明検出のためのクエンチャー付加デンドリマー色素
本発明は、分子アセンブリー中の単一のアクセプター/クエンチャーを蛍光状態に変換することによって活性化され得る、高吸光度のクエンチャー付加「ダイドロン」に対するデザインを提示する。クエンチャーは、独特の相補的な発現可能な蛍光団活性化ペプチド(FAP)に非共有結合することによって活性化される。この方法において、クエンチャーは均一なスイッチとして働き、デンドロンのアンテナの各ドナー分子からエネルギーを効率的に受け取り、結合によって活性化された場合にのみそれを蛍光として放出する。アンテナ上の複数の色素の吸光度の合計は、標準の画像化システムにおけるプローブの効率的な輝度における劇的な増強をもたらす。この取組みによりダイドロンの蛍光を活性化する発現タグを特異的に標的とする、例外的な輝度を有する1セットのプローブが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所第5U54−RR022241号および第R01−NIH 1R01GM086237号の下、政府の支援で行われた。政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
蛍光検出の感度は、生物医学的研究、診断、および創薬において、蛍光試薬によって発光されるシグナルから有用な情報を得る上での制限となることが多い。蛍光検出の感度は、(1)検出系における蛍光試薬のコピー数、(2)検出機器の効率、および(3)試料中の内因性生物学的蛍光体から生じるバックグラウンドの蛍光および蛍光試薬の試料との非特異的結合から生じるバックグラウンドの蛍光に対する蛍光試薬の蛍光輝度に依存する。蛍光試薬の輝度は次に、蛍光シグナルを生成する試薬中の色素の量子効率および色素の吸光能力(吸光係数によって定量される)に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第08/092041号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,702,892号明細書
【特許文献3】米国特許第5,750,373号明細書
【特許文献4】米国特許第5,821,047号明細書
【特許文献5】米国特許第6,127,132号明細書
【特許文献6】米国特許第5,948,635号明細書
【特許文献7】米国特許第6,407,213号明細書
【特許文献8】米国特許第5,223,409号明細書
【特許文献9】米国特許第5,198,346号明細書
【特許文献10】米国特許第5,096,815号明細書
【特許文献11】米国特許第5,475,096号明細書
【特許文献12】米国特許第5,270,163号明細書
【特許文献13】国際公開第91/19813号パンフレット
【特許文献14】米国特許第5,707,796号明細書
【特許文献15】米国特許第5,580,737号明細書
【特許文献16】米国特許第5,567,588号明細書
【特許文献17】米国特許第5,496,938号明細書
【特許文献18】米国特許第5,683,867号明細書
【特許文献19】米国特許第5,660,985号明細書
【特許文献20】米国特許第5,637,459号明細書
【特許文献21】米国特許第6,131,580号明細書
【特許文献22】米国特許第6,248,558号明細書
【特許文献23】米国特許第4,215,05号明細書
【特許文献24】国際公開第91/06309号パンフレット
【特許文献25】日本国特許出願第1047381号明細書
【特許文献26】欧州特許出願公開第43075号明細書
【特許文献27】国際公開第93/04701号パンフレット
【特許文献28】国際公開第92/22635号パンフレット
【特許文献29】国際公開第92/20316号パンフレット
【特許文献30】国際公開第92/19749号パンフレット
【特許文献31】国際公開第92/06180号パンフレット
【特許文献32】米国特許第5,166,320号明細書
【非特許文献】
【0004】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、結果として同時に得られる蛍光検出における2つの重要な進歩と関係している。進歩の1つの構成要素は、試薬の励起波長でより大きな蛍光シグナルをもたらす、大きな有効吸光係数を有する蛍光試薬の作製である。進歩の他の局面は、新しい試薬は、標的化活性化剤によって蛍光状態に選択的に活性化され、そうでなければ、試料中に存在する場合は低い非特異的な蛍光を生成するということである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分子アセンブリー中の単一のアクセプター/クエンチャーを蛍光状態に変換することによって活性化され得る、高吸光度で消光クエンチャー付加「ダイドロン」をデザインするものである。クエンチャーは、発現可能な蛍光団活性化ペプチド(FAP)などの、独特の相補的な蛍光団アクチベーターに非共有的に結合することによって活性化される。この方法において、クエンチャーは均一なスイッチとして働き、デンドロンのアンテナ(dendronic antenna)の各ドナー分子からエネルギーを効率的に受け取り、結合によって活性化された場合にのみこれを蛍光として放出する。
【発明の効果】
【0007】
アンテナ上の複数の色素の吸光度の合計は、標準の画像化システムにおけるプローブの実効輝度の劇的な増強をもたらす。この方法により、ダイドロンの蛍光を活性化する発現タグを特異的に標的とする、例外的な輝度を有する1セットのプローブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】クエンチャー(消光)付加ダイドロン(dyedron)の蛍光の活性化の一般的概念を示す図である。クエンチャー(消光)付加ダイドロンは、2種の色素で装飾されているデンドロン(黒)からなり、表面基は蛍光ドナー(明灰色)を有し、頭部基は単一のクエンチャー(暗灰色)にカップリングしている。
【図1B】クエンチャーが特異的な蛍光団活性化ペプチド(FAP)に結合すると、クエンチャーは効率的な蛍光体/アクセプターに変換される。
【図1C】この活性化により、ドナーアレイの合計の励起とカップリングしたアクセプターからの明るい発光がもたらされ、現存の発現タグよりも輝度が5から140倍高い個々の構築体が生成される。
【図2】モル吸光率ε>106を有するドナーアレイ分子を示す模式図である。左:コア中に陽イオン性4級アミン(+)を示す世代2のPAMAMダイドロン;右:無電荷の内部アミドを有するNewkomeのダイドロン(ひし形)。
【図3】ドナーの励起および標的とするアクセプターの発光の性質を示す図である。Cy−3または同様のスペクトルの変異体がドナーアレイに用いられ、蛍光団のクエンチャーに直接的にまたは中間アクセプターを介してのいずれかで連結している。
【図4A】L5−MG E52D pPNL6融合タンパク質(配列番号1)をコードする構築体のDNA配列を示す図である。
【図4B】構築体pPNL6 L5−MG E52Dを示す図である。
【図4C】構築体pPNL6 L5−MG E52Dを示す図である。
【図4D−1】pPNL6 L5−MG E52Dの関連の部分(配列番号1および2)のヌクレオチド配列上にマッピングされたL5−MG E52Dをコードする構築体の領域を示す図である。
【図4D−2】pPNL6 L5−MG E52Dの関連の部分(配列番号1および2)のヌクレオチド配列上にマッピングされたL5−MG E52Dをコードする構築体の領域を示す図である。
【図5A】T−リンカーおよびトリポッド(Tripod)戦略に基づくダイドロンの合成。
【図5B】トリポッド(Tripod)戦略に基づくダイドロンの合成により、FRETの高効率を確実にするための小型の分子内間隙を有する単一の蛍光団のクエンチャーに連結している最高9個のドナーに対する合成経路が提供されることを示す図である。
【図5C】スペクトルの重複が不十分である蛍光体−ドナー対の場合、媒介する色素を有するカスケードデザインは、FRET効率を増強することを示す図である。
【図6A】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。TCM、テトラ−Cy3.29マラカイトグリーン。
【図6B】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。BCM、Bis−Cy3.29マラカイトグリーン。
【図6C】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。CM、Cy3.29マラカイトグリーン。
【図6D】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。M、マラカイトグリーンジエチレングリコールアミン。
【図7A】ダイドロン合成の概要を示す図である。Cy3−マラカイトグリーン(CM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図7B−1】ダイドロン合成の概要を示す図である。ビスCy3−マラカイトグリーン(BCM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図7B−2】ダイドロン合成の概要を示す図である。ビスCy3−マラカイトグリーン(BCM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図7C】ダイドロン合成の概要を示す図である。テトラCy3−マラカイトグリーン(TCM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図8】ダイドロン対の代表的なスペクトル特性を示す図である。Cy3−マラカイトグリーン対の励起および発光のスペクトル。太線は、最終的に活性化されたダイドロンから予想される、ドナーの励起および活性化された発光を示す。
【図9】フェルスターの移動モデル(Forster transfer model)に基づくいくつかの消光されたダイドロンの、エネルギー移動効率(上)およびEGFPの輝度に対する倍率(下)を算出したものを示す図である。
【図10】蛍光発生的なダイドロンの合成および蛍光モジュール開発のためのアクセプターの例を示す図である。
【図11】a)ダイドロン/L5−MG E52D複合体の蛍光と励起(発光710nm)を示す図である。蛍光は、648nmの励起ピークの蛍光の倍率として標準化して表される。b)ダイドロン/L5−MG E52D複合体の蛍光の相対値(励起514nm)を示す図である。スペクトルはMG励起ピークに対して標準化され、蛍光は680nmの蛍光の倍率として表される。相対的な発光は励起波長に感受性がある。
【図12A】本試験において用いたダイドロンが活性化するscFvのペプチド配列を提供する図である(配列番号3〜6)。ハイフンはコア配列を示す。
【図12B】本試験において用いたダイドロンが活性化するscFvに対するペプチド配列をさらに提供する図である(配列番号7〜9)。ハイフンはコア配列を示す。
【図13】定向進化によるTCM蛍光モジュールの改善を示す図である。
【図14】L5−MG E52Dを提示する酵母細胞表面の蛍光画像化を示す図である。酵母生細胞を、Zeiss510 MetaNLO共焦点顕微鏡上、微分干渉(DIC)を用いて、500nM TCMの存在下(a)、またはドナー(561/650−710BP)の蛍光(b)、またはアクセプター(633/650−710BP)(c)を励起/発光の設定で画像化した。添付の12ビットスキャンは、黄色線で表される細胞横断面の、定量シグナル/ノイズの特徴を定量化するものである。
【図15】ドナー(青色)またはアクセプター(赤色)を励起することによる、ダイドロンで標識した酵母のフローサイトメトリー解析を示す図である。その表面上にL5−MG E52Dを発現する出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)細胞を、本質的に特許文献1および非特許文献1に記載に従い分析した。染色した各集団のアリコート2つおよび非染色の対照(U)をそれぞれ、532nm(ドナー)または635nm(アクセプター)で励起し、675/50nm帯域(BP)フィルターを通して発光を収集して分析した。分析は各々、細胞100,000個を含んでいた。染色した試料はscFvをコードするプラスミド(そのシグナルは非染色の試料(細線によって印をつけた)のシグナルに相当する)を失っているために、無蛍光の細胞の亜集団を含んでいる。対照は、FAP無発現の細胞表面上にダイドロンによる蛍光は実質的に生成されないことを示している(表3)。波長が短いほど細胞の自己蛍光が高いため、532nmで励起した非染色の細胞は635nmで励起したものより比較的明るい。二重線の染色したピークは非出芽および出芽した酵母細胞に対応し、このような実験には典型的である。陰性の細胞から陽性の細胞を分離すると、635nmの励起下では本質的に一定のままであるが、532nmの励起下ではCy3ドナーの数に比例して増大する。ダイドロンにおける励起の増強は、フローサイトメーターにおける感度の上昇をもたらす。
【図16A】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52D 100nM TCM)
【図16B】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52DL91S 10nM TCM)
【図16C】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52DL91S 培地中 50nM TCM)
【図16D】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52DL91S 50nM TCM(PBS+))
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明における取組みを概略するものである。デンドロンは、規定された一定の数の分子で表面が装飾され得る、化学的に明確に定義されているナノ構造体である。典型的な高分子系とは異なり、デンドロンは分子的に単分散であり、どのデンドロンも、数および配列が同じ官能基を有している。さらに、Balzaniらによる研究は、単一の非共有性にホストされたエオジン分子(アクセプター)は、世代4(ダンシル分子32個)までの完全にダンシル修飾されたポリプロピレンイミンデンドロンの蛍光を消光することができることを実証している。この知見に基づき、非対称性デンドロンは、強力な吸収性の色素分子で周囲を装飾することによってアンテナ分子として作動するようにデザインすることができ、これらは単一の直接連結されている消光性の分子の量子収量を調整することによってスイッチの切換えができると論じられていた。活性化の方法は、多くの現在の「ビーコン(beacon)」センサーの取組みを思わせるものであるが、リンカーの切断に依存するものではない。
【0010】
これらのモジュールは、消光性部分に連結しているドナーアレイから形成される。ドナーアレイ、連結性ユニット、およびクエンチャーの性質を個々に特徴付け、最適化することができる。これらは、表面に複数のアミノ基および頭部に単一のスルフヒドリルを容易に与え、単一クエンチャー付加ダイドロンの調製を単純にするので、デンドロンを用いて標準の入手可能な色素分子を用いてダイドロンを形成することができる。しかし、ある範囲の極性を有し、ある範囲の電荷を有するアレイ骨格を調製するには、選ばれたモノマーが利用可能である(図2)。これらデンドロン骨格は、ティンカートイ(tinker-toys)(例えば、クリック化学)のように構築されて、最適のドナー色素の密度および配向を達成することができる。高度に蛍光性のドナーアレイが、アクセプターによる効率的な消光には大き過ぎる、またはスペクトル的に離れ過ぎている場合、中間体のアクセプター色素がデンドロンを頭部に含ませて、アレイから励起エネルギーを収集することができ、それをクエンチャー(アクセプター)の蛍光団に中継することができる。これら中間体のアクセプターのスペクトルの性質および空間の配向を操作して、特にマラカイトグリーンよりもさらに赤色にシフトした蛍光団によって、より良好な伝達およびストークスシフトをもたらすことができる(標的化の性質を図3に概略した)。
【0011】
以下の実施例に例示する通り、非蛍光有機色素分子に特異的であり、溶液中の遊離色素の存在下でタンパク質モジュールに結合している場合にのみこれらの色素を蛍光にする、単鎖可変フラグメント(scFv)分子が選択された。高親和性(低ナノモル)のクローンを用いると、この結合は多くの洗浄ステップを生き残るが、低親和性(マイクロモル)のクローンでは蛍光シグナルを維持するのに色素の存在が必要とされる。scFvモジュールは酵母ディスプレイライブラリーおよび他のディスプレイライブラリーにおいて入手可能であり、広範囲の分子およびタンパク質に特異的な結合パートナーを生成するのに用いられ得る。この遺伝的にコードされたシステムの1つの主要な利点は、選択された抗体を発現可能なタンパク質タグとして用いることができることである。これにより比較的小型のユニット(典型的には、「全体の」scFvに対して分子量約25kDa、または「単一ドメインの」scFvに対して11kDaほどの小ささ)が、細胞の状況において特異的なパートナーを有する融合タンパク質として発現されるが、scFvは、あらゆる効果的な手段によって細胞のタンパク質、リガンド、受容体、抗体などの特異的なパートナーに付着することができる。
【0012】
一実施形態において、本発明は単一の色素または蛍光タンパク質よりも5から140倍明るいシグナルを生成する、新しい生物学的プローブの戦略である。これらダイドロンは著しく赤色にシフトしているので、バックグラウンドに対するシグナルは少なくとも10倍さらに増強される。検出できる全体のシグナル対バックグラウンド比において、これらのプローブはこれまでの標識を100〜1000倍凌ぐ改善、および入手可能な最良のQDを5〜50倍凌ぐ改善を表す。これらのプローブは、発現されるは配列によって選択的に活性化され、その他の場合は暗いままであるので、これらには元来蛍光分子を悩ませた洗い流し、またはバックグラウンドの問題がなく、独立に選択された「特異的分子」(例えば、抗体)の性質によって制限されない。
【0013】
高強度のアーク放電ランプまたはレーザーからの照明に細胞を長時間曝露すると、細胞の生理を損傷することがあるため、吸光度の増強は用いられる励起出力を低減する助けとなるはずである。単一分子の研究は、光毒性効果なしにより長い時間尺度の画像を得るための赤色シフトした励起レーザーおよび励起源に依存する。スペクトルの青〜緑領域から離れると生物学的な発色団(自己蛍光)がないため、通則は「赤いほどよい」であるが、561nmのレーザーは生細胞に対して全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡における使用を獲得している。このレーザーは生細胞の動的測定に十分適しており、単一分子の実験に高いシグナル対ノイズ比を提供する。さらに、このレーザーはCy3およびAlexa568などの色素をかなり十分に励起し、これらのプローブは良好なエネルギー伝達ドナーであることが知られている。この理由から、プローブは561nmで励起し、650nmから800nmまでの近赤外波長において発光するようにデザインされている。
【0014】
本明細書に記載する通り、蛍光団ダイドロン化合物を、ダイドロン活性化複合体、ダイドロンアクチベーター、および関連の方法とともに提供する。ダイドロンは少なくとも2つのドナー(本明細書においてドナー部分とも呼ぶ)、1つまたは複数の活性化可能なアクセプター、および連結基を含んでいる。ダイドロン複合体は、ダイドロン、およびアクセプターのアクチベーターを含んでいる。ドナーの発光スペクトルはアクセプターの吸収スペクトルと重複して蛍光共鳴エネルギー伝達を達成する。ドナースペクトルとアクセプタースペクトルとが重複しない、または重複が不十分である場合、ドナーおよびアクセプターと重複するスペクトルを有するメディエータを用いてドナーとアクセプターとの間のスペクトルのギャップを架橋してもよい。アクチベーターによって非結合である場合、ダイドロンは波長の異なる蛍光を放つか、または、アクセプターにアクチベーターが結合している場合とは強度が異なる(好ましくは蛍光がより低い、取るに足らない、もしくは事実上蛍光がない)。
【0015】
ドナーは、ドナーとアクセプターとの間のスペクトルおよび/または距離のギャップを架橋するメディエータが適用可能である場合、アクセプターに対するFRETアクチベーターとして働くことができるあらゆる分子または基である。ドナーおよびアクセプターは、本明細書において独立の化学的実体(例えば、Cy3またはCy5)としばしば呼ばれるが、これらの部分は化合物に付着しており、「ドナー部分」および「アクセプター部分」とも呼ばれることが理解される。ドナーおよびアクセプターとして有用であると本明細書に記載する化合物は、よく知られている化学的方法にしたがって、あらゆる有用な手段によってダイドロンに付着していてよい。例えば、化合物は、下記の構造において示され、またはあらゆる様々な方法によってリンカーとして加えられ得るペンダントのカルボキシル基またはアミン基によってデンドロンまたは他のリンカーに連結していてよい。
【0016】
本明細書で用いられるドナーは、ダイドロン化合物の部分を形成する部分または基である。ドナーは、1タイプの分子(例えば、Cy3)または2つ以上のタイプのドナー(例えば、Cy3およびCy5)を含むことができる。2つ以上のドナーを組み合わせて、ダイドロンの発光スペクトルをドナーの吸収スペクトルから離れる方向へさらにシフトすることができる。一例において、カスケードの取組みを利用すると、第1のドナーは、その最大の波長でアクセプターの吸収スペクトルと重複しない、または重複が不十分である吸収スペクトルおよび発光スペクトルを有する。このような場合、第1のドナーの吸収スペクトル内の波長のダイドロンの照明がアクセプターによる発光をもたらすように、メディエータは第1のドナーの発光スペクトルと重複する吸収スペクトル、およびアクセプターの吸収スペクトルと重複する発光スペクトルを有する。
【0017】
特に、適切なドナーは完全に蛍光性である必要はなく、ドナーが励起されるときにアクチベーターの存在(例えば、アクチベーターによる結合)下、アクセプターが蛍光発光し、最大の程度まで蛍光発光し、または異なる波長で蛍光発光するようにアクセプターにエネルギーを効率的に伝達することができるだけでよい。適切なドナーの非限定的な例には、シアニン色素、フルオレセイン、ウンベリフェロン(クマリン化合物)、ピレン、レゾルフィン、ローダミン、ヒドロキシエステル、芳香族酸、スチリル色素、テトラメチルローダミン色素、オキサジン、チアジン、金属置換されているプタロシアニン(pthalocyanine)およびポルフィリン、ならびに多環芳香族色素、例えば、ペリレンジイミン(perylenediimide)誘導体が含まれる。代替には、Molecular ProbesからのAlexa Dye(スルホン化されたクマリン、ローダミン、キサンテン(例えば、フルオレセイン)およびシアニン色素)、AnaSpecからのHiLyte Fluors、Pierce(Thermo Fisher Scientific)からのDyLight Fluors、ならびにATTO−TECおよびSigma−Aldrichから入手可能であるATTO Dyeシリーズが含まれる。ダイドロンにおいて用いるのに適するFRET対または群の非制限的な例には、(ドナーの次にアクセプター、または適用できる場合にはドナー、メディエータ、およびアクセプターの順序で列挙して)Cy3およびMG;Cy3およびアセチレン性MG;Cy3、Cy5、およびMG;Cy3およびDIR;Cy3およびCy5およびICGが含まれる。
【0018】
ドナーは蛍光性である必要はない。例えば、近位のアクセプターへの分子内エネルギーの伝達を可能にするのに十分、励起状態の寿命が長いのであれば、ドナーは、アゾ色素、または量子収量が非常に低い、ニトロ修飾された色素であってよく、その多くは市販されている。
【0019】
アクセプターは、環境の変化に反応して、すなわちアクチベーターが結合することによって、それ自体「活性化可能である」とみなされる、検出可能なシグナルの変化を生成するあらゆる分子であってよい。同様に、アクセプターは活性化可能であるので、ダイドロンは活性化可能であるとみなされる。例えば、シグナルの変化はシグナル強度における増大もしくは低減であってよく、または生成されるシグナルのタイプにおける変化(例えば、ダイドロンの発光の波長におけるシフト)であってよい。例えば、適切なレポーターには、光学的に検出可能なシグナルを生成する分子、例えば、蛍光性の、および化学発光性の分子が含まれる。ある実施形態において、レポーター分子は、組織試料を通したレポーターシグナルの検出、例えば、in vivoの応用と結びついたレポーターの非侵襲性の検出を可能にする長波長蛍光分子である。
【0020】
ある実施形態によると、アクセプターは、モノメチン基などによって架橋されている芳香環および/またはヘテロ芳香環を含む非強化の芳香族系である。
【0021】
アクセプターは、アクチベーターとの相互作用時にスペクトルまたは蛍光強度の変化を示す、pH感受性の蛍光色素(pHセンサー色素)であってよい。アクチベーターのアクセプターとの相互作用は、アクチベーター上の酸性残基および塩基性残基の組成により、アクセプター周囲の微小環境のpHにおけるシフトをもたらすことがある。次に、pH微小環境におけるシフトは、アクチベーターに会合しているpH感受性蛍光色素分子のシグナルにおける検出可能なスペクトルまたは蛍光強度の変化をもたらす。例示の実施形態において、pH感受性の色素は、アクチベーターに結合したときに最適なスペクトルの変化をもたらす好適なpKaで選択される。において用いるのに適する様々なpH感受性の色素が市販されている。例示の実施形態において、pH感受性の色素には、例えば、フルオレセイン、ウンベリフェロン(クマリン化合物)、ピレン、レゾルフィン、ヒドロキシエステル、芳香族酸、スチリル色素、テトラメチルローダミン色素、およびシアニン色素、ならびにこれらのpH感受性の誘導体が含まれる。
【0022】
アクセプターは、アクチベーターと相互作用したときにスペクトルの変化を示す、極性感受性の蛍光色素(極性センサー色素)であってよい。アクチベーターの標的分子との相互作用は、アクチベーター上の極性残基および/または非極性残基の組成により、アクセプター周囲の微小環境の極性におけるシフトをもたらすことがある。次に、微小環境の極性における変化は、アクチベーターに会合している極性感受性の蛍光色素分子のシグナルにおける検出可能なスペクトルの変化をもたらす。使用に適する様々な極性感受性の色素が市販されている。例示の実施形態において、極性感受性の色素には、例えば、メロシアニン色素、5−((((2−インドアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸(1,5−IAEDANS)、およびCPM、ならびにメロシアニン色素の極性感受性の誘導体である、IAEDANS、およびCPMが含まれる。
【0023】
アクセプターは、局所環境の微小粘度における変化に感受性がある蛍光色素であってよい(制限センサー色素)。アクチベーターのアクセプターとの相互作用は、アクセプター周囲の局所環境における微小粘度における変化をもたらすことがある。次に、微小粘度における変化は、アクチベーターに会合している移動性のセンサー色素分子のシグナルにおける検出可能なスペクトルの変化をもたらすことがある。例えば、標的に結合したときの微小粘度の増大は、色素を制限し、発光される蛍光シグナルの量子収量を増大する。使用に適する様々な制限センサー色素が市販されている。例示の実施形態において、制限センサー色素には、例えば、モノメチン(monomethin)およびトリメチンシアニン(trimethine cyanine)色素、ならびにモノメチンおよびトリメチンシアニン色素の微小粘度に感受性がある誘導体が含まれる。
【0024】
ある実施形態において、アクセプターは、アクチベーターに特異的に結合したときにそのスペクトルの性質における変化を表す色素である。核酸、例えば、アプタマーを、このような色素、例えば、マラカイトグリーンに特異的に結合するようにデザインしてもよい(非特許文献2を参照されたい)。このような色素は、これらに特異的である核酸またはタンパク質との複合体における場合、これらのスペクトルの性質を変える。例えば、マラカイトグリーンおよびその類似体は、通常蛍光性ではないが、それに特異的なscFvに結合すると強力に蛍光性になる。多くのジ−およびトリ−アリールメチン類似体が、本明細書に記載するアクセプターおよびFAPバインダーの優れた候補物質である。多くのジ−およびトリ−アリールメチンが調製されており、非特許文献3によって再考されている。他に記載されているが合成されるべきある種のこれらの非架橋のジ−およびトリ−アリールメチン色素、および類似の色素が、本明細書に記載する目標にしたがって適切に修飾されると、ダイドロンにおける優れたアクセプター色素構造を提供すると考えられる。
【0025】
マラカイトグリーン(I)およびフェノールフタレイン(II)の類似体を、代表として下記に示す。
【0026】
【化1】
【0027】
(1)光の吸収および蛍光の波長、(2)アクセプター色素の活性化の程度、ダイドロンの水溶性、(3)ダイドロンの細胞成分に対する非特異的な結合、ならびに(4)生体膜を横切るダイドロンの能力または無力を制御するために、マラカイトグリーン類似体のR1〜R4基は、ダイドロンの発達中に修飾されるのが好ましいことがある。R5基は、マラカイトグリーンおよびフェノールフタレインのクラスのトリアリールメチン色素におけるのと同様、置換されているアリール基であってよい。ジアリールメチン色素のR5基は、記載したばかりの目標を遂行する、いくつかの他の化学的置換基であってよく、さらにドナー色素の、ダイドロンのエネルギー受容部位に対する連結のための部位を提供する。色素の光の吸収および発光系を担う共鳴電荷非局在化系を変更しない他の非フェノール基または非アミノ基は、上記の目標を達成するためにアリール環上のジ−およびトリアリールメチン構造に置換していてよい。これらの基は、以下「T」として列挙する1つまたは複数の原子または基から選択されてよい。上記の目標に有用であり得るR1〜R4基の例は、−H、−CH3、(CH2)n−T、および置換されているアリールであり、置換基は、以下「T」として列挙する原子または基から選択され、n=0〜6である。これらの構造において「T」は、−H、−OH、COO−、SO3-、−PO4-、アミド、ハロゲン、置換されている単一もしくは複数のアリール、エーテル、ポリエーテル、PEGn(n=1〜30)、N、S、もしくはO原子を含む複素環、置換されているアセチレン基、シアノ、および炭水化物基から選択されてよい。本発明の一実施形態において、R1〜R4の1つは、ドナー色素に付着しているリンカーを含んでいる。
【0028】
トリアリールメチン色素に対するR5基の例を以下に列挙し、置換基は上記「T」の下に列挙したものから選択することができる。存在する場合、ヘテロ原子、X、およびYは、N、O、S、Se、およびC(CH3)2から選択することができる。本発明の一実施形態において、置換基の1つはドナー色素に付着しているリンカーである。
【0029】
【化2】
【0030】
ジアリールメチン(diarylmethine)アクセプター色素に対するR5基の例は、上記「T」の下に列挙したものから選択することができる。本発明の好ましい一実施形態において、置換基の1つは、ドナー色素に付着しているリンカーである。
【0031】
光の吸収および発光系を担う共鳴電荷非局在化系の末端成分である窒素または酸素分子がインタクトのままである限り、ジおよびトリアリールメチン色素はさらなる縮合環を含むこともできる。これらの縮合環化合物は、望ましい方向でアクセプターの吸収および発光の波長を調節するのに有用であり得る。置換基が上記「T」の列挙から選択される簡単な一例を以下に示す。
【0032】
【化3】
【0033】
以下は、モノメチンである、またはさらなるメチン基を含んでいる、置換されているシアニン、メロシアニン(merocyanines)、スチリル、およびオキソノール色素を含むシアニン色素ファミリーのメンバーである。一実施形態によると、アクセプターはジアリールメチン(diarylmethine)またはトリアリールメチン(triarylmethine)である。例えば、アクセプターは以下の構造を有し、
【0034】
【化4】
【0035】
式中、R1は、芳香族、ヘテロ芳香族、ヒドロキシル、アミノ、N−アルキル、N−アルカノリル(alkanolyl)(アルコール、例えば、N−ヒドロキシエチル)であり、R2は、H、シアノ、芳香族、ヘテロ芳香族、アセチレン、アルキルであり、Xは、N、O、またはSであり、R3およびR4は、アルキル、アリール、もしくはヒドロキシエチルである。アクセプターは、典型的に、R2によってリンカー/デンドロンに付着している。ある実施形態において、R1はC1~3ジ−アルキルアミノ、例えば、−N−(CH3)2であり、R2は、アミノまたは置換されているアミノ基などで置換されている、置換されているフェニルアセチレン、例えば、−N−(CH3)2;−N−(CH3)((CH2)nO(CH2)mCOOH)であり、式中、nおよびmは独立に、1、2、3、もしくは4であり、または−N−(CH3)((CH2)2O(CH2)3COOH)、フェニル、−N−アルキル置換されているフェニル、−O−(CH2)nR5置換されているフェニルであり、式中、nは1〜5であり、R5はカルボキシルまたはアミノであり、R3およびR4は独立に、C1~3アルキル、アルコキシル、アルカノイル(alkanolyl)、フェニル、C1~3アルキル置換されているフェニルである。一実施形態において、R1は−N−(CH3)2であり、R2は、−O(CH2)3R5−置換されているフェニルおよび
【0036】
【化5】
【0037】
の1つであり、かつ/またはR3およびR4はCH3である。アクセプターはダイドロンにR1〜R4のいずれか1つを介して付着している。
【0038】
他の実施形態において、アクセプターは、
【0039】
【化6】
【0040】
の1つの、リンカーが修飾する誘導体である。
【0041】
ある実施形態において、アクセプターは、構造IV、V、およびVI:
【0042】
【化7】
【0043】
によって表され、式中、曲線は、1個の環、2個の縮合環、および3個の縮合環から選択される構造を完成するのに必要な原子を表し、前記環の各々は5個または6個の原子を有し、前記環の各々は、炭素原子、および任意選択的に、酸素、窒素、およびイオウから選択される2個を超えない原子を有し、Dは、存在する場合には、
【0044】
【化8】
【0045】
であり、mは1、2、3、または4であり、シアニン、オキソノール、およびチアゾールオレンジに対してmは0であってよく、XおよびYは独立に、O、S3、および−C(CH3)2−からなる群から選択され、R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7の少なくとも1つは、水溶性および非特異性の結合を制御する部分、レポーター分子が膜を介して細胞に侵入するのを防ぐ部分、任意選択的にリンカー、ビオチンハプテン、His−タグを含む群、または選択の実体を単離するプロセスを促進する他の部分からなる群から選択され、蛍光標識は、場合により、リンカー、光反応性基、または反応性基(例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン(monochlorotriazine)、ジクロロトリアジン(dichlorotriazine)、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているピリジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているジアジン、ホスホラミダイト、マレイムニド(maleimnide)、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル(hydroxysuccinimide ester)、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(hydroxysulfosuccinimide ester)、イミドエステル、ヒドラジン、アキシドニトロフェニル(axidonitrophenyl)、アジ化物、3−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオナミド(proprionamide)、グリオキサール、ハロアセトアミド(haloacetamido)、またはアルデヒドを含む群)を含み、R1およびR2は、−CHR8−CHRs−、または−BF2−ビラジカルによって連結されていてよいことをさらに提供し、この場合、R8は、各出現に対して独立に、水素、アミノ、4級アミノ、アルデヒド、アリール、ヒドロキシル、ホスホリル、スルフヒドリル、水溶性基、炭素原子26個以下のアルキル基、脂溶性基、炭化水素可溶性基、極性溶媒中の可溶性を促進する基、非極性溶媒中の可溶性を促進する基、およびE−Fからなる群から選択され、またR1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7のいずれかは、ハロ(halo)、ニトロ、シアン、−CO2アルキル、−CO2H、−CO2アリール、NO2、もしくはアルコキシで置換されていてよいことをさらに提供し、この場合、
Fは、ヒドロキシ、保護されているヒドロキシ、アルコキシ、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、および低級アルキル置換されているアミノまたは4級アミノからなる群から選択され、
Eは、式−(CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)であり、
あるいは、Eは、式−(CH2−O−CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)である。
【0046】
他の実施形態において、構造IV、V、およびVIにおいてm=0である場合、以下の一般構造VII、VIII、およびIXが与えられ、
【0047】
【化9】
【0048】
式中、曲線は、1個の環、2個の縮合環、および3個の縮合環から選択される構造を完成するのに必要な原子を表し、前記環の各々は5個または6個の原子を有し、前記環の各々は、炭素原子、および任意選択で、酸素、窒素、およびイオウから選択される2個を超えない原子を含み、Dは、存在する場合には、
【0049】
【化10】
【0050】
であり、XおよびYは独立に、O、S、および−C(CH3)2−からなる群から選択され、R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7の少なくとも1つは、水溶性および非特異性の結合を制御する部分、レポーター分子が膜を介して細胞に侵入するのを防ぐ部分、場合により、リンカー、ビオチン、ハプテン、His−タグを含む群、または選択の実体を単離するプロセスを促進する他の部分からなる群から選択され、蛍光標識は、場合により、リンカー、光反応性基、または反応性基(例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているピリジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているジアジン、ホスホラミダイト、マレイムニド(maleimnide)、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アキシドニトロフェニル、アジ化物、3−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオナミド、グリオキサール、ハロアセトアミド、またはアルデヒドを含む群)を含み、R1およびR2は、−CHR8−CHRs−、または−BF2−ビラジカルによって連結されていてよいことをさらに提供し、
この場合、R8は、各々の出現に対して独立に、水素、アミノ、4級アミノ、アルデヒド、アリール、ヒドロキシル、ホスホリル、スルフヒドリル、水溶性基、炭素原子26個以下のアルキル基、脂質可溶性基、炭化水素可溶性基、極性溶媒中の可溶性を促進する基、非極性溶媒中の可溶性を促進する基、およびE−Fからなる群から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7のいずれかは、ハロ(halo)、ニトロ、シアン、−CO2アルキル、−CO2H、−CO2アリール、NO2、もしくはアルコキシで置換されていてよいことをさらに提供し、
Fは、ヒドロキシ、保護されているヒドロキシ、アルコキシ、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、および低級アルキル置換されているアミノ、または4級アミノからなる群から選択され、
