説明

昇華型熱転写用受像体

【目的】 熱転写の際にカールをせず、かつ、画質が良く、濃度の大きい画像が形成できる昇華型熱転写用受像媒体を提供すること。
【構成】 空隙率が60%以上の紙からなる芯材3の片面に中間層2、その反対面に補強層4を有する基体7の中間層2の上に昇華性染料に染着し易い樹脂からなる染料受容層1を有する受像体である。芯材である紙の繊維の隙間に中空の微粒子を含有している場合、さらに中間層2が内部に微細空孔を有するポリプロピレン樹脂層であると一層優れた効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は昇華型熱転写受像体、特に画質が優れ、かつ、カールを生じない受像体に関する。
【0002】
【従来の技術】昇華型熱転写方式は階調のすぐれた印刷並の画質を与える。この画質は受像体の品質にも左右され、特に受像体の基体の性質に左右される。アート紙等のセルロース原料の紙より合成紙等のフィルム類がよい画質を与える。
【0003】中でもフィルムの内部に空孔を形成して、擬紙化したユポ{王子油化合成紙(株)}のようなポリプロピレン系合成紙が優れた特性を示す。(特開昭62−198497等)
昇華熱転写記録方式において、受像紙の基体としてポリプロピレン系合成紙の様な合成紙を使用した受像体によって画質の優れた画像を得ることが出来るのであるが、空孔を形成するために延伸していたり、使用している材料樹脂の耐熱性が低いという理由から、該記録方式に用いるとプリント時に熱収縮してカールを発生する。
【0004】また、基体がプリントあるいは製造工程中の加熱時に、プラスチックフィルムと比べれば比較的カールを生じにくいといわれているコート紙等の紙類を基体として使用しても染料受容層樹脂及び、染料受容層と基体の間に設けられている樹脂層がプリント時に熱収縮するので受像紙のカールは避けられなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は昇華熱転写時にカールを起さないで、しかも優れた画像を形成できる昇華型熱転写用受像体を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の構成は、特許請求の範囲に記載のとおりの昇華型熱転写用受像体である。
【0007】図面を参照して具体的構成を説明すると、図1に示すように紙3の片面に中間層2を設け、反対面に補強層4を設けたものが基体7である。この基体7の樹脂層2の面に染料受容層1を設けたものが本発明の受像体の一例である。
【0008】この受像体は印字の際に、印字ヘッドの熱により、染料受容層及び基体の染料受容層に近い部分、または中間層が加熱され、熱収縮による応力を生じる。この収縮応力を吸収するために、基体の中心部に空隙率60%以上の紙を配置し、さらに、中間層と補強層の剛性によって受像紙のカールを防止することができる。図2R>2は、紙3の繊維の隙間に中空の粒子5が存在するものでそれ以外は図1に示したものと同じである。
【0009】この受像体は芯材である紙の繊維の隙間に存在する中空の粒子によって、芯材の緩衝性が更に向上するのでサーマルヘッドの圧力を均一化するので形成される画像の質が向上する。
【0010】図3は上記樹脂層2の替りに発泡樹脂層6を設けたものであって、発泡樹脂層6以外は図1に示したものと同じである。
【0011】この受像体は中間層が発泡樹脂層、例えば内部に微細な空孔を有するポリプロピレンフィルムであるので、その緩衝性および断熱性が大きく、画像濃度が大で画質も優れた画像ができる。
【0012】図4は上記図3に示した受像体の基体7の紙3に替り、繊維の隙間に中空粒子5を含有するものである。
【0013】この受像体は芯材である紙が中空の粒子を含有しているので図2で説明した例と同じく、芯材の緩衝性が一層向上し、図2に示した受像体の効果と図3に示した受像体の効果を併せて発揮できるものである。
【0014】以下、本発明の受像体を構成する各層の材料について説明する。
【0015】基体の空隙率が60%以上の紙層は、一般には和紙あるいは渦紙あるいはちり紙のように、繊維同志の間の空間のゆとりがあって繊維が比較的小さい力で動けることが望ましい。また、そのゆとりのある繊維間には適量の中空粒子を存在させて、基体のクッション性を増加し、画質の向上を行うことも出来る。繊維はセルロース繊維等の天然繊維、ポリエステル繊維、PET繊維等の化学繊維等の各種繊維が使用できる。中空の粒子は以下に記すもの等が有る。
【0016】(1)熱膨張性の可塑性物質塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の熱可塑性物質をカプセル壁とする中空の粒子で、粒子内部にプロパン、n−ブタン、イソブタン等の揮発性の膨張剤を含有する物質。
【0017】(具体例)松本油脂社製のマツモトマイクロスフェアーMF30Cケマノーベル社製のExpancel 551,642(2)マイクロカプセル状の中空ポリマーアクリル−スチレン共重合体等の硬い樹脂を殻とし、内部に水が入っており、乾燥時に水が飛び出して中空となるポリマー。
【0018】{(具体例)Rohm&Haas社製のローベイクOP−84J}上記の如き中空の粒子は一般に0.1〜200μm程度の粒子経を有しているが、本発明においては、0.1〜20μm程度の粒子経を有する中空の粒子が好ましく使用される。0.1μm未満では中空の粒子としての十分な断熱効果が得られないし、熱膨張性の可塑性物質を熱膨張して得られるクッション性があって柔軟性に富む中空の粒子は、100μm以下で使用可能となる。
