説明

昇降装置及び該昇降装置を用いる貨物積替え方法

【課題】作業者一人の人力でも設置や昇降操作を行うことができるコンパクトな昇降装置を提供する。
【解決手段】地面に対し軸心を鉛直とした状態で自立可能な柱状体2と、貨物を支持する支持部32を備えて柱状体2に外嵌する筒状カバー体3と、前記柱状体2の軸心方向に筒状カバー体3を昇降させる昇降機構4とを備え、昇降機構4は、筒状カバー体3に設けられる滑車41及びレバー操作部42と、これら滑車41及びレバー操作部42を経由していずれか柱状体2の上下端部に接続される鎖43とを備えて形成されるレバーブロック手段44を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の貨物自動車間での貨物の積替えの際に用いる昇降装置及び該昇降装置を用いる貨物積替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流においては、コンテナの高さ調整や搬送に伴う貨物の持上げを目的として、ジャッキ等の昇降装置が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、搬送物を収納しているコンテナ車の後端部の高さを調整する目的で、搬送物搬送時に該コンテナ後端部の両側に配備されるジャッキ具及び該ジャッキ具を用いた搬送物搬送方法が開示されている。
【0004】
前記ジャッキ具は、直方体状のジャッキ具本体を備え、該ジャッキ具本体の上面には、上下方向に伸びる横断面U字状の支持壁が立設されていると共に、該支持壁の一面に伸びるガイド部が設けられている。該ガイド部には、係止ピンを備える昇降体が昇降自在に案内されている。また、該ジャッキ具本体の上面には、手動油圧式のジャッキ機構が設けられている。該ジャッキ機構は、ラムを上下方向に摺動自在に支持する油圧シリンダを備え、該ラムの上端部が、昇降体に連結されている。また、上記油圧シリンダには、ポンプが配管接続されている。該ポンプの手動操作部を上下に揺動操作することによって油圧シリンダ内に油圧が供給されると共に、排出用バルブを釦操作することによって油圧シリンダ内から油圧が排出されるようになっている。また、上記ジャッキ具本体の上面の4隅部にはアイボルトが固定されている。これらアイボルトにスリング、ワイヤ等の連繋部材を繋げて、天井クレーン、フォークリフト等の荷役手段によってジャッキ具は移送される。
【0005】
【特許文献1】特開2007−1745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ジャッキ具は、昇降するための機構として油圧シリンダーやポンプが用いられるために大出力を有するものの、極めて大掛かりなものであり、このため、ジャッキ具の移送や設置のために別のクレーン等の揚重装置が必要となっており、例えばコンテナ程の大重量でない貨物等を昇降させる場合や迅速に昇降作業を行わなくてはならない場合にはその取扱いが面倒なものとなる問題があった。また、上記ジャッキ具は上述の如く大掛かりな装置であるため保管場所を大きく取る必要があるばかりでなく、メンテナンスが面倒であるという問題も招来する。
【0007】
そこで、本発明は、作業者一人の人力でも設置を行うことができるコンパクトな昇降装置及び該昇降装置を用いる貨物積替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明に係る昇降装置は、(1)地面に対し軸心を鉛直とした状態で自立可能な柱状体と、貨物を支持する支持部を備えて柱状体に外嵌する筒状カバー体と、前記柱状体の軸心方向に前記筒状カバー体を昇降させると共に該筒状カバー体からの荷重を柱状体に伝達する昇降機構とを備え、該昇降機構が前記柱状体と筒状カバー体とに亘って設けられていることを特徴としている。
【0009】
これによれば、昇降機構により柱状体と筒状カバー体とを互いに摺動させることで昇降装置全体を伸縮することができる。また、上記構成によれば、装置を最も収縮させた状態では筒状カバー体内に柱状体を収容させることができるので、これによって装置全体の小型化を図ることができ、携帯性の向上が図られている。また、これら柱状体と筒状カバー体に亘って昇降機構が設けられているので、これによっても装置全体の小型化を図られている。
【0010】
(2)前記昇降装置は、柱状体と筒状カバー体のいずれか一方に設けられる滑車及びレバー操作部と、これら滑車及びレバー操作部を経由していずれか他方の上下端部に接続される鎖とを備えて形成されるレバーブロック手段として形成されていることが好ましい。
