説明

昇降装置

【課題】昇降台のガイド手段として直動ガイドを採用できるようにして、発塵や振動騒音の少ない昇降装置を提供する。
【解決手段】マスト20A,20B間にケージ40を配置し、モータ24とチューン23によってケージ40を昇降させる。各マスト20A,20Bにはガイドレール26A,26Bを設ける。ケージ40は、物品を載置する台座ブロック27と、台座ブロック27の両端部に配置されるサイドブロック28A,28Bを備えた構成とする。サイドブロック28A,28Bの下端は台座ブロック27の端部に球面軸受35を介して連結する。各ガイドレール26A,26Bに係合される直動ガイド42を設け、直動ガイド42と各サイドブロック28A,28Bを球面軸受43,43Sを介して連結する。球面軸受43Sには、マスト20A,20B間方向の伸縮を許容するスライド機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタッカクレーン等に用いられて物品を昇降させる昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタッカクレーン等に用いられる昇降装置として、離間して配置された一対のマスト間に昇降台を配置し、その昇降台をマストに吊り下げるかたちで昇降させるものが知られている。
この昇降装置は、昇降台の両端部がワイヤやチェーンによって両側のマストに支持され、ワイヤやチェーンをモータによって牽引することで昇降台を上下に昇降させる。また、この種の昇降装置の多くは、昇降台の両端部に各マストの側面を転動する複数のガイドローラが設けられ、これらのガイドローラによるガイド機能によって昇降台の振れを規制している。
【0003】
また、従来、両マストの離間距離のばらつきを吸収する機能を備えた昇降装置が案出されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
この昇降装置は、昇降台のガイドローラ保持部と昇降台の本体部の間に、両者のマスト間方向のスライド変位を許容するスライド機構が設けられている。これにより、両マストの離間距離に若干のばらつきがあっても、ガイドローラ保持部がスライド機構を介して本体部に対して変位することで昇降台の円滑な昇降作動が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2571013号公報
【特許文献2】特許第3982562号公報
【特許文献3】特許第4013991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の昇降装置はスタッカクレーン等に搭載されてクリーンルーム等で物品搬送のために用いられることがある。このような用途では、作動に伴う発塵が敬遠されるため、より塵埃の生じにくい各部の構造が望まれている。
現在、このような要望もあり、発塵や振動騒音のより少ない直動ガイドを、昇降台のガイド手段に採用することが検討されている。
直動ガイドは、ブロック内に複数のローラや球等の転動要素が収納され、これらの複数の転動要素が、ガイドレールの複数のガイド面に常時密に接触するようになっている。直動ガイドは、これによりガイドレールによって同レールの延出方向と直交する全方向の変位を拘束され、ガイドレールの延出方向に沿って円滑に作動する。
【0006】
しかし、直動ガイドは、ガイドレールによって同レールと直交する全方向の変位を拘束されるため、昇降装置のガイド手段に採用した場合に、両ガイドレール(両マスト)に平行度や真直度等の誤差があると、これらの誤差に起因する応力が直動ガイドとガイドレールに集中してしまう。特に、両ガイドレールに平行度や真直度等の誤差がある状態で昇降台が昇降作動した場合には、ガイドレール側の反りや倒れによって昇降台自体に弾性変形が生じ、その変形が復帰するときの大きな反動が直動ガイドやガイドレールに急激に作用することが懸念される。
そして、大型の昇降装置においては、両マストの各種の誤差を完全に無くすことは不可能であることから、直動ガイドの採用がむずかしいというのが実情である。
【0007】
そこでこの発明は、昇降台のガイド手段として直動ガイドを採用できるようにして、発塵や振動騒音の少ない昇降装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、鉛直方向に延出するガイドレールを有する一対のマストと、前記一対のマスト間に配置されて昇降する昇降台と、前記昇降台に取り付けられ、前記各マストの対応するガイドレールに転動可能に係合されるガイド手段と、前記昇降台に昇降駆動力を付与する昇降駆動手段と、を備えた昇降装置において、前記昇降台は、前記マスト間方向に延出して上部に物品を載置する台座ブロックと、この台座ブロックの前記マスト間の延出方向の両端部に配置される一対のサイドブロックと、を備え、この各サイドブロックの下端が、前記台座ブロックの前記マスト間の延出方向の端部に回動自在に連結されており、前記各ガイド手段は、複数の転動要素が対応するガイドレールの複数のガイド面に接触して、前記ガイドレールの延出方向と直交する全方向の変位を拘束される直動ガイドによって構成され、この直動ガイドが前記各サイドブロックに球面軸受を介して連結されていることを特徴とする。
