説明

昇降アイソレータ装置

【課題】上下異なるフロアに設置されたアイソレータ2、4間で、無菌状態を維持したまま物品の受け渡しを行う。
【解決手段】開閉手段52によって外部から遮断した状態に維持できるアイソレータ2、4が上方のフロアと下方のフロアに設置され、開閉手段68によって外部から遮断した状態に維持できる昇降用アイソレータ8が、昇降手段6によって、前記階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4の間で昇降できる。階上用および階下用アイソレータ2、4に、接続通路手段10、12が取り付けられており、昇降用アイソレータ8との間を密閉手段18によって密閉できる。接続通路手段10、12には除染手段28が設けられており、階上用と階下用のいずれかのアイソレータ2、4と昇降用アイソレータ8を接続し、接続通路手段10、12内を除染した後、両アイソレータを連通して物品の移動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
上下の異なるフロアにそれぞれ外部雰囲気と隔離された状態のアイソレータを設置して、これら各アイソレータ内の物品を無菌状態を維持したままで受け渡しを行うようにした昇降アイソレータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上下異なるフロアーにそれぞれ配置したクリーンルーム1、2間を、垂直シャフト5によって接続し、垂直シャフト5内を昇降するキャレッジ6を介して製品の受け渡しを行う垂直搬送システムが記載されている。この特許文献1に記載された発明では、垂直搬送シャフト5に空気取り入れ口10を設けてクリーンルーム2内の空気を垂直シャフト5内に取り込んで室内を用力室3、4よりも高く維持することができ、これによって垂直シャフト5内のクリーン度を維持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−14758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上下異なるフロアーに設置されたアイソレータ間で、無菌状態を維持したまま物品の受け渡しをするために、従来は、前記特許文献1の構成と同様に、上下の階層を接続する垂直搬送装置全体を無菌環境にするようにしていたが、このような構造では設備コストが大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされてもので、密閉可能な開閉手段を有し、内部が外部雰囲気から隔離された状態に維持可能な昇降用アイソレータと、この昇降用アイソレータを昇降させる昇降手段と、前記昇降用アイソレータの下降位置に対応して配置され、密閉可能な開閉手段を有し、内部が外部雰囲気から隔離された状態に維持可能な階下用アイソレータと、前記昇降用アイソレータの上昇位置に対応して配置され、密閉可能な開閉手段を有し、内部が外部雰囲気から隔離された状態に維持可能な階上用アイソレータとを備え、前記昇降用アイソレータと、階上用アイソレータおよび階下用アイソレータの少なくともいずれか一方に、昇降用アイソレータと階上用アイソレータ、または、昇降用アイソレータと階下用アイソレータを接続する接続通路手段を設け、さらに、この接続通路手段の内部通路に除染媒体を供給する除染手段を設け、前記昇降用アイソレータと階上用アイソレータ、または、昇降用アイソレータと階下用アイソレータを接続通路手段によって接続し、接続された両アイソレータを各開閉手段により密閉した状態で、除染手段によって接続通路手段の内部通路に除染媒体を供給して除染した後、各開閉手段による密閉を解除して接続しているアイソレータを連通させて、外部雰囲気から隔離した状態で両アイソレータ間の物品を移動させることにより、階上用アイソレータと階下用アイソレータとの間で、外部雰囲気から隔離した状態で物品を移動させることを可能にしたものである。
【0006】
また、第2の発明は、請求項1に記載した発明において、前記接続通路手段は、接続される相手側のアイソレータにシール部材を押し付けて内部通路を密閉する密閉手段を備え、昇降用アイソレータを昇降させる際に、前記シール部材の押し付けを解除して干渉を回避することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の昇降アイソレータ装置は、上下異なるフロアに設置された階上用アイソレータと階下用アイソレータとの間に亘って昇降可能な昇降用アイソレータを備え、この昇降用アイソレータと、階上用アイソレータおよび階下用アイソレータのいずれか一方または双方に接続通路手段を設けて接続可能とし、さらに、接続通路手段に除染手段を設けたので、垂直搬送装置全体をアイソレーションする必要がなく、設備の導入コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る昇降アイソレータ装置の全体の構成を示す側面図である。(実施例1)
【図2】図2は階上用アイソレータと昇降用アイソレータとの接続部の構成および接続通路手段の構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は階上用アイソレータと昇降用アイソレータとの接続部の構成を示し、特に両アイソレータを開放した状態を示す縦断面図である。
