説明

昇降機構付き軌道走行台車

【課題】荷台の最下段を低くする。
【解決手段】スタッカクレーン10は、レール3を走行する台車11と、台車11に立設されたマスト12A,12Bと、マスト12A,12Bの上端を連結するアッパーフレーム13と、マスト12A,12B間に配置され昇降機構21によって昇降する荷台14と、を備え、昇降機構21は、アッパーフレーム13に設けられ駆動軸22をX方向に向けた駆動スプロケット26A,26Bと、台車11に回動可能に設けられ回転軸をY方向に向けたアイドルスプロケット28A,28Bと、一端を荷台14に固定し駆動スプロケット26A,26Bを巻回して他端をアイドルスプロケット28A,28Bに接近する方向に下延する駆動チェーン27A,27Bと、一端を荷台14に連結しアイドルスプロケット28A,28Bを巻回して他端が駆動チェーン27A,27Bの前記他端に連結した従動チェーン50A,50Bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇降機構付き軌道走行台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降機構付き軌道走行台車は、重量の大きな荷物を水平方向および上下方向に搬送する際に用いられる。
例えば、上下方向並びに水平方向に多数の格納部が配列された収納棚に荷物を保管する自動倉庫では、スタッカクレーンを用いて荷物の搬送が行われている。このスタッカクレーンが昇降機構付き軌道走行台車の一例である。
【0003】
スタッカクレーンでは、荷物の収納棚に沿って水平直線状に設けられた軌道を走行する台車を備え、この台車の走行方向両端にそれぞれマストが立設されるとともに、該マストの間をマストに沿って荷台を昇降させる昇降機構が設けられ、さらに荷台には荷台と収納棚との間で荷物を受け渡すための移載装置が設けられている。このスタッカクレーンでは、台車を軌道上で走行させて荷台を水平移動させ、昇降機構によって荷台を上下移動させて、荷台を所望する格納部の正面に位置させ、さらに移載装置によって格納部との間で荷物の受け渡しを行う。
【0004】
前記昇降機構の一つとして、前記2本のマストの上端を連結するアッパーフレームにアッパースプロケットを回動可能に設け、一端が前記荷台に連結された駆動チェーンを、アッパースプロケットに巻回し180度反転して下方に向きを変え、さらにこの駆動チェーンを、前記台車に回動可能に設けたアイドルスプロケットに巻回し180度反転して上方に向きを変え、その他端を荷台に連結することで、駆動チェーンをループ状に配置し、荷台の昇降に伴って駆動チェーンを無端体の如く両スプロケット間で回転させるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の昇降機構では、アッパースプロケットとアイドルスプロケットとは別に、電動モータによって回転駆動される駆動スプロケットを備えており、この駆動スプロケットによって駆動チェーンを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−2408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記昇降機構において、装置の簡素化、部品点数の削減等を目的として、スプロケットを駆動スプロケットとアイドルスプロケットだけの組み合わせで構成することが考えられている。
その場合、アッパーフレームに駆動スプロケットを設置するのが駆動力伝達上の理由から最適であり、さらに装置の小型化を考慮すると、駆動スプロケットの回転軸をアッパーフレームの長手方向(換言すると、台車の走行方向)に沿って配置するのが好ましい。
【0007】
このように駆動スプロケットを配置し、台車にアイドルスプロケットを設置して、駆動スプロケットとアイドルスプロケットとの間に駆動チェーンを巻回する場合には、アイドルスプロケットの回転軸と駆動スプロケットの回転軸とを平行に配置しなければならないので、アイドルスプロケットの回転軸も台車の走行方向に沿って配置しなければならない。
【0008】
しかしながら、荷台の最下段の位置を低くするために、台車の内部にアイドルスプロケットを収容しようとすると、アイドルスプロケットの回転軸の方向を前記のように設定した場合には、アイドルスプロケットが台車と干渉してしまうという課題がある。かといって、アイドルスプロケットと台車との干渉を回避するため、台車の上側にアイドルスプロケットを配置すると、荷台の最下段が高くなってしまう。
【0009】