これにより、昇降台が昇降駆動手段から駆動力を受けると、昇降台の両サイドブロックに連結された各直動ガイドが各マストのガイドレール沿って転動しつつ、昇降台が昇降することになる。このとき、両側のガイドレールの平行度や真直度等の誤差によって両ガイドレール間に局部的な反りや倒れがあると、ガイドレールに拘束されて変位する各直動ガイドが対応するサイドブロックに対して球面軸受を介して相対的に首振りするとともに、昇降台の台座ブロックに対する両側のサイドブロックの連結角度が自動的に調整されるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の昇降装置において、前記各サイドブロックの下端が、前記台座ブロックの前記マスト間の延出方向の端部に、球面軸受を介して回動自在に連結されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の昇降装置において、前記各サイドブロックの下端が、前記台座ブロックの前記マスト間の延出方向の端部に、支軸ピンを介して回動自在に連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇降装置において、前記一方のマスト側の直動ガイドに、前記昇降台と前記一方のマストとのマスト間方向の相対変位を許容するスライド機構が設けられていることを特徴とする。
これにより、直動ガイドが各マストのガイドレールに沿って昇降するときに、両ガイドレールのマスト間方向の距離が変動しても、ガイドレール間の距離の変動がスライド機構によって吸収される。また、マスト間方向の昇降台の位置は、スライド機構を有する直動ガイドと逆側のマストを基準にして一定に維持されることになる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降装置において、前記各サイドブロックの上下に離間した二ヶ所にそれぞれ前記球面軸受を介して前記直動ガイドが設けられていることを特徴とする。
これにより、昇降台の各サイドブロックが上下の直動ガイドを介してガイドレールに追従し、このとき、各サイドブロックと台座ブロックの連結角度が自動的に調整されるようになる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、各マストのガイドレールに係合される直動ガイドが球面軸受を介して昇降台の対応するサイドブロックに連結されるとともに、昇降台の各サイドブロックの下端と台座ブロックの端部とが回動可能に連結されているため、両側のガイドレールの平行度や真直度等の誤差によって両ガイドレールの姿勢や形状が変化することがあっても、球面軸受による直動ガイドの首振りの許容と、サイドブロックと台座ブロックの相対回動の許容とにより、直動ガイドとガイドレールの間に大きな応力が作用するのを未然に防止することができる。
特に、この発明の場合、昇降台が、台座ブロックの両端部にサイドブロックの下端を回動自在に連結した構造であることから、両ガイドレールの平行度や真直度等の誤差によってガイドレール間に局部的な反りや倒れのある状況で昇降台を昇降させた場合にも、サイドブロックが台座ブロックの両端部で回動することで、昇降台自体に弾性変形が生じるのを防止することができる。このため、昇降台の弾性変形の反動による大きな荷重が、直動ガイドとガイドレールに急激に作用するのを未然に防止することができる。
したがって、昇降台のガイド手段として不具合なく直動ガイドを採用することができ、直動ガイドによって発塵や振動騒音の発生を抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、球面軸受により、台座ブロックに対するサイドブロックの下端の三次元的な回動が許容されるようになる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、支持ピンにより、台座ブロックに対するサイドブロックの下端の二次元的な回動が許容されるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、一方のマスト側の直動ガイドに、昇降台と一方のマストとのマスト間方向の相対変位を許容するスライド機構が設けられているため、昇降台の昇降時に両ガイドレール間の距離が変動しても、その距離の変動をスライド機構によって吸収して直動ガイドに不要な応力が作用するのを未然に防止することができ、しかも、マスト間方向の昇降台の位置が一方のマストに対して常に一定に維持されることから、昇降台上の載置物の位置を正確に管理することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、昇降台の各サイドブロックを上下の直動ガイドを介して対応するガイドレールに追従させつつ、各サイドブロックと台座ブロックの連結角度を自動的に調整することができるため、昇降台のスムーズな昇降作動を得ることができるとともに、台座ブロックを両側のガイドレールに安定的に支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの図1のA−A断面に沿う断面図である。