Eは、式−(CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)であり、
あるいは、Eは、式−(CH2−O−CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)である。
【0051】
以下は、構造IV、V、およびVIによるレポーター分子のより具体的な例である。
【0052】
【化11】
【0053】
これらの構造において、XおよびYは、O、S、および−CH(CH3)2−からなる群から選択され、Zは、OおよびSからなる群から選択され、mは、0、1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり、好ましくは1〜3の整数である。上記の式において、メチン基の数が励起色を部分的に決定する。
【0054】
環状アジン構造もまた、励起色を部分的に決定し得る。しばしば、mの値が大きければ、ルミネセンス(発光)および吸収の増大に寄与する。mの値が4を超えると、化合物は不安定になる。その結果、環状構造を修飾することによってさらなる発光が得られ得る。m=2のとき、励起波長は約650nmであり、化合物は非常に蛍光性である。最大発光波長は、通常、最大励起波長よりも15〜100nm大きい。
【0055】
本発明のルミネセンス(発光)色素のポリメチン鎖は、ポリメチン鎖の2つ以上の炭素原子の間に架橋を形成する1つまたは複数の環状化学基も含むことができる。これらの架橋は、色素の化学的または光安定性を増大するように働くことがあり、色素の吸収および発光の波長を変更するのに、または吸光係数もしくは量子収率を変えるのに用いられ得る。この修飾によって、溶解性の性質の改善が得られることがある。
【0056】
様々な実施形態において、アクセプターとアクチベーターとの、場合により標的分子が選択性成分と相互作用するときのアクセプター色素の変化は、例えば、吸収波長のシフト、発光波長のシフト、量子収量率の変化、色素分子の極性の変化、および/または蛍光強度の変化を含むことができる。変化は、2倍、10倍、100倍、1000倍、またはさらに高くてもよい。所与のアクセプターに関連するスペクトルの変化を検出するのに適するあらゆる方法を用いることができ、センサー色素のスペクトルの変化を検出するのに適する機器には、例えば、蛍光分光計、フィルター蛍光光度計、マイクロアレイリーダー、光ファイバーセンサーリーダー、落射蛍光顕微鏡、共焦点レーザースキャニング(走査)顕微鏡、2光子励起顕微鏡、およびフローサイトメーターが含まれる。
【0057】
アクチベーターは選択性成分と会合していてよい。例えば、アクセプターは、選択性成分に共有結合的に付着していてよい。アクチベーターは、標準の技術を用いて選択性成分に共有結合的に付着していてよい。例えば、アクチベーターは、2個の分子上の1つまたは複数の反応基間に化学結合を形成することによって、選択性成分に直接付着していてよい。例えば、アクチベーター上のチオール反応基が、選択性成分上のシステイン残基(または他のチオール含有分子)に結合している。あるいは、アクチベーターは、選択性成分上のアミノ基を介して選択性成分に結合していてよい。別の実施形態において、アクチベーターおよび選択性成分は、近接する融合タンパク質上に提示される。他の実施形態において、アクチベーターは、リンカー基を介して選択性成分に結合していてよい。適切なリンカーには、例えば、化学基、アミノ酸または2つ以上のアミノ酸の鎖、ヌクレオチドまたは2つ以上のヌクレオチドの鎖、ポリマー鎖、および多糖類が含まれる。一例において、アクチベーターは、マレイミド部分を有するリンカーを用いて選択性成分に付着している。リンカーは、ホモ官能性(同じタイプの反応基を含む)、ヘテロ官能性(異なる反応基を含む)、または光反応性(照射時に反応性になる基を含む)であってよい。ニトレンファミリーにおける基など、様々な光反応性基が知られている。
【0058】
1つまたは複数のアクチベーターが、選択性成分上の1つまたは複数の位置に付着していてよい。例えば、同じアクチベーターの2つ以上の分子が、単一の選択性成分分子上の異なる位置に付着していてよい。あるいは、2つ以上の異なるアクチベーターが、単一の選択性成分の分子上の異なる位置に結合していてよい。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを超えるアクチベーターが、選択性成分上の異なる部位に付着している。1つまたは複数のアクチベーターが、アクチベーターおよび選択性成分の活性を維持するように選択性成分に結合していてよい。
【0059】
ある実施形態において、アクチベーターは選択性成分に特異的である部分をさらに含んでいる。例えば、アクチベーターは、選択性成分に特異的である、基質、ハプテン、抗体フラグメント、または他の結合試薬などに連結していてよい。アクチベーターは、標準の技術を用いて部分に共有結合的に付着していてよい。ある実施形態において、アクチベーターは、2個の分子上の1つまたは複数の反応性基間に化学結合を形成することによって、部分に直接付着していてよい。他の実施形態において、アクチベーターは、リンカー基を介して部分に付着していてよい。適切なリンカーには、例えば、化学基、アミノ酸または2つ以上のアミノ酸の鎖、ヌクレオチドまたは2つ以上のポリヌクレオチドの鎖、ポリマー鎖、および多糖類が含まれる。リンカーは、ホモ官能性(同じタイプの反応基を含む)、ヘテロ官能性(異なる反応基を含む)、または光反応性(照射時に反応性になる基を含む)であってよい。
【0060】
ドナーおよびアクセプターは、典型的に、少なくとも3個の分枝、2つ以上のドナーについては少なくとも2個、およびアクセプターについては少なくとも1個を有するリンカーによって接続されている。リンカーは、多分散度の低いもしくは単分散性(PD=1)のデンドロンであってよく、または分枝もしくはスターグループ(star group)もしくはポリマーであってよい。スターポリマー(星型高分子)は、フリーラジカル法、好ましくは、低多分散に対してリビングラジカル重合法、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)を含めた標準の重合法によって調製することができる。アクセプターの効率的な活性化、および生成物の機能における一貫性を含めた多くの理由から、連結基は構造の規定されたデンドロンであるのが多くの場合において好ましい。一実施形態において、連結基はデンドロン、例えば、PAMAM、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリプロピレンイミン(PPI)デンドロンである。他のデンドロンには、Newkomeデンドロン、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bis−MPA)、およびポリフェニレンデンドロンが含まれる。多くのデンドロンが市販されており、これらの合成化学は十分に特徴付けられている。デンドロンは、小型ユニットを繰り返し付加することを伴う「クリック化学」によって調製され得る。デンドロンは分岐的に、すなわち、インサイドアウト(inside out)から、またはアウトサイドイン(outside in)から構築することができる。
【0061】
PAMAMデンドロンでは、例えば、コア分子としてアンモニアまたはエチレンジイミンが用いられる。メタノールの存在下、これをアクリル酸メチルと反応させ、次いでエチレンジイミンを加える。
NH3+3CH2CHCOOCH3→N(CH2CH2COOCH3)3(1)
N(CH2CH2COOCH3)3+3NH2CH2CH2NH2→N(CH2CH2CONHCH2CH2NH2)3+3CH3OH(2)
各分枝の末端に、2つのアクリル酸メチルモノマーおよび2つのエチレンジアミン分子と反応することができる遊離アミノ基が存在する。各々の完全な反応順序により、新しいデンドロンの生成がもたらされる。半世代のPAMAMデンドロン(例えば、0.5、1.5、2.5)は、カルボキシレート基の陰イオン表面を有する。反応性表面部位の数は、世代ごとに2倍になる。例えば、ポリ(プロピレンイミン)デンドロンに対して、ブチレンジアミン(butylenediamine;BDA)をコア分子として用いることができる。繰り返しの反応順序は、1級アミノ基へのアクリロニトリルのMichael添加、およびその後ニトリル基の1級アミノ基への水素付加を伴う(例えば、非特許文献4を参照されたい)。
【0062】
PAMAMデンドロンは、下記に示す通りに合成され得る。PAMAMから形成されたデンドロンの材料は、Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouriから市販されている(例えば、1級アミノ基4個を有する世代0、1級アミノ基8個を有する世代1、1級アミノ基16個を有する世代2、1級アミノ基32個を有する世代3、および1級アミノ基64個を有する世代4)。ポリプロピレンイミンから形成されたデンドロンの材料は、Aldrich Chemicalから「DAB−AM」の商標名の下で市販されている。例えば、DAB−Am−4は1級アミノ基4個を有する世代1のポリプロピレンイミンテトラアミン(polypropylenimine)デンドロンであり、DAB−Am−8は1級アミノ基8個を有する世代2のポリプロピレンイミンオクタアミン(polypropylenimine octaamine)デンドロンであり、DAB−Am−16は1級アミノ基16個を有する世代3のポリプロピレンイミンヘキサデカアミン(polypropylenimine hexadecaamine)デンドロンであり、DAB−Am−32は1級アミノ基32個を有する世代4のポリプロピレンイミンドトリアコンタアミン(polypropylenimine dotriacontaamine)デンドロンであり、DAB−Am−64は1級アミノ基64個を有する世代5のポリプロピレンイミンテトラヘキサコンタアミン(polypropylenimine tetrahexacontaamine)デンドロンである。2,2−ビス(ヒドロキシル−メチル)プロピオン酸(MPA)から形成されるデンドロンの材料も、Sigma Aldrichから入手可能である。他の市販の供給源には、数ある中で、Mount Pleasant、MichiganのDendritic Nanotechnologies,Inc.、Midland、MichiganのDendritech、Inc.、およびNacka、SwedenのPolymer Factoryが含まれる。
【0063】
一例において、ダイドロン合成において有用なデンドロンは、デンドロンが別々の部分(例えば、半分)に分割することができるように、分割可能なコアを含んでいる。このようなデンドロンの一例は、システアミンコアPAMAMデンドリマーである。一例において、得られたデンドロンの末端は、それに対してドナーが付着することができる2つ以上の活性基を含んでおり、「頭部」は、それに対してアクセプターが付着することができる異なる活性基を含んでいる。これにより、単一のアクセプターに連結している2つ以上のドナーを含むダイドロンの別々の官能性および容易な調製が可能となる。
【0064】
本明細書に記載するダイドロン系のアクチベーター成分は、アクセプターとあらゆる方法で相互作用して(例えば、アクセプターを結合することによって)アクセプターを蛍光性にし、ますます蛍光性にし、かつ/またはダイドロンの吸収スペクトル(典型的に、ドナーの吸収スペクトル)内の照明に反応してその発光スペクトルをシフトする、結合試薬、結合パートナー、リガンド、FAPなどである。好適には、アクチベーターのアクセプターへの結合の非存在、アクセプターは蛍光発光せず、または非現実的には検出波長で蛍光発光する。アクセプターは別の波長では蛍光発光することがあるが、検出波長で蛍光の検出を妨害する方法で、または検出波長で蛍光の検出を本質的に妨害する方法で蛍光発光してはならない。アクチベーターによるアクセプターの結合の非存在下では低レベルの蛍光が存在することがあるが、アクチベーターがアクセプターに結合している場合はバックグラウンドの蛍光は得られた蛍光のレベルよりはるかに低くなければならないことを認識しなければならない。アクチベーターが結合したダイドロンの、アクチベーターが非結合のダイドリマー(dydrimer)に対する蛍光における「増幅率」は、少なくとも100倍、1000倍、10,000倍、またはさらに大きいのが好ましい。最適の一実施形態において、アクセプターは、アクチベーターが結合していない場合は蛍光発光せず、または実世界においてより可能性がある通り、アクチベーターが結合していなければ実質的に蛍光発光しない。実際の使用において、あるレベルのバックグラウンドの蛍光が存在するが、実質的でないのが好ましい。
【0065】
本明細書の実施例に記載する通り、アクチベーターの非限定的な一実施形態は、所与の刺激波長および強度でアクセプターの蛍光を増大するように、蛍光団および/またはダイドロン化合物に結合するあらゆる有用な手段によって生成されるペプチドである、FAP(蛍光団が活性化するペプチド)である。実施例に記載する通り、FAPの一実施形態は、酵母細胞表面ディスプレイライブラリーから得られ、蛍光発光するようにアクセプターを活性化するscFvフラグメントである。酵母ディスプレイライブラリーの使用、およびFAPを発現する特異的なクローンの同定は、特異的なクローンが所与のダイドロン系におけるより望ましい活性を有する誘導体を生成する定向進化を許す。その一例を、親のscFv L5−MG、ならびに進化した誘導体であるFAP L5−MG E52D、L5−MG L91S、およびL5−MG E52D L91Sに関して以下に記載する。
【0066】
当業者には容易に明らかである通り、適切なアクチベーターを生成するための方法は多数存在する。考えを証明するものとして本明細書に示す通り、酵母ディスプレイライブラリーを用いた選択および進化は、有用なFAPを生成するための効果的な機序である。アクチベーターはペプチドであり得ることは明らかでなければならないが、核酸およびその誘導体、例えばアプタマーなどの他の分子であってもよい。小分子、天然分子、合成分子などのライブラリーなどの分子ライブラリーも、ダイドロンを単に化合物に曝露し、本明細書に記載する通り化合物がダイドロンを効率的に活性化できるか否かを決定することによって、アクセプターの活性化に対して容易にスクリーニングすることもできる。ダイドロンを、ランダムポリペプチドのライブラリーに対して、またはscFvフラグメントもしくは他の抗体フラグメントなどの結合性の物質のライブラリーに対してスクリーニングしてもよい。細菌、酵母、ファージなどによって発現される、タンパク質/ペプチドのフラグメントまたはアプタマーの発現ライブラリーを、コロニーの蛍光、蛍光標示式細胞分取器(FACS)、または表面結合性ダイドロンの親和性およびその後の保持されているファージ、細胞などの増幅によってスクリーニングすることができる。ディスプレイ/発現ライブラリーの増殖、増幅、選別、変異はよく知られている。多くの市販のディスプレイ/発現ライブラリーが入手可能であり、その使用は当業者の範囲内に十分ある。
【0067】
その全文が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1は、L5−MG FAPの調製だけではなく、それによってアクチベーター(特許文献1において記載されている選択性化合物)が選択され、評価され、用いられる多数の他の方法を詳しく記載している。その参照において、Pacific Northwest National Laboratoryから得た、組換えヒトscFvの酵母細胞表面ディスプレイライブラリーが得られ、FACSの1つまたは複数のラウンドによって初めにクローンが選別され、所望の蛍光団を活性化する細胞を単離した。後に、FACSでスクリーニングされた細胞を、親和性選択またはさらなる細胞選別によってさらに濃縮した。
【0068】
アクチベーターは、アクセプターと選択的に相互作用してアクセプター/ダイドロンに蛍光を発生させ、または蛍光を増大させることができるあらゆる分子であってよい。アクチベーターの非制限的な例には、ポリペプチド、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、cDNA分子もしくはゲノムのDNAフラグメント)、炭水化物、または他の適切な有機分子もしくは無機分子が含まれる。
【0069】
アクチベーターは、細胞または生物体の1つまたは複数の成分に結合し、それらと相互作用し、またはそれらを複製する選択性成分を含んでいてもよく、または結合していてもよい。選択性成分の非制限的な例には、タンパク質もしくはポリペプチド、抗体もしくは他の結合性物質、ならびにアプタマー、リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニスト、代謝産物もしくは化学的部分、核酸(例えば、DNA、RNAなど)、細胞、微生物(例えば、細菌、真菌、およびウイルス)、ホルモン、受容体、サイトカイン、薬物分子、炭水化物、駆除剤、色素、アミノ酸、有機小分子もしくは無機小分子、または脂質が含まれる。選択性成分のための好適例示の標的分子には、例えば、成長因子、サイトカイン、形態形成因子、神経伝達物質などの調節性分子を含めた、組織の分化および/または成長、細胞間コミュニケーション、細胞分裂、細胞の運動性、および細胞内もしくは細胞間で起こる他の細胞の機能に関与する分子が含まれる。ある実施形態において、標的分子は、骨形成タンパク質、インスリン様成長因子(IGF)、ならびに/またはhedgehogおよびWntポリペプチドファミリーのメンバーであってよい。選択性成分の他の例には、パスウェイおよびネットワークタンパク質(例えば、キナーゼもしくはホスファターゼなどの酵素)、抗体フラグメント、抗体以外の受容体分子、アプタマー、テンプレートインプリンテッド材料(template imprinted material)、ならびに有機または無機の結合性エレメントが含まれる。限られた交差反応性を有する選択性成分が一般的に好ましい。
【0070】
アクチベーターおよび選択性成分は、融合(キメラ)タンパク質、または単官能性成分の組合せなど、二官能性化合物、例えば、アクチベーターが連結基によって選択性成分に連結している架橋結合成物の部分であってよい。アクチベーターおよび選択性成分は、二官能性のキメラタンパク質、連結されている2つのscFvフラグメント、またはタンパク質、抗体、もしくは他のポリペプチドに連結しているscFvアクチベーターの場合におけるように、類似の化学的実体であってよい。これらはまた、アクチベーターがscFvフラグメントなどのポリペプチドであり、選択性成分が、アプタマー、テンプレートインプリンテッド材料、代謝産物、脂質、多糖、ビリオンなどの核酸である場合におけるように、異なる化学的実体であってもよい。
【0071】
ある実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は、抗体または抗体フラグメントである。例えば、アクチベーターは、モノクローナル抗体、またはその誘導体もしくは類似体であってよく、制限なく、Fvフラグメント、単鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、camelized抗体および抗体フラグメント、ヒト化抗体および抗体フラグメント、ならびに前述の多価バージョンを含み、多価アクチベーターは、制限なく、単一特異性または二特異性抗体、例えば、ジスルフィド安定化したFvフラグメント、scFvタンデム((scFv))2フラグメント);典型的に共有結合的に連結している、または別の方法で安定化されている(すなわち、ロイシンジッパー、もしくはヘリックス安定化されている)scFvフラグメントである、ダイアボディ、トリボディ、またはテトラボディ;所望の標的分子と天然に相互作用する受容体分子を含む。
【0072】
一実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は抗体である。抗体の調製は、モノクローナル抗体を産生するためのあらゆる数のよく知られている方法によって遂行されてよい。これらの方法は、動物、典型的にはマウスを、所望の免疫原(例えば、所望の標的分子、またはそのフラグメント)で免疫化するステップを典型的に含む。マウスを免疫化したら、所望の(1つもしくは複数の)免疫原で1回または複数回追加免疫するのが好ましく、モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを調製し、よく知られている方法にしたがってスクリーニングしてもよい(モノクローナル抗体生成の一般的な概要には、例えば、非特許文献5を参照されたい)。
【0073】
抗体および他の結合試薬の生成はとりわけ強固となっている。抗体認識とファージディスプレイ技術とを組み合わせたin vitroの方法により、非常に特異的な結合能力で、抗体または他の結合試薬の増幅および選択が可能となる。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、非特許文献6を参照されたい。これらの方法は、典型的に、伝統的なモノクローナル抗体調製方法によるハイブリドーマの調製よりも煩雑さが相当低い。結合性のエピトープは、ブロモウリジンおよびリン酸化チロシンなどの小型有機化合物から、長さ約7〜9個のアミノ酸のオリゴペプチドまでのサイズの範囲であってよい。
【0074】
別の実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は、抗体フラグメントであってよい。抗体フラグメントの選択および調製は、あらゆる数々のよく知られている方法によって遂行することができる。ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、mRNAディスプレイ、およびリボソームディスプレイの方法を利用して同定してもよく、クローム(clome)が望まれる技術を用いて、所望の標的分子に特異的である抗体フラグメントアクチベーターを生成してもよい(例えば、Fabフラグメント、VH−VL対を安定化するための構築された分子間ジスルフィド結合を有するFvs、scFv、またはディアボディフラグメントを含む)。
【0075】
ある実施形態において、アクチベーターは、配列番号3〜9のポリペプチド配列のいずれかに、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含んでいる(図12Aおよび12B)。アクチベーターを生成するためのベクターを、下記、および特許文献1に記載する通りに、配列番号3または他のアクチベーター配列(配列番号4〜9)のポリペプチドをコードする核酸を、pPNL6プラスミドの隣接するHAとc−mycエピトープおよびそのホモログ(例えば、図4における配列番号4)との間のフレーム中に挿入し、本明細書および特許文献1に記載する通り、宿主細胞にトランスフェクトするために用いて調製してもよい。
【0076】
ファージ、細菌、酵母、リボソーム、およびmRNAのディスプレイ方法を含めたディスプレイ方法を用いたscFv抗体フラグメントの生成を用いて、本明細書に記載する、アクチベーターおよび/または選択性成分を生成することができる。下記の通り、酵母ディスプレイ方法を用いて、下記のアクチベーターを生成した。酵母ディスプレイ方法は、例えば、非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9に記載されている。
【0077】
リボソームディスプレイも、アクチベーターおよび/または選択性成分を生成するのに有用な方法である。リボソームディスプレイは、所望のリガンドに結合することができるタンパク質を作製するためのin vitroのタンパク質の進化を行うのに用いられる技術である。このプロセスにより、選択ステップにおいて固定化リガンドに結合し、複合体として、これらのmRNA前駆体に関連する翻訳タンパク質がもたらされる。このmRNAはランダムポリペプチドをコードしており、その多様性はファージディスプレイおよび酵母ディスプレイ系をはるかに凌ぐことがある。リガンドに良好に結合するmRNA−タンパク質ハイブリッドを、次いで、cDNAに逆転写し、その配列をPCRによって増幅する。最終結果は、緊密に結合するタンパク質を作製するのに用いることができるヌクレオチド配列である(例えば、非特許文献10、非特許文献11、および非特許文献12を参照されたい)。
【0078】
リボソームディスプレイは、DNA配列、または特定のタンパク質をコードする配列のナイーブライブラリーのいずれかで開始する。配列は転写され、次いでin vitroでタンパク質に翻訳される。しかし、結合性タンパク質の特定のライブラリーをコードするDNAライブラリーは、遺伝学的には終止コドンを欠くスペーサー配列に融合している。このスペーサー配列は、翻訳されるとき、ペプチジルtRNAに依然として結合しており、リボソームトンネルを占め、このように対象のタンパク質をリボソームから突出し、折り畳む。得られるのは、表面結合性リガンドに結合することができる、mRNA、リボソーム、およびタンパク質の複合体である。この複合体を温度の低下およびMg2+などの陽イオンの添加で安定化する。
【0079】
その後の結合またはパニングの段階の間、リボソーム複合体が、表面結合性リガンドに導入される。これはいくつかの方法で、例えば、リガンドを含むレジンベッドを有するアフィニティクロマトグラフィーカラム、固定化した表面結合性リガンドを有する96ウェルプレート、またはリガンドでコーティングしてある磁気ビーズを用いて遂行することができる。良好に結合する複合体を固定化する。引き続き、高い塩濃度、キレート化剤、またはタンパク質の結合モチーフと複合する非固定化リガンドによって結合剤を溶出することで、mRNAを解離させる。次いで、mRNAをcDNAに逆転写して戻し、変異誘発を起こさせ、より大きな選択的な圧力を有するプロセスに繰り返し送り込んでさらによく結合剤を単離することができる。
【0080】
これは全てin vitroで行うので、他の選択技術を凌ぐリボソームディスプレイ方法の主な利点が2つある。第一に、ライブラリーの多様性は細菌細胞の形質転換の効率によって制限されるのではなく、試験管中に存在するリボソームおよび異なるmRNA分子の数によってのみ制限される。第二に、いかなる多様化のステップの後にもライブラリーは形質転換されてはならないので、各選択ラウンドの後、ランダム変異が容易に導入され得る。これにより、いくつかの世代にわたる結合性タンパク質の定向進化が容易になる。
【0081】
ファージディスプレイおよび酵母ディスプレイなどのあるディスプレイ方法において、VH鎖およびVL鎖のライブラリーが、ナイーブの、または免疫化した動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、および他の動物)いずれかのB細胞のmRNAから、またはポリクローナルもしくはモノクローナルのハイブリドーマからも調製される。ポリAプライマーまたは典型的に所望のVH鎖およびVL鎖に隣接する配列に特異的である、マウスの免疫グロブリンに特異的なプライマー(1つもしくは複数)のいずれかを用いて、知られている方法によってmRNAを逆転写してcDNAを得る。所望のVH鎖およびVL鎖を、典型的にVHおよびVLに特異的なプライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、共ににリンカーに連結し、分離する。VHおよびVLに特異的なプライマーセットは、例えば、La Jolla、CaliforniaのStratagene,Inc.から市販されている。構築されたVH−リンカー−VL生成物(scFvフラグメントをコードする)を選択し、PCRによって増幅する。制限部位を、制限部位を含むプライマーを用いて、VH−リンカー−VLPCR生成物の末端にPCRによって導入し、scFvフラグメントをファージディスプレイに適する発現ベクター(典型的にはプラスミド)中に挿入する。Fab’フラグメントなどの他のフラグメントを、ファージ粒子上の表面発現用のファージディスプレイベクター中にクローニングしてもよい。ファージは、ラムダなど、あらゆるファージであってよいが、典型的には、fdおよびM13などの繊維状ファージ、典型的にはM13である。
【0082】
ディスプレイベクターにおいて、VH−リンカー−VL配列を表面タンパク質(例えば、M13に対して表面タンパク質g3p(pHI)またはg8p、最も典型的にはg3p)中にクローニングする。ディスプレイシステムはファージミドシステムも含み、ファージミドシステムは、ファージ表面タンパク質遺伝子(例えば、M13のg3pおよびg8p)、ならびにファージの複製開始点を含むファージミドプラスミドベクターをベースにしている。ファージ粒子を生成するために、ファージミドを含む細胞を、ファージの生成に必要とされる残りのタンパク質を提供するヘルパーファージでレスキューする。ファージミドの複製はヘルパーファージDNAの複製を著しく凌ぐので、ファージミドベクターだけが、得られたファージ粒子中にパッケージングされる。抗体を生成するためのファージミドパッケージング系は市販されている。細菌細胞中で可溶性ScFvフラグメントの生成も可能にする市販のファージミドパッケージング系の一例は、GE Healthcare、Piscataway、NJから市販されているRecombinant Phage Antibody System(RPAS)、およびMoBiTec(Boca Scientific、Boca Raton、FL)から市販されているpSKAN Phagemid Display Systemである。ファージディスプレイ系、これらの構築およびスクリーニング方法は、数ある中で、各々がその全文において参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に詳しく記載されている。
【0083】
典型的に、抗体フラグメントなどの所望のポリペプチドをディスプレイする、ファージ、酵母、細菌、リボソームなどのクローンの集団を生成した後は、所望の免疫原に対するこれらの親和性によってエピトープに特異的なクローンを選択し、場合により、これらの親和性の欠如を、免疫原に結合しているクローンを非結合性のクローンから物理的に分離するのに用いる。典型的に、免疫原は表面に固定され、クローンは表面と接触する。非結合性のクローンは洗い流されるが、結合性のクローンは結合したままである。結合しているクローンを溶出し、増殖させて選択されたクローンを増幅する。親和性の増大する免疫原に結合しているクローンを増幅するために、しばしば厳密性がますます高い洗浄で、数々の反復性のラウンドの親和性選択を典型的に用いる。所望の標的に対する結合の欠如に対して選択するためにネガティブ選択技術を用いてもよい。この場合、結合していない(洗浄された)クローンが増幅される。本発明の状況において、結合しているダイドロンの蛍光を、クローンを同定するための選択可能なマーカーとして用いることができる。FACSなどのハイスループットの方法を、クローンを選択するのに最初に用い、その後、場合により、蛍光画像化技術によって塗抹したコロニーにおける蛍光を検出してもよい。
【0084】
RT−PCRによってVHおよびVL鎖の配列が増幅されているcDNAの供給源として、所望の免疫原で予め免疫化した動物からの脾臓の細胞および/またはBリンパ球を用いるのが好ましいが、親和性によって、典型的には上記のファージディスプレイ(ファージミド)方法によって、in vitroで選択されたVHおよびVL鎖のポリクローナルのセットを生成するためのcDNAの供給源として、ナイーブの(標的の免疫原で免疫化していない)脾細胞および/またはB細胞を用いてもよい。ナイーブのB細胞を用いる場合、親和性選択の間、第1の選択ステップの洗浄は、ポリクローナルファージライブラリー中に非常に少ないコピー数存在することがあるあらゆる単一のクローンの喪失を避けるために、典型的に厳密性が非常に高い。このナイーブの方法によって、B細胞をあらゆるポリクローナルの供給源から得てもよく、B細胞または脾細胞のcDNAライブラリーも、そこからVHおよびVL鎖が増幅され得るcDNAの供給源である。例えば、適切なマウスおよびヒトのB細胞、リンパ球、および脾細胞のcDNAライブラリーはAgilent Technologies/Stratageneから、およびInvitrogenから市販されている。ファージミド抗体ライブラリーおよび関連のスクリーニングサービスは、Charlotte、North CarolinaのMorphoSysUSA,Inc.から商業的に提供されている(CysDisplay)。
【0085】
アクチベーターおよび/または選択性成分は、生物学的供給源に、例えば、動物またはヒトのナイーブまたは免疫化した細胞から生じている必要はない。アクチベーターおよび/または選択性成分を、合成ペプチドのコンビナトリアルライブラリーからスクリーニングしてもよい。このような一方法は、M13のピル遺伝子(pill gene)におけるランダムアミノ酸の挿入を有するファージミドライブラリーの生成を記載している、参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献6に記載されている。これらのファージは、上記の親和性選択によってクローン的に増幅されてよい。
【0086】
培養ディッシュまたはフラスコにおけるパニングは、結合性クローンを非結合性クローニングから物理的に分離する一方法である。パニングは、所望の免疫原構造が固定化されている96ウェルプレートにおいて行うことができる。官能基化されている96ウェルプレートは、典型的にELISAプレートとして用いられ、Rockwell、IllinoisのPierceから購入することができる。ダイドロンは、N末端からC末端の方向で、NH2またはCOOHで官能基化されたプレート上で直接合成されてよい。所望の特異性を有するクローンを単離するための他の親和性の方法は、ダイドロンをビーズに固定することを含む。標準の手順にしたがって、ビーズをカラム中に配置してもよく、クローンはカラムに結合しており、洗浄され、溶出されてよい。あるいは、結合性の粒子を非結合性の粒子からの磁性分離を可能にするために、ビーズは磁性であってよい。免疫原はまた、多孔性の膜またはマトリックスに固定されていてもよく、結合性クローンの容易な洗浄および溶出が可能になる。
【0087】
ある実施形態において、親和性選択プロセスにおけるネガティブ選択のステップを用いて、所与の標的分子またはレポーター分子に対するアクチベーターの特異性を増大するのが望ましいことがある。例えば、アクチベーターをディスプレイするクローンを、標的分子またはレポーター分子と別のダイドロンまたは蛍光団で官能基化した表面と接触させてもよい。クローンを表面から洗浄し、非結合性のクローンを増殖させて非結合性のクローンの集団をクローン的に拡大し、それによって所望の標的分子に特異的ではないクローンを選択解除する。ある実施形態において、ネガティブ選択ステップにおいて、ランダム合成ペプチドを用いることができる。他の実施形態において、アクセプターまたはドナーに構造的に類似性を有する1つまたは複数の免疫原をネガティブ選択ステップにおいて用いることができる。
【0088】
アクチベーターのスクリーニングは、Holtらにおいて記載されている通り、ハイスループットのパラレル選択によって遂行されるのが最良である。あるいは、ハイスループットのパラレル選択は、MorphoSys USA,Incなどの企業によって行われてもよい。
【0089】
ある実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分の結合性領域を変異し、未変異のアクチベーターに比べて優れた結合の性質を有するアクチベーターおよび/または選択性成分を選択するのが望ましいことがある。これは、エラーを引き起こす条件下、TaqポリメラーゼでのPCRなど、あらゆる標準の変異誘発技術によって遂行することができる。このような場合、PCR:プライマーは、変異を引き起こす条件下、(例えば)ファージミドプラスミドの、scFvをコードするまたは結合試薬をコードする配列を増幅するのに用いられ得る。PCR生成物を、次いで、上記の通り、(例えば)ファージミドベクター中にクローニングし、所望の特異性に対してスクリーニングしてもよい。
【0090】
他の実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分を修飾して、それらをプロテアーゼによる切断により耐性にしてもよい。例えば、ポリペプチドを含む本発明のアクチベーターの安定性は、(L)体における天然に存在するアミノ酸の1つまたは複数をD−アミノ酸で置換することによって増大することができる。様々な実施形態において、アクチベーターのアミノ酸残基の少なくとも1%、5%、10%、20%、50%、80%、90%、または100%が、D体のものであってよい。Lアミノ酸からDアミノ酸への切り替えは、消化管において見出される偏在性のペプチダーゼの多くの消化能力を中和する。あるいは、本発明のアクチベーターの増強された安定性は、伝統的なペプチド結合の修飾の導入によって実現されてよい。例えば、ポリペプチドのバックボーン内に環状環が導入されると、胃または他の消化器官中で、および血清中でポリペプチドを消化することが知られている多くのタンパク質分解酵素の影響を回避するために、安定性の増強が付与され得る。さらに他の実施形態において、アクチベーターの安定性の増強は、1つまたは複数の右旋性アミノ酸(例えば、右旋性のフェニルアラニンもしくは右旋性のトリプトファン)をアクチベーターのアミノ酸間に挿入することによって実現され得、好適の実施形態において、このような修飾は、所望の標的分子またはレポーター分子との相互作用の活性または特異性に影響を及ぼさずに、アクチベーターのプロテアーゼ耐性を増大する。
【0091】
ある実施形態において、抗体またはその変異体は、対象に投与する場合、または投与するとき、免疫原性を少なくするように修飾されてよい。例えば、対象がヒトである場合、抗体は「ヒト化」されていてよく、この場合、例えば特許文献7に記載されているように、ハイブリドーマに由来する抗体の相補性決定領域(1つまたは複数)がヒトモノクローナル抗体中に移植されている。また、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物を用いてヒト化抗体を発現させてもよい。このようなヒト化は、部分的でも、または完全でもよい。
【0092】
別の実施形態において、アクチベーターはFabフラグメントである。Fab抗体フラグメントは、プロテアーゼであるパパインを用いて免疫グロブリン分子をタンパク質分解することによって得ることができる。パパイン消化により、各々が単一の抗原結合性部位を有する「Fabフラグメント」2つの別個の抗原結合性フラグメントおよび残りの「Fcフラグメント」が得られる。さらに別の実施形態において、アクチベーターはF(ab’)2フラグメントである。F(ab’)2抗体フラグメントは、酵素ペプシンによる限定されたタンパク質分解を用いてIgG分子から調製することができる。他の実施形態において、選択性成分は、酵素などのネットワークタンパク質またはパスウェイタンパク質、例えば、ホスファターゼまたはキナーゼであってよい。このようなタンパク質を変異させて、レポーターおよび/または標的分子に対する結合部位を作製してもよい。例えば、細胞および組織におけるネットワークタンパク質およびパスウェイタンパク質から選択性成分のバイオセンサーを作製する方法は、選択されたタンパク質上の特異的な領域を変異させて、レポーターまたは標的分子に対する活性化に結合する部位に対するアクチベーター部分を作り出すことを含む。変異用に選択された領域は、アクチベーターに変換されるべきタンパク質をコードする遺伝子の選択された領域において変異を作り出すことによって、ランダムに、または部分的にランダムに変異され得る。変異された領域(1つまたは複数)を有する遺伝子は、アッセイすべき活性(レポーター分子の場合)に対するレポーター分子(または標的分子)の結合および蛍光感受性を可能にする方法で、タンパク質を発現することができる系中にトランスフェクトすることによって、組み入れられ得る。例えば、変異された領域を有するDNAは、ダイドロンのアクセプターにトラニング(traning)であってよい(例えば、非特許文献7および非特許文献8を参照されたい)。選択方法によって単離および同定することによって、アクチベーターおよび選択性成分として最適に機能する、変異された集団内の特定のタンパク質の遺伝子の配列。他の実施形態において、変異体のライブラリーは、変性されたオリゴヌクレオチド配列から生成される。変性されたオリゴヌクレオチド配列からライブラリーを生成し得る方法は多く存在する。変性された遺伝子配列の化学合成は、DNA自動合成機において行うことができ、次いで、合成の遺伝子を発現に好適なベクター中にライゲーションすることができる。変性されたセットの遺伝子の一目的は、一混合物において、可能なタンパク質配列の所望のセットをコードする全ての配列を提供することである。変性されたオリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野ではよく知られている(例えば、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17を参照されたい)。このような技術は、他のタンパク質の定向進化において用いられている(例えば、非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21、ならびに、特許文献8、特許文献9、および特許文献10を参照されたい)。
