説明

昆虫病原性線虫の貯蔵

【発明の詳細な説明】
技術分野 本発明は昆虫病原性線虫の貯蔵に関する。より詳細には、本発明は線虫の第三期感染性幼虫の貯蔵及び輸送に関するものである。
背景 スタイナーネマチダエ(Steinernematidae)及びヘテロールハブジチダエ(Heterorhabditidae)の各科における昆虫病原性線虫が各種の害虫の抑制に極めて有力であることが益々明らかとなっている。これら線虫の感染性幼虫(J3)(これらは餌なしに環境中で数ケ月にわたり生存しうる)は昆虫を捜し出し、昆虫の血体腔中に侵入し、かつそこで特殊な共生細菌(ゼノルハブズス・スペシース)(Xenorhabdus species)を放出する。この細菌は昆虫を1〜2日以内に死滅させ、かつ線虫繁殖に適する条件を与える。R.A.ベディングは、これら線虫を大規模にインビトロで大量飼育するための満足しうる方法を開発した。その技術は、たとえば米国特許第4,178,366号及び第4,334,498号、オーストラリア特許第509,879号各公報、並びにネマトロジカ、第27巻、第109〜114頁(1981)の論文(「害虫の農場抑制に関するネオアプレクタナ及びヘテロールハブジチス・スペシース(線虫)の低コストのインビトロ大量生産」と題する)、及びアナルス・オブ・アプライド・バイオロジー、第104巻、第117〜120頁(1984)の論文(「昆虫寄生性線虫ネオアプレクタナ・スペシース及びヘテロールハブジチス・スペシースの大規模生産、貯蔵及び輸送」と題する)に記載されている。しかしながら、これら線虫の大量かつ高密度の貯蔵及び輸送には問題が残されている。
上記アナルス・オブ・アプライド・バイオロジーの論文において、ベディングは破砕されたポリエーテルポリウレタンフォームをポレエチレン袋内に貯蔵された線虫のキャリヤとして使用することを記載している。残念ながら、このようにして貯蔵された線虫は絶えず強制通気することを必要とし、フォームからの線虫の取出しには1〜2時間を要し、かつこの方法はヘテロールハブジチス・スペシースの貯蔵に適していなかった。T.ユカワ及びJ.M.ピットは、国際特許出願PCT/AU85/00020号公報において、線虫を貯蔵する各種の方法を記載している。この公報における幾つかの情報は従来公開された研究に基づくものであり、幾つかの結果は再現性がない。しかしながら、この公報に開示された1つの技術は確かに創作であり、1種類の線虫につき良好に作用する。この技術は、粉末活性炭と共に感染性線虫の幼虫を貯蔵することを含む。次いで、線虫は嫌気性又は実質的に嫌気性の条件下で高密度にて相当長時間にわたり生存することができる。しかしながら、この方法は多くの重大な欠点を有する。すなわち:(a)これはスタイナーネマ・フェルチアエ(Steinernema feltiae)の種類にしか満足に作用しない。
(b)活性炭は取扱が極めて不便であり、かつ包装をドラフト装置内で行なわねばならない。さらに、このようにして包装された線虫の受容体は取扱不便な活性炭である。
(c)活性炭は高価である。
(d)線虫は、包装物を約15℃より高い温度に露出すると数日間以内で死滅する(恐らく酸素を消費する線虫活性が増大する結果)。
(e)包装物が約60×106個より多い線虫を含有すれば、問題が生ずる。
(f)包装物の厚さに制約が存在する。何故なら、主として線虫は、活性炭と混合する場合には中心の線虫が活性炭の外層によって包囲される場合しか良好に生存せず、これは厚い包装物では生じないからである。
発明の開示 本発明の目的は、産業目的で昆虫病原性線虫を貯蔵しかつ輸送するため、従来用いられ或いは提案されている方法よりも優秀な方法を提供することにある。
この方法は粘土を用いて達成される。粘土を用いて、(a)線虫と粘土との均質混合物を形成し(本発明の第1の特徴);
(b)2つの粘土層とそれら間の線虫クリームの層とよりなるサンドイッチを形成し(本発明の第2の特徴);或いは(c)線虫クリームを徐々に乾燥させる(本発明の第3の特徴)。
