説明

昇降機改修工事用補助装置および昇降機の改修方法

【課題】改修工事の作業時間を抑制することができる昇降機改修工事用補助装置および昇降機の改修方法を提供する。
【解決手段】昇降機改修工事用補助装置10は、ワイヤーロープ7が巻き掛けられた綱車23を回転させることでワイヤーロープ7に接続されたかご5を昇降動作させるための昇降機改修工事用補助装置10であって、綱車23に係合可能な把持機構13と、把持機構13を回転させることで把持機構13に係合した綱車23を回転可能なモータ11と、モータ11と把持機構13とをそれぞれの回転軸同士がずれるのを許容するように連結し、かつモータ11の回転力を把持機構13に伝達可能な連結部材15と、モータ11を操作することで連結部材15を介して把持機構13に係合した綱車23を回転させるための操作スイッチ17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機改修工事用補助装置および昇降機の改修方法に関し、特に、昇降機の改修工事の際に使用される昇降機改修工事用補助装置および昇降機の改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータなどの昇降機の耐用年数は、20年〜25年程度が一般的である。長年使用されると老朽化のため昇降機の制御盤、巻上機、ブレーキ機構などの各装置および機器が劣化する。老朽化した昇降機の機能および安全性などを改善するため改修工事が実施されている。改修工事では昇降機全体または一部が改造あるいは交換される。そのため改修工事中、昇降機を停止する必要がある。
【0003】
改修工事は昇降機の既設部分の取り外しから始めて新しい機器の設置まで長時間を要し、昇降機を停止する期間も長時間となる。その結果、利用者は昇降機を長時間に亘って使用することができなくなる。このため、改修工事期間中における昇降機の停止期間の短縮が望まれている。特に、住宅または事務所のように昇降機が1台のみ設置されている場合、昇降機の停止期間の短縮が強く望まれている。
【0004】
たとえば、特開2004−123274号公報(特許文献1)には、エレベータの巻上機を新たな制御方式に対応させる制御リニューアルにおいて、制御リニューアル用マシンによってエレベータの停止時間を短縮する方法が提案されている。この方法では既設の巻上機に対して新たな駆動源となる制御リニューアル用マシンが連結されることによって制御リニューアルが実現される。
【0005】
この制御用リニューアルマシンは、既設の巻上機と連結するための連結機構と、新たな制御方式に対応したモータと、このモータの動力を連結機構によって連結された既設の巻上機に伝達するための伝達機構とから構成されている。そして、既設の巻上機のシーブがモータの動力によって回転する。この制御用リニューアルマシンでは、既設の巻上機がそのまま使用されるため、重量物である巻上機の交換作業が不要とされる。そのため改修工事におけるエレベータの停止時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−123274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報に記載された制御用リニューアルマシンでは、巻上機の綱車の回転軸と制御用リニューアルマシンのモータの回転軸との同軸調整をダイヤルゲージ等の測定器を用いて行う必要がある。この同軸調整には多くの時間がかかるという問題がある。
【0008】
また、制御用リニューアルマシンのモータは機械室に設置された制御盤によって制御される。そのため、作業者が機械室において制御盤を用いて制御量リニューアルマシンを制御することによって昇降機のかごが昇降する。昇降路内の制御配線架設工程では、かご上に搭乗している作業者が架設作業を行う。そのため、機械室の作業者とかご上の作業者との相互連絡に作業時間が費やされるという問題がある。
【0009】
また、制御用リニューアルマシンのモータは制御盤で制御されるため、制御盤の取替え中には、制御用リニューアルマシンは使用不能となる。したがって、制御盤の取替え中には、かごは使用不能状態となる。このため、制御盤の取替えと、かごを移動させることが必要な昇降路内の制御配線架設などの作業とを並列で実施することはできない。そのため、改修工事の作業時間が長くなるという問題がある。
