説明

昇降圧コンバータ

【課題】ハイサイドにn型MOSFETを使用する昇降圧コンバータにおいて、より容易に昇圧モードを実現する。
【解決手段】昇降圧コンバータ100は、降圧モードにおいて、ハイサイドn型MOSFET134のオンオフにより、バッテリ電圧Vbatよりも低い駆動電圧Vdを生成する降圧部102と、昇圧モードにおいて、ローサイドn型MOSFET128のオンオフにより、バッテリ電圧Vbatよりも高い駆動電圧Vdを生成する昇圧部104と、昇圧モードにおいて、ローサイドn型MOSFET128のオンオフを利用してブートストラップキャパシタ114を充電する充電部142と、昇圧モードにおいて、充電されたブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbをハイサイドn型MOSFET134のゲートに印加するハイサイドスイッチ駆動部138と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED(Light Emitting Diode)などの半導体光源に駆動電圧を印加する昇降圧コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前照灯などの車両用灯具に、従来のフィラメントを有するハロゲンランプに代えてより長寿命で低消費電力のLEDが利用されている。LEDの発光の度合いすなわち明るさはLEDに流す電流の大きさに依存するので、LEDを光源として利用する場合にはLEDに流れる電流を調節するための点灯回路が必要となる。そのような点灯回路は通常エラーアンプを有し、LEDに流れる電流が一定となるようにフィードバック制御する。
【0003】
点灯回路への電力は、通常車載バッテリから供給される。車載バッテリは点灯回路以外にも車両の様々な部分に電力を供給するので、バッテリ電圧の変動は比較的大きい。このバッテリ電圧がLEDの順方向降下電圧をまたいで変動しうる場合は、点灯回路はバッテリ電圧を昇圧する機能と降圧する機能とを兼ね備えることが望ましい。
【0004】
特許文献1には昇降圧チョッパ型のDC/DCコンバータが開示されている。このコンバータではハイサイドのスイッチング素子としてp型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−198410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両用灯具の光源として使用されるLEDには、要求される明るさを実現するために比較的大きな電流を流すことが多い。したがって、昇降圧チョッパ型のDC/DCコンバータを使用してそのようなLEDを点灯させる場合、ハイサイドのスイッチング素子として、一般的にp型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタよりオン抵抗の低いn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを採用することが望ましい。
【0007】
n型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタをオンするためにはゲート電圧をソース電圧よりも高める必要がある。これに対応して、従来、n型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ自体のオンオフ動作を使用して必要なゲート電圧を生成するブートストラップ回路が知られている。しかしながら、昇降圧コンバータの昇圧モードではハイサイドのn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを常時オンとしておかなくてはならないので、従来のブートストラップ回路を使用した場合、必要なゲート電圧を継続的に得ることは難しい。すなわち、従来のブートストラップ回路では、昇圧モードにおいてハイサイドのn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを常時オンとしておくことが原理的に困難である。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御端子に印加される電圧が入出力端子の電圧よりも高いとオンされるスイッチング素子を降圧用のスイッチング素子として採用した場合に、より容易に昇圧モードを実現できる昇降圧コンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、昇降圧コンバータに関する。