説明

昇降便座

【課題】待機姿勢の変更作業に要する工数を大きく減縮し、作業時間を大幅に短縮し、かつ、狭いトイレルームでも容易に変更作業をすることができる昇降便座を提供する。
【解決手段】昇降便座は、駆動機構20が少なくとも2つのリンク部材41、42と、連結軸45とを備え、外郭カバー60が着脱可能な待機姿勢変更部61を備え、リンク部材41、42の互いに重なる部分に連結軸45を嵌合可能な共孔41a、42a;41b、42b;41c、42cが穿設され、それらの何れに連結軸45が嵌合しているかによって便座10の待機姿勢が異なり、待機姿勢変更部61を外郭カバー60から外して共孔41a、42a;41b、42b;41c、42cおよびこれらのいずれかに嵌合している連結軸45を露出させ、連結軸45を他の共孔41a、42a;41b、42b;41c、42cに嵌合可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座を外郭カバーが装着された駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の昇降便座としては、2つのリンクを連結軸で回動自在に連結し、略X字状のリンクを形成し、便器の両側に一対の支持台を配し、支持台を便器と同じく床などに置き、支持台と便座の間に略X字状のリンクを介在させ、2つのリンクの端部をスライド駆動することで、便座を前方に傾けながら上昇させ、便座を略水平な姿勢から前傾した待機姿勢にすることで、例えば、腰痛などで腰を十分に落として便座に座ることができない人のために、腰をわずかに曲げるだけで、その人の臀部を便座が受け止めることができるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、便器の両側に一対の側枠部を配し、側枠部を便器と同じく床などに置き、側枠部に平行四節リンクを介して便座を連結し、電動伸縮駆動体によって、平行四節リンクを駆動させて、便座を略水平な着座姿勢に維持しながら上昇させ、便座の待機姿勢を着座姿勢とほぼ同じ略水平にすることで、例えば、車椅子を使用している人が、車椅子から便座に容易に乗り移ることができるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
しかしながら、上述のような従来の昇降便座では、特許文献1の技術のように便座の待機姿勢を前傾したものにする機種および特許文献2の技術のように便座の待機姿勢を着座姿勢とほぼ同じ略水平にする機種の2つの機種がそれぞれ別個に存在しているが、2つの機種の一方から他方の機種に変更することができない。そのため、昇降便座の製造、販売者は、2つの機種を別々に製造、販売する必要があって、コスト高の要因になる。また、この2つの機種の一方を購入して使用した者が他方の機種を使用する場合には、他方の機種を新たに購入する必要があるという問題点があった。
【0005】
また、特許文献1の技術では一対の支持台が、特許文献2の技術では一対の側枠部がそれぞれ例えばトイレルームの床に置かれているので、便器の両側に他の物を置くためのスペースが大幅に制限されるという問題もあった。
【0006】
そこで、特許文献3に開示されているように、同一の機種で簡単な操作によって便座の待機姿勢を変更可能にした昇降便座が提供されている。この昇降便座は、2つのリンク部材に穿設した複数の共孔の何れかに連結軸を嵌合させて2つのリンク部材を連結させるようになっており、何れの共孔に連結軸を嵌合させるかによって便座の待機姿勢を変更することが可能なものである。
【0007】
【特許文献1】特開平7−289477号公報
【特許文献2】特開平11−169406号公報
【特許文献3】特願2003−207825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載された発明は、特許文献1および特許文献2の従来の技術が有する問題点を解決しており、便座の待機姿勢を変更するときは、前記共孔に嵌合している連結軸を取り外して他の共孔に嵌合させればよく変更作業が簡易である。
【0009】
しかしながら、この変更作業を行うときには、昇降便座に取り付けられた便座を取り外し、昇降便座本体をカバーしている外郭カバーを取り外す必要があり、変更作業の工数と時間に改善の余地があった。
【0010】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に着目してなされたもので、待機姿勢の変更作業に要する工数を大きく減縮し、作業時間を大幅に短縮し、かつ、狭いトイレルームでも容易に変更作業をすることができる昇降便座を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]便座(10)を外郭カバー(60)が装着された駆動機構(20)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記外郭カバー(60)は、着脱可能な待機姿勢変更部(61)を備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、該2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に前記連結軸(45)を嵌合させるための複数の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)が穿設され、
前記連結軸(45)が前記複数の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)のうち何れに嵌合しているかによって上昇した便座(10)の待機姿勢が異なり、
