説明

明るさに優れるポリアリーレンスルフィド樹脂及び樹脂製品

【課題】本発明は、熱的性質に優れて明るさが改善されたPAS樹脂を提供する。
【解決手段】本発明はポリアリーレンスルフィド樹脂に関するものであって、より詳しくは、a)固体硫黄、ヨードアリール化合物、及び重合禁止剤を含む組成物を溶融混合するステップ、b)前記a)のステップの溶融混合物を温度180〜250℃及び圧力50〜450Torr(6.7〜60.0kPa)の初期反応条件から温度270〜350℃及び圧力0.001〜20Torr(0.00013〜2.7kPa)の最終反応条件に変化させて1〜30時間の間重合反応させるステップ、及びc)前記b)のステップの反応生成物を270〜350℃の温度で1〜25時間加熱するステップを含むポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法から製造されるポリアリーレンスルフィド樹脂に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の製造方法及びこれにより製造されるPAS樹脂に関し、より詳しくは従来のPASに比べて熱的性質及び明るさが改善されたPAS樹脂及び樹脂製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PAS樹脂は代表的なエンジニアリングプラスチックの一種で、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気絶縁性などの物性に優れた特徴があって、主にコンピュータ付属品、自動車部品、腐食性化学物質が接触する部分のコーティング、産業用耐薬品性繊維などに幅広く使用されている。
【0003】
現在PAS樹脂の中、商業的に販売されているのはポリフェニレンスルフィド樹脂が唯一の物質である。
【0004】
PPS樹脂を製造する代表的な方法としては、二塩化芳香族化合物と硫化物を極性有機溶媒中で重合反応させる下記のマッコラム工程(Macullum process)があり、米国登録特許第2,513,188号及び第2,583,941号にその基本工程が開示されている。
【0005】
【化1】