この昇降圧コンバータは、車両用灯具に含まれる少なくともひとつの半導体光源に駆動電圧を印加する昇降圧コンバータであって、降圧モードにおいて、本昇降圧コンバータへの入力電圧が一端に印加される第1スイッチング素子のオンオフにより、入力電圧よりも低い駆動電圧を生成する降圧部と、昇圧モードにおいて、入力電圧よりも低い固定電圧が一端に印加される第2スイッチング素子のオンオフにより、入力電圧よりも高い駆動電圧を生成する昇圧部と、を備える。第1スイッチング素子は、制御端子に印加される電圧が他端の電圧よりも高いとオンされる。本昇降圧コンバータはさらに、一端が第1スイッチング素子の他端と接続されたブートストラップキャパシタと、昇圧モードにおいて、第2スイッチング素子のオンオフを利用してブートストラップキャパシタを充電する充電部と、昇圧モードにおいて、充電部によって充電されたブートストラップキャパシタの他端の電圧を第1スイッチング素子の制御端子に印加するスイッチ駆動部と、を備える。
【0010】
この態様によると、昇圧モードにおいて、第2スイッチング素子のオンオフを利用して第1スイッチング素子をオンすることができる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御端子に印加される電圧が入出力端子の電圧よりも高いとオンされるスイッチング素子を降圧用のスイッチング素子として採用した昇降圧コンバータにおいて、より容易に昇圧モードを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る昇降圧コンバータの構成を示す回路図である。
【図2】降圧モードにおける図1の昇降圧コンバータの動作状態を示すタイムチャートである。
【図3】昇圧モードにおける図1の昇降圧コンバータの動作状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、信号には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、電圧、電流あるいは抵抗などに付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値あるいは抵抗値を表すものとして用いることがある。
【0015】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0016】
実施の形態に係る昇降圧コンバータでは、ハイサイドのスイッチング素子として、制御端子に印加される電圧が入出力端子の電圧よりも高いとオンされるスイッチング素子が採用される。例えば、ハイサイドのスイッチング素子としてn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、以下、n型MOSFETと称す)またはnpn型バイポーラトランジスタが採用される。特にn型MOSFETはp型MOSFETと比較して、流れる電流の大きいアプリケーションにより適している。
【0017】
昇降圧コンバータはハイサイドのn型MOSFETをオンするためのブートストラップ回路を有する。このブートストラップ回路は、昇降圧コンバータの降圧モードにおいて、ハイサイドのn型MOSFET自体のオンオフを利用してハイサイドのn型MOSFETをオンするための電圧を生成する。ブートストラップ回路は、昇圧モードにおいて、ローサイドのスイッチング素子のオンオフを利用してハイサイドのn型MOSFETをオンするための電圧を生成する。これにより、昇圧モードにおいてハイサイドのn型MOSFETをオン状態に維持することが可能となり、より容易に昇圧モードを実現できる。
【0018】
図1は、実施の形態に係る昇降圧コンバータ100の構成を示す回路図である。昇降圧コンバータ100は、昇降圧コンバータ100への入力電圧すなわち車載バッテリ112のバッテリ電圧Vbatを昇圧または降圧して駆動電圧Vdを生成し、LED106に印加するDC/DCコンバータである。
【0019】
LED106は車載用のLEDであり、複数のLEDを直列に接続して構成されてもよい。LED106は、不図示のバイパススイッチなどによりLEDの点灯・非点灯をLEDごとに個別に制御できるよう構成されていてもよい。LED106のアノードは昇降圧コンバータ100の駆動電圧端子160と接続され、カソードは第1接地端子162と接続される。昇降圧コンバータ100およびLED106は前照灯などの車両用灯具に搭載される。
【0020】
