説明

昇降機能付き吊下げ搬送車及び吊下げ台

【課題】コストを削減でき、部品組付け作業の作業性が高く、ピットを設ける必要がなく、ライン外への搬出及びライン外からの搬入の自由度が高く、ライン組立て方式とセル組立て方式とを併用する構成に柔軟に対応可能な昇降機能付き吊下げ搬送車を提供する。
【解決手段】走行車輪8が取付けられた前後左右の脚体3に天井枠体4を固定し、天井枠体4の左右に設けられ、車体Wを吊下げるハンガー7の上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段5、天井枠体4に支持され、入力軸の回転運動を上下直線運動に変換してハンガー7を昇降させる昇降駆動機構6を備え、前記昇降駆動機構の入力軸を天井枠体4に設けた伝達機構を介して回転駆動装置により回転してハンガー7を昇降させ、フリクションローラ式駆動装置のフリクションローラを天井枠体4の側面4Sに圧接することにより搬送経路に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を組み付ける基体を吊り下げた状態で昇降させることができる、昇降機能付き吊下げ搬送車及び吊下げ台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば艤装工場の自動車組立ラインにおいて、部品を組み付ける基体である車体の搬送は、オーバーヘッドコンベアにより車体を吊り下げた状態で行うか、あるいは、昇降機能付き搬送台車に車体を載置した状態で行うのが一般的である(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開昭57−123315号公報(第1図)
【特許文献2】特開昭62−225476号公報(第1−2図)
【特許文献3】米国特許第3,968,559号明細書(FIG.1、FIG.3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアは、作業者の頭上(例えば、工場の天井近く等)に走行レールを架設する必要があり、据付け作業には重機を用いた高所作業を行う必要があるため、安全性について特に細心の注意を払う必要があるとともに、補助梁、吊下げ、安全ネット、点検歩廊及び梯子等の現地据付け工数が多大である。その上、オーバーヘッドコンベアや付随設備を建屋に吊り下げるため、吊下げ荷重に見合った強度を建屋に備えさせる必要があり、建屋の高強度化に伴いその建築コストが増大する。
【0005】
また、特許文献2のような昇降機能付き搬送台車は、特許文献1のようなオーバーヘッドコンベアにおける据付けコストや建築コストの増大等の問題はないが、基台に立設された左右一対のガイドポストが部品を組み付ける基体である車体近くに存在するため、例えば車体の下及びその周辺を作業域としたシャーシ工程において、車体の下廻りへ部品を組み付ける作業を行う際に邪魔になる。
その上、走行車輪が取り付けられた基台の上に車体があることから、この基台が、エンジン搭載やアクスル搭載等の際にこれらの部品を載置した台車と干渉するため、この台車から基台上へエンジン又はアクスル等の部品を受け渡す必要がある。
【0006】
その上さらに、昇降駆動源を搬送経路の適宜箇所に、基台の下側に位置するように備えておく必要があることから、ピットが必要であるとともに昇降駆動源等のメンテナンスの作業性が悪い。
その上、基台の下側に突設されたガイドピンを走行路面に設けられた案内溝に嵌合させながら所定の搬送経路に沿って走行するものであるため、ライン外への搬送台車の搬出及びライン外からの搬送台車の搬入の自由度が低いとともに、車体の下側に基台があるため、この基台が部品を組み付ける際の部品搬送の邪魔になるため、ライン組立て方式と、一箇所で一部の部品をまとめて組み付けるセル組立て方式とを併用する構成等に柔軟に対応することができない。
【0007】
さらに、特許文献3のような昇降機能付き搬送台車は、特許文献1のようなオーバーヘッドコンベアにおける据付けコストや建築コストの増大等の問題はないが、車体をその前後左右に設けたフレームで支持し、このフレームを昇降機構の受部(前後に設けた左右方向に延びるレール)で受けて、車体及びフレームを昇降させる構成であることから、このフレームがトリム工程等に使用する際には邪魔になるとともに、少なくとも前後部分に基台があるため、この基台が作業の邪魔になる場合がある。
