説明

昇降装置

【課題】電動式及び手動式を併せ持ち、昇降操作状況に応じて電動式と手動式とを切り替えて使用することができるロータリーエバポレータ用の昇降装置を提供する。
【解決手段】支柱13と、支柱13に沿って昇降可能に設けた昇降部材21とを備える。
支柱13は、鉛直方向に配置されたねじ棒14と、該ねじ棒14を回転駆動するモータ16とを備え、昇降部材21は、水平方向に設けられた支軸22と、該支軸22に設けられてねじ棒14に歯合するピニオン23と、ピニオン23を回転可能状態と回転不能状態とに切り替えるピニオンロック手段24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置に関し、特に、ロータリーエバポレータの駆動部等を支柱に沿って昇降させ、所定の位置で固定する昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーエバポレータの駆動部を昇降させる昇降装置として、モータによりねじ棒を回転させ、ねじ棒に螺合したナット部材を介して駆動部を自動的に昇降させる電動式昇降装置と、定荷重バネにて支持した駆動部を手動で昇降させて係止部材により固定する手動式昇降装置とが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平59−127701号公報
【特許文献2】特開2002−153761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式昇降装置は、駆動部の上下位置を容易に微調整できたり、濃縮終了時に自動的に駆動部を上昇させたりすることができるという利点を有しているものの、駆動部の昇降に時間がかかるという問題があり、また、停電時には駆動部を昇降させることができなくなるという問題もあった。一方、手動式昇降装置は、駆動部の昇降を迅速に行うことができるという利点は有しているが、昇降操作に手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、電動式及び手動式を併せ持ち、昇降操作状況に応じて電動式と手動式とを切り替えて使用することができる昇降装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の昇降装置は、支柱と、該支柱に沿って昇降可能に設けられた昇降部材とを有する昇降装置において、前記支柱は、鉛直方向に配置されたねじ棒と、該ねじ棒を回転駆動するモータとを備え、前記昇降部材は、水平方向に設けられた支軸と、該支軸に設けられて前記ねじ棒に歯合するピニオンと、該ピニオンを回転可能状態と回転不能状態とに切り替えるピニオンロック手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記ピニオンロック手段は、前記昇降部材に回転可能に連結されるハンドル部材と、該ハンドル部材と一体に回転すると共に、先端にカム部を備えたハンドル軸と、該カム部に当接するカム当接部を備え、前記ハンドル軸の回転に伴って上下動するロック部材と、該ロック部材の上下動に伴って前記ピニオンに歯合する歯合位置と歯合解除位置とに移動する歯合片と、該歯合片を前記歯合位置方向に付勢するスプリング部材とを備えていると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の昇降装置によれば、ピニオンロック手段によりピニオンを回転不能状態とし、モータによりねじ棒を回転駆動させることにより昇降部材を電動で昇降させることができ、一方、ピニオンロック手段によりピニオンを回転可能状態とすることにより、昇降部材を手動で昇降させることができる。
【0009】
また、ピニオンを回転不能状態と回転可能状態とに切り替えるピニオンロック手段を、昇降部材に設けたハンドル部材の回動で行えるように形成することにより、電動式と手動式との切り替えを容易に行えるとともに、手動で昇降部材を昇降させる操作も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の昇降装置の一形態例を示し、ピニオンを回転不能状態とした昇降装置の要部断面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】図1のIII-III断面図である。
【図4】同じくピニオンを回転可能状態とした昇降装置の要部断面図である。
【図5】図4のV-V断面図である。
【図6】同じく昇降部材を上昇させた時のロータリーエバポレータの正面図である。
