説明

昇華型熱転写用受像媒体

【目的】 昇華型熱転写用受像媒体であって、熱転写時に「白抜け」現象の発生を防止する受像媒体を得ることを目的とする。
【構成】 熱昇華性染料を含有した転写層を有する昇華型熱転写記録媒体と組合せて使用される受像媒体であって、基体とこの基体の上面に設けられた染料受容層とから構成され、前記基体が繊維状物質のシートからなり、該シート全体若しくは染料受容層側の部分の繊維状物質の空隙部に重合体粒子又は多孔性樹脂を埋設することを特徴とする昇華型熱転写記録用受像媒体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱昇華性染料を含有した転写層を有する熱転写記録媒体と組み合わせて使用される昇華型熱転写記録用受像媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】昇華型熱転写に用いられる受像媒体としては、従来、合成紙、上質紙、アート紙等の紙類、更にはポリエステルフィルム等の基体上に、熱昇華性染料に対して強い染着性を示す熱可塑性のポリエステル樹脂等を主成分とする染料受容層を塗布等の手段で設けた積層体が用いられている。例えば上質紙、アート紙、コート紙のような紙シート、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成樹脂例えばポリオレフィン、PET、ポリスチレン等のフィルムのような基体上に、ビニール系樹脂又はポリエステル系樹脂等の樹脂から形成された染料受容層を積層したものを昇華型熱転写用受像媒体として使用した例が、特開平3−83686号公報等により知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、受像媒体の基体が樹脂シート等の紙シートでない場合は、感触として紙らしさがないためにハンドリング性が悪く、しかも生産コストが高くなるという欠点がある。一方、基体として紙やコート紙等を使用すると、繊維質のために表面に空隙や凹凸が生じ、昇華した染料が受容層に良好に転写されず、いわゆる白抜けが発生する欠点があった。
【0004】従って、本発明は、紙又は紙と同等な繊維状物質のシートを基体素材として用いるとともに、画像の白抜け現象がなく鮮明な転写画像が得られる昇華型熱転写用受像媒体を提供することをその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、受像媒体の基体として繊維状物質のシートを用い、このシートの繊維間の空隙部に重合体粒子又は多孔性樹脂を埋設することにより、そのシートの紙らしさを損わずに、熱昇華性染料による白抜けのない画像記録を形成することのできる受像媒体を開発し、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明によれば、熱昇華性染料を含有した転写層を有する昇華型熱転写記録媒体と組み合わせて使用される受像媒体であって、基体とこの基体の上面に設けられた染料受容層とから構成され、しかも前記基体が繊維状物質のシートからなり、且つこの繊維状物質の空隙部に重合体粒子又は多孔性樹脂が埋設されていることを特徴とする昇華型熱転写記録用受像媒体が提供される。
【0007】従来使用されて来たこの種の受像媒体と比較して、本発明の受像媒体は基体の構造において全く異なり、従来の受像媒体に見られた欠点が克服されていることが特徴である。
【0008】本発明の受像媒体において、基体の主要構成成分となる繊維状物質のシートは、繊維状物質を慣用の方法でシート状に成形することにより製造できる。繊維状物質としては、例えば木材パルプ、樹皮繊維等の天然植物繊維、合成パルプ、及び再生パルプ、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン等の合成樹脂の繊維、ガラス繊維等の化学繊維が使用される。これらの繊維は白色若しくは無色であることが望ましいが、有色であってもかまわない。これらの繊維状物質のうちで本発明において特に好適なものは、PET等の合成樹脂の繊維や麻などの天然繊維である。これらの繊維状物質は、メルトスピンニング等の慣用の手段で樹脂を繊維状に加工することにより得ることができる。
【0009】本発明で用いる繊維状物質のシートとしては、従来公知のものが使用され、一般的には、空隙率:20〜90vol%のものが用いられる。また、その厚さは、5〜500μmである。このような繊維状物質のシートの具体例としては、和紙や、洋紙等の抄造紙類、表面が紙屑として形成された合成紙、不織布等が例示される。
【0010】また、本発明で用いられる繊維状物質のシートは、その密度が0.6g/cm3以下のものが好ましく、特に0.20〜0.50g/cm3程度のものが好ましい。即ち、このような密度の小さい繊維状物質は繊維間の空間にゆとりが有るため、繊維自体が比較的小さな力で動けるからである。
【0011】本発明で用いる基体は、前記繊維状物質のシートに、重合体粒子又は多孔性樹脂を埋設させることによって得ることができる。この場合、重合体粒子は、中実であってもよいが、中空であるのが好ましい。また、多孔質のものであっても良い。重合体粒子は、その内部に低沸点物質を内包し、加熱膨張性を有するものの使用が好ましい。このような加熱膨張性の重合体粒子は、繊維状物質のシートの繊維間空隙部に埋設した後、加熱膨張させることにより、その繊維間空隙部を完全に充満させるとともに、結合性良くその空隙部に埋設保持させることができる。