その上、搬送台車の基台上に昇降駆動用のアクチュエータを搭載しているため、搬送台車の外部から動力を供給する必要がある。
【0008】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、コストを削減することができるとともに、部品を組み付ける基体の下廻り等へ部品を組み付ける作業の作業性が高く、搬送台車上に昇降駆動用のアクチュエータを搭載せずに、ピットを設ける必要がなく、ライン外への搬送車の搬出及びライン外からの搬送車の搬入の自由度が高く、ライン組立て方式と、一箇所で一部の部品をまとめて組み付けるセル組立て方式とを併用する構成等に柔軟に対応することができる昇降機能付き吊下げ搬送車、並びに、セル組立て方式に適した昇降機能付き吊下げ台を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る昇降機能付き吊下げ搬送車は、前記課題解決のために、前後左右に立設され、下端に走行車輪が取り付けられた脚体と、これら脚体の上端に連結固定された天井枠体と、この天井枠体の前後又は左右に設けられ、部品を組み付ける基体を吊り下げるハンガーの上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段と、前記天井枠体に支持され、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して前記ハンガーを昇降させる昇降駆動機構とを備えるとともに、前記天井枠体に、又は前記前後の脚体の下端部間に横架された杆体に、搬送方向に延びる側面を形成してなり、前記昇降駆動機構の入力軸を、前記天井枠体に設けた伝達機構を介して、組立ラインの搬送経路の所定箇所に配置した回転駆動装置により回転することにより、前記ハンガーを昇降させ、前記搬送経路の所定箇所に配置したフリクションローラ式駆動装置のフリクションローラを前記天井枠体又は杆体の側面に圧接することにより、前記搬送経路に沿って移動するものである。
【0010】
また、本発明に係る昇降機能付き吊下げ台は、前記課題解決のために、前後左右に立設された脚体と、これら脚体の上端に連結固定された天井枠体と、この天井枠体の前後又は左右に設けられ、部品を組み付ける基体を吊り下げるハンガーの上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段と、前記天井枠体に支持され、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して前記ハンガーを昇降させる昇降駆動機構とを備え、前記昇降駆動機構の入力軸を、前記天井枠体に設けた伝達機構を介して回転駆動装置により回転することにより前記ハンガーを昇降させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る昇降機能付き吊下げ搬送車によれば、前後左右に立設され、下端に走行車輪が取り付けられた脚体と、これら脚体の上端に連結固定された天井枠体と、この天井枠体の前後又は左右に設けられ、部品を組み付ける基体を吊り下げるハンガーの上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段と、前記天井枠体に支持され、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して前記ハンガーを昇降させる昇降駆動機構とを備えるとともに、前記天井枠体に、又は前記前後の脚体の下端部間に横架された杆体に、搬送方向に延びる側面を形成してなり、前記昇降駆動機構の入力軸を、前記天井枠体に設けた伝達機構を介して、組立ラインの搬送経路の所定箇所に配置した回転駆動装置により回転することにより、前記ハンガーを昇降させ、前記搬送経路の所定箇所に配置したフリクションローラ式駆動装置のフリクションローラを前記天井枠体又は杆体の側面に圧接することにより、前記搬送経路に沿って移動するので、建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアと比較して、建屋に吊り下げる構成ではないため、据付けコスト及び建築コストを削減することができる。
