説明

昇降装置及び天井吊り下げ装置

【課題】低コストで成形可能で且つ軽量化も図れる昇降装置及び天井吊り下げ装置の提供を目的とする。
【解決手段】天井配設機器を昇降する駆動手段が取り付けられる樹脂製のベースと、前記ベースを下方から覆い且つ当該ベースよりも耐熱性の高い補強部材と、前記補強部材を天井に取り付ける取付手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に配設される天井配設機器(例えば、照明器具、スピーカー、空調機器)を電動で昇降させることのできる昇降装置及び天井吊り下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の店舗やオフィスビルでは、照明器具を始めとした様々な機器が天井に配設され利用されているが、近年では、この天井に配設された天井配設機器を電動で天井から床へと下降させることのできる昇降装置を備えた天井吊り下げ装置が多用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この天井吊り下げ装置では、昇降装置を駆動して天井配設機器を天井から床へと降下させることで、当該天井配設機器をメンテナンスできるという利点がある。
【0004】
昇降装置は、略ハウジング形状で、天井配設機器に連結されるワイヤーを巻き取るためのモータなどを備えた駆動手段と、駆動手段を支持するベースと、ベースを天井に取り付けるための取付手段と、を備えて構成されており、駆動手段が取り付けられたベースの側壁と取付手段の側壁とがボルトによって固定されると共に、当該取付手段のアームによって天井に連結されるようになっている。
【0005】
そして、この駆動手段が取り付けられるベースは、天井で使用されることを前提としているため、安全面を考慮して比較的強度が強いと共に、火事などの事情に対応できるように熱的にも優れた構造にすることが必要である。
【0006】
そのため、従来の昇降装置は、駆動手段を保持するベースとして、板金製やダイキャスト製といった金属部材が用いられていた。
【特許文献1】特開2002−104779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、昇降装置のベースは、駆動手段が取り付けられる場所でもあるため、複雑な構造にせざるを得なく、板金製やダイキャスト製といった金属部材でベースを成形するとなるとコストは必然的に高くなってしまっていた。
【0008】
また、駆動手段をベースに取り付ける際には、取付金具を用いてベースに確実に固定しなければならないため、取付金具とベースとで金属部材が嵩んでしまい重量が重くなってしまうという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、低コストで成形可能で且つ軽量化も図れる昇降装置及び天井吊り下げ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、天井配設機器を昇降する駆動手段が取り付けられる樹脂製のベースと、前記ベースを下方から覆い且つ当該ベースよりも耐熱性の高い補強部材と、前記補強部材を天井に取り付ける取付手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の昇降装置であって、前記補強部材は、金属で構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の昇降装置であって、前記補強部材は、網目状の金属線で構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の昇降装置であって、前記補強部材は、金属線を樹脂内に一体にインサート成形してなることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の天井吊り下げ装置の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の昇降装置と、前記昇降装置により昇降される前記天井配設機器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、駆動手段が取り付けられるベースが樹脂材で成形されているため、複雑な構造でも低コストで成形することができる。また、ベースは、当該ベースよりも耐熱性の高い補強部材により下方から覆われているため、火災が起きてベースが熱変形したとしても駆動手段が落下する恐れがない。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の作用・効果に加え、補強部材が金属で構成されているため、昇降装置の安全性をさらに向上させることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の作用・効果に加え、補強部材が網目状に配置された金属線で構成されているため、昇降装置の軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の作用・効果に加え、補強部材が金属線を樹脂内に一体にインサート成形した構造であるため、昇降装置の軽量化を図ることができると共に、網目が樹脂内に隠れるため意匠性も向上させることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、天井配設機器とこれを昇降させる昇降装置とを備える天井吊り下げ装置において、請求項1と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の昇降装置及びこれを用いた天井吊り下げ装置について、実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、天井配設機器として照明器具を用いた場合を例に挙げて説明するが、本発明では、天井配設機器として、スピーカー、空調機器やその他の機器、装置を含むものとする。
【0021】
図1は、本実施形態における天井吊り下げ装置1の全体構成を示した図である。この天井吊り下げ装置1は、昇降装置10を利用して建物などの高天井に配設された照明器具40を上下に移動させることが可能な装置であり、昇降装置10に設けられたモータ13やドラム14を備えた駆動手段を、例えば、屋内の壁面等に設置されたスイッチボタンと電気的に配線接続させることにより、ドラム14を介してワイヤーロープ17の巻き入れ、巻き出しを行うように構成されている。
【0022】
ワイヤーロープ17は、本実施形態ではステンレス製のワイヤーで構成されており、その下端部には、ワイヤーロープ17により昇降される昇降部12が連結されている。そして、この昇降部12の下面に照明器具40が取り付けられるようになっており、スイッチボタンによりワイヤーロープが巻き入れ、巻き出しされることで、照明器具40がこの昇降部12を介して上下に移動される仕組みとなっている。図1(a)は、照明器具40を下降させた状態を示し、(b)は、照明器具40を上昇させた状態を示している。
【0023】
昇降装置10の上部には、前記駆動手段が取り付けられるベース20を天井に取り付けるための取付手段21が設けられている。この取付手段21は、略箱形状に形成された下端開口部を有するハウジング22と、略U字形状に形成され当該ハウジング22を天井と連結するための取付アーム23と、を備えており、このハウジング22の下端開口部を介してベース20及び駆動手段が収容されるようになっている。また、ハウジング22の一対の側壁25と取付アーム23の両側端部とには、当該取付アーム23をハウジング22に取り付けるための支持孔27a、27bがそれぞれ形成されており、ハウジング22の一対の側壁25に取付アーム23の両側端部がネジ36によってそれぞれ固定される。そして、この取付アーム23の天板部には、天井と連結するための取付孔19が2個形成されており、この取付孔19及び天井にボルトを下方から螺合させることによって、取付アーム23が天井に固定されるようになっている。