【0012】なお、前記繊維状物質のシートに重合体粒子を埋設させるのは、シート全体にわたるのではなく、その染料受容層側の部分のみであっても良い。例えば、重合体粒子を埋設した繊維状物質のシートと、該粒子を埋設しない繊維状物質のシートとの貼り合わせ体(積層体)を、基体(重合体粒子埋設シートを染料受容層側とする)とすることもできる。
【0013】また、この場合、繊維状物質のシートの重合体粒子を埋設させない部分の空隙率を、該粒子を埋設する部分の空隙率よりも低くすることもできる。例えば、重合体粒子を埋設した繊維状物質のシートと、重合体粒子を埋設せず且つ前記シートよりも空隙率の低い繊維状物質のシートとの貼り合わせ体を、基体(重合体粒子埋設シートを染料受容層側とする)とすることができる。このように重合体粒子を埋設しない部分の空隙率を低いものとすることによって、受像媒体の剛度が向上し、カールの少ないものとなる。
【0014】本発明の受像媒体の基本的構成例を図面に示すと、図1〜図3のようになる。図1は繊維状物質1とその空隙部に埋設されている重合体粒子2からなる基体3と、その上に染料受容層4が塗設された場合を示す。また、図2は重合体粒子2を基体3の染料受容層側の部分のみに埋設した場合を示す。更に、図3は重合体粒子2を基体3の染料受容層側の部分のみに埋設し、しかも重合体粒子2を埋設しない部分の空隙率を、重合体粒子2を埋設した部分の空隙率よりも、低くした場合を示す。
【0015】本発明で用いる重合体粒子は従来公知のものであり、その具体例としては、例えば以下のものを示すことができる。
(1)熱膨張性の熱可塑性樹脂粒子:塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体等の熱可塑性樹脂をカプセル壁とする中空粒子で、粒子内部にプロパン、n−ブタン、イソブタン等の揮発性液体の膨張剤を含有する。この粒子は加熱することにより内部の液体が膨張し、膨張した重合体粒子を形成する。このような粒子は市販されていて、例えば松本油脂社製のマツモト・マイクロスフェアーF30及びケマノーベル社製のExpancel551及び642等を挙げることができる。
(2)マイクロカプセル状の重合体粒子:アクリル/スチレン共重合体等の硬い樹脂をカプセル壁とし、内部に水が入っており、乾燥時に水が飛び出して中空となる重合体粒子である。この種の粒子も市販されており、例えばローム・アンド・ハース社製のローベイクOP−84J等を挙げることができる。
【0016】また、本発明で用いる多孔性樹脂とは、微小な気泡を有する樹脂を意味し、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、酢酸セルロース、ポリサルフォンなどの多孔性樹脂を挙げることができる。これらの多孔性樹脂は従来公知の方法、例えば溶媒の溶解性及び揮発性の差を利用する方法や、樹脂と非相溶性のオイル等を混合する方法によって得ることができる。
【0017】本発明で用いる重合体粒子又は多孔性樹脂の寸法は、前記した繊維状物質のシートの繊維空隙に埋設するときに、その繊維空隙で形成され細孔の寸法より小さなものがよく、一般的には、その細孔寸法の1/100〜1/2、好ましくは1/50〜1/5程度である。繊維状物質のシートに重合体粒子又は多孔性樹脂を埋設させるには、重合体粒子又は多孔性樹脂を含む接着剤を、そのシートに含浸させた後、加熱乾燥すればよく、液状接着剤中の重合体粒子又は多孔性樹脂の含有割合は、1〜70重量%、好ましくは10〜50重量%である。液状接着剤としては、従来公知のものが用いられる。
【0018】この場合、接着剤成分としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、アクリレート、メタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂等を挙げることができる。接着剤成分と重合体粒子又は多孔性樹脂との割合は、重合体粒子又は多孔性樹脂1重量部に対して、接着剤成分0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。液状接着剤は、水溶液、有機溶媒溶液あるいはエマルジョンであることができるが、重合体粒子又は多孔性樹脂を溶解してしまわないことが好ましい。重合体粒子又は多孔性樹脂を含む液状接着剤を繊維状物質のシートに含浸させる方法としては、従来公知の方法、例えば、浸漬法やロール塗布法等を挙げることができる。
【0019】重合体粒子又は多孔性樹脂を含む液状接着剤において、その接着剤成分としては、耐有機溶剤性のものを用いるのが好ましい。耐有機溶剤性の接着剤成分を用いる時には、その接着剤成分が重合体粒子又は多孔性樹脂表面に付着して耐有機溶剤性の保護層を形成する。そして、このような重合体粒子又は多孔性樹脂を含む基体は、その上に樹脂の有機溶剤溶液を塗布して染料受容層を形成する際に、基体に含まれる重合体粒子又は多孔性樹脂がその有機溶媒との接触によって溶解されることが防止される。