前記反応式のように、パラジクロロベンゼン(p−dichlorobenzene)と硫化ナトリウム(sodium sulfide)をN−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone)等の極性有機溶媒中で重合反応させる方法で、PPSが生成すると共に、副生成物として塩化ナトリウム(NaCl)が生成する。
【0006】
マッコラム工程を通して製造されるPPS樹脂は、分子量が10,000〜40,000であり、溶融粘度が3000ポアズ(Poise)以下と低いため、応用範囲が狭く、追加的な後処理工程を経ることになる。つまり、PPS樹脂の溶融粘度を向上させるためにPPS樹脂を融解温度(Tm)以下で加熱することで更に硬化させる(cured)。PPS樹脂の溶融粘度は、硬化工程(curing step)における酸化、架橋(crosslinking)、高分子鎖延長(extension)等によって上昇する。
【0007】
しかし、マッコラム工程によるPPS樹脂の製造方法は次のような短所がある。第一に、硫化ナトリウムなどの硫化物を用いることによって多量の副生成物(金属塩)が生成する。この時に生成される副生成物の量は、硫化ナトリウムのような硫化物を用いる場合に原料質量に対して約52%であるため、副生成物の処理が難しくなると共に、PPS樹脂の収率が低くなってしまう。また、副生成物がPPS樹脂内に数ppmから数千ppm残存してPPS樹脂の電気伝導度を上昇させて、機器の腐食や、繊維を紡ぐ際の問題を引き起こしてしまう。第二に、マッコラム工程は溶液重合法を利用するため、生成するPPS樹脂は見かけ密度が低い非常に微細な粉末状となり、それによって運送及び加工工程における不利益を引き起こしてしまう。第三に、PPS樹脂の溶融粘度を上昇させるための硬化工程でPPS樹脂の脆弱性(brittleness)が増加し、衝撃強度などの機械的物性が低下すると共にPPS樹脂の色が暗くなってしまう。
【0008】
このような問題を解決するための多くの提案がされおり、そのうち、米国登録特許第4,746,758号及び第4,786,713号にはPPS樹脂を製造するための組成物及び製造方法が記載されている。前記組成物及び製造方法では、二塩化化合物と硫化物を使う代わりにジヨードアリール化合物と固体硫黄(solid sulfur)を、極性溶媒なしに直接加熱して重合させる。
【0009】
前記製造方法はヨウ化工程及び重合工程を含む。前記ヨウ化工程ではアリール化合物(aryl compounds)をヨードと反応させて、ジヨードアリール化合物を得て、続く重合工程で、ニトロ化合物触媒でジヨードアリール化合物を固体硫黄と重合反応させてPAS樹脂を製造する。ヨードはこの工程で気体状で発生し、これを回収して再びヨウ化工程に用いられる。実質的にヨードは触媒である。
【0010】
前記製造方法は従来のマッコラム工程の問題を解決することができる。つまり、前記製造方法では副生成物がヨードであると共にこのヨードを簡単に回収することができるため、PAS樹脂の電気伝導度を増加させる問題がないと共に最終製品中のヨードの残存量が非常に少なく、また回収したヨードは再使用ができるため廃棄物の量が減る。また、重合工程で溶媒を使わないため、最終樹脂をペレット状に製造でき、このため、微細な粉末に関する問題を避けることができる。
【0011】
前記製造方法によるPAS樹脂はマッコラム工程によるPAS樹脂に比べて分子量が高いため、硬化が不要となる。
【0012】
しかし、前記PAS樹脂製造用組成物及び製造方法には次のような問題がある。第一に、残留するヨード分子は腐食性があるために少量でも最終PAS樹脂内に残留すると加工機器に問題を惹起し、ヨード自らの暗い色によってPAS樹脂の色が暗くなってしまう。第二に、重合工程で固体硫黄を使用するためにPAS樹脂内に含まれるジスルフィド結合が樹脂の熱的性質を低下させてしまう。第三に、ニトロ化合物触媒を使わなければ樹脂は明るくなるが、PAS樹脂内のジスルフィド結合の含有量が増加するため、触媒を用いた場合と比べて熱的物性が低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような従来の技術の問題を解決するため、本発明の第1の目的は、熱的性質と明るさが改善されたポリアリーレンスルフィド樹脂を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的は前記ポリアリーレンスルフィド樹脂から製造される樹脂成形品、フィルム、シート、または繊維などの樹脂製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、下記に記載される本発明の説明、並びに添付の特許請求の範囲により詳しく理解できる。
【0016】
本発明に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法は、次のステップを含む:
a)硫黄化合物、ヨードアリール化合物、及び重合禁止剤を含む組成物を溶融混合するステップ;
b)前記a)のステップの溶融混合物を、温度180〜250℃及び圧力50〜450Torr(6.7〜60.0kPa)の初期反応条件から、温度270〜350℃及び圧力0.001〜20Torr(0.00013〜2.7kPa)の最終反応条件まで、温度を上昇させると共に圧力を降下させながら、1〜30時間重合反応させるステップ;及び
c)前記b)のステップの反応生成物を270〜350℃の温度で1から25時間加熱するステップ。
【0017】
実施の形態においては、前記c)のステップは下記数式で表される粘度上昇率が10%未満となるようにおこなわれることが望ましい。
【0018】
【数1】

前記組成物は固体硫黄100質量部に対して、ヨードアリール化合物500〜10000質量部、及び重合禁止剤1〜30質量部を含むことが望ましい。
【0019】
前記重合禁止剤はモノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類及びジチオカルバメート(dithiocarbamate)類で構成される群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0020】
また、本発明は請求項1乃至8のいずれか一項の方法で製造され、融解温度(Tm)が230〜290℃であり、国際照明委員会(CIE)のLab表色系による明るさ(luminosity)、融解温度及び溶融粘度が数式の関係を有するポリアリーレンスルフィド樹脂を提供する。
【0021】
【数2】

前記数式において、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、
a)固体硫黄、ヨードアリール化合物、及び重合禁止剤を含む組成物を溶融混合するステップ、
b)前記a)のステップの溶融混合物を、温度180〜250℃及び圧力50〜450Torr(6.7〜60.0kPa)の初期反応条件から、温度270〜350℃及び圧力0.001〜20Torr(0.00013〜2.7kPa)の最終反応条件まで、温度を上昇させると共に圧力を降下させながら、1〜30時間重合反応させるステップ、及び
c)前記b)のステップの反応生成物を270〜350℃の温度で1〜25時間加熱するステップを含むことを特徴とする。
【0023】
第2の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、第1の態様において、前記c)のステップは下記数式で表される反応生成物の粘度上昇率が10%未満となるようにおこなわれることを特徴とする。
【0024】
【数3】

