説明

昇降旋回装置

【課題】クリーンルームや工場などで液晶基板を収容したカセットを搬送するための台車の昇降旋回装置を低床化することで、ステーションやラックなどの最低高さが増し、デッドスペースが増すことを防止する。
【解決手段】台車2に設けられた昇降動作と旋回動作とを行う昇降旋回装置であって、移動端17又は18を有するアーム19と、固定端21を有し、アーム19の中央部とピン45で回転自在に係合するアーム20と、移動端17又は18と固定端21とに螺合する左ネジ部15と右ネジ部16とを有する左右のネジ棒14R、14Lと、左右の昇降モータ10R、10Lとから成る左右一対の昇降機構と前記昇降機構の上部に設けられ、旋回テーブル40と旋回モータ22とから成る旋回機構とを有し、前記左右一対の昇降機構の間に形成された空スペースに前記旋回機構の旋回モータ22を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は昇降旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームや工場などでは、昇降旋回装置を備えた走行車を使用する。昇降装置は、ステーションやラックとの間で、物品を受け渡しするために用い、旋回装置は物品の向きを揃えるために使用する。例えば液晶基板を収容したカセットを搬送する場合に、台車に昇降装置と旋回装置とを搭載した走行車を用いる。上記の走行車では、走行機構、昇降機構、旋回機構の3つの機構を、高さ方向に沿って配置するので、高さ寸法が大きくなる。このことは、ステーションやラックなどの最低高さが増し、デッドスペースが増すことを意味する。
【0003】
例えば特許文献1の昇降装置では、パンタグラフで昇降台を昇降させ、平面視で昇降台の中央部の下部に、パンタグラフの駆動機構を設けている。特許文献1の機構をそのまま旋回機構付きの走行車に適用すると、旋回モータは昇降台の上部に配置する必要があり、走行車の高さ寸法が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−211895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、昇降旋回装置を低床化することにある。
請求項2,3の発明での追加の課題は、左右の昇降機構の昇降量が一致しないことによるトラブルを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、昇降動作と旋回動作とを行う昇降旋回装置であって、
左右一対の昇降機構を設けることにより、左右の昇降機構間に空きスペースを設けると共に、
前記左右一対の昇降機構により昇降する旋回機構を設けて、該旋回機構の駆動部を前記空きスペースに配置することを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記左右の昇降機構間での昇降量の誤差を検出するための手段を設ける。
また好ましくは、前記左右の昇降機構の各々に昇降機構の昇降動作によって昇降する昇降台を設けて、昇降台と昇降台の間を架橋ステーにより連結し、該架橋ステーにより前記旋回機構を支持すると共に、前記昇降台と前記架橋ステーとを軸方向が水平なピンで連結する。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、昇降機構を左右に一対設けることにより、旋回機構の直下に空きスペースを設け、ここに旋回機構の駆動部を配置する。この結果、昇降旋回装置の高さサイズを小さくできる。
【0009】
さらに左右の昇降機構間での昇降量の誤差を検出すると、誤差を解消するように左右の昇降機構の駆動モータをフィードバック制御し、あるいは誤差が所定値以上となったときに、昇降動作を停止させて、昇降旋回装置の損傷等を防止できる。
また左右の各昇降機構に設けた昇降台と架橋ステーを軸方向が水平なピンで連結すると、昇降台の昇降量がアンバランスな場合、架橋ステーが傾斜することにより、昇降旋回装置の損傷等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の走行車の平面図
【図2】図1から旋回テーブルを取り外した状態を示す平面図
【図3】図2から旋回機構を取り外した状態を示す平面図
【図4】実施例の走行車の側面図
【図5】実施例でのリンク機構のモデルを示す図
【図6】実施例での、左右の昇降台への架橋ステーの取付を示す図
