説明

昇降機構

【課題】リンクの起立動作をする中心となる軸を付け替えることなく連続した起立動作と傾斜動作をする昇降機構を提供することを目的とする。
【解決手段】第一規制部33を中心とした円弧上を移動できるように第二規制部43をガイドする第一円弧部C1と、回動軸31を中心とした円弧上を移動できるように第二規制部43をガイドする第二円弧部C2と、回動軸31を中心とした円弧上を移動できるように第一規制部33をガイドする第三円弧部C3とを備え、第一円弧部C1と第二円弧部C2は連続して設けられ、従動部材6が初期位置から所定の高さまで移動する際に、第一規制部33は前記第二リンク4に対して相対移動せずに、第二規制部43が第一円弧部C1を移動し、従動部材6が回転初期位置から所定の角度まで回転動作をする際に、第一規制部33が第三円弧部C3を移動すると共に、第二規制部43が第二円弧部C2を移動するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンクの起立動作をする中心となる軸を付け替えることなく連続した起立動作と傾斜動作をする昇降機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の昇降機構、例えばトイレの便座を昇降させる昇降便座の昇降機構として、図4〜6に示すものが開示されている(特許文献1参照)。この昇降便座に用いられる昇降機構100は、図4に示すように、2つのリンク部材101、102の互いに重なる部分にそれぞれのリンク部材101、102に共孔が設けられ、前記共孔は水平待機姿勢用共孔101a、102aと、前傾待機姿勢用共孔101b、102bとを備えて、連結軸103が、共孔の一方から外され、他方に嵌合するものである。
【0003】
すなわち、図4に示すように、便座が固定される便座ベース104が略水平な着座姿勢にあるとき、水平待機姿勢用共孔101a、102aは孔が重なるように位置している。また、前傾待機姿勢用共孔101b、102bも孔が重なるように位置している。図4では、水平待機姿勢用共孔101a、102aには連結軸103が挿通されており、連結軸103を中心に2つのリンク部材101、102が旋回する。電動モータ等の駆動部Mによりスクリュー部材105が回転すると、スクリュー部材105に噛み合う左右のナット部材106が互いに近接する方向にスクリュー部材105上を移動する(図5参照)。左右のナット部材106に一端が連結されたリンク部材101、102は、左右の軸部材107を中心にして旋回するとともに、リンク部材101、102が水平待機姿勢用共孔101a、102aに連結軸103が挿入されているので、便座ベース104が垂直に移動する。また、図5に示すように、右側のナット部材106が図5中左方向に移動しているため、便座ベース104全体は、垂直方向だけでなく、前方(図5中、左方向)にも移動する。
【0004】
一方、便座を前傾させたいときは、図4の状態から、連結軸103を前傾待機姿勢用共孔101b、102bに付け替えたうえで、駆動部Mを駆動することにより、図6に示すように、連結軸103が挿入された前傾待機姿勢用共孔101b、102bを中心にリンク部材101、102が旋回可能となり、前傾姿勢にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4320221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された昇降機構100は、便座ベース104を昇降操作したいときは、図4に示す着座姿勢にあることを確認したうえで、連結軸103を水平待機姿勢用共孔101a、102aに挿入しなければならない。また、便座ベース104を前傾させたいときは、同様に図4に示す着座姿勢にあることを確認したうえで、連結軸103を前傾待機姿勢用共孔101b、102bに挿入しなければならず、垂直動作と回転動作の切り替えが非常に煩雑である。
【0007】
また、特許文献1に記載された昇降機構100では、便座ベースの垂直動作後の状態(図5参照)、回転動作後の状態(図6参照)において、水平待機姿勢用共孔101a、102a及び前傾待機姿勢用共孔101b、102bは、重なっておらず、連結軸103を付け替えることができないため、便座ベース104を垂直動作、回転動作の2動作を連続して行なうことができない。
