle sequencing kit(Amersham biosciences社製)、Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)等を用いることができる。
【0090】
尚、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列の部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドは、PCR法のみならず、前記のハイブリダイゼーション法を用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得にも使用することが可能である。より具体的には、配列番号4又は5で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0091】
前記群Bに示されるアミノ酸配列を有する蛋白質を製造する方法としては、ポリヌクレオチド群Bが導入された形質転換体を培養し、産生された該蛋白質を回収する方法があげられる。また、ここで用いられる形質転換体を作製するためには、ポリヌクレオチド群Bをバクテリオファージ由来のプロモーターに機能可能な形で連結した断片を含む環状ポリヌクレオチドを作製する等の作業が必要である。以下、該方法について詳細に説明する。
また、前記コリンアセチルトランスフェラーゼを用いた有害生物防除能力の検定方法に用いるコリンアセチルトランスフェラーゼも、用いるコリンアセチルトランスフェラーゼをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを用いて、同様の方法で群Aに示される蛋白質を製造、取得することが可能である。
【0092】
バクテリオファージ由来のプロモーターとは、バクテリオファージのゲノムに含まれる遺伝子のプロモーターを意味する。中でも外来遺伝子を発現するために使われるバクテリオファージのプロモーターは、例えば、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ、SP6RNAポリメラーゼ遺伝子のプロモーターがあげられる。
【0093】
本発明において「機能可能な形で連結する」とは、目的の遺伝子が使用する転写系において転写され得るように、プロモーター配列を含むポリヌクレオチド断片の下流に目的の遺伝子を含むポリヌクレオチド断片を連結させることを意味する。具体的には、例えば、後述のT7RNAポリメラーゼ遺伝子のプロモーターを使用する場合には、T7RNAポリメラーゼ遺伝子のプロモーターの下流に目的の遺伝子を含むポリヌクレオチド断片を連結すればよい。また、例えば、T7RNAポリメラーゼ遺伝子プロモーター以外のプロモーターを用いる場合には、T7RNAポリメラーゼ遺伝子プロモーター以外のプロモーター配列を含むポリヌクレオチド断片の下流に目的の遺伝子を含むポリヌクレオチドを連結することも可能である。より具体的には、例えばT7RNAポリメラーゼ遺伝子プロモーターを利用したプラスミドpET41a(+)(Novagen社製)ベクターを用いる場合には、T7RNAポリメラーゼ遺伝子プロモーターの下流に位置するNcoI、EcoRV、BamHI、EcoRI、StuI、PstI、SacI、SalI、HindIII、NotI、EagI、XhoI等の制限酵素サイトに目的の遺伝子を連結することによって、機能可能な形で連結することができる。
【0094】
本発明において「環状ポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチド鎖の端が結合して環状になったポリヌクレオチドであり、具体例として、プラスミドDNA、バクミドDNA、等の他に多くの細菌の染色体DNA、があげられる。
【0095】
プラスミドDNAは、比較的低分子の環状ポリヌクレオチドであり、例としては、大腸菌での遺伝子クローニングや遺伝子発現に用いられるpET(Novagen社製)やpBluescriptII(Stratagene社製)等が挙げられる。また、バキュロウィルス発現カセットを含むpFastBac1、pFastBac HT A、pFastBac HT B、pFastBac HT C、pFastBac Dual、pBlueBacII (Invitrogen社製)、pAcSG2 (Pharmingen社製)等が挙げられる。
【0096】
バクミドDNAは、バキュロウィルスゲノムを含むBAC(bacterial artificial chromosome)からなる高分子量のDNAであり、例えば大腸菌DH10BacTM に含まれるbMON14272 (136 kb) (Invitrogen社製)等が挙げられる。バクミドDNAは、巨大プラスミドとして大腸菌細胞の中で自己複製し、バキュロウィルスプロモーターの制御下の外来遺伝子発現カセットを含んでいる。
【0097】
前記群Bに示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをバクテリオファージ由来のプロモーターに機能可能な形で連結してなる環状ポリヌクレオチドは、具体的には、例えば、バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片を含む環状ポリヌクレオチドであり、例えば以下に示す方法に従い製造、取得することが可能である。
【0098】
上記方法に従ってクローニングされたワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドDNAを鋳型として、BamHI制限酵素サイトを付加したコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子に特異的なプライマーとXhoI制限酵素サイトを付加したコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子に特異的なプライマーを用いて、コリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片をPCR増幅する。得られたPCR産物をBamHI及びXhoIで切断し、得られる約2.2kbpのワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片を、あらかじめBamHI及びXhoIで処理したプラスミドベクターpET41a(+)(Novagen社製)とライゲーションする。こうして得られるプラスミドは、バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片を含む環状ポリヌクレオチドの一例である。
【0099】
また、同様に前記群Bに示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチドをベクターに連結して環状ポリヌクレオチドを製造することができる。
【0100】
本発明において「複製開始点」とは、宿主細胞内で自らを複製するために必要とされる特定のDNA配列である。複製開始点の例として、細菌のプラスミドでは、colE1、f1、pUC等が挙げられる。