第3の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、第2の態様において、前記c)のステップにおける加熱において、前記反応生成物を285〜340℃の温度で1.5〜20時間加熱することを特徴とする。
【0025】
第4の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、第1の態様において、前記組成物は固体硫黄100質量部に対して、ヨードアリール化合物を500〜10、000質量部、及び重合禁止剤を1〜30質量部含むことを特徴とする。
【0026】
第5の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、第1の態様において、前記重合禁止剤が、モノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類及びジチオカルバメート(dithiocarbamate)類で構成される群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0027】
第6の態様に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法は、第5の態様において、前記重合禁止剤が、ヨードビフェニル(iodobiphenyl)、ヨードフェノール(iodophenol)、ヨードアニリン(iodoaniline)、ヨードベンゾフェノン(iodobenzophenone)、2−メルカプトベンゾチアゾール(2−mercaptobenzothiazole)、2,2'−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2'−dithiobisbenzothiazole)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド(N−cyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(2−morpholinothiobenzothiazole)、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド(N−dicyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide)、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛(zinc dimethyldithiocarbamate)及びジエチルジチオカルバメート酸亜鉛(zinc diethyldithiocarbamate)で構成される群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0028】
第7の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、第1の態様において、前記組成物は1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン(1,3−diiodo−4−nitrobenzene、mDINB)、1−ヨード−4−ニトロベンゼン(1−iodo−4−nitrobenzene)、2,6−ジヨード4−ニトロフェノール(2,6−diiodo−4−nitrophenol)、及びヨードニトロベンゼンで構成された群から選択される少なくとも1種の重合反応触媒を更に含むことを特徴とする。
【0029】
第8の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、第7の態様において、前記重合反応触媒が固体硫黄100質量部に対して0.01〜20質量部含まれることを特徴とする。
【0030】
第9の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂は、第1乃至第8のいずれか一の態様に係る製造方法で製造され、融解温度(Tm)が230〜290℃であり、明るさ、融解温度及び溶融粘度が次の数式を満足することを特徴とする:
【0031】
【数4】

前記数式において、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。
【0032】
第10の態様に係る樹脂製品は、第9の態様に係るポリアリーレンスルフィド樹脂から作製されたことを特徴とする。
【0033】
第11の態様に係る樹脂製品は、第10の態様において、前記樹脂製品は樹脂成形品、フィルム、シート、または繊維であることを特徴とする。
【0034】
第12の態様に係る樹脂製品は、第10の態様において、前記樹脂製品はi)前記ポリアリーレンスルフィド樹脂30〜99.9質量%と、ii)金属硫化物と二塩化アリール化合物とからマッコラム工程により製造したポリアリーレンスルフィド樹脂0.1〜70質量%との混合物から製造されたことを特徴とする。
【0035】
第13の態様に係る樹脂製品は、第10の態様において、前記製品はi)前記ポリアリーレンスルフィド樹脂30〜99.9質量%と、ii)硫黄とヨードアリール化合物から合成され、下記数式を満足するポリアリーレンスルフィド樹脂0.1〜70質量%との混合物から製造されたことを特徴とする:
【0036】
【数5】