【0011】
これによれば、作業者が一人であっても、貨物を支持部に支持させた状態でレバー操作部を操作することで容易に筒状カバーを上昇又は下降させて貨物を昇降させることができる。
【0012】
(3)また、前記レバーブロック手段は、前記柱状体の上下端部に鎖を接続すると共に前記筒状カバー体に滑車及びレバー操作部を取り付けて構成され、レバー操作部は、少なくとも滑車の回転軸と同じ高さ若しくはそれ以上の高さ位置で鎖に係合すると共にレバー操作に従って鎖を長手方向に相対的に摺動させるものであって、滑車は、前記他方の上端部とレバー操作部との間で鎖上に回転可能に載上していることが好ましい。
【0013】
これによれば、柱状体の上端部とレバー操作部とに亘って鎖が張設され、当該張設された鎖上に滑車が載上することとなるので、筒状カバー体に伝達される貨物からの荷重は滑車を介して鎖に伝達される。
【0014】
(4)また、前記柱状体には、前記滑車の軸体及び転輪の移動を案内するガイド路が前記柱状体の軸心方向に沿って形成され、前記滑車は、前記筒状カバー体内に収容された状態で前記柱状体のガイド路に嵌り込んでいることが好ましい。
【0015】
これによれば、滑車と鎖との係合部が筒状カバー体の昇降路の中途部であって柱状体の軸心上に位置することとなり、しかも、滑車は柱状体のガイド路上を昇降することとなって安定した姿勢が確保されるので、筒状カバー体の昇降に拘らず上記滑車と鎖間での荷重の伝達は安定したものとなる。
【0016】
また、レバーブロック手段の滑車の移動路と筒状カバー体の昇降路とがいずれも柱状体の軸心上に設けられるので、これによってさらに装置全体の小型化を図ることができる。
【0017】
(5)また、前記筒状カバー体の支持部は、前記柱状体の軸心上に設けられていることが好ましい。
【0018】
これによれば、貨物からの荷重の作用軸と柱状体の軸心をと一致若しくは略一致させることができ、当該貨物を支持している状態であっても柱状体の起立姿勢を安定させることができる。
【0019】
(6)また、前記柱状体は、前記滑車の転輪と同程度の幅を有すると共に軸体と同程度の奥行きを有して形成され、前記筒状カバー体は、前記柱状体に軸心廻りに回転不能に外嵌していることが好ましい。
【0020】
これによれば、柱状体及びカバー体の平面方向の大きさを滑車の平面形状程度に設定することができ、装置全体の小型化を図ることができる。また、柱状体と筒状カバー体とは軸心方向に該柱状体の軸心方向にのみ相対移動することとなり、筒状カバー体の昇降姿勢を安定させることができる。
【0021】
(7)また、前記筒状カバー体には、前記柱状体の位置を維持すべく架け渡される棒状の連結材を保持する保持部が形成され、該保持部は、前記連結材の上下幅よりも僅かに大きい間隔を有して設けられる一対の対向壁を備え、該対向壁間に連結材の一部を保持することが好ましい。
【0022】
これによれば、連結材を介して他の固定物に昇降装置を連結することができる。これにより、該連結材により当該昇降装置と固定物との相対位置が保持されることにより昇降装置の位置をより確実に保持することが可能となる。例えば2台以上の昇降装置を用いる場合、連結材を介してこれら両昇降装置を連結することができるものとなる。この結果、各昇降装置の起立姿勢をより安定させることができると共に作業を通じて昇降装置間の間隔の維持が図られ、これによって各昇降装置の起立位置も維持することが可能となる。
【0023】
また、保持部に保持される連結材の一部は、僅かな隙間を有して保持部の一対の対向壁の間に保持されるので、連結材は隙間が許容する角度以上に傾くことを制限されることとなる。このため、上述の如く2台の昇降装置を連結材によって連結している場合、一方の昇降装置を伸張(又は伸縮)させると連結材は僅かに傾動することとなるが、当該傾動は連結材の一部と保持部とが当接することにより著しく制限され、所定以上に傾くことが不能となる。この結果、一方の昇降装置を他方の昇降装置よりも過大に伸張させることはできず、これによって、単独の作業者が1つずつ昇降装置を伸縮する場合であっても、貨物の過度の傾きを防止することができる。
【0024】