【図3】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの図2のB−B断面に沿う断面図である。
【図4】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンのケージ(昇降台)の斜視図である。
【図5】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの図2のC−C断面に沿う拡大断面図である。
【図6】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの図2のD−D断面に沿う拡大断面図である。
【図7】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの図3のE部の拡大図である。
【図8】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンのケージ(昇降台)の模式的な斜視図(a)と、同スタッカクレーンの模式的な側面図(b)を併せて記載した図である。
【図9】この発明の一実施形態の昇降装置を採用したスタッカクレーンの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態は、昇降装置をスタッカクレーンSCに適用したものである。スタッカクレーンSCは、例えば、クリーンルーム等に用いられ、床面上に敷設された軌道上を走行するようになっている。なお、以下の説明においては、スタッカクレーンSCの軌道に沿った移動方向をX軸方向とし、水平方向のX軸方向と直交する方向をY軸方向、X−Y面と直交する鉛直方向をZ軸方向として説明するものとする。
【0020】
図1は、スタッカクレーンSCの斜視図であり、図2,図3は、スタッカクレーンSCの断面図である。
これらの図に示すように、スタッカクレーンSCは、Z軸方向に沿って延出する角柱状の一対のマスト20A,20Bを備え、これらの各マスト20A,20Bの下端が矩形枠状のベースフレーム10に取り付けられるとともに、上端部同士がX方向に沿って延出する上部フレーム30によって連結されている。ベースフレーム10には、軌道走行用の車輪を回転自在に支持する車輪取り付け部11が設けられている。X軸方向に離間したマスト20A,20Bの間には、ケージ40(昇降台)が昇降自在に配置され、ケージ40上には移載装置100(例えば、フォーク装置)が設置されている。
【0021】
各マスト20A,20Bの下端と上端には、それぞれ駆動スプロケット21と従動スプロケット22がそれぞれ二組ずつ設けられ、上下の対応する駆動スプロケット21と従動スプロケット22に、ケージ40を支持するチェーン23が掛け渡されている。また、各マスト20A,20Bの下端には、減速機25(図3参照)と一体化されたモータ24が設置され、減速機25の出力側にそれぞれ2つの駆動スプロケット21が接続されている。
なお、この実施形態においては、各マスト20A,20Bに設置されるモータ24、駆動スプロケット21、従動スプロケット22、チェーン23等がケージ40(昇降台)に昇降駆動力を付与する昇降駆動手段を構成している。また、この実施形態の場合、各マスト20A,20Bに設置された2つのモータ24は図示しないコントローラによって同期作動するように制御される。
【0022】
また、両マスト20A,20Bの相互に対向する側の側面には、Z軸方向(鉛直方向)に延出するガイドレール26A,26Bが固定設置されている。これらの各ガイドレール26A,26Bには、後述するケージ40側のガイド手段が係合されるようになっている。
【0023】
図4は、ケージ40とガイドレール26A,26Bを示す斜視図であり、図5,図6は、ケージ40と各ガイドレール26A,26Bの係合部の断面図、図7は、ケージ40の一部の断面図である。
ケージ40は、上部に移載装置100が設定される台座ブロック27と、台座ブロック27のX軸方向の両端部に連結された一対のサイドブロック28A,28Bと、を備えている。
【0024】
台座ブロック27は、X軸方向に延出する断面I字状の一対のメインフレーム27aを備え、これらのメインフレーム27aの上部に移載装置100が固定設置されることにより、メインフレーム27aが剛的な一体ブロックとして構成されている。なお、メインフレーム27aは、移載装置100とは別にクロスフレームによって結合し、それによって強度の向上を図るようにしても良い。また、メインフレーム27aのX軸方向の各端部にはサイドブロック28A,28Bとの連結部が設けられている。