前記待機姿勢変更部(61)は、前記外郭カバー(60)から外されると前記複数の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)および前記連結軸(45)を露出可能に配設され、露出した前記複数の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)のいずれかに嵌合している前記連結軸(45)を取り外して他の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)に嵌合可能にしたことを特徴とする昇降便座。
【0012】
[2]便座(10)を外郭カバー(60)が装着された駆動機構(20)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記外郭カバー(60)は、着脱可能な待機姿勢変更部(61)を備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、該2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に前記連結軸(45)を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部(61)は、前記外郭カバー(60)から外されると前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)および前記連結軸(45)が露出可能に配設され、露出した前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)のいずれかに嵌合している前記連結軸(45)を取り外して前記選択的嵌合を可能にしたことを特徴とする昇降便座。
【0013】
[3]便座(10)を外郭カバー(60)が装着された駆動機構(20)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記外郭カバー(60)は、着脱可能な待機姿勢変更部(61)を備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に前記連結軸(45)を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部(61)は、前記外郭カバー(60)から外されると前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)および前記連結軸(45)が露出可能に配設され、露出した前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)のいずれかに嵌合している前記連結軸(45)を取り外して前記選択的嵌合を可能にしたことを特徴とする昇降便座。
【0014】
[4]前記駆動機構(20)は、便器(1)の両側に一対配され、
前記一対の駆動機構(20)は、前記便器(1)にそれぞれ装着されていることを特徴とする[2]または[3]に記載の昇降便座。
【0015】
[5]便座(10)を外郭カバー(60)が装着された駆動機構(20)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記外郭カバー(60)は、着脱可能な待機姿勢変更部(61)を備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、該2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に前記連結軸(45)を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部(61)は、前記外郭カバー(60)から外されると前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)および前記連結軸(45)が露出可能に配設され、露出した前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)のいずれかに嵌合している前記連結軸(45)を取り外して前記選択的嵌合を可能にするものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材(41、42)を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータ(90)と、該アクチュエータ(90)の動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段(100)とを備え、
前記リンク機構は、便器(1)の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータ(90)は、前記便器(1)の両側の一方に配され、
前記伝達手段(100)は、前記アクチュエータ(90)から各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。
【0016】
[6]便座(10)を外郭カバー(60)が装着された駆動機構(20)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記外郭カバー(60)は、着脱可能な待機姿勢変更部(61)を備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に前記連結軸(45)を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部(61)は、前記外郭カバー(60)から外されると前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)および前記連結軸(45)が露出可能に配設され、露出した前記共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)のいずれかに嵌合している前記連結軸(45)を取り外して前記選択的嵌合を可能にするものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材(41、42)を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータ(90)と、該アクチュエータ(90)の動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段(100)とを備え、