前記数式において、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明者らはPAS樹脂の明るさや色を改善する方法について研究する過程において、ヨードアリール化合物と固体硫黄を出発物質としてPAS樹脂を製造する時、分子状のヨードを含む揮発性化合物がPAS樹脂の色を暗くさせる主要因であることを見出し、そのため、重合反応後、高温で加熱するステップによって揮発性化合物を除去した。更に本発明者らは、この高温で加熱するステップでPASの分子量が上昇するのを防止するために重合反応性混合物に重合禁止剤を添加することを見出した。これにより、PAS樹脂の他の物性の低下を最少化しつつ、CIE Lab表色系による明るさ(luminosity)の改善を達成した。
【0038】
PAS樹脂の製造方法は、次のステップを含む:
a)固体硫黄(solid sulfur)、ヨードアリール化合物、及び重合禁止剤を含む組成物を溶融混合するステップ;
b)前記a)のステップの溶融混合物を、温度180〜250℃及び圧力50〜450Torr(6.7〜60.0kPa)の初期反応条件から、温度270〜350℃及び圧力0.001〜20Torr(0.00013〜2.7kPa)の最終反応条件まで、温度を上昇させると共に圧力を降下させながら、1〜30時間重合反応させるステップ;及び
c)前記b)のステップの反応生成物を270〜350℃の温度で1〜25時間加熱するステップ。
【0039】
本発明による製造方法は、固体硫黄、ヨードアリール化合物、及び重合禁止剤を含む組成物を溶融混合するa)のステップを含む。
【0040】
前記a)のステップで使用される硫黄化合物及びヨードアリール化合物はその種類が特に限定されず、当業者が適宜選択した化合物を使用することができる。
【0041】
望ましくは、硫黄(S)は常温でシクロオクタ硫黄(cyclooctasulfur、S8)として存在するが、前記硫黄化合物は常温で固体または液体状であれば、いかなる形態の硫黄化合物であってよい。
【0042】
また、前記ヨードアリール化合物として、ジヨードベンゼン(diiodobenzene、DIB)、ジヨードナフタレン(diiodonaphthalene)、ジヨードビフェニル(diiodobiphenyl)、ジヨードビスフェノール(diiodobisphenol)、及びジヨードベンゾフェノン(diiodobenzophenone)で構成された群より選択される少なくとも一種が挙げられる。また、アルキル基(alkyl group)やスルホン基(sulfone group)が結合していたり、酸素や窒素が導入されたりしているヨードアリール化合物の誘導体も使用される。ヨードアリール化合物は、そのヨード原子の結合位置によって、異なる異性体(isomer)に分類され、これらの異性体のうちの好ましい例は、パラ−ジヨードベンゼン(p−diiodobenzene、pDIB)、2,6−ジヨードナフタレン、及びp,p'−ジヨードビフェニルのように、ヨードがアリール化合物の両端に対称的に位置する化合物である。
【0043】
前記ヨードアリール化合物の量は硫黄100質量部に対して500〜10,000質量部である。この量は、ジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
【0044】
前記重合禁止剤の含有量は、硫黄100質量部に対して1〜30質量部である。すなわち、この含有量は、低コストでPAS樹脂の最小限の熱的物性及び明るさ向上効果を得るように決定されることが望ましい。
【0045】
また、前記a)のステップの組成物に含まれる重合禁止剤はPAS樹脂の分子量を調節するための成分として使用され、特に分子量が適正範囲以上に上昇しないようにする。分子量が過度に上昇する場合、反応器に過度な負荷を招いてしまい、また樹脂の加工に困難が生じてしまう。
【0046】
好ましい重合禁止剤として、モノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類、及びジチオカルバメート(dithiocarbamate)類で構成される群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0047】
更に望ましい重合禁止剤として、ヨードビフェニル(iodobiphenyl)、ヨードフェノール(iodophenol)、ヨードアニリン(iodoaniline)、ヨードベンゾフェノン(iodobenzophenone)、2−メルカプトベンゾチアゾール(2−mercaptobenzothiazole)、2,2'−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2'−dithiobisbenzothiazole)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド(N−cyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(2−morpholinothiobenzothiazole)、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド(N−dicyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide)、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛(zinc dimethyldithiocarbamate)及びジエチルジチオカルバメート酸亜鉛(zinc diethyldithiocarbamate)で構成される群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0048】
前記a)のステップの組成物は更に少なくとも重合反応触媒を含有する。本発明者らは、ニトロ化合物はPAS樹脂の色を暗くさせる主要因であるが、ニトロ化合物の使用量が少量であれば、硫黄を含有する重合禁止剤を使用することにより、同等以上の熱的性質と、明るさの改善とが達成されることを見出した。
【0049】
前記重合反応触媒として、通常は各種ニトロベンゼン誘導体を用いることができる。望ましくは1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン(1,3−diiodo−4−nitrobenzene、mDINB)、1−ヨード−4−ニトロベンゼン(1−iodo−4−nitrobenzene)、2,6−ジヨード4−ニトロフェノール(2,6−diiodo−4−nitrophenol)、及びヨードニトロベンゼンで構成される群より選択される重合反応触媒を用いることができる。
【0050】
前記重合反応触媒の含有量は、重合反応の向上の程度と経済性とを考慮すると、固体硫黄100質量部に対して0.01〜20質量部である。
【0051】
このa)のステップの組成物を加熱することですべての成分を溶解させ、また均一に混合する。
【0052】
次に、本方法では、b)のステップで、前記a)のステップの溶融混合物を重合反応させる。
【0053】
重合反応の条件は、反応器の構造設計及び生産速度に依存し、当業者に知られているため、特に制限されない。反応条件は、当業者がプロセス条件を考慮して適宜設定することができる。
【0054】
a)のステップの溶融混合物の重合は、温度180〜250℃及び圧力50〜450Torr(6.7〜60.0kPa)の初期反応条件から、温度270〜350℃及び圧力0.001〜20Torr(0.00013〜2.7kPa)の最終反応条件まで、温度を上昇させると共に圧力を降下させながら、1〜30時間進行させる。好ましくは、前記初期反応条件は反応速度を考慮して温度180℃以上、圧力450Torr(60.0kPa)以下とし、最終反応条件は高分子の熱分解を考慮して温度350℃以下、圧力20Torr(2.7kPa)以下とする。
【0055】
b)のステップでは、重合反応は、190〜240℃、より好ましくは200〜240℃の温度及び80〜350Torr(10.7〜46.7kPa)、より好ましくは90〜300Torr(12.0〜40.0kPa)の圧力の初期反応条件から、280〜340℃、より好ましくは290〜335℃の温度及び0.005〜15Torr(0.00067〜2.0kPa)、より好ましくは0.01〜10Torr(0.0013〜1.3kPa)の圧力の最終反応条件まで、温度を上昇させると共に圧力を降下させながら、2〜20時間、より好ましくは3〜15時間進行させる。
【0056】
次に、本方法は、前記b)のステップの反応生成物を270〜350℃の温度で1〜25時間の間加熱するc)のステップを経る。この加熱がおこなわれることによって、分子状のヨードなどの揮発性化合物が取り除かれることにより、明るさが改善する。
【0057】
前記c)のステップの反応条件は、明るさの改善と、揮発性化合物を取り除くための最小限の時間及び温度を考慮して設定されるが、好ましくは270〜350℃の温度で1〜25時間、より好ましくは285〜340℃の温度で1.5〜20時間、最も好ましくは300〜330℃の温度で2〜15時間とする。
【0058】
b)のステップで得られた反応生成物物を加熱すると、PAS樹脂の粘度が過度に上昇することが、粘度上昇を測定することで確認できる。つまり、前記c)のステップは、下記数式で表される反応生成物の粘度上昇率が10%未満となるようにおこなわれることが望ましい。
【0059】
【数6】