そこで、この発明は、台車とアイドル回転体との干渉を回避しつつ荷台の最下段を低くすることができる昇降機構付き軌道走行台車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る昇降機構付き軌道走行台車では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、軌道上を走行する台車と、前記台車に該台車の走行方向と水平面内で直交する方向での略中央に立設されたマストと、前記マストに隣接して配置されて該マストに沿って昇降可能な荷台と、前記荷台を昇降する昇降機構と、を備える昇降機構付き軌道走行台車において、前記昇降機構は、前記マストの上部近傍に回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に沿って配置された駆動スプロケットと、前記マストの上部近傍に固定され前記駆動スプロケットを回転駆動する駆動部と、前記台車の内側に回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に直交する水平線に沿って配置されたアイドル回転体と、前記駆動スプロケットに巻回され一端が前記荷台に連結され他端が前記アイドル回転体に接近する方向に下延する駆動チェーンと、前記アイドル回転体に巻回され一端が前記荷台の下部に連結され他端が前記駆動スプロケットに接近する方向に上延して前記駆動チェーンの前記他端に連結された屈曲自在な連結部材と、を備えることを特徴とする昇降機構付き軌道走行台車である。
【0011】
請求項2に係る発明は、軌道上を走行する台車と、前記台車の走行方向前後部にて該台車の走行方向と水平面内で直交する方向での略中央に立設された2本のマストと、前記2本のマストの上端を連結するアッパーフレームと、前記2本のマストの間に配置されて該マストに沿って昇降可能な荷台と、前記荷台を昇降する昇降機構と、を備える昇降機構付き軌道走行台車において、前記昇降機構は、前記アッパーフレームに回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に沿って配置された駆動スプロケットと、前記アッパーフレームに固定され前記駆動スプロケットを回転駆動する駆動部と、前記台車の内側に回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に直交する水平線に沿って配置されたアイドル回転体と、前記駆動スプロケットに巻回され一端が前記荷台に連結され他端が前記アイドル回転体に接近する方向に下延する駆動チェーンと、前記アイドル回転体に巻回され一端が前記荷台の下部に連結され他端が前記駆動スプロケットに接近する方向に上延して前記駆動チェーンの前記他端に連結された屈曲自在な連結部材と、を備えることを特徴とする昇降機構付き軌道走行台車である。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記駆動チェーンと前記連結部材との連結部は、前記荷台が最上段に位置したときに前記アイドル回転体よりも駆動チェーン側の上方に位置することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記アイドル回転体の回転面は、前記駆動スプロケットの回転軸心から前記台車の走行方向と水平面内で直交する方向へ、前記駆動スプロケットの半径分だけ偏位して配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記アイドル回転体は、前記台車に片持ち支持されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記アイドル回転体はアイドルスプロケットで構成され、前記連結部材は従動チェーンで構成されており、前記駆動チェーンと前記従動チェーンはそれぞれの屈曲面内方向を互いに直交させて連結されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記アイドルスプロケットの外径は前記駆動スプロケットの外径よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発明において、複数階の格納部を有する荷物収納棚が、前記台車が走行する軌道に隣接して設置され、前記荷台には、該荷台と前記荷物収納棚の前記格納部との間で荷物の受け渡しを行う移載装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、駆動スプロケットの回転軸を台車の走行方向に沿わせながら、アイドル回転体の回転軸を台車の走行方向に直交する水平線に沿って配置させているので、アイドル回転体を台車の内側に設置するときに台車との干渉を回避しながら配置することができる。その結果、荷台の最下段の位置をより下方に配置することが可能となる。