説明

昇降装置

【課題】小径巻胴9と大径巻胴16を軸方向中央部が最小径となる凹曲面に形成し、大径巻胴16の凹部と同一凸部を端面とする案内板23の端面を大径巻胴16の軸心に沿って対向配設することでロープ17の乱巻を防止することを可能にした。
【解決手段】ケース1にはシャフト4と回転シャフト14が回転可能に軸支されている。シャフト4には小径ギア6と原動側クラッチ7が固着され、従動側クラッチ8には小径巻胴9が一体的に取り付けられている。小径巻胴9及び従動側クラッチ8のシャフト挿通孔10にはシャフト4が遊挿されている。小径巻胴9及び大径巻胴16は、軸方向中央部外径が最小径となる凹曲面の鼓状に形成されている。ロープ17は大径巻胴16と小径巻胴9に巻き付けられ、一端に錘19が他端には荷取り付け具22が取り付けられている。案内板23の端面は大径巻胴1の凹曲面と同じ凸曲面に形成され、大径巻胴16の軸心に沿って隙間24を介して対設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔やビルディング等の高低差のある位置間に於いて、簡単な操作により荷を吊り上げたり或は吊り降ろすのに使用する昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降装置は、昇降用ロープと逆転防止付昇降用ロープ巻取手段を有すると共に案内装置に沿って移動可能な運搬台車を配置し、傾斜面上部に位置する部分の案内装置に、昇降用ロープの固定手段を設けることにより、径斜面での重量物の運搬を迅速且つ容易にするようにした重量物運搬装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。又、手動式巻上機としては特許文献2に記載のものが存在する。
上記特許文献1に記載の発明は階段等の勾配を有する面における運搬装置に関するもので、重量物を真上方向若しくは真下方向に搬送することはできないという欠点を有していた。特許文献2に記載の手動式巻上機は、構成部品点数が多く、コスト高を招来するという欠点を有していた。
上記従来技術の有する欠点に鑑み、本願発明者は噛合型クラッチを巻胴に設け、ロープの緊緩によりアームとブームを起立或は正面方向に回動させるようにし、部品点数が少なく低コストで高安全性の昇降装置を創案し、特願2003−405187として特許出願し、特許を取得した(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に記載の昇降装置であると、同径円柱よりなる巻胴部の両端にフランジ部を設けた大径巻胴にロープの一端が固着されて巻き付けられ、ロープのうち小径巻胴に1巻きされたロープ他端側のみがケースより出入する構成である。そのため、大径巻胴へロープを巻き取った場合はロープが大径巻胴の巻胴部に乱巻きになるおそれがあった。ロープが大径巻胴に乱巻になると、巻き取られた上層のロープに負荷する巻取り力の分力が真下のロープの一点に集中し、ロープが下層のロープに食い込んで巻き解しが円滑にできない事態が生じる場合があるという不具合があった。
ロープの巻胴部への乱巻きを防止するために特許文献4に記載の発明が提案されている。特許文献4に記載の発明は、巻胴部の軸方向中央部が最も小径なくびれを有する凹曲面に形成することで、線材の巻取り力による分力を凹曲面の接線方向に生じさせ、その接線方向は凹曲面の長さ方向に沿って徐々に変化し、巻取り力による各分力は一点に集中することなく分散するようにしている。特許文献4に記載の線材用スプールであると、巻取りは巻胴部の軸方向中央部の最も外径の小径な部分から開始される。巻取りは一方のフランジ部に向けて少しばかり横送りされた後、折り返して他方のフランジ部に向けて横送りされる。この横送りを交互に繰り返すことで、ロープを凹曲面の凹部に層状に巻取る。巻取り回数が増加すると、ロープのフランジ部間を往復する折り返し部間の距離は長くなり上層部分はフランジ部に近付き、ロープの上層部は略円柱状になる。換言すれば、ロープは巻取り開始初期は巻胴部外周面に於ける巻取り幅が狭く(ロープの折り返し部間の距離が短く)、ロープを巻き取る量に応じて巻取り幅は大きくなる(ロープの折り返し部間の距離が長い)。
【0003】