車載バッテリ112の正極端子は昇降圧コンバータ100のバッテリ電圧端子164と接続され、負極端子は接地されると共に昇降圧コンバータ100の第2接地端子166と接続される。これにより、バッテリ電圧端子164にはバッテリ電圧Vbatが、第2接地端子166には接地電位が、それぞれ印加される。第1接地端子162と第2接地端子166とは昇降圧コンバータ100内で実質的に等電位となるよう接続されている。また、第2接地端子166は制御部124の第3接地端子176とも接続され、制御部124に接地電位が供給される。
【0021】
昇降圧コンバータ100は、降圧部102と、昇圧部104と、入力キャパシタ110と、ブートストラップキャパシタ114と、第1抵抗116と、第2抵抗120と、制御部124と、を備える。
入力キャパシタ110の一端はバッテリ電圧端子164と接続され、他端は第2接地端子166と接続される。
【0022】
降圧部102、昇圧部104のトポロジーはいずれも一般的なものであるため簡潔に説明する。
降圧部102は、降圧モードにおいて、バッテリ電圧Vbatがドレインに印加されるハイサイドn型MOSFET134のオンオフにより、バッテリ電圧Vbatよりも低い駆動電圧Vdを生成する。降圧部102は、出力キャパシタ108と、インダクタ130と、第2ダイオード132と、ハイサイドn型MOSFET134と、を含む。
【0023】
ハイサイドn型MOSFET134のドレインはバッテリ電圧端子164と接続され、ソースは第1接続ノードN1と接続される。ハイサイドn型MOSFET134のゲートは第1抵抗116を介して制御部124のハイサイド駆動端子168と接続される。第2ダイオード132のカソードは第1接続ノードN1と接続され、アノードは第2接地端子166と接続される。インダクタ130の一端は第1接続ノードN1と接続され、他端は第1ダイオード126を介して出力キャパシタ108の一端と接続される。出力キャパシタ108の一端はまた駆動電圧端子160とも接続される。出力キャパシタ108の他端は第2接地端子166と接続される。第1接続ノードN1は制御部124のハイサイドソース電圧端子170と接続される。
【0024】
降圧モードにおいて、ハイサイド駆動端子168からハイサイドn型MOSFET134のゲートに出力されるハイサイド駆動信号S1は、LED106に流れる駆動電流ILEDの大きさに基づく電流フィードバック制御によりパルス幅変調された矩形波状の信号である。ハイサイドn型MOSFET134はハイサイド駆動信号S1により定まるオンデューティでオンオフし、出力キャパシタ108の両端電圧はバッテリ電圧Vbatよりも低い駆動電圧Vdとなる。昇圧モードではハイサイド駆動信号S1はハイサイドn型MOSFET134のソース電圧よりも高い略一定の電圧を有し、ハイサイドn型MOSFET134はオンとなる。
【0025】
昇圧部104は、昇圧モードにおいて、バッテリ電圧Vbatよりも低い固定電圧すなわち接地電位がソースに印加されるローサイドn型MOSFET128のオンオフにより、バッテリ電圧Vbatよりも高い駆動電圧Vdを生成する。昇圧部104は、出力キャパシタ108と、第1ダイオード126と、ローサイドn型MOSFET128と、インダクタ130と、を含む。
【0026】
ローサイドn型MOSFET128のドレインはインダクタ130の他端と第1ダイオード126のアノードとの第2接続ノードN2と接続され、ソースは第2接地端子166と接続される。ローサイドn型MOSFET128のゲートは第2抵抗120を介して制御部124のローサイド駆動端子172と接続される。
【0027】
昇圧モードにおいて、ローサイド駆動端子172からローサイドn型MOSFET128のゲートに出力されるローサイド駆動信号S2は、LED106に流れる駆動電流ILEDの大きさに基づく電流フィードバック制御によりパルス幅変調された矩形波状の信号である。ローサイドn型MOSFET128はローサイド駆動信号S2により定まるオンデューティでオンオフし、出力キャパシタ108の両端電圧はバッテリ電圧Vbatよりも高い駆動電圧Vdとなる。降圧モードではローサイド駆動信号S2の電圧は実質的に接地電位に固定され、ローサイドn型MOSFET128はオフとなる。
【0028】
ブートストラップキャパシタ114の一端114aは第1接続ノードN1と接続され、他端114bは制御部124のブートストラップ端子174と接続される。
【0029】
制御部124は、モードに応じて降圧部102および昇圧部104を制御するIC(集積回路、Integrated Circuit)である。制御部124は、第3ダイオード136と、ハイサイドスイッチ駆動部138と、ローサイドスイッチ駆動部140と、充電部142と、駆動パルス生成部158と、ハイサイド駆動端子168と、ハイサイドソース電圧端子170と、ローサイド駆動端子172と、ブートストラップ端子174と、第3接地端子176と、6〜10V程度の電源電圧Vccが印加されるIC電源電圧端子178と、を有する。