【図4】図4は階上用アイソレータの開閉手段を閉じた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
建屋の上方のフロアに階上用アイソレータが、そして下方のフロアに階下用アイソレータがそれぞれ設置されている。これらアイソレータは、開閉手段によって開口部を開閉できるようになっており、この開口部を密閉して内部を外部雰囲気から隔離した状態に維持することができる。また、これら上下のアイソレータの他に、開閉手段によって開口部を開閉でき、内部を外部雰囲気から隔離した状態に維持可能な昇降用アイソレータを備えており、この昇降用アイソレータは、昇降手段によって前記階上用アイソレータと階下用アイソレータとの間を昇降できるようになっている。階上用アイソレータおよび階下用アイソレータと、昇降用アイソレータのいずれか一方または双方に、階上用アイソレータまたは階下用アイソレータと、昇降用アイソレータとを接続する接続通路手段が設けられている。この接続通路手段には、他方のアイソレータと接続した際にその接続部を密閉する密閉手段が設けられ、さらに、内部に除染媒体を供給する除染手段が接続されている。本発明に係る昇降アイソレータ装置は、開閉手段によって開口部を密閉した状態の階上用アイソレータまたは階下用アイソレータのいずれかと、同様に開閉手段によって開口部を密閉した状態の昇降用アイソレータとを接続通路手段によって接続し、これら両アイソレータの接続部を密閉手段によって密閉した後、除染手段によって除染媒体を供給して接続通路手段の内部を除染し、その後、昇降用アイソレータと、この昇降アイソレータに接続されている他方のアイソレータとを開放して互いに連通することにより、無菌状態を維持したまま物品の受け渡しを行うことができる。このように構成したことにより、上下異なるフロアに設置した階上用アイソレータと階下用アイソレータとの間で、無菌状態を維持したまま物品の受け渡しを行うことを可能にし、しかも、昇降アイソレータ装置の設置コストを大幅に低減するという目的を達成する。
【実施例1】
【0010】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。この昇降アイソレータ装置(全体として符号1で示す)は、図1に示すように、建屋内の上層階(この実施例では3階)と下層階(この実施例では1階)にそれぞれ設置された階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4、およびこれら上下のアイソレータ2、4に隣接して配置された昇降手段6によって昇降され、上昇位置で対応して配置された階上用アイソレータ2と、また下降位置で対応して配置された階下用アイソレータ4と接続可能な昇降用アイソレータ8を備えている。そして、階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4には、それぞれ前記昇降用アイソレータ8と接続するための接続通路手段10、12が設けられている。なお、この実施例では、接続通路手段10、12が階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4に設けられているが、逆に昇降用アイソレータ8に設けてもよく、また、階上用および階下用アイソレータ2、4と昇降用アイソレータ8の双方に設けてもよい。
【0011】
前記階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4およびこれらアイソレータ2、4に設けられている接続通路手段10、12の構成について図2により説明する。これら上下のアイソレータ2、4は同一の構成なので、階上用アイソレータ2の構成についてだけ説明し、階下用アイソレータ4の構成については、階上用アイソレータ2の各部の符号にAを付して説明する。階上用アイソレータ2の前面側(昇降用アイソレータ8を向いた側)の壁面14に、昇降用アイソレータ8との間で物品の受け渡しを行うための円形の開口部14aが形成され、この開口部14aを囲んで接続通路手段10が固定されている。この接続通路手段10は、断面がほぼコ字状をした環状部材16と、この環状部材16の外側のプレート16a(図2の右側のプレート)に固定された環状の密閉手段(シール手段)18とを有している。なお、各アイソレータ2、4、8に形成されている開口部14a、24aおよび階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4に設けられている接続通路手段10、12の形状は前記円形に限定されるものではなく、四角形等適宜選択しうるものである。
【0012】