ところで、上記特許文献3に記載の大径巻胴を軸方向中央部を最も小径な凹曲面を有する特許文献4に記載の鼓状巻胴に置き換えたと仮定すると、ロープの巻取りはロープが大径巻胴に巻着することにより行われ、ロープの巻取りによりロープは層状に大径巻胴外周面に巻着される。凹曲面の大径巻胴外周面に巻き取られるロープの巻取り力による分力が凹曲面の接線方向に生じ、各分力は一点に集中せず、相互に食い込むことはない。しかし、巻き取るロープのすべてが大径巻胴に巻着されるため、ロープ間の摩擦によりロープが磨耗し断線するおそれがあり、また、吊り下げる荷の重量が大になるとロープが大径巻胴の外周面を滑って中央部方向に移動する場合があるという問題点があった。
【特許文献1】特開平07−267599号公報
【特許文献2】特公平03−58998号公報
【特許文献3】特許第3858226号の特許公報
【特許文献4】特開2008−227220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、上記従来技術の有する問題点を解決するために、大径巻胴を軸方向中央部が最も小径となる凹曲面を有する鼓状に形成することで巻胴に巻着されるロープの巻取り力による分力を一点に集中させることなく分散させ、大径巻胴に所定間隔離隔した案内板を設けることで巻き取られたロープの一層巻きを保持し、又、大径ロープに巻き取られたロープの一端に錘を取り付けることで、大径巻胴に巻着されるロープの隣り合うロープ間の摩擦力を大にしてロープの他端に取り付けた荷の円滑な上昇或は下降を図るようにした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明のうち請求項1に係る発明は、ケース内の下部側壁間にはシャフトを回転可能に架設し、前記シャフトには小径ギアと原動側クラッチを同期回転するように一体的に取り付け、小径巻胴を具備した従動側クラッチの内側にシャフト挿通孔を軸方向に貫通して設け、前記シャフト挿通孔に前記シャフトを遊挿し、小径巻胴には小径巻胴を前記従動側クラッチと共に原動側クラッチ方向に付勢する付勢手段を設け、前記小径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、前記ケース内の上部側壁間には回転シャフトを回転自在に架設し、該回転シャフトに大径巻胴と、前記小径ギアと噛合する大径ギアを前記回転シャフトと同期回転するように一体的に取り付け、前記大径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、前記大径巻胴に巻着されるロープの乱巻きを防止するために、前記大径巻胴の凹曲面外周面のカーブに沿う凸曲面に形成された下端面を有する案内板が、該案内板の下端面が前記大径巻胴の軸心線に沿う上方に所定距離離隔して対向して配設され、ロープは小径巻胴に一巻きされて大径巻胴に巻着され、該大径巻胴より垂下されたロープの一端には錘を取り付け、前記小径巻胴より垂下されたロープの他端には荷を取着可能にし、ロープが大径巻胴の最小径部を中心として大径巻胴の一方の凹曲面若しくは他方の凹曲面へ巻着移動することで、荷が上昇或は下降するようにしたことを特徴とする。
本願発明のうち請求項2に係る発明は、ケース内の上部側壁間にはシャフトを回転可能に架設し、前記シャフトには小径ギアと原動側クラッチを同期回転するように一体的に取り付け、小径巻胴を具備した従動側クラッチの内側にシャフト挿通孔を軸方向に貫通して設け、前記シャフト挿通孔に前記シャフトを遊挿し、小径巻胴には小径巻胴を前記従動側クラッチと共に原動側クラッチ方向に付勢する付勢手段を設け、前記小径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、前記ケース内の下部側壁間には回転シャフトを回転自在に架設し、該回転シャフトに大径巻胴と、前記小径ギアと噛合する大径ギアを前記回転シャフトと同期回転するように一体的に取り付け、前記大径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、前記大径巻胴に巻着されるロープの乱巻きを防止するために、前記大径巻胴の凹曲面外周面のカーブに沿う凸曲面に形成された上端面を有する案内板が、該案内板の上端面が前記大径巻