また、駆動チェーンを駆動スプロケットに巻回し、連結部材をアイドル回転体に巻回することで、駆動スプロケットの回転軸の軸心方向とアイドル回転体の回転軸の軸心方向とを互いに直交する方向に配置しても、駆動チェーンおよび連結部材をスムーズに動かすことができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の発明において、マストを2本とし、当該2本のマスト同士を上部において連結するアッパーフレームや駆動スプロケットの回転軸をより長いものに変更する等の構成部材の追加又は変更によって、請求項1と同等の効果が得られる。このような形態は、より荷物の重量が大きい場合に適する。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、駆動チェーンと連結部材との連結部を、荷台が最上段に位置したときにアイドル回転体よりも駆動チェーン側の上方に位置させているので、荷台を最下段から最上段の間で昇降させたときに、前記連結部が駆動スプロケットおよびアイドル回転体に接触するのを回避することができ、駆動チェーンおよび連結部材をスムーズに動かすことができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、アイドル回転体の回転面を、駆動スプロケットの回転軸心から台車の走行方向と水平面内で直交する方向へ、駆動スプロケットの半径分だけ偏位して配置しているので、駆動スプロケットからアイドル回転体との間に張設される駆動チェーンおよび連結部材をほぼ鉛直姿勢に張設することができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、アイドル回転体を台車に片持ち支持するので、両持ち支持する場合に比べて部品点数を減少させることができ、軽量化を図ることができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、駆動チェーンと従動チェーンがそれぞれの屈曲面内方向を互いに直交させて連結されているので、駆動スプロケットの回転軸の軸心方向とアイドル回転体の回転軸の軸心方向とを互いに直交する方向に配置しても、駆動チェーンおよび従動チェーンをスムーズに動かすことができる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、荷台の昇降に必要な張力は荷台と駆動スプロケットとの間の駆動チェーンに作用するだけで、従動チェーンには作用せず、アイドルスプロケットは単に従動チェーンを反転させる機能があればよいので、アイドルスプロケットの外径を駆動スプロケットの外径よりも小さくしても荷台の昇降に何ら支障となることがない。そして、アイドルスプロケットの小径化により、台車の小型・軽量化を図ることができる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、移載装置で荷台と荷物収納棚の格納部との間で荷物の受け渡しを行う昇降機構付き軌道走行台車において、アイドル回転体を台車の内側に設置するときに台車との干渉を回避しながら配置することができる。その結果、荷台の最下段の位置をより下方に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る昇降機構付き軌道走行台車の一例であるスタッカクレーンを備えた自動倉庫設備の正面図である。
【図2】前記自動倉庫設備の平面図である。
【図3】前記スタッカクレーンの正面図である。
【図4】前記スタッカクレーンの右側面図である。
【図5】図3の要部を拡大して示す図である。
【図6】図4の要部を拡大して示す図である。
【図7】前記スタッカクレーンの荷台の平面図である。
【図8】前記スタッカクレーンのアッパーフレームおよびアッパーフレームに設置された昇降機構の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明に係る昇降機構付き軌道走行台車の実施例を図1から図8の図面を参照して説明する。
なお、この実施例における昇降機構付き軌道走行台車は、自動倉庫設備に設置されて荷物収納棚との間で荷物の受け渡しを行うスタッカクレーンとしての態様であり、マストを2本備えた実施例である。
【0028】
図1及び図2は自動倉庫設備の正面図及び平面図であり、自動倉庫設備は、水平方向および上下方向に多数の格納部2を有する2つの荷物収納棚1A,1Bが所定の間隔を空けて相対向して設置されており、この2つの荷物収納棚1A,1Bの間の床面には、両荷物収納棚1A,1Bから等距離の位置に1本のレール(軌道)3が直線状に敷設され、このレール3の上をスタッカクレーン(昇降機構付き軌道走行台車)10が走行可能に設置されている。レール3は、荷物収納棚1A,1Bに隣接して設けられた入出庫台5まで延長して敷設されている。なお、荷物収納棚1A,1Bは複数階の格納部2を有する荷物収納棚と言うことができる。
荷物収納棚1A,1Bの各格納部2の下部両側には、荷物Wを搭載したパレットPの底部を受ける支持床部4が設けられている。