より望ましくは、前記c)のステップにおける加熱は、はPAS樹脂の分子量が10,000〜55,000となるようにおこなわれる。PAS樹脂の分子量をこのようにするためには、重合禁止剤の含有量が硫黄100質量部に対して1〜30質量部であることが望ましい。
【0060】
他の実施形態では、本発明は前記製造方法で製造されるPAS樹脂を提供する。
【0061】
このPAS樹脂の製造方法では、重合の後に加熱するステップが追加され、適正量の重合禁止剤が加えられることによって生成物の分子量が制御される。従って、PAS樹脂はより優れた熱的性質と国際照明委員会(CIE)のLab表色系による明るさとを有するようになる。
【0062】
つまり、PAS樹脂は本発明に係る製造方法で製造されるため、その融解温度(Tm)が230〜290℃であると共に、明るさと融解温度と溶融粘度とが次の関係を満足する。
【0063】
【数7】

前記数式で、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。
【0064】
更に他の実施形態では、樹脂成形品、フィルム、シート、または繊維などの、ポリアリーレンスルフィド樹脂から製造される樹脂製品を提供する。
【0065】
前記製品はi)本発明によるポリアリーレンスルフィド樹脂30〜99.9質量%と、ii)金属硫化物と二塩化アリール化合物とから、マッコラム工程により合成されたポリアリーレンスルフィド樹脂0.1〜70質量%との混合物から製造される。または前記製品はi)本発明によるポリアリーレンスルフィド樹脂30〜99.9質量%と、ii)硫黄とヨードアリール化合物から合成され、下記数式を満足するポリアリーレンスルフィド樹脂0.1〜70質量%との混合物から製造される。
【0066】
【数8】