【0025】
サイドブロック28A,28Bは、いずれも矩形断面のフレーム材が略三角形状に組み付けられて成り、略三角形状の一辺(以下、「下辺31」と呼ぶ。)が水平に延出し、その辺の対角部分が頂部辺(以下、「頂部辺32」と呼ぶ。)となるように、台座ブロック27に連結されている。各サイドブロック28A,28Bの下辺31の両端部にはブラケット33が下方に延出して設けられ、この各ブラケット33に支持された軸34が後述する球面軸受35を介して台座ブロック27のメインフレーム27aの各端部に回動自在に連結されている。
【0026】
各サイドブロック28A,28Bの下辺31と頂部辺32には、それぞれガイドレール25A,25Bに対向する方向に突出する支軸41が突設され、その各支軸41に、ガイド手段である直動ガイド42が球面軸受43(図5,図6参照)を介して連結されている。
各支軸41に支持される球面軸受43は、マスト20B側の下辺31に配置されるもののみ若干構造が異なり、他の球面軸受43は同様の構造とされている。マスト20B側の下辺31に配置される球面軸受43は、他の球面軸受43と区別して43Sの符号を付すものとする。
【0027】
図5,図6に示すように、各ガイドレール26A,26Bには、Z軸方向に沿う一対のガイド溝45が設けられ、各ガイド溝45内に相互に交差する傾斜角を持つ一対のガイド面46a,46bが設けられている。
これに対し、各直動ガイド42は、略方形状のブロック48内に複数のローラ(図示せず)が循環移動可能に設けられるとともに、そのブロック48が対応するガイドレール26A,26Bの外面に係合されている。ブロック48内の複数のローラは、ガイドレール26A,26Bの傾斜角の異なる各ガイド面46a,46bに転動可能に当接している。直動ガイド42は、ガイドレール26A,26BによってZ軸方向と直交する全方向の変位を拘束されるとともに、ガイドレール26A,26Bに沿う方向(Z軸方向)に円滑に作動する。
【0028】
また、球面軸受43は、図5に示すように、直動ガイド42のブロック48にボルト結合されるハウジング50に円筒状の保持部51が設けられ、その保持部51内に球面状に窪む内周面を有する外輪52が取り付けられ、外輪52の内周面に球面ブッシュ53が摺動自在に保持されるようになっている。球面ブッシュ53は支軸41の外面に固定されている。
ただし、マスト20B側の下辺31に配置される球面軸受43Sは、図6に示すように、球面ブッシュ53の内周面に略円筒状の滑りブッシュ54が取り付けられ、滑りブッシュ54が支軸41上を軸方向にスライド変位できるようになっている。この実施形態においては、この滑りブッシュ54と支軸41が、ケージ40(サイドブロック28B)とマスト20BのX軸方向の相対変位を許容するスライド機構を構成している。
【0029】
ここで、前述したケージ40のメインフレーム27aとサイドブロック28A,28Bの連結部に採用される球面軸受35は、直動ガイド42に取り付けられる球面軸受43とほぼ同様の構造とされている。
図7は、メインフレーム27aとサイドブロック28Aの連結部を拡大して示した断面図である。
同図に示すように、サイドブロック28A(図3参照)に延設されたブラケット33には軸34が取り付けられ、その軸34の外面に球面ブッシュ57が取り付けられている。そして、メインフレーム27a(図3参照)の端部には上方に延出するフランジ部58が設けられ、そのフランジ部58に球面状の内周面を有する外輪59がリテーナ60を介して取り付けられている。外輪59の内周面には軸34上の球面ブッシュ57が摺動自在に保持されている。
【0030】
また、各マスト20A,20Bの駆動スプロケット21と従動スプロケット22に掛け渡されたチェーン23の両端部は、図1に示すように、各サイドブロック28A,28Bの上下の直動ガイド42にそれぞれ連結されている。
【0031】
図8(a)は、上述したケージ40を模式的に示す斜視図であり、図8(b)は、ケージ40の昇降時の作動を模式的に示す側面図である。以下、これらの図を参照してケージ40の昇降作動について説明する。
例えば、最下降位置にあるケージ40を上昇させる場合には、両マスト20A,20Bの下端のモータ24を一方向に回転駆動させ、チェーン23によって両サイドブロック28A,28Bの上部の直動ガイド42を上方に引き上げる。これにより、ケージ40は、両ガイドレール26A,26Bに直動ガイド42で案内されつつ所定高さまで上昇する。また、ケージ40を下降させる場合には、モータ24を逆向きに回転駆動させることにより、ケージ40の直動ガイド42が同様にガイドレール26A,26Bに案内されつつ所定高さまで下降する。
【0032】
