説明

昇降装置

【課題】昇降しようとする構造物とは別体、かつコンパクトに構成された昇降装置を提供する。
【解決手段】昇降しようとする構造物24を支承する支持部材30と支持部材30を上下動可能に支持する可動部材32および可動部材32をスライド可能に保持する不動部材34により構成された脚部36とを有する架台38と、端部が不動部材34の上部に固定されて垂下され、可動部材32の下部に取付けられたガイドローラ40Cで折り返されて可動部材32の側面に沿って上向きにガイドされたベルト42と、架台38の支持部材30に設置されて上向きにガイドされたベルト42を巻取り巻戻しする回転体44を正逆転駆動するモータ46とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテーブル、机、椅子、収納棚等の構造物を安定よく昇降できる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の昇降装置としてベルトをモータ駆動により巻取り巻戻しすることにより構造物を昇降する昇降装置がある(特許文献1参照)。また、ベルトをモータ駆動により巻取り巻戻しする際に構造物を上下方向に安定的にスライドするために構造物の両側面に複数のスライドユニットを装着した昇降装置がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−289635号公報
【特許文献2】特開2008−161612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記従来の昇降装置はベルトをガイドするガイドローラが構造物に取付けられて構造物と一体的に設置されるため、既設の構造物に設置することが煩雑である。また、ベルトやガイドローラがほとんど外部に剥き出しに取付けられているため、隣接する他の構造物に接し易く安定性に欠くという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解消するためになされたもので、昇降しようとする構造物とは別体、かつコンパクトに構成された昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
昇降しようとする構造物を支承する支持部材と前記支持部材を上下動可能に支持する可動部材および前記可動部材をスライド可能に保持する不動部材により構成された脚部とを有する架台と、端部が前記不動部材の上部に固定されて垂下され、前記可動部材の下部に取付けられたガイドローラで折り返されて前記可動部材の側面に沿って上向きにガイドされたベルト又はワイヤーと、前記架台の支持部材に設置されて前記上向きにガイドされたベルト又はワイヤーを巻取り巻戻しする回転体を正逆転駆動するモータとを備えたことを特徴とする昇降装置。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の昇降装置において、前記不動部材を、両方の側面側に沿ってそれぞれ嵌合溝が形成された長方形状のガイドケースにより構成し、前記可動部材を、両方の側面側に沿ってそれぞれ嵌合溝が前記ガイドケースの前記嵌合溝に対向する位置に形成された長方形状のスライドケースにより構成し、前記ガイドケースの嵌合溝とこれに対向する前記スライドケースの嵌合溝との間に長方形状のスライダーを配置すると共に、前記スライダーの一側端部を前記不動部材の前記嵌合溝に嵌合固定し、前記スライダーの他側端部を前記可動部材の前記嵌合溝にスライド可能に嵌合して取付けて、前記ガイドケースと前記スライドケースと前記スライダーとの間に横断面偏平な空間を形成し、前記空間内に前記ベルト又はワイヤーの、前記脚部の側面に沿う部分を収納したことを特徴とする昇降装置。
【0008】
〈構成3〉
構成1又は2に記載の昇降装置において、前記ベルト又はワイヤーの端部は、張力調節装置を介して前記不動部材の上部に固定されていることを特徴とする昇降装置。
【0009】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の昇降装置において、前記ベルト又はワイヤーは、その中間部が前記モータの前記回転体の軸心を縦断する保持溝に挿通されて固定されると共に、前記回転体の両側方の、前記回転体の軸心を通る水平面上にそれぞれ設けられたガイドローラに掛けられて水平方向にガイドされ、さらに、他のガイドローラに掛けられて前記架台の脚部側面に沿って垂下するようにガイドされ、前記可動部材の下部に取付けられた前記ガイドローラで折り返されて上向きにガイドされた両端部が前記不動部材の上部に固定されていることを特徴とする昇降装置。