前記数式で、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。
【0067】
この樹脂製品は、射出成形法、押出成形法、その他の成形方法によって製造された樹脂成形品であってよい。樹脂成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品が挙げられる。射出成形する場合の成形温度は、結晶化の観点からは30℃以上、より好ましくは60℃以上、最も好ましくは80℃以上とし、試験片の変形の観点からは150℃以下、より好ましくは140℃以下、最も好ましくは130℃以下とする。この樹脂製品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、機械部品、日用品などとして利用することができる。
【0068】
フィルム、またはシートとしては、未延伸、1軸延伸、2軸延伸のフィルム、またはシートが挙げられる。繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸等が挙げられ、織物や、編物や、スパンボンド、メルトブラウン、ステープルなどの不織布や、ロープや、ネットとして利用することができる。
【0069】
本発明に係るPAS樹脂に、更にマッコラム工程で得られたPAS樹脂を混合すると、マッコラム工程で得られたPASの速い結晶化特性を利用することができる。或いは、本発明に係るPAS樹脂に、本発明とは異なる製造方法でヨウ化化合物から合成されたPAS樹脂を混合すると、本発明に係るPAS樹脂の速い結晶化特性及び優れた明るさを利用することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の理解のために望ましい実施例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明をより明確に表現するための目的で記載することだけで、本発明の内容が下記の実施例に限定されるのではない。
【0071】
A.重合触媒を用いないポリアリーレンスルフィド樹脂の製造
[比較例1]
パラ−ジヨードベンゼン(p−diiodobenzene、pDIB)300.0gと固体硫黄29.15gとの混合物を180℃で溶融させた。
【0072】
前記溶融混合物を、温度220℃及び圧力350Torr(46.7kPa)で1時間;温度230℃及び圧力200Torr(26.7kPa)で2時間;温度250℃及び圧力120Torr(16.0kPa)で1時間;圧力を60Torr(8.0kPa)に下げて1時間;温度を280℃に上げて1時間;圧力を10Torr(1.3kPa)に下げて1時間;温度300℃及び圧力1Torr(0.13kPa)以下で1時間の条件で、総計8時間重合反応させてPAS樹脂を製造した。
【0073】
[比較例2]
混合物中に重合禁止剤として4−ヨードビフェニル(4−iodobiphenyl)1.48gをさらに添加したことを除いては、比較例1と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0074】
[実施例1]
重合反応生成物を更に300℃で3時間加熱したことを除いては、比較例2と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0075】
[実施例2]
重合反応生成物を更に300℃で12時間加熱したことを除いては、比較例2と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0076】
[実施例3]
重合反応生成物を更に320℃で2時間加熱したことを除いては、比較例2と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0077】
[実施例4]
重合反応生成物を更に320℃で6時間加熱したことを除いては、実施例3と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0078】
[実験例1]
前記比較例1及び2、並びに実施例1乃至4で得られたPAS樹脂に対して各々溶融粘度(melt viscosity、MV)、融解温度(Tm)及び明るさ(Col−L)を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0079】
溶融粘度は回転円板粘度計(rotating disk viscometer)で300℃で測定し、融解温度は示差走査熱量分析器(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を利用して測定し、色彩分析(color analysis)では、得られた高分子及び試験片を約100ea/gの粒状にし、170℃で1時間加熱して結晶化し、比色計を用いて、CIE Lab表色系による明るさを測定した。前記明るさは国際標準の国際照明委員会(CIE)による色彩定義に基づいて、ハンターL,a,b(Hunter L,a,b)により計算され、詳しい定義及び規定方法は米国標準試験方法(ASTM)のE308、E1347項目で説明されている。
【0080】
【表1】

前記表1に示したように、実施例1乃至4は重合反応後に追加的に加熱する工程を遂行することによって、比較例1及び2と比較して同等な程度の融解温度を示しながらも、明るさが向上することが分かる。
【0081】
B.重合触媒を用いたポリアリーレンスルフィド樹脂の製造
[比較例3]
重合に供される混合物に、重合反応触媒として1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン(1,3−diiodo−4−nitrobenzene、mDINB)0.30gを加えたことを除いては比較例1と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0082】
[比較例4]
混合物に、重合禁止剤として2,2'−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2'−dithiobisbenzothiazole、MBTS)0.88gを加えたことを除いては比較例3と同じ方法PAS樹脂を製造した。
【0083】
[実施例5]
重合反応生成物を更に300℃の温度で3時間加熱したことを除いては比較例4と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0084】
[比較例5]
重合反応生成物を更に300℃の温度で30分間加熱したことを除いては比較例4と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0085】
[比較例6]
混合物に、重合禁止剤として2,2'−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2'−dithiobisbenzothiazole、MBTS)1.10gを加えたことを除いては比較例3と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0086】
[実施例6]
重合反応生成物を更に300℃の温度で3時間加熱したことを除いて比較例6と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0087】
[実施例7]
重合反応生成物を更に300℃の温度で7時間加熱したことを除いては比較例6と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0088】
[実施例8]
重合反応生成物を更に300℃の温度で12時間加熱したことを除いては比較例6と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0089】
[比較例7]
重合反応生成物を更に300℃の温度で15分間加熱したことを除いては比較例4と同じ方法でPAS樹脂を製造した。
【0090】
[実験例2]
前記比較例3乃至7、及び実施例5乃至8のPAS樹脂に対して各々溶融粘度(melt viscosity、MV)、融解温度(Tm)及び明るさ(Col−L)を前記実験例1のように測定し、その結果を下記表2に示した。
【0091】
【表2】