【0010】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、改修工事の作業時間を抑制することができる昇降機改修工事用補助装置および昇降機の改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の昇降機改修工事用補助装置は、ワイヤーロープが巻き掛けられた綱車を回転させることでワイヤーロープに接続されたかごを昇降動作させるための昇降機改修工事用補助装置であって、綱車に係合可能な把持機構と、把持機構を回転させることで把持機構に係合した綱車を回転可能なモータと、モータと把持機構とをそれぞれの回転軸同士がずれるのを許容するように連結し、かつモータの回転力を把持機構に伝達可能な連結部材と、モータを操作することで連結部材を介して把持機構に係合した綱車を回転させるための操作スイッチとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の昇降機改修工事用補助装置によれば、モータと把持機構とをそれぞれの回転軸同士がずれるのを許容するように連結し、かつモータの回転力を把持機構に伝達可能な連結部材が備えられている。そのため、把持機構が係合された綱車の回転軸とモータの回転軸とがずれた状態でもモータの回転力を把持機構を介して綱車に伝達することで綱車を回転することができる。したがって、連結部材が綱車の回転軸とモータの回転軸とが偏心および傾くことによるずれを許容することができるため、同軸調整作業が不要になる。これにより、同軸調整にかかる時間を抑制することができる。
【0013】
また、モータを操作することで連結部材を介して把持機構に係合した綱車を回転させるための操作スイッチが備えられているため、操作スイッチを操作することによって、かご上の作業者は独自にかごを運転することができる。これにより、かご上の作業者と機械室の作業者との相互連絡が不要となるため、作業時間を抑制することができる。
【0014】
また、把持機構を係合させることにより綱車を回転させることができるため、制御盤を介さずに巻上機を制御することができる。そのため、制御盤の取替え中でもかごを昇降させることができる。このため、制御盤の取替えと並行してかごを昇降させることによって制御配線架設工程の作業を実施することができる。これにより、昇降機の改修工事の工期を短縮するこができる。このようにして、改修工事の作業時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における昇降機改修工事用補助装置が昇降機に設置された状態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における昇降機改修工事用補助装置を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1における昇降機改修工事用補助装置の変形例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1における昇降機改修工事用補助装置が綱車に取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1における昇降機改修工事用補助装置の把持機構が綱車に係合された状態を示す概略部分拡大平面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における昇降機改修工事用補助装置がモータおよび把持機構の回転軸がずれた状態で綱車に取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2における昇降機改修工事用補助装置の把持機構が綱車に係合された状態を示す概略部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の昇降機改修工事用補助装置が設置された昇降機の構成について説明する。
【0017】
図1および図2を参照して、昇降機100は、制御盤1と、巻上機2と、かご5と、つり合いおもり6と、ワイヤーロープ7とを主に有している。昇降機100は、改修工事中以外の通常運転時には、制御盤1が巻上機2を制御することにより、かご5が昇降路4を図中矢印D1方向に昇降するよう構成されている。昇降機100を制御するための制御盤1と、かご5を巻き上げるための巻上機2とが機械室3に設置されている。また、昇降機改修工事用補助装置10も機械室3に設置されている。
【0018】
制御盤1は巻上機2に電気的に接続されている。制御盤1は巻上機2を制御可能に構成されている。巻上機2は、ワイヤーロープ7が巻き掛けられた綱車23を回転させることでワイヤーロープ7に接続されたかご5を昇降動作させるためものである。巻上機2は、巻上機モータ21と、ブレーキ機構22と、綱車23とを主に有している。
【0019】
巻上機モータ21は、ワイヤーロープ7に綱車23を介してかご5を昇降動作させるための駆動力を与えるように構成されている。ブレーキ機構22は、巻上機モータ21の駆動を停止させることでかご5の昇降動作を停止可能に構成されている。綱車23は、外周に形成された溝23aにワイヤーロープ7を摺動可能に構成されている。綱車23は、中央部から外周部に伸びるように設けられたスポーク23bを有している。綱車23は、中央部で綱車回転軸24に接続されている。
【0020】
巻上機2の下方に昇降路4が形成されている。昇降路4内を昇降可能に、かご5は巻上機2を挟んでつり合いおもり6とワイヤーロープ7で接続されている。
【0021】