このとき、ケージ40のX軸方向両側の各直動ガイド42は、ガイドレール26A,26Bの延出方向と直交する全方向の変位を拘束されてガイドレール26A,26Bに沿って変位するが、両ガイドレール26A,26Bの平行度や真直度等の誤差がある場合には、各直動ガイド42とケージ40(サイドブロック28A,28B)の間に介在されている球面軸受43,43S部分で適宜屈曲してケージ40に対する各直動ガイド42の相対的な首振りが許容されるとともに、ケージ40側では台座ブロック27に対するサイドブロック28A,28Bの連結角度が両ガイドレール26A,26Bの姿勢や形状の変化に応じて球面軸受35によって自動的に調整される。さらに、両ガイドレール26A,26Bの離間距離の変動に伴う、X軸方向に離間配置された直動ガイド42の相対移動は、球面軸受43S内の滑りブッシュ54の軸方向の滑りによって許容される。
【0033】
以上のように、このスタッカクレーンSCにおいては、各ガイドレール26A,26Bに係合される直動ガイド42が球面軸受43,43Sを介してケージ40の対応するサイドブロック28A,28Bに連結されるとともに、各サイドブロック28A,28Bの下端と台座ブロック27の端部とが球面軸受35を介して回動可能に連結されているため、ガイドレール26A,26Bの平行度や真直度等の誤差によって両ガイドレール26A,26Bに反りや倒れ等の姿勢変化や形状変化が生じることがあっても、球面軸受43,43Sによる直動ガイド42の首振りの許容と、サイドブロック28A,28Bの下端での台座ブロック27との回動の許容とにより、直動ガイド42とガイドレール26A,26Bの間に大きな応力が作用するのを未然に防止することができる。
【0034】
また、このスタッカクレーンSCでは、さらにケージ40の下端の球面軸受43S内に滑りブッシュ54によるスライド機構が設けられているため、両ガイドレール25A,26Bの離間距離が変動する場合にも、その距離の変動をスライド機構によって吸収し、直動ガイド42に不要な応力が作用するのを防止することができる。
【0035】
また、このスタッカクレーンSCにおいては、ケージ40の全域が剛的な一体ブロックとして構成されているのではなく、移載装置100の載置される台座ブロック27と、チェーン23を介してモータ24によって昇降駆動される両側のサイドブロック28A,28Bとが別体に構成され、各サイドブロック28A,28Bの下端と台座ブロック27の端部とが球面軸受35を介して連結された構造とされているため、両ガイドレール26A,26Bの平行度や真直度等の誤差によってガイドレール26A,26B間に局部的な反りや倒れのある状況でケージ40を昇降作動させた場合にも、ケージ40に不要な応力が作用するのを未然に防止することができる。
【0036】
具体例を図9を参照して説明する。
図9は、両側のガイドレール26A,26Bが、上下方向の中央領域で最も離間するように弧状に撓んでいる(反っている)ときの、ケージ40や直動ガイド42の動きを模式的に示した図である。
同図中の実線で示すように、ケージ40がガイドレール26A,26Bの中央領域よりも下方にある場合には、サイドブロック28A,28Bの上部側の直動ガイド42がガイドレール26A,26Bの外向きの撓みに追従して外側方向に変位し、その結果、各サイドブロック28A,28Bが台座ブロック27に対して球面軸受35を中心として外向きに傾斜する。また、同図中の仮想線で示すように、ケージ40がガイドレール26A,26Bの中央領域よりも上方にある場合には、サイドブロック28A,28Bの上部側の直動ガイド42がガイドレール26A,26Bの内向きの撓みに追従して内側方向に変位し、その結果、各サイドブロック28A,28Bが台座ブロック27に対して球面軸受35を中心として内向きに傾斜する。したがって、ケージ40がガイドレール26A,26Bに沿って昇降する場合には、ガイドレール26A,26Bの撓み分を吸収するようにサイドブロック28A,28Bが柔軟に傾動し、ケージ40の各部に不要な応力が生じなくなる。
よって、このスタッカクレーンSCにおいて、ケージ40の昇降作動に伴ってケージ40に応力による弾性変形が生じることがなく、弾性変形の反動による大きな荷重が直動ガイド42とガイドレール26A,26Bに急激に作用するのを未然に防止することができる。なお、この実施形態の例の場合、ケージ40の昇降作動時に、サイドブロック28A,28Bがガイドレール26A,26Bの反りや倒れに追従して傾動する際には、ケージ40の下端の滑りブッシュ54(スライド機構)による両サイドブロック28A,28Bの離間幅の自動調整機能も円滑な作動を得るのに寄与している。
【0037】
したがって、このスタッカクレーンSCによれば、直動ガイド42に不要な応力が作用するのを抑制することができるため、発塵や振動騒音の少ない直動ガイド42を寿命の低下等の不具合を招くことなく採用することができる。
【0038】
また、このスタッカクレーンSCにおいては、ケージ40のX軸方向の一端側の球面軸受43Sのみにスライド機構(滑りブッシュ54)が設けられているため、ケージ40上の移載装置100の位置を、スライド機構の無い側のマスト20A(ガイドレール26A)から常に一定距離に維持することができる。したがって、ケージ40に設置される移載装置100の位置を常に正確に管理することができる。