【0008】
そこで、本発明は従来の昇降機構のかかる問題点に鑑みて、リンクの起立動作をする中心となる軸を付け替えることなく連続した従動部材の垂直動作と回転動作をする昇降機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の昇降装置は、基体と、該基体に取り付けられる第一リンクと、前記基体に取り付けられ、前記第一リンクと交差して配置される第二リンクと、前記第一リンクを前記基体に対して回動させる駆動部と、前記第一リンク及び第二リンクに支持される従動部材とを備えた昇降機構であって、前記第一リンクの一端側には、前記第一リンクの一端側を前記従動部材に沿って移動可能に支持する第一スライダが設けられ、前記第一リンクの他端側には、前記第一リンクを前記基体に対して回動可能に支持する回動軸が設けられ、前記第二リンクの一端側には、前記第二リンクと前記従動部材を回動可能に連結する支点部が設けられ、前記第二リンクの他端側には、前記第二リンクの他端側を前記基体に対して移動可能に支持する第二スライダが設けられ、前記第一リンクと第二リンクの交差位置に、前記第一リンクと第二リンクのジョイント部となる第一規制部が設けられ、前記第二リンクに、前記従動部材が所定の高さに移動するまで前記第一規制部の位置を保持するための第二規制部が設けられ、前記第二規制部が、前記従動部材が初期位置から所定の高さへ移動するまで、第一規制部を中心とした円弧上を移動できるようにガイドされ、前記駆動部による前記第一リンクの回動動作により前記従動部材が所定の高さに移動し、前記従動部材が所定の高さになった後は、前記第一規制部が、前記回動軸を中心とした円弧上を移動できるようにガイドされ、前記第二規制部が、前記回動軸を中心とした円弧上を前記第一リンクに対して移動できるようにガイドされ、前記駆動部による前記第一リンクの回動動作により、前記従動部材を前記支点部を中心に回転させることを特徴とする。
【0010】
また、前記第二スライダが、前記基体に設けられた直線状の第一ガイドにガイドされ、前記第一スライダが前記従動部材に設けられた直線状の第二ガイドにガイドされ、前記第一規制部が前記回動軸を中心とした円弧状に形成された第三ガイドにガイドされ、前記第二規制部が、中心が異なる連続した第一円弧部及び第二円弧部を有する第四ガイドにガイドされ、前記第二スライダは、前記従動部材の所定の高さにおいて、前記第一ガイドの端縁に当接し、前記第二規制部は、前記従動部材の初期位置から所定の高さまで、前記第一規制部を中心とした前記第一円弧部においてガイドされ、前記従動部材の回転時には、前記回動軸を中心とした前記第二円弧部においてガイドされることが好ましい。
【0011】
また、前記駆動部が駆動ギヤを備え、前記第一リンクに前記駆動ギヤと噛み合うセクターギヤが設けられ、前記第四ガイドが前記セクターギヤに形成され、前記第二リンクに前記第三ガイドが形成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の昇降装置は、基体と、該基体に取り付けられる第一リンクと、前記基体に取り付けられ、前記第一リンクと交差して配置される第二リンクと、前記第一リンクを前記基体に対して回動させる駆動部と、前記第一リンク及び第二リンクに支持される従動部材とを備えた昇降機構であって、前記第一リンクの一端側には、前記第一リンクの一端側を前記従動部材に沿って移動可能に支持する第一スライダが設けられ、前記第一リンクの他端側には、前記第一リンクを前記基体に対して回動可能に支持する回動軸が設けられ、前記第二リンクの一端側には、前記第二リンクと前記従動部材を回動可能に連結する支点部が設けられ、前記第二リンクの他端側には、前記第二リンクの他端側を前記基体に対して移動可能に支持する第二スライダが設けられ、前記第一リンクと第二リンクの交差位置に、前記第一リンクと第二リンクのジョイント部となる第一規制部が設けられ、前記第二リンクに、前記従動部材が所定の高さに移動するまで前記第一規制部の位置を保持するための第二規制部が設けられ、前記第一規制部を中心とした円弧上を移動できるように前記第二規制部をガイドする第一円弧部と、前記回動軸を中心とした円弧上を移動できるように前記第二規制部をガイドする第二円弧部と、