【0020】なお、上記基体と染料受容層との間に樹脂層を設け、染料受容層形成の際の有機溶剤が上記粒子まで届かない場合には、特に耐有機溶剤性の樹脂を使用しなくてもよく、ポリエチレンオキサイド等の樹脂が好適に使用される。
【0021】耐有機溶剤性の接着剤成分あるいは高分子としては、フィルム形成性能に優れしかも有機溶剤の浸透を抑制するものであればよく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、澱粉等の水性高分子やアクリル酸エステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシル基を有するポリエチレン等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール、カゼイン、澱粉は、耐有機溶剤の効果において優れているため好ましく用いられる。
【0022】本発明の受像媒体においては、繊維状物質のシートと重合体粒子又は多孔性樹脂とからなる基体と染料受容層の間に、この受容層形成時にバリアー性や平滑性を向上させ、染料転写時の白抜け現像を防止する目的で樹脂層を設けることができる。また、必要に応じて、基体の上面の受容層と反対側、即ち基体の下面に重合体粒子又は多孔性樹脂の脱落防止や熱転写記録時の熱による受像媒体のカールの減少及び給紙適性付与の目的として、前記と同種又は異種の樹脂層を設けることもできる。これらの場合の構成例を図面で示すと、図4〜図6R>6のようになる。図4は基体3と染料受容層4との間に樹脂層5を設けた場合を、図5は基体3の下面に樹脂層6を設けた場合を、また図6は基体3の上面に樹脂層5を設け且つ基体3の下面に樹脂層6を設けた場合を、それぞれ示す。
【0023】これらの樹脂層に使用する樹脂としては、例えば、ポリエステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アルキルチタネート樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合体、ポリエチレンイミン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン/アクリル共重合体、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性樹脂やポリウレタン、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。特にこれらの中でも耐溶剤性のものが好ましい。上記樹脂中には必要に応じて硬化剤やパラフィンワックス等のワックス類や界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。また、上記樹脂の他に、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、スチレンブタジエン共重合体等のゴムなどを用いることもできる。
【0024】樹脂層を基体上面及び(又は)下面に形成する方法としては、通常の溶液コーティングの他にエクストルージョンコーティング、ホットメルトコーティング等が挙げられるが、他の任意のコーティング法によって形成してもよい。また、これらの樹脂を一旦フィルムに成形した後で、このフィルムを基体片面又は両面に熱接着又は接着剤を介して貼着させることにより形成してもよい。このタイプの樹脂層形成に好適な樹脂は、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂である。
【0025】前記の樹脂層の厚さは0.1〜300μmの範囲が適切で、好ましくは1〜200μmである。厚さが0.1μm未満の場合には、染料受容層を形成させる際にバリアー性や平滑性を向上させる効果が乏しく、また厚さが300μm超過になっても、格別の利点は得られない。
【0026】染料受容層自体は従来既知であり、例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂等の極性を有する樹脂を単独で又は2種以上混合したものを、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解し、得られた溶液を乾燥重量で2〜10g/m2程度になるように、前記の基体又は樹脂層の上面に塗布して形成させる。この染料受容層の厚さは一般に0.5〜50μmである。
【0027】なお、染料受容層の外観及び平滑性を向上させる目的で、基体に樹脂層を塗布、乾燥後に、又は基体に染料受容層を設けた後に、全体の積層体をスーパーカレンダーリング等の加圧手段により、平滑化処理を行なうことができる。
【0028】更に必要に応じて、得られた受像媒体の表面及び(又は)裏面に界面活性剤等による帯電防止処理を施すこともでき、また給紙適性を向上させることもでき、更に顔料、染料等を適用させて媒体の多様性をもたせるとか、画像のコントラストを変えるということもできる。
【0029】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、以下において示す部はいずれも重量基準である。