昇降機改修工事用補助装置10は巻上機2を制御可能に構成されている。昇降機改修工事用補助装置10は、ワイヤーロープ7が巻き掛けられた綱車23を回転させることでワイヤーロープ7に接続されたかご5を昇降動作させるための装置である。昇降機改修工事用補助装置10は、巻上機2に対して着脱可能に設けられている。
【0022】
昇降機改修工事用補助装置10は、補助装置モータ(モータ)11と、支持台12と、把持機構13と、把持機構回転軸14と、連結部材15と、ケーブル16と、操作スイッチ17とを主に有している。補助装置モータ11は支持台12に支持されている。把持機構13は綱車23に係合可能に設けられている。補助装置モータ11は、把持機構13を回転させることで把持機構13に係合した綱車23を回転可能に設けられている。
【0023】
把持機構13は、綱車23のスポーク23bを把持可能に構成されていてもよい。さらに把持機構13は爪部13aを有していてもよい。この場合、爪部13aがスポーク23bを掴むことによって把持機構13は綱車23と係合されている。また把持機構13は複数の爪部13aを有していてもよい。複数の爪部13aは互いに120°の角度で離れて配置されていてもよい。また、後述する図5に示されるように、把持機構13は、スポーク23bに接触可能な平板部材13bと、平板部材13bをスポーク23bに押圧可能なねじ部材13cとを有していてもよい。
【0024】
連結部材15は、補助装置モータ11と把持機構13とをモータ回転軸11aと把持機構回転軸14とがずれるのを許容するように連結している。連結部材15は、補助装置モータ11の回転力を把持機構13に伝達可能に設けられている。連結部材15は、たとえばユニバーサルジョイント(自在継手)で構成されている。
【0025】
補助装置モータ11にはケーブル16によって操作スイッチ17が電気的に接続されている。ケーブル16は、機械室3からワイヤーロープ7が通る図示しないロープ孔を通ってかご5上まで延びている。なお、ケーブル16は、かご5が昇降路4の下端まで下降した場合でもかご5上まで十分に届く長さ寸法を有している。
【0026】
操作スイッチ17は、補助装置モータ11を操作することで連結部材15を介して把持機構13に係合した綱車23を回転させるためのものである。操作スイッチ17は、かご5上に搭乗する作業者80が手元で使用可能に設けられていることが好ましい。操作スイッチ17は、たとえば、作業者が操作可能な、かご5を上昇させるためのUpスイッチと、かご5を下降させるためのDownスイッチとを有している。
【0027】
昇降路4の上端に位置する天井41付近および下端に位置するピット42付近にリミットスイッチ8が設置されていてもよい。リミットスイッチ8は、かご5が昇降路4の天井41付近およびピット42付近に位置したときに、かご5を感知するように設けられている。リミットスイッチ8は補助装置モータ11に電気的に接続されている。リミットスイッチ8は、かご5を感知すると補助装置モータ11への駆動信号の送信を停止可能に構成されている。リミットスイッチ8は、昇降路内壁43または昇降路内壁レール44に設置されている。
【0028】
作業者80がかご5を昇降している際、昇降路4の上端または下端にかご5が接近しすぎた場合、リミットスイッチ8がかご5を感知すると、リミットスイッチ8は補助装置モータ11への駆動信号の送信を停止する。このため、補助装置モータ11が停止し、かご5が停止する。したがって、万一、作業者80が操作スイッチ17の操作を誤った場合でも、リミットスイッチ8によって、かご5が昇降路4の上端または下端に当たるまで昇降することはない。これにより、作業の安全化が図られる。
【0029】
上述では、操作スイッチ19がケーブル16と有線接続されている場合について説明したが、操作スイッチ19はケーブル16によって有線接続されたものに限定されず、電波および赤外線通信などを使用した無線通信を用いたものであってもよい。
【0030】
図3を参照して、本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置の変形例では、操作スイッチ19は、受信機17aと、送信機17bとを主に有している。受信機17aは補助装置モータ11の回転を制御可能に設けられている。送信機17bは受信機17aと無線通信可能に設けられている。送信機17bは受信機17aを通じて補助装置モータ11の回転を制御可能に設けられている。
【0031】
次に、本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置10の動作について説明する。
図4を参照して、複数の爪部13aが綱車23の複数のスポーク23bの各々を掴むように把持機構13が綱車23に固定される。把持機構13は綱車23に嵌めこまれるように固定されている。把持機構13は綱車23に手動で固定されてもよい。
【0032】
把持機構13が綱車23に係合された状態で補助装置モータ11が連結部材15を介して把持機構13を回転させることで綱車23が図4中の矢印D2方向に回転する。そして、綱車23に巻き掛けられたワイヤーロープ7(図示せず)が図4中の矢印D2方向に移動する。これにより、ワイヤーロープ7に接続されたかご5が昇降する。