【0101】
形質転換体とは、外来のポリヌクレオチドが細胞に導入されることによって遺伝的に改変された真核生物細胞或いは原核生物細胞である。形質転換体としては、例えば、大腸菌での遺伝子クローニングや遺伝子発現に用いられるpET(Novagen社製)やpBluescriptII(Stratagene社製)等のプラスミドが導入されて形質転換された大腸菌細胞等が挙げられる。また、宿主細胞へのDNAの導入技術としては、トランスフォーメーション、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポーレーション等が挙げられる。
【0102】
前記群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体とは、例えば、バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片が導入された形質転換大腸菌、が挙げられる。具体的には、以下の方法に従って作製することが可能である。
【0103】
前記ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片がBamHIサイト及びXhoIサイト間に挿入されたプラスミドベクターpET41a(+)(Novagen社製)は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される方法に従い大腸菌細胞に導入することによって形質転換体を作製することができる。また、前記の、バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼプロモーターとワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む断片が挿入されたプラスミドDNAを用いて、大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセル(Invitrogen社製)に付属される説明書に記載される方法に従い、大腸菌を形質転換することによって、形質転換体を得ることが可能である。
【0104】
前記の方法で作製された形質転換体を培養して、産生された昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼを回収することによってコリンアセチルトランスフェラーゼを製造することができる。
例えば、コリンアセチルトランスフェラーゼは大腸菌発現系によって製造可能である。この発現系は、異種蛋白質の大量発現系として原核生物の発現系で最もよく使用される系である。大腸菌は遺伝的にまた生理学的にも最もよく解析された生物であり、取り扱いも容易で、多くの技術が適用可能である。また、生育が早く、安価な培地で生育するため、異種蛋白質の合成能力が極めて高い系である。
【0105】
また、コリンアセチルトランスフェラーゼは、組換えバキュロウィルス/昆虫培養細胞Sf9発現系を用いることによっても製造することができる。この発現系は最も強力で用途の広い真核生物細胞を用いた蛋白質発現系の一つであり、かび、植物、細菌、ウイルス等多くの生物材料由来の外来遺伝子発現系である。
【0106】
また、形質転換体の培養によって産生された昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼは、超音波破砕やプレンチプレス、ダイノミル等の方法によって破砕され、細胞粗抽出液に含まれる形で回収し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー等の、酵素精製に通常用いられる手法を用いて精製物を得ることができる。また、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼがHisタグ等のペプチド断片が結合した形で産生されるようにしておけば、細胞粗抽出液からHisタグを特異的に認識し結合するアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって迅速に精製物を得ることが可能である。このような方法によって、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼを製造することが可能である。
例えば、上記の、バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片が導入された形質転換大腸菌を培養し、更には大腸菌をフレンチプレスで破砕し、カラムクロマトグラフィーによって精製することによって、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼを製造することができる。
より具体的には、例えば、前記の方法によって作製された、バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むDNA断片を含む組換え大腸菌を37℃、250rpmで一晩旋回培養する。翌朝、培養液を50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で1/100に希釈し、終濃度が10μMになるようにIPTGを添加して、、22℃、60rpmで4日間培養し、大腸菌内で組み換えコリンアセチルトランスフェラーゼタンパク質を生産させる。誘導及び発現後、培養液を7000rpmで10分間遠心分離することにより、大腸菌を回収する。回収された大腸菌にbreaking buffer[0.1M Sodium phosphate buffer pH 7.6、Complete EDTA-free protease inhibitor cocktail(Roche社製)1錠]を添加してけん濁し、フレンチプレス(Thermo Spectronic社製)を用いて付属の説明書に記載される方法に従い、1300-1500 psiの圧力で大腸菌を破砕する。この破砕液を14,000rpm、2℃、60分間遠心分離し得られた上清を0.45μmのフィルターでろ過する。次に、HisバッファーA(0.1M Sodium phosphate buffer pH 7.6、10%グリセロール)で平衡化されたHiTrap Chelating HP (Amersham biosciences社製)又はHisTrap HP (Amersham biosciences社製)カラムにサンプルを注入した後、HisバッファーA95%とHisバッファーB(0.1M Sodium phosphate buffer pH 7.6、500mMイミダゾール、10%グリセロール)5%の割合で混合したバッファーを、カラム体積の5倍量用いてカラムを洗浄する。次いで、HisバッファーA90%とHisバッファーB10%の割合で混合したバッファーを、カラム体積の15倍量用いてカラムを洗浄する。次いで、HisバッファーA85%とHisバッファーB15%の割合で混合したバッファーを、カラム体積の15倍量用いてカラムを洗浄する。次いで、HisバッファーA80%とHisバッファーB20%の割合で混合したバッファーを、カラム体積の15倍量用いてカラムを洗浄する。最後に、HisバッファーA60%とHisバッファーB40%の割合で混合したバッファーを用意し、カラム体積の15倍量をカラムに注入する。この溶出画分を1mlずつに分画して保存し、一部をSDS-PAGEで解析して115Kdaのコリンアセチルトランスフェラーゼが含まれる画分を特定する。それらの画分が目的のコリンアセチルトランスフェラーゼを多く含む溶液である。