【0093】
あるいは、他の形態の変異誘発を利用してコンビナトリアルライブラリーを生成してもよい。例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発などを用いたスクリーニングによって、リンカースキャニング突然変異誘発によって、飽和突然変異誘発によって、PCR突然変異誘発によって、またはランダム突然変異誘発によって、例えば、変異体を生成し、ライブラリーから単離してもよい。とりわけコンビナトリアルの設定におけるリンカースキャニング突然変異誘発は、アクチベーターを同定するための魅力的な方法である。
【0094】
さらに他の実施形態において、アクチベーターは、核酸リガンドとしても知られるアプタマーであってよい。アプタマーは、所望の分子構造に特異的に結合するように選択されたオリゴヌクレオチドである。アプタマーは、典型的に、ファージディスプレイの親和性選択に類似の親和性選択プロセスの生成物である(in vitroの分子進化としても知られる)。このプロセスは、親和性分離のいくつかの直列の反復を行い(例えば、所望の免疫原が結合している固体支持体を用いて)、その後ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って免疫原に結合している核酸を増幅することを伴う。このように親和性分離の各ラウンドにより、所望の免疫原に上首尾に結合する分子に対する核酸の集団が濃縮される。このやり方では、核酸のランダムプールは、標的分子に特異的に結合するアプタマーを生成するように「教育され(educated)」得る。アプタマーは、典型的にはRNAであるが、DNAまたはその類似体もしくは誘導体、例えば、制限なく、ペプチド核酸およびホスホロチオエート核酸であってよい。アプタマーは、これらの選択された核酸の増幅と組み合わされた望ましいやり方で標的と相互作用する核酸リガンドの選択を伴う、「SELEX」法を用いて調製してもよい。SELEXプロセスは、特許文献11および特許文献12、ならびに特許文献13に記載されている。これらの参考文献は、各々が参照によって本明細書に特に組み込まれ、総称的にSELEX特許と呼ばれる。
【0095】
SELEXプロセスは、各々が独特の配列を有し、その各々が所望の標的化合物または標的分子に特異的に結合する性質を有する核酸分子である1クラスの生成物を提供する。様々な実施形態において、標的分子は、例えば、タンパク質類、炭水化物類、ペプチドグリカン類、または小分子種であってよい。SELEX法は、その生物学的構造の不可欠の部分である分子との特異的な相互作用によって、細胞表面またはウイルスなどの生物学的構造を標的にするのに用いることもできる。
【0096】
基本的なSELEX法は、数々の特異的な目的を達成するために修正されている。例えば、特許文献14は、ベントDNAなど、特異的な構造の特徴を有する核酸分子を選択するためにゲル電気泳動と組み合わせたSELEXプロセスの使用を記載している。特許文献15は、カウンターSELEXと呼ばれる、緊密に関連する分子間を識別することができる高度に特異的な核酸リガンドを同定するための方法を記載している。特許文献16は、標的分子に対して高親和性を有するオリゴヌクレオチドと低親和性を有するオリゴヌクレオチドとの間の高度に効率的な分割を実現するSELEXベースの方法を記載している。特許文献17および特許文献18は、SELEXを行った後、改善された核酸リガンドを得るための方法を記載している。
【0097】
ある実施形態において、本明細書に記載する核酸リガンドは、これらの安定性を増大する修飾、例えば、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼなどの酵素による分解に対する耐性の増大を提供する修飾、ならびに/または核酸リガンドの送達を増強もしくは媒介する修飾を含むことができる(例えば、特許文献19および特許文献20を参照されたい)。このような修飾の例には、リボース、および/またはホスフェート、および/または塩基の位置の化学的置換が含まれる。様々な実施形態において、核酸リガンドの修飾には、それだけには限定されないが、核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対してさらなる電荷、分極率、疎水性、水素結合、静電相互作用、および流動性を組み入れる他の化学基を提供するものが含まれてよい。このような修飾には、それだけには限定されないが、糖の2’位修飾、ピリミジンの5位修飾、プリンの8位修飾、アミンの環外修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−インド−ウラシルの置換、バックボーン(主鎖)の修飾、ホスホロチオエートまたはアルキルホスフェートの修飾、メチル化、普通ではない塩基対の組合せ、例えば、イソ塩基(isobase)、イソシチジン(isocytidine)、およびイソグアニジン(isoguanidine)などが含まれる。修飾には、キャッピングなどの3’および5’修飾も含まれてよい。例示の実施形態において、核酸リガンドは、ピリミジン残基の糖部分上を2’−フルオロ(2’−F)修飾されているRNA分子である。
【0098】
アクチベーターおよび/または選択性成分は、テンプレートがインプリントされた材料であってよい。テンプレートがインプリントされた材料は、外側に糖の層、およびその下のプラズマが堆積した層を有する構造である。テンプレートがインプリントされた構造と、それに対して相補的である標的分子との間の特異的な相互作用を可能にするように、外側の糖の層は所望の標的分子またはテンプレートに対して形状が相補的である押込みまたはインプリントを含んでいる。テンプレートのインプリントは、例えば、医療用装具(例えば、人工心臓弁、人工肢関節、コンタクトレンズ、およびステント)、マイクロチップ(好ましくはシリコンベースのマイクロチップ)、ならびにウイルスまたは細菌などの特定の微生物を検出するようにデザインされている診断用装置の構成要素を含めた、様々な構造の表面上で利用することができる。テンプレートがインプリントされた材料は、その全文が参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献21において論じられている。
【0099】
ある実施形態において、アクチベーターは、その単離、固定化、同定、もしくは検出を促進し、かつ/またはその可溶性を増大するタグまたはハンドルを含むことができる。様々な実施形態において、タグはポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、ポリマー、または化学的部分、およびこれらの組合せもしくは変形であってよい。ある実施形態において、例示の化学的ハンドルには、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、タンパク質A、タンパク質G、カルモジュリン結合蛋白質、チオレドキシン、マルトース結合蛋白質、HA、myc、ポリアルギニン、ポリHis、ポリHis−Asp、またはFLAGタグ等が含まれる。さらなる例示のタグ類には、in vivoでタンパク質の局在性を変更するポリペプチド、例えば、シグナルペプチド類、III型分泌系を標的にするペプチド類、トランスサイトーシスドメイン類、核移行シグナル類などが含まれる。
【0100】
別の実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は、細胞膜を横断する速度が増大するように修飾されてよい。例えば、アクチベーターは、「トランスサイトーシス」(例えば、細胞によるポリペプチドの取込み)を促進するペプチドに結合していてよい。ペプチドはHIVトランスアクチベーター(TAT)タンパク質、例えば、in vitroで細胞によって速やかに取り込まれることが観察されている部分である、TATの残基37〜62または48〜60に対応するフラグメントの一部分であってよい(非特許文献22)。あるいは、内部移行するペプチドは、ショウジョウバエ(Drosophia)のアンテナペディアタンパク質、またはそのホモログに由来していてよい。ホメオタンパク質アンテナペディアの60アミノ酸長のホメオドメインは、生体膜を介して移行することが実証されており、それに対して結合している異種性のポリペプチドの移行を促進することができる。このように、アクチベーターは、ショウジョウバエのアンテナペディアのアミノ酸およそ42〜58、またはトランスサイトーシスのためのより短いフラグメントからなるペプチドに融合していてよい(非特許文献23)。トランスサイトーシスのポリペプチドはまた、特許文献22に開示されているペプチド配列などの、天然に存在する膜転位配列(MTS)であってよい。
【0101】
さらに他の実施形態において、アクチベーター/選択性成分は、2価であり、アクチベーターおよび選択性成分の両方を、1つの近接するポリペプチド配列中に、あらゆる適切なポリペプチドのアクチベーターおよび選択性成分を含む融合(キメラ)タンパク質の形態において含んでいる。上記の通り、融合タンパク質は、その溶解性を増大し、かつ/またはその精製、同定、検出、標的化、および/もしくは送達を促進する少なくとも1つのドメインを含んでいてよい。好適例のドメイン類には、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、タンパク質A、タンパク質G、カルモジュリンに結合するペプチド、チオレドキシン、マルトースに結合するタンパク質、HA、myc、ポリアルギニン、ポリHis、ポリHis−Asp、またはFLAG融合タンパク質類、およびタグ類が含まれる。さらなる例示のドメインには、in vivoでタンパク質の局在化を変更するドメイン、例えば、シグナルペプチド類、III型分泌系を標的にするペプチド類、トランスサイトーシスドメイン類、核移行シグナル類、標的化部分類、すなわち標的分子に特異的なタンパク質等などが含まれる。様々な実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つまたは複数の異種性の融合物類を含むことができる。ポリペプチドは、同じ融合ドメインの複数のコピーを含んでいてよく、または2つ以上の異なるドメイン類に対する融合物を含んでいてよい。融合物は、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはポリペプチドのN末端およびC末端の両方に生じてよい。融合タンパク質の構築を促進するために、またはタンパク質の発現もしくは融合タンパク質の構造的な拘束を最適化するために、アクチベーターおよび/または選択性成分ポリペプチドの間のリンカー配列が含まれていてよい。好適例の融合タンパク質の概念の証明を、以下に記載する。
【0102】
他の実施形態において、アクチベーターおよび選択性成分は、細胞もしくは生物体、または分析されるべき対象内で、融合タンパク質として発現される(下記の実施例を参照されたい)。下記の発現方法を用いて、宿主細胞中でアクチベーターおよび選択性成分を発現させ、次いで、宿主細胞を、本明細書に記載し、当業者には知られている通りに単離および精製してもよい。
【0103】
一般的に、アクチベーターおよび選択性成分をコードする核酸は、トランスフェクトまたは感染などによって宿主細胞中に導入することができ、宿主細胞を、アクチベーターを発現させる条件下で培養する。核酸を原核細胞および真核細胞中に導入する方法は、当技術分野ではよく知られている。哺乳動物および原核生物の宿主細胞の培養に適する培地は、当技術分野ではよく知られている。ある場合には、対象のポリペプチドをコードする核酸は誘導性のプロモーターの制御下にあり、これは一旦誘導されると核酸を含む宿主細胞はある回数分割する。例えば、核酸がベータ−ガラクトースのオペレーターおよびリプレッサーの制御下にある場合、細菌の宿主細胞が約0.45〜0.60の密度のOD600を達成したらイソプロピルベータ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培地に加える。次いで、培地をさらに数回増殖させて、宿主細胞にポリペプチドを合成する時間を与える。次いで、典型的に、培地を凍結し、しばらくの間凍結して貯蔵し、その後ポリペプチドを単離および精製してもよい。
【0104】
このように、アクチベーターおよび選択性成分を全てまたは一部分コードするヌクレオチド配列を用いて、微生物または真核細胞のプロセスによって、アクチベーターおよび選択性成分の形態の組換え体を生成してもよい。発現ベクターなどのポリヌクレオチド構築体中に配列を連結し、真核生物(酵母、トリ、昆虫、もしくは哺乳動物)または原核生物(細菌細胞)いずれかの宿主細胞中にトランスフォームし、感染させ、またはトランスフェクトするのが標準的な手順である。同様の手順、またはそれを修正したものを用いて、本発明による微生物的手段または組織培養技術によって組換えのポリペプチドを調製してもよい。
【0105】
「発現」は、遺伝子(制限なく、遺伝子生成物を生成するための機能的な遺伝学的ユニットであって、典型的にはDNAまたはRNA上にコードされ、いくつかのウイルスでは、転写プロモーターや他の応答エレメント、および/もしくはエンハンサー等のようなcis−作用性エレメントを含め、ならびに典型的にはタンパク質(オープンリーディングフレームすなわちORFである)をコードする発現された配列、または機能上/構造上のRNAならびにポリアデニル化配列から遺伝子産物(典型的には蛋白質、任意選択的に転写後修飾又は機能上/構造上のRNA)からの情報の全体の流れを意味する。
【0106】
デザインされた配列「の転写制御下の遺伝子の発現」、または代替的に、デザインされた配列「による制御を受けさせる」は、遺伝子に操作可能に連結している(典型的にはcisにおいて、機能的に結合している)示された配列を含む遺伝子からの遺伝子発現を意味する。示された配列は、転写のエレメント(制限なく、プロモーター、エンハンサー、および応答エレメント)の全てまたは部分であってよく、遺伝子の転写を完全に、または部分的に、制御し、および/または影響を及ぼすことができる。
記載した遺伝子生成物「の発現のための遺伝子」は、適切な環境中に配置した場合に、例えば、細胞中にトランスフォームされ、トランスフェクトされ、または形質導入され、発現に適した条件に曝された場合に、記載された遺伝子生成物を発現することができる遺伝子である。
【0107】
構成的プロモーターの場合、「適切な条件」は、遺伝子が、典型的に宿主細胞中に導入されることだけを必要とすることを意味する。誘導性のプロモーターの場合、「適切な条件」は、ある量のそれぞれの誘導因子が、遺伝子の発現を引き起こすのに効果的な発現系(例えば、細胞)に与えられたことを意味する。本明細書に記載するヌクレオチド配列は全て、5’から3’の方向において提供され、本明細書に記載するアミノ酸配列は全て、N末端からC末端の方向において提供される。
【0108】
アクチベーターおよび選択性成分をコードする核酸、ならびにベクター、宿主細胞、それらの培養物の他の実施形態、ならびに融合タンパク質を作製する方法は、下記、または特許文献1に記載されている。アクチベーターおよび/または選択性成分をコードする核酸は、細菌のプロモーター、例えば、嫌気性大腸菌(E.coli)、NirBプロモーターまたは大腸菌のリポタンパク質lip、サルモネラ(Salmonella)pagCプロモーター、赤痢菌(Shigella)entプロモーター、TnIO上のtetプロモーター、またはビブリオコレラ(Vibrio cholera)のctxプロモーターに操作可能に連結していてよい。あらゆる他のプロモーターを使用することができる。細菌のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性のプロモーターであってよい。アクチベーターが細胞から分泌されるように、シグナルペプチド配列を構築体に加えてもよい。このようなシグナルペプチドは当技術分野ではよく知られている。一実施形態において、大腸菌のRNAポリメラーゼによって認識される強力なファージT5プロモーターを、lacオペレーター抑制モジュールと一緒に用いて、厳重に制御された、大腸菌における高レベルの発現または組換えタンパク質を提供する。この系において、高レベルのlacリプレッサーの存在下、タンパク質の発現は阻止される。組換えタンパク質およびポリペプチドを生成するための非常に様々な方法および遺伝子構築体が市販されており、当業者には別の方法で知られており、または入手可能である。例えば、真核生物の可溶化物(例えば、ウサギ網状赤血球可溶化物、ウサギ卵母細胞可溶化物、ヒト細胞可溶化物、昆虫細胞可溶化物、およびコムギ胚芽抽出物、または合成方法も用いたin vitroのタンパク質合成を、広く知られている通り、用いて本明細書に記載するポリペプチドを生成することができる。
【0109】
植物の発現ベクターを用いることができる。例えば、CaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター、またはTMVのコートタンパク質プロモーターなどのウイルスのプロモーターを用いてもよく、あるいは、RUBISCOの小型サブユニットなどの植物のプロモーター、またはダイズhsp17.5−Eもしくはhsp17.3−Bなどの熱ショックプロモーターを用いてもよい。これらの構築体を、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNAトランスフォーメーション、マイクロインジェクション、電気穿孔などを用いて植物細胞中に導入することができる。このような技術の再考には、例えば、非特許文献24および非特許文献25を参照されたい。あるいは、昆虫系を用いて本明細書に記載するポリペプチドを生成することができる。このような1つの系において、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして用いられる。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する(例えば、Smith、米特許文献23を参照されたい)。昆虫系の別の実施形態において、対象のポリペプチドをコードするDNAを、ポリヘドリンプロモーターの下流のpBlueBacIII組換えトランスファーベクター(Invitrogen、San Diego、Calif.)中にクローニングし、Sf9昆虫細胞(ヨトウガの卵巣細胞に由来する、Invitrogen、San Diego、Calif.から入手可能)中にトランスフェクトして組換えのウイルスを生成する。別の実施形態において、対象のポリペプチドを、ある実施形態においてポリペプチドがメス動物のミルクなどの中に分泌されるように、トランスジェニック動物において調製する。
【0110】
ウイルスベクターは関連技術において広く知られており、その多くは市販されており、核酸を細胞中に効率的にin vitroで導入するのにも用いられ得る。細胞をウイルスベクターに感染させることには、多数の標的にされる細胞が核酸を受け取ることができるという利点がある。さらに、ウイルスベクター中の遺伝物質によって、例えば、ウイルスベクター中に含まれる核酸によってコードされたポリペプチドは、ウイルスベクターの核酸を取り込んだ細胞中で効率的に発現される。有用なウイルスベクター系の例には、レトロウイルス、アデノウイルスが含まれ、アデノ随伴ウイルスベクターは、とりわけ哺乳動物中に、in vivoで外来の遺伝子を輸送するのに有用であると、一般的に理解されている。これらのベクターは、細胞中への遺伝子の効率的な送達をもたらし、輸送された核酸は、典型的には、宿主の染色体DNA中に安定に組み込まれる(非特許文献26を参照されたい)。
【0111】
別のウイルスの遺伝子送達系は、アデノウイルスに由来するベクターを利用する。アデノウイルスAd 5dl324型系統、またはアデノウイルスの他の系統(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターが当業者にはよく知られている。ある状況において、組換えのアデノウイルスは、非分裂性の細胞に感染することができ、気道の上皮、内皮細胞、肝細胞、および筋肉細胞を含めた、広範囲の細胞型に感染させるのに用いることができる点で有利であり得る。さらに、ウイルス粒子は比較的安定であり、精製および濃縮が容易であり、上記の通り、感染性スペクトルに影響を及ぼすように修飾することができる。さらに、導入されたアデノウイルスのDNA(およびそれに含まれる外来のDNA)は宿主細胞のゲノム中に組み込まれないがエピソームのままであり、それによって、導入されたDNAが宿主のゲノム(例えば、レトロウイルスのDNA)中に組み込まれる状態において、挿入変異の結果として生じることがある潜在的な問題を回避する。さらに、外来DNAに対するアデノウイルスのゲノムの収容力は、他の遺伝子送達ベクターに比べて大きい(最大8キロベース)。現在使用中であり、したがって本発明が好ましいほとんどの複製欠損アデノウイルスベクターは、ウイルスのE1およびE3遺伝子の全てまたは部分を欠失しているが、アデノウイルスの遺伝物質の80%ほどを保持している。挿入された遺伝物質の発現は、例えば、EIAプロモーター、主要後期プロモーター(MLP)および付随するリーダー配列、E3プロモーター、または外因的に加えたプロモーター配列の制御下であり得る。
【0112】
対象のポリペプチドをコードする遺伝物質の送達に有用なさらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および増殖性の生活環のためのヘルパーウイルスとしてアデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどの別のウイルスを必要とする、天然に存在する欠損ウイルスである。これは、そのDNAを非分裂細胞中に組み込むことがあり、高頻度の安定な組込みを表すことがある少数のウイルスの1つでもある。AAVをわずか300塩基対程度含むベクターが、パッケージングされてよく、組み込まれてよい。外来性のDNAに対する空間は約4.5kbに限られている。非特許文献27に記載されているものなどのAAVベクターを用いて、DNAを細胞中に導入することができる。AAVベクターを用いて様々な核酸が異なる細胞型中に導入されている(例えば、非特許文献28および非特許文献29を参照されたい)。他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、およびいくつかのRNAウイルスに由来していてよい。
【0113】
ウイルス伝達法の他に、上記に説明したものなど、非ウイルスの方法をやはり用いて、例えば、in vitroで細胞中で、または動物の組織において、対象のポリペプチドをコードする核酸の発現を引き起こすことができる。遺伝子導入の最も非ウイルス的方法は、巨大分子の取込みおよび細胞内輸送のために哺乳動物細胞によって用いられる通常の機序に頼るものである。好ましい実施形態において、本発明の非ウイルスの遺伝子導入方法は、標的細胞によって遺伝材料を取り込むためのエンドサイトーシス経路に頼っている。このタイプの例示の遺伝子送達系には、リポソーム由来の系、ポリリジンコンジュゲート、および人工のウイルスエンベロープが含まれる。例えば、遺伝材料は、その表面上に正の電荷を帯びているリポソーム(例えば、リポフェクチン)中に捕捉され、場合により、これは標的組織の細胞表面抗原に対して抗体でタグ付けされる(非特許文献30、特許文献24、特許文献25、および、特許文献26)。例えば、パピローマに感染した細胞のリポフェクションは、PVに関連抗原に対するモノクローナル抗体でタグ付けされたリポソームを用いて行い得る(非特許文献31を参照されたい、非特許文献32も参照されたい)。
【0114】
遺伝子送達系は、抗体、またはポリリジンなどの遺伝子を結合する物質と架橋結合している細胞表面リガンドを含んでいる(例えば、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、および特許文献31を参照されたい)。例えば、対象のキメラのポリペプチドをコードする遺伝物質を、ポリカチオンにコンジュゲートしているアシアロ糖タンパク質を含む可溶性のポリヌクレオチド担体を用いて、in vivoで肝細胞にトランスフェクトするのに用いることができる(特許文献32を参照されたい)。媒介されたエンドサイトーシスによる核酸構築体の効率的な送達は、エンドソームの構造から遺伝子の逸脱を増強する物質を用いて改善することができることも理解される。例えば、アデノウイルス全体またはインフルエンザHAの遺伝子生成物の融合性のペプチドを送達系の部分として用いて、DNAを含有するエンドソームの効率的な破壊を引き起こすことができる(非特許文献33、非特許文献34、および非特許文献35)。
【0115】
本明細書に記載するダイドロンのある実施形態によると、ある機能的な目標が望ましい。
【0116】
一例において、目標は、以下の特徴を有するドナーアレイ調製物を生成することである。>106モル吸光度(561nm)およびφアレイ/φ遊離=0.7。標準の単一反応性の(monoreactive)NHSエステルドナー色素(例えば、Cy3、Cy3.5、Alexa568、Atto−565)を、市販の2官能基性デンドリマー(例えば、PAMAM、シスタミンコア)の複数の変異体とカップリングし、これらの定常状態の吸収および蛍光の性質を測定する。FCS、電気泳動、および質量分析法による分子キャラクタリゼーションにより、標識化および分子分散度の程度が確認され、最高の吸光度および量子収量を有するドナーアレイの選択が可能になる。量子収量が劇的に消光したら、別々の電荷、極性、および空間の性質を有する、色素または代替のデンドロンの骨格の立体的な修飾(例えば、PEG修飾)を調製して、色素間相互作用を低減することができる。
【0117】
別の例において、デザインの目標は>90%の伝達効率である。ブライトドナーアレイは、ダーククエンチャー(例えば、DABCYL、4−((4−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸)およびFRET(フェルスター共鳴エネルギー移動、または蛍光共鳴エネルギー移動)アクセプター(例えば、Cy5、Alexa700、Cy7)に連結して、リンカー長さの変動によって消光の性質を最適化し、中間のアクセプター(すなわち、第1のドナーおよびアクセプターの両方とスペクトルが重複する第2のドナーが提供され、この場合第1のドナーの発光スペクトルはアクセプターの吸収スペクトルと重複しない(または必ずしも重複しない))がより赤色にシフトした蛍光団に必要とされるか否かを決定する。必要であれば、ヘテロ2官能基性(heterobifunctional)の中間体のアクセプター色素(すなわち、NHSエステルおよびヨード酢酸の官能性)を調製して中間のアクセプターの試験を促進することができる(非特許文献36)。
【0118】
別の例において、デザインの目標は、FAPまたはドナーに結合していないときデンドロンに連結しているアクセプターの低い蛍光である。アクセプターの蛍光団は、ダイドロンの合成に好適な化学を用いてデンドロン骨格に結合しており、構築体の蛍光を細胞抽出物中および精製した核酸材料中で、複数のドナーの存在下でダイドロンを検出するのに用いられる条件下でバックグラウンドの蛍光に対して試験する。蛍光の活性化が高い場合、アクセプターの電荷、サイズ、および疎水性の修飾を、細胞の状況における非特異的な相互作用を低減するのに利用することができる。
【0119】
別の例において、ダイドロン/FAP調製物および確証のためのデザインの目標は、細胞可溶化物中φon/φoff>1000を有する、空間的に間隙が約60nmである3個のダイドロン/FAPモジュールである。本発明者らはバッファー中で>15,000倍の切換え比(switching ratio)でこれを活性化するモジュールをすでに選択していたので、マラカイトグリーンが最初の蛍光団として働くことができる。さらなる蛍光団をデザインし、合成することができる。近赤外(far−red)および近赤外線(near IR)発光を有する、極性を感知する色素(例えば、メロシアニンおよびスチリル色素)の多くができるように、非対称性のポリメチン色素、およびインドシアニングリーンの類似体を蛍光団として用いることができる。蛍光団は、ドナーアレイを修飾する前に、細胞可溶化物中の非特異的な活性化に対してスクリーニングされる。選択されたFAPモジュールによる消光および活性化をバッファー中および細胞可溶化物中で特徴付けて、活性化率を決定する。許容できる切換え比を有するFAP/ダイドロン対は、FCSおよびTIRF単一分子顕微鏡によって特徴付けされる。
【0120】
ある実施形態によると、酵母表面ディスプレイライブラリーからの最初の蛍光団活性化ペプチドの選択に確立された方法を用いて、新規な蛍光団活性化ペプチドを単離する。簡潔に述べると、合成的に調製された各蛍光団のビオチン化されたバージョンを、Pacific Northwest National Laboratoryの酵母表面にディスプレイされたscFvライブラリー(約109個の別々のクローン、選択用の細胞1011個)の拡大され、誘発されたアリコートを使用してインキュベートする。ビオチン化された色素に結合する酵母を、最初にストレプトアビジンがコンジュゲートした磁性ビーズで、その後、拡大、および抗ビオチンコンジュゲートした磁性ビーズでの第2ラウンドの濃縮で、2つのステップにおいて磁気的に濃縮する。これらの酵母をビーズから溶出し、次いで、遊離の色素を使用してインキュベートし(フローサイトメーター上の直接検出ができる場合。できない場合は、ビオチン化した色素の後に洗浄およびストレプトアビジンAlexa488標識化が続く)、流動性選別(flow sorted)して蛍光発生的な細胞の集団または蛍光団に結合している細胞の集団を選択する。サイトメーター上で検出できない蛍光団のクローンは、誘導されたコロニーの単離されたものを含む寒天平板上で色素を洗浄し、その後の分析用に広視野の蛍光画像化システムを用いて最も明るいコロニーを選択することによって検出することができる。ライブラリーから回収されたクローンは、ある範囲の親和性およびスペクトルの性質を有し、引き続き(エラープローン(error-prone)PCRによって)親和性成熟により、親和性、量子収量、および選択性における変化がもたらされ得ることが見出された。クローンは、確立されたプロトコールを用いて、表面ディスプレイ系から酵母分泌系に容易に移行される。有望なクローンは配列決定され得、独特のクローンはpPNL9分泌ベクターに伝達されて、集合の分子および単一分子の蛍光、ならびに蛍光団との結合性の性質を引き続き特徴付けるためにタンパク質を生成する。
【0121】
ダイドロンの合成。所与の蛍光団が、生存可能な蛍光団活性化ペプチドをライブラリーから生成した後、この蛍光団をダイドロン中に組み込む(図5Aを参照されたい)。合成の戦略により、連続的なラウンドの蛍光団頭部へのリンカー付加によってダイドロンが構築される(分岐的合成戦略)。得られた中間体は、増大数の分岐部位および特定の数の機能性アミンを周囲に有する、一連の蛍光発生的なプレダイドロン(pre−dyedron)である。これらのアミンは、市販のドナー色素の活性エステルと容易に反応することができる。この戦略の利点の1つは、どの蛍光団が最も効率的なエネルギー伝達を有し、色素の凝集または非特異的な結合に及びがちな最小の傾向を示すかを決定するために、各プレダイドロンで、数々の個々のドナーの蛍光団を試験することができることである。この合成の取組みは、単一のMG分子に対して最高4個のCy3分子に連結するためのTリンカーを用いて実証された。ドナー色素の密度および充填における増大は、Tリンカーよりむしろトリポッド(tripod)リンカーを用いて実現することができる。この形状により、ドナー6個または9個を有する、小型サイズのダイドロンの合成が可能になる(図5Bを参照されたい)。アセチレン性のマラカイトグリーン、DIR(ジメチルインドールレッド)、およびMG蛍光団に対してフェルスター半径が比較可能であり、直接的な分子間FRETの取組みが、Cy3nMGダイドロンに対して示される結果にとって同様に成功する可能性がある。しかし、インドシアニングリーンの場合、フェルスター半径は相当短く、全体的なFRETの効率が低減される可能性がある。このような場合には、媒介色素でのカスケードの取組みを利用して、ドナーからの効率的なFRET、およびアクセプターに対する効率的なFRETを確実にしてもよい(図5C)。この場合、Cy5−ICGの直列が、上記のリンカー拡大合成戦略のための「開始の蛍光団」として働くことができる。
【0122】
蛍光モジュールの最適化および成熟。蛍光団単独に対して選択される、蛍光団活性化ペプチドの性質は、蛍光発生的なダイドロンの結合および活性化に対して最適化されているとは限らない。累加的な数のドナー色素を、予め選択された蛍光団に添加したときのクローンの親和性の低減が注目された。特に結合性の、および活性化する蛍光発生的なダイドロンに対する、これらFAPの性質を洗練するために、高量子収量および結合の緊密な、蛍光団に結合するクローンの親和性成熟をエラープローンPCR法によって行うことができ、得られた変異体のライブラリーは、親の蛍光団ではなく、むしろダイドロンの結合性および活性化に対して選択される。フローサイトメトリー(蛍光団の輝度を測定するためのHAエピトープタグで測定した発現の比率により、クローンの量子収量に相関する値がもたらされる)によって決定した、低濃度で、かつ高量子収量で蛍光発生的なダイドロンと結合し、活性化することができるクローンを収集し、配列決定する。
【0123】
本明細書に記載するダイドロンおよびダイドロン系は、実質的にあらゆるアッセイ、蛍光団が有用である画像化システムに有用である。本明細書に詳しく記載する通り、ダイドロンは、細胞または生物体におけるリアルタイムの画像化において有用である。一例として、アクチベーター/選択性成分を含むポリペプチドを、遺伝学的なものを含むあらゆる手段によって、ポリペプチドを発現するための遺伝子を含む核酸との、細胞または生物体の、一過性または永続的な、トランスフェクション、形質導入、または形質転換によって、細胞中に導入することができる。あるいは、ポリペプチドを細胞または生物体中に導入することができる。アクチベーターおよび選択性成分を含む融合タンパク質または複合体、例えば抗体を、例えば固定した細胞または組織のインサイチューのアッセイに用いることができる。このような一実施形態において、所望の細胞または組織成分が細胞または組織中に局在することができるように、選択性成分は、細胞または組織の構成成分、例えば、細胞または組織のタンパク質に結合しており、アクチベーターはダイドロンに結合している。複合体中に、または融合タンパク質として選択性成分に結合しているアクチベーターを、ELISAまたはRIAに類似の蛍光アッセイ、例えば、サンドイッチ型のアッセイにおいて用いることもできる。同様に、アクチベーター、および抗体または核酸などの選択性成分を含むプローブを、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、もしくはサザンブロット、またはEMSA(電気泳動移動度シフト解析)、または他の電気泳動法における、タンパク質または核酸の検出に用いることができる。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
ダイドロンの合成
NMRスペクトルをBruker Avance 500MHz機器上で得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)実験を、Xcaliburバージョン1.2を用いてFinnigan LCQ四重極イオントラップ質量分析計上で行った。最終生成物である「TCM」13の質量分析をThermoFisher Scientific LCQクラシック、およびXcaliburバージョン1.3ソフトウエアで行った。試料を脱塩し、自家製3cm C−18キャピラリー液体クロマトグラフィーカラムで濃縮し、質量分析計中に直接エレクトロスプレーした。色素溶液を1μLの体積において高圧容器充填し、水100%からメタノール20%の「勾配」ステップを用いて、試料をカラムから約1μ/分で溶出した。
【0125】
図6A〜Dにおける小型のマルチ発色団のダイドロンを、Frechet(非特許文献37)の収束合成に類似の戦略によって調製し、逆相液体クロマトグラフィーによって精製し、Cy3ドナー分子1、2、および4個が分子の周囲を共有結合性および化学量論的に装飾し、単一のMG消光性の基がダイドロンのベースにある分枝されている構造を得た。
【0126】
図7A〜7Cは、化合物CM、BCM、およびTCMに対する以下の合成模式図を表す。NMRスペクトルをBruker Avance 500MHz機器上で得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)実験を、Xcaliburバージョン1.2を用いてFinnigan LCQ四重極イオントラップ質量分析計上で行った。最終生成物である「TCM」13の質量分析をThermoFisher Scientific LCQクラシック、およびXcaliburバージョン1.3ソフトウエアで行った。試料を脱塩し、自家製3cm C−18キャピラリー液体クロマトグラフィーカラムで濃縮し、質量分析計中に直接エレクトロスプレーした。色素溶液を1μLの体積において高圧容器充填し、水100%からメタノール20%の「勾配」ステップを用いて、試料をカラムから約1μ/分で溶出した。
【0127】
化合物3 「Cy3.29−マラカイトグリーン」(CM)
1−{6−[(2−{[4−(4−{[4−(ジメチルアミノ)フェニル][4−(ジメチルイミノ)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン]メチル}フェノキシ)ブタノイル]アミノ}エチル)アミノ]−6−オキソヘキシル}−2−[(1E,3Z)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン)プロパ(prop)−1−エン−1−イル]−3,3−ジメチル−3H−インドリウム−5−スルホネート
Cy3.29 1(7mg、0.001mmol)を、乾燥DMF0.2mL中に溶解した。TSTU(6mg, 0.002mmol)を加え、その後ジイソプロピルエチルアミン「DIPEA」(3.5μL;0.002mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル](4−(−9−ミノ(mino)−6−アザ−1−オキサ−5−オキソ−ノニル)フェニル)メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリジン(ylidene)]−N−メチル−メタナミウム(methanaminium)クロリド 2(5mg;0.001mmol)(非特許文献38)を加え、その後(3.5μL;0.002nmol)DIEAを加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。エチルエーテルを加えて(10mL)生成物を沈澱させた。有機相をデカントした。残渣をアセトニトリル/水/1%TFA中に溶解した。反応混合物を、μ−Bondapak 10μm 7.8×300mm RP−18カラム;直線勾配溶出液20〜40%アセトニトリル/水/0.1TFA、20分/流速3mLによって分離した。収量:8mg(74%)。
C60H72N6O9S2、ESI/MS:[H+]m/z(モノアイソトピックイオン):1085.4.UV/VIS:エタノールλmax=462;558;602;水λmax=462;534;620;1H-NMR(Me(Mc)OD):8.53 (1H, t, J=13.5Hz, Cy3); 7.93 (1H, d, J=1.5Hz, Cy3);7.92 (1H, d, J=1.5Hz, Cy3); 7.90 (2H, m, Cy3); 7.39 (2H, 不明瞭, Cy3); 7.38 (4H, d, J=9.3Hz, MG); 7.33 (2H, d, J=8.7, MG); 7.16 (2H, d, J=8.7Hz); 7.02 (4H, d, J=9.3Hz, MG); 6.53 (1H, d, J=13.5Hz, Cy3); 6.50 (1H, d, J=13.5Hz, Cy3); 4.21 (2H, m, Cy3); 4.16 (2H, m, MG); 4.15 (2H, m, Cy3); 3.31 (12H, s, MG); 2.80(4U(H), s, リンカー); 2.40 (2H, t, J=7.4Hz, MG); 2.19 (2H, t, J=7.2Hz, Cy3), 2.11 (2H, m, MG); 1.84 (2H, m, Cy3); 1.74(12Hs, Cy3); 1.68 (2H, m, Cy3), 1.44 (2H, m, Cy3); 1.41 (3H, t, J=7.2Hz, Cy3).