その上、基台に立設された左右一対のガイドポストが部品を組み付ける基体の近くに存在する昇降機能付き搬送台車と比較して、ガイドポストを用いずに基体をハンガーで吊り下げているため、基体の下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔になるガイドポストがないため、基体の下廻りへの部品組付け作業等の作業性を高くすることができる。
その上さらに、基体をその前後左右に設けたフレームで支持し、このフレームを昇降機構の受部で受けて、基体及びフレームを基台に搭載した昇降駆動用のアクチュエータにより昇降させる昇降機能付き搬送台車と比較して、基体をハンガーで吊り下げているため、基体を支持するフレームが不要になるとともに、このフレームや基台が作業の邪魔になることがなく、さらに、搬送車上に昇降駆動用のアクチュエータがないため、搬送車の外部から動力を供給する必要がない。
【0012】
その上、前後左右の脚体の下端に走行車輪を取り付けて走行する構成であり、基台がなく、ハンガーで吊り下げられた基体の下側及びその周辺(前後左右の脚体の間)を開放しているため、部品組付け作業の際に部品を搬送する台車と干渉することがなく、基台上への部品の受け渡しが不要となるため、これらの点からも基体の下廻りへの部品組付け作業等の作業性を高くすることができる。
その上さらに、ハンガーを昇降させる昇降駆動機構の入力軸を、天井枠体に設けた伝達機構を介して回転駆動装置により回転することによりハンガーを昇降させる構成であることから、回転駆動装置を天井枠体の近傍の架台等の上に設置しておけばよいため、昇降駆動用の回転駆動装置等を収容するピットを設ける必要がない。
その上、ライン外への搬送車の搬出及びライン外からの搬送車の搬入を、例えば作業者が操作して、任意の位置で容易に行うことができるとともに、基体の下側に部品搬送の邪魔になる基台がないため、ライン組立て方式と、一箇所で一部の部品をまとめて組み付けるセル組立て方式とを併用する構成等に柔軟に対応することができる。
【0013】
また、本発明に係る昇降機能付き吊下げ台によれば、前後左右に立設された脚体と、これら脚体の上端に連結固定された天井枠体と、この天井枠体の前後又は左右に設けられ、部品を組み付ける基体を吊り下げるハンガーの上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段と、前記天井枠体に支持され、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して前記ハンガーを昇降させる昇降駆動機構とを備え、前記昇降駆動機構の入力軸を、前記天井枠体に設けた伝達機構を介して回転駆動装置により回転することにより前記ハンガーを昇降させるので、部品を組み付ける基体の下側に部品搬送の邪魔になる基台がなく、基体の下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔になるガイドポストを用いずに基体をハンガーで吊り下げており、ハンガーで吊り下げられた基体の下側及びその周辺(前後左右の脚体の間)を開放していること、及び、作業に応じて基体を昇降させることができることから、周辺からの部品供給が容易であるとともに基体の下廻りへの部品組付け作業等の作業性を高くすることができるため、一箇所で部品をまとめて組み付けるセル組立て方式による部品組付け作業を効率的に行うことができる。したがって、特に多品種少量生産における組立作業に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、昇降機能付き吊下げ搬送車1の搬送方向(図中矢印T参照。)側を前とし、左右は前方に向かっていうものとする。また、左方から見た図を正面図とする。
【0015】
図1〜図5は本発明の実施の形態に係る昇降機能付き吊下げ搬送車1の構成を示す概略図であり、図1は左上方から見た斜視図、図2は正面図、図3は前方から見た図、図4は平面図、図5は要部を拡大して示す正面図であり、図1(a)、図2(a)及び図3(a)はハンガー7及び部品を組み付ける基体である車体Wを最も下降させた状態を、図1(b)、図2(b)及び図3(b)はハンガー7及び車体Wを最も上昇させた状態を示している。