前記表2に示したように、重合反応触媒を加えた比較例3、並びに重合禁止剤を加えた比較例4及び5では、比較例1に比べて熱的性質(融解温度)は向上したが明るさは落ちることが明らかになった。
【0092】
それに比べて、実施例5乃至8では重合反応後に追加的に加熱する工程を遂行することによって、比較例3乃至7と比較して同等な程度の融解温度を示し、明るさが向上することが分かる。
【0093】
C.射出成形品の製造
[実施例9]
実施例8のPAS樹脂3kgから、射出機(ENGEL ES75P)を用いて試験片を製造し、ASTMD638に従って引張り特性試験をおこなった。この時、バレル温度は投入口から順次に270℃、300℃、300℃となるようにし、ノズル温度は310℃となるようにした。その結果、引張強度は11,000psi、引張弾性率は830,000psi、及び破断伸び率は1.2%であり、これらはPAS樹脂に要求される物性を満足するものであった。
【0094】
[比較例8]
比較例3のPAS樹脂3kgから、実施例9と同じ方法で試験片を製造した。
【0095】
[比較例9]
市販の、マッコラム工程で得られた代表的なPPSであるライトン(Ryton)樹脂3kgから、実施例9と同じ方法で試験片を製造した。
【0096】
[実施例10]
実施例8のPAS樹脂2.85kgと比較例3のPAS樹脂0.15kgとのドライブレンドから、実施例9と同じ方法で試試験片を製造した。
【0097】
[実施例11]
実施例8のPAS樹脂2.7kgと比較例3のPAS樹脂0.3kgとのドライブレンドから、実施例9と同じ方法で試験片を製造した。
【0098】
[実施例12]
実施例8のPAS樹脂1.5kgと比較例3のPAS樹脂1.5kgとのドライブレンドから、実施例9と同じ方法で試験片を製造した。
【0099】
[実施例13]
実施例8のPAS樹脂2.85kgと比較例9のライトン樹脂0.15kgとのドライブレンドから、実施例9と同じ方法で試片を製造した。
【0100】
[実施例14]
実施例8のPAS樹脂2.7kgと比較例9のライトン樹脂0.3kgとのドライブレンドから、実施例9と同じ方法で試験片を製造した。
【0101】
[実施例15]
実施例8のPAS樹脂1.5kgと比較例9のライトン樹脂1.5kgとのドライブレンドから、実施例9と同じ方法で試験片を製造した。
【0102】
[実験例3]
前記比較例8乃至9、及び実施例9乃至15のPAS試験片に対して融解温度(Tm)、明るさ(Col−L)、冷結晶化温度(Tcc)、結晶化度(crystallinity)を測定して、下記表3に示した。
【0103】
融解温度と冷結晶化温度は示差走査熱量分析器(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を利用して測定し、色彩分析(color analysis)では、得られた高分子及び試験片を約100ea/gの粒状にし、170℃で1時間加熱して結晶化し、比色計を用いて、CIE Lab表色系による明るさを測定した。前記明るさは国際標準の国際照明委員会(CIE)による色彩定義に基づいて、ハンターL,a,b(Hunter L,a,b)により計算し、詳しい定義及び規定方法は米国標準試験方法(ASTM)のE308、E1347項目で説明されている。結晶化度は密度勾配カラムで試料の密度を測定した後、以下の式で計算した。
【0104】
【数9】

Xc、V:試験片の体積結晶化率(crystallinity rate)
d:試験片の密度
dc:PAS樹脂の完全結晶型(complete crystal form)の理論密度
da:PAS樹脂の完全無定形型(complete morphous form)の密度
PPS樹脂の場合dc=1.439、da=1.320である。
【0105】
【表3】