【0033】
続いて、図5を参照して、把持機構13と綱車23との固定方法についてさらに詳しく説明する。把持機構13は、把持機構13の平板部材13bがねじ部材13cによってスポーク23bに押し付けられることで綱車23に固定されてもよい。この場合、平板部材13bはねじ部材13cで可動するため、ねじ部材13cによる押し付け荷重の調整が可能である。
【0034】
たとえば、図5に示されるようにスポーク23bが三又の形状を有している場合、ねじ部材13cが所定位置まで締め込まれることで、平板部材13bがスポーク23bに押し当てられて固定される。これにより、取り付けの際のがたが無くなる。そして、把持機構13が図4中の矢印D3方向に移動する。把持機構13の中心は、固定前には中心O2に位置していたが、取り付けの際の移動に伴いスポーク23bの中心、すなわち綱車23の中心O1に移動する。綱車23の中心O1は綱車回転軸24の中心軸O3と一致する。この結果、綱車回転軸24の中心軸O3と把持機構13の中心とが一致する。なお、把持機構13は、固定によって把持機構13の中心が綱車回転軸24の中心軸O3に一致するように綱車23の型に合せて取替可能である。
【0035】
続いて、綱車回転軸24とモータ回転軸11aとがずれた状態における昇降機改修工事用補助装置10の動作について説明する。
【0036】
図6を参照して、連結部材15は補助装置モータ11と把持機構13とをモータ回転軸11aと把持機構回転軸14とが偏心および傾くことによってずれるのを許容するように連結している。そのため、モータ回転軸11aの中心軸O4と把持機構回転軸14の中心軸O5とがずれていても、補助装置モータ11の回転力が把持機構13に伝達される。なお、連結部材15は把持機構回転軸14が接続される角度を変化可能であるため、モータ回転軸11aの中心軸O4に把持機構回転軸14の中心軸O5が沿うようにモータ回転軸11aと把持機構回転軸14とが連結される。
【0037】
そして、把持機構回転軸14の中心軸O5は綱車回転軸24の中心軸O3と一致しているため、把持機構13が回転することで綱車23が回転する。したがって、綱車回転軸24の中心軸O3とモータ回転軸11aの中心軸O4とがずれた状態でも綱車23が図4中の矢印D2方向に回転する。このように、綱車回転軸24の中心軸O3とモータ回転軸11aの中心軸O4とがずれた状態でも綱車23が回転することでワイヤーロープ(図示せず)7に接続されたかご5が昇降する。
【0038】
次に、本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置を使用した昇降機の改修方法について説明する。
【0039】
再び図1を参照して、本実施の形態の昇降機100の改修方法は、制御盤1と、巻上機2とを有する昇降機100の改修方法である。まず、制御盤1が巻上機2から取り外される。これにより、巻上機2は制御盤1によって制御されなくなるため、かご5は制御盤1によって制御されなくなる。
【0040】
制御盤1を取り外した後に、昇降機改修工事用補助装置10の把持機構13が綱車23に係合される。そして、ブレーキ機構22が取り外されることで、ブレーキが開放される。これにより、昇降機100から独立した制御系である昇降機改修工事用補助装置10によって巻上機2が制御可能となる。なお、昇降機改修工事用補助装置10は、制御盤1が巻上機2から取り外される前に、巻上機2に取り付けられてもよい。
【0041】
かご5上に搭乗している作業者80によって操作スイッチ17のUPスイッチまたはDownスイッチが押されると、補助装置モータ11が駆動される。補助装置モータ11の回転力によって、把持機構13を綱車23に係合させた後に、連結部材15を介して連結された把持機構回転軸14が所望の方向へ回転する。これにより把持機構回転軸14に接続された把持機構13が回転し、把持機構13に係合した綱車23が所望の方向(図6中の矢印D2方向)へ回転する。
【0042】
これにより、操作スイッチ17によって補助装置モータ11が制御されることにより、かご5が昇降路4内の任意の場所に移動される。操作スイッチ17のUPスイッチまたはDownスイッチが離されると、補助装置モータ11の駆動が停止されて、かご5の移動が止まる。このように、制御盤1が取り外された後に、昇降機改修工事用補助装置10によって巻上機2の綱車23を回転させることで、かご5の昇降が可能となる。
【0043】
なお、上述では、綱車23は、改修工事より前から使用されている既設の綱車23である場合について説明したが、改修工事後に取り付けられた新設の綱車23であってもよい。新設の綱車23の場合には、既設の綱車23の場合と比較して改修工事の工程は昇降機改修工事用補助装置10を設置する順序が異なる。この場合、機械室3の本体工事工程の開始直後に巻上機2とともに綱車23が取替えられ、その後に昇降機改修工事用補助装置10が設置される。また、巻上機2が取替えられる場合について説明したが、巻上機2の綱車23のみが取替えられてもよい。