【図7】実施例での、左右の昇降台の高さ位置の検出機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図7に、走行車2を例に昇降旋回装置の実施例を示す。各図において、4は台車で、走行車2の下部に設け、6は台車4の前後のフレーム、7R,7Lは各々台車4の右側のフレームと左側のフレームである。8は走行モータで、台車4の左右前方に一対設け、10R,10Lは昇降モータで、台車4の左右後方に一対設ける。走行車2は、昇降モータ10R,10Lを設けた側を後側、走行モータ8を設けた側を前側とし、前側に昇降モータ10R,10Lを設けて、後側に走行モータ8を設けても良い。また走行車2では、右側フレーム7Rを設けた側を右側、左側フレーム7Lを設けた側を左側とする。
【0013】
12は駆動輪で、走行モータ8により駆動し、13は従動輪である。なお走行モータ8を1台として、左右の駆動輪12,12を連結して駆動しても良い。左右のフレーム7R,7L内にネジ棒14R,14Lを設けて、左右各々の昇降モータ10R,10Lにより回転させる。ネジ棒14R,14Lは例えば中央部よりも後側が左ネジ部15で、中央部よりも前側が右ネジ部16になっている。そしてネジ棒14R,14Lに、移動端17,18を図示しないリニアガイドなどによりスライド自在に取り付け、移動端17,18にアーム19を鉛直面内で回動自在に取り付ける。またネジ棒14R,14Lの前後両端に固定端21を設けて、アーム20を鉛直面内で回動自在に取り付ける。アーム20の長さはアーム19の長さの1/2で、アーム19,20をアーム19の中点でピンにより連結する。
【0014】
22は旋回モータで、左右のフレーム7R,7L間の空きスペースに配置されている。30R,30Lは昇降台で、アーム19により昇降し、左右一対の昇降台30R,30L間を前後一対の架橋ステー32,32で接続する。架橋ステー32,32と昇降台30R,30Lとはピン34により接続し、ピン34の軸は水平でかつ前後方向を向いている。
【0015】
昇降台30R,30Lの一方に投光端36を、他方に受光端38を設け、左右の昇降台30R,30L間の高さ位置のずれを検出する。投光端36と受光端38とを合わせて光電センサという。実施例では光電センサを昇降台30R,30Lの前後双方に設けたが、片方のみに設けても良く、また架橋ステー32の左右両端など、昇降台30R,30L間の高さ位置の差を検出し得る位置で有れば、任意の位置に設けることができる。40は旋回テーブルで、ベアリング42を介して、旋回モータ22により旋回する。45はアーム19とアーム20とを接続するピン、46はアーム19と昇降台30R,30Lとを接続するピンである。
【0016】
左右の昇降モータ10R,10Lと左右のフレーム7R,7L、アーム19,20、昇降台30R,30Lなどにより、左右一対の昇降機構を設ける。旋回モータ22と、架橋ステー32、ベアリング42、並びに旋回テーブル40などにより旋回機構を設ける。そして昇降台30R,30Lを下降させると、旋回モータ22はフレーム7R,7Lと側面視で重なるようにして、旋回モータ22を左右の昇降機構間の空きスペースに収容する。
【0017】
走行車2は例えばクリーンルームに設けた倉庫内を走行し、旋回テーブル40上に液晶基板を収容したカセットなどを載置して搬送する。そして図示しないステーションやラックとの間で、旋回テーブル40の昇降により、カセットなどの物品の受け渡しを行う。カセットには向きがあるので、旋回テーブル40を旋回モータ22により180°回転させて、所望の向きに揃える。なお物品の受け渡しを行うため、旋回テーブル40上にスカラアームやスライドフォークなどの移載装置を搭載しても良い。
【0018】
昇降モータ10R,10Lを同期して、同じ回転量だけ回転させると、移動端17,18の位置は、左右のフレーム7R,7Lで共通となる。またネジ棒14R,14Lに左ネジ部15と右ネジ部16とを設けたので、移動端17,18はネジ棒14R,14Lの中心に関して対称に移動する。移動端17,18が移動すると、ピン46の高さ位置が変化し、昇降台30R,30Lの高さ位置が変化する。
【0019】
図5に、移動端17の移動によるピン46の高さ位置の変化を示す。アーム19の長さはアーム20の長さの2倍で、アーム19の中点にアーム20が取り付けられているので、図から明らかなように、ピン46は鉛直方向に移動する。移動端17がネジ棒14R,14Lの中央部付近にある場合、移動端17が移動するとピン46は大きく昇降する。これに対して移動端17が固定端21側に接近すると、移動端17を同じ距離だけ移動させても、ピン46の昇降量は小さくなる。そして物品の受け渡しを行うのは、昇降台30R,30Lを大きく上昇させた時なので、ステーションやラックなどとの間で物品を受け渡しする時点では、昇降台30R,30Lは低速で昇降し、受け渡しの前や受け渡しの後では、昇降台30R,30Lは高速で昇降する。このため物品を受け渡しする際の衝撃を小さくできる。