【0029】
なお、以下の説明では、レール3の延びる方向すなわちスタッカクレーン10の走行方向をX方向、水平面内においてスタッカクレーン10の走行方向と直交する方向すなわちスタッカクレーン10における奥行き方向をY方向、荷物収納棚1A,1Bの高さ方向をZ方向と定義し、各図における矢印X,Y,Zはこれらの方向を示すものとする。
【0030】
次に、スタッカクレーン10について詳述する。
図3はスタッカクレーン10の正面図であり、図4は同右側面図である。
スタッカクレーン10は、レール3を走行する台車11と、台車11に立設された2本のマスト12A,12Bと、マスト12A,12Bの上端を連結するアッパーフレーム13と、マスト12A,12Bの間に配置されてマスト12A,12Bに沿って昇降可能に設置された荷台14と、荷台14を昇降する昇降機構21と、荷台14に設置され荷台14と荷物収納棚1A,1Bの格納部2との間で荷物Wの受け渡しを行う移載装置15と、を備えている。なお、図3および図4は荷台14が最上段に位置したときを示している。
【0031】
台車11は、レール3を上から跨ぐように配置されてX方向に細長いフレーム16を有している。フレーム16は、レール3を間に挟んで対向配置された一対の側板部16b,16bと、両側板部16b,16bのX方向両端上部を連結するマスト設置部16aとを備えて構成されており、マスト設置部16aで連結された部位を除いて、側板部16b,16bの間は上方が開口している。フレーム16のX方向両端部であって両側板部16b,16b間中央には、両側板部16b,16bに回動可能に支持された車輪17が設置されている。この車輪17がレール3を転動することによって、台車11はレール3をX方向に移動可能となっている。2つの車輪17のうちの一方が駆動輪とされていて、図4および図6に示すように、この駆動輪はフレーム16に設置された走行駆動用電動モータ(以下、走行用モータと略す)18により減速機19を介して回転駆動される。
【0032】
2本のマスト12A,12Bは、フレーム16の各マスト設置部16aの中央にそれぞれ設置され、Z方向に沿って真っ直ぐに上に延びている。マスト12A,12Bは水平断面正方形の管状をなしており、内部が空洞でケーブル配線用の空間として利用される。マスト設置部16aのY方向寸法はマスト12A,12BのY方向寸法よりも若干大きい。なお、マスト12A,12Bは、台車11の走行方向前後部にて台車11の走行方向と水平面内で直交する方向での中央に立設されていると言うことができる。
【0033】
2本のマスト12A,12Bの上端は前記アッパーフレーム13により連結されている。
図8はアッパーフレーム13の平面図であり、アッパーフレーム13には昇降機構21の一部が設置されている。詳述すると、アッパーフレーム13のY方向中央には、軸心をX方向に沿わせて水平姿勢に配置された駆動軸22が、一対の軸受部23,23を介して回動可能に設置されている。なお、アッパーフレーム13のY方向中央は台車11のフレーム16のY方向中央の真上に位置している。この駆動軸22は、アッパーフレーム13のX方向一端部にブラケット25を介して設置された駆動部24により回転駆動されるように構成されている。なお、駆動部24は、図3および図4に示すように、昇降駆動用電動モータ(以下、昇降用モータと略す)24aと減速機24bから構成されており、昇降用モータ24aの回転が減速機24bにより減速されて駆動軸22に伝達される。
【0034】
駆動軸22には、そのX方向の両側にそれぞれ同一径の駆動スプロケット26A,26Bが固定されていて、駆動スプロケット26A,26Bは駆動軸22と同期して回動する。つまり、駆動スプロケット26A,26Bの回転軸である駆動軸22はその軸心を台車11の走行方向に沿って配置されている。駆動スプロケット26A,26Bはそれぞれマスト12A,12Bよりも若干X方向内側に配置されている。
【0035】
図7は荷台14の平面図である。荷台14は、台車11のフレーム16よりもY方向外側に配置されるベースフレーム30A,30Bと、ベースフレーム30A,30Bにおいて相対向するX方向端部同士を連結するサイドフレーム31A,31Bと、ベースフレーム30A,30BのX方向中央に配置され両ベースフレーム30A,30Bに架け渡されて設置された移載装置32と、サイドフレーム31A,31Bに支持されたセンサ支持フレーム33と、を備えている。
【0036】
サイドフレーム31A,31Bは、そのY方向の両端部に、X方向外側へ突出し上下方向(Z方向)に延びる脚部34,34を備えている。各サイドフレーム31A,31Bの脚部34,34にはそれぞれ上下1対のガイドローラ35,35が回動可能に取り付けられていて、これらガイドローラ35,35が、マスト12A,12Bにおいて荷物収納棚1A,1Bと対向する側面12a,12bに当接し転動するように配置されている。