胴の軸心線に沿う下方に所定距離離隔して対向して配設され、ロープは小径巻胴に一巻きされて大径巻胴に巻着され、該大径巻胴から上方へ引き出され滑車に懸回されて垂下されたロープの一端に錘を取り付け、前記小径巻胴から引き出され滑車に懸回されて垂下されたロープの他端には荷を取着可能にし、ロープが大径巻胴の最小径部を中心として大径巻胴の一方の凹曲面若しくは他方の凹曲面へ巻着移動することで、荷が上昇或は下降するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明は大径巻胴が外周面が凹曲面に形成され大径巻胴の凹曲面の凹部と同一凸部を端面とする案内板の端面を大径巻胴の軸心に沿って所定距離離隔して対向配設しているので、ロープが乱巻きになることなく一層巻状態で、大径巻胴の最小径部を中心として凹曲面の一方から他方に巻着移動することで、荷の上昇或は下降させることができるという効果がある。
大径巻胴の曲面にロープを巻着しているので、巻き取られるロープの錘からの巻取り力の各分力は一点に集中せず、又、巻着されているロープの隣り合う側面が長さ方向に密接しているため、傾斜面に於いて下方向にあるロープとの当接面に摩擦力が負荷するので、大径巻胴が空回りせず、大径巻胴の回転と共にロープがスムーズに移動し、荷が容易に上昇若しくは下降することができ、結果的に大径巻胴の軽量化を図ることが出来るという効果がある。
又、ロープの一端に錘を取り付けているので、ハンドルやモーターによるシャフトの回転動を停止すると、大径巻胴に巻着したロープ間の摩擦により荷は下降移動を停止し、高さ方向一定位置を保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
巻胴を巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成することでロープの乱巻きを防止し、大径巻胴の凹曲面の凹部と同一凸部を端面とする案内板の端面を大径巻胴の軸心に沿って対向配設することで一層巻きのロープの横方向の位置移動を防止することを実現した。又、ロープの両端を垂下させ、ロープ一端には錘を、ロープ他端には荷を取着するようにしたので、大径巻胴に巻着された隣り合うロープ間の摩擦により円滑にロープが移動し、荷の上昇或は下降を円滑に行い得ることを実現した。
【実施例1】
【0008】
図1〜図6に示される実施例1について説明する。
先ず、図1〜図3において、ケース1の側壁の下部内側面には軸受2、3が対向する位置に設けられ、軸受2、3にはシャフト4が回転可能に軸支されている。シャフト4の一端はケース1の側壁を貫通してハンドル5と連結されている。シャフト4には小径ギア6と原動側クラッチ7が固定的に取り付けられ、小径ギア6と原動側クラッチ7がシャフト4と同期回転するようにしている。従動側クラッチ8には小径巻胴9が一体的に取り付けられている。小径巻胴9は、巻胴部外周面が軸方向中央部外径が最も小径となる凹曲面に形成され、全体として鼓状の外観を呈している。小径巻胴9のうち従動側クラッチ8とは反対側端部には、フランジ部91を連続して設けている。小径巻胴9及び従動側クラッチ8の軸心部には、軸方向に沿ってシャフト挿通孔10が貫通して設けられている。シャフト挿通孔10には、シャフト4が遊挿されている。小径巻胴9には、小径巻胴9を原動側クラッチ7の方向に付勢する付勢手段を有している。実施例1では、シャフト4のうち軸受3とフランジ部91との間には、原動側クラッチ7の方向に付勢するコイルバネ11を巻着介在させて付勢手段としている。
【0009】
ケース1の側壁の上部内側面には、軸受12、13を対向する位置に設けている。軸受12、13には回転シャフト14を回転自在に軸架している。回転シャフト14はシャフト4の上方向に所定距離離隔して平行な位置関係となるように配設されている。回転シャフト14には、小径ギア6と噛合する大径ギア15と、大径巻胴16を一体的に取り付けている。大径巻胴16は、小径巻動9の真上に位置するように回転シャフト14に固定的に取り付けられている。大径巻胴16は巻胴部の両端に1対のフランジ部を設け、巻胴部は巻胴部外周面が軸方向中央部外径が最も小径となる凹曲面に形成され、全体として鼓状の外観を呈している。
【0010】