【0019】空隙率が60%以上の紙と染料受容層の間の中間層には、通常の昇華型熱転写用受像媒体の基体として使用されている様なものが用いられる。
【0020】例えば、合成紙、アート紙、上質紙、コート紙、セルロース繊維紙、白PET等のプラスチックフィルム等が使用されるが、なかでも、ポリプロピレン系の合成紙は、良質の画像を形成するのに好適である。特にフィルム法合成紙とファイバー法合成紙から区分するとフィルム法合成紙の分類に入るポリプロピレン系合成紙は、ポリプロピレンを主成分とする組成物をダイ・スリットから押し出し、さらに、冷延伸あるいは熱延伸して作製される。この内部紙化方式でフィルムの内部に空孔が形成されているために、画質は良好である。
【0021】補強層に使用するものは合成紙、アート紙、上質紙、コート紙、セルロース繊維紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等が使用される。補強層はそれを設けることによって、受像紙の剛度を上げることを目的とする。
【0022】染料受容層は例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂等の極性基を有する樹脂を単独若しくは2種以上混合したものを乾燥重量で2〜10g/m2程度になるように形成される。
【0023】染料受容層中にシリコーンオイル、シリコーン樹脂等の離型剤を含有させるか染料受容層の上に表面離型層を設けることが好ましく、離型剤の使用により、転写記録媒体との熱融着防止効果が向上する。
【0024】染料受容層中に離型剤を含有させる場合にはその添加量は、該受容層の樹脂量に対して10重量%以下であることが好ましい。また、離型剤はポリエステル変性シリコーン樹脂の様に昇華性染料に対して染着性を有すると更に好ましい。
【0025】なお、染料受容層中には、充填剤を含有させることもできる。充填剤としてはシリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム等の白色顔料が挙げられ、その添加量は、該受容層の樹脂量に対して、5〜60重量%が好ましい。その他、染料受容層には、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、螢光増白剤等を適宜含有させることもできる。
【0026】
【実施例】以下、具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例に記載の各成分の量(部)は重量部である。
【0027】実施例1微細空孔を有しない白色ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μ、東レ製:E20)の片面にウレタン系接着剤(大日本インキ製LX901とKW75)を塗布(乾燥時塗布量10g/m2)、乾燥し、その面にポリエステル繊維紙(広瀬製紙製ハイスター05TH−60)を重ね合わせ、温度90℃の熱ロール間で押さえて貼着を行った。更にPETフィルムの貼着されていないポリエステル繊維紙の面に、上記ウレタン系接着剤水溶液を塗布、乾燥させた微細空孔を有する合成紙(厚さ60μ、王子油化合成紙製:ユポFPC)を同様にして貼着させて基材を形成した。
【0028】次いで上記基材の白色ポリエチレンテレフタレートフィルム面に下記組成の受容層形成用組成物をワイヤーバーを用いて塗布し乾燥させ、乾燥時塗布量8g/m2の受容層を設け、被熱転写シートを得た。
【0029】
受容層形成用組成物 塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体(電気化 学:デンカビニル#1000GKT) 10部 ポリエステル変性シリコン樹脂(東レダウコーニングシリコー ン社製:AY42−125) 1部 溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=1/1) 83部一方、厚さ6μのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記組成からなる耐熱スリップ層形成用インキ組成物を調製してミヤバー#6で塗布し、温風乾燥した。
【0030】
耐熱スリップ層形成用インキ組成物 ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1) 4.5部 トルエン 45部 メチルエチルケトン 45.5部 リン酸エステル(第一工業製薬製:プライサーフA−208 S)
0.45部 ジイソシアネート「タケネートD−110N」75%酢酸エチ ル溶液 2部上記フィルムを60℃で12時間、オーブン中で加熱して硬化処理した。乾燥後のインキ塗布量は、約1.2g/m2であった。次いで、上記フィルムの耐熱スリップ層とは反対側の面に、下記の組成の感熱昇華転写層形成用インキ組成物を調製し、ミヤバー#10により塗布(塗布量約1.2g/m2)し、温風乾燥して転写層を形成し、熱転写シートを得た。
【0031】
