説明

昇降装置

【課題】 簡単かつ安価に製造でき、しかも、耐久性に優れる昇降装置を提供する。
【解決手段】 昇降装置10は、中空筒状の外筒体18と、外筒体18の内部に摺動自在に挿入された支柱22とを備えており、支柱22の側面には、複数のラックギア36が上下方向へ延びて連続的に配設されており、外筒体18の外面には、ピニオンギア44がラックギア36に噛み合った状態で回転自在に取り付けられている。そして、支柱22を上昇させる際には、ハンドル50を回転操作してピニオンギア44を回転させ、ラックギア36に対して上昇力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等のような高さ調整が必要な装置に適用される昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を吊り上げるクレーンでは、チェーンブロックから引き出されたチェーンの長さを調整することによって、高さ方向の可動範囲を調整することができる。しかし、低所で吊上作業を行うにも拘わらず、チェーンブロックが高所に配設されていたのでは、チェーンの長さが無駄になるだけでなく、チェーンブロックが不必要に大型化してしまう。また、クレーンの操作性が悪くなって、作業効率が大幅に低下してしまう。この場合、チェーンブロックを支持する支柱を短くして、チェーンブロックの配設高さを低くすることも考えられるが、これでは、高所での吊上作業に適用できなくなってしまう。
【0003】
そこで、チェーンブロックの配設高さを調整するための昇降装置が必要となり、その一例が、特許文献1に開示されている。この昇降装置は、具体的には、荷役手段(チェーンブロックに相当)を支持する支脚体であり、外筒体と、外筒体に摺動自在に挿入された支柱本体と、巻き上げウインチ等に接続されたワイヤによって支柱本体を昇降させる昇降機構とを備えている。
【特許文献1】特開2002−114479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇降装置(特許文献1)では、巻き上げウインチ等に接続されたワイヤによる昇降機構を用いていたので、装置全体が複雑かつ高価になり、しかも、ワイヤが切断された場合には、もはや昇降不可能となるため、耐久性の面で問題があった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる解決課題は、簡単かつ安価に製造でき、しかも、耐久性に優れる昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「中空筒状の外筒体18、前記外筒体18の下端部に設けられ、前記外筒体18を支持する脚部20、前記外筒体18の内部に摺動自在に挿入された支柱22、前記支柱22の側面に上下方向へ延びて設けられたラックギア36、前記ラックギア36に噛み合った状態で、前記外筒体18の外面に回転自在に設けられたピニオンギア44、および前記ピニオンギア44を回転させるハンドル50を備える、昇降装置10」である。
【0007】
この発明では、ラックギア36に噛み合わされたピニオンギア44をハンドル50で回転させることによって、ラックギア36と共に支柱22を上昇させることができる。ラックギア36およびピニオンギア44は、鉄等のような高剛性材料で形成することができるので、高い耐久性を得ることができる。しかも、装置全体の構成が単純なため、簡単かつ安価に製造できる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「昇降装置10」において、「前記支柱22は、互いに平行な2つの側面を有する四角柱であり、前記ラックギア36は前記側面のそれぞれに配設されており、前記外筒体18の外面には、前記ラックギア36のそれぞれに噛み合う2つのピニオンギア44が回転自在に設けられている」ことを特徴とする。
【0009】
この発明では、支柱22の互いに平行な2つの側面にラックギア36が配設され、ラックギア36のそれぞれにピニオンギア44が噛み合わされるので、支柱22を左右に振れることなく真直ぐに昇降させることができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「昇降装置10」において、「前記ピニオンギア44と共に回転されるロック爪62と、前記ロック爪62に係合可能なロックカム64とを備え、前記支柱22を上昇させる際に前記ピニオンギア44が順方向へ回転されると前記ロック爪62と前記ロックカム64との係合状態が解除される」ことを特徴とする。
【0011】
この発明では、ロック爪62とロックカム64とが係合されることによって、ピニオンギアの回転が禁止され、支柱22の降下が阻止される。支柱22を上昇させる際にピニオンギア44を順方向へ回転させると、ロック爪62とロックカム64との係合状態が解除される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に記載した発明によれば、ラック機構を採用しているので、「ワイヤによる昇降機構」を採用した従来技術(特許文献1)に比べて、昇降装置全体の構成を単純にすることができ、簡単かつ安価に製造できる。また、ラックギアおよびピニオンギアは、鉄等のような高剛性材料で形成することができるので、耐久性を飛躍的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明が適用された昇降装置10を用いたクレーン支脚12を示す正面図であり、図2は、クレーン支脚12を示す側面図である。