また、図6及び図7は、フリクションローラ式駆動装置Eにより駆動されて昇降機能付き吊下げ搬送車1が搬送されている状態を示す左上方から見た斜視図である。
さらに、図8は、シャーシ工程において、ハンガー7及び車体Wを最も上昇させ、エンジン搭載台車D上のエンジンを車体Wの下側から組み付ける例を示す左上方から見た斜視図である。
【0016】
図1〜図4に示すように、昇降機能付き吊下げ搬送車1は、前後左右に立設され、下端に走行車輪8,…が取り付けられた脚体3,…、脚体3,…の上端に連結固定される、前枠4F、後枠4B、左枠4L及び右枠4Rからなる平面視略矩形状の天井枠体4、天井枠体4の左右に設けられ、部品を組み付ける基体である車体Wを吊り下げるハンガー7の上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段5,5、昇降支持手段5,5に取り付けられ、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換してハンガー7を昇降させる昇降駆動機構6,6を備えている。
【0017】
ここで、図6に示すように、昇降機能付き吊下げ搬送車1は、天井枠体4の左右に形成された搬送方向に延びる側面4S,4Sに、搬送経路の所定箇所に配置したフリクションローラ式駆動装置E,EのフリクションローラF,Fを圧接することにより、搬送経路に沿って床面FL上を移動するものであるが、図7に示すような左側前後の脚体3,3、又は右側前後の脚体3,3の下端部間に横架された杆体9に形成された、搬送方向に延びる側面9S,9Sにフリクションローラ式駆動装置E,EのフリクションローラF,Fを圧接するようにしてもよい。
【0018】
また、昇降機能付き吊下げ搬送車1とともに作業者を移動させる必要がある作業ラインにおいては、図1〜図4に示すように、昇降機能付き吊下げ搬送車1の移動に同期させて作業者を移動させるための作業車コンベアCが適宜箇所に設けられる。
さらに、図3(a)及び図4に示すように、例えば車体へ内装品等を組み付けるトリム工程等において、車体Wの前後のドアA,Bを全開した状態で作業を行ってもよいし、例えば塗装工程後にドアA,Bを取り外した状態で作業を行ってもよい。
【0019】
ここで、図1及び図2に示すように、車体Wを吊り下げるハンガー7の上端左右には左右に延びる連結杆7Aが横架され、下端左右の受部7B,7B上に車体Wが載置される。
なお、前後左右に立設される脚体3,…は、前後左右の4本に限定されるものではなく、5本以上であってもよいし、昇降支持手段5,5を天井枠体4の前後に設ける構成としてもよい。
また、図1(b)、図2(b)及び図3(b)に示すように、ハンガー7及び車体Wが最も上昇した状態では、ハンガー7に吊り下げられた車体Wの上部が天井枠体4よりも上側に位置するが、天井枠体4は前記のとおり前枠4F、後枠4B、左枠4L及び右枠4Rからなり、これらにより囲まれた内側部分は空間となっているため、天井枠体4と車体Wが干渉することがなく、車体Wの下廻りへの部品組み付け作業に適した十分な高さまで車体Wを上昇させることができる。
【0020】
このような昇降機能付き吊下げ搬送車1は、建屋より吊り下げるオーバーヘッドコンベアと比較して、建屋に吊り下げる構成ではないため、据付けコスト及び建築コストを削減することができるとともに、基台に立設された左右一対のガイドポストが車体Wの近くに存在する昇降機能付き搬送台車と比較して、ガイドポストを用いずに車体Wをハンガー7で吊り下げているため、車体Wの下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔になるガイドポストがないため、車体Wの下廻りへの部品組付け作業等の作業性を高くすることができる。
【0021】
次に、昇降支持手段5の構成例について説明する。
図1に示すように、前枠4Fと後枠4Bとの間には、左枠4L及び右枠4Rに沿ってこれらと平行に、左右の連結フレーム10L,10Rが横架され、左枠4Lと左連結フレーム10Lとの間及び右枠4Rと右連結フレーム4Rとの間に、昇降支持手段5,5の前後方向に延びる下板5B,5Bが固定される。