【0107】
前記群Bに示されるアミノ酸配列からなる昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼは、研究ツールとして使用することができる。例えば、前記の有害生物防除能力の検定や、有害生物防除能力を有する化学物質の探索、等の研究を実施するための研究ツールとして使用することができる。また、例えば、コリンアセチルトランスフェラーゼに作用する薬剤の作用機構を解析する研究においても、コリンアセチルトランスフェラーゼは研究ツールとして利用可能である。
【0108】
また、前記の群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドやそれらに対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチド、また前記の群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチド、配列番号4又は5で示される塩基配列からなるポリペプチドは、研究ツールとして使用することができる。例えば、これらの一部は、前記のようにコリンアセチルトランスフェラーゼの製造法に用いられるポリヌクレオチドとして機能する。また一部は、前記のようにして、PCRを用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得、或いは、ハイブリダイゼーションを用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得、等を実施するための重要な研究ツールとして使用できる。
【0109】
特に、有害生物防除剤のスクリーニングを実施するにあたっては、スクリーニングのために実施する実験の実験ツールとして使用できる。具体的には、前記の有害生物防除能力の検定や、有害生物防除能力を有する化学物質の探索、等を実施するにあたって行う実験のための実験ツールとして使用することができる。
【0110】
更に本発明は、被験物質について、該被験物質が有する昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力、蓄積又は管理する手段(以下、手段aと記すこともある。)、前記データ情報を所望の条件に基づき照会又は検索する手段(以下、手段bと記すこともある。)、及び、照会又は検索された結果を表示又は出力する手段(以下、手段cと記すこともある。)を具備することを特徴とするシステム(以下、本発明システムと記すこともある。)をも含むものである。
【0111】
まず、手段aについて説明する。手段aは、前記のとおり、前記被験物質が有する昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力した後、入力された該情報を蓄積又は管理する手段である。かかる情報は、入力手段1により入力され、通常記憶手段2に記憶される。
入力手段としては、例えばキーボード、マウス等の該情報の入力可能なものが挙げられる。該情報の入力及び蓄積又は管理が完了すれば、次の手段bに進む。尚、該情報の蓄積又は管理には、コンピュータ等のハードウェアとOS及びデータベース管理等のソフトウェアとを用いて、データ構造を有する情報を入力し、適当な記憶装置、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に蓄積することにより、大量のデータを効率良く蓄積し管理すればよい。
【0112】
手段bについて説明する。手段bは、前記のとおり、手段aにより蓄積又は管理された前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会又は検索する手段である。かかる情報は、入力手段1により照会又は検索のための条件が入力され、通常記憶手段2に記憶された上記情報の中で該条件に合致したものを選択すれば、次の手段cに進む。選択された結果は、通常、記憶手段2に記憶され、更に表示出力手段3により表示可能となっている。
【0113】
手段cについて説明する。手段cは、前記のとおり、照会又は検索された結果を表示又は出力する手段である。表示出力手段3としては、例えばディスプレイ、プリンタ等が挙げられ、該結果をコンピュータのディスプレイ装置に表示するか、印刷等により紙上に出力するか等すればよい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて更に詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
実施例1 (ワタアブラムシ及びチャバネゴキブリからの全RNAの抽出)
(1)ワタアブラムシからの全RNAの抽出
ポット植えのキュウリ葉上で飼育されたワタアブラムシ(Aphis gossypii)の成虫及び幼虫の混合した集団630mgを葉上から細筆又は小さなハケでかきとり、これを液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて粉末状になるまで破砕した。凍結された破砕粉体からRNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを単離した。
乳鉢中の凍結された破砕粉体に10mlのISOGENを加えた後、前記破砕粉体を10分間磨砕した。この時、乳鉢は氷上に置いた状態で操作した。磨砕後、液体状の試料をピペットにて15mlチューブに移し、これに2mlのクロロホルム(和光純薬工業社製)を加えた。直ちに該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで遠心分離した後、上層の水相を5mlずつ2本の新しいチューブに移した。ぞれぞれのチューブにISOGENを5ml加え、直ちに該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで再度遠心分離した後、上層の水相10mlをそれぞれ新しい50mlチューブに移した。続いて、ぞれぞれのチューブにイソプロパノール(和光純薬工業社製)を10ml加えた後、該混合物を氷上で30分間静置した。静置された混合物を4℃、10分間、12,000×gで遠心分離することにより、RNAを沈殿させた。上清を除去した後、残渣に20mlの70%エタノールを加えた。得られた混合物を4℃、5分間、10,000×gで分離した。上清を除き、チューブの口を下にして3分間静置し、沈殿した全RNAを軽く乾燥させてから、該沈殿を市販のRNase-free water(ナカライテスク社製)1mlに溶解させた。このようにして調製された全RNAの濃度(260 nmの吸光度から算出)は6.9mg/mlであった。
【0116】