断面コ字状の環状部材16の、階上用アイソレータ2側のプレート16bが、階上アイソレータ2の前面側壁面14に、その開口部14aの周囲を囲んで固定されている。また、環状部材16の外側のプレート16aに固定されているシール部材18は、リング状の保持部材20と、この保持部材20に保持されているエアチューブ22とから構成されている。このエアチューブ22は、図示しないエア供給手段に接続されており、内部にエアを供給して膨張させることができる。図2は、階上用アイソレータ2の接続通路手段10に昇降用アイソレータ8を接続した状態を示すもので、この図に示すようにエアチューブ22にエアを供給して膨張させたときには、エアチューブ22の先端が全周に亘って昇降用アイソレータ8の階上用アイソレータ2側の壁面24に密着して接続通路手段10の内部側と外部側とを遮断することができ、エアチューブ22のエアを排出して収縮させたときには、このエアチューブ22が昇降用アイソレータ8の前記壁面24に接触しないようになっている。なお、この実施例では、昇降用アイソレータ8の階上用アイソレータ2側の壁面24には、階上用アイソレータ2の壁面14に形成されている開口部14aとほぼ同じ形状の開口部24aが形成されており、前記接続通路手段10のエアチューブ22は、この開口部24aの周囲を囲むようにして前記壁面24に密着する。
【0013】
環状の接続通路手段10には、その内部通路26を除染する除染手段28が接続されている。この除染手段28は、除染液タンク30内に収容された除染媒体としての過酸化水素溶液を、ポンプ32によって蒸発器34に送って蒸発させ、ブロワ36によって送風されたエアにより蒸発器34で蒸発された過酸化水素蒸気を供給管38を介して前記接続通路手段10の内部26に供給するようになっている。供給管38の接続通路手段10への結合部には、HEPAフィルタ40が設けられている。また、供給管38には開閉バルブ42が設けられており、この開閉バルブ42の開閉によって供給管38が連通遮断され、過酸化水素蒸気の供給および停止をするようになっている。さらに、接続通路手段10には、HEPAフィルタ44を介して排出管46が接続されている。この排出管46は開閉バルブ48によって連通遮断できるようになっており、開放時には、接続通路手段10の内部26の除染を行った過酸化水素蒸気を触媒50を介して分解し無害化した状態で排出する。
【0014】
階上用アイソレータ2の内部には、前記接続通路手段10が取り付けられている開口部14aを開閉することができる開閉手段52が設けられている。この開閉手段52は、進退動して前記開口を覆う位置と、開口部14aを開放する位置とに移動可能なシャッタ54と、このシャッタ54に密着して接続通路手段10側と階上用アイソレータ2の内部とを遮断するシール部材56とを備えている。シール部材56は、前記接続通路手段10のシール部材18と同様の構成を有しており、環状の保持部材58とこの保持部材58に保持されたエアチューブ60とからなっている。このエアチューブ60が、図示しないエア供給手段からエアの供給を受けて膨張し、シャッタ54に密着してシールするようになっている。また、このエアチューブ60からエアを排出して収縮させたときには、シャッタ54から離れて接触しないようになっており、シャッタ54が移動する際の干渉を避けるようにしている。
【0015】
前記シャッタ54の内面(階上用アイソレータ2の内部側を向いた面)側の上端部と下端部寄りにそれぞれ水平方向に並べて複数個のローラ62が取り付けられている。そして、階上用アイソレータ2の接続通路手段10側の壁面14のやや内方側に、前記開口部14aのやや上方側とやや下方側に位置するようにそれぞれ水平ガイドレール64が配置されており、これら水平ガイドレール64に前記ローラ62が支持されてシャッタ54の移動が案内される。前記シャッタ54は、階上用アイソレータ2の前記壁面14の内側に水平に固定されたエアシリンダ66に連結されており、このエアシリンダ66の作動によって水平方向に移動して、前記開口部14aを閉鎖する位置と開放する位置との間を往復動する。
【0016】
昇降用アイソレータ8の内部には、開口部24aを開閉する開閉手段68が設けられている。この昇降用アイソレータ8の開閉手段68も前記階上用アイソレータ2の開閉手段52と同様の構成を有している。すなわち、昇降用アイソレータ8の内面の開口部24aの周囲に取り付けられた環状の保持部材70とエアチューブ72を有するシール部材74と、上下に取り付けられたローラ76が水平ガイドレール78に支持され、水平なエアシリンダ80の作動によって、前記開口部24aを覆う位置と開口部24aから外れた位置との間で水平方向に往復動するシャッタ82とを備えており、シャッタ82を開口部24aの前方に移動させた状態でエアチューブ72にエアを導入して膨張させることにより昇降用アイソレータ8の内部を密閉することができる。
【0017】
以上の構成に係る昇降アイソレータ装置1の作動について説明する。この装置の運転を開始する際には、先ず、各アイソレータ2、4、8の内部の除染を行う。この場合には、図3に示すように、昇降用アイソレータ8と階上用アイソレータ2および階下用アイソレータ4のいずれか一方(この実施例では階上用アイソレータ2)とを接続する。昇降手段6によって昇降用アイソレータ8を階上用アイソレータ2の正面まで移動させた後、階上用アイソレータ2の接続通路手段10に設けられている密閉手段18のエアチューブ22に、図示しないエア供給手段から圧縮エアを供給して膨張させる。膨張したエアチューブ22を昇降用アイソレータ8の壁面24に密着させてその間を密閉する。また、階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の内部に設けられている開閉手段52、68のエアチューブ60、72のエアを排出してシャッタ54、82に押し付けた状態を解除する。