【0037】
荷台14は、サイドフレーム31Aのガイドローラ35,35がマスト12Aの側面12a,12bに当接しながら転動し、サイドフレーム31Bのガイドローラ35,35がマスト12Bの側面12a,12bに当接しながら転動することによって、マスト12A,12Bから離れずにマスト12A,12Bに沿ってスムーズに上下移動することができるようになっている。
【0038】
また、各サイドフレーム31A,31Bにおいて脚部34,34を連結する背板部36の外側には、ぞれぞれ1つずつ吊り部38A,38Bが設けられている。両吊り部38A,38Bは荷台14のY方向中央から外側に偏心して配置されており、互いに対角線上に位置している。さらに詳述すると、サイドフレーム31A側の吊り部38Aは、アッパーフレーム13に設置されたマスト12A側の駆動スプロケット26AのY方向最外縁であって荷物収納棚1Aに近い側の鉛直下方に配置されており、サイドフレーム31B側の吊り部38Bは、アッパーフレーム13に設置されたマスト12B側の駆動スプロケット26BのY方向最外縁であって荷物収納棚1Bに近い側の鉛直下方に配置されている。
【0039】
移載装置32は、図3、図7に示すように、ベースフレーム30A,30BのX方向中央において両ベースフレーム30A,30Bに架け渡して固定された基台(図示略)と、前記基台に対してY方向へスライド可能に取り付けられたフォーク40と、前記基台の底部に設置されフォーク40をスライドさせるアクチュエータとしてのフォーク駆動用電動モータ(以下、フォーク用モータと略す)41と、を備えている。
【0040】
この移載装置32では、フォーク用モータ41の回転方向を含めた運転制御によって、前記基台からフォーク40を荷物収納棚1Aまたは1Bに接近する方向に突出させたり、前記基台側に引き戻したりすることができるようにされている。なお、荷物WはパレットPとともにフォーク40の上に載置される。
【0041】
センサ支持フレーム33は矩形の骨格枠状をなし、サイドフレーム31A,31Bに支持されている。
この、センサ支持フレーム33には、フォーク40に積載される荷物Wが最大許容幅寸法(X方向の許容寸法)以内か否かを検知する幅センサの検知部42や、図示を省略するが、荷物Wが最大許容奥行き寸法(Y方向の許容寸法)以内か否かを検知する奥行きセンサや、荷物Wが最大許容高さ寸法(Z方向の許容寸法)以内か否かを検知する高さセンサなど、各種センサが設置されている。
【0042】
そして、フォーク用モータ41に電力を供給するための動力ケーブルや、センサ支持フレーム33に設置された各種センサの出力信号を送信するための制御ケーブルなど、荷台14に設置された総ての電気機器に接続されたケーブル(いずれも図示略)が、ケーブルチェーン45を介して、マスト12Aに付設された制御盤20に接続されている。
ケーブルチェーン45は樹脂または金属製で、多数の駒をチェーンのように互いに相対回動可能に連結して構成されており、複数のケーブルを整列した状態で収納可能に構成されたものである。
【0043】
ケーブルチェーン45の一端は、荷台14の底部中央に固定され、他端側を下方に垂らしており、マスト12Aにおいて荷台14と対向する側面12cの高さ方向(Z方向)の略中間部に設けられた開口(図示略)からマスト12A内に引き込まれ、前記開口近傍においてマスト12Aに固定されている。つまり、ケーブルチェーン45は、マスト12Aにおいて荷台14と対向する側面12cに沿って懸吊されている。
ケーブルチェーン45は荷台14の昇降に伴って形態が変化する。つまり、荷台14が最上段に位置しているときにマスト12側の固定部45a近傍において下方に凸の屈曲形態をなす凸曲部45bは、荷台14の降下に伴って下方に移動していく。
なお、マスト12A内に引き込まれたケーブルチェーン45から導出されたケーブルは、制御盤20に引き込まれ、所定に配線されている。
【0044】
荷台14に設けられた吊り部38Aには駆動チェーン27Aの一端が連結されており、駆動チェーン27Aは上方に延びて駆動スプロケット26Aに巻回され、向きを180度反転されて、マスト12Aと荷台14のサイドフレーム31Aの間を通り、他端を下方に延ばしている。同様に、荷台14の吊り部38Bには、駆動チェーン27Bの一端が連結されており、駆動チェーン27Bは上方に延びて駆動スプロケット26Bに巻回され、向きを180度反転されて、マスト12Bと荷台14のサイドフレーム31Bの間を通り、他端を下方に延ばしている。
【0045】
一方、図3、図5および図6に示すように、台車11のフレーム16にはマスト設置部16aよりもX方向内側に位置する部位に、アイドルスプロケット28A,28Bが回動可能に設置されている。