(8)また、上記課題解決のための他の具体的手段として、本願発明に係る貨物積替え方法は、パレット上に載置された貨物を荷台に載置する貨物自動車の当該荷台の両側方に昇降装置を少なくとも2台以上設置する設置工程と、前記荷台の一側方に位置する昇降装置と他側方に位置する昇降装置との間に横架材を前記パレットに挿通した状態で架け渡す架渡し工程と、各昇降装置を1つずつ順に伸張させることで前記横架材の高さを上昇させ、該横架材によりパレットを荷台から持上げる持上げ工程と、前記貨物自動車を移動させ、当該貨物自動車とは別の貨物自動車を荷台をパレット下面に対向させた状態で停車させる貨物自動車交換工程と、各昇降装置を1つずつ順に収縮させることで前記横架材の高さを下降させ、前記パレットを荷台に載置する再載置工程とを順に行うことを特徴としている。
【0025】
ここで、昇降装置とは、上記本願発明の昇降装置のことを示している。
【0026】
これによれば、貨物をパレット上に載置している状態が貨物自動車の入れ替え前後に亘って維持されており、且つ、該貨物はパレットと共に僅かに昇降及び下降するだけであって、水平移動を伴うことがないので、水平移動に伴う衝撃や揺れにより容易に破壊してしまうような貨物であっても安全に貨物自動車の積替えを行うことができる。
【0027】
(9)また、前記設置工程は、棒状の連結材を介して前記貨物自動車に対し同側に位置する昇降装置同士を連結する連結工程を備え、該連結材は、前記所定の角度以上の傾動を制限された状態で各昇降装置に連結されることが好ましい。
【0028】
これによれば、昇降装置が互いに連結されることとなるので、各昇降装置の起立姿勢をさらに安定させることができる。また、パレットの所定の傾斜以上の傾斜を防止することができ、作業をより安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の軒裏天井構造によれば、作業者一人の人力でも設置や昇降操作を行うことができるばかりでなく、作業者一人で貨物の積替えを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図1〜図7に基づき、本発明を実施した形態につき、詳細に説明する。
【0031】
本実施形態の昇降装置1は、地面に対し軸心を鉛直とした状態で自立可能な柱状体2と、貨物を支持する支持部32を備えて柱状体2に外嵌する筒状カバー体3と、柱状体2の軸心方向に筒状カバー体3を昇降させる昇降機構4とを備えている。
【0032】
柱状体2は、地面に載置されるベース板21と、該ベース板21に立設される柱部22とを備えて形成されている。ベース板21は、平面視正方形状の平板状に形成されている。
【0033】
柱部22は、ベース板21に立設される柱部本体23と、該柱部本体23の上端部を覆う天蓋24とを備えて形成されている。柱部本体23は、図2(b)に示すように、長尺状に形成される4本の断面ロ字状の脚部25を備えており、これらの脚部25を断面視で互いに所定の間隔を設けた正方形状に配置して構成されている。より具体的には、各脚部25は、隣接する2側面を所定の間隔を空けて他の脚部25に夫々対向させた状態で配備されている。これにより、各脚部25は、他の2側面を外方に露出させることとなり、各脚部25の当該他の2側面を連結して形成される柱部本体23の断面の輪郭形状は正方形となる。
【0034】
天蓋24は、該柱部本体23の断面の輪郭形状に等しい正方形状に形成された平板により形成されており、各頂部に柱部本体23の各脚部25の先端部に連結させることで柱部22の上端部を形成している。
【0035】
筒状カバー体3は、長尺状に形成されるカバー本体31と、該カバー本体31の上端部に設けられる支持部32と、該カバー本体31の中途部に設けられる保持部33とを備えている。
【0036】
カバー本体31は、断面視正方形状の有蓋角筒状に形成されており、該カバー本体31の各内周面の幅は、前記柱状体2の柱部本体23の幅に同一若しくは僅かに大きく形成されている。これにより、カバー本体31は柱状体2に互いの軸心を一致若しくは略一致させた状態で外嵌する。また、筒状カバー体3を柱状体2に外嵌させると、筒状カバー体3と柱状体2とは、前記軸心に沿って柱状体2を筒状カバー体3から出退させることが可能となると共に前記軸心廻りに相対回転不能となる。即ち、柱状体2は、筒状カバー体3の昇降を案内するガイドとして機能することとなる。
【0037】
また、カバー本体31の高さは、柱状体2の柱部本体23の高さよりも大きく形成されており、これによってカバー本体31を最下端まで下降させると、カバー本体31の下端縁部が柱状体2のベース板21に当接すると共に柱部本体23がカバー本体31内に収容されることとなる。
【0038】