線虫を貯蔵するためのマトリックス若しくは基質材料として粘土を用いる利点は、3種類存在すると思われる。第1に、線虫スタイナーネマ属及びヘテロールハブジチス属の感染性幼虫(J3)は、その運動が多かれ少なかれ拘束されかつしたがって線虫が運動している際とほぼ同程度のエネルギーを利用せず、したがって貯蔵食物源を保持するよう貯蔵された場合、極めて長期間にわたり生存すると思われる。この種の拘束を粘土によって得ることができる。第2に、線虫自身により生産される分泌生成物は線虫に対し毒性となりうるが、これら生成物は粘土中に吸着されると思われる。第3に、線虫(一般的に)を100%未満の相対湿度に露出させれば、これらはたとえばトレハロース及びイノシトール(これら糖類はさらに乾燥する作用に対し保護を与えることが知られている)を生産するよう生理学的に反応し、かつ線虫はしばしば本体の螺旋形成及び運動の制限を伴う休止期に突入すると思われる。線虫貯蔵に関する粘土基質の使用は、この作用をもたらす。
本発明の第3の特徴においては、乾燥粘土の乾燥作用を用ることにより上記段階を充分越えて線虫を徐々に乾燥し、大部分の内部水を喪失するがその後に再加水して顕著な死滅を生ぜしめることなく活性に復帰しうるようにする。この方法は、線虫の呼吸を停止させ(勿論、その運動も停止させる)かつ全酵素活性を著しく低下させるという利点を有する。さらに、低い水活性において汚染微生物の増殖が全て防止される。かくして、本発明によるこの方法は、J3線虫を長期間にわたり恐らく数年間にわたり貯蔵させうる能力を有する。しかしながら、長期間の貯蔵はまだ試験されていないことに注目すべきである。
粘土(均質組合型として或いはサンドイッチとして)に貯蔵された線虫は、線虫と粘土とを水中に分散させて再活性化することができる。粘土によって線虫を徐々に乾燥させた場合、これらは先ず最初に線虫と粘土との組合物を100%の相対湿度を有するが遊離水を含まない環境に保持し、次いで線虫を水中に分散させることにより、最も効果的に再活性化される。
したがって、本発明によれば、線虫の第三期感染性幼虫(J3)の貯蔵方法は、純(clean)J3線虫の水性濃厚物(クリーム)と粘土との均質混合物を形成し、前記粘土が約33%(重量)〜約67%(重量)の混合物からなることを特徴とする。
さらに本発明によれば、線虫の第三期感染性幼虫(J3)の貯蔵方法は、、純J3線虫の水性クリームの薄層を第1の粘土層に載置し、次いで線虫の層を第2の粘土層で覆うことを特徴とする。
さらに本発明によれば、線虫の貯蔵方法(これは純J3線虫のクリームを徐々に乾燥させることを含む)は、(a)純J3線虫の水性クリームの層を吸収性基質の上に展延し、(b)吸収性基盤を乾燥粘土(すなわち周囲湿気にて貯蔵された粘土)の層若しくは床に載置し、(c)線虫クリームと基質と粘土との組合物を約95%の相対湿度を有する環境に少なくとも3日間にわたって保持し、かつ(d)次いで組合物を位置せしめる環境の相対湿度を数週間かけて約60%の数値に達するまで減少させることを特徴とする。
線虫/粘土の組合物は、この組合物をその後に嫌気性環境に保持するか或いは著量割合の酸素(たとえば空気)を含有する環境に保持するかどうかとは無関係に、線虫を貯蔵する。実際には、完全に嫌気性の貯蔵条件は好適でない。何故なら、貯蔵された線虫の生存率が特に酸素の不存在下では10℃より高い温度にてずっと急速に低下することが判明したからである。約2%を越える酸素のレベルが貯蔵環境に望ましいが、空気の酸素含有量よりも充分低いレベルは確実に線虫の生存に対し悪影響がない。
或る種の粘土をJ3昆虫病原性線虫と組合せかつ表面水の大部分をこの組合物から除去すれば、広範囲の温度にわたり線虫を貯蔵した後の寿命が著しく向上することを突き止めた。さらに、この種の貯蔵後の線虫は、単に組合物を水と混合することにより水中に容易に懸濁させることができ、次いで懸濁を昆虫抑制のため土壌若しくは植物に直接施すことができる。これら線虫に向上した貯蔵性を与えることが判明した各種の粘土のうち、アタパルジャイト粘土として知られた群に属するものが他の試験した種類よりもずっと良好な貯蔵性を与える。しかしながら、珪藻類粘土及び珪藻土は、特に本発明に用いた場合、従来の方法よりもずっと向上した貯蔵性を与える材料である。