【0044】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
一般的な昇降機100の改修工事には様々な工程がある。時間がかかる作業として、制御盤1の取替え、巻上機2の取替え、新設制御盤1と新設巻上機2への制御配線繋ぎこみを行う機械室3の本体工事工程と、作業者80がかご5上に搭乗し、かご5を移動させて昇降路4内のハーネス、制御ケーブルの配線を行う制御配線架設工程との二つの作業がある。
【0045】
昇降機100を昇降させるための図示しないスイッチは、制御盤1を介して巻上機2に接続されている。この機械室3の本体工事において制御盤1の取替えの際には、制御盤1が巻上機2から取り外される。そのため、制御盤1と昇降機100の動力部である巻上機2との電気的な配線が絶たれる。したがって、制御盤1を取り外すと昇降機100のスイッチによる巻上機2の制御はできなくなる。
【0046】
よって、かご5は昇降不能状態となっている。そのため、制御配線架設工程が実施できない。よって、改修工事の工程としては、制御配線架設工程と機械室の本体工事作業とは、個別のタイミングで実施する必要があり、工期短縮の制約となっている。
【0047】
本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置10によれば、補助装置モータ11と把持機構13とをモータ回転軸11aと把持機構回転軸14とがずれるのを許容するように連結し、かつ補助装置モータ11の回転力を把持機構13に伝達可能な連結部材15が備えられている。そのため、把持機構13が係合された綱車回転軸24とモータ回転軸11aとがずれた状態でも補助装置モータ11の回転力を把持機構13を介して綱車23に伝達することで綱車23を回転することができる。したがって、連結部材15が綱車回転軸24とモータ回転軸11aとが偏心および傾くことによるずれを許容することができるため、同軸調整作業が不要になる。これにより、同軸調整にかかる時間を抑制することができる。よって作業時間の短縮を図ることができる。
【0048】
また、補助装置モータ11を操作することで連結部材15を介して把持機構13に係合した綱車23を回転させるための操作スイッチ17が備えられているため、操作スイッチ17を操作することによって、かご5上の作業者80は独自にかご5を運転することができる。これにより、かご5上の作業者80と機械室3の作業者との相互連絡が不要となるため、作業時間を抑制することができる。また、操作スイッチ17が備えられているため、昇降機改修工事用補助装置10を昇降機100の制御盤1に接続する必要がない。そのため、昇降機改修工事用補助装置10の巻上機2への設置および接続が容易である。
【0049】
また、把持機構13を係合させることにより綱車23を回転させることができるため、制御盤1を介さずに巻上機2を制御することができる。そのため、制御盤2の取替え中でもかご5を昇降させることができる。このため、制御盤1の取替えと並行してかご5を昇降させることによって制御配線架設工程の作業を実施することができる。これにより、昇降機100の改修工事の工期を短縮するこができる。このようにして、改修工事の作業時間を抑制することができる。
【0050】
また、昇降機改修工事用補助装置10は、シンプルな構成のため重量物ではなく、作業者が一人で容易に搬入、設置および搬出することができる。
【0051】
本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置10によれば、送信機17bは受信機17aと無線通信可能であり、かつ受信機17aを通じて補助装置モータ11の回転を制御可能に設けられている。このため、制御配線架設工程の際、送信機17bを操作することによってかご5上の作業者80は独自にかご5を運転可能となる。そのため、かご5上の作業者と機械室3の作業者との相互連絡などの連携は不要となる。これにより、制御配線架設工程の作業時間を短縮できる。よって、昇降機100の改修工事における生産性を向上することができる。
【0052】
本実施の形態の昇降機の改修方法によれば、制御盤1を巻上機2から取り外す工程と、制御盤1を取り外した後に、昇降機改修工事用補助装置10の把持機構13を綱車23に係合させる工程と、把持機構13を綱車23に係合させた後に、連結部材15を介して把持機構13に係合した綱車23を補助装置モータ11の回転力によって回転させる工程とを備えている。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1と比較して把持機構の構成が主に異なっている。
【0054】