支持部32は、一対の板状の立上り壁34、34の下端部を底壁平板部35で連結してなる正面視U字状に形成され、該平板部35がカバー本体31の上端となる蓋部31aの上面に取付けられている。これにより、支持部32はカバー本体31の軸心上に設けられるので、支持部32に作用する荷重の作用線と柱状体2の軸心とは一致することとなり、支持部32を介して伝達される荷重は筒状カバー体3及び柱状体2の軸心方向に作用するのである。この結果、該荷重に作用時においても筒状カバー体3及び柱状体2の姿勢は安定したものとなる。
【0039】
また、保持部33は、上下一対の対向壁36、36と、該上下一対の対向壁36、36を連結する連結壁37と、各対向壁36から垂直方向に延びる鍔部38とを備え、各鍔部38がカバー本体31の一側面に連結されている。また、支持部32の一対の立上り壁34、34と保持部33の一対の対向壁36、36とは、それぞれ互いに垂直となる位置で取付けられている。
【0040】
本実施形態において、昇降機構4は、筒状カバー体3内に収容して設けられる滑車41及びレバー操作部42と、これら滑車41及びレバー操作部42を経由して柱状体2の上下端部に接続される鎖43とを備えるレバーブロック手段44と、該レバー操作部42を支持する支持部材45とを備えている。
【0041】
滑車41は、柱状体2の他方の上端部とレバー操作部42との間で鎖43上に回転可能に載上している。
【0042】
また、滑車41は、円板状に形成される転輪46と、該転輪46の中心を貫通して設けられる軸体となる回転軸47とを備えて形成されており、該転輪46の外周面には、鎖43に係合するための溝部48が凹設されている。柱状体2は、滑車41の転輪46と同程度の幅を有すると共に回転軸47と同程度の奥行きを有して形成される。
【0043】
また、滑車41は、柱状体2の柱部本体23を形成する4本の脚部25の間の隙間に転輪46及び回転軸47を夫々挿通させると共に、回転軸47の軸心を柱部本体23の軸心に直交させた状態で配備された状態で柱状体2の脚部25間に嵌り込んでいる。これによって、滑車41は、該脚部25に沿って柱状体2の軸心方向に移動自在となっている。かかる点に鑑みれば、柱状体2の4本の脚部25は、滑車41のガイド路として機能している。
【0044】
また、滑車41は、この様に転輪46を柱状体2の脚部25間に嵌り込ませた状態で回転軸47が筒状カバー体3に支持されている。具体的には、回転軸47が筒状カバー体3のカバー本体31の下端部に取付けられた角筒状の支持部材45に支持されている。これにより、滑車41は、柱状体2の柱部本体23内に嵌り込んだ状態で筒状カバー体3の下端部に収容されているものとなり、該滑車41は、筒状カバー体3に対する柱状体2の出退(即ち昇降装置1の伸縮)に伴って該柱状体2の案内路上を移動することなり、該滑車41が筒状カバー体3と柱状体2と相対移動を妨げることはない。
【0045】
また、支持部材45には、滑車41の転輪46の外周面と対向する位置に開口部45aが形成されており、該開口部45aを介して転輪46の外周面と対向する位置にレバー操作部42が設けられている。
【0046】
前記レバー操作部42は、公知のギア機構及び作動子(図示省略)を備えて該作動子を鎖43に係合させることで該鎖43を長手方向に相対移動させる巻上げ・ブレーキ手段49と、該巻上げ・ブレーキ手段49を作動させる操作レバー50とを備えている。
【0047】
巻上げ・ブレーキ手段49は、滑車41の回転軸47と同一若しくは該回転軸47よりも上方となる位置で支持部材45を介して筒状カバー体3に支持されている。
【0048】
操作レバー50は、公知のラチェット機構を介してギア機構に連結されており、これによって、操作レバー50を一方向又は他方向に繰り返し揺動させることが可能となっている。
【0049】
鎖43は、一方の端部が柱状体2の天蓋24の裏面に接続され、中途部を巻上げ・ブレーキ手段49を介して下端部がベース板21に接続されている。また、鎖43は、上端部から巻上げ・ブレーキ手段49に至る間で滑車41の下方を通過しており、滑車41の転輪46は、該鎖43上に載上されている。
【0050】
これにより、操作レバー50を一方向に向けて揺動させると巻上げ・ブレーキ手段49によって鎖43が巻き上げられて長尺方向に相対移動すると共に滑車41が一方向に回転し、当該巻上げ分だけ鎖43の上端部から巻上げ・ブレーキ手段49までの長さ、即ち上端部から巻上げ・ブレーキ手段49までの間の鎖43の撓みが小さなものとなり、これによって当該鎖43上に載上されている滑車41が持ち上がり、滑車41を収容している筒状カバー体3も上昇する。一方、操作レバー50を他方向に向けて揺動させると巻上げ・ブレーキ手段49によって鎖43は前述の巻上げ方向とは逆の方向に相対移動することとなり、これによって上端部から巻上げ・ブレーキ手段49までの間の鎖43の撓みは操作レバー50の揺動前よりも大きなものとなり、当該鎖43上に載上されている滑車41は下降する。この結果、筒状カバー体3も下降する。