(2)ゴキブリからの全RNAの抽出
人工飼育されたチャバネゴキブリ(Blattella germanica)を成虫、幼虫、卵鞘の3種類の試料として準備した。成虫としては雄10頭及び雌(卵鞘を取り除いた個体)10頭で1.1g、幼虫としては雄10頭及び雌10頭で1.0g、卵鞘としては26個で1.0gを用いた。3種類の試料を別々の乳鉢及び乳棒を用いて、液体窒素中で粉末状になるまで破砕した。凍結された破砕粉体からRNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを単離した。乳鉢中の凍結された破砕粉体に10mlのISOGENを加えた後、前記破砕粉体を10分間磨砕した。この時、乳鉢は氷上に置いた状態で操作した。磨砕後、液体状の試料をピペットにて15mlチューブに移し、更に2mlのクロロホルム(和光純薬工業社製)を加えた。直ちに該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで遠心分離した後、上層の水相を5mlずつ2本の新しいチューブに移した。ぞれぞれのチューブにISOGENを5ml加え、直ちに該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで再度遠心分離した後、上層の水相10mlをそれぞれ新しい50mlチューブに移した。続いて、ぞれぞれのチューブにイソプロパノール(和光純薬工業社製)を10ml加えた後、該混合物を氷上で30分間静置した。静置された混合物を4℃、10分間、12,000×gで遠心分離することにより、RNAを沈殿させた。上清を除去した後、残渣に20mlの70%エタノールを加えた。得られた混合物を4℃、5分間、10,000×gで遠心分離した。上清を除去した後、チューブの口を下にして3分間静置し、沈殿した全RNAを軽く乾燥させてから、該沈殿を市販のRNase-free water(ナカライテスク社製)1mlに溶解させた。このようにして調製された全RNAの濃度(260 nmの吸光度から算出)は、成虫由来の全RNAの場合には1.1mg/ml、幼虫由来の全RNAの場合には2.5mg/ml、卵鞘由来の全RNAの場合には1.4mg/mlであった。
【0117】
実施例2 (ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子の単離)
ワタアブラムシ全RNAからのcDNA第1鎖は、RT-PCR用のRandom Primers (Invitrogen社製)及びSuperscript III (Invitrogen社製)を用いて、該試薬に付属される説明書に従って合成された。
ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼcDNA全長は、該遺伝子配列に特異的なプライマーである配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとPfU Ultra HF Taq polymerase (Stratagene社製)とを用いて、かつ実施例1に示したワタアブラムシのcDNAを鋳型として、該試薬に付属される説明書に従ってPCRにより増幅した。尚、PCRの条件は、94℃、5分間、続いて94℃、20秒間、53℃、20秒間、72℃、3分間を35サイクルとし、最後に72℃、10分間とした。PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得した。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、配列番号3に示す2360bpからなる該DNA断片の塩基配列を決定した。この塩基配列情報をもとに、配列番号2に示す2211bpからなるワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼのORFを決定した。配列番号3の塩基配列から推定されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列であった。
【0118】
実施例3 (ゴキブリのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子の単離)
チャバネゴキブリ(Blatella germanica)等の他の昆虫種におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ相同遺伝子を得るために、Codehop program(Fred Hutchinson Cancer Research Center が運営するBlocks Protein Analysis Server のウェブサイトから公的に利用可能 http://blocks.fhcrc.org/blocks/codehop.html)を利用してディジェネレートプライマーを設計する。この時、前述のワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列及び既に公知であるキイロショウジョウバエ(NCBI accession number P07668)、線虫 Caenorhabditi elegans(P32756)、ガンビエハマダラカ(XP_312586)等のアミノ酸配列を参考にする。
選択された昆虫種におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ相同遺伝子の部分配列は、該昆虫種由来のcDNA第1鎖を鋳型とした一連のPCRにより増幅する。ここで、鋳型とするcDNA第1鎖は、前述のSuperscript IIIを用いた方法により調製する。PCRには、フォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれのディジェネレートプライマーとAmplitaq Gold (Applied Biosystems社製)とを用いて、該試薬に付属される説明書に従ってPCRにより増幅する。PCRの条件は後述のようなタッチダウンPCRとする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、60℃から1サイクルにつき1℃の減少を伴い11サイクルで50℃まで変化させて1分間、72℃、1分30秒間を10サイクルとし、更に94℃、30秒間、50℃、1分間、72℃、1分30秒間を25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、塩基配列を決定する。
このようにして、チャバネゴキブリのコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子の部分配列を取得する。
次に、得られた昆虫のコリンアセチルトランスフェラーゼ相同遺伝子の部分配列に対する特異的プライマーを設計し、該遺伝子の全長配列を獲得するために、3' RACE PCR 又は5' RACE PCRを実施する。3’RACE PCRは、SMART PCR cDNA Synthesis Kit (Clontech社製)を用いて、昆虫の全RNAより調製されたcDNA第1鎖を鋳型として、該キットに付属の説明書に従って行う。5’RACE PCRは、5’/3’RACE Kit, 2nd Generation (Roche社製)を用いて、昆虫の全RNAより調製されたcDNA第1鎖を鋳型として、該キットに付属の説明書に従って行う。