図7を参照して、本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置10では、把持機構13は荷重吸収部材13dを有している。把持機構13は、荷重吸収部材13dが綱車23に接触した状態で綱車23を保持するように構成されている。荷重吸収部材13dは平板部材13bに取り付けられている。平板部材13bがねじ部材13cによってスポーク23bに向かって移動することで荷重吸収部材13dがスポーク23bに押し付けられる。荷重吸収部材13dは、たとえば、ゴムによって構成されている。
【0055】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同一であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0056】
把持機構13の中心と綱車回転軸24の中心とが一致していない場合に、剛性体である平板部材13bでスポーク23bが固定された状態で把持機構13が回転すると、把持機構13には偏心力で図7中の矢印D4方向に大きく荷重がかかる。このため、把持機構13が脱落または破壊されるおそれがある。
【0057】
本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置10によれば、把持機構13は荷重吸収部材13dが綱車23に接触した状態で綱車23を保持するように構成されているため、弾性力のある荷重吸収部材13dで綱車23を保持することで荷重を吸収することができる。つまり、荷重吸収部材13dでスポーク23bを把持することによって、荷重吸収部材13dが矢印D4方向にたわむことで荷重が吸収される。よって、把持機構13の中心と綱車回転軸24の中心が一致していない場合でも、把持機構13が脱落または破壊されることなく、綱車23に補助装置モータ11の駆動力を伝達することができる。綱車23の型によらず把持機構13が綱車23に固定可能であるため、把持機構回転軸14を取替える作業は不要となり、さらに作業時間の短縮が図れる。
【0058】
また、本実施の形態の昇降機改修工事用補助装置10によれば、荷重吸収部材13dは、ゴムによって構成されているため、ゴムの弾性力によって荷重を吸収することができる。
【0059】
上記の各実施の形態は、適時組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 制御盤、2 巻上機、3 機械室、4 昇降路、5 かご、6 つり合いおもり、7 ワイヤーロープ、8 リミットスイッチ、10 昇降機改修工事用補助装置、11 補助装置モータ、11a モータ回転軸、12 支持台、13 把持機構、13a 爪部、13b 平板部材、13c ネジ、13d 荷重吸収部材、14 把持機構回転軸、15 連結部材、16 ケーブル、17 操作スイッチ、17a 受信機、17b 送信機、21 巻上機モータ、22 ブレーキ機構、23 綱車、23a 溝、23b スポーク、24 綱車回転軸、41 天井、42 ピット、43 昇降路内壁、44 昇降路内壁レール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープが巻き掛けられた綱車を回転させることで前記ワイヤーロープに接続されたかごを昇降動作させるための昇降機改修工事用補助装置であって、
前記綱車に係合可能な把持機構と、
前記把持機構を回転させることで前記把持機構に係合した前記綱車を回転可能なモータと、
前記モータと前記把持機構とをそれぞれの回転軸同士がずれるのを許容するように連結し、かつ前記モータの回転力を前記把持機構に伝達可能な連結部材と、
前記モータを操作することで前記連結部材を介して前記把持機構に係合した前記綱車を回転させるための操作スイッチとを備えた、昇降機改修工事用補助装置。
【請求項2】
前記操作スイッチは、
前記モータの回転を制御可能な受信機と、
前記受信機と無線通信可能であり、かつ前記受信機を通じて前記モータの回転を制御可能な送信機とを含む、請求項1に記載の昇降機改修工事用補助装置。
【請求項3】
前記把持機構は、荷重吸収部材を含み、
前記把持機構は、前記荷重吸収部材が前記綱車に接触した状態で前記綱車を保持するように構成されている、請求項1または2に記載の昇降機改修工事用補助装置。
【請求項4】
前記荷重吸収部材は、ゴムによって構成されている、請求項3に記載の昇降機改修工事用補助装置。
【請求項5】
ワイヤーロープが巻き掛けられた綱車を回転させることで前記ワイヤーロープに接続されたかごを昇降動作させるための巻上機と、前記巻上機に電気的に接続され、かつ前記巻上機を制御可能な制御盤とを有する昇降機の改修方法であって、
前記制御盤を前記巻上機から取り外す工程と、
前記制御盤を取り外した後に、請求項1〜4のいずれかに記載の昇降機改修工事用補助装置の前記把持機構を前記綱車に係合させる工程と、
前記把持機構を前記綱車に係合させた後に、前記連結部材を介して前記把持機構に係合した前記綱車を前記モータの回転力によって回転させる工程とを備えた、昇降機の改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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