【0010】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の昇降装置において、前記モータは、前記架台の支持部材の下面に取付けられて前記支持部材の下方に突出するように設置されていることを特徴とする昇降装置。
【発明の効果】
【0011】
〈構成1の効果〉
回転体を正逆転駆動することによりベルト又はワイヤーに牽引力が作用し、この牽引力により上下動する可動部材を介して上部構造物を自在に昇降させることができる。
〈構成2の効果〉
ベルト又はワイヤーの、脚部の側面に沿う部分がガイドケースおよびスライドケースにより外界から遮蔽されるので、狭い空間でのベルト又はワイヤーの上下動作が他の構造物に接触することなくスムーズに行われる。
〈構成3の効果〉
ベルト又はワイヤーの張力を、使用状況に応じて自在に調節できる。
〈構成4の効果〉
ベルト又はワイヤーの中間部がモータの回転体の保持溝に挿通された後に水平方向にガイドされていることにより、回転体によりベルト又はワイヤーの中間部を巻取りしたときに回転体を境界としてベルト又はワイヤーの両側で巻取り量に差異が生じることがなく、回転体を境界とする両側で均等にベルト又はワイヤーの上下動作を行うことができる。
〈構成5の効果〉
モータを支持部材の下面に設置することにより、支持部材の上面が平坦になるので、支持部材の上方に配置される構造物のレイアウトを変えたり、すっきりした外観にすること等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の昇降装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】同昇降装置の一部の部品とその組立て状況を示す説明図で、(a)は同昇降装置の一部の部品を分解した状態を示す説明図、(b)は同部品を合体した状態を示す説明図、(c)は同部品を合体した状態を示す斜視図である。
【図3】同昇降装置の主要部を示す説明図である。
【図4】同主要部の一部を拡大して示す説明図である。
【図5】同昇降装置の一部を示す図で、(a)は同昇降装置の動く前の状態を示す説明図、(b)は同昇降装置が動いた後の状態を示す説明図である。
【図6】同昇降装置の動きを示す図で、(a)は同昇降装置の動く前の状態を示す説明図、(b)は同昇降装置が動いた後の状態を示す説明図である。
【図7】同昇降装置のベルトの取付け状況を示す図で、(a)は同ベルトをモータの回転体に水平に取付けた状態を示す説明図、(b)は同ベルトをモータの回転体に傾斜して取り付けた状態を示す説明図である。
【図8】図6に示した昇降装置とは異なる方式でベルトを掛け渡した昇降装置の動きを示す図で、(a)は同昇降装置の動く前の状態を示す説明図、(b)は同昇降装置が動いた後の状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係る昇降装置の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1の昇降装置26の概要を示す図である。図2(a)は同昇降装置の一部の部品を分解した状態を示す図、(b)および(c)は同部品を合体した状態を示す図である。図3は同昇降装置の主要部を示している。図4は同主要部の一部を拡大して示している。図5は(a)は同昇降装置の動く前の状態を示している。(b)は同昇降装置が動いた後の状態を示している。図6(a)は同昇降装置の動く前の状態を示している。(b)は同昇降装置が動いた後の状態を示している。
【0015】
これらの図において、昇降装置26は、架台38と2組のベルト42と1台のモータ46とを備えている。
【0016】
架台38は、昇降しようとする構造物24(図6)を支承する平板状の支持部材30と、この支持部材30を支持する4本の脚部36とを有している。2組のベルト42は、各組がそれぞれガイドローラ40A、40B、40Cを介して支持部材30と対向する2本ずつの脚部36とに沿って掛け渡されている。
【0017】
モータ46はベルト42を巻取り巻戻しする回転体44を正逆転駆動する。モータ46を正逆転駆動することによりベルト42に牽引力が作用し、この牽引力により上下動する可動部材32を介して上部構造物24を自在に昇降させることができる。
【0018】
回転体44はモータ46の駆動軸に適宜減速機構(図示せず)を介して連結され、モータ46の両側にそれぞれ突出するように設けられている。ベルト42は2組使用され、それぞれが回転体44に巻取り又は巻戻しされるように取付けられると共に、各回転体44の両側方に配置された脚部36の近傍にガイドされている。
【0019】
4本の脚部36は、それぞれ支持部材30を上下動可能に支持する可動部材32と可動部材32をスライド可能に保持する不動部材34とから構成されている。