3’RACE反応には、目的の遺伝子配列に特異的なフォワードプライマーと、SMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているuniversal primer mix (UPM)をリバースプライマーとして用いる。PCRの条件は後述のようなタッチダウンPCRとする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、20秒間、60℃から1サイクルにつき1℃の減少を伴い11サイクルで50℃まで変化させて20秒間、72℃、2分間を10サイクルとし、更に94℃、20秒間、50℃、20秒間、72℃、3分間を25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
1回目のPCRで明確な増幅産物が得られない場合には、1回目のPCR産物を鋳型としてnested PCRを行う。プライマーは、1回目のPCRに用いた特異的プライマーよりも内側に設計された特異的なフォワードプライマーと、SMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているNUP primerをリバースプライマーとして用いる。PCRの条件は、95℃、10分間、続いて95℃、20秒間、50℃、20秒間、72℃、3分間を35サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
5’RACE反応には、5’/3’RACE Kit, 2nd Generationに同梱されているOligo-d(T)-anchor primer1をフォワードプライマーとし、目的の遺伝子配列に特異的なリバースプライマーを用いる。PCRの条件は後述のようなタッチダウンPCRとする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、58℃から1サイクルにつき1℃の減少を伴い11サイクルで48℃まで変化させて30秒間、72℃、2分間を10サイクルとし、更に94℃、30秒間、48℃、1分間、72℃、2分間を25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
1回目のPCRで明確な増幅産物が得られない場合には、1回目のPCR産物を鋳型としてnested PCRを行う。プライマーは、5’/3’RACE Kit, 2nd Generationに同梱されているPCR Anchor Primerをフォワードプライマーとし、1回目のPCRに用いた特異的プライマーよりも内側に設計された特異的なリバースプライマーを用いる。PCRの条件は後述のようにする。すなわち、最初に94℃、10分間、続いて94℃、15秒間、55℃、30秒間、72℃、40秒間を10サイクルとし、更に94℃、15秒間、55℃、30秒間、72℃、40秒から1サイクルにつき20秒の増加を伴い、25サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得する。更にこのようにして取得されたDNA断片をpCR4-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
以上の配列決定により、昆虫のコリンアセチルトランスフェラーゼのN末端領域をコードする5'末端配列及びC末端領域をコードする3'末端配列を明らかにする。
【0119】
実施例4 (組み換えプラスミドの構築)
大腸菌発現用ベクターにクローニングするコリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子断片は、実施例2に示すように該遺伝子配列に特異的なプライマーである配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとPfU Ultra HF Taq polymerase (Stratagene社製)とを用いて、かつ実施例1に示したワタアブラムシcDNAを鋳型として、該試薬に付属の説明書に従ってPCRにより増幅した。尚、PCRの条件は、94℃、5分間、続いて94℃、20秒間、53℃、20秒間、72℃、3分間を35サイクルとし、最後に72℃、10分間とした。PCR産物は、Quiaquick PCR Purification Kit(Quiagen社製)を用いて、該キットに付属の説明書に従って精製した。配列番号4で示すプライマーはBamHI制限酵素サイトを含んでおり、配列番号5で示すプライマーはXhoI制限酵素サイトを含んでいるので、精製後のDNA断片をBamHIとXhoIで切断した。ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼのBamHI/XhoI DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分析し、単離・精製後、大腸菌発現用ベクターpET41a(+)(Novagen社製)のBamHI/XhoIクローニングサイトにライゲーションした。以下、得られたベクターをpGBJ005と名付けた。組み換えコリンアセチルトランスフェラーゼタンパク質は2つのHisタグと1つのGSTタグが付加された形で翻訳されるため、1021アミノ酸からなる組み換えタンパク質が得られることとなった。
Qiafilter Plasmid Maxiprep(Quiagen社製)を用いて、Qiagen Plasmid Purification Handbookに記載の方法に従って、pGBJ005を調製した。
【0120】
実施例5 (組み換え大腸菌の作製)
1ng/ulの濃度のpGBJ005を1ul用いて、大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセル(Invitrogen社製)を添付の説明書に従って形質転換した。50mg/Lのカナマイシン(Sigma社製)を含むLB寒天培地上で、37℃、一晩培養することにより、形質転換された大腸菌のコロニーを得た。
【0121】
実施例6 (大腸菌でのコリンアセチルトランスフェラーゼの発現)
pGBJ005により形質転換された大腸菌BL21(DE3)を、50mg/Lのカナマイシン(Sigma社製)を含むLB培地にて、37℃、250rpmで一晩旋回培養した。翌朝、培養液を50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で1/100に希釈し、終濃度が10μMになるようにIPTGを添加して、、22℃、60rpmで4日間培養し、大腸菌内で組み換えコリンアセチルトランスフェラーゼタンパク質を生産させた。誘導及び発現後、培養液を7000rpmで10分間遠心分離することにより、大腸菌を回収した。上清は廃棄し、回収した大腸菌は液体窒素により瞬間凍結後、使用時まで-80℃に保存した。