この状態では、階上用アイソレータ2の接続通路手段10に設けられている密閉手段18のエアチューブ22を膨張させて昇降用アイソレータ8の壁面24に押し付けることにより、階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8との接続部をシールするとともに、階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の内部に設けられている開閉手段52、68のエアチューブ60、72からエアを排出してシールを解除し、さらに、シャッタ54、82を移動させて各開口部14a、24aを開放している。つまり、階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の内部を接続通路手段10の内部通路26を介して接続するとともに、外部雰囲気からは遮断した状態にする。
【0018】
前記のように、階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の内部を接続通路手段10の内部通路26を介して連通した状態にして、除染手段28を作動させる。除染手段28は、ポンプ32によって除染液タンク30から過酸化水素溶液を蒸発器34に送って過酸化水素蒸気を生成させるとともに、この過酸化水素蒸気をブロワ36による送風によって接続通路手段10の内部通路26に送り込む。階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の開口部14a、24aが開放しているので、過酸化水素蒸気が各アイソレータ2、8に流入し、各アイソレータ2、8の内部および各開閉手段52、68のシール部(エアチューブ60、72とシャッタ54、82の間)が除染される。その後、過酸化水素蒸気の供給を停止してブロワ36による送風だけを行い、エアレーションにより除染成分を除去する。階下用アイソレータ4についても同様に接続通路手段12を介して昇降用アイソレータ8と接続して除染とエアレーションを行う。なお、各アイソレータ2、4、8の内部の除染の際には、除染媒体の供給は前記除染手段28に限らず、階上用アイソレータ2および階下用アイソレータ4内にそれぞれ過酸化水素蒸気を供給する除染手段を別途設けて行うようにしてもよい。
【0019】
階上用アイソレータ2、階下用アイソレータ4および昇降用アイソレータ8のすべてを除染した後、階上用アイソレータ2と階下用アイソレータ4のいずれか一方に物品(図示せず)を収容する。ここでは、階上用アイソレータ2に収容した物品を階下用アイソレータ4に移動させる場合について説明する。階上用アイソレータ2には、開閉手段52により開口部14aを密閉した状態で、図示しないパスボックス等を用いて無菌状態を維持したまま物品を搬入する。
【0020】
外部雰囲気から隔離された状態で、密閉されている階上用アイソレータ2内に物品が収容されており、この階上用アイソレータ2の前面に、内部が除染されて外部雰囲気から隔離された状態で密閉されている昇降用アイソレータ8を移動させて停止させる。この時点では、階上用アイソレータ2の接続通路手段10に設けられている密閉手段18は、エアチューブ22のエアが排出されて収縮した状態になっており、昇降用アイソレータ8の壁面24に接続通路手段10のエアチューブ22が干渉することはなく、スムーズに移動することができる。なお、この実施例では、階上用アイソレータ2を除染した後開口部14aを密閉した状態で物品を搬入したが、必ずしもこの状態で物品を搬入する必要はなく、例えば、図3に示すように、階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8とを接続し、両アイソレータ2、8の内部を除染した状態のまま、階上用アイソレータ2内に物品を搬入するようにしても良い。
【0021】
階上用アイソレータ2の前面に昇降用アイソレータ8が停止した後、接続通路手段10に設けられている密閉手段18のエアチューブ22に圧縮エアを導入する。エアチューブ22を膨張させて昇降用アイソレータ8の階上用アイソレータ2側の壁面24aに圧接させ、階上用アイソレータ2の接続通路手段10と昇降用アイソレータ8との間をシールする(図2に示す状態になる)。この状態で、除染手段28から接続通路手段10の内部通路26に過酸化水素蒸気を供給して、この内部通路26および、両アイソレータ2、8の開口部14a、24aよりも内部側の開閉手段52、68によるシール部(エアチューブ60、72とシャッタ54、82)までの間の空間を除染しエアレーションする。
【0022】
階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の、開閉手段52、68によりシールされている位置よりも内部側は、外部雰囲気から隔離された無菌状態を維持しており、さらに、これらの開閉手段52、68の間の部分を新たに除染したので、接続されている階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の内部側全体が外部雰囲気から隔離された無菌状態となっており、各アイソレータ2、8のシャッタ54、82を開放することが可能になる。そこで、階上用アイソレータ2の開閉手段52のエアチューブ60と、昇降用アイソレータ8の開閉手段68のエアチューブ72のエアを排出して、シャッタ54、82との間のシールを解除する。その後、各開閉手段52、68のエアシリンダ66、80を作動させて、シャッタ54、82を開口部14a、24aの前面から横方向に移動させる。この状態で階上用アイソレータ2内の物品を昇降用アイソレータ8内に移動させる。