【0030】
ハイサイドスイッチ駆動部138はハイサイド駆動信号S1を生成してハイサイド駆動端子168に出力する。ハイサイドスイッチ駆動部138は、第1npn型バイポーラトランジスタ144と、第1pnp型バイポーラトランジスタ146と、を有する。第1npn型バイポーラトランジスタ144のコレクタは第3ダイオード136のカソードと接続される。第3ダイオード136のアノードはIC電源電圧端子178と接続される。第1npn型バイポーラトランジスタ144のエミッタは第1pnp型バイポーラトランジスタ146のエミッタと接続される。第1npn型バイポーラトランジスタ144のエミッタと第1pnp型バイポーラトランジスタ146のエミッタとの第3接続ノードN3は、ハイサイド駆動端子168と接続される。すなわち、第3接続ノードN3の電圧がハイサイド駆動信号S1の電圧となる。第1pnp型バイポーラトランジスタ146のコレクタはハイサイドソース電圧端子170と接続される。第1npn型バイポーラトランジスタ144のベースおよび第1pnp型バイポーラトランジスタ146のベースの両方には、駆動パルス生成部158によって生成されるハイサイド制御信号S3が入力される。
【0031】
ローサイドスイッチ駆動部140はローサイド駆動信号S2を生成してローサイド駆動端子172に出力する。ローサイドスイッチ駆動部140は、第2npn型バイポーラトランジスタ148と、第2pnp型バイポーラトランジスタ150と、を有する。第2npn型バイポーラトランジスタ148のコレクタはIC電源電圧端子178と接続される。第2npn型バイポーラトランジスタ148のエミッタは第2pnp型バイポーラトランジスタ150のエミッタと接続される。第2npn型バイポーラトランジスタ148のエミッタと第2pnp型バイポーラトランジスタ150のエミッタとの第4接続ノードN4は、ローサイド駆動端子172と接続される。すなわち、第4接続ノードN4の電圧がローサイド駆動信号S2の電圧となる。第2pnp型バイポーラトランジスタ150のコレクタは第3接地端子176と接続される。第2npn型バイポーラトランジスタ148のベースおよび第2pnp型バイポーラトランジスタ150のベースの両方には、駆動パルス生成部158によって生成されるローサイド制御信号S4が入力される。
【0032】
充電部142は、昇圧モードにおいて、ローサイドn型MOSFET128のオンオフを利用してブートストラップキャパシタ114を充電する。特に充電部142は、昇圧モードにおけるローサイド駆動信号S2の変動する電圧を利用する。充電部142はローサイド駆動信号S2の電圧の変動を利用するチャージポンプ回路であり、第4ダイオード152と、第5ダイオード154と、ポンプキャパシタ156と、を備える。第5ダイオード154のアノードはハイサイドソース電圧端子170と接続され、カソードは第4ダイオード152のアノードと接続される。第4ダイオード152のカソードはブートストラップ端子174と接続される。ブートストラップ端子174は第1npn型バイポーラトランジスタ144のコレクタおよび駆動パルス生成部158とも接続される。ポンプキャパシタ156の一端156aはローサイド駆動端子172と接続され、他端156bは第5ダイオード154のカソードと第4ダイオード152のアノードとの第5接続ノードN5と接続される。
【0033】
駆動パルス生成部158は、駆動電流ILEDの大きさが所定の目標値に近づくように、昇圧モードではローサイドn型MOSFET128のオンオフのデューティ比を、降圧モードではハイサイドn型MOSFET134のオンオフのデューティ比を、それぞれ制御する。駆動パルス生成部158は、例えば駆動電流ILEDの経路上に設けられた不図示の電流検出抵抗の両端電圧を駆動電流ILEDの大きさを示す電圧として使用してもよい。
【0034】
昇圧モードでは、駆動パルス生成部158は、ハイサイド制御信号S3として電圧がハイレベルに固定された信号を生成する。このハイレベルはブートストラップ端子174に印加される電圧すなわちブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbである。ブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbは、第1接続ノードN1の電圧VN1にブートストラップキャパシタ114の両端電圧ΔVを足した電圧である。