前記回動軸を中心とした円弧上を移動できるように前記第一規制部をガイドする第三円弧部とを備え、前記第一円弧部と前記第二円弧部は連続して設けられ、前記従動部材が初期位置から所定の高さまで移動する際に、前記第一規制部は前記第二リンクに対して相対移動せずに、前記第二規制部が前記第一円弧部を移動し、前記従動部材が回転初期位置から所定の角度まで回転動作をする際に、前記第一規制部が前記第三円弧部を移動すると共に、前記第二規制部が前記第二円弧部を移動するようにしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成で従動部材の垂直動作と回転動作の2モーションを連続して行なえ、第一リンクと第二リンクとの起立動作の中心がずれない。
【0014】
また、2つの円弧部が連続した第四ガイドにより、垂直動作と回転動作の2モーションの切り替えが容易かつスムーズである。
【0015】
また、セクターギヤに第四ガイドを設けることにより、部品点数が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の昇降機構の一実施の形態を示す図であり、昇降機構の従動部材が初期位置にある状態を示す図である。
【図2】本発明の昇降機構の一実施の形態を示す図であり、昇降機構の従動部材が垂直動作を完了した状態を示す図である。
【図3】本発明の昇降機構の一実施の形態を示す図であり、昇降機構の従動部材が回転動作を完了した状態を示す図である。
【図4】従来の昇降機構を示す図であり、便座ベースが初期位置にある状態を示す図である。
【図5】従来の昇降機構を示す図であり、便座ベースが垂直動作を完了した状態を示す図である。
【図6】従来の昇降機構を示す図であり、昇降機構の便座ベースが傾斜した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明の昇降機構を詳細に説明する。
本発明の一実施形態である図1の昇降機構1は、基体2と、基体2に取り付けられる第一リンク3と、基体2に取り付けられ、第一リンク3と交差して配置される第二リンク4と、第一リンク3を基体2に対して回動させる駆動部5と、第一リンク3及び第二リンク4に支持される従動部材6とを備えている。
【0018】
本発明の昇降装置1は、特に昇降させる対象は限定されるものではないが、例えば、従動部材6上に設けられる便座、椅子又はその座面、ベッド、介護用の昇降機器等の昇降部材Sを昇降させるために用いることができる。昇降機構1は、図1では例示のために1つだけの昇降機構1を図示しているが、一対の昇降機構1により、昇降部材Sを昇降させてもよいし、2以上の複数の昇降機構1を用いて昇降部材Sを昇降させることもできる。
【0019】
基体2は、昇降機構1の第一リンク3及び第二リンク4の両方から加わる荷重を支持し、基体2に加わる荷重を支持できる強度を有していれば、土台となるものでもよく、特に材質、形状等は限定されるものではない。また、基体2は、図1においては1つの部材として図示しているが、2以上の部材で荷重を支持してもよく、2以上の部材で基体2を構成し、別々の部材に第一リンク3、第二リンク4を取り付けてもよいことはいうまでもない。
【0020】
駆動部5は、図1においては、基体2に取り付けられた駆動ギヤG1として図示されているが、駆動部5は、手動、電動、直接、間接を問わず、第一リンク3を基体2に対して回動させることができるものであれば、その駆動機構は特に限定されるものではない。駆動部5としては、例えば、電動モータと当該電動モータに連結された減速ギヤとすることができるが、第一リンク3の回動軸31に直接取り付けて駆動力を伝達し、第一リンク3を回動させるものや、他の部材を介在させて第一リンク3を回動させるもの等を含むものである。
【0021】
従動部材6は、第一リンク3及び第二リンク4の回動に従動して垂直動作、回転動作(傾斜動作)が可能な部材であり、その形状は特に限定されるものではない。また、昇降部材Sの従動部材6への取り付け方法等も特に限定されるものではない。
