説明

昇降体のロック装置

【課題】電力・油圧等の駆動装置を用いることなく、人力で安全に操作できるロック装置を提供する。
【解決手段】支持フレーム4に水平方向を向いた状態で回転軸2を取り付ける。回転軸2にストッパ1を取り付け、ストッパ1が昇降体3に向かう一方向に傾動し、かつ昇降体3から離間する他方向に傾動できるようにする。ストッパ1に取り付けられるハンドル7を操作することによって、ストッパ1が昇降体3から離れたロック解放状態とストッパ1が昇降体3に係合するロック状態とが切り替えられる。ロック解放状態において、ストッパ1の重心C1が回転軸の中心C2に対して昇降体3とは反対側に位置し、ロック状態において、昇降体3側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の昇降体を支持する安全なロック装置に関し、特に軽い操作力で重量の重い昇降体を支持できるロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、従来の一般的な昇降体のロック装置は、昇降体11と支持フレーム12のそれぞれに水平方向に穴11a,12aを開けて、これらの穴11a,12aを同一レベルに設定した状態で、これらの穴11a,12aにピン13を差し込む構造のものであった。支持フレーム12に差し込まれたピン13が昇降体11を支持するので、昇降体11が落下するのを防止することができる。
【0003】
昇降体のロック装置として、特許文献1〜3には立体駐車場のパレットの落下防止装置が開示されている。
【特許文献1】実開平1−129441号公報
【特許文献2】実開平7−4711号公報
【特許文献3】特開平8−82107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の昇降体のロック装置にあっては、昇降体11の質量が大きくなるに伴いピン13の質量も大きくなり、人力で差し込むには作業性が悪くなるという問題があった。このため、ピン13が人力で支えられないほどに大きい場合には、ピン13を電力・油圧等の駆動装置を用いて差し込む方式が採用されていた。駆動装置を用いた差し込み方式はロック装置の大型化や複雑化を招いてしまう。
【0005】
そこで本発明は、電力・油圧等の駆動装置を用いることなく、人力で安全に操作できるロック装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、従来の昇降体のロック装置にあっては、ピン13を差し込むのに先立って支持フレーム12の穴12aと昇降体11の穴11aとを同一レベルに設定する必要があるので、作業に手間がかかっていた。さらに、ロックするレベルも一定のレベルに限定され、任意のレベルでのロックが不可能であった。
【0007】
そこで本発明の他の目的は、昇降体と支持フレームの穴を同一レベルに設定しなくても、自動的に作動するロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ストッパが昇降体に係合することによって昇降体を支持するロック装置であって、支持フレームに水平方向を向いた状態で取り付けられる軸体と、前記昇降体に向かう一方向に傾動し、かつ前記昇降体から離間する他方向に傾動できるように、前記軸体の回りを回転するストッパと、前記ストッパを前記一方向及び前記他方向へ傾動させる操作部材と、を備え、前記操作部材を操作することによって、前記ストッパが前記昇降体から離れたロック解放状態と、前記ストッパが前記昇降体に係合するロック状態と、が切り替えられ、前記ロック解放状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体とは反対側に位置し、前記ロック状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体側に位置する昇降体のロック装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、ストッパが昇降体に係合することによって昇降体を支持するロック装置であって、支持フレームに水平方向を向いた状態で取り付けられる軸体と、前記昇降体に向かう一方向に傾動し、かつ前記昇降体から離間する他方向に傾動できるように、前記軸体の回りを回転するストッパと、前記ストッパを前記一方向及び前記他方向へ傾動させる操作部材と、を備え、前記操作部材を操作することによって、前記ストッパが前記昇降体から離れたロック解放状態と、前記ストッパが前記昇降体に寄りかかった自動ロックのセット状態と、が切り替えられ、前記