【0122】
実施例7 (コリンアセチルトランスフェラーゼの精製)
ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼを、N末端にGST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)タグとHisタグを、C末端にも6XHisタグを付加した状態で、pET41a(+)中にクローニングした。コリンアセチルトランスフェラーゼ組み換えタンパク質は、Hisタグを利用して精製した。
(1)粗抽出液の調製
凍結保存しておいた誘導後の大腸菌BL21(DE3)をを、30 ml のbreaking buffer[0.1M Sodium phosphate buffer pH 7.6、Complete EDTA-free protease inhibitor cocktail(Roche社製)1錠]に再懸濁した後、該細胞再懸濁液を試料として、フレンチプレス(Thermo Spectronic社製)を用いてbreaking buffer中で破砕した。大腸菌破砕のための圧力は1300-1500 psiであった。フレンチプレス処理後の大腸菌破砕液を14,000rpm、2℃、60分間遠心分離することにより、上清を回収し、次いで回収された上清に対して0.45μmフィルター処理を施した後、これを氷上で保存した。
(2)Hisタグによる精製
HiTrap Chelating HP (Amersham biosciences社製)又はHisTrap HP (Amersham biosciences社製)カラムを用いて、該カラムに付属される説明書に従って、金属アフィニティクロマトグラフィーにより精製した。大容量の精製には、Chelating Fast Flow Sepharose(Amersham biosciences社製)を充填したXK-16/20 column(Amersham biosciences社製)を用いた。カラムには、Chelating Fast Flow Sepharose(Amersham biosciences社製)を充填した。尚、精製の各ステップではAKTA-FPLC (Amersham biosciences社製)を使用した。
HiTrap、HisTrap、 自ら充填したXK-16/20の各アフィニティーカラムは、該カラムに付属の説明書に従って調製した。結合バッファーであるバッファーAの組成は、0.1M Sodium phosphate buffer pH 7.6、10%グリセロールとした。溶出バッファーであるバッファーBの組成は、0.1M Sodium phosphate buffer pH 7.6、500mMイミダゾール、10%グリセロールとした。ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼのHisタグによる精製は以下の手順で行った。
(i)サンプルの注入
(ii)カラムの体積(CV)の5倍量の95%バッファーA/5%バッファーB(25mMイミダゾール)による非結合サンプルの溶出
(iii)CVの15倍量の90%バッファーA/10%バッファーB(50mMイミダゾール)による洗浄
(iv)CVの15倍量の85%バッファーA/15%バッファーB(75mMイミダゾール)による洗浄
(v)CVの15倍量の80%バッファーA/20%バッファーB(100mMイミダゾール)による洗浄
(vi)CV15倍量の60%バッファーA/40%バッファーB(200mMイミダゾール)による精製タンパク質の溶出
(vii)CVの5倍量の100 %バッファーB(500 mMイミダゾール)によるカラムの洗浄
得られた60%バッファーA/40%バッファーBの溶出画分を集め、タンパク質濃度の測定、SDS-PAGE解析、ウエスタンブロット解析に用いるまで氷上で保存した。
標準的な手法を用いたクマシー染色によるSDS-PAGE解析及びウエスタンブロット解析によって、ワタアブラムシの組み換えコリンアセチルトランスフェラーゼタンパク質が得られた溶出画分に存在することを確認した。発現させたコリンアセチルトランスフェラーゼタンパク質の分子量は115kDaであったので、電気泳動の際に最適な分解能を得るために8%ポリアクリルアミドゲルを用いた。
ポリアクリルアミドゲルのクマシー染色には、次の染色液と脱色液を用いた。染色液の組成は、1g/L クマシーブリリアントブルーR、50%(v/v)メタノール、12%(v/v)酢酸、38%(v/v)蒸留水とし、十分に混和後、ろ過により溶け残ったクマシーブリリアントブルーRを取り除いた。脱色液の組成は、25%(v/v)メタノール、10%(v/v)酢酸、65%(v/v)蒸留水とした。
ウエスタンブロット解析には、一次抗体としてanti-His(H15) sc-803 rabbit polyclonal IgG antibody (tebubio社製)を1/500に希釈して使用した。二次抗体としては、goat anti-rabbit-HRP (Pierce社製)を1/10000希釈して用いた。
SDS-PAGE及びウエスタンブロットにより分析した後、目的の溶出画分を集めて、タンパク質濃度を測定した。タンパク質濃度は、Pre-diluted Protein Assay Standards(Pierce社製)の Bovine Serum Albumin Fraction V Setをスタンダードとし、Bradford Bio-Rad protein assay(Bio-Rad社製)を用いて、ブラッドフォード法により測定した。手順は該キットに付属の説明書に従った。
次いで、集めた溶出画分を数本に分けて、直ちに液体窒素により瞬間凍結した後、-80℃で保存した。
【0123】
実施例8 (コリンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する化合物の選抜)
コリンアセチルトランスフェラーゼ活性を変化させる化合物の選抜は、実施例7で調製したワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼを用いた試験管内反応系に、試験化合物を添加することによって変化するコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定し、評価する系で実施した。
ワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定は、アセチルCoA及びコリンを基質としたコリンアセチルトランスフェラーゼの酵素反応の後、DTNB(5,5'-dithio-bis(2-nitrobenzoic acid))を用いて、酵素反応によって生じた遊離のCoAを定量することにより実施した。DTNBは、チオール基と反応し、412nmに吸収極大を持つ黄色のTNB(5-thio-2-nitrobenzoic acid)を生成する。このTNBを比色定量することにより、コリンアセチルトランスフェラーゼの活性を算出した。