前記リンク機構は、便器(1)の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータ(90)は、前記便器(1)の両側の一方に配され、
前記伝達手段(100)は、前記アクチュエータ(90)から各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。
【0017】
[7]前記アクチュエータ(90)は、前記リンク機構の下方に配されていることを特徴とする[5]または[6]に記載の昇降便座。
【0018】
前記本発明は次のように作用する。
駆動機構(20)が少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、2つのリンク部材(41、42)が、その2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、共孔が水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを含むものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているとき、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に回動すると、便座(10)が駆動機構(20)によって略水平な着座姿勢と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢とに昇降するようになっている。
【0019】
便座(10)の姿勢を変えながら便座(10)を昇降させるには、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)から外して、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合させればよい。このように、連結軸(45)の嵌合する共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)を変え、2つのリンク部材(41、42)の回動中心を変更することによって、便座(10)が下降したときに略水平な着座姿勢になる一方、便座(10)が上昇したとき、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になる。
【0020】
例えば、水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とは、2つのリンク部材(41、42)の各々において別々の位置に穿設される。しかしながら、2つのリンク部材(41、42)の一方において、水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを同一の位置に設けるようにしてもよい。この場合、2つのリンク部材(41、42)の他方においては、水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)とを別々の位置に設ける。
【0021】
このように穿設された水平待機姿勢用共孔(41a、42a)および前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)の何れかに嵌合されている連結軸(45)を取り外して他方の共孔に選択的に嵌合するためには、先ず、便座(10)が着座姿勢にあるときに外郭カバー(60)から待機姿勢変更部(61)を取り外す。
【0022】
待機姿勢変更部(61)を取り外すと、外郭カバー(60)内部の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)およびそれらのいずれかに嵌合している連結軸(45)が露出する。この状態で、連結軸(45)を取り外して他の共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)に嵌合させ、その後に待機姿勢変更部(61)を外郭カバー(60)に取り付ければ良い。このように、便座(10)の待機姿勢を変更するための作業には昇降便座に取り付けられた便座(10)を取り外す作業および昇降便座本体から外郭カバー(60)を取り外す作業の何れも不要であり、待機姿勢変更部(61)を外郭カバー(60)から取り外すだけでよいので、待機姿勢変更のための作業が極めて簡易になる。
【0023】
また、待機姿勢変更部(61)は、外郭カバー(60)から取り外したときに共孔(41a、42a;41b、42b;41c、42c)およびそれらのいずれかに嵌合している連結軸(45)が露出するだけの大きさがあればよいので、狭いトイレルームであっても、何の支障もなく容易に取外しおよび取付けができる。さらに、待機姿勢変更部(61)をトイレルームの床面に置いても作業の邪魔になることは皆無である。
【0024】
2つのリンク部材(41、42)がX字状リンクを構成したものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に合わせ、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動することによって、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になり、便座(10)が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら待機姿勢に昇降するようになる。
【0025】