【0022】
また、図1に示すように、第一リンク3の一端側(図1中、第一リンク3の上側の端部)には、第一リンク3の一端側を従動部材6に沿って移動可能に支持する第一スライダ32が設けられ、第一リンク3の他端側(図1中、第一リンク3の下側の端部)には、第一リンク3を基体2に対して回動可能に支持する回動軸31が設けられている。
【0023】
第一リンク3の第一スライダ32は、図1では従動部材6に設けられたガイド(後述する第二ガイド61)に沿って移動する摺動突起の形態として用いられているが、第一スライダ32は、第一リンク3の回動に伴って、従動部材6に沿って移動できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0024】
また、図1に示すように、第二リンク4の一端側(図1中、第二リンク4の上側の端部)には、第二リンク4と従動部材6を回動可能に連結する支点部41が設けられ、第二リンク4の他端側(図1中、第二リンク4の下側の端部)には、第二リンク4の他端側を基体2に対して移動可能に支持する第二スライダ42が設けられている。
【0025】
第二リンク4は、第一リンク3と交差し、X字状のリンクを形成し、駆動部5の駆動により、第一リンク3と協働して従動部材6を垂直動作、回転動作させる。第二リンク4の第二スライダ42は、昇降方向に対して垂直となる直線上に回動軸31とともに設けられており、基体2に設けられたガイド(図2参照。後述する第一ガイド21)に沿って移動する摺動突起の形態として用いられているが、第二スライダ42は、第二リンク4の回動に伴って、基体2に沿って移動できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
第一リンク3と第二リンク4の交差位置には、図1に示すように、第一リンク3と第二リンク4のジョイント部となる第一規制部33が設けられている。後述するように、第一規制部33は、従動部材6の所定の高さまでの垂直方向の移動と、回転する方向への移動を規制するものである。第一規制部33は、第一リンク3と第二リンク4のジョイント部となることができるものであれば、第一リンク3、第二リンク4のどちらに設けられてもよい。
【0027】
また、図1に示すように、第二リンク4には、従動部材6が所定の高さに移動するまで第一規制部33の位置を保持するための第二規制部43が設けられている。第二規制部43は、従動部材6が所定の高さに移動するまで第一規制部33の位置を保持する。すなわち、第二規制部43は、従動部材6の垂直動作の間、第一規制部33が、第二リンク4に対して相対移動しないように規制する。より具体的には、第二規制部43は、第一規制部33と支点部41との間の距離、第一規制部33と第二スライダ42との間の距離が一定に保持されるように第一規制部33の位置を保持し、従動部材6の垂直方向の移動を確保する。
【0028】
この第一規制部33の位置を保持するために、第一規制部33を中心とした円弧上を移動できるように第二規制部43をガイドする第一円弧部C1が、第一リンク3又は第二リンク4のいずれかに設けられる。このように第二規制部43が、第一規制部33を中心とした第一円弧部C1に沿って移動できるように構成することにより、従動部材6が初期位置から所定の高さまで移動する際に、第一規制部33は第二リンク4に対して相対移動せずに、第二規制部43が第一円弧部C1を移動する。第二規制部43が第一円弧部C1を移動している間、第一規制部33と第二規制部43との間の距離が第一円弧部C1の半径L1のままで維持されるため一定となる。したがって、第一規制部33が、第二リンクに対して相対移動することがなく、第一リンク3及び第二リンク4は図1に示す第一規制部33の位置がX字状リンクのジョイント部となり、従動部材6を垂直に移動させる。このとき、第一規制部33は、第二リンクに対して相対移動せず、さらに、第一リンク3の第一スライダ32が、従動部材6に沿って移動し、第二リンク4の第二スライダ42が基体2に沿って移動する。したがって、第一リンク3と第二リンク4との起立動作の中心がずれず、従動部材6上に設けられる昇降部材Sは、初期位置から垂直動作するときに、前方(図1中、左方向)にずれたりせずに、真上に起立することができる。したがって、昇降部材Sが真上に移動でき、前方や後方に昇降部材Sが移動することがないので、昇降部材Sの前後方向の移動スペースを考慮する必要がない。