駆動パルス生成部158は、ローサイド制御信号S4として例えば数十kHzから数MHzのスイッチング周波数で電圧が矩形波状に変化する信号を生成する。ローサイド制御信号S4のハイレベルは電源電圧Vcc、ローレベルは接地電位である。駆動パルス生成部158は、駆動電流ILEDの大きさが所定の目標値に近づくように、ローサイド制御信号S4のデューティ比を調整する。
【0035】
降圧モードでは、駆動パルス生成部158は、ローサイド制御信号S4として電圧が接地電位に固定された信号を生成する。駆動パルス生成部158は、ハイサイド制御信号S3としてスイッチング周波数で電圧が矩形波状に変化する信号を生成する。ハイサイド制御信号S3のハイレベルはブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vb、ローレベルは第1接続ノードN1の電圧VN1である。駆動パルス生成部158は、駆動電流ILEDの大きさが所定の目標値に近づくように、ハイサイド制御信号S3のデューティ比を調整する。
【0036】
以上の構成による昇降圧コンバータ100の動作を説明する。
(降圧モード)
図2は、降圧モードにおける昇降圧コンバータ100の動作状態を示すタイムチャートである。図2は、上から順に、ハイサイド制御信号S3、ハイサイド駆動信号S1、第1接続ノードN1の電圧VN1、バッテリ電圧Vbat、駆動電圧Vd、ローサイド制御信号S4、ローサイド駆動信号S2、ブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vb、を示す。
【0037】
ハイサイド制御信号S3はブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbと第1接続ノードN1の電圧VN1とを繰り返す周期信号である。ハイサイド制御信号S3がハイレベルのとき第1npn型バイポーラトランジスタ144はオン、第1pnp型バイポーラトランジスタ146はオフとなるので、ハイサイド駆動信号S1の電圧は、第1npn型バイポーラトランジスタ144のコレクタの電圧すなわちブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbとなる。ハイサイド制御信号S3がローレベルのとき第1npn型バイポーラトランジスタ144はオフ、第1pnp型バイポーラトランジスタ146はオンとなるので、ハイサイド駆動信号S1の電圧は第1接続ノードN1の電圧VN1となる。後述の通りハイサイド制御信号S3がローレベルのとき第1接続ノードN1の電圧VN1は接地電位となるので、ハイサイド駆動信号S1の電圧も接地電位となる。
【0038】
ハイサイド駆動信号S1がハイレベルのとき、後述の通りブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbはバッテリ電圧Vbatよりも高いので、ハイサイドn型MOSFET134はオンし、第1接続ノードN1の電圧VN1はバッテリ電圧Vbatとなる。ハイサイド駆動信号S1がローレベルのとき、ハイサイドn型MOSFET134はオフし、第1接続ノードN1の電圧VN1は接地電位となる。
【0039】
ローサイド制御信号S4は接地電位に固定され、したがってローサイド駆動信号S2も接地電位に固定される。その結果、ローサイドn型MOSFET128は継続してオフとされる。
【0040】
このようにローサイドn型MOSFET128がオフになっている状態でハイサイドn型MOSFET134がオンオフされる結果、出力キャパシタ108にはバッテリ電圧Vbatよりも低い駆動電圧Vdが充電され、駆動電圧端子160からその駆動電圧Vdが出力される。
【0041】
ハイサイドn型MOSFET134がオフのとき、ブートストラップキャパシタ114の一端114aに印加される第1接続ノードN1の電圧VN1は接地電位となる。ブートストラップキャパシタ114の他端114bには第3ダイオード136を介して電源電圧Vccが印加される。すなわち、ブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vb=両端電圧ΔV=電源電圧Vccとなる。
【0042】
ハイサイドn型MOSFET134がオンとなると、ブートストラップキャパシタ114の一端114aに印加される第1接続ノードN1の電圧VN1はバッテリ電圧Vbatとなる。したがって、ブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbはバッテリ電圧Vbatに両端電圧ΔV=電源電圧Vccを加えた値(Vbat+Vcc)となる。
【0043】
なお、ハイサイド駆動信号S1がハイレベルのとき、ハイサイドn型MOSFET134のゲートソース間電圧はVb−VN1=(Vbat+Vcc)−Vbat=Vccなので、電源電圧Vccはハイサイドn型MOSFET134のゲートソース間電圧のしきい値よりも高いほうが好ましい。