【0030】実施例1ポリエステル製の不織布(密度:0.449g/cm3)(商品名:05TH−48、広瀬製紙社製)に以下に示す組成の〔A液〕を乾燥重量で10g/m2となるように含浸塗布した。
〔A液〕
中空の重合体粒子(商品名:マツモト・マイクロスフェアー MF30−C、松本油脂製薬社製、平均粒径:15μm) 57部 ポリエチレンオキシド(商品名:アルコックスR−400;
明成化学工業社製) 2部 水 140部乾燥後、全体を130℃で2分間加熱して中空の重合体粒子の膨張を行なって、基体を形成させた。
【0031】こうして得られた基体の上面に、下記の組成の〔B液〕を6μmの厚さに塗布した。
〔B液〕
塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体 (商品名:デンカビニル#1000GKT、電気化学社製) 18部 シリコーン樹脂 (商品名:AY42−125、東レ−ダウ・コーニング社製) 4.5部 トルエン 39部 メチルエチルケトン 39部塗布した積層物を乾燥して受像媒体を製造した。
【0032】一方、熱昇華性染料の転写媒体として、バック層としてシリコーン硬化樹脂膜(厚さ約1μm)を設けた厚さ6μmのPETフィルム上に、下記処方の転写層用塗剤を、約2μmの厚さに塗布して、転写媒体を得た。
〔転写層用塗剤〕
ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1;積水化学社製) 10部 シアン用熱昇華分散染料(商品名:カヤセット714;日本化薬社製)6部 メチルエチルケトン 45部 トルエン 45部
【0033】得られた転写媒体と受像媒体とを、転写媒体の転写層と受像媒体の染料受容層とが対面するように重ね合わせ、転写媒体の裏面からサーマルヘッドで加熱エネルギーを変えて、画像記録を行なった。なお、サーマルヘッドの記録密度は6ドット/mmであり、記録出力は0.42W/ドットであった。その結果を表1に示す。
【0034】実施例2ポリエステル製の不織布(商品名:05TH−48、広瀬製紙社製)に、実施例1と同様の方法で実施例1の〔A液〕を含浸塗布して乾燥を行なった後に、130℃で2分間加熱して重合体粒子の膨張を行ない、その後更に片面に白色PET(厚さ20μm)を積層して基体を得た。
【0035】次に、上記の基体の白色PET上に、実施例1の〔B液〕を実施例1と同様の方法で塗布乾燥を行ない、受像媒体を得た。
【0036】得られた受像媒体を用いて、実施例1と同様の方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0037】実施例3実施例1で示したポリエステル製不織布(商品名:05TH−48、広瀬製紙社製)に、実施例1の〔A液〕を実施例1と同様な方法で含浸塗布して乾燥を行なった後に、130℃で2分間加熱して重合体粒子の膨張を行なって紙状体を製造し、更にこの両面に白色PET(厚さ20μm)を積層して基体を得た。
【0038】次に、上記の基体の白色PET層の上に、実施例1の〔B液〕を実施例1と同様な方法で塗布乾燥を行ない、受像媒体を得た。得られた受像媒体を用いて、実施例1と同様な方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0039】実施例4実施例1で示したポリエステル製不織布(商品名:05TH−48、広瀬製紙社製)に、実施例1の〔A液〕を実施例1と同様な方法で含浸塗布して乾燥を行なった後に、130℃で2分間加熱して重合体粒子の膨張を行なって紙状体を製造し、この片面に白色PET(厚さ20μm)を積層して基体を得た。
【0040】次に、上記の基体の白色PET層のない側の面に、実施例1の〔B液〕を実施例1と同様な方法で塗布乾燥を行ない、受像媒体を得た。この受像媒体を用いて、実施例1と同様の方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0041】実施例5厚さ70μmの上質紙(密度0.77g/cm3)に、下記の組成の[C液]を含浸塗布した。
[C液]
ポリウレタン系w/o型エマルジョン 100部 (商品名:UF−1000NO、三洋化成社製)
メチルエチルケトン 35部 イソシアネート (商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製) 3部 水 50部乾燥後、60℃で100時間加熱した。
【0042】上記のようにして得られた基体の上面に、下記[D液]を6μmの厚さに塗布した。
[D液]
塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体 (商品名:デンカビニル#1000GKT、電気化学社製) 18部 シリコーン樹脂 (商品名:AY42−125、東レーダウ・コーニング社製)4.5部 トルエン 39部 メチルエチルケトン 39部塗布した積層物を乾燥して受像媒体を製造した。
【0043】一方、熱昇華性染料の転写媒体として、バック層としてシリコーン硬化樹脂膜(厚さ約1μm)を設けた厚さ6μmのPETフィルム上に、下記処方の転写層用塗剤を、約2μmの厚さに塗布して、転写媒体を得た。