ロック解放状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体とは反対側に位置し、前記自動ロックのセット状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体側に位置し、そして、前記昇降体を上昇又は下降させると、自動的に前記ストッパが前記昇降体の穴又は凹部に入り込み、前記ストッパが前記昇降体を支持する状態になる昇降体のロック装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の昇降体のロック装置において、前記ロック状態又は前記自動ロックのセット状態において、前記昇降体が前記ストッパを下方向に押すことによって、前記軸体が下方向に撓んで前記ストッパと前記支持フレームとの間の隙間がなくなり、前記ロック解放状態において、前記軸体自身の弾性によって前記隙間が復元することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の昇降体のロック装置において、前記ロック解放状態における前記ストッパの重心位置、及び前記ロック状態又は前記自動ロックのセット状態における前記ストッパの重心位置は、前記軸体の中心を含んだ垂直面の近傍に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の昇降体のロック装置において、前記ストッパの質量につり合いを取るためのカウンターウェイト、前記操作部材及び前記軸体が、前記ストッパと一体に構成され、前記ストッパの重心位置とは、この一体品の重心位置であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の昇降体のロック装置において、前記ストッパは、前記軸体の軸線方向に間隔を空けて複数設けられ、前記昇降体には、前記ロック状態又は前記自動ロックのセット状態において、前記複数のストッパが入り込む複数の穴又は凹部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
操作部材を操作し、ストッパを一方向及び他方向に傾動させることによって、ロック解放状態とロック状態とが切り替えられる。ロック状態において、ストッパの重心が軸体の中心線を含む垂直面に対して昇降体側に位置し、ロック解放状態において、ストッパの重心が前記軸体の中心線を含む垂直面に対して昇降体とは反対側に位置するので、ストッパの質量が大きくても、ストッパを一方向及び他方向に傾動させるのに要するモーメントを小さくできる。その結果、人力で安全に操作できるロック装置が可能になる。
【0015】
また、自動ロックのセット状態において、ストッパは昇降体に寄りかかっており、昇降体の穴又は凹部にストッパは入ってない。昇降体を上昇又は下降させ、ストッパが穴又は凹部の位置にくると、自動的にストッパが穴又は凹部に入り込み、ストッパが昇降体を支持する状態になる。したがって、昇降体と支持フレームの穴を同一レベルに設定しなくても、自動的にロック装置を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下添付図面に基づいて、本発明の一実施形態における昇降体のロック装置を説明する。図1はロック装置の垂直断面図を示す。図2はロック解放状態のロック装置を示し、図3はロック状態のロック装置を示し、図4は自動ロックのセット状態を示す。図5はストッパとストッパを操作するハンドル等の関連機器の斜視図を示す。
【0017】
図1に示すように、逆三角形のストッパ1は軸体としての回転軸2を中心に左右に傾く。左に傾いたときがロック解放状態であり、これを図2に示す。右に傾いたときはストッパ1の右上端が昇降体3に設けられた穴3aに入り込む。この状態で昇降体3が下降するとストッパ1が昇降体3を支えてロックする。このロック状態を図3に示す。ストッパ1は回転軸2の軸線方向に離れて二つ設けられ(図5参照)、昇降体3の穴3aもストッパ1の数に応じて二つ設けられる。
【0018】
ストッパ1が右に傾いたとき、昇降体3の穴3aに入り込まずに、昇降体3の壁面に寄りかかる場合もある。この状態で昇降体3を上昇させ、ストッパ1が穴3aの位置にくると、自動的にストッパ1が穴3aに入り込み、ストッパ1が昇降体3を支持する状態になる。この自動ロックのセット状態を図4に示す。
【0019】