【0051】
なお、当該鎖43の巻上げ、巻下げは、操作レバー50の一回の揺動により同じ割合で巻上げ又は巻下げが可能となっている。
【0052】
本実施形態の昇降装置1の構成は以上からなるものであって、次に、当該昇降装置1を用いて貨物自動車8に積み込まれた貨物を他の貨物自動車9に積替える方法について、図5〜図7を用いて説明する。
【0053】
なお、積替えを行う貨物自動車8、9は、いずれも荷台81、91を開放型としたトラックであって、以下の説明においては大型(4トン)トラック8から小型(2トン)トラック9に貨物を積替えるものする。
【0054】
また、貨物Qは、窓枠や玄関扉等の建具であって、図5(a)に示すように、所定のパレットP上に載置されているとものする。
【0055】
図5(b)に示す如く、まず、大型トラック8を平坦な場所に停車し、荷台81の周囲に立ち上っているあおり82を倒す。そして、該荷台81の一側方に複数基(本実施形態においては2基)の昇降装置1を設置すると共に、荷台81の他側方にもこれら各昇降装置1と対向する位置に昇降装置1を設置する(設置工程)。即ち、パレットP上に載置された貨物Qを荷台81に載置する貨物自動車となる大型トラック8の当該荷台81の両側方に昇降装置1を少なくとも2台以上設置することが出来る。
【0056】
そして、荷台81に対し同側方に位置する昇降装置1の保持部33に棒状の連結材5を水平に架け渡し、昇降装置1同士を連結させてこれら昇降装置1間の相対的な位置関係を固定する。
【0057】
なお、前記連結材5は、図4(a)に示すように、四角筒状の長尺部材により形成されており、互いに対向する一方の壁部の外面5a間の間隔は上記保持部33の一対の対向壁36の内面の間隔よりも僅かに小さく、互いに対向する他方の壁部の外面5b間の間隔は上記保持部33の連結壁37の内面とカバー本体31の外面の間の間隔と同一又は僅かに小さい。即ち、保持部33の一対の対向壁の間隔は、図2(a)に示す如く、連結材5の上下幅よりも僅かに大きいものであって、該一対の対向壁36間に連結材5の一部となる端部が保持される。
【0058】
これにより、連結材5は保持部33に挿通可能となる。また、該連結材5を保持部33に挿通すると、該連結材5は軸心に対し垂直であって且つ水平となる左右方向、即ち、筒状カバー体3のカバー本体31に近接離間する方向への移動が保持部33の連結壁37とカバー本体31の外面とによって拘束されると共に、軸心に対し垂直であって且つ鉛直となる上下方向への移動又は揺動は保持部33の上側の対向壁36の間に形成される僅かな隙間Sによって許容される範囲においてのみ可能となる。即ち、連結材5は、所定の角度以上の傾動を制限された状態で各昇降装置1に連結される。
【0059】
また、連結材5の端部には、軸心方向に複数の孔5cが形成されており、当該孔5cに図4(c)に示すピン7を挿通させることで保持部33に挿通された状態で当該昇降装置1に止めつけられる。
【0060】
次に、パレットPの下側に横架材6を挿通し、該横架材6の両端部を夫々荷台81を介して対向する昇降装置1の支持部32に支持させることで両昇降装置1間に横架材6を架け渡す(架渡し工程)。横架材6は、図4(b)に示すように、四角筒状の長尺部材により形成されており、その長さは少なくとも大型トラック8の荷台81の幅よりも大きい。
【0061】
また、横架材6の端部には、軸心方向に複数の孔6aが形成されており、当該孔6aに図4(c)に示すピン7を挿通させることで昇降装置1の支持部32に支持された状態で横方向に拘束され、当該昇降装置1上に載置される。また、パレットPの底部には、横架材6を挿通可能な溝P1が凹設されている。
【0062】
次に、図5(c)及び図6(a)に示す如く、いずれかの昇降装置1のレバー操作部42の操作レバー50を揺動させ、該昇降装置1を伸張させて横架材6の端部を持上げる。このとき、当該昇降装置1のみ伸張することで横架材6が傾き、これによってパレットPも傾くこととなるが、該パレットPと横架材6間の摩擦力の作用によりパレットPがずれ落ちる虞はない。また、当該昇降装置1は連結材5を介して荷台81に対し同側となる昇降装置1に連結され、該連結材5の両端部は、各昇降装置1の保持部33に挿通されている。上述の如く、連結材5は、保持部33内に形成される隙間Sが許容する範囲でのみ揺動可能であり、当該範囲を越えると保持部33の対向壁36に連結材5が当接することとなってそれ以上の揺動が拘束されることとなる。