【0128】
化合物5
4,4’−[(4−[3−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル)プロポキシフェニル(propoxyphenyl)]メチレン]ビス[N,N−ジメチル−ベンゼンアミン
4−(3−フタルイミドプロポキシ(Phthalimidopropoxy))ベンズアルデヒド(非特許文献38)4(6.18g、20mmol)、N,N−ジメチルアニリン(4.87g、40mmol)および塩化亜鉛(2.8g、20mmol)を無水エタノール(250mL)中に溶解した。反応混合物を2日間還流した。1日後、生成物が反応混合物から沈澱し始めた。熱性反応混合物をろ過して、融点184〜188℃の明黄緑色固体5.78gを得た(50%)。
C34H35N3O3MW:533.67g/mol;1H-NMR: (CDCl3) 7.85 (2H, m); 7.72 (2H, m); 6.99 (6H, m); 6.70(6H, m); 5.32 (1H, s); 4.02 (2H, t, J=6.0Hz); 3.92 (2H, t, J-6.8Hz); 2.93 (12H, s); 2.18 (2H, m).
【0129】
化合物6 「MGフタルイミド」
[4−[[4−([3−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル))プロポキシフェニル(propoxyphenyl)][4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウムクロリド(methanaminium)]
4,4’−[(4−[3−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール(isoindol)−2−イル)プロポキシフェニル(propoxyphenyl)]メチレン]ビス[N,N−ジメチル−ベンゼンアミン5(533mg、1mmol)を酢酸エチル(50mL)中に溶解した。テトラクロロベンゾキノン(Tetrachlorobenzoquinone)(368mg、1.5mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を2時間還流した。室温に冷却後、緑色固体をろ過して取り出し酢酸エチルで洗浄した。Mp167〜172℃。定量的収率C34H34ClN3O3、MW:568.12g/mol。
1H-NMR: (CDCl3) 7.87 (2H, m); 7.76 (2H, m); 7.37 (4H, d); 7.28 (2H, d); 6.97 (6H, m); 4.21 (2H, t); 3.97 (2H, t); 3.37 (12H, s); 2.28 (2H, 五重線).
【0130】
化合物7「MG−アミン」
[4−[[4−[(3−アミノプロポキシ(Aminopropoxy))フェニル][4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウム(methanaminium)クロライド
MG−フタルイミド 6(568.12、1mmol)を、無水エタノール150ml中に溶解した。無水ヒドラジン(0.1mL、3mmol)を加え、反応混合物を55℃で3時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ろ過した。ろ液を1M HCl/エタノールで酸性化した。固体をろ過除去し、ろ液を濃縮した。残渣をRP−18上カラムクロマトグラフィーによって精製した。溶出液:水/アセトニトリル/0.1%TFA 10〜40%アセトニトリルの勾配。
1H-NMR: (MeOH) 7.45 (4H, d, J=9.1Hz); 7.41 (2H, d, J=8.7Hz); 7.24 (2H, d, J=8.6Hz); 7.06 (4H, d, J=9.3Hz); 4.32 (2H, t, J=7.2Hz); 3.33 (12H, s); 3.25 (2H, t, J=7.2Hz); 2.25 (2H, m).
【0131】
化合物9「MG−T−ビスアミン(bisamine)」
N−[4−({4−[3−({[(1,3−ジアミノプロパン−2−イル)オキシ]アセチル}アミノ)プロポキシ]フェニル}[4(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウム(methanaminium)クロライド 2−[2−[[(1,1−ジメチルエトキシ(Dimethylethoxy))カルボニル]アミノ]−1−[[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]メチル]エトキシ]−酢酸8(非特許文献39)(17.4mg;0.05mmol)を乾燥DMF0.1mL中に溶解した。TSTU(16mg;0.052mmol)を加え、DIPEA(17μL;0.01mmol)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した。MG−アミン 7(43.8mg;0.1mmol)を加え、その後DIPEA(17μL;0.01mmol)を加えた。反応混合物を一夜撹拌した。エーテル(3mL)を加えることによって生成物を沈澱させた。沈殿物をエーテルで洗浄した。残渣をアセトニトリル(0.5mL)中に溶解した。トリフルオロ酢酸(0.1mL)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。真空下で溶媒を除去し、残渣をHPLC;RP−18アセトニトリル/水/0.1%TFA;直線勾配アセトニトリル30%〜100%;25分によって精製した。
C31H42N5O3Cl×2TFA;1H-NMR: (CD3CN) 7.56 (1H, s, NHC(O)); 7.36 (4H, d, J=8.3Hz); 7.30(2H, d, J=7.8Hz); 7.12 (2H, d, J=8.3Hz); 6.95(4H, d, J=8.6Hz); 4.23 (2H, s); 4.14 (2H, t, J=6.8Hz); 4, 11 (1H, m); 3.40 (2H, m); 2.3-3.17 (4H, m); 3.25 (12H. s); 2.02 (2H, m).
【0132】
化合物10「ビス−Cy3−マラカイトグリーン」(BCM)
2,2’−{[2−(2−{[3−(4−{[4−(ジメチルアミノ)オヘニル(ohenyl)(ohenyl)][4−ジメチルイミノ(dimethyliiminio))シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン]メチル}フェノキシ)プロピル]アミノ}−2−オキソエトキシ)プロパン−1,3−ジイル]ビス[イミノ(6−オキソヘキサン−6,1−ジイル)(3,3−ジメチル−5−スルホネート−1H−インドール−1−イル−2−イリデン)(1E,3E)プロパ(prop)−1−エン−1−イル−3−イリデン]}ビス(1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム(indolium)−5−スルホネート)
乾燥DMF0.1mL中に溶解したMG−T 9(6mg、0.01mmol)を、Cy3.29−OSu(28mg、0.04mol)のDMF0.1mL溶液に加えた。DIPEA(17μL)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。エチルエーテル(2mL)を加えることによって、反応生成物を沈澱させた。有機相をデカントし、残渣をエチルエーテルの別の部分で洗浄した。残渣に水(2mL)を加えた。水不溶性の残渣を水で数回洗浄して過剰のCy3.29を除去し、アセトニトリル/水=40/60混液中に溶解し、HPLC;RP−18(30%アセトニトリル〜100%アセトニトリル;25分にわたる直線勾配)によって精製した。
C93H112N9O17S4 ESIMS(ネガティブ)[M-1]m/z 1754.73モノアイソトープ(monoisotope)。1H-NMR: (MeOD) 8.53 (2H, dd, J= 13.5Hz, Cy3); 7.94 (2H, d, J=1.5Hz, Cy3); 7.92 (2H, d, J=1.5Hz, Cy3); 7.91 (2H, dd, J=8.3Hz, 1.5Hz, Cy3);7.88 (2H, dd, J=8.3Hz, 1.5Hz, Cy3); 7.38 (2H, d, J=8.3Hz, Cy3); 7.37 (2H, d, J=8.3Hz, Cy3);7.34 (4H, d, J=9.3Hz, MG); 7.30 (2H, d, J=8.8Hz, MG); 7.14 (2H, d, J=8.8Hz, MG); 7.00 (4H, d, J=9.3Hz MG); 6.54(2H, d, J=13.5Hz, Cy3); 6.52 (2H, d, J=13.5Hz, Cy3); 4.22 (4H, m, Cy3); 4.18 (2H, m, MG); 4.16 (4H, m, Cy3);4.03 (2U, s, リンカー); 3.44 (2H, 不明瞭, MG); 3.29 (12H, s, MG); 3.43 (1H, m, リンカー); 3.25 (2H, m, リンカー); 3.16(2H, m, リンカー); 2.23 (4H, t, J=7.4Hz, Cy3); 2.05 (2H, m, MG); 1.84 (4H, m, Cy3); 1.74 (24H, s, Cy3); 1.67(4H, m, Cy3); 1.43 (4H. m, Cy3); 1.42 (6H, t, J=7.2Hz, Cy3).
【0133】
化合物11「MG−TT−Boc」
N−(4−{(4−{[7−{[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−13−(6−{[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−11,11−ジメチル−3,9−ジオキソ−5,10−ジオキサ−2,8−ジアザドデク(diazadodec)−1−イル)−2,2−ジメチル−4,10,16−トリオキソ−3,8,14−トリオキサ−5,11,17−トリアザイコサン(triazaicosan)−20−イル]オキシ}フェニル)[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチリデン(methylidene)}シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン)−N−メチルメタナミウム(methylmethanaminium)クロライド
2−[2−[[(1,1−ジメチルメトキシ)カルボニル]アミノ]−1−[[[(1,1ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]メチル]エトキシ]−酢酸 8(非特許文献38)(35mg;0.1mmol)の乾燥DMF溶液0.1mLに、TSTU(32mg;0.12mmol)を加え、DIPEA(34μL;0.2mmol)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した。反応が完了した後、「MG−T」9(24mg;0.04mmol)を加え、その後DIPEA(34μL;0.1mmol)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。エーテル(3mL)を加えることによって生成物を沈澱させた。沈殿物をクロロホルム中に溶解し、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/5〜30%メタノール/0.1%アンモニア)によって精製した。生成物の分画を濃縮して、暗緑色樹脂40mgを得た(81%)。
C41H62N9O17+Cl-ESI:MS+792.47モノアイソトープ(monoisotope)。1H-NMR: (CDCl3, 500MHz) δ 8.55 (2H, m, アミド); 8.43 (1H, m, アミド); 7.39 (4H, d, J=9.1Hz); 7.30 (2H, d, J=8.4Hz); 7.14 (2H, d, J=8.4Hz); 6.90 (4H, d, J=8.9Hz); 5.90 (4H, m, Boc-アミド); 4.27 (2H, t, J=6.4Hz); 4.13 (2H, s); 4.05 (4H, s); 3.53 (6H, m); 3.47 (2H, m); 3.35 (5H, m); 3.32 (12H, s, MG-N-メチル); 3.15 (4H, m); 2.15 (2H, m); 1.43 (36H, s, Boc).
【0134】
化合物12「MG−TT」
N−(4−{[4−({15−アミノ−14−(アミノメチル)−8−[({[(1,3−ジアミノプロパン−2−イル)オキシ]アセチル}アミノ)メチル]−5,11−ジオキソ−7,13−ジオキサ−4,10−ジアザペンタデク(-diazapentadec)−1−イル}オキシ)フェニル][4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチリデン(methylidene)}シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン)−N−メチルメタンアミニウム(methyl methanaminium)クロライド
MG−TT−BOC 11 40mgのクロロホルム(1ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(100μL)を加えた。反応混合物を一夜撹拌した。反応混合物から生成物が沈澱する。上清を捨て、残渣をクロロホルムで洗浄した(2×1mL)。生成物をそのまま次の反応ステップにおいて用いた。
【0135】
ESIMS(ネガティブ)[M+1]m/z792.5モノアイソトープ。1H-NMR: (MeOD, 500MHz) δ 7.42 (4H, d, J=9.1Hz); 7.37 (2H, d, J=8.8Hz); 7.18 (2H, d, J=8.8Hz); 7.04 (4H, d, J=9.4Hz); 4.30 (4H, s); 4.21 (2H, t, J=6.1Hz); 4.14 (2H, s); 4.06 (2H, m); 3.64 (1H, m); 3.47 (2H, t, J=7.2Hz); 3.46 (2H, dd; J=14.4Hz, 4.9Hz); 3.38 (2H, dd, J=14.1Hz, 5.8Hz); 3.33 (12H, s); 3.30 (4H, dd, J=14.4Hz, 3.8Hz); 3.17 (4H, dd, J=13.8Hz, 7.1Hz); 2.09 (2H, 五重線).
【0136】
化合物13「テトラCy3−マラカイトグリーン」(TCM)
三ナトリウム2−{(1E,3E)−3−[1−(15−[2−({3−[4−({4−[クロロ(ジメチル)−l5−アザイリデン(azanylidene)]シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン}[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル)フェノキシ]プロピル}アミノ)−2−オキソエトキシ(oxoethoxy)]−29−{(2E)−2−[(2E)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−3H−インドリウム(indolium)−2−イル)
プロパ(prop)−2−エン−1−イリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホネート−2,3−ジヒドロ−1H−インドール(indolium)−1−イル}−21−{[(6−{(2E)−2−[(2E)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−3H−インドリウム−2−イル)プロパ(prop)−2−エン−1−イリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホネート−2,3−ジヒドロ−1H−インドール(indolium)−1−イル}ヘキサノイル)アミノ]メチル}−9−{[(6−{(2Z)−2−[(2E)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−3H−インドリウム−2−イル)プロパ(prop)−2−エン−1−イリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホネート−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル}ヘキサノイル)アミノ]メチル}−6,12,18,24−テトラオキソ−10,20−ジオキサ−7,13,17,23−テトラアザノナコス(tetraazanonacos)−1−イル)−3,3−ジメチル−5−スルホネート−1H−インドール(indolium)−2(3H)−イリデン]プロパ(prop)−1−エン−1−イル}−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム−5−スルホネート
【0137】
「MG−TT」12(16.5mg、0.02mmol)の0.5M炭酸水素ナトリウム/20%アセトニトリル(0.5mL)溶液に、固体Cy3.29−OSu(100mg、0.15mmol)を少しずつ、撹拌しながら6時間かけて加えた。標識化反応の進行を、HPLC RP18−水/アセトニトリル;10〜100%直線勾配30分(550nmおよび630nmで検出)によってモニタリングした。最後の添加の後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をBio−gel P2カラム(19mm×500mm)を通過させて未反応のCy3.29を反応生成物から分離した。移動の速い分画を収集し、濃縮し、u−Bondapak RP−18 prep HPLCカラム(19mm×300mm)流速flow:10mL/分 水/アセトニトリル(10〜25% 30分;30%〜100% 30分)上で分離した。収量:15mg(22%)。C165H202N17O15S8Na3 LC−ESIMS(ネガティブ)[M-3]m/z1079.1、モノアイソトープ;C165H202N17O15S8-3に対する計算値m/z1079.07。1H-NMR.
【0138】
(実施例2)
最初のプローブデザインは、十分に特徴付けられた有機蛍光色素および活性化可能な蛍光団(fluorogen)に基づくものである(図8)。マラカイトグリーンは、選択されたscFvによって高度に蛍光状態に(>15,000倍)活性化される、656nmで発光極大の、非蛍光性のトリフェニルメタン色素である。本発明者らのプローブの効率は、ドナー(Cy3)分子と蛍光団分子との間の著しいエネルギー移動に依存する。全てのモデルに対するフェルスター半径(radii)は、Stryerによって提唱された式から算出された。これらの数値およびPAMAMデンドロンの実験上の性質の平均から、本発明者らは、本発明者らの各々の潜在的な色素対に対するデンドロン世代の関数として、エネルギー伝達効率(E)を形作ることができた。図9(上)は、各対に対する世代の関数としてのEの値を示す。これらの色素対の各々の最高世代4までの選択に対して、効率は99%を超え、高吸光度で劇的な切替えの可能性がある試薬が提供される。
【0139】
これらのプローブの性質が溶液色素の性質にしたがうことを想定して、本発明者らは、EGFPと比較し、アクセプター色素の励起の増強、および単一分子分析における輝度の増強(図9下)に対する可能性を分析した。この分析において、ドナー色素の吸光係数に、所与のデンドロンの世代における官能基の数を乗じた。アクセプターの効率的な吸光度をもたらすために、この数は上記で計算されたFRET効率(E)によって決定された。これらの値は、活性化条件下、アクセプター分子の報告されている量子収量によって決定された(MG−scFv QY=0.24)。これは、EGFPと比べた活性化された分子の輝度の尺度をもたらし(53,000M-1cm-1およびQY=0.60)、単一の可視の蛍光タンパク質よりも潜在的に5〜140倍明るいプローブを開発することができ、標準的な蛍光顕微鏡における単一分子検出の範囲に容易に移行することを実証した。さらに、青色から黄色への励起のシフトにより、自己蛍光は劇的に低減し、長いストークスのシフトおよび近赤外の発光により検出効率および効率的なシグナル対ノイズが改善される。
【0140】
ドナーアレイの蛍光に対する高充填の影響を試験するために、2つのシスタミンコアPAMAMデンドリマー(世代2〜16NH2および世代3〜32NH2)を過剰の単反応性Cy3−NHSエステルで標識した。ゲルろ過によって過剰の色素を除去した後、得られた巨大分子を電気泳動によって分析し、正味の移動度が低いことを見出した。各Cy3分子は1つの負の正味荷電を保有するので、完全に修飾されているデンドロンは−2の正味荷電を有さなければならない。これらのコンジュゲートにおいて観察される移動度の欠如は、これらが実質的に修飾されていることを示唆するが、質量分析ではこれはまだ確認されていない。しかし、これらのコンジュゲートにより、ドナー消光の潜在的な危険性の評価が可能である。驚くべきことに、本発明者らは、色素は著しく込み合っているのにかかわらず、色素ごとの量子効率はわずかにしか低減されないことを見出した(表1)。さらに、著しいシフトまたは空間の変化は見出されず、これらのドナーアレイは溶液中では凝集物を形成しないことを示していた。
【0141】
【表1】
【0142】
蛍光発生的なダイドロンは、Cy3と現存する(および予想される)蛍光団との間のエネルギー移動対としてデザインされている。マラカイトグリーンは、選択されたscFvによって高度に蛍光状態に(>15,000倍)活性化され、656nmで発光極大の、本質的に非蛍光性のトリフェニルメタン色素である。プローブは、ドナー(Cy3)分子と蛍光団分子との間の効果的なエネルギー移動に依存している。このプロジェクトにおける蛍光発生的なダイドロンを有する蛍光モジュールに発展するためのより赤色の蛍光団を図10に示すが、これには、これらのカルボキシル基によって連結するデンドロンに結合することができる、マラカイトグリーンのアセチレン性誘導体(発光730nm)、DIR、およびインドシアニングリーンの誘導体(発光約800nm)が含まれる。マラカイトグリーンのアセチレン性誘導体、およびインドシアニングリーンの誘導体が選択されているが、これはこれらが水中で非常に低い量子収量(≦0.003)、および環境的に感受性がある蛍光の性質を有するからであり、これは潜在的な蛍光発生性の最強の指標の1つである。
【0143】
(実施例3)
方法
バッファー系。記載がない場合は、全実験において、修飾されたリン酸緩衝食塩水系(PBS+)を用いた(37mM NaCl1、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、K2mM H2PO4、2mM EDTA、0.1%(重量/容量) Pluronic F−127(Anatrace)、pH7.4)。
【0144】
吸収スペクトル。HP Lambda45分光光度計でスペクトルを取った。MG−2pの吸光係数は、エタノール/5%HAc中同じ溶媒中マラカイトグリーンシュウ酸塩(ACROS)の半塩に対してキャリブレーションすることによって、91,500M-1cm-1であると決定された。MG−2pの酸性化したエタノール/PBS+の吸光度比により、PBS+中の吸光係数50,700M-1cm-1がもたらされた。次いで、この値に、MG−2pならびにCM、BCM、およびTCMダイドロンのMGバンドがL5−MG E52Dに結合した場合に観察されるファクターの増大(それぞれ1.56、1.78、1.93、1.80)を乗じて、各蛍光団に対する効果的なMGの吸光係数を得た。552nMのダイドロン吸効率を、効果的なMG係数に割り当てることで、表2に報告するダイドロンの吸光係数がもたらされた。
【0145】
蛍光スペクトル。Quantamasterモノクロメーター蛍光計(Photon Technology International)でスペクトルを取った。蛍光モジュール(図11)を評価するために、約300nMのMG−2pまたはダイドロンを、3μMのL5−MG E52D FAPと室温で2時間平衡にした後、スペクトルを取った。蛍光モジュールおよび遊離の蛍光団のスペクトルを、PBSのバックグラウンドおよび波長依存性の光電子増倍管の感度に対して補正した。
【0146】
量子収量。蛍光モジュールを上記の通り構築し、アクセプターのMG励起バンドに基づく量子収量を、キャリブレーション色素としてCy5.18を用いて記載されている通りに決定した(非特許文献1)。620nmの励起で決定された量子収量(表2)は、590nmの励起で決定された未報告の量子収量と本質的に同じであった(<5%差)。
【0147】
マイクロプレート蛍光定量法。マイクロプレート蛍光定量法を、酵母細胞5×106個/ウェルを有する96ウェルマイクロプレートを用いてTecan Safire2マイクロプレートリーダー上で行った。蛍光の読みを、FACS Divaフローサイトメーターを用いて免疫標識したscFv c−mycエピトープの分析によって、酵母表面にディスプレイされたFAPの数に対して標準化した(非特許文献1)。
【0148】
顕微鏡。画像は全て、Zeiss 510 MetaNLO共焦点顕微鏡で取った(設定に対して、補足情報の表3を参照されたい)。顕微鏡の本来の12ビットのダイナミックレンジを用いた画像分析をZeiss ZEN 2007ソフトウエアを用いて行った。新たに収集し、洗浄した生酵母細胞(PBS w/o Pluronic F−127またはEDTA中、約3×107細胞/mlの懸濁液20μl)を、コンカナバリン−A 1mg/mlで予めコーティングした、可視光域ウィンドウ14mmを有する35mm培養皿(MatTek Corporation、Ashland、MA)上に固定化した。10分間、細胞を結合させ、次いで、好適な濃度のダイドロンを含むPBS+またはscFv誘導培地1mlで重層し(非特許文献1)、ロータリーシェーカー上で30分間穏やかに混和して色素と細胞とを確実に平衡にした。非コーティングの35mm培養皿上、DMEM中HeLa細胞を増殖させた(上記を参照されたい)。下記の通り、マイクロインジェクションおよび共焦点顕微鏡を、DMEM中で行った。図6における小型マルチ発色団のダイドロンを、実施例1に記載する通りに調製した。
【0149】
ダイドロンの性質を詳しく研究するために、本発明者らは、定向進化によってMGに結合したときに親和性および輝度を増大するオリジナルのL5−MGクローン(特許文献1を参照されたい)由来のアミノ酸110個のscFv(L5−MG E52D)を使用し、定向進化が、色素タンパク質および蛍光タンパク質よりも大幅に大きい輝度を有するダイドロン/FAP蛍光モジュールを生成することができることを実証するために、本発明者らは引き続き、さらなるL5−MG誘導体であるL91SおよびE52D L91Sを特徴付けした(図12)。さらなるFAPを図12Bに示す。
【0150】
分泌されたL5−MGアクチベーターおよび進化した誘導体のscFvのペプチド配列を、図12Aに示す。ダイドロンに結合するユニットを含む、アミノ酸110個の抗体軽鎖可変領域に下線をつけてある。発現の表現型(下線付)を供与する親のL5−MGの定向進化(非特許文献1)によって獲得されるアミノ酸;灰色で強調したアミノ酸は、発現の変化に相関しない変異である。L5−MG E52Dは、L5−MGに比べて明るく、細胞表面上にディスプレイされる場合、ダイドロンにより緊密に結合するので、ダイドロンシリーズの系統的研究に選択された、最初に特徴付けられた誘導体であった(図13)。L91S誘導体はE52D変異体よりも相当明るいが、ダイドロンシリーズにかなり不十分に結合し、定量比較にあまり適さない(図13)。引き続き特徴付けられた二重変異体のE52D L91Sは、E52Dの高い結合親和性を保持し、L91Sの輝度を改善することが見出され(図13)、したがってダイドロンを用いた画像化およびアッセイの応用に対する現在の選りぬきのFAPである。
【0151】
図13は、定向進化によるTCM蛍光モジュールの改善を示す。L5−MG FAPを変異誘発に曝し、酵母細胞表面にディスプレイされたFAPを、MG−2pを用いて、輝度および結合親和性の増大に対してスクリーニングした。示した点突然変異を有する、L5−MGをディスプレイする酵母細胞および変異体(図14)を、96ウェルマイクロプレートのフォーマットにおいて、TCM蛍光(励起554nm/発光660nm)に対してPBS+中アッセイした。データを、免疫染色したc−mycエピトープのFACS分析によって決定された、発現されたFAPの数に対して標準化する。
【0152】
L5−MG E52Dに結合しているダイドロンのスペクトルの特徴付け
ダイドロンは全て溶液中で遊離であり、活性化するポリペプチドの非存在下でMGの量子収量が非常に低いことと一致して、MGによるCy3蛍光の>99%の消光(表2)、およびMGに関連するスペクトル範囲において本質的に検出できない蛍光を示した(非特許文献2)。結合していないTCMダイドロンの蛍光の量子収量は<0.0005であり、ドナーの非常に直接的な発光は効率的に消光され、FAPが活性化するダイドロンの検出を妨害しない。
【0153】
【表2】
【0154】
a可溶性ダイドロン/L5−MG E52D複合体の決定。b励起620nmで決定されたMG励起ピークに対する量子収量。c非特許文献40を参照されたい。d細胞表面にディスプレイされたTCM30nMのL5−MG E52D L91S対L5−MG E52D蛍光の比率として図13におけるデータから。e(染色された集団の中央値−非染色の対照の中央値)としてデータから算出された分子および約数。fL5−MG E52Dをディスプレイする酵母細胞表面結合性ダイドロンに対して決定。g合計の吸収で標準化したダイドロンの蛍光(530〜800nm)を、合計の吸収で標準化したCy3.29の蛍光によって除して算出。MGの吸収のピークをダイドロンの標準化に用いた。
【0155】
TCMダイドロンを哺乳動物の生存細胞の細胞質中に注射すると、同様の画像化条件下のポジティブのシグナルに比べて本質的に検出できない、低レベルの蛍光を生成した。
【0156】
ダイドロンの、酵母細胞表面がディスプレイするscFvに対する結合親和性を、以下の通り決定した。L5−MG E52Dを発現するJAR200酵母細胞を、指摘されたダイドロン濃度の存在下、修飾されたPBS+バッファー中細胞107個/mlに懸濁した。Safire2プレート蛍光光度計で蛍光強度を読み取った。表2に報告したKD値を、ここに示す1サイト(site)の双曲線結合曲線に対するGraphPad Prism4ソフトウエアの適合を用いて決定した。これらの条件下で1nM未満のKD値を正確に決定することはできない。蛍光レベルがプラトーであることは、MGバンドの635nmのレーザー励起を用いたフローサイトメトリー分析において見られた相対的な蛍光シグナルに緊密に対応した(表3)。
【0157】
【表3】
【0158】
PBS+バッファー中ダイドロン100nMのスペクトルを記載した通りに取り、PBS+バックグラウンドおよび波長依存性の光電子増倍管の感度に対して補正した。遊離のダイドロンの蛍光は、L5−MG E52D FAPが活性化するダイドロンに比べて大幅に低減される。比較として、遊離TCMの最大蛍光は572nmで16,430であるが、同じ実験においてFAP結合したTCMの蛍光は676nmで1,675,000である。
【0159】
過剰のL5−MG E52Dの存在下の色素分子の単一濃度で、MGプローブで正規化した励起スペクトル(710nm検出)は、Cy3励起がCy3数に正比例して増大する寄与を明らかにしており、これらの簡単な修飾が、MG単独に比べて構築体の全体の励起の標本(cross-section)を実質的に増強することを示している(図11Aおよび表2)。標本(cross-section)の増強の大きさは、Cy3の吸光度(ε=150,000M-1cm-1)と良好に相関する(非特許文献41)。MG励起ピークにおける全てのダイドロンの量子収量は本質的に一定であった。対応する蛍光発光スペクトルは、結合しているMG色素から近赤外発光へのCy3の励起のほとんど完全な移動(>99%)を示し、増大する世代のダイドロンと一緒に用いる場合の、プローブ構築体の輝度における本質的な増大を示している(図11B)。Cy3励起およびMG励起の相対的な量子収量は、ドナーの励起は競合する放射性および非放射性のプロセスにはほとんど失われないことを指摘している(表4)。これらの知見は、ダイドロンにおける本質的に非蛍光性または自己消光性のドナーであっても、明るい蛍光に対して高度に効率的な増感性の構造を生成し得る概念を支持するものである(非特許文献42および非特許文献43)。
【0160】
【表4】
【0161】
E52D FAPに結合している場合、MG−2pおよび全てのダイドロンMGアクセプターの吸収はほぼ2倍増大し、これらの吸収最大は赤色シフトし、約642nmで合体し、アクセプターの光物理的性質はFAPの結合ポケットによって特異的に調整され、ドナーとは大きく無関係であることを示唆している。これとは対照的にFAPに結合しているダイドロンおよび遊離のCy3のドナー波長での吸収スペクトルには同様の特徴があり、Cy3の光物理学は大幅に変更されないことを示唆している。
【0162】
生存細胞表面上に発現されるダイドロン/L5−MG E52D蛍光モジュール
L5−MG E52D蛍光モジュールのin vitroの分光学的性質は、細胞壁上に融合タンパク質として蛍光団を活性化するscFvを発現する生酵母細胞の懸濁液にダイドロン(300nM)を直接加えた場合に再現される。フローサイトメトリーは532nmで励起した場合の輝度における段階的上昇、および635nmで励起した場合のほとんど一定の輝度(図15)を明らかにしており、励起スペクトル、および620nmの励起で測定される一定の量子収量に見られる違いに十分対応している。635nm対532nmで励起した酵母細胞の間の染色比を分析することで、(Cy3)nMG構築体における約2(n=1)、3(n=2)、および7(n=4)倍(a factor of)の特異的な輝度における増大が明らかにされる(表2および表3)。したがって、この取組みは、ドナーアレイによってもたらされる増強された吸光度との直接的な相関において、in vitroおよびin vivoでの分子の輝度を増大する。
【0163】
ダイドロンが媒介するシグナル増幅は、生存細胞の蛍光顕微鏡にも応用することができる。その表面上にL5−MG E52D融合タンパク質を発現する酵母細胞(非特許文献1、配列番号1および2の配列については図4Aを参照されたく、また、scFvアクチベーターと選択性成分との間の有用な融合タンパク質のさらなる例については特許文献1も参照されたい)を、レーザー走査共焦点顕微鏡下で画像化した(図14)。酵母細胞はその表面上を特異的に標識し、561nmの励起で画像化した場合12ビット画像のフルダイナミックレンジを消費する。FAPを発現しない細胞から、または細胞間領域から、蛍光は実質的に検出されない。ダイドロンのいくつかの選択的な退色が、このレーザー照射下で観察され、ダイドロンの増強を約3倍まで低減した。
【0164】
定向進化によるダイドロン蛍光モジュールのさらなる改善
MG−2p/L5−MG E52D蛍光モジュールは中程度の量子収量を有するが、TCMダイドロンはそのシグナルを増幅してEGFPおよびほとんどの小型分子タンパク質タグほどの計算された分子輝度をもたらすことができる(表2)。親和性成熟した本発明者らのL5−MG FAPの中で、本発明者らは、MG−2p/L5−MG蛍光モジュールの量子収量を数倍増大する単一点突然変異を含むが、MG−2pおよびダイドロンをかなりゆるく結合するL5−MG L91Sを特徴付けた。しかし、E25D FAPに比べて、L91SおよびE52D変異を組み合わせると、同様の親和性でTCMに結合し、マイクロプレートのフォーマットにおいて生酵母を用いてアッセイした場合におよそ6倍大きい蛍光を生成するFAPを作り出すように相加的に振舞う(図13)。L5−MG E52D L91Sの改善された蛍光の性質は、非常に低濃度のダイドロンを用いて(図16Aおよび16B)、増殖メディウム(培地)中でさえ(図16Cおよび16D)、生酵母の表面を画像化した場合に明らかである。
【0165】
図16A〜16Dは、改善された蛍光モジュールでの生存細胞の表面画像化を示す。E52D(16A)またはE52D L91S(16B)の変異を有する、L5−MGを発現する酵母細胞を、示されたTCM濃度を用いて同一のCy3励起/発光で、Zeiss510 MetaNLO共焦点顕微鏡上、PBS+中、画像化した。スキャンのプロファイルは、10nM TCMでのE52D L91S二重変異体の蛍光は、10倍高いTCMでのE52D蛍光より約5倍高いことを示している。図14に比べてE52D蛍光モジュールの弱い見かけの蛍光は、異なる顕微鏡の設定によるものであり、TCMの結合の低減のためではない(図13)。FAPを発現しない酵母細胞の亜集団は蛍光を表さず、特異性に対する内部標準を構成する。
【0166】
増殖メディウム(培地)中の酵母のダイドロンベースの画像化。L5−MG E52D L91S scFvの発現を誘発するためにSGR+CAA培地中で増殖させた酵母を、コンカナバリンAでコーティングしたMatTekディッシュに直接加え、TCM50nMを含む同培地1mlで重層した。561/650〜710BP(バンドパス)の励起/発光の設定による取得共焦点画像のシグナルプロファイルプロットは、表面に限定された蛍光を表しており、細胞間バックグラウンドシグナルは非常に低い(図16C)。同一の画像化条件下において、PBS+を増殖メディウム(培地)に置き換えると、本質的に同じ結果が得られ(図16D)、メディウム(培地)において同じことを示す。
【0167】
考察