図1に示すように、昇降体3を支持する支持フレーム4には、ストッパ1が収容されるストッパ収容スペース4aが空けられる。収容スペース4aの下端には、回転軸2が水平方向を向いた状態で取り付けられる。回転軸2は摩擦抵抗の少ない軸受け5(図5参照)で支持フレーム4に回転可能に取り付けられる。回転軸2の長さ方向からみたストッパ1の下部1aは、円弧形状に形成される。支持フレーム4には、ストッパ1の下部1aに対応した円弧形状の下側受け面4bが形成される。ストッパ1の下部1aと支持フレーム4の下側受け面4bとは僅かに離れており、これらの間には1mm程度の隙間gが形成される。
【0020】
図3に示すように、逆三角形のストッパ1の上面には、左側の第一の当接面1bと、第一の当接面1bよりも上方に突出する右側の第二の当接面1cが形成される。段違いに形成されるこれらの第一及び第二の当接面1b,1cは平行である。図3のロック状態において、第一の当接面1bが支持フレーム4の上側受け面4cに当たり、ストッパ1の昇降体3に向かう一方向への回転が制限される。回転が制限された状態で、ストッパ1の第二の当接面1cが昇降体3の穴3aに入り込むので、昇降体3を支持できるようになる。このロック状態において、昇降体3がストッパ1を下方向に押すことによって、回転軸2が下方向に撓んでストッパ1の下部1aと支持フレーム4の下側受け面4bとの間の隙間がなくなる。このため、重量のある昇降体3を支持することができる。
【0021】
図2に示すように、ストッパ1の第一の当接面1bと第二の当接面1cとの間には、これらに対して傾斜した第三の当接面1dが形成される。ストッパ1が昇降体3から離間する他方向に所定角度回転すると、第三の当接面1dが支持フレーム4の垂直受け面4dに当たり、ストッパ1の他方への回転が制限される。ストッパ1が昇降体3から離れたこの状態がロック解放状態である。ストッパ1から昇降体3を解放した時点で、回転軸2は自身の弾性によってストッパ1と支持フレーム4の下側受け面4bとの間の隙間gを復元する。
【0022】
図5に示すように、ストッパ1は、回転軸2、カウンターウェイト6、及び操作部材としてのハンドル7と一体に構成される。カウンターウェイト6は、ストッパ1の重心と回転軸2を挟んで反対側に配置され、ストッパ1の質量とバランスを取る。ハンドル7を回転させると、この一体品が一体に回転する。
【0023】
図2に示すように、ロック解放状態において、一体品の重心C1が回転軸2の中心C2に対して昇降体3とは反対側、すなわち左側に配置される。一方、図3に示すように、ロック状態において、一体品の重心C1が回転軸2の中心C2に対して昇降体3側、すなわち右側にくるように配置される。ロック解放状態及びロック状態における一体品の重心C1は、回転軸2の中心C2を含む垂直面P1の近傍に、かつ回転軸2の中心C2を含む水平面P2の上方に配置される。
【0024】
ハンドルを左右に傾けて操作することによって、ストッパ1が左右に傾動する。そして、ストッパ1が左右に傾動することによって、ロック解放状態とロック状態とが切り替えられる。一体品の重心C1は回転軸2の中心C2を含む垂直面P1の近傍に配置され、回転軸2の中心C2に対して僅かに左右に移動する。このため、ストッパ1の質量が大きくてもストッパ1を左右に傾動させるのに要するモーメントを少なくすることができる。その結果、人力操作が可能になる。
【0025】
図3に示すように、ストッパ1を右に傾動させた状態で昇降体3が下降すると、昇降体3がストッパ1を下方向に押して、回転軸2が下方向に撓んで隙間gがなくなる。ストッパ1は左上が支持フレーム4に接触しているので、動かなくなり、昇降体3を支持する。
【0026】
図2に示すように、ロック解放する場合は、昇降体3を上向きに駆動装置で持ち上げた後に、ハンドル7を操作してストッパ1を左に傾ける。このとき、回転軸2はそれ自体の弾性で撓みはなくなり、隙間gが復元するためにハンドル操作力に影響しない。昇降体3を上昇・下降させるのには、ジャッキ、クレーン等の駆動装置が用いられる。
【0027】
図4に示すように、自動ロックのセット状態においては、ストッパ1が昇降体3の壁面に寄りかかっており、ストッパ1が昇降体3の穴3aに入っていない。この自動ロックのセット状態においては、一体品の重心C1は回転軸2の中心C2に対して昇降体3側、すなわち右側に配置される。昇降体3が上昇してきて、穴3aがストッパ1の位置にくると、自動的にストッパ1が昇降体3の穴3aに入り込み、ストッパ1が昇降体3を支持するロック状態になる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更可能である。例えば、ストッパが昇降体に係合するとき、ストッパは昇降体の穴に入り込む替わりに、昇降体の凹部や下面に入り込んでもよい。操作部材として、人力操作によるハンドルを用いなくても、電力・油圧等の駆動装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態のロック装置の垂直断面図