本発明の貯蔵法を、次の線虫を包含する公知種類の昆虫病原性線虫の大部分につき試験して成功した:スタイナーネマ・フェルチアエ(Strinernema feltiae)[従来ネオアプレクタナ・カルポカプサエ(Neoaplectana carpocapsae)として知られ、本出願の目的でスタイナーネマと言う記載は全てネオアプレクタナの同意語として用いられる]、スタイナーネマ・ビビオニス(Strinernema bibionis)、スタイナーネマ・グラセリ(Strinernema glaseri)スタイナーネマ・アフィニス(Strinernema affinis)、スタイナーネマ・アノマリ(Strinernema anomali)、ヘテロールハブジチス・ヘリオチジス(Heterorhabditis heliothidis)、ヘテロールハブジチス・バクテリオホラ(Heterorhabditis bacteriophora)、ヘテロールハブジチス・メジジス(Heterorhabditis megidis)、並びにまだ開示されてない6種の新たな種類のオーストラリア、支那及び米国からのスタイナーネマ、2種の新たなオーストラリアからのスタイナー線虫の新種、並びにまだ開示されてない4種の新たなそれぞれオーストラリア、支那、キューバ及びヨーロッパからのヘテロールハブジチスの種類。試験した全種類の昆虫病原性線虫は、このようにして貯蔵に供しうることが証明された。したがって、これら種類の線虫は2種の異なる線虫科(スタイナーネマチダエ及びヘテロールハブジチダエ)に属しかつそこに存在するほぼ全部の種類を包含するので、これら線虫は全てこのようにして貯蔵しうることが明らかである。
線虫と粘土との組合物に貯蔵するため線虫を作成する方法の詳細な説明、並びに本発明の実施例につき以下記載する。
貯蔵前の線虫の作成 粘土と組合せる前に線虫を処理する方法は、その後の寿命に対し重要な影響を及ぼす。明らかに線虫をたとえば高温度、酸素欠乏、病原体若しくは細菌毒素への露出、又は機械的若しくは化学的被害のような悪条件に露出すれば、その寿命が低下する。これらの因子の他に、貯蔵前の線虫によるその内部食物源の利用を最小限まで減少させるべきである。さらに線虫は、粘土に加える際に全混合物の微生物破壊が促進されないよう、出来るだけ綺麗にすることが重要である。
本発明の効果を確認すべく行なった試験で用いた線虫は全て、R.A.ベディングによる上記2種の論文に記載された方法により或いはこれら方法の変法によって飼育した。しかしながら、線虫はインビボにて昆虫上で或いは液体培養で飼育することもでき、ただし線虫は培地から残留する著量の外来物質を含まずかつJ3以外の成長期の線虫を比較的含まないものとする(好ましくは成虫の線虫が存在せず、かつ確実に線虫の2%以下を成長とすべきである)。固体培地からの線虫の取出しはR.A.ベディングによる上記1984年の論文に記載された通りであり、或いはこの技術の変法によって行なわれ、さらに洗浄はタンク内での沈降に続く水のデカンテーションによって行った。線虫を予め洗浄した後にタンク内で2日間維持して、事前の沈降により除去されなかった培地の小粒子を細菌分解させたが、この期間中に水懸濁物における線虫をコンプレッサにより通気した。この通気期間も、貯蔵性に悪影響を及ぼす成虫及びその他の非−J3期の集団を減少させるのに役立つ。
さらに洗浄した後に線虫を沈降させ、過剰の水を排水し、次いで線虫の沈降物を水を通過させるが線虫を通過させない布でランニングされた篩にタンクからポンプ輸送した。このようにして水を排水した。幾つかの試験においては残留水の多くを絞り出す前に、線虫を含む布縁部を纏めてさらに水を除去した。得られた線虫の濃厚物(クリーム)は、関連する線虫の種類及び残留する線虫間の水量に応じて1g当り0.5〜30×106個のJ3線虫を含有した。
これらの手順を殆んどの試験に採用したが、或る場合には布篩にかける前に線虫濃厚物に0.1%のホルムアルデヒドを添加して、飼育培地の残留粒子を架橋により安定化させたが、この培地はそうしないと汚染微生物の増殖を促進する。