一方、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)から外して、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合させると、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動することによって、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になり、便座(10)が着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに昇降するようになる。
【0026】
2つのリンク部材(41、42)を共に起立した状態がX字状リンクの高さの最大値であり、また、2つのリンク部材(41、42)を共に倒伏した状態がX字状リンクの幅の最大値である。したがって、X字状リンクを取り付けるための取付スペースは、高さ方向および幅方向共に、リンク部材(41、42)の長さと同じ長さを確保できれば十分である。
【0027】
駆動機構(20)が便器(1)の両側に一対配され、一対の駆動機構(20)が便器(1)にそれぞれ装着されているものでは、駆動機構(20)を床などに置く必要がなく、便器(1)の両側に位置する床のスペースが狭いトイレルームなどであっても、装置を設置することができる。
【0028】
次に、リンク機構は、便器(1)の両側にそれぞれ配され、アクチュエータ(90)は、便器(1)の両側の一方に配され、伝達手段(100)は、アクチュエータ(90)から各リンク機構にそれぞれ延ばされているものでは、昇降便座は以下のように動作する。
【0029】
アクチュエータ(90)が始動すると、アクチュエータ(90)の動力が伝達手段(100)を介して各々のリンク機構に伝わり、各リンク機構が作動する。連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているときには、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に回動し、便座(10)が略水平な着座姿勢と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢とに昇降する。
【0030】
一方、連結軸(45)を前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合させているときには、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に回動し、便座(10)が下降したときに略水平な着座姿勢になる一方、便座(10)が上昇したとき、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になる。
【0031】
次に、2つのリンク部材(41、42)がX字状リンクを構成したものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているときには、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になり、便座(10)が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら待機姿勢に昇降するようになる。
【0032】
一方、連結軸(45)を前傾待機姿勢用共孔(41b、42b;41c、42c)に嵌合させているときには、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに昇降するようになる。
【0033】
次に、アクチュエータ(90)がリンク機構の下方に配されているものでは、アクチュエータ(90)とリンク機構とを水平に並べて配置しないで済み、リンク機構およびその周辺部材の厚みを減らすことができ、便座(10)の脇に温水タンクが配されるようなタイプの衛生洗浄装置であっても、リンク機構回りが温水タンクまで張り出さないから、温水タンクをリンク機構回りに干渉することなく配することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる昇降便座によれば、外郭カバーから小さな部材である待機姿勢変更部を取り外して共孔および連結軸を露出させることにより、連結軸を所望の共孔を選択して嵌合させることができるので、便座の待機姿勢の変更作業に要する工数を大きく減縮するとともに作業時間を大幅に短縮することができる。
【0035】
また、狭いトイレルームでも容易に変更作業をすることができる待機姿勢変更部は、外郭カバーから取り外したときに共孔およびそれらのいずれかに嵌合している連結軸が露出するだけの大きさがあればよいので、小さな部材でよく、狭いトイレルームであっても、何の支障もなく容易に取外しおよび取付けができる。さらに、待機姿勢変更部をトイレルームの床面に置いても作業の邪魔になることが皆無である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1〜図9は、本発明の一実施の形態を示している。図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係る昇降便座の外観を示す図であり、図4〜図9は、昇降便座の駆動機構を示す図である。
【0037】
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る昇降便座は、洋式便器1に取り付けて使用されるものである。図1および図2並びに図6〜図9に示すように、昇降便座は便座10を固定するための便座ベース30とこの便座ベース30を支持して昇降させるための駆動機構20を備えている。
【0038】
便座ベース30は、便器1の両側の駆動機構20の上部でそれらを連結するように設けられており、便器1に沿って略U字形状に形成されていて、前方に開いた開放口を有している。この便座ベース30は、便座10と便器1との間に介在して、便座10を支持するものである。
【0039】