該活性測定に、最終濃度が10μMとなるようにDMSOに溶解された試験化合物を含ませた時のワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定を実施した。また、試験化合物に代わりにDMSOを含ませた時のワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定を実施した。次いで試験化合物に代わりにDMSOを含ませた時のワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定値に対する、DMSOに溶解された試験化合物を含ませた時のワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定値の割合(%)を算出し、その算出値を100%から差し引いた値を阻害度(%)とした。各試験化合物における結果を、実施例9の結果と合わせて実施例9における表4に示した。
また上記の活性測定に、最終濃度が各々、100μM、30μM、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μMとなるような濃度でDMSOに溶解された試験化合物を含ませた時のワタアブラムシのコリンアセチルトランスフェラーゼの活性測定を実施した。各試験化合物における各濃度での結果から濃度依存性試験解析ソフトXL fit(IDBS社製)を用いてIC50(μM)を算出した。その結果を、実施例9の結果と合わせて実施例10における表5に示した。
【0124】
実施例9 (殺虫活性試験)
下記の組成(表3)からなる滅菌済み人工飼料を調製した。次いで、最終濃度が50ppmとなるようにDMSOに溶解された試験化合物を該人工飼料の0.5%容量添加・混合すること以外は、Handbook of Insect Rearing Vol.1 (Elsevier Science Publisers 1985) 35頁〜36頁に記載される方法と同様にしてワタアブラムシを飼育した。飼育6日後にワタアブラムシの生存数を調査し、次の式により防除価を求めることにより、有意な防除価(例えば、防除価が30%以上)を示したものを殺虫活性有りとして判定した。
防除価(%)={1−(Cb×Tai)/(Cai×Tb)}×100
尚、式中の文字は以下の意味を表す。
Cb:無処理区の処理前の虫の生存数
Cai:無処理区の観察時の虫の生存数
Tb:処理区の処理前の虫の生存数
Tai:処理区の観察時の虫の生存数
その結果を、実施例8の結果と合わせて、実施例9における表4に示した。
【0125】
【表3】

【0126】
【表4】

【0127】
実施例10 (殺虫活性試験)
実施例9と同様にして殺虫活性試験を実施した結果を、実施例8の結果と合わせて、実施例10における表5に示した。
【0128】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明により、標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、昆虫や有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等が提供可能となる。
【配列表フリーテキスト】
【0130】
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤。
【請求項2】
昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼが、ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼであることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
有害生物の生理状態に変化を与える薬剤が、有害生物防除剤であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの反応を阻害する能力であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項5】
有効成分として、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含有することを特徴とする有害生物防除剤。
【請求項6】
化学物質が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの反応を阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする請求項5記載の有害生物防除剤。
【請求項7】
化学物質が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの無細胞反応系において、
該化学物質の存在濃度が10μM以上の場合に、該化学物質が存在しない場合よりもコリンアセチルトランスフェラーゼの活性が低くなるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする請求項6記載の有害生物防除剤。
【請求項8】
化学物質が、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼとアセチルCoAおよびコリンとの反応の無細胞反応系において、
100μM以下のIC50となるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする請求項6記載の有害生物防除剤。
【請求項9】
被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、
(1)下記の群Aから選択されるコリンアセチルトランスフェラーゼと被験物質との接触系内における該コリンアセチルトランスフェラーゼの活性を測定する第一工程、及び
(2)第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき前記被験物質の有害生物防除能力を評価する第二工程、
を有することを特徴とする方法。
<群A>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(e)配列番号2又は3で示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質
(f)配列番号2又は3で示される塩基配列と50%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(g)配列番号2又は3で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(h)昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列からなる蛋白質
(i)ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列からなる蛋白質
【請求項10】
請求項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする有害生物防除能力を有する被験物質の探索方法。
【請求項11】