【図7】同じく昇降部材を下降させた時のロータリーエバポレータの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例に示す昇降装置11は、支持台12に立設した角柱状の支柱13に、昇降部材21を昇降手段によって上下方向に移動可能に外嵌したものであって、本形態例に示す昇降装置の昇降部材21には、ロータリーエバポレータ31の本体部31aが取り付けられている。昇降部材21は、支柱13を囲繞する角筒状に形成され、昇降部材21の隅部内壁には、前記支柱13に形成したガイド面13aに沿って転動する複数のガイドローラ21aが取り付けられている。
【0012】
ロータリーエバポレータ31の本体部31aは、試料溶液が注入された試料フラスコ32を着脱可能に装着した状態で回転させる駆動部33と、試料溶液から蒸発して試料フラスコ32から導出される溶媒蒸気を冷却して凝縮させる冷却器34及び冷却器34で凝縮した溶媒を回収する回収フラスコ35とを着脱可能に装着する連結部36と、昇降部材21の昇降や試料フラスコ32の回転などを制御する制御部37とを備えている。また、支持台12の一側には、試料フラスコ32を加熱する加熱手段38が設けられている。
【0013】
支柱13内には、昇降手段の固定側として、軸線を鉛直方向に向けて回転可能に設けられたねじ棒14と、該ねじ棒14をカップリング15を介して回転駆動するモータ16とが設けられている。また、支柱13と昇降部材21との間には、バランサ17が設けられている。
【0014】
昇降部材21の内部には、昇降手段の可動側を構成する各部品を収納したケース21bが取り付けられている。ケース21bには、水平方向の支軸22と、該支軸22に設けられて前記ねじ棒14に歯合するピニオン23と、該ピニオン23を回転可能状態と回転不能状態とに切り替えるピニオンロック手段24とが設けられている。ピニオンロック手段24は、ケース21bの両側板に形成した鉛直方向のスリット21cにガイドされて上下動するロック部材25と、カム機構26を介してロック部材25を上下動させるハンドル部材27とを備えている。
【0015】
ロック部材25は、ピニオン23側に突出する水平方向の支持片25aと、該支持片25aの下面に取り付けられ、ピニオン23と歯合可能な歯合片25b,25bと、中央部に前記カム機構26を構成するカム当接部25cを備えたスライド板25dと、該スライド板25dを下方に付勢するスプリング部材25e,25eとを備えている。
【0016】
ハンドル部材27は、昇降部材21の下方に手前側に突出した状態で設けられており、ハンドル軸27aを中心として左右方向に回動可能に形成されている。昇降部材21の内部に突出したハンドル軸27aの先端には、ロック部材25を上下動させる前記カム機構26を構成する扇状のカム部27bが設けられている。
【0017】
カム機構26は、前記カム部27bと、前記カム当接部25cとで構成され、カム部27bは、ハンドル軸27aの先端外周面の約3/4に形成される円弧凹部27cと、先端外周面の約1/4とハンドル軸27aの中心軸とを含む突出部27dとで形成される。また、カム当接部25cは、カム部27bが挿通される縦長長方形状の通孔で形成され、該通孔にカム部27bが挿通され、通孔の上部側がカム部27bに当接する前記カム当接部25cとなる。
【0018】
ピニオンロック手段24は、昇降部材21のケース21bと、ハンドル部材27と、カム部27bを備えたハンドル軸27aと、カム当接部25cと歯合片25b,25bとを備えたロック部材25と、スプリング部材25e,25eとで構成されている。
【0019】
上述のように形成された昇降装置11によれば、電動式及び手動式の双方で昇降部材21を昇降させることができる。電動式で昇降部材21を昇降させる際には、図1乃至3に示すように、ハンドル部材27を回動させてハンドル軸27aの先端のカム部27bの円弧凹部27cを上方に向ける。これに伴って、スプリング部材25e,25eの付勢力によりカム当接部25cが円弧凹部27cに当接することからスライド部27bが下方にスライドし、支持片25a,歯合片25b,25bが下降して歯合片25b,25bがピニオン23に歯合する。これにより、ピニオン23が回動不能状態となり、制御部37や支持台12等の適宜な位置に設けたスイッチを操作してモータ16を作動させ、ねじ棒14を一方に回転させることにより昇降部材21が上昇し、ねじ棒14を他方に回転させることにより昇降部材21が下降する。さらに、昇降部材21が所定の高さに達したときにモータ16を止めることにより、昇降部材21を所定の高さに固定することができる。
【0020】
一方、手動式で昇降部材を昇降させる際には、図4及び図5に示すように、ハンドル部材27を回動させてハンドル軸27aのカム部27bの突出部27dを上方に向ける。これに伴って、スプリング部材25e,25eの付勢力に抗してカム当接部25cが突出部27dに当接することからスライド部27bが上方にスライドし、支持片25a,歯合片25b,25bが上昇して歯合片25b,25bとピニオン23との歯合が解除される。