駆動機構20は、便器1の両側に配置されて一対を成すように装着されている。図1に示すように、駆動機構20はベース部材21に配設されている。ベース部材21には、後述するリンク部材42に設けられたプーリ部材101が往復動可能なガイド溝23aが形成されている。
【0040】
駆動機構20は、リンク機構を構成する2つのリンク部材41、42と、連結軸45と、リンク部材41、42を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータ90と、このアクチュエータ90の動力をリンク機構に伝達するための伝達手段100とを備えている。これらのうちアクチュエータ90は、便器1の両側のうち片側に配置されている。
【0041】
これら2つのリンク部材41、42は、X字状リンクを構成している。リンク部材41は、一方の端部が軸部材57aによってベース部材21の前側寄りの部分に回転可能に支持されている。他方の端部は、便座ベース30の後部の側面に形成された不図示のスライド溝に沿ってスライド可能に連結されている。
【0042】
リンク部材42は、一方の端部にプーリ部材101が回転可能に支持されている。このプーリ部材101は、ベース部材21に形成された前記ガイド溝23aに移動可能に嵌合している。リンク部材42の他方の端部は、便座ベース30の前部の側面に軸部材57bによって揺動可能に支持されている。
【0043】
一方のリンク部材41と他方のリンク部材42との互いに重なる部分には、連結軸45が着脱して選択的に嵌合可能にする共孔がそれぞれ穿設されている。共孔は、水平待機姿勢用共孔41a、42aおよび前傾待機姿勢用共孔41b、42b、41c、42cを含んでいる。一方のリンク部材41には、水平待機姿勢用共孔41aおよび前傾待機姿勢用共孔41b、41cが穿設されている。また、他方のリンク部材42には、水平待機姿勢用共孔42aおよび前傾待機姿勢用共孔42b、42cが穿設されている。
【0044】
これら共孔は、図5、図7および図9に示すように、便座ベース30を着座姿勢にしたとき、リンク部材41の水平待機姿勢用共孔41aとリンク部材42の水平待機姿勢用共孔42aとは、それらの位置が一致して同心となり、リンク部材41の前傾待機姿勢用共孔41bとリンク部材42の前傾待機姿勢用共孔42bとは、それらの位置が一致して同心となり、リンク部材41の前傾待機姿勢用共孔41cとリンク部材42の前傾待機姿勢用共孔42cとは、それらの位置が一致して同心となる。すなわち、便座ベース30を着座姿勢にしたとき、リンク部材41の共孔41a、41b、41cとリンク部材42の共孔42a、42b、42cとは、それぞれ連結軸45によって連結されるべきもの同士の位置が一致して同心となる。したがって、便座ベース30が着座姿勢にあるときに連結軸45を着脱して選択的に共孔に嵌合させることができる。
【0045】
前傾待機姿勢用共孔41b、42bおよび前傾待機姿勢用共孔41c、42cのいずれかに連結軸45を嵌合させたときの待機姿勢における便座ベース30の前傾度合いは、前傾待機姿勢用共孔41b、42bに連結軸45を嵌合させたときよりも、前傾待機姿勢用共孔41c、42cに連結軸45を嵌合させたときの方が大きい。
【0046】
図4、図6および図8は、便座ベース30を待機姿勢にしたときの駆動機構20の状態を示しており、図5、図7および図9は、便座ベース30を着座姿勢にしたときの駆動機構20の状態を示している。このように、連結軸45は、共孔に嵌合することによって、2つのリンク部材41、42を共に倒伏した図5、図7および図9それぞれに示す折畳状態と、共に起立した図4、図6および図8それぞれに示す展開状態とに回動可能に支持するものである。
【0047】
図4および図5に示すように、駆動機構20は、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合させることによって、連結軸45を中心に2つのリンク部材41、42を回動させ、2つのリンク部材41、42を折畳状態と展開状態とに変動させて、便座ベース30がほぼ水平になる着座姿勢(図5に示した姿勢)と、便座ベース30がやはりほぼ水平になって待機する水平待機姿勢(図4に示した姿勢)とに昇降させることができる。
【0048】
また、図6および図7に示すように、駆動機構20は、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合することによって、連結軸45を中心に2つのリンク部材41、42を回動させ、2つのリンク部材41、42を折畳状態と展開状態とに変動させて、便座ベース30がほぼ水平になる着座姿勢(図7に示した姿勢)と、便座ベース30がその着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢(図6に示した姿勢)とに昇降させるものである。
【0049】
さらに、図8および図9に示すように、駆動機構20は、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41c、42cに嵌合することによって、同様にリンク部材41、42を折畳状態と展開状態とに変動させて、便座ベース30がほぼ水平になる着座姿勢(図9に示した姿勢)と、便座ベース30がその着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢であって、前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合したときの前傾よりも前傾度合いの大きい前傾待機姿勢(図8に示した姿勢)とに昇降させるものである。
【0050】
ベース部材21には、アクチュエータ90とプーリ部材101との間の高さに中継プーリ105が回転可能に支持されている。
【0051】