昇降支持手段5は、下板5Bと、この下板5Bと平行にその上側に位置し、ハンガー7の上端部を支持するとともに、後述するように昇降駆動機構6により駆動されてハンガー7とともに昇降する昇降部材である、前後方向に延びる上板5Aとの間に、図2(b)に示すように、2本の同じ長さのリンクの上下端間の中点同士を枢結してなるX字状対称リンクを上下に重ねた構成からなる。
【0022】
すなわち、図2(b)に示すように、上リンク11及び12並びに下リンク13及び14の長さは等しく、上リンク11の上下端11A,11B間の中点と上リンク12の上下端12A,12B間の中点とが左右方向の回動軸15まわりに相対的に回動可能に連結され、下リンク13の上下端13A,13B間の中点と下リンク14の上下端14A,14B間の中点とが左右方向の回動軸16まわりに相対的に回動可能に連結されるとともに、上リンク12の下端12Bと下リンク13の上端13Aとが左右方向軸まわりに回動可能に連結され、上リンク11の下端11Bと下リンク14の上端14Aとが左右方向軸まわりに回動可能に連結される。
また、上リンク11の上端11Aが上板5Aの前部と左右方向軸まわりに回動可能に連結され、下リンク14の下端14Bが下板5Bの前部と左右方向軸まわりに回動可能に連結されるとともに、上リンク12の上端12Aが上板5A後部のスライドガイドにより前後方向にスライド可能に支持され、下リンク13下端13Bが下板5B後部のスライドガイド17(図1参照。)により前後方向にスライド可能に支持される。
【0023】
したがって、前記X字状対称リンクは上下方向に伸縮可能であり、この伸縮により昇降支持手段5の上板5A(昇降部材)は下板5Bに対して平行な状態を保持したまま昇降するため、上板5Aに支持されたハンガー7も昇降する。
このように左右の昇降支持手段5,5により昇降可能に支持されたハンガー7は、天井枠体4の下側に配設された、左右方向軸まわりに回転する振止めローラ18A,18A、及び、前後方向軸まわりに回転する振止めローラ18B,18Bにより左右の垂下部分の前後左右をガイドされるため、昇降時に振れ止めされ、安定かつ確実に昇降する。
なお、昇降支持手段5を構成するX字状対称リンクは必ずしも上下に重ねる必要はない。
また、昇降支持手段5は、X字状対称リンクを用いた構成に限定されるものではなく、リニアカイド等を用いる構成であってもよい。
【0024】
次に、昇降駆動機構6の構成例等について説明する。
図2(b)及び図5に示すように、昇降駆動機構6は、天井枠体4により支持されており、図示しない入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して昇降支持手段5の昇降部材5Aを駆動するものである。
このような入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換する機構としては、スパイラル状の垂直板と水平板とを組み合わせて昇降する駆動機構(例えば、米国特許第6,547,216号明細書参照。)があり、この駆動機構を本実施の形態では採用している。
しかし、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換する機構としては、ボールねじ等を採用してもよく、ボールねじを採用した場合においては、上下方向に延びるボールねじ軸の下端を入力軸とし、ボールねじのナットを前記昇降部材として、前記入力軸を回転させることにより前記ナットとともにハンガー7を昇降させるようにすればよい。
【0025】
ここで、天井枠体4には、昇降駆動機構6の前記入力軸を回転させるための伝達機構が取り付けられており、すなわち図2(b)及び図5に示すように、天井枠体4の左枠4Lの前端部下面にギヤボックス25Lが取り付けられるとともに、該ギヤボックス25Lから左方へ被駆動軸21が突出しており、該被駆動軸21を組立ラインの搬送経路の所定箇所に配置した回転駆動装置により回転させると、そのトルクがギヤボックス25L内のベベルギヤ、前側のカップリング22F、前後方向に延びる伝動軸23、後側のカップリング22B及びギヤボックス26内のギヤを介して左側の昇降駆動機構6の前記入力軸に伝達される。
【0026】