【図2】ロック解放状態のロック装置の垂直断面図
【図3】ロック状態のロック装置の垂直断面図
【図4】自動ロックのセット状態のロック装置の垂直断面図
【図5】関連機器の斜視図
【図6】従来のロック装置を示す垂直断面図
【符号の説明】
【0030】
1…ストッパ
2…回転軸(軸体)
3…昇降体
3a…穴
4…支持フレーム
6…カウンターウェイト
7…ハンドル(操作部材)
C1…一体品の重心
C2…軸体の中心
g…隙間
P1…垂直面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストッパが昇降体に係合することによって昇降体を支持するロック装置であって、
支持フレームに水平方向を向いた状態で取り付けられる軸体と、
前記昇降体に向かう一方向に傾動し、かつ前記昇降体から離間する他方向に傾動できるように、前記軸体の回りを回転するストッパと、
前記ストッパを前記一方向及び前記他方向へ傾動させる操作部材と、を備え、
前記操作部材を操作することによって、前記ストッパが前記昇降体から離れたロック解放状態と、前記ストッパが前記昇降体に係合するロック状態と、が切り替えられ、
前記ロック解放状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体とは反対側に位置し、
前記ロック状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体側に位置する昇降体のロック装置。
【請求項2】
ストッパが昇降体に係合することによって昇降体を支持するロック装置であって、
支持フレームに水平方向を向いた状態で取り付けられる軸体と、
前記昇降体に向かう一方向に傾動し、かつ前記昇降体から離間する他方向に傾動できるように、前記軸体の回りを回転するストッパと、
前記ストッパを前記一方向及び前記他方向へ傾動させる操作部材と、を備え、
前記操作部材を操作することによって、前記ストッパが前記昇降体から離れたロック解放状態と、前記ストッパが前記昇降体に寄りかかった自動ロックのセット状態と、が切り替えられ、
前記ロック解放状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体とは反対側に位置し、
前記自動ロックのセット状態において、前記ストッパの重心が前記軸体の中心に対して前記昇降体側に位置し、そして、前記昇降体を上昇又は下降させると、自動的に前記ストッパが前記昇降体の穴又は凹部に入り込み、前記ストッパが前記昇降体を支持する状態になる昇降体のロック装置。
【請求項3】
前記ロック状態又は前記自動ロックのセット状態において、前記昇降体が前記ストッパを下方向に押すことによって、前記軸体が下方向に撓んで前記ストッパと前記支持フレームとの間の隙間がなくなり、
前記ロック解放状態において、前記軸体自身の弾性によって前記隙間が復元することを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降体のロック装置。
【請求項4】
前記ロック解放状態における前記ストッパの重心位置、及び前記ロック状態又は前記自動ロックのセット状態における前記ストッパの重心位置は、前記軸体の中心を含んだ垂直面の近傍に配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の昇降体のロック装置。
【請求項5】
前記ストッパの質量につり合いを取るためのカウンターウェイト、前記操作部材及び前記軸体が、前記ストッパと一体に構成され、
前記ストッパの重心位置とは、この一体品の重心位置であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の昇降体のロック装置。
【請求項6】
前記ストッパは、前記軸体の軸線方向に間隔を空けて複数設けられ、
前記昇降体には、前記ロック状態又は前記自動ロックのセット状態において、前記複数のストッパが入り込む複数の穴又は凹部が設けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の昇降体のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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