実施例9、比較例8,9の射出成形品と、ドライブレンドを使用した実施例10乃至12,実施例13乃至15の射出成形品とを比べると、実施例10乃至12では実施例8の明るさの向上がそのまま反映されており、実施例13乃至15では速い結晶化速度と結晶化度の上昇が認められた。
【0106】
以上のように、重合反応のステップに続いて、更に重合反応生成物を高温で加熱するステップを含み、また適正量の重合禁止剤を使って反応生成物の分子量を制御するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法では、これにより製造されるポリアリーレンスルフィド樹脂が熱的性質に優れ、明るさが高いものになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)固体硫黄、ヨードアリール化合物、及び重合禁止剤を含む組成物を溶融混合するステップ、
b)前記a)のステップの溶融混合物を、温度180〜250℃及び圧力50〜450Torr(6.7〜60.0kPa)の初期反応条件から、温度270〜350℃及び圧力0.001〜20Torr(0.00013〜2.7kPa)の最終反応条件まで、温度を上昇させると共に圧力を降下させながら、1〜30時間重合反応させるステップ、及び
c)前記b)のステップの反応生成物を270〜350℃の温度で1〜25時間加熱するステップを含む製造方法により製造され、
融解温度(Tm)が230〜290℃であり、明るさ、融解温度及び溶融粘度が次の数式を満足することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂:
【数1】

前記数式において、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。
【請求項2】
前記c)のステップは下記数式で表される反応生成物の粘度上昇率が10%未満となるようにおこなわれることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂:
【数2】

【請求項3】
前記c)のステップにおける加熱において、前記反応生成物を285〜340℃の温度で1.5〜20時間加熱することを特徴とする請求項2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂。
【請求項4】
前記組成物は固体硫黄100質量部に対して、ヨードアリール化合物を500〜10、000質量部、及び重合禁止剤を1〜30質量部含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂。
【請求項5】
前記重合禁止剤が、モノヨードアリール化合物(monoiodoaryl compound)、ベンゾチアゾール(benzothiazole)類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazolesulfenamide)類、チウラム(thiuram)類及びジチオカルバメート(dithiocarbamate)類で構成される群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂。
【請求項6】
前記重合禁止剤が、ヨードビフェニル(iodobiphenyl)、ヨードフェノール(iodophenol)、ヨードアニリン(iodoaniline)、ヨードベンゾフェノン(iodobenzophenone)、2−メルカプトベンゾチアゾール(2−mercaptobenzothiazole)、2,2'−ジチオビスベンゾチアゾール(2,2'−dithiobisbenzothiazole)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド(N−cyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(2−morpholinothiobenzothiazole)、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド(N−dicyclohexylbenzothiazole−2−sulfenamide)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide)、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛(zinc dimethyldithiocarbamate)及びジエチルジチオカルバメート酸亜鉛(zinc diethyldithiocarbamate)で構成される群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂。
【請求項7】
前記組成物は1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン(1,3−diiodo−4−nitrobenzene、mDINB)、1−ヨード−4−ニトロベンゼン(1−iodo−4−nitrobenzene)、2,6−ジヨード4−ニトロフェノール(2,6−diiodo−4−nitrophenol)、及びヨードニトロベンゼンで構成された群から選択される少なくとも1種の重合反応触媒を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂。
【請求項8】
前記重合反応触媒が固体硫黄100質量部に対して0.01〜20質量部含まれることを特徴とする請求項7に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載されたポリアリーレンスルフィド樹脂から作製されたことを特徴とする樹脂製品。
【請求項10】
前記樹脂製品は樹脂成形品、フィルム、シート、または繊維であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂製品。
【請求項11】
前記樹脂製品はi)前記ポリアリーレンスルフィド樹脂30〜99.9質量%と、ii)金属硫化物と二塩化アリール化合物とからマッコラム工程により製造したポリアリーレンスルフィド樹脂0.1〜70質量%との混合物から製造されたことを特徴とする請求項9に記載の樹脂製品。
【請求項12】
前記製品はi)前記ポリアリーレンスルフィド樹脂30〜99.9質量%と、ii)硫黄とヨードアリール化合物から合成され、下記数式を満足するポリアリーレンスルフィド樹脂0.1〜70質量%との混合物から製造されたことを特徴とする請求項9に記載の樹脂製品:
【数3】

前記数式において、Col−LはCIE Lab表色系による明るさ、Tmは摂氏温度単位(℃)で表示した融解温度であり、MVはポアズ(poise)単位で表示した溶融粘度である。

【公開番号】特開2013−7050(P2013−7050A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195772(P2012−195772)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2009−544798(P2009−544798)の分割
【原出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(500116041)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (49)
【Fターム(参考)】