また、図3に示すように、被駆動軸21のトルクは、ギヤボックス25L内のベベルギヤ、左側のカップリングカップリング19L、左右方向に延びる伝動軸20、右側のカップリング19R及び天井枠体4の右枠4Rの前端部下面に取り付けられたギヤボックス25R並びに図2(b)及び図5と同様の伝達機構を介して右側の昇降駆動機構6の前記入力軸に伝達される。
したがって、被駆動軸21を回転させる前記回転駆動装置による駆動トルクは、天井枠体4に設けた伝達機構を介して左右の昇降駆動機構6,6に伝達され、昇降部材である左右の上板5A,5Aが連動して昇降するため、ハンガー7及び車体Wが昇降する。
【0027】
このように、昇降機能付き吊下げ搬送車1が、ハンガー7を昇降させる昇降駆動機構6,6の入力軸を、天井枠体4に設けた伝達機構を介して回転駆動装置により回転することによりハンガー7を昇降させる構成であることから、回転駆動装置を天井枠体4の近傍の架台等の上に設置しておけばよいため、昇降駆動用の回転駆動装置等を収容するピットを設ける必要がないとともに、搬送車1上に昇降駆動用のアクチュエータがないため、搬送車1の外部から動力を供給する必要がない。
【0028】
また、昇降機能付き吊下げ搬送車1には、前記のとおり基台がなく、ハンガー7で吊り下げられた車体Wの下側及びその周辺(前後左右の脚体3,…の間)を開放しているため、部品組付け作業の際に、例えば図8に示すエンジン搭載台車D等の部品を搬送する台車と干渉することがなく、したがって車体Wの部品組付け位置の近傍まで部品を搬送する台車を進入させることができる。
さらに、ライン外への昇降機能付き吊下げ搬送車1の搬出及びライン外からの搬送車1の搬入を、例えば作業者が操作して、任意の位置で容易に行うことができるとともに、車体Wの下側に部品搬送の邪魔になる基台がないため、ライン組立て方式と、一箇所で一部の部品をまとめて組み付けるセル組立て方式とを併用する構成等に柔軟に対応することができる。
【0029】
図9は、本発明の実施の形態に係る昇降機能付き吊下げ台2の構成を示す左上方から見た斜視図であり、図9(a)はハンガー7及び部品を組み付ける基体である車体Wを最も下降させた状態を、図9(b)はハンガー7及び車体Wを最も上昇させた状態を示している。図9において、図1〜図8と同一の符号は同一のものであるため、これらの説明は省略する。
昇降機能付き吊下げ台2は、図1〜図8に示した昇降機能付き吊下げ搬送車1と異なり、組立ラインの搬送経路に沿って移動するものではなく、したがって前後左右の脚体3,…の下端に昇降機能付き吊下げ搬送車1のような走行車輪8,…がなく、脚体3,…の下面は床面に当接し、この状態で床面に固定される。
なお、昇降機能付き吊下げ台2を所定位置まで容易に移動させるために前後左右の脚体3,…の下端にキャスターを取り付けておき、昇降機能付き吊下げ台2を所定位置まで移動させた後にアジャスターを下方に突出させてキャスターを浮かせることにより、昇降機能付き吊下げ台2を所定位置に固定するようにしてもよい。
また、左右の昇降駆動機構6,6を駆動するための回転駆動装置は図示していないが、昇降機能付き吊下げ台2は前記搬送経路に沿って移動しないため、前記回転駆動装置は、例えば天井枠体4に取り付けておいてもよいし、天井枠体4の近傍の架台等の上に設置しておいてもよい。
【0030】
以上のような昇降機能付き吊下げ台2の構成によれば、車体Wの下側に部品搬送の邪魔になる基台がなく、車体Wの下廻りへの部品組付け作業等の際に邪魔になるガイドポストを用いずに車体Wをハンガー7で吊り下げており、ハンガー7で吊り下げられた車体Wの下側及びその周辺(前後左右の脚体3,…の間)を開放していること、及び、作業に応じて車体Wを昇降させることができることから、周辺からの部品供給が容易であるとともに車体Wの下廻りへの部品組付け作業等の作業性を高くすることができるため、一箇所で部品をまとめて組み付けるセル組立て方式による部品組付け作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る昇降機能付き吊下げ搬送車の構成を示す左上方から見た斜視図であり、(a)はハンガー及び車体を最も下降させた状態を、(b)はハンガー及び車体を最も上昇させた状態を示している。