ロープ17は大径巻胴16と小径巻胴9に巻き付けられ、大径巻胴16よりケース1の底部開口を通って垂下したロープ17の一端には錘19が取り付けられ、小径巻胴9より垂下したロープ17の他端には荷21が着脱可能な荷取り付け具22が取り付けられている。詳しくは、一端に錘19が取り付けられ他端には荷取り付け具22が取り付けられたロープ17は、ロープ17の一端及び他端を垂下した状態で、ロープ17の一端側から大径巻胴16の巻胴部のうち軸方向中央部最小径部を中心として大径ギア15側とは反対側の傾斜面から軸方向中央部最小径部の方向へ数回巻着され、小径巻胴9の巻胴部軸方向中央部最小径部の真上位置から小径巻胴9の巻胴部軸方向中央部最小径部位置に架け渡し、小径巻胴9の巻胴部軸方向中央部最小径部位置で1回巻きしている。実施例1では、大径巻胴16への巻回数は6回巻きにしている。大径巻胴16へのロープ17の巻数は、錘19の重量が大である場合は、少ない巻数で足り、錘19が軽量である場合は巻数を多くしてロープ17の摩擦力を増大させる。重量が大の荷21を荷取り付け具22に取着する場合、人為的に大径巻胴16へのロープ17の巻回数を増やし、ロープ17も外径が大のものを使用し、錘19も重量が大のものを使用する。又、大径巻胴16の外径は一定であるが大径巻胴16の軸方向長さを長くする。上記の通り、ロープ17の外径は、吊り下げる荷21の重量により決定される。実験的には、荷21の重量が1500kgである場合、外径が5.5mmのロープ17を使用しても断線することなく荷21を吊り上げた。この実験結果より、荷21の重量が1500kgを超える場合は、外径が5.5mmを超えるロープ17を使用するとよい。ロープ17の外径は、5.5〜8.0mm程度のものが使用されるのが一般的である。ケース1の上側側壁外面には掛止具18が取り付けられている。
【0011】
案内板23は、その下端面が大径巻胴16の巻胴部凹曲面と同一形状の凸曲面に形成され、且つ、案内板23の下端面が大径巻胴16の軸心線に沿う上方にて大径巻胴16の外周面と隙間24を介して対向するように配設されている。図1乃至図3に示すように、実施例1では、案内板23の上端はケース1の上側側壁(天井側壁)に取り付けられている。隙間24の距離はロープ17の外径にもよるが、結果的にロープ17の横滑りを防止し一層巻を保持できれば足り、ロープ17の外径+0.1〜3.0mm程度であることが好適である。大径巻胴16の上方に隙間24を介して案内板23を設ける理由は、ロープ17が互いに重合したり多層巻きになること無く、一層巻きを保持するためである。
【0012】
実施例1の昇降装置の使用状態及び作用を図1〜図6を参照にして説明する。
先ず、荷取り付け具22に取り付けた荷21を吊り上げる場合について説明する。図6に示すように、掛止具18を鉄塔26の横架材27に引っ掛けて、ケース1を鉄塔26に吊設する。ロープ17の他端を下降させ、図2に示す大径巻胴16のうち最小径部から大径ギア15側にロープ17が巻着された状態で、荷取り付け具22に荷21を取り付ける。図1中に矢印で示すように、ハンドル5を時計と反対方向に回転させると、シャフト4と共に小径ギア6と原動側クラッチ7はハンドル5と同じ方向に回転する。原動側クラッチ7と従動側クラッチ8の噛み合い状態は解除され、原動側クラッチ7の角型つめは従動側クラッチ8のつめ間に形成された内傾する傾斜面に沿って移動し、原動側クラッチ7の角型つめと従動側クラッチ8の傾斜面との圧接位置に応じて従動側クラッチ8は軸受3の方向へ移動し、コイルバネ11は圧縮する。ハンドル5の動力は、小径ギア6により大径ギア15に伝達される。小径ギア6のハンドル5側から視て時計回りと反対回りの回転動は、大径ギア15に時計回りの回転動として伝達され、回転シャフト14をハンドル5側から視て時計回りに回転させる。大径巻胴16も回転シャフト14と共に同期回転する。図4に示すように、ロープ17のうち大径巻胴16に巻着されたロープ17は、大径巻胴16の大径巻胴16の傾斜面を軸受13側に巻着状態で移動し、錘19を取り付けたロープ17の一端は大径巻胴16の最小径部から軸受け13側に位置移動し、図1に示す状態になる。ロープ17が大径巻胴16に巻着された状態で荷21は上昇する。ロープ17は大径巻胴16の凹曲面のうち最小径部から軸受13側の傾斜面に亘り、荷21の上昇前と同一巻回数巻着された状態で垂下し、ロープ17の一端側に設けた錘19は下降する。案内板23の下端凸曲面形状と大径巻胴16の凹曲面形状は相反する同一曲面に形成され、且つ、隙間24はロープ17の外径+0.1〜3.0mm程度に形成されているので、ロープ17が大径巻胴16の周面上を最小径部方向へ横滑りをしようとすると、案内板23の下面が移動しようとするロープ17に引っ掛って横滑りを防止し、ロープ17の大径巻胴16への一層巻きを保持する。