詳述すると、フレーム16において荷物収納棚1Bに近い側に配置された側板部16bには、マスト12Aに近い側に、軸心をY方向に向けた回転軸29を有するアイドルスプロケット28Aが、回動可能に設置されている。同様に、フレーム16において荷物収納棚1Aに近い側に配置された側板部16bには、マスト12Bに近い側に、軸心をY方向に向けた回転軸29を有するアイドルスプロケット28Bが、回動可能に設置されている。アイドルスプロケット28A,28Bの回転軸29はそれぞれ側板部16bに片持ち支持され、アイドルスプロケット28A,28Bはフレーム16の内側に配置されている。つまり、アイドルスプロケット28A,28Bの回転軸29は、その軸心を台車11の走行方向に直交する水平線に沿って配置されており、駆動スプロケット26A,26Bの回転軸である駆動軸22と直交する方向に向けられている。アイドルスプロケット28A,28Bは同一径であるが、駆動スプロケット26A,26Bよりも小径にされている。
【0046】
また、アイドルスプロケット28Aのスプロケット面(回転面)は、フレーム16のY方向中央から荷物収納棚1Bに接近する方向へ駆動スプロケット26Aの半径分だけ偏位した位置に配置されている。同様に、アイドルスプロケット28Bのスプロケット面(回転面)は、フレーム16のY方向中央から荷物収納棚1Aに接近する方向へ駆動スプロケット26Bの半径分だけ偏位した位置に配置されている。換言すると、アイドルスプロケット28A,28Bの回転面は、駆動スプロケット26A,26Bの回転軸心から台車11の走行方向と水平面内で直交する方向(すなわちY方向)へ、駆動スプロケット26A,26Bの半径分だけ偏位して配置されている。
このようにアイドルスプロケット28A,28Bの回転面がフレーム16のY方向中央からY方向外側に偏位して配置したことで、アイドルスプロケット28A,28Bをフレーム16の側壁部16bに近づけて配置することができ、アイドルスプロケット28A,28Bの回転軸29を前述の如く片持ち支持する構造が可能となる。回転軸29の片持ち支持構造の採用により、回転軸29を両持ち支持する場合よりも、部品点数の削減、軽量化を図ることができる。
【0047】
アイドルスプロケット28Aには、従動チェーン50Aが巻回されており、従動チェーン50Aの一端は荷台14の下部に図示しないテンショナーを介して連結され、他端は図5に示すように駆動チェーン27Aの他端に連結されている。同様に、アイドルスプロケット28Bには、従動チェーン50Bが巻回されており、従動チェーン50Bの一端は荷台14の下部に図示しないテンショナーを介して連結され、他端は駆動チェーン27Bの他端に連結されている。なお、テンショナーは従動チェーン50A,50Bを適度の張力で張設するためのものである。
【0048】
ここで、駆動チェーン27A,27Bは、回転軸(駆動軸22)の軸心をX方向に向けた駆動スプロケット26A,26Bに巻回されるので、YZ平面上において屈曲可能とする必要があり、一方、従動チェーン50A,50Bは、回転軸29の軸心をY方向に向けたアイドルスプロケット28A,28Bに巻回されるので、XY平面上において屈曲可能とする必要がある。そこで、図5に示すように、駆動チェーン27Aの他端と従動チェーン50Aの他端とを連結する連結部51では、それぞれのチェーン27A,50Aの屈曲面内方向が互いに直交するように連結する。駆動チェーン27Bの他端と従動チェーン50Bの他端とを連結する連結部51についても同様に連結する。
【0049】
この連結部51は、図3および図5に示すように、荷台14が最上段に位置したときに、アイドルスプロケット28A,28Bよりも駆動チェーン27A,27B側の上方に位置するように配置する。このように連結部51の位置を設定すると、荷台14を最下段から最上段の間で昇降させたときに、連結部51が駆動スプロケット26A,26Bおよびアイドルスプロケット28A,28Bに接触するのを回避することができ、駆動チェーン27A,27Bおよび従動チェーン50A,50Bをスムーズに動かすことができる。
この実施例においては、昇降機構21は、駆動軸22、駆動部24,駆動スプロケット26A,26B、駆動チェーン27A,27B、アイドルスプロケット28A,28B、従動チェーン50A,50Bを含んで構成されている。
【0050】
このように構成されたスタッカクレーン10においては、昇降用モータ24aを作動し駆動軸22を回転すると、駆動スプロケット26A,26Bの回転に伴って駆動チェーン27A,27Bが同調して引き上げられ、あるいは、引き下げられ、駆動チェーン27A,27Bに連結された荷台14が昇降する。その際に、駆動チェーン27A,27Bと従動チェーン50A,50Bは荷台14を介してループ状に連結されているので、荷台14の昇降に伴って、従動チェーン50A,50Bも上下動する。
【0051】