線虫と粘土基質との組合せ 一般に、線虫クリームを粘土マトリックス若しくは基質に分散させるには線虫クリームを秤量し、かつこの重量の1/2〜2倍の量の粘土基質をクリーム中に充分混入して均質混合物を作成した。混合は、粘土と線虫クリームとを手によって慎重に混練し、線虫若しくは粘土の塊をこの過程で連続破壊することにより最も良好に達成された。一般に、最初は粘土の幾分かを線虫クリームと混合しなかった。何故なら、得られる混合物の水活性が重要となるからである。初期混合物の水活性をできるだけ0.99に近く確立した後、より多量の粘土を添加した(より低い水活性が必要とされる場合)。水活性は、混合の間に電子プローブを用いて連続監視した。チップの形態の粘土を用いる場合、初期混合物を作成した後に2〜4時間経過させ、次いで水活性を多量の粘土の添加によって調節した。何故なら、チップの内側と外側との間における水含有量の平衡化は瞬間的でないからである。磨砕され或いは粉末化されたアタパルジャイト粘土の場合、平衡を生ぜしめるのに数分以上を必要としなかった。操作員は線虫クリームと粘土との混合に熟練するので、プローブの反復使用は殆んど必要とされなかった。
線虫クリームを粘土と混合した後、得られた組合物を15℃に4時間放置し(初期の線虫活性及び吸収熱は温度を上昇させる)、次いでポリエチレン袋、ガラスジャー、小瓶若しくはチューブ、プラスチック食品などの容器、ワックス処理された段ボール、カートン若しくはアルミニウム箱などの各所の容器に貯蔵した。或る場合には、線虫と粘土との組合物をアルミニウム箔若しくはプラスチック(ポリエチレン若しくはポリプロピレン)食品ラップに包んだ。線虫と粘土との組合物の包装を冷凍下で貯蔵しない場合、包装物の内部と外部との間でガス交換を行なって(水損失を最小化させながら)、嫌気性条件が容器内に発生しないようにした。
本発明を実施するために用いた技術を広範に説明したが、以下、実施例により本発明を例示の目的で説明する。
実施例1A.約6,000×106個のJ3スタイナーネマ・フェルチアエA11株で構成され、上記のように作成されたがそこから水が積極的に絞り出されていないクリーム3.2kgをプラスチック容器(魚籠)に入れた。アタパルジャイト粘土の焼成チップ3.2kgを手により慎重に混合して、できるだけ均質な混合物を作成した。プラスチック容器の内側に存在する深さほぼ10cmの混合物をアルミニウム箔で覆って乾燥を減少させ、かつ15℃に4時間放置すると共に2時間後に再混合した。次いで、線虫/粘土混合物を200gづつ20ロット及び100gづつ24ロットにて丸型の500ml及び250mlプラスチック食品容器に包装した。各容器を約9/10まで満たし、したがって頂部に僅かの空気スペースを有した。各容器の壁部に直径約2mmの穴10個を設け、これらの穴を容器の周囲にかつその上縁部に隣接して均一分配させた。これら穴部は、外部環境と容器頂部における空気スペースとの間に接続部を形成した。8個の各寸法の容器を4℃に保つと共に、4個の各寸法の容器をそれぞれ15℃、23℃及び28℃に保った。100gづつ2個のロットをそれぞれ−8℃及び−18℃に置いた。2週間毎に(第1表から見られるように、4℃で貯蔵した容器の場合を除く)、各温度からの容器1個の全内容物を水に添加し、5分間放置し、次いで攪拌して容器らの線虫の全部を水中に懸濁させた。次いで、線虫とアタパルジャイト粘土の小粒子とをデカントし(大粒子を沈降物として残す)、かつ試料希釈の後に計数した。結果を第1表に示す。
B.約3,800×106個のスタイナーネマ・ビビオニスからなるクリーム2kgを上記Aと同様に処理したが、生成物である線虫/粘土組合物はそれぞれ40個の250ml容器に100gのロットとして包装した。次いで、これら容器を上記Aで用いたと同じ温度で貯蔵し、かつ同様にサンプリングした。これらの結果も第1表に示す。
C.ヘテロールハブジチス・ヘリオチジスNZ株の2kgを上記Bにけると同様に処理したが、ただし8個の包装物を15℃に保ち、4個のみを4℃に保った(先の実験は4℃で貯蔵された線虫の貧弱な生存を示した)。貯蔵された組合物を再び2週間間隔でサンプリングし、それらの結果をも第1表に示す。


これら種類の全て及び多数の他の種類の少量を各種の容器で試験して、一般に第1表に示した結果とは殆んど異ならない結果を得た。しかしながら、15℃より高い温度にて密封ポリエチレン袋で貯蔵したスタイナー線虫は、他の容器で貯蔵したものと対比してやや貧弱な生存性を示した。
R.A.ベディング、A.S.モリニュー及びR.J.アクールストによる「ヘテロールハブジチス・スペシース、ネオアプレクタナ・スペシース及びスタイナーネマ・クラウセイ:昆虫に対する種間及び種内の感染性の差」と題する論文[エキスペリメンタル・パラシトロジー、第55巻、第249〜255頁(1982)]に記載された技術を用いて、最も長期間放置した試料に生存し続けた線虫の感染性を、イエバエ(ルシリア・カプリナ)幼虫に対し測定した。感染性は、新たに収穫された線虫と同様であることが判明した。