【0024】
このような昇降装置10のベース20は、前記したモータ13やドラム14といった駆動手段が取り付けられる場所であり、これらを駆動させるためには、図2に示すように、端子台16などを設けた複雑な構造である。そのため、仮に、金属部材でベース20を成形するとなると、どうしてもコスト高になってしまうと共に、駆動手段の取り付け作業性もあまり好ましいものではない。そこで、本実施形態の昇降装置10では、このベース20を樹脂材で成形すると共に、所定の位置に駆動手段を取り付けたベース20を、当該ベース20よりも耐熱性の高い補強部材30により下方から覆わせるようにしている。
【0025】
具体的には、ベース20は、PC(ポリカボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェンレンサルファイド)、PEE(ポリエステルエラストマー)などといった高強度の樹脂材で構成されている。そして、このベース20の中央部はワイヤーロープ17が下方に露出するために開口しており、駆動手段をこの開口付近の所定の位置に取り付けた後にケース18によって上から固定する。また、図2に示すように、ケース18の近傍には端子台16が設けられており、この端子台16へと所定の電気配線を行って、ケース18内に取り付けられた部品へと電気的に接続されるように構成されている。なお、ベース20の強度を増強するために、上述の樹脂内に網目状の金属線を一体にインサート成形するとより好ましいものとなる。
【0026】
このようなベース20には、その下方から補強部材30が取り付けられるようになっている。図2に示す補強部材30は、金属板5で構成されたものであり、中央部にはベース20と同じくワイヤーロープ17を下方に露出させるための開口部32が設けられている。この開口部32の周縁には一対の立設片33が立設されており、この立設片33がベース20に設けられたケース18の内壁へと嵌合される。
【0027】
そして、補強部材30及びベース20の4角の端部には、当該補強部材30をベース20に固定するための固定孔29a、29bがそれぞれ設けられており、この固定孔29a、29bに固定ボルト37を下方から螺合させることにより、補強部材30がベース20へと固定される。
【0028】
また、補強部材30は、取付手段21のハウジング22と同様に一対の側壁35を有しており、この側壁35には、ハウジング22の側壁25の支持孔27aに対応する位置に、補強部材30をハウジング22に固定するための支持孔27cが設けられている。そして、これらハウジング22の支持孔27b、補強部材30の支持孔27c及び取付アーム23の支持孔27aがネジ36で螺合されることにより、補強部材30が取付手段22を介して天井に取り付けられる。
【0029】
以上、説明してきたように、本実施形態の昇降装置10は、駆動手段が取付られるベース20を樹脂材で成形している。そのため、複雑な構造でも比較的低コストで成形可能となると共に、駆動手段の取り付け作業性も向上させることができる。また、ベース20よりも耐熱性の高い補強部材30でこのベース20を下方から覆っているため、火災が起きてベース20が熱変形したとしても、駆動手段が下方に落下してしまう恐れがない。
【0030】
以下、本発明の補強部材30の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同様の構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
(補強部材の変形例)
図3に示す補強部材30Aは、上記実施形態の金属板5で構成された補強部材30に対して、金属線6を網目状に配置させたことに特徴を有するものである。このような構成とすることで、補強部材30Aの軽量化を図ることができる。
【0032】
また、図4に示す補強部材30Bは、上記図3に示した補強部材30Aに対して、網目状の金属線52を樹脂内に一体にインサート成形した樹脂成形品50であることに特徴を有するものである。このような構成とすることで、上記実施形態の補強部材30に対して、軽量化を図れることはもちろんのこと、図3に示す補強部材30Aに比べて、網目を覆い隠すことで、外観上の見栄えも向上させることができる。なお、樹脂成形品50を構成する樹脂については、上記実施形態のベース20に対して耐熱性の高い樹脂を用いることが好ましいが、金属線52をインサート成形しているため、当該ベース20よりも耐熱性の低い樹脂を用いてもよい。
【0033】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本発明の昇降装置10は、樹脂材で構成されたベース20を、補強部材30、30A、30Bにより下方から覆う構成となっている。したがって、上記した補強部材30A、30Bの変形例のように、本発明の昇降装置10は様々な形態に変形が可能となり、ベース20成形における低コスト化、取り付け作業性の向上という効果に加えて、さらに、昇降装置10の軽量化も図ることができる。したがって、天井で利用される装置として、安全且つ軽量な設計自由度の拡大した天井吊り下げ装置1を提供することができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態にかかる天井吊り下げ装置の全体構成を示した図であり、(a)は照明器具を下降させた状態を示し、(b)は照明器具を上昇させた状態を示している。
【図2】本実施形態にかかる昇降装置を分解して示した斜視図である。
【図3】本実施形態にかかる補強部材の第1変形例を示した図である。
【図4】本実施形態にかかる補強部材の第2変形例を示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 天井吊り下げ装置
10 昇降装置
13、14 駆動手段
20 ベース
21 取付手段
30 補強部材
40 照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井配設機器を昇降する駆動手段が取り付けられる樹脂製のベースと、
前記ベースを下方から覆い且つ当該ベースよりも耐熱性の高い補強部材と、
前記補強部材を天井に取り付ける取付手段と、
を備えることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記補強部材は、金属で構成されていることを特徴とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
前記補強部材は、網目状の金属線で構成されていることを特徴とする請求項2記載の昇降装置。
【請求項4】
前記補強部材は、金属線を樹脂内に一体にインサート成形してなることを特徴とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいづれか1項記載の昇降装置と、前記昇降装置により昇降される前記天井配設機器と、を備えることを特徴とする天井吊り下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154998(P2009−154998A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332629(P2007−332629)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)