【0063】
したがって、これら連結されている昇降装置1の一方を伸張させると、水平に架設されている連結材5が傾くこととなるが、ある程度の高さまで伸張させると、図8に示す如く、伸張状態の昇降装置1の保持部33に嵌合している連結材5の端部の上下面が保持部33の上下一対の対向壁36に夫々強く当接すると共に、他方の昇降装置1の保持部33に嵌合している連結材5の端部の上下面が保持部33の上下一対の対向壁36に夫々強く当接することとなり、これら当接による抵抗によって、該昇降装置1のこれ以上の伸張が妨げられる。即ち、連結材5の両端部が夫々昇降装置1の保持部33に挿通された状態で連結されることにより、これら昇降装置1、1の間にブレーキ手段が設けれることとなり、該ブレーキ手段により、各昇降装置1は、支持している連結材5が所定の角度以上に傾くとそれ以上の昇降が不能となるのである。
【0064】
そして、当該伸張させた昇降装置1と連結材5若しくは横架材6を介して連結されている昇降装置1も順次伸張させる。ここで、各昇降装置1は、一回のレバー操作による筒状カバー体3の上昇又は下降割合は一定であるので、先んじて伸張させた昇降装置1のレバー操作の回数を数えておき、これから伸張させようとする昇降装置1に対しても同方向・同数のレバー操作を行うことにより、容易にこれら昇降装置1の伸張割合を同一としてこれら昇降装置1間で傾斜している横架材6又は連結材5を水平状態に設定することが可能となるのである。しかも、レバー操作のみでパレットPを昇降させることが可能となっているので、作業者が一人であっても作業を行うことが可能となっているのである。
【0065】
上述の如き操作を各昇降装置1に行うことにより、パレットPを荷台81から持上げる(持上げ工程)。
【0066】
次に、図6(b)及び図6(c)に示すように、大型トラック8を当該位置から移動させる。このとき、パレットP上に載置された貨物QはパレットPを介して4台の昇降装置1に支持されている状態となっているが、当該貨物Qからの荷重は各昇降装置1の軸心方向に作用しているので、これら4台の昇降装置1にのみ支持しているといえども、安定した状態に維持されている。また、各昇降装置1はそれぞれ連結材5を介しても連結されているので、各昇降装置1自体も安定した状態で起立しており、当該支持状態は極めて安定したものとなっている。そして、図7(a)及び図7(b)に示す如く、小型トラック9をあおり92を倒した状態で移動させ、該小型トラック9の荷台91にパレットPの下面を対向させる(貨物自動車交換工程)。
【0067】
そして、図7(c)に示す如く、上述の持上げ工程とは逆の工程を行うで各昇降装置1を収縮させ、これによってパレットPを当該小型トラック9の荷台91に設置させる(再載置工程)。
【0068】
最後に、横架材6及び連結材5を取り払い、各昇降装置1を片付けることにより、貨物Qの積替え作業が完了することとなる。
【0069】
本実施形態の昇降装置1によれば、柱状体2が長尺状に形成されると共に、筒状カバー体3は柱状体2の軸心方向にのみ移動可能な長尺状に形成されている。また、各筒状カバー体3及び柱状体2の幅はこれら筒状カバー体3及び柱状体2内に収容される滑車41の転輪46の直径よりもわずかに大きく形成されているのみであり、昇降装置1全体の小型化が図られているのである。また、柱状体2に対し筒状カバー体3を昇降させる昇降機構4の一部となる滑車41が当該柱状体2と筒状カバー体3とに亘って内臓されているので、これによっても昇降装置1の小型化が図られているのである。
【0070】
また、本実施形態の昇降装置1は、収縮状態においては柱状体2が筒状カバー体3内に収容されるコンパクトな状態となるばかりでなく、筒状カバー体3を昇降させるレバーブロック手段44の鎖43が柱状体2内に収容された状態であると共に滑車41も柱状体2及び筒状カバー体3に収容され、さらには滑車41は柱状体2内を軸心方向に移動する構成となっており、これらによっても昇降装置1の小型化及びそれに伴う携帯性の向上が図られている。また、柱状体2の柱部本体23が4本の中空の脚部25で形成される等、昇降装置1の軽量化も図られている。さらには、レバーブロック手段44により、作業者一人の人力により手動で昇降装置1を伸縮することができる。