これらのダイドロンは、特異的な、遺伝的に標的化可能で切換え可能なアクセプター発色団が、共有結合的に結合したドナー分子からのエネルギー移動による効率的な励起に対して増強される、新しいクラスの蛍光検出試薬を代表するものである。これら合成の巨大分子の全体の分子量は、特に遺伝的に標的にされる蛍光プローブの輝度を改善するための代替の取組みに比べると、依然として小さい。さらに、これらダイドロンを活性化するのに必要とされる遺伝的な融合タンパク質は、GFPの半分未満のサイズであり得る(ここでは<13kDa)。本明細書に記載するフローサイトメトリー、マイクロプレートアッセイ、および顕微鏡によって示す通り、これらダイドロンは蛍光団/FAP複合体のin vivoの蛍光を大幅に増強する。TCM/L5−MG E52D L91S蛍光モジュールは、EGFP、および赤色蛍光の二ヒ素(biarsenical)複合体(ReAsH=34)よりほぼ5倍高く(表2)(非特許文献44)、入手可能な最良の単量体の赤色蛍光タンパク質より約10倍明るい(mCherry=16)(非特許文献45)推定された輝度値(160)を有する。ダイドロン蛍光モジュールは、長いストークスシフトおよび近赤外の発光を有し(mCherryおよびRcAsHに対して660nm対610nm)、これにより確実にこれらプローブは感度における実質的な改善をもたらす(非特許文献46)。ダイドロンでは、蛍光団の標的ペプチドに対する結合は、ドナーアレイをまたは結合部位近傍中へ運び、ペプチド−蛍光団全体の親和性を低減するが(表2)、これら複合体の安定性は依然として高い(E52D変異体に対して<20nM)。このような機能的な変形は、scFvまたは他の認識骨格の定向進化によって、補正され、または活用される。
【0168】
ドナー化学における変形を、このように、蛍光団/ペプチドの相互作用における変形と組み合わせてダイドロンの性質を改善することができる。所与のドナーアレイの検討において、改善された蛍光団の結合親和性および量子収量を選択することができる。ドナーアレイを、吸光係数を増強するようにデザインすることができるが、特定の蛍光団の多光子の標本(cross-section)を増強するなど、他の光学的性質を改善するようにデザインしてもよい。
【0169】
これらダイドロンの膜透過性の性質により、遺伝子融合に利用可能な細胞外ドメインを露出している原形質膜タンパク質に関与する広範囲の生物学的機能を研究するのに理想的となっている。これらの中には、細胞間シグナル伝達、イオンおよび代謝産物の伝達チャンネル、ならびに細胞認識および接着のタンパク質を媒介する受容体がある。細胞外ドメインの排他的な標識化により、これらタンパク質の検出は、これらの生物学的機能の部位に限定される。これとは対照的に、蛍光タンパク質がこれら同じ細胞外ドメインに融合すると、生合成および細胞内輸送の間の検出に曝され、細胞表面の機能に無関連のバックグラウンドシグナルが生成される(非特許文献1および非特許文献47)。本明細書に記載するダイドロンは、その対応物であるMG−2p同様、洗浄または他の処理なしに細胞メディウム(培地)に直接加えることができ、これら蛍光団を、膜タンパク質に応用されている他の低分子標識化方法と区別している。発現可能なプローブの感度の増強により、細胞生物学の研究における高レベルの過剰発現の必要性が低減され(非特許文献47)、発現レベルに関する人工産物を低減し得る代替の標識化の取組みが提供される。これらダイドロンは組織における細胞間間隙に効率的に浸透するのに十分小型であるので、トランスジェニック動物への注射は潜在的に可能である(非特許文献48)。
【0170】
本明細書に記載するダイドロンは、現在、フローサイトメトリーおよびマイクロプレートアッセイなどの応用に光学的なシグナルの増強をもたらし、個々の蛍光モジュールは合計の励起光束を中程度にするようにされている。さらなる努力により、おそらく、電子求引基をCy3ドナーに加えることによって(非特許文献49)、またはダイドロンの結合のオン/オフ比を増大するためのFAPの定向進化によって連続的に機能的な蛍光モジュールを再生することによって(非特許文献1)、共焦点蛍光顕微鏡では典型的である強力な照射下でのダイドロンの光安定性の改善が対処される。
【0171】
蛍光団を活性化するscFvは、細胞質および他の細胞間を還元する環境において機能し得る内部ジスルフィド結合を含んでおり、定向進化を用いてこのようなジスルフィドを除去し、scFvを細胞内機能に適合させてもよい(非特許文献50および非特許文献51)。次いで、ダイドロンを、有用性が最大になるように細胞中に導入するのが望ましい。マイクロインジェクション、孔形成、ダイドロンの物理化学的性質の修飾、ダイドロンへの輸送シグナルの付加、または原形質膜と融合することができるダイドロン−担体小胞もしくはエマルションの作製を含めた、膜貫通の送達のためのいくつかの取組みが利用可能である。本明細書に示すダイドロンのマイクロインジェクションに際する低活性化は、細胞内の使用は、特異性の問題ではなく、大きく送達の問題に依然としてあることを指摘している。
【0172】
参照によって本明細書に組み込まれる全ての参照に対して、あらゆる対立する用語、概念、または定義に関して、本文書が規制するものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所第5U54−RR022241号および第R01−NIH 1R01GM086237号の下、政府の支援で行われた。政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
蛍光検出の感度は、生物医学的研究、診断、および創薬において、蛍光試薬によって発光されるシグナルから有用な情報を得る上での制限となることが多い。蛍光検出の感度は、(1)検出系における蛍光試薬のコピー数、(2)検出機器の効率、および(3)試料中の内因性生物学的蛍光体から生じるバックグラウンドの蛍光および蛍光試薬の試料との非特異的結合から生じるバックグラウンドの蛍光に対する蛍光試薬の蛍光輝度に依存する。蛍光試薬の輝度は次に、蛍光シグナルを生成する試薬中の色素の量子効率および色素の吸光能力(吸光係数によって定量される)に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第08/092041号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,702,892号明細書
【特許文献3】米国特許第5,750,373号明細書
【特許文献4】米国特許第5,821,047号明細書
【特許文献5】米国特許第6,127,132号明細書
【特許文献6】米国特許第5,948,635号明細書
【特許文献7】米国特許第6,407,213号明細書
【特許文献8】米国特許第5,223,409号明細書
【特許文献9】米国特許第5,198,346号明細書
【特許文献10】米国特許第5,096,815号明細書
【特許文献11】米国特許第5,475,096号明細書
【特許文献12】米国特許第5,270,163号明細書
【特許文献13】国際公開第91/19813号パンフレット
【特許文献14】米国特許第5,707,796号明細書
【特許文献15】米国特許第5,580,737号明細書
【特許文献16】米国特許第5,567,588号明細書
【特許文献17】米国特許第5,496,938号明細書
【特許文献18】米国特許第5,683,867号明細書
【特許文献19】米国特許第5,660,985号明細書
【特許文献20】米国特許第5,637,459号明細書
【特許文献21】米国特許第6,131,580号明細書
【特許文献22】米国特許第6,248,558号明細書
【特許文献23】米国特許第4,215,05号明細書
【特許文献24】国際公開第91/06309号パンフレット
【特許文献25】日本国特許出願第1047381号明細書
【特許文献26】欧州特許出願公開第43075号明細書
【特許文献27】国際公開第93/04701号パンフレット
【特許文献28】国際公開第92/22635号パンフレット
【特許文献29】国際公開第92/20316号パンフレット
【特許文献30】国際公開第92/19749号パンフレット
【特許文献31】国際公開第92/06180号パンフレット
【特許文献32】米国特許第5,166,320号明細書
【非特許文献】
【0004】
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【非特許文献48】Rao, B. M.; Lauffenburger, D. A.; Wittrup, K. D. Nature Biotechnology 2005, 23, 191- 194
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、結果として同時に得られる蛍光検出における2つの重要な進歩と関係している。進歩の1つの構成要素は、試薬の励起波長でより大きな蛍光シグナルをもたらす、大きな有効吸光係数を有する蛍光試薬の作製である。進歩の他の局面は、新しい試薬は、標的化活性化剤によって蛍光状態に選択的に活性化され、そうでなければ、試料中に存在する場合は低い非特異的な蛍光を生成するということである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分子アセンブリー中の単一のアクセプター/クエンチャーを蛍光状態に変換することによって活性化され得る、高吸光度で消光クエンチャー付加「ダイドロン」をデザインするものである。クエンチャーは、発現可能な蛍光団活性化ペプチド(FAP)などの、独特の相補的な蛍光団アクチベーターに非共有的に結合することによって活性化される。この方法において、クエンチャーは均一なスイッチとして働き、デンドロンのアンテナ(dendronic antenna)の各ドナー分子からエネルギーを効率的に受け取り、結合によって活性化された場合にのみこれを蛍光として放出する。
【発明の効果】
【0007】
アンテナ上の複数の色素の吸光度の合計は、標準の画像化システムにおけるプローブの実効輝度の劇的な増強をもたらす。この方法により、ダイドロンの蛍光を活性化する発現タグを特異的に標的とする、例外的な輝度を有する1セットのプローブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】クエンチャー(消光)付加ダイドロン(dyedron)の蛍光の活性化の一般的概念を示す図である。クエンチャー(消光)付加ダイドロンは、2種の色素で装飾されているデンドロン(黒)からなり、表面基は蛍光ドナー(明灰色)を有し、頭部基は単一のクエンチャー(暗灰色)にカップリングしている。
【図1B】クエンチャーが特異的な蛍光団活性化ペプチド(FAP)に結合すると、クエンチャーは効率的な蛍光体/アクセプターに変換される。
【図1C】この活性化により、ドナーアレイの合計の励起とカップリングしたアクセプターからの明るい発光がもたらされ、現存の発現タグよりも輝度が5から140倍高い個々の構築体が生成される。
【図2】モル吸光率ε>106を有するドナーアレイ分子を示す模式図である。左:コア中に陽イオン性4級アミン(+)を示す世代2のPAMAMダイドロン;右:無電荷の内部アミドを有するNewkomeのダイドロン(ひし形)。
【図3】ドナーの励起および標的とするアクセプターの発光の性質を示す図である。Cy−3または同様のスペクトルの変異体がドナーアレイに用いられ、蛍光団のクエンチャーに直接的にまたは中間アクセプターを介してのいずれかで連結している。
【図4A】L5−MG E52D pPNL6融合タンパク質(配列番号1)をコードする構築体のDNA配列を示す図である。
【図4B】構築体pPNL6 L5−MG E52Dを示す図である。
【図4C】構築体pPNL6 L5−MG E52Dを示す図である。
【図4D−1】pPNL6 L5−MG E52Dの関連の部分(配列番号1および2)のヌクレオチド配列上にマッピングされたL5−MG E52Dをコードする構築体の領域を示す図である。
【図4D−2】pPNL6 L5−MG E52Dの関連の部分(配列番号1および2)のヌクレオチド配列上にマッピングされたL5−MG E52Dをコードする構築体の領域を示す図である。
【図5A】T−リンカーおよびトリポッド(Tripod)戦略に基づくダイドロンの合成。
【図5B】トリポッド(Tripod)戦略に基づくダイドロンの合成により、FRETの高効率を確実にするための小型の分子内間隙を有する単一の蛍光団のクエンチャーに連結している最高9個のドナーに対する合成経路が提供されることを示す図である。
【図5C】スペクトルの重複が不十分である蛍光体−ドナー対の場合、媒介する色素を有するカスケードデザインは、FRET効率を増強することを示す図である。
【図6A】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。TCM、テトラ−Cy3.29マラカイトグリーン。
【図6B】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。BCM、Bis−Cy3.29マラカイトグリーン。
【図6C】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。CM、Cy3.29マラカイトグリーン。
【図6D】ダイドロンの構造を示す図である。モノアイソトピック質量および確証的な質量分析法のイオンを示す。M、マラカイトグリーンジエチレングリコールアミン。
【図7A】ダイドロン合成の概要を示す図である。Cy3−マラカイトグリーン(CM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図7B−1】ダイドロン合成の概要を示す図である。ビスCy3−マラカイトグリーン(BCM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図7B−2】ダイドロン合成の概要を示す図である。ビスCy3−マラカイトグリーン(BCM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図7C】ダイドロン合成の概要を示す図である。テトラCy3−マラカイトグリーン(TCM)。太字の数字は、実施例1に記載した化合物を参照するものである。
【図8】ダイドロン対の代表的なスペクトル特性を示す図である。Cy3−マラカイトグリーン対の励起および発光のスペクトル。太線は、最終的に活性化されたダイドロンから予想される、ドナーの励起および活性化された発光を示す。
【図9】フェルスターの移動モデル(Forster transfer model)に基づくいくつかの消光されたダイドロンの、エネルギー移動効率(上)およびEGFPの輝度に対する倍率(下)を算出したものを示す図である。
【図10】蛍光発生的なダイドロンの合成および蛍光モジュール開発のためのアクセプターの例を示す図である。
【図11】a)ダイドロン/L5−MG E52D複合体の蛍光と励起(発光710nm)を示す図である。蛍光は、648nmの励起ピークの蛍光の倍率として標準化して表される。b)ダイドロン/L5−MG E52D複合体の蛍光の相対値(励起514nm)を示す図である。スペクトルはMG励起ピークに対して標準化され、蛍光は680nmの蛍光の倍率として表される。相対的な発光は励起波長に感受性がある。
【図12A】本試験において用いたダイドロンが活性化するscFvのペプチド配列を提供する図である(配列番号3〜6)。ハイフンはコア配列を示す。
【図12B】本試験において用いたダイドロンが活性化するscFvに対するペプチド配列をさらに提供する図である(配列番号7〜9)。ハイフンはコア配列を示す。
【図13】定向進化によるTCM蛍光モジュールの改善を示す図である。
【図14】L5−MG E52Dを提示する酵母細胞表面の蛍光画像化を示す図である。酵母生細胞を、Zeiss510 MetaNLO共焦点顕微鏡上、微分干渉(DIC)を用いて、500nM TCMの存在下(a)、またはドナー(561/650−710BP)の蛍光(b)、またはアクセプター(633/650−710BP)(c)を励起/発光の設定で画像化した。添付の12ビットスキャンは、黄色線で表される細胞横断面の、定量シグナル/ノイズの特徴を定量化するものである。
【図15】ドナー(青色)またはアクセプター(赤色)を励起することによる、ダイドロンで標識した酵母のフローサイトメトリー解析を示す図である。その表面上にL5−MG E52Dを発現する出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)細胞を、本質的に特許文献1および非特許文献1に記載に従い分析した。染色した各集団のアリコート2つおよび非染色の対照(U)をそれぞれ、532nm(ドナー)または635nm(アクセプター)で励起し、675/50nm帯域(BP)フィルターを通して発光を収集して分析した。分析は各々、細胞100,000個を含んでいた。染色した試料はscFvをコードするプラスミド(そのシグナルは非染色の試料(細線によって印をつけた)のシグナルに相当する)を失っているために、無蛍光の細胞の亜集団を含んでいる。対照は、FAP無発現の細胞表面上にダイドロンによる蛍光は実質的に生成されないことを示している(表3)。波長が短いほど細胞の自己蛍光が高いため、532nmで励起した非染色の細胞は635nmで励起したものより比較的明るい。二重線の染色したピークは非出芽および出芽した酵母細胞に対応し、このような実験には典型的である。陰性の細胞から陽性の細胞を分離すると、635nmの励起下では本質的に一定のままであるが、532nmの励起下ではCy3ドナーの数に比例して増大する。ダイドロンにおける励起の増強は、フローサイトメーターにおける感度の上昇をもたらす。
【図16A】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52D 100nM TCM)
【図16B】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52DL91S 10nM TCM)
【図16C】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52DL91S 培地中 50nM TCM)
【図16D】改善された蛍光モジュールでの生細胞の表面画像化を示す図である。(E52DL91S 50nM TCM(PBS+))
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明における取組みを概略するものである。デンドロンは、規定された一定の数の分子で表面が装飾され得る、化学的に明確に定義されているナノ構造体である。典型的な高分子系とは異なり、デンドロンは分子的に単分散であり、どのデンドロンも、数および配列が同じ官能基を有している。さらに、Balzaniらによる研究は、単一の非共有性にホストされたエオジン分子(アクセプター)は、世代4(ダンシル分子32個)までの完全にダンシル修飾されたポリプロピレンイミンデンドロンの蛍光を消光することができることを実証している。この知見に基づき、非対称性デンドロンは、強力な吸収性の色素分子で周囲を装飾することによってアンテナ分子として作動するようにデザインすることができ、これらは単一の直接連結されている消光性の分子の量子収量を調整することによってスイッチの切換えができると論じられていた。活性化の方法は、多くの現在の「ビーコン(beacon)」センサーの取組みを思わせるものであるが、リンカーの切断に依存するものではない。
【0010】
これらのモジュールは、消光性部分に連結しているドナーアレイから形成される。ドナーアレイ、連結性ユニット、およびクエンチャーの性質を個々に特徴付け、最適化することができる。これらは、表面に複数のアミノ基および頭部に単一のスルフヒドリルを容易に与え、単一クエンチャー付加ダイドロンの調製を単純にするので、デンドロンを用いて標準の入手可能な色素分子を用いてダイドロンを形成することができる。しかし、ある範囲の極性を有し、ある範囲の電荷を有するアレイ骨格を調製するには、選ばれたモノマーが利用可能である(図2)。これらデンドロン骨格は、ティンカートイ(tinker-toys)(例えば、クリック化学)のように構築されて、最適のドナー色素の密度および配向を達成することができる。高度に蛍光性のドナーアレイが、アクセプターによる効率的な消光には大き過ぎる、またはスペクトル的に離れ過ぎている場合、中間体のアクセプター色素がデンドロンを頭部に含ませて、アレイから励起エネルギーを収集することができ、それをクエンチャー(アクセプター)の蛍光団に中継することができる。これら中間体のアクセプターのスペクトルの性質および空間の配向を操作して、特にマラカイトグリーンよりもさらに赤色にシフトした蛍光団によって、より良好な伝達およびストークスシフトをもたらすことができる(標的化の性質を図3に概略した)。
【0011】
以下の実施例に例示する通り、非蛍光有機色素分子に特異的であり、溶液中の遊離色素の存在下でタンパク質モジュールに結合している場合にのみこれらの色素を蛍光にする、単鎖可変フラグメント(scFv)分子が選択された。高親和性(低ナノモル)のクローンを用いると、この結合は多くの洗浄ステップを生き残るが、低親和性(マイクロモル)のクローンでは蛍光シグナルを維持するのに色素の存在が必要とされる。scFvモジュールは酵母ディスプレイライブラリーおよび他のディスプレイライブラリーにおいて入手可能であり、広範囲の分子およびタンパク質に特異的な結合パートナーを生成するのに用いられ得る。この遺伝的にコードされたシステムの1つの主要な利点は、選択された抗体を発現可能なタンパク質タグとして用いることができることである。これにより比較的小型のユニット(典型的には、「全体の」scFvに対して分子量約25kDa、または「単一ドメインの」scFvに対して11kDaほどの小ささ)が、細胞の状況において特異的なパートナーを有する融合タンパク質として発現されるが、scFvは、あらゆる効果的な手段によって細胞のタンパク質、リガンド、受容体、抗体などの特異的なパートナーに付着することができる。
【0012】
一実施形態において、本発明は単一の色素または蛍光タンパク質よりも5から140倍明るいシグナルを生成する、新しい生物学的プローブの戦略である。これらダイドロンは著しく赤色にシフトしているので、バックグラウンドに対するシグナルは少なくとも10倍さらに増強される。検出できる全体のシグナル対バックグラウンド比において、これらのプローブはこれまでの標識を100〜1000倍凌ぐ改善、および入手可能な最良のQDを5〜50倍凌ぐ改善を表す。これらのプローブは、発現されるは配列によって選択的に活性化され、その他の場合は暗いままであるので、これらには元来蛍光分子を悩ませた洗い流し、またはバックグラウンドの問題がなく、独立に選択された「特異的分子」(例えば、抗体)の性質によって制限されない。
【0013】
高強度のアーク放電ランプまたはレーザーからの照明に細胞を長時間曝露すると、細胞の生理を損傷することがあるため、吸光度の増強は用いられる励起出力を低減する助けとなるはずである。単一分子の研究は、光毒性効果なしにより長い時間尺度の画像を得るための赤色シフトした励起レーザーおよび励起源に依存する。スペクトルの青〜緑領域から離れると生物学的な発色団(自己蛍光)がないため、通則は「赤いほどよい」であるが、561nmのレーザーは生細胞に対して全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡における使用を獲得している。このレーザーは生細胞の動的測定に十分適しており、単一分子の実験に高いシグナル対ノイズ比を提供する。さらに、このレーザーはCy3およびAlexa568などの色素をかなり十分に励起し、これらのプローブは良好なエネルギー伝達ドナーであることが知られている。この理由から、プローブは561nmで励起し、650nmから800nmまでの近赤外波長において発光するようにデザインされている。
【0014】
本明細書に記載する通り、蛍光団ダイドロン化合物を、ダイドロン活性化複合体、ダイドロンアクチベーター、および関連の方法とともに提供する。ダイドロンは少なくとも2つのドナー(本明細書においてドナー部分とも呼ぶ)、1つまたは複数の活性化可能なアクセプター、および連結基を含んでいる。ダイドロン複合体は、ダイドロン、およびアクセプターのアクチベーターを含んでいる。ドナーの発光スペクトルはアクセプターの吸収スペクトルと重複して蛍光共鳴エネルギー伝達を達成する。ドナースペクトルとアクセプタースペクトルとが重複しない、または重複が不十分である場合、ドナーおよびアクセプターと重複するスペクトルを有するメディエータを用いてドナーとアクセプターとの間のスペクトルのギャップを架橋してもよい。アクチベーターによって非結合である場合、ダイドロンは波長の異なる蛍光を放つか、または、アクセプターにアクチベーターが結合している場合とは強度が異なる(好ましくは蛍光がより低い、取るに足らない、もしくは事実上蛍光がない)。
【0015】
ドナーは、ドナーとアクセプターとの間のスペクトルおよび/または距離のギャップを架橋するメディエータが適用可能である場合、アクセプターに対するFRETアクチベーターとして働くことができるあらゆる分子または基である。ドナーおよびアクセプターは、本明細書において独立の化学的実体(例えば、Cy3またはCy5)としばしば呼ばれるが、これらの部分は化合物に付着しており、「ドナー部分」および「アクセプター部分」とも呼ばれることが理解される。ドナーおよびアクセプターとして有用であると本明細書に記載する化合物は、よく知られている化学的方法にしたがって、あらゆる有用な手段によってダイドロンに付着していてよい。例えば、化合物は、下記の構造において示され、またはあらゆる様々な方法によってリンカーとして加えられ得るペンダントのカルボキシル基またはアミン基によってデンドロンまたは他のリンカーに連結していてよい。
【0016】
本明細書で用いられるドナーは、ダイドロン化合物の部分を形成する部分または基である。ドナーは、1タイプの分子(例えば、Cy3)または2つ以上のタイプのドナー(例えば、Cy3およびCy5)を含むことができる。2つ以上のドナーを組み合わせて、ダイドロンの発光スペクトルをドナーの吸収スペクトルから離れる方向へさらにシフトすることができる。一例において、カスケードの取組みを利用すると、第1のドナーは、その最大の波長でアクセプターの吸収スペクトルと重複しない、または重複が不十分である吸収スペクトルおよび発光スペクトルを有する。このような場合、第1のドナーの吸収スペクトル内の波長のダイドロンの照明がアクセプターによる発光をもたらすように、メディエータは第1のドナーの発光スペクトルと重複する吸収スペクトル、およびアクセプターの吸収スペクトルと重複する発光スペクトルを有する。
【0017】
特に、適切なドナーは完全に蛍光性である必要はなく、ドナーが励起されるときにアクチベーターの存在(例えば、アクチベーターによる結合)下、アクセプターが蛍光発光し、最大の程度まで蛍光発光し、または異なる波長で蛍光発光するようにアクセプターにエネルギーを効率的に伝達することができるだけでよい。適切なドナーの非限定的な例には、シアニン色素、フルオレセイン、ウンベリフェロン(クマリン化合物)、ピレン、レゾルフィン、ローダミン、ヒドロキシエステル、芳香族酸、スチリル色素、テトラメチルローダミン色素、オキサジン、チアジン、金属置換されているプタロシアニン(pthalocyanine)およびポルフィリン、ならびに多環芳香族色素、例えば、ペリレンジイミン(perylenediimide)誘導体が含まれる。代替には、Molecular ProbesからのAlexa Dye(スルホン化されたクマリン、ローダミン、キサンテン(例えば、フルオレセイン)およびシアニン色素)、AnaSpecからのHiLyte Fluors、Pierce(Thermo Fisher Scientific)からのDyLight Fluors、ならびにATTO−TECおよびSigma−Aldrichから入手可能であるATTO Dyeシリーズが含まれる。ダイドロンにおいて用いるのに適するFRET対または群の非制限的な例には、(ドナーの次にアクセプター、または適用できる場合にはドナー、メディエータ、およびアクセプターの順序で列挙して)Cy3およびMG;Cy3およびアセチレン性MG;Cy3、Cy5、およびMG;Cy3およびDIR;Cy3およびCy5およびICGが含まれる。
【0018】
ドナーは蛍光性である必要はない。例えば、近位のアクセプターへの分子内エネルギーの伝達を可能にするのに十分、励起状態の寿命が長いのであれば、ドナーは、アゾ色素、または量子収量が非常に低い、ニトロ修飾された色素であってよく、その多くは市販されている。
【0019】
アクセプターは、環境の変化に反応して、すなわちアクチベーターが結合することによって、それ自体「活性化可能である」とみなされる、検出可能なシグナルの変化を生成するあらゆる分子であってよい。同様に、アクセプターは活性化可能であるので、ダイドロンは活性化可能であるとみなされる。例えば、シグナルの変化はシグナル強度における増大もしくは低減であってよく、または生成されるシグナルのタイプにおける変化(例えば、ダイドロンの発光の波長におけるシフト)であってよい。例えば、適切なレポーターには、光学的に検出可能なシグナルを生成する分子、例えば、蛍光性の、および化学発光性の分子が含まれる。ある実施形態において、レポーター分子は、組織試料を通したレポーターシグナルの検出、例えば、in vivoの応用と結びついたレポーターの非侵襲性の検出を可能にする長波長蛍光分子である。
【0020】
ある実施形態によると、アクセプターは、モノメチン基などによって架橋されている芳香環および/またはヘテロ芳香環を含む非強化の芳香族系である。
【0021】
アクセプターは、アクチベーターとの相互作用時にスペクトルまたは蛍光強度の変化を示す、pH感受性の蛍光色素(pHセンサー色素)であってよい。アクチベーターのアクセプターとの相互作用は、アクチベーター上の酸性残基および塩基性残基の組成により、アクセプター周囲の微小環境のpHにおけるシフトをもたらすことがある。次に、pH微小環境におけるシフトは、アクチベーターに会合しているpH感受性蛍光色素分子のシグナルにおける検出可能なスペクトルまたは蛍光強度の変化をもたらす。例示の実施形態において、pH感受性の色素は、アクチベーターに結合したときに最適なスペクトルの変化をもたらす好適なpKaで選択される。において用いるのに適する様々なpH感受性の色素が市販されている。例示の実施形態において、pH感受性の色素には、例えば、フルオレセイン、ウンベリフェロン(クマリン化合物)、ピレン、レゾルフィン、ヒドロキシエステル、芳香族酸、スチリル色素、テトラメチルローダミン色素、およびシアニン色素、ならびにこれらのpH感受性の誘導体が含まれる。
【0022】
アクセプターは、アクチベーターと相互作用したときにスペクトルの変化を示す、極性感受性の蛍光色素(極性センサー色素)であってよい。アクチベーターの標的分子との相互作用は、アクチベーター上の極性残基および/または非極性残基の組成により、アクセプター周囲の微小環境の極性におけるシフトをもたらすことがある。次に、微小環境の極性における変化は、アクチベーターに会合している極性感受性の蛍光色素分子のシグナルにおける検出可能なスペクトルの変化をもたらす。使用に適する様々な極性感受性の色素が市販されている。例示の実施形態において、極性感受性の色素には、例えば、メロシアニン色素、5−((((2−インドアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸(1,5−IAEDANS)、およびCPM、ならびにメロシアニン色素の極性感受性の誘導体である、IAEDANS、およびCPMが含まれる。
【0023】
アクセプターは、局所環境の微小粘度における変化に感受性がある蛍光色素であってよい(制限センサー色素)。アクチベーターのアクセプターとの相互作用は、アクセプター周囲の局所環境における微小粘度における変化をもたらすことがある。次に、微小粘度における変化は、アクチベーターに会合している移動性のセンサー色素分子のシグナルにおける検出可能なスペクトルの変化をもたらすことがある。例えば、標的に結合したときの微小粘度の増大は、色素を制限し、発光される蛍光シグナルの量子収量を増大する。使用に適する様々な制限センサー色素が市販されている。例示の実施形態において、制限センサー色素には、例えば、モノメチン(monomethin)およびトリメチンシアニン(trimethine cyanine)色素、ならびにモノメチンおよびトリメチンシアニン色素の微小粘度に感受性がある誘導体が含まれる。
【0024】
ある実施形態において、アクセプターは、アクチベーターに特異的に結合したときにそのスペクトルの性質における変化を表す色素である。核酸、例えば、アプタマーを、このような色素、例えば、マラカイトグリーンに特異的に結合するようにデザインしてもよい(非特許文献2を参照されたい)。このような色素は、これらに特異的である核酸またはタンパク質との複合体における場合、これらのスペクトルの性質を変える。例えば、マラカイトグリーンおよびその類似体は、通常蛍光性ではないが、それに特異的なscFvに結合すると強力に蛍光性になる。多くのジ−およびトリ−アリールメチン類似体が、本明細書に記載するアクセプターおよびFAPバインダーの優れた候補物質である。多くのジ−およびトリ−アリールメチンが調製されており、非特許文献3によって再考されている。他に記載されているが合成されるべきある種のこれらの非架橋のジ−およびトリ−アリールメチン色素、および類似の色素が、本明細書に記載する目標にしたがって適切に修飾されると、ダイドロンにおける優れたアクセプター色素構造を提供すると考えられる。
【0025】
マラカイトグリーン(I)およびフェノールフタレイン(II)の類似体を、代表として下記に示す。
【0026】
【化1】
【0027】
(1)光の吸収および蛍光の波長、(2)アクセプター色素の活性化の程度、ダイドロンの水溶性、(3)ダイドロンの細胞成分に対する非特異的な結合、ならびに(4)生体膜を横切るダイドロンの能力または無力を制御するために、マラカイトグリーン類似体のR1〜R4基は、ダイドロンの発達中に修飾されるのが好ましいことがある。R5基は、マラカイトグリーンおよびフェノールフタレインのクラスのトリアリールメチン色素におけるのと同様、置換されているアリール基であってよい。ジアリールメチン色素のR5基は、記載したばかりの目標を遂行する、いくつかの他の化学的置換基であってよく、さらにドナー色素の、ダイドロンのエネルギー受容部位に対する連結のための部位を提供する。色素の光の吸収および発光系を担う共鳴電荷非局在化系を変更しない他の非フェノール基または非アミノ基は、上記の目標を達成するためにアリール環上のジ−およびトリアリールメチン構造に置換していてよい。これらの基は、以下「T」として列挙する1つまたは複数の原子または基から選択されてよい。上記の目標に有用であり得るR1〜R4基の例は、−H、−CH3、(CH2)n−T、および置換されているアリールであり、置換基は、以下「T」として列挙する原子または基から選択され、n=0〜6である。これらの構造において「T」は、−H、−OH、COO−、SO3-、−PO4-、アミド、ハロゲン、置換されている単一もしくは複数のアリール、エーテル、ポリエーテル、PEGn(n=1〜30)、N、S、もしくはO原子を含む複素環、置換されているアセチレン基、シアノ、および炭水化物基から選択されてよい。本発明の一実施形態において、R1〜R4の1つは、ドナー色素に付着しているリンカーを含んでいる。
【0028】
トリアリールメチン色素に対するR5基の例を以下に列挙し、置換基は上記「T」の下に列挙したものから選択することができる。存在する場合、ヘテロ原子、X、およびYは、N、O、S、Se、およびC(CH3)2から選択することができる。本発明の一実施形態において、置換基の1つはドナー色素に付着しているリンカーである。
【0029】
【化2】
【0030】
ジアリールメチン(diarylmethine)アクセプター色素に対するR5基の例は、上記「T」の下に列挙したものから選択することができる。本発明の好ましい一実施形態において、置換基の1つは、ドナー色素に付着しているリンカーである。
【0031】
光の吸収および発光系を担う共鳴電荷非局在化系の末端成分である窒素または酸素分子がインタクトのままである限り、ジおよびトリアリールメチン色素はさらなる縮合環を含むこともできる。これらの縮合環化合物は、望ましい方向でアクセプターの吸収および発光の波長を調節するのに有用であり得る。置換基が上記「T」の列挙から選択される簡単な一例を以下に示す。
【0032】
【化3】
【0033】
以下は、モノメチンである、またはさらなるメチン基を含んでいる、置換されているシアニン、メロシアニン(merocyanines)、スチリル、およびオキソノール色素を含むシアニン色素ファミリーのメンバーである。一実施形態によると、アクセプターはジアリールメチン(diarylmethine)またはトリアリールメチン(triarylmethine)である。例えば、アクセプターは以下の構造を有し、
【0034】
【化4】
【0035】
式中、R1は、芳香族、ヘテロ芳香族、ヒドロキシル、アミノ、N−アルキル、N−アルカノリル(alkanolyl)(アルコール、例えば、N−ヒドロキシエチル)であり、R2は、H、シアノ、芳香族、ヘテロ芳香族、アセチレン、アルキルであり、Xは、N、O、またはSであり、R3およびR4は、アルキル、アリール、もしくはヒドロキシエチルである。アクセプターは、典型的に、R2によってリンカー/デンドロンに付着している。ある実施形態において、R1はC1~3ジ−アルキルアミノ、例えば、−N−(CH3)2であり、R2は、アミノまたは置換されているアミノ基などで置換されている、置換されているフェニルアセチレン、例えば、−N−(CH3)2;−N−(CH3)((CH2)nO(CH2)mCOOH)であり、式中、nおよびmは独立に、1、2、3、もしくは4であり、または−N−(CH3)((CH2)2O(CH2)3COOH)、フェニル、−N−アルキル置換されているフェニル、−O−(CH2)nR5置換されているフェニルであり、式中、nは1〜5であり、R5はカルボキシルまたはアミノであり、R3およびR4は独立に、C1~3アルキル、アルコキシル、アルカノイル(alkanolyl)、フェニル、C1~3アルキル置換されているフェニルである。一実施形態において、R1は−N−(CH3)2であり、R2は、−O(CH2)3R5−置換されているフェニルおよび
【0036】
【化5】
【0037】
の1つであり、かつ/またはR3およびR4はCH3である。アクセプターはダイドロンにR1〜R4のいずれか1つを介して付着している。
【0038】
他の実施形態において、アクセプターは、
【0039】
【化6】
【0040】
の1つの、リンカーが修飾する誘導体である。
【0041】
ある実施形態において、アクセプターは、構造IV、V、およびVI:
【0042】
【化7】
【0043】
によって表され、式中、曲線は、1個の環、2個の縮合環、および3個の縮合環から選択される構造を完成するのに必要な原子を表し、前記環の各々は5個または6個の原子を有し、前記環の各々は、炭素原子、および任意選択的に、酸素、窒素、およびイオウから選択される2個を超えない原子を有し、Dは、存在する場合には、
【0044】
【化8】
【0045】