次に、荷21を下降させる場合について説明する。図1に示すロープ17が大径巻胴16の最小径部から軸受13側に巻着されている状態で、荷取り付け具22に荷21を取着する。図2中に矢印で示すように、ハンドル5を時計回りに回転させると、シャフト4と共に小径ギア6と原動側クラッチ7はハンドル5と同じ時計回りに回転し、原動側クラッチ7と従動側クラッチ8は噛み合う。コイルバネ11の復元力により、原動側クラッチ7の角型つめは従動側クラッチ8の谷部と嵌合する。シャフト4と小径ギア6は同期回転をし、大径ギア15は小径ギア6と反対方向に回転する。回転シャフト14に大径ギア15と大径巻胴16は固着されているので、大径ギア15と大径巻胴16及び回転シャフト14は同期回転する。大径巻胴16に巻き付けられたロープ17は、大径巻胴16の最小径部より小径巻胴9の最小径部方向へ移動し、ケース1の下方開口から外部へ送り出される。ロープ17の他端に取り付けられた荷21は、ロープ17と共に下降する。荷21が下降する場合、図5に示すようにロープ17のうち大径巻胴16に巻着され垂下し一端に錘19を取り付けたロープ17は、大径巻胴16の最小径部から垂下し、図2に示す状態になる。
又、ハンドル5から手を離すと、ロープ17の他端に取りつけた荷21は停止し、高さ方向定位置に安定的な停止状態を保持する。大径巻胴16が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成されていること、及び案内板23を設けているため、ロープ17間の摩擦力が大となり、ハンドル5から手を離してもロープ17は移動しないという理由による。
【実施例2】
【0013】
図7に示される実施例2について説明する。実施例1と異なる点はシャフト4にモーター28のモーター軸29が連結され、モーター軸29とシャフト4が同期回転するようにしている。又、図示しないリモコン操作により、モーターから離れた場所からモーター28を操作することができるように構成されている。
【実施例3】
【0014】
図8及び図9に示される実施例3について説明する。ケース30の側壁の上部内側面には軸受31、32が対設され、軸受31、32にはシャフト33が回転可能に軸支されている。シャフト33の一端はケース30の側壁を貫通してハンドル34と連結されている。シャフト33の一端はハンドル34と連結される場合に限定せず、ケース30の外側に設けたモーターのモーター軸と連結しモーターの駆動をシャフト33に伝達するようにしているものも本願発明に包含される。モーターの駆動制御はリモコンで行うようにすると一層よい。シャフト33には小径ギア35と原動側クラッチ36が固定的に取り付けられ、小径ギア35と原動側クラッチ36がシャフト33と同期回転するようにしている。従動側クラッチ37には小径巻胴38が一体的に取り付けられている。小径巻胴38は、巻胴部外周面が軸方向中央部外径が最も小径となる凹曲面に形成され、全体として鼓状の外観を呈している。小径巻胴38のうち従動側クラッチ37とは反対側端部には、フランジ部39を連続して設けている。小径巻胴38及び従動側クラッチ37の軸心部には、軸方向に沿ってシャフト挿通孔が貫通して設けられている。該シャフト挿通孔には、シャフト33が遊挿されている。小径巻胴38には、小径巻胴38を原動側クラッチ36の方向に付勢する付勢手段を有している。実施例3では、シャフト33のうち軸受32とフランジ部39との間には、小径巻胴38の方向に付勢するコイルバネ40を巻着介在させて付勢手段としている。
【0015】