【0071】
即ち、当該昇降装置1は、作業者一人で持ち運び及び操作可能となっており、使い勝手の著しい向上が図られている。
【0072】
また、本実施形態によれば、昇降装置1がコンパクト且つ軽量に形成されているため、作業者一人でも容易に昇降装置1のハンドリングを行うこと可能となり、上述積替え作業の如く昇降装置1の各位置への配置も一人の作業者の単独作業によって行うことが可能となっているのである。また、昇降装置1は手動(人力)により伸張又は収縮を行うものであり、しかも当該伸張収縮はレバー操作による簡易なものであるので、作業者一人であっても作業可能となっているのである。
【0073】
このため、上記貨物Qの積替え作業は、フォークリフト等の積替え装置や揚重装置を備える物流センター等の当該地域の物流の拠点ではない場所、例えば住宅の建設作業現場や当該作業現場付近の作業広場(積替え場所)等で作業者(運転者)単独で行うことが可能となっており、当該作業を行うために複数の作業者を要する必要はなく、これによって作業人員の削減が図られるのである。さらには、現場毎に現場搬入用の小型トラック9を拠点と現場との間で往復させる必要はなく、大型トラック8で各現場を回り、当該大型トラック8と小型トラック9との間で上記積替え作業を介して貨物Qの積替えを行うことができ、貨物Qの現場搬送の時間の短縮化及び人員の削減が可能となるばかりでなく、小型トラック9の搬送距離の短縮化が図られるために実情に即した搬送計画を構築し易いものとなり、これによってJIT(Just−In−Time)搬入の促進が図られるのである。
【0074】
また、作業者は各昇降装置のレバー操作を例えば所定回数ごとに区切って行うことにより、パレットの多少の傾斜はあるものの徐々にパレット全体を持上げ又は下降することができる。この結果、作業者が一人であっても貨物の積替え作業を行うことができ、作業の人的な効率化が図られることとなる。
【0075】
以上、本願発明の実施の形態について詳述したが、本願発明の構成は上記実施形態に限定されず、上記実施形態以外の構成も採用可能である。
【0076】
例えば、滑車41及びレバー操作部42を柱状体2に設けると共に鎖43を筒状カバー体3に設ける構成であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。また、柱状体2と筒状カバー体3とを上下反対とし、筒状カバー体3を地面に起立させた状態で柱状体2を昇降させる構成であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の活用例として、トラック等の貨物自動車間での貨物の積替えの際に用いる昇降装置及び該昇降装置を用いる貨物積替え方法に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(a),(b)は本発明に係る昇降装置の正面図及び側面図である。
【図2】(a),(b)は本発明に係る昇降装置の縦断面説明図及び横断面説明図である。
【図3】本発明に係る昇降装置を伸張した様子を示す側面図である。
【図4】(a)は連結材の構成を示す図、(b)は横架材の構成を示す図、(c)はピンの構成を示す図である。
【図5】本発明に係る昇降装置を用いてトラック等の貨物自動車間での貨物の積替えを行う様子を示す図である。
【図6】本発明に係る昇降装置を用いてトラック等の貨物自動車間での貨物の積替えを行う様子を示す図である。
【図7】本発明に係る昇降装置を用いてトラック等の貨物自動車間での貨物の積替えを行う様子を示す図である。
【図8】荷台の一側方に設置した2基の昇降装置を交互に上昇或いは下降させる様子を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…昇降装置
2…柱状体
3…筒状カバー体
4…昇降機構
5…連結材
5a,5b…外面
5c…孔
6…横架材
6a…孔
7…ピン
8…大型トラック(貨物自動車)
9…小型トラック(貨物自動車)
21…ベース板
22…柱部
23…柱部本体
24…天蓋
25…脚部
31…カバー本体
31a…蓋部
32…支持部
33…保持部
34…立上り壁
35…底壁平板部
36…対向壁
37…連結壁
38…鍔部
41…滑車
42…レバー操作部
43…鎖
44…レバーブロック手段
45…支持部材
45a…開口部
46…転輪
47…回転軸
48…溝部
49…巻上げ・ブレーキ手段
50…操作レバー
81…荷台
82…あおり
91…荷台
92…あおり
P…パレット
P1…溝
Q…貨物