【0020】
不動部材34は、図2に示されるように両方の側面側に沿ってそれぞれ嵌合溝48が形成された長方形状のガイドケース50により構成されている。可動部材32は、両方の側面側に沿ってそれぞれ嵌合溝49がガイドケース50の嵌合溝48に対向する位置に形成された長方形状のスライドケース52により構成されている。
【0021】
ガイドケース50の嵌合溝48とこれに対向するスライドケース52の嵌合溝49との間に長方形状のスライダー54が嵌合配置されている。スライダー54の一側端部は不動部材34の嵌合溝48にかしめ、あるいは接着剤を介して固定されている。スライダー54の他側端部は可動部材32の嵌合溝49にスライド可能に嵌合されている。
【0022】
ガイドケース50とスライドケース52とスライダー54との間に横断面偏平な空間56が形成されている。空間56は、図3、4に示されるようにベルト42の、脚部36の側面に沿う部分を収納している。
【0023】
ベルト42は、脚部36の側面に沿う部分がガイドケース50およびスライドケース52により外界から遮蔽されるので、上下動作が他の構造物に接触することなくスムーズに行われる。
【0024】
ベルト42は、図4に示されるようにその中間部がモータ46の回転体44の軸心を縦断する保持溝68に嵌入されて固定されると共に、回転体44の両側方の水平面上にそれぞれ設けられたガイドローラ40Aに掛けられて水平方向にガイドされている。
【0025】
さらに、ベルト42は、他のガイドローラ40Bに掛けられて架台38の脚部36側面に沿って垂下するようにガイドされ、可動部材32の下部に取付けられたガイドローラ40Cで折り返されて上向きにガイドされた両端部が張力調節装置76を介して不動部材34の上部に固定されている。
【0026】
上部構造物24はベルト42の張力により可動する可動部材32および支持部材30を介して支持されている。ベルト42の張力は張力調節装置76により使用状況に応じて自在に調節できる。図6中、符号Hは張力調節装置76による可動部材32の移動範囲を示している。
【0027】
張力調節装置76は、図4に示されるように外周にねじ溝58を有するロッド60と、このロッド60に螺合されたナット62と、ロッド60を挿通させる貫通孔を有しかつ不動部材34に取付けられたブラケット66とにより構成されている。
【0028】
ロッド60の上端はベルト42の端部に連結されている。ロッド60の下端部にはブラケット66の貫通孔に通した状態でナット62が螺合される。ナット62の回動によりブラケット66に対してロッド60を上下移動させ、ベルト42の張力を調節する。
【0029】
図7(a)はベルト42をモータの回転体44に水平に取付けた状態を示している。(b)は同ベルトをモータの回転体に傾斜して取り付けた状態をしている。
【0030】
ベルト42は、図7(a)に示されるように、その中間部がモータの回転体44の軸心を縦断する保持溝68に嵌入されて固定されると共に、回転体44の両側方の、回転体の軸心を通る水平面上にそれぞれ設けられたガイドローラ40Aに掛けられて水平方向にガイドされることが望ましい。
【0031】
すなわち、ベルト42の中間部が回転体44の軸心の両側において水平方向にガイドされていることにより、回転体44によりベルト42の中間部を巻取りしたときに回転体を境界としてベルト42の両側で巻取り量に差異が生じることがなく、回転体を境界とする両側で均等にベルト42の上下動作を行うことができるからである。
【0032】
図7(b)に示されるように、ベルト42の中間部がモータの回転体の保持溝68に嵌入された後に傾斜した状態でガイドされていると、回転体44によりベルト42の中間部を巻取りしたときに回転体44を境界としてベルト42の両側における巻取り量に差異が生じてくる。
【0033】
すなわち、図7(b)に示すように、回転体44を境界として図中左側の右肩上がりのベルト42aが図中右側の右肩下がりのベルト42bに比べて間隔Sの差異が生じてくる。このため、回転体を境界とする両側で均等にベルトの上下動作を行うことができない。
【0034】
図8は図6に示した昇降装置とは異なる方式でベルトを掛け渡した構造の昇降装置の動きを示しており、(a)は同昇降装置の稼働前の状態、(b)は同昇降装置の稼働後の状態をそれぞれ示している。
【0035】
図6に示した上記実施例では回転体44の保持溝68に嵌入固定されたベルト42が左右に2つのガイドローラ40Aを介して次のガイドローラ40Bに掛け渡されて架台38の脚部側面に沿って垂下するようにガイドされている例につき説明した。
【0036】
本発明に係る昇降装置は、図8に示すようにベルト42を1つのガイドローラ40Dに掛け渡すだけで架台38の脚部側面に沿って垂下するようにガイドされる構成を含むものとする。