アクチュエータ90は、本体ケース91と、動力源であるモータMと、モータMの回転を減速して伝達手段100へ出力するための減速機構、モータMを制御するためのコントローラなどを備えている。また、アクチュエータ90は、リンク機構の下方に配されている。アクチュエータ90をリンク機構の下方に配することで、アクチュエータ90とリンク機構とを水平に並べて配置しないで済み、リンク機構およびその周辺部材の厚みを減らして、リンク機構回りを薄型にすることができる。
【0052】
伝達手段100は、ワイヤ103、104が巻き掛けられた前記のプーリ部材101および中継プーリ105、アクチュエータ90の動力によってワイヤ103、104を巻き取ったり、巻き戻したりするための不図示の巻取り/巻戻し機構などを備えている。なお、ワイヤ103は、便器1の両側のうち図示されない方に配設されたリンク機構にアクチュエータ90の動力を伝達するためのものである。この伝達手段100により、アクチュエータ90を各リンク機構に対応して便器1の両側にそれぞれ設ける必要がない。
【0053】
図1〜図3に示すように、以上のように構成された昇降便座には、駆動機構20に外郭カバー60が外装されている。
外郭カバー60は、駆動機構20を側面側から覆うための下部カバーと、駆動機構20を便座ベース30の上から覆うため上部カバー60bとを有している。これら、下部カバー60aと上部カバー60bとは、便座10を上昇した状態にしても互いに重なるように構成されている。
【0054】
上部カバー60bには、上部カバー60bに着脱可能な待機姿勢変更部61と、昇降便座の動作を操作するための操作スイッチ63と、手で握ることができるグリップ64とが設けられている。待機姿勢変更部61は、便座10の待機姿勢を変更するために水平待機姿勢用共孔41a、42a、前傾待機姿勢用共孔41b、42bおよび前傾待機姿勢用共孔41c、42cのいずれかの共孔に嵌合している連結軸45を取り外して他の共孔に取り付ける作業をするときに上部カバー60bから外すだけで当該作業を可能にするものである。
【0055】
この待機姿勢変更部61は、上部カバー60bの外表面に一体となるように形成されている。また、待機姿勢変更部61には、取付けねじ61bによって上部カバー60bに取り付けるためのねじ穴61aが穿設されている。この待機姿勢変更部61を上部カバー60bから取り外すと、上部カバー60bに穿設された貫通孔62が現れる。
【0056】
この貫通孔62は、便座ベース30が着座姿勢にあるときに、水平待機姿勢用共孔41a、42a、前傾待機姿勢用共孔41b、42b、前傾待機姿勢用共孔41c、42c、およびこれらのいずれかに嵌合している連結軸45が露出する位置および大きさに形成されている。したがって、待機姿勢変更部61を上部カバー60bから外すだけで、上記の待機姿勢を変更するための作業をすることができる。貫通孔62の周縁には、待機姿勢変更部61を上部カバー60bに取り付けたときに、待機姿勢変更部61を受ける受部62bが形成されている。
【0057】
この受部62bは、上部カバー60bの外表面から窪んでおり、待機姿勢変更部61を取り付けたときに待機姿勢変更部61の外表面が上部カバー60bの外表面と一体になるように形成されている。また、受部62bには、待機姿勢変更部61を固定するときに待機姿勢変更部61のねじ穴61aと同心になるように形成されたねじ穴62aが形成されている。
【0058】
待機姿勢変更部61は、小ぶりの部材である上に上部カバー60bに容易に着脱することができるので、待機姿勢を変更するための作業が容易であり邪魔にならず、また、作業時間を短縮することができる。
【0059】
次に作用を説明する。
図5および図8に示すように、便器1の両側に一対の駆動機構20が配され、一対の駆動機構20のベース部材21が便器1の両側側縁部にそれぞれ装着されている。その駆動機構20に便座ベース30を介して便座10が支持されている。すなわち、本実施の形態に係る昇降便座は便器1に設置するものである。
【0060】
図4および図5に示すように、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合させているとき、2つのリンク部材41、42が連結軸45を中心に回動すると、便座ベース30が駆動機構20によって略水平な着座姿勢(図5に示す姿勢)と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢(図4に示す姿勢)とに昇降するようになっている。
【0061】
便座ベース30を着座姿勢から水平待機姿勢にするには、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合させ、駆動モータMを正転させればよい。操作スイッチ63を操作することによって駆動モータMが正転すると、ワイヤ103、104が巻き取られ、ワイヤ103、104が巻き掛けられたプーリ部材101がガイド溝23aに沿って移動する。
【0062】
これにより、2つのリンク部材41、42が連結軸45を中心に回動して、折畳状態から展開状態に変動する。したがって、2つのリンク部材41、42は共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座ベース30が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら水平待機姿勢に上昇する。
【0063】
便座10を水平待機姿勢から着座姿勢に下降させるときは、駆動モータMを逆転させればよい。これにより、ワイヤ104が巻き戻され、ワイヤ104が巻き掛けられたプーリ部材101がガイド溝23aに沿って逆方向に移動する。
【0064】
これにより、2つのリンク部材41、42が連結軸45を中心に回動して、展開状態から折畳状態に変動する。したがって、2つのリンク部材41、42が共に起立した状態から共に倒伏した状態になって、便座10が水平待機姿勢から略水平な姿勢を維持しながら着座姿勢に下降する。
【0065】