【0023】
階上用アイソレータ2から昇降用アイソレータ8へ物品を移した後、これら階上用アイソレータ2と昇降用アイソレータ8の開閉手段52、68を閉鎖する。つまり、シャッタ54、82を開口部14a、24aの前面側に移動させ、エアチューブ60、72を膨張させてシャッタ54、82に押し付けてシールし、各アイソレータ2、8をそれぞれ密閉した状態にする。そして、接続通路手段10の閉鎖手段18のエアチューブ22からエアを排出して、接続通路手段10と昇降用アイソレータ8とのシールを解除する。この状態では、接続通路手段10のエアチューブ22と昇降用アイソレータ8の壁面24aとの接触がなくなるので、昇降用アイソレータ8は接続通路手段10側と干渉せずに昇降することが可能になる。この状態で昇降用アイソレータ8を下降させて、階下用アイソレータ4の前面側に停止させる。図4は、昇降用アイソレータ8が下降した後の階上用アイソレータ2および接続通路手段10の状態を示す図である。
【0024】
昇降用アイソレータ8を階下用アイソレータ4の前面まで移動させて停止させた後、階下用アイソレータ4の接続通路手段12に設けられている密閉手段18Aのエアチューブ22Aに圧縮エアを導入して膨張させ、昇降用アイソレータ8の壁面24aに圧接させて接続通路手段12と昇降用アイソレータ8とを密着させる。階下用アイソレータ4と昇降用アイソレータ8は、開閉手段52A、68のシャッタ54A、82により密閉されており、階下用アイソレータ4と昇降用アイソレータ8との間をシールすると図2に示す状態と同じ状態になる。そこで、前記階上用アイソレータ2の場合と同様に、階下用アイソレータ4の接続通路手段12の内部に除染手段28Aから過酸化水素蒸気を供給して除染とエアレーションを行う。接続通路手段12の内部を除染した後、階下用アイソレータ4と昇降用アイソレータ8の開閉手段52A、68のシールを解除し、シャッタ54A、82を開放する。この状態で昇降用アイソレータ8内の物品を階下用アイソレータ4内に移動させる。このようにして、一方のアイソレータ(この実施例では階上用アイソレータ2)内の物品を、昇降用アイソレータ8を介して他方のアイソレータ(階下用アイソレータ4)に外部雰囲気から遮断された状態を維持したまま移動させることができる。
【符号の説明】
【0025】
2 階上用アイソレータ
4 階下用アイソレータ
6 昇降手段
8 昇降用アイソレータ
10 階上用アイソレータの接続通路手段
12 階下用アイソレータの接続通路手段
18 密閉手段
28 除染手段
52 階上用アイソレータの開閉手段
68 昇降用アイソレータの開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な開閉手段を有し、内部が外部雰囲気から隔離された状態に維持可能な昇降用アイソレータと、この昇降用アイソレータを昇降させる昇降手段と、前記昇降用アイソレータの下降位置に対応して配置され、密閉可能な開閉手段を有し、内部が外部雰囲気から隔離された状態に維持可能な階下用アイソレータと、前記昇降用アイソレータの上昇位置に対応して配置され、密閉可能な開閉手段を有し、内部が外部雰囲気から隔離された状態に維持可能な階上用アイソレータとを備え、
前記昇降用アイソレータと、階上用アイソレータおよび階下用アイソレータの少なくともいずれか一方に、昇降用アイソレータと階上用アイソレータ、または、昇降用アイソレータと階下用アイソレータを接続する接続通路手段を設け、さらに、この接続通路手段の内部通路に除染媒体を供給する除染手段を設け、
前記昇降用アイソレータと階上用アイソレータ、または、昇降用アイソレータと階下用アイソレータを接続通路手段によって接続し、接続された両アイソレータを各開閉手段により密閉した状態で、除染手段によって接続通路手段の内部通路に除染媒体を供給して除染した後、各開閉手段による密閉を解除して接続しているアイソレータを連通させて、外部雰囲気から隔離した状態で両アイソレータ間の物品を移動させることにより、階上用アイソレータと階下用アイソレータとの間で、外部雰囲気から隔離した状態で物品を移動させることを可能にした昇降アイソレータ装置。
【請求項2】
前記接続通路手段は、接続される相手側のアイソレータにシール部材を押し付けて内部通路を密閉する密閉手段を備え、昇降用アイソレータを昇降させる際に、前記シール部材の押し付けを解除して干渉を回避することを特徴とする請求項1に記載の昇降アイソレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229115(P2012−229115A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100034(P2011−100034)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】