【0037】
また、上記実施例ではベルト42を使用する例につき説明したが、本発明はベルト42に換えてワイヤーを使用して同様の機能を発揮させる構成としたものを含むものとする。
【0038】
図9は本発明に係る昇降装置の他の例を示す説明図である。本発明に係る昇降装置においては、架台38の支持部材30に設置されるモータ46を、図9に示すように支持部材30の下面に取付けられて支持部材30の下方に突出するように設置されているものも含むものとする。
【0039】
モータ46を支持部材30の下面に設置することにより、支持部材30の上面が平坦になるので、支持部材30の上方に配置される構造物のレイアウトを変えたり、すっきりした外観にすること等が可能である。
【符号の説明】
【0040】
24 構造物
26 昇降装置
30 支持部材
32 可動部材
34 不動部材
36 脚部
38 架台
40A ガイドローラ
40B ガイドローラ
40C ガイドローラ
40D ガイドローラ
42 ベルト
44 回転体
46 モータ
48 嵌合溝
49 嵌合溝
50 ガイドケース
52 スライドケース
54 スライダー
56 空間
58 ねじ溝
60 ロッド
62 ナット
66 ブラケット
68 保持溝
76 張力調節装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降しようとする構造物を支承する支持部材と前記支持部材を上下動可能に支持する可動部材および前記可動部材をスライド可能に保持する不動部材により構成された脚部とを有する架台と、
端部が前記不動部材の上部に固定されて垂下され、前記可動部材の下部に取付けられたガイドローラで折り返されて前記可動部材の側面に沿って上向きにガイドされたベルト又はワイヤーと、
前記架台の支持部材に設置されて前記上向きにガイドされたベルト又はワイヤーを巻取り巻戻しする回転体を正逆転駆動するモータと
を備えたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降装置において、
前記不動部材を、両方の側面側に沿ってそれぞれ嵌合溝が形成された長方形状のガイドケースにより構成し、
前記可動部材を、両方の側面側に沿ってそれぞれ嵌合溝が前記ガイドケースの前記嵌合溝に対向する位置に形成された長方形状のスライドケースにより構成し、
前記ガイドケースの嵌合溝とこれに対向する前記スライドケースの嵌合溝との間に長方形状のスライダーを配置すると共に、前記スライダーの一側端部を前記不動部材の前記嵌合溝に嵌合固定し、前記スライダーの他側端部を前記可動部材の前記嵌合溝にスライド可能に嵌合して取付けて、前記ガイドケースと前記スライドケースと前記スライダーとの間に横断面偏平な空間を形成し、
前記空間内に前記ベルト又はワイヤーの、前記脚部の側面に沿う部分を収納したことを特徴とする昇降装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の昇降装置において、
前記ベルト又はワイヤーの端部は、張力調節装置を介して前記不動部材の上部に固定されていることを特徴とする昇降装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の昇降装置において、
前記ベルト又はワイヤーは、その中間部が前記モータの前記回転体の軸心を縦断する保持溝に挿通されて固定されると共に、前記回転体の両側方の、前記回転体の軸心を通る水平面上にそれぞれ設けられたガイドローラに掛けられて水平方向にガイドされ、さらに、他のガイドローラに掛けられて前記架台の脚部側面に沿って垂下するようにガイドされ、前記可動部材の下部に取付けられた前記ガイドローラで折り返されて上向きにガイドされた両端部が前記不動部材の上部に固定されていることを特徴とする昇降装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の昇降装置において、
前記モータは、前記架台の支持部材の下面に取付けられて前記支持部材の下方に突出するように設置されていることを特徴とする昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−23323(P2013−23323A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158635(P2011−158635)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(506312445)風越建設株式会社 (4)
【出願人】(509163293)
【出願人】(599119569)株式会社三富工業 (29)