であり、mは1、2、3、または4であり、シアニン、オキソノール、およびチアゾールオレンジに対してmは0であってよく、XおよびYは独立に、O、S3、および−C(CH3)2−からなる群から選択され、R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7の少なくとも1つは、水溶性および非特異性の結合を制御する部分、レポーター分子が膜を介して細胞に侵入するのを防ぐ部分、任意選択的にリンカー、ビオチンハプテン、His−タグを含む群、または選択の実体を単離するプロセスを促進する他の部分からなる群から選択され、蛍光標識は、場合により、リンカー、光反応性基、または反応性基(例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン(monochlorotriazine)、ジクロロトリアジン(dichlorotriazine)、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているピリジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているジアジン、ホスホラミダイト、マレイムニド(maleimnide)、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル(hydroxysuccinimide ester)、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(hydroxysulfosuccinimide ester)、イミドエステル、ヒドラジン、アキシドニトロフェニル(axidonitrophenyl)、アジ化物、3−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオナミド(proprionamide)、グリオキサール、ハロアセトアミド(haloacetamido)、またはアルデヒドを含む群)を含み、R1およびR2は、−CHR8−CHRs−、または−BF2−ビラジカルによって連結されていてよいことをさらに提供し、この場合、R8は、各出現に対して独立に、水素、アミノ、4級アミノ、アルデヒド、アリール、ヒドロキシル、ホスホリル、スルフヒドリル、水溶性基、炭素原子26個以下のアルキル基、脂溶性基、炭化水素可溶性基、極性溶媒中の可溶性を促進する基、非極性溶媒中の可溶性を促進する基、およびE−Fからなる群から選択され、またR1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7のいずれかは、ハロ(halo)、ニトロ、シアン、−CO2アルキル、−CO2H、−CO2アリール、NO2、もしくはアルコキシで置換されていてよいことをさらに提供し、この場合、
Fは、ヒドロキシ、保護されているヒドロキシ、アルコキシ、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、および低級アルキル置換されているアミノまたは4級アミノからなる群から選択され、
Eは、式−(CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)であり、
あるいは、Eは、式−(CH2−O−CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)である。
【0046】
他の実施形態において、構造IV、V、およびVIにおいてm=0である場合、以下の一般構造VII、VIII、およびIXが与えられ、
【0047】
【化9】
【0048】
式中、曲線は、1個の環、2個の縮合環、および3個の縮合環から選択される構造を完成するのに必要な原子を表し、前記環の各々は5個または6個の原子を有し、前記環の各々は、炭素原子、および任意選択で、酸素、窒素、およびイオウから選択される2個を超えない原子を含み、Dは、存在する場合には、
【0049】
【化10】
【0050】
であり、XおよびYは独立に、O、S、および−C(CH3)2−からなる群から選択され、R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7の少なくとも1つは、水溶性および非特異性の結合を制御する部分、レポーター分子が膜を介して細胞に侵入するのを防ぐ部分、場合により、リンカー、ビオチン、ハプテン、His−タグを含む群、または選択の実体を単離するプロセスを促進する他の部分からなる群から選択され、蛍光標識は、場合により、リンカー、光反応性基、または反応性基(例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているピリジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換されているジアジン、ホスホラミダイト、マレイムニド(maleimnide)、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アキシドニトロフェニル、アジ化物、3−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオナミド、グリオキサール、ハロアセトアミド、またはアルデヒドを含む群)を含み、R1およびR2は、−CHR8−CHRs−、または−BF2−ビラジカルによって連結されていてよいことをさらに提供し、
この場合、R8は、各々の出現に対して独立に、水素、アミノ、4級アミノ、アルデヒド、アリール、ヒドロキシル、ホスホリル、スルフヒドリル、水溶性基、炭素原子26個以下のアルキル基、脂質可溶性基、炭化水素可溶性基、極性溶媒中の可溶性を促進する基、非極性溶媒中の可溶性を促進する基、およびE−Fからなる群から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、またはR7のいずれかは、ハロ(halo)、ニトロ、シアン、−CO2アルキル、−CO2H、−CO2アリール、NO2、もしくはアルコキシで置換されていてよいことをさらに提供し、
Fは、ヒドロキシ、保護されているヒドロキシ、アルコキシ、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、および低級アルキル置換されているアミノ、または4級アミノからなる群から選択され、
Eは、式−(CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)であり、
あるいは、Eは、式−(CH2−O−CH2)n−のスペーサー基であり、式中、nは0〜5の整数(境界を含む)である。
【0051】
以下は、構造IV、V、およびVIによるレポーター分子のより具体的な例である。
【0052】
【化11】
【0053】
これらの構造において、XおよびYは、O、S、および−CH(CH3)2−からなる群から選択され、Zは、OおよびSからなる群から選択され、mは、0、1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり、好ましくは1〜3の整数である。上記の式において、メチン基の数が励起色を部分的に決定する。
【0054】
環状アジン構造もまた、励起色を部分的に決定し得る。しばしば、mの値が大きければ、ルミネセンス(発光)および吸収の増大に寄与する。mの値が4を超えると、化合物は不安定になる。その結果、環状構造を修飾することによってさらなる発光が得られ得る。m=2のとき、励起波長は約650nmであり、化合物は非常に蛍光性である。最大発光波長は、通常、最大励起波長よりも15〜100nm大きい。
【0055】
本発明のルミネセンス(発光)色素のポリメチン鎖は、ポリメチン鎖の2つ以上の炭素原子の間に架橋を形成する1つまたは複数の環状化学基も含むことができる。これらの架橋は、色素の化学的または光安定性を増大するように働くことがあり、色素の吸収および発光の波長を変更するのに、または吸光係数もしくは量子収率を変えるのに用いられ得る。この修飾によって、溶解性の性質の改善が得られることがある。
【0056】
様々な実施形態において、アクセプターとアクチベーターとの、場合により標的分子が選択性成分と相互作用するときのアクセプター色素の変化は、例えば、吸収波長のシフト、発光波長のシフト、量子収量率の変化、色素分子の極性の変化、および/または蛍光強度の変化を含むことができる。変化は、2倍、10倍、100倍、1000倍、またはさらに高くてもよい。所与のアクセプターに関連するスペクトルの変化を検出するのに適するあらゆる方法を用いることができ、センサー色素のスペクトルの変化を検出するのに適する機器には、例えば、蛍光分光計、フィルター蛍光光度計、マイクロアレイリーダー、光ファイバーセンサーリーダー、落射蛍光顕微鏡、共焦点レーザースキャニング(走査)顕微鏡、2光子励起顕微鏡、およびフローサイトメーターが含まれる。
【0057】
アクチベーターは選択性成分と会合していてよい。例えば、アクセプターは、選択性成分に共有結合的に付着していてよい。アクチベーターは、標準の技術を用いて選択性成分に共有結合的に付着していてよい。例えば、アクチベーターは、2個の分子上の1つまたは複数の反応基間に化学結合を形成することによって、選択性成分に直接付着していてよい。例えば、アクチベーター上のチオール反応基が、選択性成分上のシステイン残基(または他のチオール含有分子)に結合している。あるいは、アクチベーターは、選択性成分上のアミノ基を介して選択性成分に結合していてよい。別の実施形態において、アクチベーターおよび選択性成分は、近接する融合タンパク質上に提示される。他の実施形態において、アクチベーターは、リンカー基を介して選択性成分に結合していてよい。適切なリンカーには、例えば、化学基、アミノ酸または2つ以上のアミノ酸の鎖、ヌクレオチドまたは2つ以上のヌクレオチドの鎖、ポリマー鎖、および多糖類が含まれる。一例において、アクチベーターは、マレイミド部分を有するリンカーを用いて選択性成分に付着している。リンカーは、ホモ官能性(同じタイプの反応基を含む)、ヘテロ官能性(異なる反応基を含む)、または光反応性(照射時に反応性になる基を含む)であってよい。ニトレンファミリーにおける基など、様々な光反応性基が知られている。
【0058】
1つまたは複数のアクチベーターが、選択性成分上の1つまたは複数の位置に付着していてよい。例えば、同じアクチベーターの2つ以上の分子が、単一の選択性成分分子上の異なる位置に付着していてよい。あるいは、2つ以上の異なるアクチベーターが、単一の選択性成分の分子上の異なる位置に結合していてよい。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを超えるアクチベーターが、選択性成分上の異なる部位に付着している。1つまたは複数のアクチベーターが、アクチベーターおよび選択性成分の活性を維持するように選択性成分に結合していてよい。
【0059】
ある実施形態において、アクチベーターは選択性成分に特異的である部分をさらに含んでいる。例えば、アクチベーターは、選択性成分に特異的である、基質、ハプテン、抗体フラグメント、または他の結合試薬などに連結していてよい。アクチベーターは、標準の技術を用いて部分に共有結合的に付着していてよい。ある実施形態において、アクチベーターは、2個の分子上の1つまたは複数の反応性基間に化学結合を形成することによって、部分に直接付着していてよい。他の実施形態において、アクチベーターは、リンカー基を介して部分に付着していてよい。適切なリンカーには、例えば、化学基、アミノ酸または2つ以上のアミノ酸の鎖、ヌクレオチドまたは2つ以上のポリヌクレオチドの鎖、ポリマー鎖、および多糖類が含まれる。リンカーは、ホモ官能性(同じタイプの反応基を含む)、ヘテロ官能性(異なる反応基を含む)、または光反応性(照射時に反応性になる基を含む)であってよい。
【0060】
ドナーおよびアクセプターは、典型的に、少なくとも3個の分枝、2つ以上のドナーについては少なくとも2個、およびアクセプターについては少なくとも1個を有するリンカーによって接続されている。リンカーは、多分散度の低いもしくは単分散性(PD=1)のデンドロンであってよく、または分枝もしくはスターグループ(star group)もしくはポリマーであってよい。スターポリマー(星型高分子)は、フリーラジカル法、好ましくは、低多分散に対してリビングラジカル重合法、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)を含めた標準の重合法によって調製することができる。アクセプターの効率的な活性化、および生成物の機能における一貫性を含めた多くの理由から、連結基は構造の規定されたデンドロンであるのが多くの場合において好ましい。一実施形態において、連結基はデンドロン、例えば、PAMAM、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリプロピレンイミン(PPI)デンドロンである。他のデンドロンには、Newkomeデンドロン、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bis−MPA)、およびポリフェニレンデンドロンが含まれる。多くのデンドロンが市販されており、これらの合成化学は十分に特徴付けられている。デンドロンは、小型ユニットを繰り返し付加することを伴う「クリック化学」によって調製され得る。デンドロンは分岐的に、すなわち、インサイドアウト(inside out)から、またはアウトサイドイン(outside in)から構築することができる。
【0061】
PAMAMデンドロンでは、例えば、コア分子としてアンモニアまたはエチレンジイミンが用いられる。メタノールの存在下、これをアクリル酸メチルと反応させ、次いでエチレンジイミンを加える。
NH3+3CH2CHCOOCH3→N(CH2CH2COOCH3)3(1)
N(CH2CH2COOCH3)3+3NH2CH2CH2NH2→N(CH2CH2CONHCH2CH2NH2)3+3CH3OH(2)
各分枝の末端に、2つのアクリル酸メチルモノマーおよび2つのエチレンジアミン分子と反応することができる遊離アミノ基が存在する。各々の完全な反応順序により、新しいデンドロンの生成がもたらされる。半世代のPAMAMデンドロン(例えば、0.5、1.5、2.5)は、カルボキシレート基の陰イオン表面を有する。反応性表面部位の数は、世代ごとに2倍になる。例えば、ポリ(プロピレンイミン)デンドロンに対して、ブチレンジアミン(butylenediamine;BDA)をコア分子として用いることができる。繰り返しの反応順序は、1級アミノ基へのアクリロニトリルのMichael添加、およびその後ニトリル基の1級アミノ基への水素付加を伴う(例えば、非特許文献4を参照されたい)。
【0062】
PAMAMデンドロンは、下記に示す通りに合成され得る。PAMAMから形成されたデンドロンの材料は、Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouriから市販されている(例えば、1級アミノ基4個を有する世代0、1級アミノ基8個を有する世代1、1級アミノ基16個を有する世代2、1級アミノ基32個を有する世代3、および1級アミノ基64個を有する世代4)。ポリプロピレンイミンから形成されたデンドロンの材料は、Aldrich Chemicalから「DAB−AM」の商標名の下で市販されている。例えば、DAB−Am−4は1級アミノ基4個を有する世代1のポリプロピレンイミンテトラアミン(polypropylenimine)デンドロンであり、DAB−Am−8は1級アミノ基8個を有する世代2のポリプロピレンイミンオクタアミン(polypropylenimine octaamine)デンドロンであり、DAB−Am−16は1級アミノ基16個を有する世代3のポリプロピレンイミンヘキサデカアミン(polypropylenimine hexadecaamine)デンドロンであり、DAB−Am−32は1級アミノ基32個を有する世代4のポリプロピレンイミンドトリアコンタアミン(polypropylenimine dotriacontaamine)デンドロンであり、DAB−Am−64は1級アミノ基64個を有する世代5のポリプロピレンイミンテトラヘキサコンタアミン(polypropylenimine tetrahexacontaamine)デンドロンである。2,2−ビス(ヒドロキシル−メチル)プロピオン酸(MPA)から形成されるデンドロンの材料も、Sigma Aldrichから入手可能である。他の市販の供給源には、数ある中で、Mount Pleasant、MichiganのDendritic Nanotechnologies,Inc.、Midland、MichiganのDendritech、Inc.、およびNacka、SwedenのPolymer Factoryが含まれる。
【0063】
一例において、ダイドロン合成において有用なデンドロンは、デンドロンが別々の部分(例えば、半分)に分割することができるように、分割可能なコアを含んでいる。このようなデンドロンの一例は、システアミンコアPAMAMデンドリマーである。一例において、得られたデンドロンの末端は、それに対してドナーが付着することができる2つ以上の活性基を含んでおり、「頭部」は、それに対してアクセプターが付着することができる異なる活性基を含んでいる。これにより、単一のアクセプターに連結している2つ以上のドナーを含むダイドロンの別々の官能性および容易な調製が可能となる。
【0064】
本明細書に記載するダイドロン系のアクチベーター成分は、アクセプターとあらゆる方法で相互作用して(例えば、アクセプターを結合することによって)アクセプターを蛍光性にし、ますます蛍光性にし、かつ/またはダイドロンの吸収スペクトル(典型的に、ドナーの吸収スペクトル)内の照明に反応してその発光スペクトルをシフトする、結合試薬、結合パートナー、リガンド、FAPなどである。好適には、アクチベーターのアクセプターへの結合の非存在、アクセプターは蛍光発光せず、または非現実的には検出波長で蛍光発光する。アクセプターは別の波長では蛍光発光することがあるが、検出波長で蛍光の検出を妨害する方法で、または検出波長で蛍光の検出を本質的に妨害する方法で蛍光発光してはならない。アクチベーターによるアクセプターの結合の非存在下では低レベルの蛍光が存在することがあるが、アクチベーターがアクセプターに結合している場合はバックグラウンドの蛍光は得られた蛍光のレベルよりはるかに低くなければならないことを認識しなければならない。アクチベーターが結合したダイドロンの、アクチベーターが非結合のダイドリマー(dydrimer)に対する蛍光における「増幅率」は、少なくとも100倍、1000倍、10,000倍、またはさらに大きいのが好ましい。最適の一実施形態において、アクセプターは、アクチベーターが結合していない場合は蛍光発光せず、または実世界においてより可能性がある通り、アクチベーターが結合していなければ実質的に蛍光発光しない。実際の使用において、あるレベルのバックグラウンドの蛍光が存在するが、実質的でないのが好ましい。
【0065】
本明細書の実施例に記載する通り、アクチベーターの非限定的な一実施形態は、所与の刺激波長および強度でアクセプターの蛍光を増大するように、蛍光団および/またはダイドロン化合物に結合するあらゆる有用な手段によって生成されるペプチドである、FAP(蛍光団が活性化するペプチド)である。実施例に記載する通り、FAPの一実施形態は、酵母細胞表面ディスプレイライブラリーから得られ、蛍光発光するようにアクセプターを活性化するscFvフラグメントである。酵母ディスプレイライブラリーの使用、およびFAPを発現する特異的なクローンの同定は、特異的なクローンが所与のダイドロン系におけるより望ましい活性を有する誘導体を生成する定向進化を許す。その一例を、親のscFv L5−MG、ならびに進化した誘導体であるFAP L5−MG E52D、L5−MG L91S、およびL5−MG E52D L91Sに関して以下に記載する。
【0066】
当業者には容易に明らかである通り、適切なアクチベーターを生成するための方法は多数存在する。考えを証明するものとして本明細書に示す通り、酵母ディスプレイライブラリーを用いた選択および進化は、有用なFAPを生成するための効果的な機序である。アクチベーターはペプチドであり得ることは明らかでなければならないが、核酸およびその誘導体、例えばアプタマーなどの他の分子であってもよい。小分子、天然分子、合成分子などのライブラリーなどの分子ライブラリーも、ダイドロンを単に化合物に曝露し、本明細書に記載する通り化合物がダイドロンを効率的に活性化できるか否かを決定することによって、アクセプターの活性化に対して容易にスクリーニングすることもできる。ダイドロンを、ランダムポリペプチドのライブラリーに対して、またはscFvフラグメントもしくは他の抗体フラグメントなどの結合性の物質のライブラリーに対してスクリーニングしてもよい。細菌、酵母、ファージなどによって発現される、タンパク質/ペプチドのフラグメントまたはアプタマーの発現ライブラリーを、コロニーの蛍光、蛍光標示式細胞分取器(FACS)、または表面結合性ダイドロンの親和性およびその後の保持されているファージ、細胞などの増幅によってスクリーニングすることができる。ディスプレイ/発現ライブラリーの増殖、増幅、選別、変異はよく知られている。多くの市販のディスプレイ/発現ライブラリーが入手可能であり、その使用は当業者の範囲内に十分ある。
【0067】
その全文が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1は、L5−MG FAPの調製だけではなく、それによってアクチベーター(特許文献1において記載されている選択性化合物)が選択され、評価され、用いられる多数の他の方法を詳しく記載している。その参照において、Pacific Northwest National Laboratoryから得た、組換えヒトscFvの酵母細胞表面ディスプレイライブラリーが得られ、FACSの1つまたは複数のラウンドによって初めにクローンが選別され、所望の蛍光団を活性化する細胞を単離した。後に、FACSでスクリーニングされた細胞を、親和性選択またはさらなる細胞選別によってさらに濃縮した。
【0068】
アクチベーターは、アクセプターと選択的に相互作用してアクセプター/ダイドロンに蛍光を発生させ、または蛍光を増大させることができるあらゆる分子であってよい。アクチベーターの非制限的な例には、ポリペプチド、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、cDNA分子もしくはゲノムのDNAフラグメント)、炭水化物、または他の適切な有機分子もしくは無機分子が含まれる。
【0069】
アクチベーターは、細胞または生物体の1つまたは複数の成分に結合し、それらと相互作用し、またはそれらを複製する選択性成分を含んでいてもよく、または結合していてもよい。選択性成分の非制限的な例には、タンパク質もしくはポリペプチド、抗体もしくは他の結合性物質、ならびにアプタマー、リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニスト、代謝産物もしくは化学的部分、核酸(例えば、DNA、RNAなど)、細胞、微生物(例えば、細菌、真菌、およびウイルス)、ホルモン、受容体、サイトカイン、薬物分子、炭水化物、駆除剤、色素、アミノ酸、有機小分子もしくは無機小分子、または脂質が含まれる。選択性成分のための好適例示の標的分子には、例えば、成長因子、サイトカイン、形態形成因子、神経伝達物質などの調節性分子を含めた、組織の分化および/または成長、細胞間コミュニケーション、細胞分裂、細胞の運動性、および細胞内もしくは細胞間で起こる他の細胞の機能に関与する分子が含まれる。ある実施形態において、標的分子は、骨形成タンパク質、インスリン様成長因子(IGF)、ならびに/またはhedgehogおよびWntポリペプチドファミリーのメンバーであってよい。選択性成分の他の例には、パスウェイおよびネットワークタンパク質(例えば、キナーゼもしくはホスファターゼなどの酵素)、抗体フラグメント、抗体以外の受容体分子、アプタマー、テンプレートインプリンテッド材料(template imprinted material)、ならびに有機または無機の結合性エレメントが含まれる。限られた交差反応性を有する選択性成分が一般的に好ましい。
【0070】
アクチベーターおよび選択性成分は、融合(キメラ)タンパク質、または単官能性成分の組合せなど、二官能性化合物、例えば、アクチベーターが連結基によって選択性成分に連結している架橋結合成物の部分であってよい。アクチベーターおよび選択性成分は、二官能性のキメラタンパク質、連結されている2つのscFvフラグメント、またはタンパク質、抗体、もしくは他のポリペプチドに連結しているscFvアクチベーターの場合におけるように、類似の化学的実体であってよい。これらはまた、アクチベーターがscFvフラグメントなどのポリペプチドであり、選択性成分が、アプタマー、テンプレートインプリンテッド材料、代謝産物、脂質、多糖、ビリオンなどの核酸である場合におけるように、異なる化学的実体であってもよい。
【0071】
ある実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は、抗体または抗体フラグメントである。例えば、アクチベーターは、モノクローナル抗体、またはその誘導体もしくは類似体であってよく、制限なく、Fvフラグメント、単鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、camelized抗体および抗体フラグメント、ヒト化抗体および抗体フラグメント、ならびに前述の多価バージョンを含み、多価アクチベーターは、制限なく、単一特異性または二特異性抗体、例えば、ジスルフィド安定化したFvフラグメント、scFvタンデム((scFv))2フラグメント);典型的に共有結合的に連結している、または別の方法で安定化されている(すなわち、ロイシンジッパー、もしくはヘリックス安定化されている)scFvフラグメントである、ダイアボディ、トリボディ、またはテトラボディ;所望の標的分子と天然に相互作用する受容体分子を含む。
【0072】
一実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は抗体である。抗体の調製は、モノクローナル抗体を産生するためのあらゆる数のよく知られている方法によって遂行されてよい。これらの方法は、動物、典型的にはマウスを、所望の免疫原(例えば、所望の標的分子、またはそのフラグメント)で免疫化するステップを典型的に含む。マウスを免疫化したら、所望の(1つもしくは複数の)免疫原で1回または複数回追加免疫するのが好ましく、モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを調製し、よく知られている方法にしたがってスクリーニングしてもよい(モノクローナル抗体生成の一般的な概要には、例えば、非特許文献5を参照されたい)。
【0073】
抗体および他の結合試薬の生成はとりわけ強固となっている。抗体認識とファージディスプレイ技術とを組み合わせたin vitroの方法により、非常に特異的な結合能力で、抗体または他の結合試薬の増幅および選択が可能となる。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、非特許文献6を参照されたい。これらの方法は、典型的に、伝統的なモノクローナル抗体調製方法によるハイブリドーマの調製よりも煩雑さが相当低い。結合性のエピトープは、ブロモウリジンおよびリン酸化チロシンなどの小型有機化合物から、長さ約7〜9個のアミノ酸のオリゴペプチドまでのサイズの範囲であってよい。
【0074】
別の実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は、抗体フラグメントであってよい。抗体フラグメントの選択および調製は、あらゆる数々のよく知られている方法によって遂行することができる。ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、mRNAディスプレイ、およびリボソームディスプレイの方法を利用して同定してもよく、クローム(clome)が望まれる技術を用いて、所望の標的分子に特異的である抗体フラグメントアクチベーターを生成してもよい(例えば、Fabフラグメント、VH−VL対を安定化するための構築された分子間ジスルフィド結合を有するFvs、scFv、またはディアボディフラグメントを含む)。
【0075】
ある実施形態において、アクチベーターは、配列番号3〜9のポリペプチド配列のいずれかに、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含んでいる(図12Aおよび12B)。アクチベーターを生成するためのベクターを、下記、および特許文献1に記載する通りに、配列番号3または他のアクチベーター配列(配列番号4〜9)のポリペプチドをコードする核酸を、pPNL6プラスミドの隣接するHAとc−mycエピトープおよびそのホモログ(例えば、図4における配列番号4)との間のフレーム中に挿入し、本明細書および特許文献1に記載する通り、宿主細胞にトランスフェクトするために用いて調製してもよい。
【0076】
ファージ、細菌、酵母、リボソーム、およびmRNAのディスプレイ方法を含めたディスプレイ方法を用いたscFv抗体フラグメントの生成を用いて、本明細書に記載する、アクチベーターおよび/または選択性成分を生成することができる。下記の通り、酵母ディスプレイ方法を用いて、下記のアクチベーターを生成した。酵母ディスプレイ方法は、例えば、非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9に記載されている。
【0077】
リボソームディスプレイも、アクチベーターおよび/または選択性成分を生成するのに有用な方法である。リボソームディスプレイは、所望のリガンドに結合することができるタンパク質を作製するためのin vitroのタンパク質の進化を行うのに用いられる技術である。このプロセスにより、選択ステップにおいて固定化リガンドに結合し、複合体として、これらのmRNA前駆体に関連する翻訳タンパク質がもたらされる。このmRNAはランダムポリペプチドをコードしており、その多様性はファージディスプレイおよび酵母ディスプレイ系をはるかに凌ぐことがある。リガンドに良好に結合するmRNA−タンパク質ハイブリッドを、次いで、cDNAに逆転写し、その配列をPCRによって増幅する。最終結果は、緊密に結合するタンパク質を作製するのに用いることができるヌクレオチド配列である(例えば、非特許文献10、非特許文献11、および非特許文献12を参照されたい)。
【0078】
リボソームディスプレイは、DNA配列、または特定のタンパク質をコードする配列のナイーブライブラリーのいずれかで開始する。配列は転写され、次いでin vitroでタンパク質に翻訳される。しかし、結合性タンパク質の特定のライブラリーをコードするDNAライブラリーは、遺伝学的には終止コドンを欠くスペーサー配列に融合している。このスペーサー配列は、翻訳されるとき、ペプチジルtRNAに依然として結合しており、リボソームトンネルを占め、このように対象のタンパク質をリボソームから突出し、折り畳む。得られるのは、表面結合性リガンドに結合することができる、mRNA、リボソーム、およびタンパク質の複合体である。この複合体を温度の低下およびMg2+などの陽イオンの添加で安定化する。
【0079】
その後の結合またはパニングの段階の間、リボソーム複合体が、表面結合性リガンドに導入される。これはいくつかの方法で、例えば、リガンドを含むレジンベッドを有するアフィニティクロマトグラフィーカラム、固定化した表面結合性リガンドを有する96ウェルプレート、またはリガンドでコーティングしてある磁気ビーズを用いて遂行することができる。良好に結合する複合体を固定化する。引き続き、高い塩濃度、キレート化剤、またはタンパク質の結合モチーフと複合する非固定化リガンドによって結合剤を溶出することで、mRNAを解離させる。次いで、mRNAをcDNAに逆転写して戻し、変異誘発を起こさせ、より大きな選択的な圧力を有するプロセスに繰り返し送り込んでさらによく結合剤を単離することができる。
【0080】
これは全てin vitroで行うので、他の選択技術を凌ぐリボソームディスプレイ方法の主な利点が2つある。第一に、ライブラリーの多様性は細菌細胞の形質転換の効率によって制限されるのではなく、試験管中に存在するリボソームおよび異なるmRNA分子の数によってのみ制限される。第二に、いかなる多様化のステップの後にもライブラリーは形質転換されてはならないので、各選択ラウンドの後、ランダム変異が容易に導入され得る。これにより、いくつかの世代にわたる結合性タンパク質の定向進化が容易になる。
【0081】
ファージディスプレイおよび酵母ディスプレイなどのあるディスプレイ方法において、VH鎖およびVL鎖のライブラリーが、ナイーブの、または免疫化した動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、および他の動物)いずれかのB細胞のmRNAから、またはポリクローナルもしくはモノクローナルのハイブリドーマからも調製される。ポリAプライマーまたは典型的に所望のVH鎖およびVL鎖に隣接する配列に特異的である、マウスの免疫グロブリンに特異的なプライマー(1つもしくは複数)のいずれかを用いて、知られている方法によってmRNAを逆転写してcDNAを得る。所望のVH鎖およびVL鎖を、典型的にVHおよびVLに特異的なプライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、共ににリンカーに連結し、分離する。VHおよびVLに特異的なプライマーセットは、例えば、La Jolla、CaliforniaのStratagene,Inc.から市販されている。構築されたVH−リンカー−VL生成物(scFvフラグメントをコードする)を選択し、PCRによって増幅する。制限部位を、制限部位を含むプライマーを用いて、VH−リンカー−VLPCR生成物の末端にPCRによって導入し、scFvフラグメントをファージディスプレイに適する発現ベクター(典型的にはプラスミド)中に挿入する。Fab’フラグメントなどの他のフラグメントを、ファージ粒子上の表面発現用のファージディスプレイベクター中にクローニングしてもよい。ファージは、ラムダなど、あらゆるファージであってよいが、典型的には、fdおよびM13などの繊維状ファージ、典型的にはM13である。
【0082】
ディスプレイベクターにおいて、VH−リンカー−VL配列を表面タンパク質(例えば、M13に対して表面タンパク質g3p(pHI)またはg8p、最も典型的にはg3p)中にクローニングする。ディスプレイシステムはファージミドシステムも含み、ファージミドシステムは、ファージ表面タンパク質遺伝子(例えば、M13のg3pおよびg8p)、ならびにファージの複製開始点を含むファージミドプラスミドベクターをベースにしている。ファージ粒子を生成するために、ファージミドを含む細胞を、ファージの生成に必要とされる残りのタンパク質を提供するヘルパーファージでレスキューする。ファージミドの複製はヘルパーファージDNAの複製を著しく凌ぐので、ファージミドベクターだけが、得られたファージ粒子中にパッケージングされる。抗体を生成するためのファージミドパッケージング系は市販されている。細菌細胞中で可溶性ScFvフラグメントの生成も可能にする市販のファージミドパッケージング系の一例は、GE Healthcare、Piscataway、NJから市販されているRecombinant Phage Antibody System(RPAS)、およびMoBiTec(Boca Scientific、Boca Raton、FL)から市販されているpSKAN Phagemid Display Systemである。ファージディスプレイ系、これらの構築およびスクリーニング方法は、数ある中で、各々がその全文において参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に詳しく記載されている。
【0083】
典型的に、抗体フラグメントなどの所望のポリペプチドをディスプレイする、ファージ、酵母、細菌、リボソームなどのクローンの集団を生成した後は、所望の免疫原に対するこれらの親和性によってエピトープに特異的なクローンを選択し、場合により、これらの親和性の欠如を、免疫原に結合しているクローンを非結合性のクローンから物理的に分離するのに用いる。典型的に、免疫原は表面に固定され、クローンは表面と接触する。非結合性のクローンは洗い流されるが、結合性のクローンは結合したままである。結合しているクローンを溶出し、増殖させて選択されたクローンを増幅する。親和性の増大する免疫原に結合しているクローンを増幅するために、しばしば厳密性がますます高い洗浄で、数々の反復性のラウンドの親和性選択を典型的に用いる。所望の標的に対する結合の欠如に対して選択するためにネガティブ選択技術を用いてもよい。この場合、結合していない(洗浄された)クローンが増幅される。本発明の状況において、結合しているダイドロンの蛍光を、クローンを同定するための選択可能なマーカーとして用いることができる。FACSなどのハイスループットの方法を、クローンを選択するのに最初に用い、その後、場合により、蛍光画像化技術によって塗抹したコロニーにおける蛍光を検出してもよい。
【0084】
RT−PCRによってVHおよびVL鎖の配列が増幅されているcDNAの供給源として、所望の免疫原で予め免疫化した動物からの脾臓の細胞および/またはBリンパ球を用いるのが好ましいが、親和性によって、典型的には上記のファージディスプレイ(ファージミド)方法によって、in vitroで選択されたVHおよびVL鎖のポリクローナルのセットを生成するためのcDNAの供給源として、ナイーブの(標的の免疫原で免疫化していない)脾細胞および/またはB細胞を用いてもよい。ナイーブのB細胞を用いる場合、親和性選択の間、第1の選択ステップの洗浄は、ポリクローナルファージライブラリー中に非常に少ないコピー数存在することがあるあらゆる単一のクローンの喪失を避けるために、典型的に厳密性が非常に高い。このナイーブの方法によって、B細胞をあらゆるポリクローナルの供給源から得てもよく、B細胞または脾細胞のcDNAライブラリーも、そこからVHおよびVL鎖が増幅され得るcDNAの供給源である。例えば、適切なマウスおよびヒトのB細胞、リンパ球、および脾細胞のcDNAライブラリーはAgilent Technologies/Stratageneから、およびInvitrogenから市販されている。ファージミド抗体ライブラリーおよび関連のスクリーニングサービスは、Charlotte、North CarolinaのMorphoSysUSA,Inc.から商業的に提供されている(CysDisplay)。
【0085】
アクチベーターおよび/または選択性成分は、生物学的供給源に、例えば、動物またはヒトのナイーブまたは免疫化した細胞から生じている必要はない。アクチベーターおよび/または選択性成分を、合成ペプチドのコンビナトリアルライブラリーからスクリーニングしてもよい。このような一方法は、M13のピル遺伝子(pill gene)におけるランダムアミノ酸の挿入を有するファージミドライブラリーの生成を記載している、参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献6に記載されている。これらのファージは、上記の親和性選択によってクローン的に増幅されてよい。