[転写層用塗剤]
ポリビニルブチラール樹脂 (商品名:BX−1;積水化学社製) 10部 シアン用熱昇華分散染料 (商品名:カヤセット714;日本化薬社製) 6部 メチルエチルケトン 45部 トルエン 45部
【0044】得られた転写媒体と受像媒体とを、転写媒体の転写層と受像媒体の染料受容層とが対面するように重ね合わせ、転写媒体の裏面からサーマルヘッドで加熱エネルギーを変えて、画像記録を行なった。なお、サーマルヘッドの記録密度は6ドット/mmであり、記録出力は0.42W/ドットであった。その結果を表1に示す。
【0045】実施例6実施例5において、上質紙をポリエステル製不織布(商品名:05TH−48、広瀬産業社製、密度0.45g/cm3)に代えた以外は、実施例5と同様にして受像媒体を得た。得られた受像媒体を用いて、実施例5と同様の方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0046】実施例7実施例6において、[C液]を下記[E液]に代えた以外は実施例6と同様にして受像媒体を得、ついで画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
[E液]
ポリウレタン系w/oエマルジョン 100部 (商品名:ハイムレン、大日精化社製)
メチルエチルケトン 20部 トルエン 20部 水 30部
【0047】実施例8ポリエステル製の不織布(密度:0.449g/cm3)(商品名:05TH−48、広瀬製紙社製)に以下に示す組成の〔F液〕を乾燥重量で10g/m2となるように含浸塗布した。
〔F液〕
中空の重合体粒子(商品名:マツモト・マイクロスフェアー MF30−C、松本油脂製薬社製、平均粒径:15μm) 7部 ポリビニルアルコール(商品名:RFM−17) 5部 水 15部乾燥後、全体を130℃で3分間加熱して中空の重合体粒子の膨張を行なった後に、スーパーカレンダー掛けを行なった。次に、得られたシートを塗布含浸を行なっていない前記ポリエステル製織布(商品名:05TH−48)と貼り合わせて、基体を形成させた。
【0048】こうして得られた基体の中空粒子を含浸させた面に、実施例1の〔B液〕を6μmの厚さに塗布し、乾燥して、受像媒体を製造した。続いて、この受像媒体を用いて、実施例1と同様な方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0049】実施例9ポリエステル製の不織布(商品名:15TH−100、広瀬製紙社製)に実施例8の〔F液〕を含浸塗布し、乾燥した。続いて、130℃で3分間加熱して重合体粒子の膨張を行なった後に、スーパーカレンダー掛けを行なった。次に、得られたシートを上質紙(商品名:PPC用紙 TYPE6000、リコー社製)と貼り合わせて、基体を形成させた。
【0050】得られた基体の中空粒子が含浸している側の面上に、実施例1の〔B液〕を実施例1と同様の方法で塗布乾燥し、受像媒体を得た。得られた受像媒体を用い、実施例1と同様な方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0051】実施例10ポリエステル製不織布(商品名:05TH−48、広瀬製紙社製)に、実施例8の〔F液〕を実施例8と同様な方法で含浸塗布し、乾燥した。次に、130℃で3分間加熱して重合体粒子の膨張を行なった後、スーパーカレンダー掛けを行なった。続いて、得られたシートに上質紙(商品名:PPC用紙 TYPE6000、リコー社製)を貼り合わせ、更にその上質紙の面に白色PETを積層して基体を得た。
【0052】次に、上記の基体の不織布上に実施例1の〔B液〕を実施例1と同様の方法で塗布乾燥行ない、受像媒体を得た。得られた受像媒体を用い、実施例1と同様な方法で画像記録を行なった。その結果を表1に示す。
【0053】以上の実施例1〜10で得られた受像媒体について、「白抜け」及び外観上の特徴を観察したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0054】
【表1】


〔備考〕
「白抜け」の程度:◎・・・全くなし、○・・・少しあり重合体中空粒子又は多孔性樹脂の脱落の程度:×・・・有り、○・・・無しプリントカールの程度:×・・・水平な台の上で2cm以上浮く△・・・水平な台の上で1cm〜2cm浮く◎・・・水平な台の上での浮く高さが1cm以内
【0055】前記の表に示した結果から明らかなように、各実施例において「白抜け」現象の発生は良好に防止されていることが分かる。また、基体の下面に樹脂層を設けた実施例3〜4の場合では、重合体粒子の脱落が防止でき、またプリントカールの程度も概して良好である。更に、実施例3では基体の両面に樹脂層を設けてあるため、「白抜け」の防止と重合体粒子又は多孔性樹脂の脱落の程度及びプリントカールの程度がもっとも良い結果を示した。実施例2の場合は、樹脂層が基体の上面即ち染料受容層と基体との間に設けられているため、「白抜け」防止の効果は実施例3と同様に大きいが、重合体粒子の脱落の程度及びプリントカールの程度は共に劣ることを示す。また、基体が繊維の空隙率の低い紙を含んでいる実施例9やフィルムを積層した実施例10の場合には、プリントカールに対しても良好である。