【0039】
また、このスタッカクレーンSCでは、ケージ40のサイドブロック28A,28Bの上下の各端部がそれぞれ直動ガイド42を介して対応するガイドレール26A,26Bに係合されているため、両側のサイドブロック28A,28Bを常にガイドレール26A,26Bに柔軟に追従させることができるとともに、ケージ40の台座ブロック27をガイドレール26A,26Bに安定的に保持させることができる。
【0040】
さらに、このスタッカクレーンSCの場合、ケージ40と各直動ガイド42の間が球面軸受43,43Sによって屈曲可能に連結されているため、スタッカクレーンSCの移動開始時や停止時、移載装置100の作動時等に直動ガイド42に作用する負荷を容易に、かつ正確に算出できるという利点がある。
すなわち、このスタッカクレーンSCの場合、スタッカクレーンSCの移動開始時や停止時に発生するX軸方向の荷重や、移載装置100の作動時に発生するY軸方向の荷重は、モーメントを伴わずに球面軸受43,43S部分に作用することになるため、直動ガイド42に作用する負荷を容易、かつ正確に算出することができる。したがって、直動ガイド42やガイドレール26A,26Bの強度等を適切に設定することができる。
【0041】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、昇降装置を走行軌道上移動するスタッカクレーンSCに適用したが、昇降装置はフロア上に固定設置されるものであっても良い。
また、上記の実施形態においては、台座ブロック27のX軸方向の両端部にサイドブロック28A,28Bの下端が球面軸受35を介して連結されているが、この連結部は必ずしも球面軸受35である必要はなく、Y軸方向に沿う支持ピンによって台座ブロック27とサイドブロック28A,28Bを連結するようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
20A,20B…マスト
21…駆動スプロケット(昇降駆動手段)
22…従動スプロケット(昇降駆動手段)
23…チェーン(昇降駆動手段)
24…モータ(昇降駆動手段)
26A,26B…ガイドレール
27…台座ブロック
28A,28B…サイドブロック
35…球面軸受
40…ケージ(昇降台)
41…支軸(スライド機構)
42…直動ガイド(ガイド手段)
43,43S…球面軸受
46a,46b…ガイド面
54…滑りブッシュ(スライド機構)
SC…スタッカクレーン(昇降装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延出するガイドレールを有する一対のマストと、
前記一対のマスト間に配置されて昇降する昇降台と、
前記昇降台に取り付けられ、前記各マストの対応するガイドレールに転動可能に係合されるガイド手段と、
前記昇降台に昇降駆動力を付与する昇降駆動手段と、
を備えた昇降装置において、
前記昇降台は、
前記マスト間方向に延出して上部に物品を載置する台座ブロックと、
この台座ブロックの前記マスト間の延出方向の両端部に配置される一対のサイドブロックと、を備え、
この各サイドブロックの下端が、前記台座ブロックの前記マスト間の延出方向の端部に回動自在に連結されており、
前記各ガイド手段は、複数の転動要素が対応するガイドレールの複数のガイド面に接触して、前記ガイドレールの延出方向と直交する全方向の変位を拘束される直動ガイドによって構成され、
この直動ガイドが前記各サイドブロックに球面軸受を介して連結されていることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記各サイドブロックの下端が、前記台座ブロックの前記マスト間の延出方向の端部に、球面軸受を介して回動自在に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記各サイドブロックの下端が、前記台座ブロックの前記マスト間の延出方向の端部に、支軸ピンを介して回動自在に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記一方のマスト側の直動ガイドに、前記昇降台と前記一方のマストとのマスト間方向の相対変位を許容するスライド機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記各サイドブロックの上下に離間した二ヶ所にそれぞれ前記球面軸受を介して前記直動ガイドが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12152(P2012−12152A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149278(P2010−149278)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】