【0086】
培養ディッシュまたはフラスコにおけるパニングは、結合性クローンを非結合性クローニングから物理的に分離する一方法である。パニングは、所望の免疫原構造が固定化されている96ウェルプレートにおいて行うことができる。官能基化されている96ウェルプレートは、典型的にELISAプレートとして用いられ、Rockwell、IllinoisのPierceから購入することができる。ダイドロンは、N末端からC末端の方向で、NH2またはCOOHで官能基化されたプレート上で直接合成されてよい。所望の特異性を有するクローンを単離するための他の親和性の方法は、ダイドロンをビーズに固定することを含む。標準の手順にしたがって、ビーズをカラム中に配置してもよく、クローンはカラムに結合しており、洗浄され、溶出されてよい。あるいは、結合性の粒子を非結合性の粒子からの磁性分離を可能にするために、ビーズは磁性であってよい。免疫原はまた、多孔性の膜またはマトリックスに固定されていてもよく、結合性クローンの容易な洗浄および溶出が可能になる。
【0087】
ある実施形態において、親和性選択プロセスにおけるネガティブ選択のステップを用いて、所与の標的分子またはレポーター分子に対するアクチベーターの特異性を増大するのが望ましいことがある。例えば、アクチベーターをディスプレイするクローンを、標的分子またはレポーター分子と別のダイドロンまたは蛍光団で官能基化した表面と接触させてもよい。クローンを表面から洗浄し、非結合性のクローンを増殖させて非結合性のクローンの集団をクローン的に拡大し、それによって所望の標的分子に特異的ではないクローンを選択解除する。ある実施形態において、ネガティブ選択ステップにおいて、ランダム合成ペプチドを用いることができる。他の実施形態において、アクセプターまたはドナーに構造的に類似性を有する1つまたは複数の免疫原をネガティブ選択ステップにおいて用いることができる。
【0088】
アクチベーターのスクリーニングは、Holtらにおいて記載されている通り、ハイスループットのパラレル選択によって遂行されるのが最良である。あるいは、ハイスループットのパラレル選択は、MorphoSys USA,Incなどの企業によって行われてもよい。
【0089】
ある実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分の結合性領域を変異し、未変異のアクチベーターに比べて優れた結合の性質を有するアクチベーターおよび/または選択性成分を選択するのが望ましいことがある。これは、エラーを引き起こす条件下、TaqポリメラーゼでのPCRなど、あらゆる標準の変異誘発技術によって遂行することができる。このような場合、PCR:プライマーは、変異を引き起こす条件下、(例えば)ファージミドプラスミドの、scFvをコードするまたは結合試薬をコードする配列を増幅するのに用いられ得る。PCR生成物を、次いで、上記の通り、(例えば)ファージミドベクター中にクローニングし、所望の特異性に対してスクリーニングしてもよい。
【0090】
他の実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分を修飾して、それらをプロテアーゼによる切断により耐性にしてもよい。例えば、ポリペプチドを含む本発明のアクチベーターの安定性は、(L)体における天然に存在するアミノ酸の1つまたは複数をD−アミノ酸で置換することによって増大することができる。様々な実施形態において、アクチベーターのアミノ酸残基の少なくとも1%、5%、10%、20%、50%、80%、90%、または100%が、D体のものであってよい。Lアミノ酸からDアミノ酸への切り替えは、消化管において見出される偏在性のペプチダーゼの多くの消化能力を中和する。あるいは、本発明のアクチベーターの増強された安定性は、伝統的なペプチド結合の修飾の導入によって実現されてよい。例えば、ポリペプチドのバックボーン内に環状環が導入されると、胃または他の消化器官中で、および血清中でポリペプチドを消化することが知られている多くのタンパク質分解酵素の影響を回避するために、安定性の増強が付与され得る。さらに他の実施形態において、アクチベーターの安定性の増強は、1つまたは複数の右旋性アミノ酸(例えば、右旋性のフェニルアラニンもしくは右旋性のトリプトファン)をアクチベーターのアミノ酸間に挿入することによって実現され得、好適の実施形態において、このような修飾は、所望の標的分子またはレポーター分子との相互作用の活性または特異性に影響を及ぼさずに、アクチベーターのプロテアーゼ耐性を増大する。
【0091】
ある実施形態において、抗体またはその変異体は、対象に投与する場合、または投与するとき、免疫原性を少なくするように修飾されてよい。例えば、対象がヒトである場合、抗体は「ヒト化」されていてよく、この場合、例えば特許文献7に記載されているように、ハイブリドーマに由来する抗体の相補性決定領域(1つまたは複数)がヒトモノクローナル抗体中に移植されている。また、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物を用いてヒト化抗体を発現させてもよい。このようなヒト化は、部分的でも、または完全でもよい。
【0092】
別の実施形態において、アクチベーターはFabフラグメントである。Fab抗体フラグメントは、プロテアーゼであるパパインを用いて免疫グロブリン分子をタンパク質分解することによって得ることができる。パパイン消化により、各々が単一の抗原結合性部位を有する「Fabフラグメント」2つの別個の抗原結合性フラグメントおよび残りの「Fcフラグメント」が得られる。さらに別の実施形態において、アクチベーターはF(ab’)2フラグメントである。F(ab’)2抗体フラグメントは、酵素ペプシンによる限定されたタンパク質分解を用いてIgG分子から調製することができる。他の実施形態において、選択性成分は、酵素などのネットワークタンパク質またはパスウェイタンパク質、例えば、ホスファターゼまたはキナーゼであってよい。このようなタンパク質を変異させて、レポーターおよび/または標的分子に対する結合部位を作製してもよい。例えば、細胞および組織におけるネットワークタンパク質およびパスウェイタンパク質から選択性成分のバイオセンサーを作製する方法は、選択されたタンパク質上の特異的な領域を変異させて、レポーターまたは標的分子に対する活性化に結合する部位に対するアクチベーター部分を作り出すことを含む。変異用に選択された領域は、アクチベーターに変換されるべきタンパク質をコードする遺伝子の選択された領域において変異を作り出すことによって、ランダムに、または部分的にランダムに変異され得る。変異された領域(1つまたは複数)を有する遺伝子は、アッセイすべき活性(レポーター分子の場合)に対するレポーター分子(または標的分子)の結合および蛍光感受性を可能にする方法で、タンパク質を発現することができる系中にトランスフェクトすることによって、組み入れられ得る。例えば、変異された領域を有するDNAは、ダイドロンのアクセプターにトラニング(traning)であってよい(例えば、非特許文献7および非特許文献8を参照されたい)。選択方法によって単離および同定することによって、アクチベーターおよび選択性成分として最適に機能する、変異された集団内の特定のタンパク質の遺伝子の配列。他の実施形態において、変異体のライブラリーは、変性されたオリゴヌクレオチド配列から生成される。変性されたオリゴヌクレオチド配列からライブラリーを生成し得る方法は多く存在する。変性された遺伝子配列の化学合成は、DNA自動合成機において行うことができ、次いで、合成の遺伝子を発現に好適なベクター中にライゲーションすることができる。変性されたセットの遺伝子の一目的は、一混合物において、可能なタンパク質配列の所望のセットをコードする全ての配列を提供することである。変性されたオリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野ではよく知られている(例えば、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17を参照されたい)。このような技術は、他のタンパク質の定向進化において用いられている(例えば、非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21、ならびに、特許文献8、特許文献9、および特許文献10を参照されたい)。
【0093】
あるいは、他の形態の変異誘発を利用してコンビナトリアルライブラリーを生成してもよい。例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発などを用いたスクリーニングによって、リンカースキャニング突然変異誘発によって、飽和突然変異誘発によって、PCR突然変異誘発によって、またはランダム突然変異誘発によって、例えば、変異体を生成し、ライブラリーから単離してもよい。とりわけコンビナトリアルの設定におけるリンカースキャニング突然変異誘発は、アクチベーターを同定するための魅力的な方法である。
【0094】
さらに他の実施形態において、アクチベーターは、核酸リガンドとしても知られるアプタマーであってよい。アプタマーは、所望の分子構造に特異的に結合するように選択されたオリゴヌクレオチドである。アプタマーは、典型的に、ファージディスプレイの親和性選択に類似の親和性選択プロセスの生成物である(in vitroの分子進化としても知られる)。このプロセスは、親和性分離のいくつかの直列の反復を行い(例えば、所望の免疫原が結合している固体支持体を用いて)、その後ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って免疫原に結合している核酸を増幅することを伴う。このように親和性分離の各ラウンドにより、所望の免疫原に上首尾に結合する分子に対する核酸の集団が濃縮される。このやり方では、核酸のランダムプールは、標的分子に特異的に結合するアプタマーを生成するように「教育され(educated)」得る。アプタマーは、典型的にはRNAであるが、DNAまたはその類似体もしくは誘導体、例えば、制限なく、ペプチド核酸およびホスホロチオエート核酸であってよい。アプタマーは、これらの選択された核酸の増幅と組み合わされた望ましいやり方で標的と相互作用する核酸リガンドの選択を伴う、「SELEX」法を用いて調製してもよい。SELEXプロセスは、特許文献11および特許文献12、ならびに特許文献13に記載されている。これらの参考文献は、各々が参照によって本明細書に特に組み込まれ、総称的にSELEX特許と呼ばれる。
【0095】
SELEXプロセスは、各々が独特の配列を有し、その各々が所望の標的化合物または標的分子に特異的に結合する性質を有する核酸分子である1クラスの生成物を提供する。様々な実施形態において、標的分子は、例えば、タンパク質類、炭水化物類、ペプチドグリカン類、または小分子種であってよい。SELEX法は、その生物学的構造の不可欠の部分である分子との特異的な相互作用によって、細胞表面またはウイルスなどの生物学的構造を標的にするのに用いることもできる。
【0096】
基本的なSELEX法は、数々の特異的な目的を達成するために修正されている。例えば、特許文献14は、ベントDNAなど、特異的な構造の特徴を有する核酸分子を選択するためにゲル電気泳動と組み合わせたSELEXプロセスの使用を記載している。特許文献15は、カウンターSELEXと呼ばれる、緊密に関連する分子間を識別することができる高度に特異的な核酸リガンドを同定するための方法を記載している。特許文献16は、標的分子に対して高親和性を有するオリゴヌクレオチドと低親和性を有するオリゴヌクレオチドとの間の高度に効率的な分割を実現するSELEXベースの方法を記載している。特許文献17および特許文献18は、SELEXを行った後、改善された核酸リガンドを得るための方法を記載している。
【0097】
ある実施形態において、本明細書に記載する核酸リガンドは、これらの安定性を増大する修飾、例えば、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼなどの酵素による分解に対する耐性の増大を提供する修飾、ならびに/または核酸リガンドの送達を増強もしくは媒介する修飾を含むことができる(例えば、特許文献19および特許文献20を参照されたい)。このような修飾の例には、リボース、および/またはホスフェート、および/または塩基の位置の化学的置換が含まれる。様々な実施形態において、核酸リガンドの修飾には、それだけには限定されないが、核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対してさらなる電荷、分極率、疎水性、水素結合、静電相互作用、および流動性を組み入れる他の化学基を提供するものが含まれてよい。このような修飾には、それだけには限定されないが、糖の2’位修飾、ピリミジンの5位修飾、プリンの8位修飾、アミンの環外修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−インド−ウラシルの置換、バックボーン(主鎖)の修飾、ホスホロチオエートまたはアルキルホスフェートの修飾、メチル化、普通ではない塩基対の組合せ、例えば、イソ塩基(isobase)、イソシチジン(isocytidine)、およびイソグアニジン(isoguanidine)などが含まれる。修飾には、キャッピングなどの3’および5’修飾も含まれてよい。例示の実施形態において、核酸リガンドは、ピリミジン残基の糖部分上を2’−フルオロ(2’−F)修飾されているRNA分子である。
【0098】
アクチベーターおよび/または選択性成分は、テンプレートがインプリントされた材料であってよい。テンプレートがインプリントされた材料は、外側に糖の層、およびその下のプラズマが堆積した層を有する構造である。テンプレートがインプリントされた構造と、それに対して相補的である標的分子との間の特異的な相互作用を可能にするように、外側の糖の層は所望の標的分子またはテンプレートに対して形状が相補的である押込みまたはインプリントを含んでいる。テンプレートのインプリントは、例えば、医療用装具(例えば、人工心臓弁、人工肢関節、コンタクトレンズ、およびステント)、マイクロチップ(好ましくはシリコンベースのマイクロチップ)、ならびにウイルスまたは細菌などの特定の微生物を検出するようにデザインされている診断用装置の構成要素を含めた、様々な構造の表面上で利用することができる。テンプレートがインプリントされた材料は、その全文が参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献21において論じられている。
【0099】
ある実施形態において、アクチベーターは、その単離、固定化、同定、もしくは検出を促進し、かつ/またはその可溶性を増大するタグまたはハンドルを含むことができる。様々な実施形態において、タグはポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、ポリマー、または化学的部分、およびこれらの組合せもしくは変形であってよい。ある実施形態において、例示の化学的ハンドルには、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、タンパク質A、タンパク質G、カルモジュリン結合蛋白質、チオレドキシン、マルトース結合蛋白質、HA、myc、ポリアルギニン、ポリHis、ポリHis−Asp、またはFLAGタグ等が含まれる。さらなる例示のタグ類には、in vivoでタンパク質の局在性を変更するポリペプチド、例えば、シグナルペプチド類、III型分泌系を標的にするペプチド類、トランスサイトーシスドメイン類、核移行シグナル類などが含まれる。
【0100】
別の実施形態において、アクチベーターおよび/または選択性成分は、細胞膜を横断する速度が増大するように修飾されてよい。例えば、アクチベーターは、「トランスサイトーシス」(例えば、細胞によるポリペプチドの取込み)を促進するペプチドに結合していてよい。ペプチドはHIVトランスアクチベーター(TAT)タンパク質、例えば、in vitroで細胞によって速やかに取り込まれることが観察されている部分である、TATの残基37〜62または48〜60に対応するフラグメントの一部分であってよい(非特許文献22)。あるいは、内部移行するペプチドは、ショウジョウバエ(Drosophia)のアンテナペディアタンパク質、またはそのホモログに由来していてよい。ホメオタンパク質アンテナペディアの60アミノ酸長のホメオドメインは、生体膜を介して移行することが実証されており、それに対して結合している異種性のポリペプチドの移行を促進することができる。このように、アクチベーターは、ショウジョウバエのアンテナペディアのアミノ酸およそ42〜58、またはトランスサイトーシスのためのより短いフラグメントからなるペプチドに融合していてよい(非特許文献23)。トランスサイトーシスのポリペプチドはまた、特許文献22に開示されているペプチド配列などの、天然に存在する膜転位配列(MTS)であってよい。
【0101】
さらに他の実施形態において、アクチベーター/選択性成分は、2価であり、アクチベーターおよび選択性成分の両方を、1つの近接するポリペプチド配列中に、あらゆる適切なポリペプチドのアクチベーターおよび選択性成分を含む融合(キメラ)タンパク質の形態において含んでいる。上記の通り、融合タンパク質は、その溶解性を増大し、かつ/またはその精製、同定、検出、標的化、および/もしくは送達を促進する少なくとも1つのドメインを含んでいてよい。好適例のドメイン類には、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、タンパク質A、タンパク質G、カルモジュリンに結合するペプチド、チオレドキシン、マルトースに結合するタンパク質、HA、myc、ポリアルギニン、ポリHis、ポリHis−Asp、またはFLAG融合タンパク質類、およびタグ類が含まれる。さらなる例示のドメインには、in vivoでタンパク質の局在化を変更するドメイン、例えば、シグナルペプチド類、III型分泌系を標的にするペプチド類、トランスサイトーシスドメイン類、核移行シグナル類、標的化部分類、すなわち標的分子に特異的なタンパク質等などが含まれる。様々な実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つまたは複数の異種性の融合物類を含むことができる。ポリペプチドは、同じ融合ドメインの複数のコピーを含んでいてよく、または2つ以上の異なるドメイン類に対する融合物を含んでいてよい。融合物は、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはポリペプチドのN末端およびC末端の両方に生じてよい。融合タンパク質の構築を促進するために、またはタンパク質の発現もしくは融合タンパク質の構造的な拘束を最適化するために、アクチベーターおよび/または選択性成分ポリペプチドの間のリンカー配列が含まれていてよい。好適例の融合タンパク質の概念の証明を、以下に記載する。
【0102】
他の実施形態において、アクチベーターおよび選択性成分は、細胞もしくは生物体、または分析されるべき対象内で、融合タンパク質として発現される(下記の実施例を参照されたい)。下記の発現方法を用いて、宿主細胞中でアクチベーターおよび選択性成分を発現させ、次いで、宿主細胞を、本明細書に記載し、当業者には知られている通りに単離および精製してもよい。
【0103】
一般的に、アクチベーターおよび選択性成分をコードする核酸は、トランスフェクトまたは感染などによって宿主細胞中に導入することができ、宿主細胞を、アクチベーターを発現させる条件下で培養する。核酸を原核細胞および真核細胞中に導入する方法は、当技術分野ではよく知られている。哺乳動物および原核生物の宿主細胞の培養に適する培地は、当技術分野ではよく知られている。ある場合には、対象のポリペプチドをコードする核酸は誘導性のプロモーターの制御下にあり、これは一旦誘導されると核酸を含む宿主細胞はある回数分割する。例えば、核酸がベータ−ガラクトースのオペレーターおよびリプレッサーの制御下にある場合、細菌の宿主細胞が約0.45〜0.60の密度のOD600を達成したらイソプロピルベータ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培地に加える。次いで、培地をさらに数回増殖させて、宿主細胞にポリペプチドを合成する時間を与える。次いで、典型的に、培地を凍結し、しばらくの間凍結して貯蔵し、その後ポリペプチドを単離および精製してもよい。
【0104】
このように、アクチベーターおよび選択性成分を全てまたは一部分コードするヌクレオチド配列を用いて、微生物または真核細胞のプロセスによって、アクチベーターおよび選択性成分の形態の組換え体を生成してもよい。発現ベクターなどのポリヌクレオチド構築体中に配列を連結し、真核生物(酵母、トリ、昆虫、もしくは哺乳動物)または原核生物(細菌細胞)いずれかの宿主細胞中にトランスフォームし、感染させ、またはトランスフェクトするのが標準的な手順である。同様の手順、またはそれを修正したものを用いて、本発明による微生物的手段または組織培養技術によって組換えのポリペプチドを調製してもよい。
【0105】
「発現」は、遺伝子(制限なく、遺伝子生成物を生成するための機能的な遺伝学的ユニットであって、典型的にはDNAまたはRNA上にコードされ、いくつかのウイルスでは、転写プロモーターや他の応答エレメント、および/もしくはエンハンサー等のようなcis−作用性エレメントを含め、ならびに典型的にはタンパク質(オープンリーディングフレームすなわちORFである)をコードする発現された配列、または機能上/構造上のRNAならびにポリアデニル化配列から遺伝子産物(典型的には蛋白質、任意選択的に転写後修飾又は機能上/構造上のRNA)からの情報の全体の流れを意味する。
【0106】
デザインされた配列「の転写制御下の遺伝子の発現」、または代替的に、デザインされた配列「による制御を受けさせる」は、遺伝子に操作可能に連結している(典型的にはcisにおいて、機能的に結合している)示された配列を含む遺伝子からの遺伝子発現を意味する。示された配列は、転写のエレメント(制限なく、プロモーター、エンハンサー、および応答エレメント)の全てまたは部分であってよく、遺伝子の転写を完全に、または部分的に、制御し、および/または影響を及ぼすことができる。
記載した遺伝子生成物「の発現のための遺伝子」は、適切な環境中に配置した場合に、例えば、細胞中にトランスフォームされ、トランスフェクトされ、または形質導入され、発現に適した条件に曝された場合に、記載された遺伝子生成物を発現することができる遺伝子である。
【0107】
構成的プロモーターの場合、「適切な条件」は、遺伝子が、典型的に宿主細胞中に導入されることだけを必要とすることを意味する。誘導性のプロモーターの場合、「適切な条件」は、ある量のそれぞれの誘導因子が、遺伝子の発現を引き起こすのに効果的な発現系(例えば、細胞)に与えられたことを意味する。本明細書に記載するヌクレオチド配列は全て、5’から3’の方向において提供され、本明細書に記載するアミノ酸配列は全て、N末端からC末端の方向において提供される。
【0108】
アクチベーターおよび選択性成分をコードする核酸、ならびにベクター、宿主細胞、それらの培養物の他の実施形態、ならびに融合タンパク質を作製する方法は、下記、または特許文献1に記載されている。アクチベーターおよび/または選択性成分をコードする核酸は、細菌のプロモーター、例えば、嫌気性大腸菌(E.coli)、NirBプロモーターまたは大腸菌のリポタンパク質lip、サルモネラ(Salmonella)pagCプロモーター、赤痢菌(Shigella)entプロモーター、TnIO上のtetプロモーター、またはビブリオコレラ(Vibrio cholera)のctxプロモーターに操作可能に連結していてよい。あらゆる他のプロモーターを使用することができる。細菌のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性のプロモーターであってよい。アクチベーターが細胞から分泌されるように、シグナルペプチド配列を構築体に加えてもよい。このようなシグナルペプチドは当技術分野ではよく知られている。一実施形態において、大腸菌のRNAポリメラーゼによって認識される強力なファージT5プロモーターを、lacオペレーター抑制モジュールと一緒に用いて、厳重に制御された、大腸菌における高レベルの発現または組換えタンパク質を提供する。この系において、高レベルのlacリプレッサーの存在下、タンパク質の発現は阻止される。組換えタンパク質およびポリペプチドを生成するための非常に様々な方法および遺伝子構築体が市販されており、当業者には別の方法で知られており、または入手可能である。例えば、真核生物の可溶化物(例えば、ウサギ網状赤血球可溶化物、ウサギ卵母細胞可溶化物、ヒト細胞可溶化物、昆虫細胞可溶化物、およびコムギ胚芽抽出物、または合成方法も用いたin vitroのタンパク質合成を、広く知られている通り、用いて本明細書に記載するポリペプチドを生成することができる。
【0109】
植物の発現ベクターを用いることができる。例えば、CaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター、またはTMVのコートタンパク質プロモーターなどのウイルスのプロモーターを用いてもよく、あるいは、RUBISCOの小型サブユニットなどの植物のプロモーター、またはダイズhsp17.5−Eもしくはhsp17.3−Bなどの熱ショックプロモーターを用いてもよい。これらの構築体を、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNAトランスフォーメーション、マイクロインジェクション、電気穿孔などを用いて植物細胞中に導入することができる。このような技術の再考には、例えば、非特許文献24および非特許文献25を参照されたい。あるいは、昆虫系を用いて本明細書に記載するポリペプチドを生成することができる。このような1つの系において、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして用いられる。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する(例えば、Smith、米特許文献23を参照されたい)。昆虫系の別の実施形態において、対象のポリペプチドをコードするDNAを、ポリヘドリンプロモーターの下流のpBlueBacIII組換えトランスファーベクター(Invitrogen、San Diego、Calif.)中にクローニングし、Sf9昆虫細胞(ヨトウガの卵巣細胞に由来する、Invitrogen、San Diego、Calif.から入手可能)中にトランスフェクトして組換えのウイルスを生成する。別の実施形態において、対象のポリペプチドを、ある実施形態においてポリペプチドがメス動物のミルクなどの中に分泌されるように、トランスジェニック動物において調製する。
【0110】
ウイルスベクターは関連技術において広く知られており、その多くは市販されており、核酸を細胞中に効率的にin vitroで導入するのにも用いられ得る。細胞をウイルスベクターに感染させることには、多数の標的にされる細胞が核酸を受け取ることができるという利点がある。さらに、ウイルスベクター中の遺伝物質によって、例えば、ウイルスベクター中に含まれる核酸によってコードされたポリペプチドは、ウイルスベクターの核酸を取り込んだ細胞中で効率的に発現される。有用なウイルスベクター系の例には、レトロウイルス、アデノウイルスが含まれ、アデノ随伴ウイルスベクターは、とりわけ哺乳動物中に、in vivoで外来の遺伝子を輸送するのに有用であると、一般的に理解されている。これらのベクターは、細胞中への遺伝子の効率的な送達をもたらし、輸送された核酸は、典型的には、宿主の染色体DNA中に安定に組み込まれる(非特許文献26を参照されたい)。
【0111】
別のウイルスの遺伝子送達系は、アデノウイルスに由来するベクターを利用する。アデノウイルスAd 5dl324型系統、またはアデノウイルスの他の系統(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターが当業者にはよく知られている。ある状況において、組換えのアデノウイルスは、非分裂性の細胞に感染することができ、気道の上皮、内皮細胞、肝細胞、および筋肉細胞を含めた、広範囲の細胞型に感染させるのに用いることができる点で有利であり得る。さらに、ウイルス粒子は比較的安定であり、精製および濃縮が容易であり、上記の通り、感染性スペクトルに影響を及ぼすように修飾することができる。さらに、導入されたアデノウイルスのDNA(およびそれに含まれる外来のDNA)は宿主細胞のゲノム中に組み込まれないがエピソームのままであり、それによって、導入されたDNAが宿主のゲノム(例えば、レトロウイルスのDNA)中に組み込まれる状態において、挿入変異の結果として生じることがある潜在的な問題を回避する。さらに、外来DNAに対するアデノウイルスのゲノムの収容力は、他の遺伝子送達ベクターに比べて大きい(最大8キロベース)。現在使用中であり、したがって本発明が好ましいほとんどの複製欠損アデノウイルスベクターは、ウイルスのE1およびE3遺伝子の全てまたは部分を欠失しているが、アデノウイルスの遺伝物質の80%ほどを保持している。挿入された遺伝物質の発現は、例えば、EIAプロモーター、主要後期プロモーター(MLP)および付随するリーダー配列、E3プロモーター、または外因的に加えたプロモーター配列の制御下であり得る。
【0112】
対象のポリペプチドをコードする遺伝物質の送達に有用なさらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および増殖性の生活環のためのヘルパーウイルスとしてアデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどの別のウイルスを必要とする、天然に存在する欠損ウイルスである。これは、そのDNAを非分裂細胞中に組み込むことがあり、高頻度の安定な組込みを表すことがある少数のウイルスの1つでもある。AAVをわずか300塩基対程度含むベクターが、パッケージングされてよく、組み込まれてよい。外来性のDNAに対する空間は約4.5kbに限られている。非特許文献27に記載されているものなどのAAVベクターを用いて、DNAを細胞中に導入することができる。AAVベクターを用いて様々な核酸が異なる細胞型中に導入されている(例えば、非特許文献28および非特許文献29を参照されたい)。他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、およびいくつかのRNAウイルスに由来していてよい。
【0113】
ウイルス伝達法の他に、上記に説明したものなど、非ウイルスの方法をやはり用いて、例えば、in vitroで細胞中で、または動物の組織において、対象のポリペプチドをコードする核酸の発現を引き起こすことができる。遺伝子導入の最も非ウイルス的方法は、巨大分子の取込みおよび細胞内輸送のために哺乳動物細胞によって用いられる通常の機序に頼るものである。好ましい実施形態において、本発明の非ウイルスの遺伝子導入方法は、標的細胞によって遺伝材料を取り込むためのエンドサイトーシス経路に頼っている。このタイプの例示の遺伝子送達系には、リポソーム由来の系、ポリリジンコンジュゲート、および人工のウイルスエンベロープが含まれる。例えば、遺伝材料は、その表面上に正の電荷を帯びているリポソーム(例えば、リポフェクチン)中に捕捉され、場合により、これは標的組織の細胞表面抗原に対して抗体でタグ付けされる(非特許文献30、特許文献24、特許文献25、および、特許文献26)。例えば、パピローマに感染した細胞のリポフェクションは、PVに関連抗原に対するモノクローナル抗体でタグ付けされたリポソームを用いて行い得る(非特許文献31を参照されたい、非特許文献32も参照されたい)。
【0114】
遺伝子送達系は、抗体、またはポリリジンなどの遺伝子を結合する物質と架橋結合している細胞表面リガンドを含んでいる(例えば、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、および特許文献31を参照されたい)。例えば、対象のキメラのポリペプチドをコードする遺伝物質を、ポリカチオンにコンジュゲートしているアシアロ糖タンパク質を含む可溶性のポリヌクレオチド担体を用いて、in vivoで肝細胞にトランスフェクトするのに用いることができる(特許文献32を参照されたい)。媒介されたエンドサイトーシスによる核酸構築体の効率的な送達は、エンドソームの構造から遺伝子の逸脱を増強する物質を用いて改善することができることも理解される。例えば、アデノウイルス全体またはインフルエンザHAの遺伝子生成物の融合性のペプチドを送達系の部分として用いて、DNAを含有するエンドソームの効率的な破壊を引き起こすことができる(非特許文献33、非特許文献34、および非特許文献35)。
【0115】
本明細書に記載するダイドロンのある実施形態によると、ある機能的な目標が望ましい。
【0116】
一例において、目標は、以下の特徴を有するドナーアレイ調製物を生成することである。>106モル吸光度(561nm)およびφアレイ/φ遊離=0.7。標準の単一反応性の(monoreactive)NHSエステルドナー色素(例えば、Cy3、Cy3.5、Alexa568、Atto−565)を、市販の2官能基性デンドリマー(例えば、PAMAM、シスタミンコア)の複数の変異体とカップリングし、これらの定常状態の吸収および蛍光の性質を測定する。FCS、電気泳動、および質量分析法による分子キャラクタリゼーションにより、標識化および分子分散度の程度が確認され、最高の吸光度および量子収量を有するドナーアレイの選択が可能になる。量子収量が劇的に消光したら、別々の電荷、極性、および空間の性質を有する、色素または代替のデンドロンの骨格の立体的な修飾(例えば、PEG修飾)を調製して、色素間相互作用を低減することができる。
【0117】
別の例において、デザインの目標は>90%の伝達効率である。ブライトドナーアレイは、ダーククエンチャー(例えば、DABCYL、4−((4−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸)およびFRET(フェルスター共鳴エネルギー移動、または蛍光共鳴エネルギー移動)アクセプター(例えば、Cy5、Alexa700、Cy7)に連結して、リンカー長さの変動によって消光の性質を最適化し、中間のアクセプター(すなわち、第1のドナーおよびアクセプターの両方とスペクトルが重複する第2のドナーが提供され、この場合第1のドナーの発光スペクトルはアクセプターの吸収スペクトルと重複しない(または必ずしも重複しない))がより赤色にシフトした蛍光団に必要とされるか否かを決定する。必要であれば、ヘテロ2官能基性(heterobifunctional)の中間体のアクセプター色素(すなわち、NHSエステルおよびヨード酢酸の官能性)を調製して中間のアクセプターの試験を促進することができる(非特許文献36)。
【0118】
別の例において、デザインの目標は、FAPまたはドナーに結合していないときデンドロンに連結しているアクセプターの低い蛍光である。アクセプターの蛍光団は、ダイドロンの合成に好適な化学を用いてデンドロン骨格に結合しており、構築体の蛍光を細胞抽出物中および精製した核酸材料中で、複数のドナーの存在下でダイドロンを検出するのに用いられる条件下でバックグラウンドの蛍光に対して試験する。蛍光の活性化が高い場合、アクセプターの電荷、サイズ、および疎水性の修飾を、細胞の状況における非特異的な相互作用を低減するのに利用することができる。
【0119】
別の例において、ダイドロン/FAP調製物および確証のためのデザインの目標は、細胞可溶化物中φon/φoff>1000を有する、空間的に間隙が約60nmである3個のダイドロン/FAPモジュールである。本発明者らはバッファー中で>15,000倍の切換え比(switching ratio)でこれを活性化するモジュールをすでに選択していたので、マラカイトグリーンが最初の蛍光団として働くことができる。さらなる蛍光団をデザインし、合成することができる。近赤外(far−red)および近赤外線(near IR)発光を有する、極性を感知する色素(例えば、メロシアニンおよびスチリル色素)の多くができるように、非対称性のポリメチン色素、およびインドシアニングリーンの類似体を蛍光団として用いることができる。蛍光団は、ドナーアレイを修飾する前に、細胞可溶化物中の非特異的な活性化に対してスクリーニングされる。選択されたFAPモジュールによる消光および活性化をバッファー中および細胞可溶化物中で特徴付けて、活性化率を決定する。許容できる切換え比を有するFAP/ダイドロン対は、FCSおよびTIRF単一分子顕微鏡によって特徴付けされる。
【0120】
ある実施形態によると、酵母表面ディスプレイライブラリーからの最初の蛍光団活性化ペプチドの選択に確立された方法を用いて、新規な蛍光団活性化ペプチドを単離する。簡潔に述べると、合成的に調製された各蛍光団のビオチン化されたバージョンを、Pacific Northwest National Laboratoryの酵母表面にディスプレイされたscFvライブラリー(約109個の別々のクローン、選択用の細胞1011個)の拡大され、誘発されたアリコートを使用してインキュベートする。ビオチン化された色素に結合する酵母を、最初にストレプトアビジンがコンジュゲートした磁性ビーズで、その後、拡大、および抗ビオチンコンジュゲートした磁性ビーズでの第2ラウンドの濃縮で、2つのステップにおいて磁気的に濃縮する。これらの酵母をビーズから溶出し、次いで、遊離の色素を使用してインキュベートし(フローサイトメーター上の直接検出ができる場合。できない場合は、ビオチン化した色素の後に洗浄およびストレプトアビジンAlexa488標識化が続く)、流動性選別(flow sorted)して蛍光発生的な細胞の集団または蛍光団に結合している細胞の集団を選択する。サイトメーター上で検出できない蛍光団のクローンは、誘導されたコロニーの単離されたものを含む寒天平板上で色素を洗浄し、その後の分析用に広視野の蛍光画像化システムを用いて最も明るいコロニーを選択することによって検出することができる。ライブラリーから回収されたクローンは、ある範囲の親和性およびスペクトルの性質を有し、引き続き(エラープローン(error-prone)PCRによって)親和性成熟により、親和性、量子収量、および選択性における変化がもたらされ得ることが見出された。クローンは、確立されたプロトコールを用いて、表面ディスプレイ系から酵母分泌系に容易に移行される。有望なクローンは配列決定され得、独特のクローンはpPNL9分泌ベクターに伝達されて、集合の分子および単一分子の蛍光、ならびに蛍光団との結合性の性質を引き続き特徴付けるためにタンパク質を生成する。