【0014】
クレーン支脚12(図1、図2)は、チェーンブロック14が走行する走行レール16と、走行レール16を支持する2つの昇降装置10とによって構成されており、主要構成部材である「昇降装置10」が本発明の対象である。
【0015】
昇降装置10は、図1および図2に示すように、外筒体18と、脚部20と、支柱22と、ラック機構24とによって構成されている。
【0016】
外筒体18(図1、図2)は、支柱22が挿入される空部を有する四角柱であり、クレーン支脚としての強度を確保するために、鉄等のような高剛性材料によって形成されている。外筒体18の長さは、昇降装置10の最低高さを規定するものであり、チェーンブロック14の想定される最低配設高さよりも短く設定されている。そして、外筒体18の下端部には、外筒体18を支持する脚部20が設けられており、外筒体18の内部には、支柱22が摺動自在に挿入されている。
【0017】
脚部20(図1、図2)は、棒状の脚部本体26と、脚部本体26の両端部下面に取り付けられた2つの車輪28とによって構成されている。脚部本体26の長さは、クレーン支脚12の転倒を防止するために、外筒体18および支柱22の長さおよび重量や、チェーンブロック14および走行レール16の重量等を考慮して設定されている。また、車輪28は、あらゆる方向への移動が可能なように回転自在に構成されており、車輪28には、クレーン支脚12の移動を禁止するためのブレーキ(図示省略)が付設されている。そして、脚部本体26の中央部に外筒体18がボルト等によって立設されている。
【0018】
支柱22(図1、図2)は、外筒体18の内面に沿う外面を有する中空または中実の四角柱であり、クレーン支脚としての強度を確保するために、鉄等のような高剛性材料によって形成されている。支柱22の長さは、外筒体18の長さと共に昇降装置10の最高高さを規定するものであり、外筒体18から最大に引き出されたときに、チェーンブロック14の想定される最高配設高さとほぼ同じになるように設定されている。そして、支柱22の上端部には、受板30を介して走行レール16の端部が固定されており、支柱22の互いに平行な2つの側面には、ラック機構24を構成するラックレール32が上下方向へ延びて配設されている。
【0019】
ラック機構24は、支柱22を昇降させる昇降手段として機能するものであり、図3および図4に示すように、支柱22の互いに平行な2つの側面に配設された2本のラックレール32と、外筒体18の外面に配設された駆動ギア装置34とによって構成されている。
【0020】
各ラックレール32は、図2に示すように、複数のラックギア36を連続的に配設することによって構成されている。各ラックギア36は、図4に示すように、幅方向端部に歯36aを有しており、支柱22の側面に収まるようにして、ボルト38によって支柱22に取り付けられている。
【0021】
駆動ギア装置34は、図3に示すように、ラックレール32を構成するラックギア36に上昇力を付与する作動部40と、ラックギア36の降下を禁止するロック部42とによって構成されている。
【0022】
作動部40は、図3および5に示すように、ラックギア36と噛み合う2つのピニオンギア44と、ピニオンギア44を支持する回転軸46と、回転軸46を回転自在に支持する支持フレーム48と、回転軸46を回転操作するハンドル50とによって構成されている。
【0023】
ピニオンギア44(図3、図5)は、ラックギア36の歯36aに適合する歯44aを有する円盤状の部材であり、2つのピニオンギア44が、2つのラックレール32に対応するように、互いに所定間隔を隔てて平行に配設されている。そして、各ピニオンギア44の中心孔に回転軸46が挿通され、かつ、固定されている。
【0024】
支持フレーム48(図3〜図5)は、底板52と、底板52の幅方向両側端から立ち上がって形成された2つの側板54と、側板54間に架け渡され、側板54の歪みを防止するスペーサ56とによって構成されており、底板52の所定箇所には、ラックギア36へ向けてピニオンギア44を突出させるための2つの長孔52aが形成されており、各側板54には、固定ボルト58(図4)が挿通される複数のボルト挿通孔60(図5)が形成されている。
【0025】
そして、図3に示すように、2つのピニオンギア44と回転軸46とが側板54間に配設され、回転軸46の両端が軸受(図示省略)を介して各側板54に回転自在に取り付けられる。また、回転軸46の一方端部にハンドル50が取り付けられる。
【0026】
ロック部42は、図3、図4および図6に示すように、ロック爪62と、ロック爪62に係合可能なロックカム64とによって構成されている。
【0027】
ロック爪62(図3、図4、図6)は、一方向へ傾斜した爪部62aを外周部に有する円盤状の部材であり、ロック爪62の中心孔に回転軸46が挿通され、かつ、固定されている。したがって、ロック爪62は、2つのピニオンギア44と同様に、回転軸46に対して回転不能であり、常に回転軸46と共にピニオンギア44と同じ方向へ回転されることになる。
【0028】
ロックカム64(図3、図4、図6)は、その両端部に係合部64aおよび64bを有する「く」字状の部材であり、ロックカム64の中央部には、軸受孔66が形成されている。そして、このロックカム64が、軸受孔66に挿通された回動軸68を介して支持フレーム48の側板54に回動自在に取り付けられている。
【0029】