【0029】
なお、第一規制部33と第二規制部43は、例えば図1に示す位置関係から図3に示す位置関係のように、互いの距離が変更するため、それぞれ別のリンクに設けられる。
【0030】
第一円弧部C1は、第二規制部43が第一規制部33を中心とした円弧上にガイドされるものであれば、貫通したガイド孔であってもよいし、非貫通のガイド溝であってもよいし、ガイドの方法については特に限定されるものではない。また、第一円弧部C1は、第二規制部43が設けられるリンクとは異なる他方のリンクに形成されればよい。
【0031】
つぎに、垂直方向の移動と回転動作(傾斜動作)の2モーションを連続して行なうために、さらに回動軸31を中心とした円弧上を移動できるように第二規制部43をガイドする第二円弧部C2と、回動軸31を中心とした円弧上を移動できるように第一規制部33をガイドする第三円弧部C3とを備え、第一円弧部C1と第二円弧部C2が連続して設けられる。したがって、従動部材6が回転初期位置から所定の角度まで回転動作をする際に、第一規制部33が第三円弧部C3を移動すると共に、第二規制部43が第二円弧部C2を移動する。すなわち、駆動部5によって第一リンク3が駆動されたときに、例えば図3に示すように、第一規制部33が第三円弧部C3にガイドされ、第二規制部43が第二円弧部C2にガイドされて移動することにより、第一規制部33が第二リンク4に対して相対移動する。第一規制部33が第二リンク4に対して相対移動することにより、X字状リンク(第一リンク3と第二リンク4)のジョイント部(すなわち、第一規制部33)が移動し、図3に示すように従動部材6を回転させ、傾斜させることができる。また、第一円弧部C1と第二円弧部C2が連続して設けられていることにより、簡単な構成で、従動部材6の垂直動作と従動部材6の回転動作(傾斜動作)の2モーションを連続して行なうことができる。したがって、垂直動作と回転動作の両方を行なうための複雑な機構や、垂直動作と回転動作を切り替えるために、第一リンク3と第二リンク4のジョイント部となる軸を切り替えたりする必要がない。
【0032】
以下、本発明の一実施の形態を図1〜3を用いて詳細に説明する。
【0033】
図1〜3に示されるように、本実施の形態の昇降機構1は、土台部Bに基体2が取り付けられており、基体2には第一リンク3と、第一リンク3と交差して第二リンク4が取り付けられている。基体2にはさらに、第一リンク3を基体2に対して回動させる駆動部5が設けられ、従動部材6が第一リンク3及び第二リンク4に支持されている。
【0034】
図1において、駆動部5は駆動ギヤG1を備え、第一リンク3に駆動ギヤG1と噛み合うセクターギヤG2が設けられている。駆動部5の駆動ギヤG1が電動モータ等の駆動力により回転すると、駆動ギヤG1に噛み合うセクターギヤG2及び第一リンク3が、第一リンク3の回動軸31を中心に回転する。
【0035】
図1に示すように、第一リンク3の一端側(図1中、上側の端部)には、第一スライダ32が設けられ、第一リンク3の回転にしたがって従動部材6に沿って移動する。第一リンク3の他端側(図1中、下側の端部)には、回動軸31が設けられ基体2に回転可能に取り付けられている。第二リンク4の一端側(図1中、上側の端部)には、第二リンク4と従動部材6を回動可能に連結する支点部41が設けられ、第二リンク4の他端側(図1中、下側の端部)には、第二リンク4の他端側を基体2に対して移動可能に支持する第二スライダ42が設けられている。第一リンク3と第二リンク4の交差位置には、第一規制部33が設けられ、第一リンク3と第二リンク4とで形成されるX字状リンクのジョイント部として機能する。また、第二リンク4には、第一規制部33の位置を保持するための第二規制部43が設けられている。第一規制部33及び第二規制部43は、図1においては、第一リンク3、第二リンク4から突出する突起であり、この突起が第一リンク3及び第二リンク4上でガイドされる。