なお、前述したように、駆動チェーン27A,27Bと従動チェーン50A,50Bの連結部51を、荷台14が最上段に位置したときにアイドルスプロケット28A,28Bよりも駆動チェーン27A,27B側の上方に位置するように配置しているので、荷台14を最下段から最上段の間で昇降させたときに、連結部51が駆動スプロケット26A,26Bおよびアイドルスプロケット28A,28Bに接触するのを回避することができる。
【0052】
また、各連結部51において、駆動チェーン27A,27Bの屈曲面内方向と従動チェーン50A,50Bの屈曲面内方向を互いに直交するように連結しているので、駆動スプロケット26A,26Bの回転軸である駆動軸22と、アイドルスプロケット28A,28Bの回転軸29とが互いに直交する方向に向けられていても、駆動チェーン27A,27Bを駆動スプロケット26A,26Bに巻回することができ、従動チェーン50A,50Bをアイドルスプロケット28A,28Bに巻回することができる。
さらに、アイドルスプロケット28A,28Bの回転面が、駆動スプロケット26A,26Bの回転軸心からY方向へ、駆動スプロケット26A,26Bの半径分だけ偏位して配置されているので、駆動スプロケット26A,26Bとアイドルスプロケット28A,28Bとの間で、駆動チェーン27A,27Bおよび従動チェーン50A,50Bを鉛直姿勢に張設することができる。
したがって、駆動チェーン27A,27Bおよび従動チェーン50A,50Bをスムーズに動かすことができる。
【0053】
また、アイドルスプロケット28A,28Bの回転軸29の軸心をY方向に向けて配置することにより、アイドルスプロケット28A,28Bの回転面を台車11のフレーム16における側壁部16bと平行な位置に配置しているので、アイドルスプロケット28A,28Bを台車11の内側に設置したときに台車11との干渉を回避することができるとともに、台車の小型化を図ることができる。
そして、アイドルスプロケット28A,28Bを台車11のフレーム内に収納させたので、荷台14の最下段の位置をより下方に位置させることができる。
【0054】
また、この実施例においては、アイドルスプロケット28A,28Bの外径を駆動スプロケット26A,26Bの外径よりも小さくしているが、その理由は次の通りである。荷台14を昇降させるために必要な張力(駆動力)は荷台14と駆動スプロケット26A,26Bとの間の駆動チェーン27A,27Bに作用するだけで、従動チェーン50A,50Bには前記張力は作用せず、アイドルスプロケット28A,28Bは単に従動チェーン50A,50Bを180度反転させる機能があればよい。よって、アイドルスプロケット28A,28Bの外径を駆動スプロケット26A,26Bの外径よりも小さくしても荷台14の昇降に何ら支障となることがない。そして、アイドルスプロケット28A,28Bの小径化により、台車11の小型・軽量化を図ることができる。
【0055】
また、上記理由により、従動チェーン50A,50Bの負荷は駆動チェーン27A,27Bの負荷よりも小さく設定することができるので、従動チェーン50A,50Bを駆動チェーン27A,27Bよりも低荷重用のチェーンで構成することも可能である。
あるいは、従動チェーン50A,50Bの代わりにワイヤやベルトを用いることも可能であり、その場合には、アイドルスプロケット28A,28Bの代わりにプーリーを用いる。
【0056】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例は2本のマストを備えた昇降機構付き軌道走行台車であるが、1本のマストでもこの発明は成立する。詳述すると、図3において、例えば右側のマスト12Bのみをマストとして立設し、荷台14は12Bのみを把持する略L字形をなし、アッパーフレーム13がなく、マスト12Bの上部に駆動軸22を回動可能に設置し、昇降機構(駆動スプロケット26B、アイドルスプロケット28B、駆動チェーン27B、従動チェーン50B等)を右側部分のみに配置すればよい。この場合、駆動軸22はより短いものを採用することができる。また、駆動スプロケット26Bはモータ又は減速機が有する軸に直接取り付けてもよい。このような実施例は、荷物Wの重量が50kg以下等の比較的軽量の場合に利用可能性が高い。
また、昇降機構付き軌道走行台車はスタッカクレーンに限るものではなく、スタッカクレーンに分類されない他の搬送装置の台車であって、上下方向および水平方向に荷物を搬送する台車に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B 荷物収納棚
2 格納部
3,3A,3B レール(軌道)
10 スタッカクレーン(昇降機構付き軌道走行台車)
11 台車
12A,12B マスト
13 アッパーフレーム
14 荷台
15 移載装置
21 昇降機構
22 駆動軸(駆動スプロケットの回転軸)
24 駆動部
26A,26B 駆動スプロケット