請求項10記載の探索方法により選抜された被験物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする有害生物防除剤。
【請求項12】
請求項5、6、7、8又は11のいずれか一項記載の有害生物防除剤の有効量を、保護すべき作物、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することを特徴とする有害生物防除方法。
【請求項13】
請求項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する被験物質を特定し、特定された有害生物防除能力を有する被験物質と有害生物とを接触させることを特徴とする有害生物防除方法。
【請求項14】
下記の群Bのいずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ;
<群B>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と50%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列と75%以上の配列類似性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(e)配列番号2又は3で示される塩基配列を有するアミノ酸配列
(f)配列番号2又は3で示される塩基配列と50%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(g)配列番号2又は3で示される塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列
(h)ワタアブラムシ由来のコリンアセチルトランスフェラーゼが有するアミノ酸配列
【請求項15】
有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの使用。
【請求項16】
有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、請求項14記載の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの使用。
【請求項17】
請求項14記載のコリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列番号2又は3で示される塩基配列からなることを特徴とする請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドが有する塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドの部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項21】
配列番号4又は5で示される塩基配列からなることを特徴とする請求項20記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
コリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、
請求項20又は21記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程、
増幅された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、
特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項23】
コリンアセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、
請求項19、20又は21のいずれか一項記載のポリヌクレオチドをプローブとして用いたハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、
検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、
特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドを、バクテリオファージ由来のプロモーターに機能可能な形で連結してなることを特徴とする環状ポリヌクレオチド。
【請求項25】
バクテリオファージ由来のプロモーターが、T7RNAポリメラーゼ遺伝子のプロモーターであることを特徴とする請求項24記載の環状ポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項24又は25記載の環状ポリヌクレオチドであって、
宿主細胞内で自己複製の為の複製開始点を有することを特徴とする環状ポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドをベクターに連結することを特徴とする環状ポリヌクレオチドの製造方法。
【請求項28】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドが導入されてなることを特徴とする形質転換体。
【請求項29】
形質転換体が形質転換大腸菌であることを特徴とする請求項28記載の形質転換体。
【請求項30】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体の製造方法。
【請求項31】
請求項28又は29記載の形質転換体を培養し、産生された昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼを回収する工程を有することを特徴とするコリンアセチルトランスフェラーゼの製造方法。
【請求項32】
研究ツールとしての、請求項14記載の昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼ或いは請求項17〜21のいずれか一項記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項33】
研究ツールが有害生物防除剤をスクリーニングするための実験ツールであることを特徴とする請求項32記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項34】
被験物質について、
該被験物質が有する昆虫由来のコリンアセチルトランスフェラーゼの活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力、蓄積、又は管理する手段、
該データ情報を所望の条件に基づき照会又は検索する手段、及び、
照会又は検索された結果を表示又は出力する手段、
を具備することを特徴とするシステム。

【公開番号】特開2009−126812(P2009−126812A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302699(P2007−302699)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】