実施例2A.約4,000×106個のJ3線虫からなるスタイナーネマ・フェルチアエA11株の2kgを実施例1に記載したように得ると共にクリーム化させ、次いで予め40メッシュ(BSS)篩で篩分した1.5kgの粉砕焼成アタパルジャイト粘土と混合した。得られた混合物のPf値は4.7と測定された。得られた組合物100gづつ35ロットを実施例1におけるように穿孔したそれぞれワックス処理された段ボール箱に貯蔵し、次いで28℃、23℃、15℃及び4℃に保ち、1週間毎に検査した。
B.約1,200×106個のJ3線虫からなるスタイナーネマ・グラセリNC34株の1kgを、上記Aと同様であるが0.45kgの粉砕されかつ篩分されたアタパルジャイト粘土と混合した。組合物200gづつ8ロットをそれぞれ500mlのプラスチック容器に貯蔵し、かつこれら容器の4個を28℃に保ちかつ4個を23℃に保った。試料を1週間間隔で試験し、それらの結果を第2表に示す。
C.1,500×106個のJ3線虫からなるヘテロールハブジチス・ヘリオチジスC1株の1kgを0.75kgの粉砕されかつ篩分されたアタパルジャイト粘土と混合した。組合物200gづつ8ロットをそれぞれ500mlのプラスチック容器に貯蔵し、かつこれらの4個を23℃に保つと共に4個を15℃に保った。貯蔵された試料を実施例1に記載したように定期的に検査した。J3線虫に関する生存%のデータを第2表に示す。


実施例3 布フィルタで濃縮し、次いで過剰の水を絞り出したスタイナーネマ・フェルチアエ・メキシコ株J3線虫の1kgを平滑表面の上に深さ2cmまで展延し、かつそれぞれ約100gのブロックに切断した。これらブロックをそれぞれ500mlのプラスチック容器内における粉砕されかつ焼成されたアタパルジャイト粘土の深さ2cmの床に載置し、かつアタパルジャイト粘土で覆って、全部で50gのアタパルジャイト粘土が各容器に存在するようにした。直径2mmの一連の穴を容器の壁部にその縁部近くで作成した。これら線虫を23℃若しくは28℃に保ち、これらは実施例2の貯蔵された線虫及び粘土の組合物よりも低い死亡率を1ケ月後に有した。
実施例4 スタイナーネマ・フェルチアエA11株J3線虫の水性クリーム1kgを粉砕アタパルジャイト粘土の床上に載置された濾紙の上に深さ約2cmにて展延し、さらに明らかに隙間の水が全部除去されかつ線虫が完全に硬くなるまで放置した。次いで、濾紙上の線虫の層を厚さ2.5cmの壁部を備えた密封自在なポリスチレン箱の底部における深さ2cmの他の粉砕アタパルジャイト粘土の床に載置した。次いで、箱を約95%の相対湿度が箱内で発生しかつ線虫が数日間かけて水を徐々に喪失するよう封止した。多量の線虫及び粘土を同時に処理すべく、ポリスチレン箱内に多くの層を存在させることができるであるう。線虫が乾燥するにつれて、そこから出る水蒸気の量が減少しかつ箱内の相対湿度も徐々に低下した。2週間後、箱内の相対湿度は約60%となり、したがって線虫の水活性は0.6となった。このような低い水活性では微生物増殖が生じえないであろう。線虫の運動は全て停止し(したがってエネルギーを保持する)、かつ線虫は貯蔵に際し酸素を必要としなかった。この段階で、乾燥した線虫を水に入れることにより線虫を容易に生き返らせることができる。次いで、線虫/粘土(層状)組合物の試料を封止容器内に貯蔵した。各容器は、濾紙で覆われかつ次いで中間の水分含有線虫の層で覆われた0.6の水活性を有するアタパルジャイト粘土の床を有した(乾燥用床からのアタパルジャイトを用いた)。23℃で貯蔵してから2ケ月後、先ず最初にほぼ100%の相対湿度の環境(しかしながら自由水は含まない)に24時間置くことにより、約90%の線虫が生き返った。
本発明者は、本発明のこの実施例で用いる貯蔵容器を開発した。この容器は蓋を備え、ここに頂部が開放しかつ底端部が閉鎖された多孔質チューブを挿通する。多孔質チューブは中央の芯により包囲され、この芯は蓋から容器中へ下降するが容器の内容物には達しない。多孔質チューブの頂部を、線虫を使用に供する前日まで封止する。次いで、シールを除去しかつ多孔質チューブに水を満たす。このチューブは、線虫上に遊離水が滴下しないよう芯が充分飽和される寸法を有する。飽和した芯を用いることにより、容器内の相対湿度は100%まで上昇し、かつ線虫は極めてゆっくり水和される(これは活性への最大復帰の条件である)。次いで、線虫を水中に落下させ、ここで数分間以内に生き返りかつ使用に供される。