このように便座ベース30が水平待機姿勢になるように動作する昇降便座を便座ベース30が前傾して待機する前傾待機姿勢にするには、先ず、便座ベース30を図5の着座姿勢にして、待機姿勢変更部61の取付けねじ61bを外して待機姿勢変更部61を上部カバー60bから外す。これにより、貫通孔62から駆動機構20の全ての共孔と連結軸45とが露出する。このとき、連結軸45は、水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合している。この連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aから外して、前傾待機姿勢用共孔41b、42bまたは前傾待機姿勢用共孔41c、42cに嵌合させる。
【0066】
例えば、図7のように水平待機姿勢用共孔41a、42aの隣にある前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合させる。次に、待機姿勢変更部61を取付けねじ61bで上部カバー60bに固定すればよい。
【0067】
このようにして、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合し、昇降便座は、前記のように駆動モータMの回転による駆動力によって2つのリンク部材41、42が動作して、図7に示した着座姿勢にある便座ベース30は、徐々に前傾の度合いを大きくしながら、図6に示した前傾待機姿勢まで上昇する。この前傾待機姿勢から着座姿勢まで便座ベース30が戻るときは、前傾の度合いを徐々に小さくしながら便座ベース30がほぼ水平となる着座姿勢まで下降する。
【0068】
前傾待機姿勢における便座ベース30の前傾角度をより大きくしたいときには、前記のように便座ベース30が着座姿勢にある状態で上部カバー60bから待機姿勢変更部61を取り外し、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41b、42bから外して前傾待機姿勢用共孔41c、42cに嵌合させればよい。
【0069】
これにより、便座ベース30は、図9に示したほぼ水平状態にある着座姿勢から徐々に前傾角度を増して図8に示す大きく前傾した前傾待機姿勢まで上昇する。これにより、前傾待機姿勢は図6に示した場合よりも大きく前傾するようにできる。この前傾待機姿勢から着座姿勢まで便座ベース30が戻るときは、前記したように前傾の度合いを徐々に小さくしながら便座ベース30がほぼ水平となる着座姿勢まで下降する。
【0070】
以上説明した本実施の形態では、駆動機構20は、2つのリンク部材41、42を備えたものに限らず、4つのリンク部材を備えた、平行四節リンクに類似したものであってもよく、5以上のリンク部材を備えたものであってもよい。リンク部材41の共孔とリンク部材42の共孔とは、それぞれ連結軸45によって連結されるべきもの同士の位置が一致して同心となる姿勢のときにそれらを露出させることができる位置と範囲に待機姿勢変更部61を設けておけば、4つのリンク部材で平行四節リンクに類似した駆動機構20を構成し、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合すれば、便座10は略水平な姿勢を維持しながら昇降するようになる。一方、4つのリンク部材で平行四節リンクにならないように駆動機構20を構成し、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41b、42bまたは前傾待機姿勢用共孔41c、42cに嵌合すれば、便座10が着座姿勢からその姿勢を前方へ傾けながら昇降するようになる。
【0071】
さらに、本実施の形態においては、2つのリンク部材41、42の互いに重なる部分に共孔を穿設する場合に、少なくとも水平待機姿勢用共孔41a、42aと前傾待機姿勢用共孔41b、42bとを含むようにすればよい。また、図示したように水平待機姿勢用共孔41a、42a、前傾待機姿勢用共孔41b、42b、および前傾待機姿勢用共孔41c、42cを含め共孔を3またはそれ以上設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る昇降便座を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る昇降便座の斜視図であって、便座が下降している状態を示す図である。
【図3】図2における待機姿勢変更部を外郭カバーから外した状態を示す部分斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る昇降便座において、便座ベースが上昇して、着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢になったときの駆動機構を示す側面図である。
【図5】同じく昇降便座において、便座ベースを下降させたときの駆動機構を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る昇降便座において、便座ベースが上昇して、着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢となったときの駆動機構を示す側面図である。
【図7】図6の前傾待機姿勢から便座ベースを下降させたときの駆動機構を示す側面図である。
【図8】図6の前傾待機姿勢よりも前傾の度合いが大きくなるように調節したときの前傾待機姿勢時の駆動機構を示す側面図である。
【図9】図8の前傾待機姿勢から便座ベースを下降させたときの駆動機構を示す側面図である。
【符号の説明】
【0073】
M…駆動モータ
1…便器
10…便座
20…駆動機構
21…ベース部材
23a…ガイド溝
30…便座ベース
41…リンク部材
41a、42a…水平待機姿勢用共孔
41b、42b…前傾待機姿勢用共孔
41c、42c…前傾待機姿勢用共孔
42…リンク部材
45…連結軸
57a、57b…軸部材
60…外郭カバー
60a…下部カバー
60b…上部カバー
61…待機姿勢変更部
61a、62a…ねじ穴