【0036】
図1及び2に示すように、第二規制部43は、従動部材6の初期位置から所定の高さまで、第一規制部33を中心とした円弧上を移動できるようにガイドされ、駆動部5による第一リンク3の回動動作により従動部材6が所定の高さに移動する。また、図2及び3に示すように、従動部材6が所定の高さになった後は、第一規制部33は、回動軸31を中心とした円弧上を移動できるようにガイドされ、第二規制部43は、回動軸31を中心とした円弧上を第一リンク3に対して移動できるようにガイドされ、駆動部5による第一リンク3の回動動作により、第一リンク3が回動軸31を中心とした回動をすると共に第一リンク3と第二リンク4とが図の横方向に相対移動して、従動部材6が支点部41を中心に回転する。したがって、本実施の形態によれば、簡単な構成で、従動部材6の垂直動作と従動部材6の回転動作(傾斜動作)の2モーションを連続して行なうことができる。したがって、垂直動作と回転動作の両方を行なうための複雑な機構や、垂直動作と回転動作を切り替えるために、第一リンク3と第二リンク4のジョイント部となる軸を切り替えたりする必要がない。
【0037】
図1〜3に示すように、第二スライダ42は、基体2に設けられた直線状の第一ガイド21にガイドされ、第一スライダ32は、従動部材6に設けられた直線状の第二ガイド61にガイドされている。また、第一規制部33は回動軸31を中心とした円弧状に形成された第三ガイド44にガイドされ、図1〜3においては、第一規制部33は第二リンク4に形成された第三ガイド44内に移動可能に挿入されている。また、第二規制部43は、中心が異なる連続した第一円弧部C1及び第二円弧部C2を有する第四ガイド34にガイドされ、図1〜3においては、第二規制部43は第一リンク3に形成された第四ガイド34内に移動可能に挿入されている。
【0038】
図2に示すように、第二スライダ42は、従動部材6の所定の高さにおいて、第一ガイド21の端縁21Eに当接し、第二リンク4が、図2中、さらに左方向に移動することを規制し、従動部材6の移動高さを調整する。
【0039】
図1及び2に示すように、第二規制部43は、従動部材6の初期位置(図1参照)から所定の高さ(図2参照)まで、第一規制部33を中心とした第四ガイド34の第一円弧部C1においてガイドされ、図2及び3に示すように、従動部材6の回転時には、回動軸31を中心とした第四ガイド34の第二円弧部C2においてガイドされる。
【0040】
このように、第二スライダ42を第一ガイド21にガイドさせ、第一スライダ32を第二ガイド61にガイドさせることにより、第一スライダ32及び第二スライダ42の移動がスムーズになり、スムーズに従動部材6の垂直動作と回転動作を行なうことができる。また、第一規制部33を第三ガイド44にガイドさせることにより、第一規制部33の第三ガイド44内での移動がスムーズになり、従動部材6の回転動作をスムーズに行なうことができる。また、2つの第一円弧部C1及び第二円弧部C2が連続した第四ガイド34により、従動部材6の垂直動作と回転動作の2モーションの切り替えが容易かつスムーズになる。
【0041】
また、図1に示すように、第四ガイド34が駆動ギヤG1と噛み合うセクターギヤG2に形成される、第二リンク4に第三ガイド44が形成されることにより、第一規制部33の位置の保持や、垂直動作と回転動作の切り替えを第一リンク3と第二リンク4により行なうことができるので、部品点数が少なくて済む。
【0042】
つぎに、本実施の形態の昇降機構1の作用を説明する。
【0043】
図1に示される従動部材6が下死点の状態(初期状態)から、従動部材6を垂直動作させるために、駆動部5を駆動し、駆動部5の駆動ギヤG1を回転させる。この初期状態においては、第一規制部33は第三ガイド44における一端(図1中、第三ガイド44の右端)において保持されており、第二規制部43は第四ガイド34の第一円弧部C1側端部(図1中、第四ガイド34の上端)において保持されている。
【0044】