感熱昇華転写層形成用インキ組成物 分散染料(日本化薬製:カヤセットブルー714) 4部 ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1) 4.3部 トルエン 40部 メチルエチルケトン 40部 イソブタノール 10部上記で得られた被熱転写シートの受容層に、上記熱転写シートの転写層を向い合わせて、感熱転写プリンターで熱転写シートの背面側から感熱ヘッドにより最高画像濃度が得られるように加熱して画像形成を行ったところ、画像はザラツキもなく、画像濃度も良好であり、画像を形成した被熱転写シートのカールは殆ど確認されなかった。
【0032】実施例2微細空孔を有しない白色ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm、東レ製:E20)の片面に熱接着で、ポリエステル繊維紙(広瀬製紙製ハイスター05TH−48)を熱貼着した。ポリエステル繊維紙面に、下記組成から成る含浸インキ組成物を塗布、含浸させ乾燥を行った後に、中空粒子の膨張を行った。
【0033】
含浸インキ組成物 中空粒子(松本油化製マツモトマイクロスフェアーMF30C) 20部 ポリビニルアルコール(クラレPVA−117) 20部 水 60部更に、ポリエチレンテレフタレートの貼着されていないポリエステル繊維紙の面に、ウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業製LX901とKW75)を塗布、乾燥させた微細空孔を有する合成紙(厚さ60μm、王子油化合成紙製:ユポFPG)を同様にして貼着させて基材を形成した。
【0034】次いで上記基材の白色ポリエチレンテレフタレートフィルム面に実施例1と同様にして染料受容層を形成し被熱転写シートを作製して画像形成を行ったところ、画像はザラツキもなく、画像濃度も良好であり、画像を形成した被熱転写シートのカールは殆ど確認されなかった。
【0035】実施例3微細空孔に実施例1で用いたのと同じウレタン系接着剤を有する合成紙(厚さ60μm、王子油化合成紙製:ユポFPG)を塗布、乾燥し、その面にポリエステル繊維紙(広瀬製紙製ハイスター05TH−60)を重ね合わせ、温度90℃の熱ロール間で押さえて貼着を行った。更に合成紙の貼着されていないポリエステル繊維紙の面に、上記ウレタン系接着剤を塗布、乾燥させた微細空孔を有する合成紙(厚さ60μ、王子油化合成紙製:ユポFPG)を同様にして貼着させて基材を形成した。
【0036】次いで、上記基材の一方の合成紙面に実施例1と同様にして染料受容層を形成し、被熱転写シートを作製して画像形成を行ったところ、画像はザラツキもなく、画像濃度も良好であり、画像を形成した被熱転写シートのカールは殆ど確認されなかった。
【0037】実施例4微細空孔を有する合成紙(厚さ60μm、王子油化合成紙製:ユポFPG)の片面にウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業性LX901とKW75)を塗布、乾燥し、その面にポリエステル繊維紙(広瀬製紙製ハイスター05TH−60)を重ね合わせ、温度90℃の熱ロール間で押えて貼着を行った。ポリエステル繊維紙面に、実施例2で用いたのと同じ含浸インキ組成物液を塗布、含浸させ乾燥を行った後に中空粒子の膨張を行った。
【0038】更に合成紙の貼着されていないポリエステル繊維紙の面にウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業製LX901とKW75)を塗布、乾燥させた微細空孔を有する合成紙(厚さ60μm、王子油化合成紙製:ユポFPG)を同様にして貼着させて基材を形成した。次いで上記基材の合成紙の一方の面に実施例1と同様にして染料受容層を形成し被熱転写シートを作製して画像形成を行ったところ、画像はザラツキもなく、画像濃度も良好であり、画像を形成した受像シートのカールは殆ど確認されなかった。
【0039】
【発明の効果】以上、説明したように本発明の昇華型熱転写用受像体は熱転写の際にカールすることがなく、かつ、画質が良く、かつ、濃度の大きい画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】以上、本発明の昇華型熱転写用受像体の具体例の断面の模式図である。
【符号の説明】
1 染料受容層
2 中間層
3 紙層
4 補強層
5 中空粒子
6 発泡樹脂層
7 基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 空隙率が60%以上の紙の片面に中間層、反対面に補強層を設けた基体の少なくとも中間層のある面に、昇華性染料に染着し易い樹脂を主成分とした染料受容層を有する昇華型熱転写用受像体。
【請求項2】 紙の繊維の隙間に中空の粒子が存在することを特徴とする請求項1記載の昇華型熱転写用受像体。
【請求項3】 表面に染料受容層を有する樹脂層が、内部に空孔を有するポリプロピレン系の樹脂層であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の昇華型熱転写用受像体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−286260
【公開日】平成5年(1993)11月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−90928
【出願日】平成4年(1992)4月10日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)