61b…取付けねじ
62…貫通孔
62b…受部
63…操作スイッチ
64…グリップ
90…アクチュエータ
91…本体ケース
100…伝達手段
101…プーリ部材
103、104…ワイヤ
105…中継プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を外郭カバーが装着された駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記外郭カバーは、着脱可能な待機姿勢変更部を備え、
前記2つのリンク部材は、該2つのリンク部材の互いに重なる部分に前記連結軸を嵌合させるための複数の共孔が穿設され、
前記連結軸が前記複数の共孔のうち何れに嵌合しているかによって上昇した便座の待機姿勢が異なり、
前記待機姿勢変更部は、前記外郭カバーから外されると前記複数の共孔および前記連結軸を露出可能に配設され、露出した前記複数の共孔のいずれかに嵌合している前記連結軸を取り外して他の共孔に嵌合可能にしたことを特徴とする昇降便座。
【請求項2】
便座を外郭カバーが装着された駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記外郭カバーは、着脱可能な待機姿勢変更部を備え、
前記2つのリンク部材は、該2つのリンク部材の互いに重なる部分に前記連結軸を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部は、前記外郭カバーから外されると前記共孔および前記連結軸が露出可能に配設され、露出した前記共孔のいずれかに嵌合している前記連結軸を取り外して前記選択的嵌合を可能にしたことを特徴とする昇降便座。
【請求項3】
便座を外郭カバーが装着された駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記外郭カバーは、着脱可能な待機姿勢変更部を備え、
前記2つのリンク部材は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材の互いに重なる部分に前記連結軸を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部は、前記外郭カバーから外されると前記共孔および前記連結軸が露出可能に配設され、露出した前記共孔のいずれかに嵌合している前記連結軸を取り外して前記選択的嵌合を可能にしたことを特徴とする昇降便座。
【請求項4】
前記駆動機構は、便器の両側に一対配され、
前記一対の駆動機構は、前記便器にそれぞれ装着されていることを特徴とする請求項2または3に記載の昇降便座。
【請求項5】
便座を外郭カバーが装着された駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記外郭カバーは、着脱可能な待機姿勢変更部を備え、
前記2つのリンク部材は、該2つのリンク部材の互いに重なる部分に前記連結軸を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部は、前記外郭カバーから外されると前記共孔および前記連結軸が露出可能に配設され、露出した前記共孔のいずれかに嵌合している前記連結軸を取り外して前記選択的嵌合を可能にするものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータと、該アクチュエータの動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段とを備え、
前記リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータは、前記便器の両側の一方に配され、
前記伝達手段は、前記アクチュエータから各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。
【請求項6】
便座を外郭カバーが装着された駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記外郭カバーは、着脱可能な待機姿勢変更部を備え、
前記2つのリンク部材は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材の互いに重なる部分に前記連結軸を嵌合させるための共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に着脱可能であり、前記水平待機姿勢用共孔および前記前傾待機姿勢用共孔に選択的に嵌合可能なものであり、
前記待機姿勢変更部は、前記外郭カバーから外されると前記共孔および前記連結軸が露出可能に配設され、露出した前記共孔のいずれかに嵌合している前記連結軸を取り外して前記選択的嵌合を可能にするものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータと、該アクチュエータの動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段とを備え、
前記リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータは、前記便器の両側の一方に配され、
前記伝達手段は、前記アクチュエータから各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記リンク機構の下方に配されていることを特徴とする請求項5または6に記載の昇降便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−161400(P2008−161400A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353591(P2006−353591)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】