説明

昇降便器

【課題】昇降装置の構造が簡単で、安全性、操作性、耐久性を高めた昇降便器を提供する。
【解決手段】昇降装置として多段水圧シリンダ2を腰掛便器本体1に取付けて腰掛便器に使われる給水の圧力を利用して昇降をおこなう。上下動の操作は三方弁10の動きで行い、昇降便器の下降時には多段水圧シリンダ2の水が排出されるがその水を洗浄タンク17へ入れて洗浄水として使用する。多段水圧シリンダ2と排水スライド管3の外周に循滑液容器4を設けることで、動作性、シール性、耐久性を高める。昇降時や着座時に起こる横揺れ等を抑えるために壁や床に取付けられたガイドレール7にガイドされて上下動する部分であるガイドローラプレート6の取付けは、洗浄タンク17を腰掛便器本体1に取付ける時に使う洗浄タンク取付ボルト14と、腰掛便器本体1を床に取付けるための便器取付ボルト穴13を利用して取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は昇降便器の昇降装置に多段水圧シリンダを使い、構造を簡単にして安全の確立と操作を容易にした昇降便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
便座や便器を昇降することで使用者の利便性が高まることの必要性は近年の生活環境の高級化でより一層求められている。近年では男子の小用が立って用を足すのではなく座って用を足すように家族から言われる家庭が多くなっていることからも伺われる。男子としては立って用を足したいところだが、周囲を汚すことを思えば仕方がないと従う男子が多いようである。しかしながら、このような社会状況の中で昇降便器がいまだに一般的となっていない。
【0003】
それは、今まで考えられている昇降便器の昇降装置が複雑な構造で動作性、操作性、安全性に対しての費用が多大となり実現を妨げているのである。駆動部や電子部品には想定外のトラブルが起きる可能性があり、上下動部分の耐久性や安全性の確立も難題となっている。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献1】特開平1−235739号広報
【特許文献2】特開2001−81848号広報
【特許文献3】特開2008−19578号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昇降便器が一般的にならないのは昇降装置の操作性や安全性、耐久性に伴う費用対効果の折り合いがつかないからである。特許文献1から3に記載の昇降便器を用いた場合、以下の不都合が起きると考えられる。
【0006】
特許文献1に記載の昇降便器は油圧シリンダのようなもので昇降を考えられているが、加圧や減圧を行うための装置が必要であり、その構造は複雑となり費用が嵩むことと、余計なスペースが必要である。
【0007】
特許文献2に記載の昇降便器はジャッキやボールスクリュー等の昇降装置を考えられているが、装置そのものが磨耗や金属疲労での破損が考えられる。破損した場合は急激な降下が起こり人身事故に繋がる可能性もある。この問題を解決するのには別に安全装置が必要である。
【0008】
特許文献3に記載の昇降便器は着座する人の重量を利用してスプリングでの昇降を考えられているが、体重の重さの違いから動作時間に差が生じ、動作時間のバランスを取るのが難しく、軽い人と重い人での使い分けが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明の昇降便器は昇降装置として多段水圧シリンダ2を腰掛便器本体1に取付けて、腰掛便器に使われる給水の圧力を利用して昇降を行うこととした。
上下動の操作は三方弁10の動きで行うことができ、装置が簡単となり破損等の故障時には空気等と比べて粘性が高い水が流出することで急激な下降にはならず安全性が確保されるのを特徴としている。
【00010】
請求項2は、昇降便器の上昇時には水が多段水圧シリンダ2に加圧にて注入され、昇降便器の下降時には多段水圧シリンダ2から水が排出され減圧となる。その排出された水を排出管12経由で洗浄タンク17へ入れて洗浄水として使用することとした。
【00011】
請求項3は、多段水圧シリンダ2と排水スライド管3の外周に循滑液容器4を設けることで、動作性、シール性、耐久性を高めるようにした。
【00012】
請求項4は、昇降時や着座時に起こる横揺れ等を抑えるために壁や床に取付けられたガイドレール7にガイドされて上下動する部分であるガイドローラプレート6の取付けは洗浄タンク17を腰掛便器本体1に取付ける洗浄タンク取付ボルト14と、腰掛便器本体1を床に取付けるための便器取付ボルト穴13を利用して取付けることで費用の軽減と省スペースを可能にした。
【発明の効果】
【00013】
この発明の昇降便器は、昇降装置に水圧シリンダを多段にすることで水圧シリンダ本体の高さを低く抑えることとなり、腰掛便器本体1の内部の重心付近に取付けることができる。
上昇は三方弁10から多段水圧シリンダ2に給水が送られることで上昇を行う。この時、着座から離座しようとする時にはその人の離座の介助となりながら所定の高さまで上昇を行う。上昇した状態で待機となり、男子の小用が気兼ねなく行うことができる体制になる。着座したい時は三方弁10から水を排出することで降下する。
【00014】
便器の使用時には洗浄水が必要であり、その洗浄水は洗浄タンク17からの低い落差の圧力で行われている。昇降便器の上昇には高い圧力の給水が多段水圧シリンダ2に送られて腰掛便器本体1が上昇し、腰掛便器本体1の下降時には多段水圧シリンダ2の中にある水が排出されることで腰掛便器本体1が降下する。その排出された水を洗浄タンク17に入れることで洗浄水として使用できる。その結果、上昇降下に必要な動力源の費用が掛からないことになる。