以上、本発明の特定実施例につき説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく上記実施例に関し多くの改変をなしうることが当業者には了解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】線虫の第三期感染性幼虫(J3)の貯蔵方法において、純J3線虫の水性クリームと粘土との均質混合物を形成し、前記粘土は約33%(重量)〜約67%(重量)の混合物からなることを特徴とする貯蔵方法。
【請求項2】線虫の水性クリームを粘土のチップと混練し、次いで得られた混合物の水活性を調節することにより混合を行なう請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】粘土と線虫クリームとの混合に際し、混合物の水活性を監視する工程を含む請求の範囲第2項記載の方法。
【請求項4】線虫の第三期感染性幼虫(J3)の貯蔵方法において、(a)純J3線虫の水性クリームの薄層を第1の粘土層に載置し、(b)線虫の層を第2の粘土層で覆うことを特徴とする貯蔵方法。
【請求項5】第1の粘土層とクリームの層とがそれぞれ約2cmの厚さを有する請求の範囲第4項記載の方法。
【請求項6】線虫の第三期感染性幼虫(J3)の貯蔵方法において、(a)純J3線虫の水性クリームの層を吸収性基質上に展延し、(b)吸収性基質を乾燥粘土の層若しくは床に載置し、(c)線虫クリームと基質と粘土との組合物を約95%の相対湿度を有する環境に少なくとも3日間にわたって保持し、かつ(d)次いで組合物を保持する環境の相対湿度を数週間かけて約60%の数値に達するまで減少させることを特徴とする貯蔵方法。
【請求項7】吸収性基質が濾紙の層である請求の範囲第6項記載の方法。
【請求項8】粘土を磨砕しかつ篩分けした後に、この方法に使用する請求の範囲第1項、第4項又は第5項記載の方法。
【請求項9】粘土をアタパルジャイト粘土、珪藻類粘土及び珪藻土よりなる群から選択する請求の範囲第1〜8項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】方法の生成物を空気及び水に対し不透過性である容器若しくはラップの内部に約4〜約28℃の請求の範囲の温度で保持する工程をさらに含む請求の範囲第1〜9項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】請求の範囲第1〜9項のいずれか一項に記載の方法の生成物を冷凍下で貯蔵しない場合、容器若しくはラップを穿孔する請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項12】線虫をスタイナーネマチダ工科及びヘテロールハブジデチダ工科よりなる昆虫病原性線虫の群から選択する請求の範囲第1〜11項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】J3線虫の水性クリームにおける成虫の線虫の最大濃度が2%である請求の範囲第1〜12項のいずれか一項に記載の方法。

【特許番号】第2568119号
【登録日】平成8年(1996)10月3日
【発行日】平成8年(1996)12月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−504051
【出願日】昭和63年(1988)5月5日
【公表番号】特表平2−503913
【公表日】平成2年(1990)11月15日
【国際出願番号】PCT/AU88/00127
【国際公開番号】WO88/08668
【国際公開日】昭和63年(1988)11月17日
【出願人】(999999999)コモンウェルス サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション
【参考文献】
【文献】特表 昭61−501392(JP,A)