【0020】
左右の昇降モータ10R,10Lが完全に同期していないと、左右の昇降台30R,30Lの高さ位置に差が生じ、架橋ステー32などに無理な力が加わるおそれがある。実施例では昇降台30R,30Lと架橋ステー32とをピン34で接続するので、左右の昇降台30R,30Lに高さの差が生じると、架橋ステー32が傾斜して、架橋ステー32や昇降機構に無理な力が加わるのを防止できる。
【0021】
さらに左右の昇降台30R,30Lの高さ位置の差を監視する。実施例では受光端38側に例えば3個の受光素子51〜53を設け、これらは迷光を減らすため、キャビティ50内に配置する。左右の昇降台30R,30Lの高さが揃っていると、投光端36からの光ビームは中央の受光素子52で検出され、高さ位置に差が生じると、光ビームは上側の受光素子51もしくは下側の受光素子53で検出される。昇降制御部54は、受光素子51〜53からの信号により、左右の昇降台30R,30L間の高さ位置の差を解消するように、昇降モータ10R,10Lをフィードバック制御する。左右の昇降台30R,30Lの高さ位置の差が許容値以上となると、受光素子51〜53から信号が得られなくなり、昇降制御部54はこの場合、昇降モータ10R,10Lを停止させる。
【0022】
受光素子51〜53などを用いる代わりに、左右の昇降モータ10R,10Lの回転量をエンコーダ56で検出し、これらのエンコーダ値が一致するように、昇降モータ10R,10Lを制御しても良い。実施例では光電センサによる高さ位置の差の検出と、ピン34を用いて昇降台30R,30Lの高さ位置の差を逃がすことの双方の対策を行ったが、いずれか一方のみを行っても良い。実施例では走行車2への応用を示したが、固定の昇降装置上に旋回機構を搭載しても良い。また昇降機構の種類自体は任意である。
【0023】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 左右の昇降機構と、旋回モータ22とを高さ方向に重ねて配置できる。このため走行車2の低床化ができる。
(2) 長さの比が2:1の2つのアーム19,20を用いることにより、昇降台30R,30Lの昇降速度を、高い位置では小さく低い位置では大きくし、物品の受け渡し時の衝撃を小さくできる。
(3) ピン34を用いて、左右の昇降台30R,30Lと架橋ステー32とを接続することにより、昇降台30R,30L間の高さ位置の差に対する許容幅が生じる。
(4) 昇降台30R,30Lの高さ位置の差を、受光素子51〜53などにより検出して、昇降モータ10R,10Lにフィードバックすることにより、昇降台30R,30Lの高さ位置を等しくできる。
【符号の説明】
【0024】
2 走行車
4 台車
6 フレーム
7R,7L フレーム
8 走行モータ
10R,L 昇降モータ
12 駆動輪
13 従動輪
14R,L ネジ棒
15 左ネジ部
16 右ネジ部
17,18 移動端
19,20 アーム
21 固定端
22 旋回モータ
30R,L 昇降台
32 架橋ステー
34 ピン
36 投光端
38 受光端
40 旋回テーブル
42 ベアリング
45,46 ピン
50 キャビティ
51〜53 受光素子
54 昇降制御部
56 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降動作と旋回動作とを行う昇降旋回装置であって、
左右一対の昇降機構を設けることにより、左右の昇降機構間に空きスペースを設けると共に、
前記左右一対の昇降機構により昇降する旋回機構を設けて、該旋回機構の駆動部を前記空きスペースに配置することを特徴とする、昇降旋回装置。
【請求項2】
前記左右の昇降機構間での昇降量の誤差を検出するための手段を設けることを特徴とする、請求項1の昇降旋回装置。
【請求項3】
前記左右の昇降機構の各々に昇降機構の昇降動作によって昇降する昇降台を設けて、昇降台と昇降台の間を架橋ステーにより連結し、該架橋ステーにより前記旋回機構を支持すると共に、前記昇降台と前記架橋ステーとを軸方向が水平なピンで連結することを特徴とする、請求項1または2の昇降旋回装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148559(P2011−148559A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8867(P2010−8867)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(309031466)ムラテックオートメーション株式会社 (52)
【Fターム(参考)】