ケース30の側壁の下部内側面には、軸受41、42を対向する位置に設けている。軸受41、42には回転シャフト43を回転自在に軸架している。回転シャフト43はシャフト33と下方向に所定距離離隔して平行な位置関係となるように配設されている。回転シャフト43には、小径ギア35と噛合する大径ギア44と、大径巻胴45を一体的に取り付けている。大径巻胴45は、小径巻動38の真上に位置するように回転シャフト43に固定的に取り付けられている。大径巻胴45は巻胴部の両端に1対のフランジ部を設け、巻胴部は巻胴部外周面が軸方向中央部外径が最も小径となる凹曲面に形成され、全体として鼓状の外観を呈している。
【0016】
ロープ46は大径巻胴45と小径巻胴38に巻き付けられ、大径巻胴45よりケース30の上壁面(天井面)開口を通って引き出され、滑車48に懸回されて一端には錘49が取り付けられている。小径巻胴38よりケース30の上壁面(天井面)開口を通って引き出されたロープ46は滑車51に懸回されて他端には荷52が着脱可能な荷取り付け具53が取り付けられている。詳しくは、一端に錘49が取り付けられ他端には荷取り付け具53が取り付けられたロープ46は、滑車48、滑車51に夫々懸回されて一端及び他端を垂下した状態で、ロープ46の一端側から大径巻胴45の巻胴部のうち軸方向中央部最小径部を中心として大径ギア44側とは反対側の傾斜面から軸方向中央部最小径部の方向へ数回巻着され、小径巻胴38の巻胴部軸方向中央部最小径部の真上位置から小径巻胴38の巻胴部軸方向中央部最小径部位置に架け渡し、小径巻胴38の巻胴部軸方向中央部最小径部位置で1回巻きされてケース30の上方から外部に引き出されて滑車51に懸回されている。滑車48、51は鉄塔26の横架材27に夫々吊設されている。
【0017】
案内板54は、案内板上端面が大径巻胴45の巻胴部凹曲面と同一形状の凸曲面に形成され、且つ、案内板上端面が大径巻胴45の軸心線に沿う上方にて大径巻胴45の外周面と隙間55を介して対向するように配設されている。
【0018】
実施例3は、ケース30を地面等に設置して荷52の昇降作業を行うものである。ハンドル34を時計回りに回転させ、原動側クラッチ36と従動側クラッチ37の噛合状態を解除しする。原動側クラッチ36の角型つめは従動側クラッチ37のつめ間に形成された内傾する傾斜面に沿って移動し、原動側クラッチ36の角型つめと従動側クラッチ37の傾斜面との圧接位置に応じて従動側クラッチ37は軸受32の方向へ移動し、コイルバネ40は圧縮する。ハンドル34の動力は、小径ギア35より大径ギア44に伝達される。小径ギア35の回転動は、大径ギア44に小径ギア35の回転方向とは反対方向の回転として伝達され、回転シャフト43を時計回りとは反対回りに回転させる。大径巻胴45も回転シャフト43と共に同期回転する。大径巻胴45の回転により、ロープ46のうち荷52が取り付けられた他端側は、孔50を通って大径巻胴45の周面に巻回され、荷52は上昇する。ロープ46は、大径巻胴45の凹曲面のうち最も軸受42側の傾斜面に巻着された位置からケース3の外部上方へ引き出され、滑車48に懸回して垂下し、端部に設けた錘49は下降する。案内板54の上端凸曲面形状と大径巻胴45の凹曲面形状は相反する同一曲面に形成され、且つ、隙間55はロープ46の外径+0.1〜3.0mm程度に形成されているので、ロープ46が大径巻胴45の周面上を最小径部方向へ移動することは無い。滑車48、51の存在により、小径巻胴38や大径巻胴45に負荷する巻取り力は半減し、一層重量のある荷の昇降が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】荷を上昇させる状態の昇降装置に使用する巻上装置の構造を示す説明図である。(実施例1)
【図2】荷を下降させる状態の昇降装置に使用する巻上装置の構造を示す説明図である。(実施例1)
【図3】大径巻胴と案内板とロープの位置的関係を示す説明図である。(実施例1)
【図4】荷を上昇させる場合の大径巻胴周面のロープの巻着移動状態を説明する図である。(実施例1)
【図5】荷を下降させる場合の大径巻胴周面のロープの巻着移動状態を説明する図である。(実施例1)
【図6】鉄塔に使用した状態を示す説明図である。(実施例1)
【図7】荷を上昇させる状態の昇降装置に使用する巻上装置の構造を示す説明図である。(実施例2)
【図8】荷を上昇させる状態の昇降装置に使用する巻上装置の構造を示す説明図である。(実施例3)