【0044】
(昇圧モード)
図3は、昇圧モードにおける昇降圧コンバータ100の動作状態を示すタイムチャートである。図3は、上から順に、ローサイド制御信号S4、ローサイド駆動信号S2、第1接続ノードN1の電圧VN1、第5接続ノードN5の電圧VN5、ブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vb、ハイサイド制御信号S3、ハイサイド駆動信号S1、駆動電圧Vd、バッテリ電圧Vbatを示す。
【0045】
ローサイド制御信号S4は電源電圧Vccと接地電位とを繰り返す周期信号である。ローサイド制御信号S4がハイレベルのとき第2npn型バイポーラトランジスタ148はオン、第2pnp型バイポーラトランジスタ150はオフとなるので、ローサイド駆動信号S2の電圧は第2npn型バイポーラトランジスタ148のコレクタの電圧すなわち電源電圧Vccとなる。ローサイド制御信号S4がローレベルのとき第2npn型バイポーラトランジスタ148はオフ、第2pnp型バイポーラトランジスタ150はオンとなるので、ローサイド駆動信号S2の電圧は接地電位となる。
【0046】
ハイサイドn型MOSFET134は継続してオンとされるので、第1接続ノードN1の電圧VN1はバッテリ電圧Vbatで略一定となる。
ローサイド駆動信号S2がローレベルのときポンプキャパシタ156の一端156aには接地電位が印加される。ポンプキャパシタ156の他端156bには第5ダイオード154を介して第1接続ノードN1の電圧VN1すなわちバッテリ電圧Vbatが印加される。したがって、第5接続ノードN5の電圧VN5はバッテリ電圧Vbatとなる。
【0047】
ローサイド駆動信号S2がハイレベルとなると、ポンプキャパシタ156の一端156aには電源電圧Vccが印加される。したがって、第5接続ノードN5の電圧VN5は電源電圧Vccにポンプキャパシタ156の両端電圧であるバッテリ電圧Vbatを加えた値(Vcc+Vbat)となる。
【0048】
ブートストラップキャパシタ114は充電部142によって充電される。ブートストラップキャパシタ114の他端114bには、ローサイド駆動信号S2がハイレベルになるごとに、第4ダイオード152を介して電源電圧Vcc+バッテリ電圧Vbatの電圧が印加される。したがって、ブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbはバッテリ電圧Vbat+電源電圧Vccで略一定に保たれる。
【0049】
ハイサイド制御信号S3はハイレベルすなわちブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vb(=Vbat+Vcc)に固定され、したがってハイサイド駆動信号S1もブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbに固定される。ハイサイドスイッチ駆動部138は、充電部142によって充電されたブートストラップキャパシタ114の他端114bの電圧Vbをハイサイドn型MOSFET134のゲートに印加する。その結果、ハイサイドn型MOSFET134は継続してオンとされる。
【0050】
このようにハイサイドn型MOSFET134がオンになっている状態でローサイドn型MOSFET128がオンオフされる結果、出力キャパシタ108にはバッテリ電圧Vbatよりも高い駆動電圧Vdが充電され、駆動電圧端子160からその駆動電圧Vdが出力される。
【0051】
本実施の形態に係る昇降圧コンバータ100によると、昇圧モードにおいてハイサイドn型MOSFET134をオン状態に保つことができる。ハイサイドのスイッチング素子にn型MOSFETを採用する昇降圧コンバータにおいて昇圧モードでハイサイドのスイッチング素子をオンさせておく手法には、本実施の形態の手法以外にも以下の2通りが考えられる。
【0052】
1.図1に記載の昇降圧コンバータ100から充電部142を除去した構成
この場合、昇圧モードではハイサイドn型MOSFET134のスイッチングが発生しないので、ブートストラップキャパシタ114に必要な電荷を保存することが困難である。一例として、ブートストラップキャパシタ114の電荷が減少するとハイサイドスイッチ駆動部138がハイサイドn型MOSFET134を一時的にスイッチングさせて強制的にブートストラップキャパシタ114に電荷をチャージすることが考えられる。しかしながら、これでは昇圧動作中に一定周期で昇降圧コンバータが降圧動作を行うこととなるため、駆動電流ILEDが変動しうる。このような駆動電流ILEDの変動はLED106の点灯性能に悪影響を与えうる。