27A,27B 駆動チェーン
28A,28B アイドルスプロケット(アイドル回転体)
29 回転軸(アイドル回転体の回転軸)
50A,50B 従動チェーン(連結部材)
51 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行する台車と、
前記台車に該台車の走行方向と水平面内で直交する方向での略中央に立設されたマストと、
前記マストに隣接して配置されて該マストに沿って昇降可能な荷台と、
前記荷台を昇降する昇降機構と、
を備える昇降機構付き軌道走行台車において、
前記昇降機構は、
前記マストの上部近傍に回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に沿って配置された駆動スプロケットと、
前記マストの上部近傍に固定され前記駆動スプロケットを回転駆動する駆動部と、
前記台車の内側に回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に直交する水平線に沿って配置されたアイドル回転体と、
前記駆動スプロケットに巻回され一端が前記荷台に連結され他端が前記アイドル回転体に接近する方向に下延する駆動チェーンと、
前記アイドル回転体に巻回され一端が前記荷台の下部に連結され他端が前記駆動スプロケットに接近する方向に上延して前記駆動チェーンの前記他端に連結された屈曲自在な連結部材と、
を備えることを特徴とする昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項2】
軌道上を走行する台車と、
前記台車の走行方向前後部にて該台車の走行方向と水平面内で直交する方向での略中央に立設された2本のマストと、
前記2本のマストの上端を連結するアッパーフレームと、
前記2本のマストの間に配置されて該マストに沿って昇降可能な荷台と、
前記荷台を昇降する昇降機構と、
を備える昇降機構付き軌道走行台車において、
前記昇降機構は、
前記アッパーフレームに回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に沿って配置された駆動スプロケットと、
前記アッパーフレームに固定され前記駆動スプロケットを回転駆動する駆動部と、
前記台車の内側に回動可能に設けられ回転軸を前記台車の走行方向に直交する水平線に沿って配置されたアイドル回転体と、
前記駆動スプロケットに巻回され一端が前記荷台に連結され他端が前記アイドル回転体に接近する方向に下延する駆動チェーンと、
前記アイドル回転体に巻回され一端が前記荷台の下部に連結され他端が前記駆動スプロケットに接近する方向に上延して前記駆動チェーンの前記他端に連結された屈曲自在な連結部材と、
を備えることを特徴とする昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項3】
前記駆動チェーンと前記連結部材との連結部は、前記荷台が最上段に位置したときに前記アイドル回転体よりも駆動チェーン側の上方に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項4】
前記アイドル回転体の回転面は、前記駆動スプロケットの回転軸心から前記台車の走行方向と水平面内で直交する方向へ、前記駆動スプロケットの半径分だけ偏位して配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項5】
前記アイドル回転体は、前記台車に片持ち支持されていることを特徴とする請求項4に記載の昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項6】
前記アイドル回転体はアイドルスプロケットで構成され、前記連結部材は従動チェーンで構成されており、前記駆動チェーンと前記従動チェーンはそれぞれの屈曲面内方向を互いに直交させて連結されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項7】
前記アイドルスプロケットの外径は前記駆動スプロケットの外径よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の昇降機構付き軌道走行台車。
【請求項8】
複数階の格納部を有する荷物収納棚が、前記台車が走行する軌道に隣接して設置され、前記荷台には、該荷台と前記荷物収納棚の前記格納部との間で荷物の受け渡しを行う移載装置が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の昇降機構付き軌道走行台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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