S…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に対し軸心を鉛直とした状態で自立可能な柱状体と、貨物を支持する支持部を備えて柱状体に外嵌する筒状カバー体と、前記柱状体の軸心方向に前記筒状カバー体を昇降させると共に該筒状カバー体からの荷重を柱状体に伝達する昇降機構とを備え、
該昇降機構が前記柱状体と筒状カバー体とに亘って設けられていることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記昇降装置は、柱状体と筒状カバー体のいずれか一方に設けられる滑車及びレバー操作部と、これら滑車及びレバー操作部を経由していずれか他方の上下端部に接続される鎖とを備えて形成されるレバーブロック手段として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記レバーブロック手段は、前記柱状体の上下端部に鎖を接続すると共に前記筒状カバー体に滑車及びレバー操作部を取り付けて構成され、該レバー操作部は、少なくとも滑車の回転軸と同じ高さ若しくはそれ以上の高さ位置で鎖に係合すると共にレバー操作に従って鎖を長手方向に相対的に摺動させるものであって、前記滑車は、前記柱状体の上端部とレバー操作部との間で鎖上に回転可能に載上していることを特徴とする請求項2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記柱状体には、前記滑車の軸体及び転輪の移動を案内するガイド路が前記柱状体の軸心方向に沿って形成され、前記滑車は、前記筒状カバー体内に収容された状態で前記柱状体のガイド路に嵌り込んでいることを特徴とする請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記筒状カバー体の支持部は、前記柱状体の軸心上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項6】
前記柱状体は、前記滑車の転輪と同程度の幅を有すると共に軸体と同程度の奥行きを有して形成され、前記筒状カバー体は、前記柱状体に軸心廻りに回転不能に外嵌していることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項7】
前記筒状カバー体には、前記柱状体の位置を維持すべく架け渡される棒状の連結材を保持する保持部が形成され、該保持部は、前記連結材の上下幅よりも僅かに大きい間隔を有して設けられる一対の対向壁を備え、該一対の対向壁間に連結材の一部を保持することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項8】
パレット上に載置された貨物を荷台に載置する貨物自動車の当該荷台の両側方に請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の昇降装置を少なくとも2台以上設置する設置工程と、
前記荷台の一側方に位置する昇降装置と他側方に位置する昇降装置との間に横架材を前記パレットに挿通した状態で架け渡す架渡し工程と、
前記各昇降装置を1つずつ順に伸張させることで前記横架材の高さを上昇させ、該横架材により前記パレットを荷台から持上げる持上げ工程と、
前記貨物自動車を移動させ、当該貨物自動車とは別の貨物自動車を荷台をパレット下面に対向させた状態で停車させる貨物自動車交換工程と、
前記各昇降装置をを1つずつ順に収縮させることで前記横架材の高さを下降させ、前記パレットを荷台に載置する再載置工程と、
を順に行うことを特徴とする昇降装置を用いる貨物積替え方法。
【請求項9】
前記設置工程は、棒状の連結材を介して前記貨物自動車に対し同側に位置する昇降装置同士を連結する連結工程を備え、該連結材は、前記所定の角度以上の傾動を制限された状態で前記各昇降装置に連結されることを特徴とする請求項8に記載の昇降装置を用いる貨物積替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−274863(P2009−274863A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130301(P2008−130301)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000108155)センコー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】