【図2】同じく正面図であり、(a)はハンガー及び車体を最も下降させた状態を、(b)はハンガー及び車体を最も上昇させた状態を示している。
【図3】同じく前方から見た図であり、(a)はハンガー及び車体を最も下降させた状態を、(b)はハンガー及び車体を最も上昇させた状態を示している。
【図4】同じく平面図である。
【図5】要部を拡大して示す正面図である。
【図6】フリクションローラ式駆動装置により駆動されて昇降機能付き吊下げ搬送車が搬送されている状態を示す左上方から見た斜視図である。
【図7】同状態における別の構成例を示す左上方から見た斜視図である。
【図8】シャーシ工程において、ハンガー及び車体を最も上昇させ、エンジン搭載台車上のエンジンを車体の下側から組み付ける例を示す左上方から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る昇降機能付き吊下げ台の構成を示す左上方から見た斜視図であり、(a)はハンガー及び車体を最も下降させた状態を、(b)はハンガー及び車体を最も上昇させた状態を示している。
【符号の説明】
【0032】
1 昇降機能付き吊下げ搬送車
2 昇降機能付き吊下げ台
3 脚体
4 天井枠体
4F 前枠
4B 後枠
4L 左枠
4R 右枠
4S 側面
5 昇降支持手段
5A 上板(昇降部材)
5B 下板
6 昇降駆動機構
7 ハンガー
7A 連結杆
7B 受部
8 走行車輪
9 杆体
9S 側面
10L,10R 連結フレーム
11,12 上リンク
13,14 下リンク
11A,12A,13A,14A 上端
11B,12B,13B,14B 下端
15,16 回動軸(中点)
17 スライドガイド
18A,18B 振止めローラ
19L,19R カップリング
20 伝動軸
21 被駆動軸
22F,22B カップリング
23 伝動軸
25L,25R,26 ギヤボックス
W 車体(部品を組み付ける基体)
A,B ドア
C 作業者コンベア
D エンジン搭載台車
E フリクションローラ式駆動装置
F フリクションローラ
FL 床面
T 搬送方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後左右に立設され、下端に走行車輪が取り付けられた脚体と、
これら脚体の上端に連結固定された天井枠体と、
この天井枠体の前後又は左右に設けられ、部品を組み付ける基体を吊り下げるハンガーの上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段と、
前記天井枠体に支持され、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して前記ハンガーを昇降させる昇降駆動機構とを備えるとともに、
前記天井枠体に、又は前記前後の脚体の下端部間に横架された杆体に、搬送方向に延びる側面を形成してなり、
前記昇降駆動機構の入力軸を、前記天井枠体に設けた伝達機構を介して、組立ラインの搬送経路の所定箇所に配置した回転駆動装置により回転することにより、前記ハンガーを昇降させ、前記搬送経路の所定箇所に配置したフリクションローラ式駆動装置のフリクションローラを前記天井枠体又は杆体の側面に圧接することにより、前記搬送経路に沿って移動する昇降機能付き吊下げ搬送車。
【請求項2】
前後左右に立設された脚体と、
これら脚体の上端に連結固定された天井枠体と、
この天井枠体の前後又は左右に設けられ、部品を組み付ける基体を吊り下げるハンガーの上端部を昇降可能に支持する昇降支持手段と、
前記天井枠体に支持され、入力軸の回転運動を上下方向の直線運動に変換して前記ハンガーを昇降させる昇降駆動機構とを備え、
前記昇降駆動機構の入力軸を、前記天井枠体に設けた伝達機構を介して回転駆動装置により回転することにより前記ハンガーを昇降させる昇降機能付き吊下げ台。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12141(P2009−12141A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178597(P2007−178597)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】