駆動ギヤG1が図1中時計回りに回転すると、駆動ギヤG1がセクターギヤG2に噛み合うことにより、第一リンク3が回動軸31を中心に回転する。第一リンク3が回転し、第二規制部43が第一円弧部C1を移動している間、第一規制部33と第二規制部43との間の距離が第一円弧部C1の半径L1のままで維持されるため一定となる。したがって、第一規制部33が、第二リンク4に対して相対移動することがなく、第一リンク3及び第二リンク4は図1に示す第一規制部33の位置(第一規制部33の初期状態の位置)がX字状リンクのジョイント部となる。また、第一リンク3の第一スライダ32は、従動部材6に形成された第二ガイド61に沿って移動し、かつ第二リンク4の第二スライダ42は、第一ガイド21に沿って移動する。したがって、従動部材6の初期位置から従動部材6が垂直動作するときに、前後方向(図1中、左右方向)に従動部材6が移動せずに、初期位置から真上に起立することができる。したがって、昇降部材Sが真上に移動でき、前方や後方に昇降部材Sが移動することがないので、昇降部材Sの前後方向の移動スペースを考慮する必要がない。また、回転動作による従動部材6の傾斜の際も、従動部材6の前記前後方向の移動を抑制することができる。
【0045】
図2に示す所定の高さに従動部材6が移動したとき、第一規制部33が挿入されている第三ガイド44の第三円弧部C3は、回動軸31を中心とした円弧上に位置しており、さらに、第二規制部43が挿入されている第四ガイド34の第二円弧部C2は、回動軸31を中心とした円弧上に位置している。したがって、図3に示すように、さらに第一リンク3が回転すると、第一規制部33は、第三ガイド44内を移動し、同様に第二規制部43は第四ガイド34の第二円弧部C2に沿って移動する。また、第二リンク4の第二スライダ42は、第一ガイド21の端縁21Eに当接し、第二リンク4は図2の状態のまま保持される。第一リンク3の回転により、第一リンク3の第一スライダ32は、第二ガイド21に沿って移動するとともに、従動部材6が支点部41を中心に回転し、従動部材6が傾斜する。
【0046】
以上、図1〜3を用いて、本発明の昇降機構1の一実施の形態を説明したが、本発明の昇降機構1は、図1〜3に示す態様に限られることはない。すなわち、第一リンク3、第二リンク4の形状は第一規制部33、第二規制部43、第一円弧部C1、第二円弧部C2、第三円弧部C3を設けることができるものであれば、特に限定されるものではない。また、第一規制部33、第二規制部43はどちらのリンクに設けられてもよいし、第一規制部33がガイドされる第一円弧部C1、第三円弧部C3、第二規制部43がガイドされる第二円弧部C2を設けるリンクも、第一規制部33と第二規制部43が設けられるリンクに応じて適宜変更することができる。また、図1では、最初に従動部材6の垂直動作が行なわれ、その後従動部材6の回転動作(傾斜動作)が行なわれるが、最初に回転動作を行ない、その後垂直動作を行なうように構成することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 昇降機構
2 基体
21 第一ガイド
21E 端縁
3 第一リンク
31 回動軸
32 第一スライダ
33 第一規制部
34 第四ガイド
4 第二リンク
41 支点部
42 第二スライダ
43 第二規制部
44 第三ガイド
5 駆動部
6 従動部材
61 第二ガイド
C1 第一円弧部
C2 第二円弧部
C3 第三円弧部
G1 駆動ギヤ
G2 セクターギヤ
S 昇降部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体に取り付けられる第一リンクと、前記基体に取り付けられ、前記第一リンクと交差して配置される第二リンクと、前記第一リンクを前記基体に対して回動させる駆動部と、前記第一リンク及び第二リンクに支持される従動部材とを備えた昇降機構であって、
前記第一リンクの一端側には、前記第一リンクの一端側を前記従動部材に沿って移動可能に支持する第一スライダが設けられ、前記第一リンクの他端側には、前記第一リンクを前記基体に対して回動可能に支持する回動軸が設けられ、
前記第二リンクの一端側には、前記第二リンクと前記従動部材を回動可能に連結する支点部が設けられ、前記第二リンクの他端側には、前記第二リンクの他端側を前記基体に対して移動可能に支持する第二スライダが設けられ、