【0053】
これに対して本実施の形態に係る昇降圧コンバータ100では、昇圧モードにおいて、充電部142がハイサイドn型MOSFET134のオンオフ動作によらずにブートストラップキャパシタ114を充電する。したがって、ハイサイドスイッチ駆動部138は、ブートストラップキャパシタ114に充電された電圧を使用することにより、ハイサイドn型MOSFET134のゲートに継続的にソース電圧よりも高い電圧を供給できる。その結果、ハイサイドのスイッチング素子にn型MOSFETを採用する昇降圧コンバータにおいて昇圧モードでハイサイドn型MOSFETを継続的にオンとすることが可能となる。昇圧モードにおいてもLED106の高い点灯性能を維持することができる。
【0054】
2.ローサイド駆動信号S2ではなく別途生成されたチャージポンプ用矩形波を充電部に供給する構成
この場合でも、昇圧モードでハイサイドn型MOSFETを継続的にオンとすることが可能となる。しかしながら、チャージポンプ用矩形波を生成する回路を新たに追加しなければならないので、回路規模が増大しうる。
【0055】
これに対して本実施の形態に係る昇降圧コンバータ100では、昇圧モードにおいて、充電部142はローサイドn型MOSFET128のオンオフを利用してブートストラップキャパシタ114を充電する。すなわち、ローサイドスイッチ駆動部140がローサイドn型MOSFET128の駆動とブートストラップキャパシタ114の充電とで共用されるので、回路規模の増大を抑えることができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る昇降圧コンバータ100では、充電部142は制御部124に内蔵されている。したがって、充電機能を制御部124の外部に設ける場合と比較して制御部124すなわちICの端子数の増加を抑え、かつ外付け部品の増加を抑えることができる。
【0057】
以上、実施の形態に係る昇降圧コンバータの構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0058】
100 昇降圧コンバータ、 102 降圧部、 104 昇圧部、 114 ブートストラップキャパシタ、 142 充電部、 Vd 駆動電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に含まれる少なくともひとつの半導体光源に駆動電圧を印加する昇降圧コンバータであって、
降圧モードにおいて、本昇降圧コンバータへの入力電圧が一端に印加される第1スイッチング素子のオンオフにより、入力電圧よりも低い駆動電圧を生成する降圧部と、
昇圧モードにおいて、入力電圧よりも低い固定電圧が一端に印加される第2スイッチング素子のオンオフにより、入力電圧よりも高い駆動電圧を生成する昇圧部と、を備え、
前記第1スイッチング素子は、制御端子に印加される電圧が他端の電圧よりも高いとオンされ、
本昇降圧コンバータはさらに、
一端が前記第1スイッチング素子の他端と接続されたブートストラップキャパシタと、
昇圧モードにおいて、前記第2スイッチング素子のオンオフを利用して前記ブートストラップキャパシタを充電する充電部と、
昇圧モードにおいて、前記充電部によって充電されたブートストラップキャパシタの他端の電圧を前記第1スイッチング素子の制御端子に印加するスイッチ駆動部と、を備えることを特徴とする昇降圧コンバータ。
【請求項2】
前記充電部は、昇圧モードにおいて前記第2スイッチング素子の制御端子に印加される電圧を利用することを特徴とする請求項1に記載の昇降圧コンバータ。
【請求項3】
昇圧モードにおいて前記第2スイッチング素子の制御端子に印加される電圧は、前記少なくともひとつの半導体光源を流れる駆動電流の大きさが目標値に近づくようにパルス変調された電圧であることを特徴とする請求項2に記載の昇降圧コンバータ。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子はn型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の昇降圧コンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−85383(P2013−85383A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223920(P2011−223920)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】