【0056】
【発明の効果】本発明の受像媒体は、受像媒体の基体としてプラスチック・フィルムを使用せずに繊維状物質のシート、例えば不織布を使用するため、受像媒体の感触として紙らしさがあるのが特徴で、しかも全体のコストが安価である利点がある。また、普通紙やコート紙を基体として使用した場合と比べて、転写画像の「白抜け」現象が発生し難い。これは本発明の基体において、繊維状物質のシートの空隙部、若しくは同シートの染料受容層側の部分の空隙部に、重合体粒子又は多孔性樹脂が存在し、クッション性や蓄熱性が向上しているためである。
【0057】また、本発明の受像媒体において、染料受容層と基体との間に樹脂層を介在させる時には、染料受容層を基体に形成する際に基体に含まれる重合体粒子が受容層に含まれる溶剤によって溶解されないバリア効果が達成されるだけでなく、基体の平滑性及び外観が向上する利点がある。従って、樹脂層を染料受容層と基体との間に設けた場合には、「白抜け」現象の防止効果が一層向上する。また、基体の下面に樹脂層を設けることにより、重合体粒子が繊維状物質の空隙部から脱落するのを防止することができ、併せて加熱転写時に受像媒体がカールすることを防止し、また樹脂層の内部に適当な添加剤を加えることにより帯電を防止して良好な給紙適性を付与させることができる。なお、基体の染料受容層と反対側の部分の繊維状物質の空隙率を、染料受容層側の部分のそれよりも低くすることによっても、剛度が向上し、カールの少ないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る昇華型熱転写用受像媒体の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る昇華型熱転写用受像媒体の別の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る昇華型熱転写用受像媒体の更に別の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る昇華型熱転写用受像媒体の更に別の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る昇華型熱転写用受像媒体の更に別の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係る昇華型熱転写用受像媒体の更に別の例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 繊維状物質
2 重合体粒子
3 基体
4 染料受容層
5 樹脂層
6 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱昇華性染料を含有した転写層を有する昇華型熱転写記録媒体と組み合わせて使用される受像媒体であって、基体とこの基体の上面に設けられた染料受容層とから構成され、しかも前記基体が繊維状物質のシートからなり、且つこの繊維状物質の空隙部に重合体粒子、多孔性樹脂のうちの少なくとも一種が埋設されていることを特徴とする昇華型熱転写記録用受像媒体。
【請求項2】 前記基体と染料受容層との間に樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の受像媒体。
【請求項3】 前記基体の下面に樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の受像媒体。
【請求項4】 前記基体の繊維状物質のシートが合成樹脂繊維からなる不織布である請求項1〜3のいずれか1項に記載の受像媒体。
【請求項5】 前記繊維状物質のシートが密度0.6g/cm3以下のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の受像媒体。
【請求項6】 前記基体の染料受容層側の繊維状物質の空隙部に、重合体粒子、多孔性樹脂のうちの少なくとも一種が埋設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の受像媒体。
【請求項7】 前記基体の繊維状物質の空隙率が、染料受容層側の空隙部に重合体粒子、多孔性樹脂のうちの少なくとも一種が埋設される部分と他の部分とでは、前者の方が高くなっていることを特徴とする請求項6に記載の受像媒体。
【請求項8】 前記重合体粒子が中空粒子である請求項1〜7のいずれか1項に記載の受像媒体。
【請求項9】 前記多孔性樹脂が、樹脂、有機溶剤、水からなるw/o型エマルジョンを用いて形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の受像媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−106866
【公開日】平成6年(1994)4月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−339816
【出願日】平成4年(1992)11月25日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)