【0021】
これにより、ハンドル部材27を持って昇降部材21を昇降させることが可能となり、ピニオン23は、ねじ棒14に沿って回転しながら昇降し、所定の高さに達した状態で、ハンドル部材27を反対方向に回動させ、カム部27bの円弧凹部27cを上方に向けることにより、スプリング部材25e,25eの付勢力によりカム当接部25cが円弧凹部27cに当接することからスライド部27bが下方にスライドし、支持片25a,歯合片25b,25bが下降して歯合片25b,25bをピニオン23に歯合させ、昇降部材21を所定の高さに固定することができる。
【0022】
上述のような昇降部材21を適用したロータリエバポレータ31では、加熱手段38となる、例えば、恒温水槽の水温を設定値とし、図7に示すように、駆動部33にて試料フラスコ32を回転させながら、昇降装置11によって、電動或いは手動で昇降部材21を下降させ、試料フラスコ32を恒温水槽内の水中に沈め、試料フラスコ32内の試料溶液の濃縮作業を行う。この作業中、試料溶液から蒸発した溶媒蒸気は、試料フラスコ32から冷却器34に流入して冷却されることにより凝縮し、凝縮した溶媒は、冷却器から回収フラスコ35に回収される。濃縮作業終了後、昇降装置11によって、電動或いは手動で昇降部材21を上昇させ、駆動部33を止めて試料フラスコ32の回転を停止させ、試料フラスコ32を取り外して、次の段階、例えば分析操作等を行う。
【0023】
上述のような昇降装置11は、電動式と手動式とを併せ持つことにより、手動での迅速な昇降と、電動での精密な昇降とを適宜適用でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0024】
また、モータの故障や停電時など、電動式の操作が適用できない場合でも、簡単かつ迅速に手動式に切り替えることができ、濃縮作業に支障を来すことがない。また、バランサ17を設けているので、手動での昇降部材21の昇降も容易に行うことができ、電動で昇降させる場合も、ねじ棒14やピニオン23への負担が軽くなり、モータ16のトルクも小さくできる。
【0025】
尚、本発明は上述の形態例に限るものはなく、カム板やカム当接部の形状は任意である。また、歯合片の形状も任意であり、ピニオンの下方から歯合片が歯合する構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
11…昇降装置、12…支持台、13…支柱、13a…ガイド面、14…ねじ棒、15…カップリング、16…モータ、17…バランサ、21…昇降部材、21a…ガイドローラ、21b…ケース、22…支軸、23…ピニオン、24…ピニオンロック手段、24a…スリット、25…ロック部材、25a…支持片、25b…歯合片、25c…カム当接部、25d…スライド板、25e…スプリング部材、26…カム機構、27…ハンドル部材、27a…ハンドル軸、27b…カム部、27c…円弧凹部、27d…突出部、31…ロータリーエバポレータ、31a…本体部、32…試料フラスコ、33…駆動部、34…冷却器、35…回収フラスコ、36…連結部、37…制御部、38…加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、該支柱に沿って昇降可能に設けられた昇降部材とを有する昇降装置において、前記支柱は、鉛直方向に配置されたねじ棒と、該ねじ棒を回転駆動するモータとを備え、前記昇降部材は、水平方向に設けられた支軸と、該支軸に設けられて前記ねじ棒に歯合するピニオンと、該ピニオンを回転可能状態と回転不能状態とに切り替えるピニオンロック手段とを備えていることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記ピニオンロック手段は、前記昇降部材に回転可能に連結されるハンドル部材と、該ハンドル部材と一体に回転すると共に、先端にカム部を備えたハンドル軸と、該カム部に当接するカム当接部を備え、前記ハンドル軸の回転に伴って上下動するロック部材と、該ロック部材の上下動に伴って前記ピニオンに歯合する歯合位置と歯合解除位置とに移動する歯合片と、該歯合片を前記歯合位置方向に付勢するスプリング部材とを備えていることを特徴とする請求項1記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−225357(P2011−225357A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98834(P2010−98834)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)