【図9】鉄塔に使用した状態を示す説明図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0021】
1、30 ケース
4、33 シャフト
6、35 小径ギア
7、36 原動側クラッチ
8、37 従動側クラッチ
9、38 小径巻胴
10 シャフト挿通孔
14、43 回転シャフト
15、44 大径ギア
16、45 大径巻胴
17、46 ロープ
19、49 錘
21、52 荷
23、54 案内板
48、51 滑車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内の下部側壁間にはシャフトを回転可能に架設し、前記シャフトには小径ギアと原動側クラッチを同期回転するように一体的に取り付け、小径巻胴を具備した従動側クラッチの内側にシャフト挿通孔を軸方向に貫通して設け、前記シャフト挿通孔に前記シャフトを遊挿し、小径巻胴には小径巻胴を前記従動側クラッチと共に原動側クラッチ方向に付勢する付勢手段を設け、前記小径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、
前記ケース内の上部側壁間には回転シャフトを回転自在に架設し、該回転シャフトに大径巻胴と、前記小径ギアと噛合する大径ギアを前記回転シャフトと同期回転するように一体的に取り付け、前記大径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、
前記大径巻胴に巻着されるロープの乱巻きを防止するために、前記大径巻胴の凹曲面外周面のカーブに沿う凸曲面に形成された下端面を有する案内板が、該案内板の下端面が前記大径巻胴の軸心線に沿う上方に所定距離離隔して対向して配設され、
ロープは小径巻胴に一巻きされて大径巻胴に巻着され、該大径巻胴より垂下されたロープの一端には錘を取り付け、前記小径巻胴より垂下されたロープの他端には荷を取着可能にし、
ロープが大径巻胴の最小径部を中心として大径巻胴の一方の凹曲面若しくは他方の凹曲面へ巻着移動することで、荷が上昇或は下降するようにしたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
ケース内の上部側壁間にはシャフトを回転可能に架設し、前記シャフトには小径ギアと原動側クラッチを同期回転するように一体的に取り付け、小径巻胴を具備した従動側クラッチの内側にシャフト挿通孔を軸方向に貫通して設け、前記シャフト挿通孔に前記シャフトを遊挿し、小径巻胴には小径巻胴を前記従動側クラッチと共に原動側クラッチ方向に付勢する付勢手段を設け、前記小径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、
前記ケース内の下部側壁間には回転シャフトを回転自在に架設し、該回転シャフトに大径巻胴と、前記小径ギアと噛合する大径ギアを前記回転シャフトと同期回転するように一体的に取り付け、前記大径巻胴は巻胴部外周面が軸方向中央部が最も小径になるように凹曲面に形成された異径円柱に形成され、
前記大径巻胴に巻着されるロープの乱巻きを防止するために、前記大径巻胴の凹曲面外周面のカーブに沿う凸曲面に形成された上端面を有する案内板が、該案内板の上端面が前記大径巻胴の軸心線に沿う下方に所定距離離隔して対向して配設され、
ロープは小径巻胴に一巻きされて大径巻胴に巻着され、該大径巻胴から上方へ引き出され滑車に懸回されて垂下されたロープの一端に錘を取り付け、前記小径巻胴から引き出され滑車に懸回されて垂下されたロープの他端には荷を取着可能にし、
ロープが大径巻胴の最小径部を中心として大径巻胴の一方の凹曲面若しくは他方の凹曲面へ巻着移動することで、荷が上昇或は下降するようにしたことを特徴とする昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−95383(P2010−95383A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291535(P2008−291535)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(591255324)