ロック爪62における爪部62aの傾斜方向および傾斜角度は、図6に示すように、ロックカム64における係合部64aおよび64bとの関係において、ロック部42のロック機能を発揮し得るように設定されている。つまり、回転軸46が順方向(支柱22を上昇させる方向)へ回転されるときは、係合部64aまたは64bを爪部62aの外側面Aによって押し退けることができ、回転軸46が逆方向へ回転されるときは、係合部64aまたは64bを爪部62aの内側面Bに係合できるように設定されている。
【0030】
昇降装置10を用いたクレーン支脚12を使用する際には、図1に示すように、走行レール16にチェーンブロック14が走行自在に取り付けられ、チェーンブロック14から引き出されたチェーン14aの先端には、フック14bが取り付けられる。そして、昇降装置10のラック機構24を操作することによって、支柱22が昇降され、走行レール16およびチェーンブロック14の配設高さが調整される。
【0031】
ラック機構24によって支柱22を上昇させる際には、ハンドル50を回転操作することによって回転軸46を順方向へ回転させる。すると、ラックギア36に噛み合った2つのピニオンギア44が、回転軸46と共に順方向へ回転され、ピニオンギア44からラックギア36へ上昇力が付与され、ラックギア36と共に支柱22が上昇される。
【0032】
支柱22を上昇させる際には、図7に示すように、爪部62aの外側面Aによって係合部64aまたは64bが押し退けられるため、ロック機構が作動することはない。
【0033】
支柱22の上昇を停止して、走行レール16およびチェーンブロック14の配設高さを固定する際には、係合部64aまたは64bをロック爪62の爪部62aに当接させるとともに、ハンドル50から手を離す。すると、支柱22は、その自重と、走行レール16およびチェーンブロック14の重量とによって降下しようとするが、図6または図8に示すように、係合部64aまたは64bが爪部62aの内側面Bに係合されるため、回転軸46およびピニオンギア44の回転が停止される。したがって、支柱22が降下することはない。
【0034】
支柱22を降下させる際には、ロックカム64を回動させることによって、係合部64aまたは64bと爪部62aとの係合状態を解除する。すると、回転軸46およびピニオンギア44の回転が許容され、支柱22は、その自重と、走行レール16およびチェーンブロック14の重量とによって降下する。
【0035】
なお、上述の実施例では、2つの昇降装置10を用いてクレーン支脚12を構成した場合を示したが、1つの昇降装置10だけでクレーン支脚を構成してもよい。この場合には、支柱22の上端部にチェーンブロック14を取り付けるための取付け部材が設けられ、また、クレーン支脚に適した脚部が外筒体18の下端部に設けられる。
【0036】
また、上述の実施例では、昇降装置10を「クレーン支脚」に用いた場合を示したが、本発明に係る昇降装置は、クレーン支脚の他、「照明灯の支柱」等のような高さ調整機能を必要とする支柱または支脚に対して幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】昇降装置を用いたクレーン支脚を示す正面図
【図2】クレーン支脚を示す側面図
【図3】ラック機構を示す正面図
【図4】ラック機構を示す側面図
【図5】ラックギアとピニオンギアとの噛み合い状態を示す断面図
【図6】ロック爪とロックカムとの係合状態を示す断面図
【図7】ロック爪とロックカムとの係合解除状態を示す断面図
【図8】ロック爪とロックカムとの他の係合状態を示す断面図
【符号の説明】
【0038】
10…昇降装置
12…クレーン支脚
14…チェーンブロック
16…走行レール
18…外筒体
20…脚部
22…支柱
24…ラック機構
28…車輪
32…ラックレール
34…駆動ギア装置
36…ラックギア
40…作動部
42…ロック部
44…ピニオンギア
46…回転軸
48…支持フレーム
50…ハンドル
62…ロック爪
62a…爪部
64…ロックカム
64a,64b…係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の外筒体、
前記外筒体の下端部に設けられ、前記外筒体を支持する脚部、
前記外筒体の内部に摺動自在に挿入された支柱、
前記支柱の側面に上下方向へ延びて設けられたラックギア、
前記ラックギアに噛み合った状態で、前記外筒体の外面に回転自在に設けられたピニオンギア、および
前記ピニオンギアを回転させるハンドルを備える、昇降装置。
【請求項2】
前記支柱は、互いに平行な2つの側面を有する四角柱であり、前記ラックギアは前記側面のそれぞれに配設されており、前記外筒体の外面には、前記ラックギアのそれぞれに噛み合う2つのピニオンギアが回転自在に設けられている、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記ピニオンギアと共に回転されるロック爪と、前記ロック爪に係合可能なロックカムとを備え、前記支柱を上昇させる際に前記ピニオンギアが順方向へ回転されると前記ロック爪と前記ロックカムとの係合状態が解除される、請求項1または2に記載の昇降装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−8688(P2007−8688A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193671(P2005−193671)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000132079)株式会社スーパーツール (11)
【Fターム(参考)】