前記第一リンクと第二リンクの交差位置に、前記第一リンクと第二リンクのジョイント部となる第一規制部が設けられ、
前記第二リンクに、前記従動部材が所定の高さに移動するまで前記第一規制部の位置を保持するための第二規制部が設けられ、前記第二規制部が、前記従動部材が初期位置から所定の高さへ移動するまで、第一規制部を中心とした円弧上を移動できるようにガイドされ、前記駆動部による前記第一リンクの回動動作により前記従動部材が所定の高さに移動し、前記従動部材が所定の高さになった後は、前記第一規制部が、前記回動軸を中心とした円弧上を移動できるようにガイドされ、前記第二規制部が、前記回動軸を中心とした円弧上を前記第一リンクに対して移動できるようにガイドされ、前記駆動部による前記第一リンクの回動動作により、前記従動部材を前記支点部を中心に回転させることを特徴とする昇降機構。
【請求項2】
前記第二スライダが、前記基体に設けられた直線状の第一ガイドにガイドされ、前記第一スライダが前記従動部材に設けられた直線状の第二ガイドにガイドされ、
前記第一規制部が前記回動軸を中心とした円弧状に形成された第三ガイドにガイドされ、
前記第二規制部が、中心が異なる連続した第一円弧部及び第二円弧部を有する第四ガイドにガイドされ、
前記第二スライダは、前記従動部材の所定の高さにおいて、前記第一ガイドの端縁に当接し、
前記第二規制部は、前記従動部材の初期位置から所定の高さまで、前記第一規制部を中心とした前記第一円弧部においてガイドされ、前記従動部材の回転時には、前記回動軸を中心とした前記第二円弧部においてガイドされることを特徴とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
前記駆動部が駆動ギヤを備え、前記第一リンクに前記駆動ギヤと噛み合うセクターギヤが設けられ、前記第四ガイドが前記セクターギヤに形成され、
前記第二リンクに前記第三ガイドが形成されることを特徴とする請求項2記載の昇降機構。
【請求項4】
基体と、該基体に取り付けられる第一リンクと、前記基体に取り付けられ、前記第一リンクと交差して配置される第二リンクと、前記第一リンクを前記基体に対して回動させる駆動部と、前記第一リンク及び第二リンクに支持される従動部材とを備えた昇降機構であって、
前記第一リンクの一端側には、前記第一リンクの一端側を前記従動部材に沿って移動可能に支持する第一スライダが設けられ、前記第一リンクの他端側には、前記第一リンクを前記基体に対して回動可能に支持する回動軸が設けられ、
前記第二リンクの一端側には、前記第二リンクと前記従動部材を回動可能に連結する支点部が設けられ、前記第二リンクの他端側には、前記第二リンクの他端側を前記基体に対して移動可能に支持する第二スライダが設けられ、
前記第一リンクと第二リンクの交差位置に、前記第一リンクと第二リンクのジョイント部となる第一規制部が設けられ、
前記第二リンクに、前記従動部材が所定の高さに移動するまで前記第一規制部の位置を保持するための第二規制部が設けられ、
前記第一規制部を中心とした円弧上を移動できるように前記第二規制部をガイドする第一円弧部と、
前記回動軸を中心とした円弧上を移動できるように前記第二規制部をガイドする第二円弧部と、
前記回動軸を中心とした円弧上を移動できるように前記第一規制部をガイドする第三円弧部とを備え、
前記第一円弧部と前記第二円弧部は連続して設けられ、
前記従動部材が初期位置から所定の高さまで移動する際に、前記第一規制部は前記第二リンクに対して相対移動せずに、前記第二規制部が前記第一円弧部を移動し、
前記従動部材が回転初期位置から所定の角度まで回転動作をする際に、前記第一規制部が前記第三円弧部を移動すると共に、前記第二規制部が前記第二円弧部を移動するようにしてなる昇降機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23376(P2013−23376A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162410(P2011−162410)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】