【00015】
昇降便器の構造で重要な昇降部分の多段水圧シリンダ2や排水スライド管3の伸縮部にシール性の向上を図るために潤滑液を入れるための循滑液容器4を多段水圧シリンダ2と排水スライド管3の外周に設けた。
伸縮部のシールはOリング5によりシールされているが使用回数が多くなれば磨耗によるシール漏れが発生することとなる。その改善策として多段水圧シリンダ2と排水スライド管3の外周に潤滑液容器4を設けることでOリング5に潤滑液が常に付着し、リング5の磨耗の軽減となり、動作性、耐久性、シール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施方法で、昇降便器が上昇した状態で要部の不可視部分については破線で表した側面図である。
【図2】本発明の実施方法で、昇降便器が降下した状態で要部の不可視部分については破線で表した側面図である。
【図3】本発明の実施方法で、図1に対応した正面図である。
【図4】本発明の実施方法で、図2に対応した正面図である。
【図5】本発明の実施方法で、図1から図4に対応した平面図である。
【図6】本発明の実施方法で、図5で示すA〜Bの位置での多段水圧シリンダ2が上昇した時の断面図である。
【図7】本発明の実施方法で、図5で示すC〜Dの位置での排水スライド管3が上昇した時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は腰掛便器本体1と洗浄タンク17は市販品の形態に沿ったものに多段水圧シリンダ2を腰掛便器本体1の中の重心付近に設けて昇降を行う。
昇降の操作は昇降レバー16を動かすことで三方弁10の動きで給水が給水フレキシブルホース8から給水分岐管9、三方弁10、連絡管11経由で多段水圧シリンダ2に水が送られて加圧され腰掛便器本体1が上昇する。
降下は多段水圧シリンダ2に加えられている水圧を三方弁10から排出管12経由で洗浄タンク17へ水を排出することで減圧され腰掛便器本体1は降下する。
【0018】
この昇降装置で給水の圧力を利用して作動させた水が排出管12経由で洗浄タンク17に入れることで洗浄水として利用することになり、動力源の費用は掛からないことを実現した。
【0019】
この昇降装置の多段水圧シリンダ2と排水スライド管3はOリング5によりシールを行い、シール性と耐久性の向上のために多段水圧シリンダ2と排水スライド管3の外周に循滑液容器4を設けてOリング5に循滑液18が常に付着するようにしてOリングの磨耗の軽減を図った。
【0020】
この昇降装置の上下動時に起こる横揺れ対策に備えるガイドレール7は壁や床に固定し、ガイドレール7にガイドされて上下動するガイドローラプレート6は洗浄タンク取付ボルト14と便器取付けボルト穴13を利用して取付けを行うことで装置の簡略と省スペースを実現した。
【0021】
この昇降装置では多段水圧シリンダ2を使うことで、上昇した状態で待機時として男子の小用に供する。上昇する高さを20cm程度にすることで男子の小用に極めて都合が好い状態であり、周囲を汚す不安も解消され安心して用を足すことができる。
【0022】
この昇降装置の上下動を操作レバー16だけで行うことができ、動体が水のため突発的な上下動は起こりにくく安心して使うことができる。
【0023】
この昇降装置の上下動は離着座が不自由な人には介助となり、腰掛便器本体1に体重の掛け具合で上下動の速度を加減することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 腰掛便器本体
2 多段水圧シリンダ
3 排水スライド管
4 潤滑液容器
5 Oリング
6 ガイドローラプレート
7 ガイドレール
8 給水フレキシブルホース
9 給水分岐管
10 三方弁
11 連絡管
12 排出管
13 便器取付ボルト穴
14 洗浄タンク取付ボルト
15 ガイドローラ
16 昇降レバー
17 洗浄タンク
18 潤滑液
F 床面
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降便器の昇降装置として多段水圧シリンダ2を腰掛便器本体1に設けて腰掛便器に使われる給水の圧力を利用して昇降を行うものである。
【請求項2】
請求項1の昇降便器の昇降装置による上昇には、水が多段水圧シリンダ2に加圧注入され、下降には多段水圧シリンダ2の水が排出され減圧される。その排出された水を排出管12経由で洗浄タンク17へ入れて洗浄水として使用するものである。
【請求項3】
請求項1の昇降便器の昇降装置による多段水圧シリンダ2と排水スライド管3の外周に循滑液容器4を設けることとした。
【請求項4】
請求項1の昇降便器の昇降装置による昇降時や着座時に起こる横揺れ等を抑えるために壁や床に取付けられたガイドレール7にガイドされて上下動する部分であるガイドローラプレート6の取付けは、洗浄タンク17を腰掛便器本体1に取付ける時に使う洗浄タンク取付ボルト14と、腰掛便器本体1を床に取付けるための便器取付ボルト穴13を利用して取付けることとした。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246742(P2012−246742A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132670(P2011−132670)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(592041502)
【Fターム(参考)】