【0121】
ダイドロンの合成。所与の蛍光団が、生存可能な蛍光団活性化ペプチドをライブラリーから生成した後、この蛍光団をダイドロン中に組み込む(図5Aを参照されたい)。合成の戦略により、連続的なラウンドの蛍光団頭部へのリンカー付加によってダイドロンが構築される(分岐的合成戦略)。得られた中間体は、増大数の分岐部位および特定の数の機能性アミンを周囲に有する、一連の蛍光発生的なプレダイドロン(pre−dyedron)である。これらのアミンは、市販のドナー色素の活性エステルと容易に反応することができる。この戦略の利点の1つは、どの蛍光団が最も効率的なエネルギー伝達を有し、色素の凝集または非特異的な結合に及びがちな最小の傾向を示すかを決定するために、各プレダイドロンで、数々の個々のドナーの蛍光団を試験することができることである。この合成の取組みは、単一のMG分子に対して最高4個のCy3分子に連結するためのTリンカーを用いて実証された。ドナー色素の密度および充填における増大は、Tリンカーよりむしろトリポッド(tripod)リンカーを用いて実現することができる。この形状により、ドナー6個または9個を有する、小型サイズのダイドロンの合成が可能になる(図5Bを参照されたい)。アセチレン性のマラカイトグリーン、DIR(ジメチルインドールレッド)、およびMG蛍光団に対してフェルスター半径が比較可能であり、直接的な分子間FRETの取組みが、Cy3nMGダイドロンに対して示される結果にとって同様に成功する可能性がある。しかし、インドシアニングリーンの場合、フェルスター半径は相当短く、全体的なFRETの効率が低減される可能性がある。このような場合には、媒介色素でのカスケードの取組みを利用して、ドナーからの効率的なFRET、およびアクセプターに対する効率的なFRETを確実にしてもよい(図5C)。この場合、Cy5−ICGの直列が、上記のリンカー拡大合成戦略のための「開始の蛍光団」として働くことができる。
【0122】
蛍光モジュールの最適化および成熟。蛍光団単独に対して選択される、蛍光団活性化ペプチドの性質は、蛍光発生的なダイドロンの結合および活性化に対して最適化されているとは限らない。累加的な数のドナー色素を、予め選択された蛍光団に添加したときのクローンの親和性の低減が注目された。特に結合性の、および活性化する蛍光発生的なダイドロンに対する、これらFAPの性質を洗練するために、高量子収量および結合の緊密な、蛍光団に結合するクローンの親和性成熟をエラープローンPCR法によって行うことができ、得られた変異体のライブラリーは、親の蛍光団ではなく、むしろダイドロンの結合性および活性化に対して選択される。フローサイトメトリー(蛍光団の輝度を測定するためのHAエピトープタグで測定した発現の比率により、クローンの量子収量に相関する値がもたらされる)によって決定した、低濃度で、かつ高量子収量で蛍光発生的なダイドロンと結合し、活性化することができるクローンを収集し、配列決定する。
【0123】
本明細書に記載するダイドロンおよびダイドロン系は、実質的にあらゆるアッセイ、蛍光団が有用である画像化システムに有用である。本明細書に詳しく記載する通り、ダイドロンは、細胞または生物体におけるリアルタイムの画像化において有用である。一例として、アクチベーター/選択性成分を含むポリペプチドを、遺伝学的なものを含むあらゆる手段によって、ポリペプチドを発現するための遺伝子を含む核酸との、細胞または生物体の、一過性または永続的な、トランスフェクション、形質導入、または形質転換によって、細胞中に導入することができる。あるいは、ポリペプチドを細胞または生物体中に導入することができる。アクチベーターおよび選択性成分を含む融合タンパク質または複合体、例えば抗体を、例えば固定した細胞または組織のインサイチューのアッセイに用いることができる。このような一実施形態において、所望の細胞または組織成分が細胞または組織中に局在することができるように、選択性成分は、細胞または組織の構成成分、例えば、細胞または組織のタンパク質に結合しており、アクチベーターはダイドロンに結合している。複合体中に、または融合タンパク質として選択性成分に結合しているアクチベーターを、ELISAまたはRIAに類似の蛍光アッセイ、例えば、サンドイッチ型のアッセイにおいて用いることもできる。同様に、アクチベーター、および抗体または核酸などの選択性成分を含むプローブを、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、もしくはサザンブロット、またはEMSA(電気泳動移動度シフト解析)、または他の電気泳動法における、タンパク質または核酸の検出に用いることができる。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
ダイドロンの合成
NMRスペクトルをBruker Avance 500MHz機器上で得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)実験を、Xcaliburバージョン1.2を用いてFinnigan LCQ四重極イオントラップ質量分析計上で行った。最終生成物である「TCM」13の質量分析をThermoFisher Scientific LCQクラシック、およびXcaliburバージョン1.3ソフトウエアで行った。試料を脱塩し、自家製3cm C−18キャピラリー液体クロマトグラフィーカラムで濃縮し、質量分析計中に直接エレクトロスプレーした。色素溶液を1μLの体積において高圧容器充填し、水100%からメタノール20%の「勾配」ステップを用いて、試料をカラムから約1μ/分で溶出した。
【0125】
図6A〜Dにおける小型のマルチ発色団のダイドロンを、Frechet(非特許文献37)の収束合成に類似の戦略によって調製し、逆相液体クロマトグラフィーによって精製し、Cy3ドナー分子1、2、および4個が分子の周囲を共有結合性および化学量論的に装飾し、単一のMG消光性の基がダイドロンのベースにある分枝されている構造を得た。
【0126】
図7A〜7Cは、化合物CM、BCM、およびTCMに対する以下の合成模式図を表す。NMRスペクトルをBruker Avance 500MHz機器上で得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)実験を、Xcaliburバージョン1.2を用いてFinnigan LCQ四重極イオントラップ質量分析計上で行った。最終生成物である「TCM」13の質量分析をThermoFisher Scientific LCQクラシック、およびXcaliburバージョン1.3ソフトウエアで行った。試料を脱塩し、自家製3cm C−18キャピラリー液体クロマトグラフィーカラムで濃縮し、質量分析計中に直接エレクトロスプレーした。色素溶液を1μLの体積において高圧容器充填し、水100%からメタノール20%の「勾配」ステップを用いて、試料をカラムから約1μ/分で溶出した。
【0127】
化合物3 「Cy3.29−マラカイトグリーン」(CM)
1−{6−[(2−{[4−(4−{[4−(ジメチルアミノ)フェニル][4−(ジメチルイミノ)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン]メチル}フェノキシ)ブタノイル]アミノ}エチル)アミノ]−6−オキソヘキシル}−2−[(1E,3Z)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン)プロパ(prop)−1−エン−1−イル]−3,3−ジメチル−3H−インドリウム−5−スルホネート
Cy3.29 1(7mg、0.001mmol)を、乾燥DMF0.2mL中に溶解した。TSTU(6mg, 0.002mmol)を加え、その後ジイソプロピルエチルアミン「DIPEA」(3.5μL;0.002mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル](4−(−9−ミノ(mino)−6−アザ−1−オキサ−5−オキソ−ノニル)フェニル)メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリジン(ylidene)]−N−メチル−メタナミウム(methanaminium)クロリド 2(5mg;0.001mmol)(非特許文献38)を加え、その後(3.5μL;0.002nmol)DIEAを加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。エチルエーテルを加えて(10mL)生成物を沈澱させた。有機相をデカントした。残渣をアセトニトリル/水/1%TFA中に溶解した。反応混合物を、μ−Bondapak 10μm 7.8×300mm RP−18カラム;直線勾配溶出液20〜40%アセトニトリル/水/0.1TFA、20分/流速3mLによって分離した。収量:8mg(74%)。
C60H72N6O9S2、ESI/MS:[H+]m/z(モノアイソトピックイオン):1085.4.UV/VIS:エタノールλmax=462;558;602;水λmax=462;534;620;1H-NMR(Me(Mc)OD):8.53 (1H, t, J=13.5Hz, Cy3); 7.93 (1H, d, J=1.5Hz, Cy3);7.92 (1H, d, J=1.5Hz, Cy3); 7.90 (2H, m, Cy3); 7.39 (2H, 不明瞭, Cy3); 7.38 (4H, d, J=9.3Hz, MG); 7.33 (2H, d, J=8.7, MG); 7.16 (2H, d, J=8.7Hz); 7.02 (4H, d, J=9.3Hz, MG); 6.53 (1H, d, J=13.5Hz, Cy3); 6.50 (1H, d, J=13.5Hz, Cy3); 4.21 (2H, m, Cy3); 4.16 (2H, m, MG); 4.15 (2H, m, Cy3); 3.31 (12H, s, MG); 2.80(4U(H), s, リンカー); 2.40 (2H, t, J=7.4Hz, MG); 2.19 (2H, t, J=7.2Hz, Cy3), 2.11 (2H, m, MG); 1.84 (2H, m, Cy3); 1.74(12Hs, Cy3); 1.68 (2H, m, Cy3), 1.44 (2H, m, Cy3); 1.41 (3H, t, J=7.2Hz, Cy3).
【0128】
化合物5
4,4’−[(4−[3−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル)プロポキシフェニル(propoxyphenyl)]メチレン]ビス[N,N−ジメチル−ベンゼンアミン
4−(3−フタルイミドプロポキシ(Phthalimidopropoxy))ベンズアルデヒド(非特許文献38)4(6.18g、20mmol)、N,N−ジメチルアニリン(4.87g、40mmol)および塩化亜鉛(2.8g、20mmol)を無水エタノール(250mL)中に溶解した。反応混合物を2日間還流した。1日後、生成物が反応混合物から沈澱し始めた。熱性反応混合物をろ過して、融点184〜188℃の明黄緑色固体5.78gを得た(50%)。
C34H35N3O3MW:533.67g/mol;1H-NMR: (CDCl3) 7.85 (2H, m); 7.72 (2H, m); 6.99 (6H, m); 6.70(6H, m); 5.32 (1H, s); 4.02 (2H, t, J=6.0Hz); 3.92 (2H, t, J-6.8Hz); 2.93 (12H, s); 2.18 (2H, m).
【0129】
化合物6 「MGフタルイミド」
[4−[[4−([3−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル))プロポキシフェニル(propoxyphenyl)][4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウムクロリド(methanaminium)]
4,4’−[(4−[3−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール(isoindol)−2−イル)プロポキシフェニル(propoxyphenyl)]メチレン]ビス[N,N−ジメチル−ベンゼンアミン5(533mg、1mmol)を酢酸エチル(50mL)中に溶解した。テトラクロロベンゾキノン(Tetrachlorobenzoquinone)(368mg、1.5mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を2時間還流した。室温に冷却後、緑色固体をろ過して取り出し酢酸エチルで洗浄した。Mp167〜172℃。定量的収率C34H34ClN3O3、MW:568.12g/mol。
1H-NMR: (CDCl3) 7.87 (2H, m); 7.76 (2H, m); 7.37 (4H, d); 7.28 (2H, d); 6.97 (6H, m); 4.21 (2H, t); 3.97 (2H, t); 3.37 (12H, s); 2.28 (2H, 五重線).
【0130】
化合物7「MG−アミン」
[4−[[4−[(3−アミノプロポキシ(Aminopropoxy))フェニル][4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウム(methanaminium)クロライド
MG−フタルイミド 6(568.12、1mmol)を、無水エタノール150ml中に溶解した。無水ヒドラジン(0.1mL、3mmol)を加え、反応混合物を55℃で3時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ろ過した。ろ液を1M HCl/エタノールで酸性化した。固体をろ過除去し、ろ液を濃縮した。残渣をRP−18上カラムクロマトグラフィーによって精製した。溶出液:水/アセトニトリル/0.1%TFA 10〜40%アセトニトリルの勾配。
1H-NMR: (MeOH) 7.45 (4H, d, J=9.1Hz); 7.41 (2H, d, J=8.7Hz); 7.24 (2H, d, J=8.6Hz); 7.06 (4H, d, J=9.3Hz); 4.32 (2H, t, J=7.2Hz); 3.33 (12H, s); 3.25 (2H, t, J=7.2Hz); 2.25 (2H, m).
【0131】
化合物9「MG−T−ビスアミン(bisamine)」
N−[4−({4−[3−({[(1,3−ジアミノプロパン−2−イル)オキシ]アセチル}アミノ)プロポキシ]フェニル}[4(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−メチル−メタンアミニウム(methanaminium)クロライド 2−[2−[[(1,1−ジメチルエトキシ(Dimethylethoxy))カルボニル]アミノ]−1−[[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]メチル]エトキシ]−酢酸8(非特許文献39)(17.4mg;0.05mmol)を乾燥DMF0.1mL中に溶解した。TSTU(16mg;0.052mmol)を加え、DIPEA(17μL;0.01mmol)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した。MG−アミン 7(43.8mg;0.1mmol)を加え、その後DIPEA(17μL;0.01mmol)を加えた。反応混合物を一夜撹拌した。エーテル(3mL)を加えることによって生成物を沈澱させた。沈殿物をエーテルで洗浄した。残渣をアセトニトリル(0.5mL)中に溶解した。トリフルオロ酢酸(0.1mL)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。真空下で溶媒を除去し、残渣をHPLC;RP−18アセトニトリル/水/0.1%TFA;直線勾配アセトニトリル30%〜100%;25分によって精製した。
C31H42N5O3Cl×2TFA;1H-NMR: (CD3CN) 7.56 (1H, s, NHC(O)); 7.36 (4H, d, J=8.3Hz); 7.30(2H, d, J=7.8Hz); 7.12 (2H, d, J=8.3Hz); 6.95(4H, d, J=8.6Hz); 4.23 (2H, s); 4.14 (2H, t, J=6.8Hz); 4, 11 (1H, m); 3.40 (2H, m); 2.3-3.17 (4H, m); 3.25 (12H. s); 2.02 (2H, m).
【0132】
化合物10「ビス−Cy3−マラカイトグリーン」(BCM)
2,2’−{[2−(2−{[3−(4−{[4−(ジメチルアミノ)オヘニル(ohenyl)(ohenyl)][4−ジメチルイミノ(dimethyliiminio))シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン]メチル}フェノキシ)プロピル]アミノ}−2−オキソエトキシ)プロパン−1,3−ジイル]ビス[イミノ(6−オキソヘキサン−6,1−ジイル)(3,3−ジメチル−5−スルホネート−1H−インドール−1−イル−2−イリデン)(1E,3E)プロパ(prop)−1−エン−1−イル−3−イリデン]}ビス(1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム(indolium)−5−スルホネート)
乾燥DMF0.1mL中に溶解したMG−T 9(6mg、0.01mmol)を、Cy3.29−OSu(28mg、0.04mol)のDMF0.1mL溶液に加えた。DIPEA(17μL)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。エチルエーテル(2mL)を加えることによって、反応生成物を沈澱させた。有機相をデカントし、残渣をエチルエーテルの別の部分で洗浄した。残渣に水(2mL)を加えた。水不溶性の残渣を水で数回洗浄して過剰のCy3.29を除去し、アセトニトリル/水=40/60混液中に溶解し、HPLC;RP−18(30%アセトニトリル〜100%アセトニトリル;25分にわたる直線勾配)によって精製した。
C93H112N9O17S4 ESIMS(ネガティブ)[M-1]m/z 1754.73モノアイソトープ(monoisotope)。1H-NMR: (MeOD) 8.53 (2H, dd, J= 13.5Hz, Cy3); 7.94 (2H, d, J=1.5Hz, Cy3); 7.92 (2H, d, J=1.5Hz, Cy3); 7.91 (2H, dd, J=8.3Hz, 1.5Hz, Cy3);7.88 (2H, dd, J=8.3Hz, 1.5Hz, Cy3); 7.38 (2H, d, J=8.3Hz, Cy3); 7.37 (2H, d, J=8.3Hz, Cy3);7.34 (4H, d, J=9.3Hz, MG); 7.30 (2H, d, J=8.8Hz, MG); 7.14 (2H, d, J=8.8Hz, MG); 7.00 (4H, d, J=9.3Hz MG); 6.54(2H, d, J=13.5Hz, Cy3); 6.52 (2H, d, J=13.5Hz, Cy3); 4.22 (4H, m, Cy3); 4.18 (2H, m, MG); 4.16 (4H, m, Cy3);4.03 (2U, s, リンカー); 3.44 (2H, 不明瞭, MG); 3.29 (12H, s, MG); 3.43 (1H, m, リンカー); 3.25 (2H, m, リンカー); 3.16(2H, m, リンカー); 2.23 (4H, t, J=7.4Hz, Cy3); 2.05 (2H, m, MG); 1.84 (4H, m, Cy3); 1.74 (24H, s, Cy3); 1.67(4H, m, Cy3); 1.43 (4H. m, Cy3); 1.42 (6H, t, J=7.2Hz, Cy3).
【0133】
化合物11「MG−TT−Boc」
N−(4−{(4−{[7−{[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−13−(6−{[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]メチル}−11,11−ジメチル−3,9−ジオキソ−5,10−ジオキサ−2,8−ジアザドデク(diazadodec)−1−イル)−2,2−ジメチル−4,10,16−トリオキソ−3,8,14−トリオキサ−5,11,17−トリアザイコサン(triazaicosan)−20−イル]オキシ}フェニル)[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチリデン(methylidene)}シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン)−N−メチルメタナミウム(methylmethanaminium)クロライド
2−[2−[[(1,1−ジメチルメトキシ)カルボニル]アミノ]−1−[[[(1,1ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]メチル]エトキシ]−酢酸 8(非特許文献38)(35mg;0.1mmol)の乾燥DMF溶液0.1mLに、TSTU(32mg;0.12mmol)を加え、DIPEA(34μL;0.2mmol)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した。反応が完了した後、「MG−T」9(24mg;0.04mmol)を加え、その後DIPEA(34μL;0.1mmol)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。エーテル(3mL)を加えることによって生成物を沈澱させた。沈殿物をクロロホルム中に溶解し、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/5〜30%メタノール/0.1%アンモニア)によって精製した。生成物の分画を濃縮して、暗緑色樹脂40mgを得た(81%)。
C41H62N9O17+Cl-ESI:MS+792.47モノアイソトープ(monoisotope)。1H-NMR: (CDCl3, 500MHz) δ 8.55 (2H, m, アミド); 8.43 (1H, m, アミド); 7.39 (4H, d, J=9.1Hz); 7.30 (2H, d, J=8.4Hz); 7.14 (2H, d, J=8.4Hz); 6.90 (4H, d, J=8.9Hz); 5.90 (4H, m, Boc-アミド); 4.27 (2H, t, J=6.4Hz); 4.13 (2H, s); 4.05 (4H, s); 3.53 (6H, m); 3.47 (2H, m); 3.35 (5H, m); 3.32 (12H, s, MG-N-メチル); 3.15 (4H, m); 2.15 (2H, m); 1.43 (36H, s, Boc).
【0134】
化合物12「MG−TT」
N−(4−{[4−({15−アミノ−14−(アミノメチル)−8−[({[(1,3−ジアミノプロパン−2−イル)オキシ]アセチル}アミノ)メチル]−5,11−ジオキソ−7,13−ジオキサ−4,10−ジアザペンタデク(-diazapentadec)−1−イル}オキシ)フェニル][4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチリデン(methylidene)}シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン)−N−メチルメタンアミニウム(methyl methanaminium)クロライド
MG−TT−BOC 11 40mgのクロロホルム(1ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(100μL)を加えた。反応混合物を一夜撹拌した。反応混合物から生成物が沈澱する。上清を捨て、残渣をクロロホルムで洗浄した(2×1mL)。生成物をそのまま次の反応ステップにおいて用いた。
【0135】
ESIMS(ネガティブ)[M+1]m/z792.5モノアイソトープ。1H-NMR: (MeOD, 500MHz) δ 7.42 (4H, d, J=9.1Hz); 7.37 (2H, d, J=8.8Hz); 7.18 (2H, d, J=8.8Hz); 7.04 (4H, d, J=9.4Hz); 4.30 (4H, s); 4.21 (2H, t, J=6.1Hz); 4.14 (2H, s); 4.06 (2H, m); 3.64 (1H, m); 3.47 (2H, t, J=7.2Hz); 3.46 (2H, dd; J=14.4Hz, 4.9Hz); 3.38 (2H, dd, J=14.1Hz, 5.8Hz); 3.33 (12H, s); 3.30 (4H, dd, J=14.4Hz, 3.8Hz); 3.17 (4H, dd, J=13.8Hz, 7.1Hz); 2.09 (2H, 五重線).
【0136】
化合物13「テトラCy3−マラカイトグリーン」(TCM)
三ナトリウム2−{(1E,3E)−3−[1−(15−[2−({3−[4−({4−[クロロ(ジメチル)−l5−アザイリデン(azanylidene)]シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリデン}[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル)フェノキシ]プロピル}アミノ)−2−オキソエトキシ(oxoethoxy)]−29−{(2E)−2−[(2E)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−3H−インドリウム(indolium)−2−イル)
プロパ(prop)−2−エン−1−イリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホネート−2,3−ジヒドロ−1H−インドール(indolium)−1−イル}−21−{[(6−{(2E)−2−[(2E)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−3H−インドリウム−2−イル)プロパ(prop)−2−エン−1−イリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホネート−2,3−ジヒドロ−1H−インドール(indolium)−1−イル}ヘキサノイル)アミノ]メチル}−9−{[(6−{(2Z)−2−[(2E)−3−(1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホネート−3H−インドリウム−2−イル)プロパ(prop)−2−エン−1−イリデン]−3,3−ジメチル−5−スルホネート−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル}ヘキサノイル)アミノ]メチル}−6,12,18,24−テトラオキソ−10,20−ジオキサ−7,13,17,23−テトラアザノナコス(tetraazanonacos)−1−イル)−3,3−ジメチル−5−スルホネート−1H−インドール(indolium)−2(3H)−イリデン]プロパ(prop)−1−エン−1−イル}−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム−5−スルホネート
【0137】
「MG−TT」12(16.5mg、0.02mmol)の0.5M炭酸水素ナトリウム/20%アセトニトリル(0.5mL)溶液に、固体Cy3.29−OSu(100mg、0.15mmol)を少しずつ、撹拌しながら6時間かけて加えた。標識化反応の進行を、HPLC RP18−水/アセトニトリル;10〜100%直線勾配30分(550nmおよび630nmで検出)によってモニタリングした。最後の添加の後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をBio−gel P2カラム(19mm×500mm)を通過させて未反応のCy3.29を反応生成物から分離した。移動の速い分画を収集し、濃縮し、u−Bondapak RP−18 prep HPLCカラム(19mm×300mm)流速flow:10mL/分 水/アセトニトリル(10〜25% 30分;30%〜100% 30分)上で分離した。収量:15mg(22%)。C165H202N17O15S8Na3 LC−ESIMS(ネガティブ)[M-3]m/z1079.1、モノアイソトープ;C165H202N17O15S8-3に対する計算値m/z1079.07。1H-NMR.
【0138】
(実施例2)
最初のプローブデザインは、十分に特徴付けられた有機蛍光色素および活性化可能な蛍光団(fluorogen)に基づくものである(図8)。マラカイトグリーンは、選択されたscFvによって高度に蛍光状態に(>15,000倍)活性化される、656nmで発光極大の、非蛍光性のトリフェニルメタン色素である。本発明者らのプローブの効率は、ドナー(Cy3)分子と蛍光団分子との間の著しいエネルギー移動に依存する。全てのモデルに対するフェルスター半径(radii)は、Stryerによって提唱された式から算出された。これらの数値およびPAMAMデンドロンの実験上の性質の平均から、本発明者らは、本発明者らの各々の潜在的な色素対に対するデンドロン世代の関数として、エネルギー伝達効率(E)を形作ることができた。図9(上)は、各対に対する世代の関数としてのEの値を示す。これらの色素対の各々の最高世代4までの選択に対して、効率は99%を超え、高吸光度で劇的な切替えの可能性がある試薬が提供される。
【0139】
これらのプローブの性質が溶液色素の性質にしたがうことを想定して、本発明者らは、EGFPと比較し、アクセプター色素の励起の増強、および単一分子分析における輝度の増強(図9下)に対する可能性を分析した。この分析において、ドナー色素の吸光係数に、所与のデンドロンの世代における官能基の数を乗じた。アクセプターの効率的な吸光度をもたらすために、この数は上記で計算されたFRET効率(E)によって決定された。これらの値は、活性化条件下、アクセプター分子の報告されている量子収量によって決定された(MG−scFv QY=0.24)。これは、EGFPと比べた活性化された分子の輝度の尺度をもたらし(53,000M-1cm-1およびQY=0.60)、単一の可視の蛍光タンパク質よりも潜在的に5〜140倍明るいプローブを開発することができ、標準的な蛍光顕微鏡における単一分子検出の範囲に容易に移行することを実証した。さらに、青色から黄色への励起のシフトにより、自己蛍光は劇的に低減し、長いストークスのシフトおよび近赤外の発光により検出効率および効率的なシグナル対ノイズが改善される。
【0140】
ドナーアレイの蛍光に対する高充填の影響を試験するために、2つのシスタミンコアPAMAMデンドリマー(世代2〜16NH2および世代3〜32NH2)を過剰の単反応性Cy3−NHSエステルで標識した。ゲルろ過によって過剰の色素を除去した後、得られた巨大分子を電気泳動によって分析し、正味の移動度が低いことを見出した。各Cy3分子は1つの負の正味荷電を保有するので、完全に修飾されているデンドロンは−2の正味荷電を有さなければならない。これらのコンジュゲートにおいて観察される移動度の欠如は、これらが実質的に修飾されていることを示唆するが、質量分析ではこれはまだ確認されていない。しかし、これらのコンジュゲートにより、ドナー消光の潜在的な危険性の評価が可能である。驚くべきことに、本発明者らは、色素は著しく込み合っているのにかかわらず、色素ごとの量子効率はわずかにしか低減されないことを見出した(表1)。さらに、著しいシフトまたは空間の変化は見出されず、これらのドナーアレイは溶液中では凝集物を形成しないことを示していた。
【0141】
【表1】
【0142】
蛍光発生的なダイドロンは、Cy3と現存する(および予想される)蛍光団との間のエネルギー移動対としてデザインされている。マラカイトグリーンは、選択されたscFvによって高度に蛍光状態に(>15,000倍)活性化され、656nmで発光極大の、本質的に非蛍光性のトリフェニルメタン色素である。プローブは、ドナー(Cy3)分子と蛍光団分子との間の効果的なエネルギー移動に依存している。このプロジェクトにおける蛍光発生的なダイドロンを有する蛍光モジュールに発展するためのより赤色の蛍光団を図10に示すが、これには、これらのカルボキシル基によって連結するデンドロンに結合することができる、マラカイトグリーンのアセチレン性誘導体(発光730nm)、DIR、およびインドシアニングリーンの誘導体(発光約800nm)が含まれる。マラカイトグリーンのアセチレン性誘導体、およびインドシアニングリーンの誘導体が選択されているが、これはこれらが水中で非常に低い量子収量(≦0.003)、および環境的に感受性がある蛍光の性質を有するからであり、これは潜在的な蛍光発生性の最強の指標の1つである。
【0143】
(実施例3)
方法
バッファー系。記載がない場合は、全実験において、修飾されたリン酸緩衝食塩水系(PBS+)を用いた(37mM NaCl1、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、K2mM H2PO4、2mM EDTA、0.1%(重量/容量) Pluronic F−127(Anatrace)、pH7.4)。
【0144】
吸収スペクトル。HP Lambda45分光光度計でスペクトルを取った。MG−2pの吸光係数は、エタノール/5%HAc中同じ溶媒中マラカイトグリーンシュウ酸塩(ACROS)の半塩に対してキャリブレーションすることによって、91,500M-1cm-1であると決定された。MG−2pの酸性化したエタノール/PBS+の吸光度比により、PBS+中の吸光係数50,700M-1cm-1がもたらされた。次いで、この値に、MG−2pならびにCM、BCM、およびTCMダイドロンのMGバンドがL5−MG E52Dに結合した場合に観察されるファクターの増大(それぞれ1.56、1.78、1.93、1.80)を乗じて、各蛍光団に対する効果的なMGの吸光係数を得た。552nMのダイドロン吸効率を、効果的なMG係数に割り当てることで、表2に報告するダイドロンの吸光係数がもたらされた。
【0145】
蛍光スペクトル。Quantamasterモノクロメーター蛍光計(Photon Technology International)でスペクトルを取った。蛍光モジュール(図11)を評価するために、約300nMのMG−2pまたはダイドロンを、3μMのL5−MG E52D FAPと室温で2時間平衡にした後、スペクトルを取った。蛍光モジュールおよび遊離の蛍光団のスペクトルを、PBSのバックグラウンドおよび波長依存性の光電子増倍管の感度に対して補正した。
【0146】
量子収量。蛍光モジュールを上記の通り構築し、アクセプターのMG励起バンドに基づく量子収量を、キャリブレーション色素としてCy5.18を用いて記載されている通りに決定した(非特許文献1)。620nmの励起で決定された量子収量(表2)は、590nmの励起で決定された未報告の量子収量と本質的に同じであった(<5%差)。
【0147】
マイクロプレート蛍光定量法。マイクロプレート蛍光定量法を、酵母細胞5×106個/ウェルを有する96ウェルマイクロプレートを用いてTecan Safire2マイクロプレートリーダー上で行った。蛍光の読みを、FACS Divaフローサイトメーターを用いて免疫標識したscFv c−mycエピトープの分析によって、酵母表面にディスプレイされたFAPの数に対して標準化した(非特許文献1)。
【0148】
顕微鏡。画像は全て、Zeiss 510 MetaNLO共焦点顕微鏡で取った(設定に対して、補足情報の表3を参照されたい)。顕微鏡の本来の12ビットのダイナミックレンジを用いた画像分析をZeiss ZEN 2007ソフトウエアを用いて行った。新たに収集し、洗浄した生酵母細胞(PBS w/o Pluronic F−127またはEDTA中、約3×107細胞/mlの懸濁液20μl)を、コンカナバリン−A 1mg/mlで予めコーティングした、可視光域ウィンドウ14mmを有する35mm培養皿(MatTek Corporation、Ashland、MA)上に固定化した。10分間、細胞を結合させ、次いで、好適な濃度のダイドロンを含むPBS+またはscFv誘導培地1mlで重層し(非特許文献1)、ロータリーシェーカー上で30分間穏やかに混和して色素と細胞とを確実に平衡にした。非コーティングの35mm培養皿上、DMEM中HeLa細胞を増殖させた(上記を参照されたい)。下記の通り、マイクロインジェクションおよび共焦点顕微鏡を、DMEM中で行った。図6における小型マルチ発色団のダイドロンを、実施例1に記載する通りに調製した。
【0149】
ダイドロンの性質を詳しく研究するために、本発明者らは、定向進化によってMGに結合したときに親和性および輝度を増大するオリジナルのL5−MGクローン(特許文献1を参照されたい)由来のアミノ酸110個のscFv(L5−MG E52D)を使用し、定向進化が、色素タンパク質および蛍光タンパク質よりも大幅に大きい輝度を有するダイドロン/FAP蛍光モジュールを生成することができることを実証するために、本発明者らは引き続き、さらなるL5−MG誘導体であるL91SおよびE52D L91Sを特徴付けした(図12)。さらなるFAPを図12Bに示す。
【0150】
分泌されたL5−MGアクチベーターおよび進化した誘導体のscFvのペプチド配列を、図12Aに示す。ダイドロンに結合するユニットを含む、アミノ酸110個の抗体軽鎖可変領域に下線をつけてある。発現の表現型(下線付)を供与する親のL5−MGの定向進化(非特許文献1)によって獲得されるアミノ酸;灰色で強調したアミノ酸は、発現の変化に相関しない変異である。L5−MG E52Dは、L5−MGに比べて明るく、細胞表面上にディスプレイされる場合、ダイドロンにより緊密に結合するので、ダイドロンシリーズの系統的研究に選択された、最初に特徴付けられた誘導体であった(図13)。L91S誘導体はE52D変異体よりも相当明るいが、ダイドロンシリーズにかなり不十分に結合し、定量比較にあまり適さない(図13)。引き続き特徴付けられた二重変異体のE52D L91Sは、E52Dの高い結合親和性を保持し、L91Sの輝度を改善することが見出され(図13)、したがってダイドロンを用いた画像化およびアッセイの応用に対する現在の選りぬきのFAPである。
【0151】
図13は、定向進化によるTCM蛍光モジュールの改善を示す。L5−MG FAPを変異誘発に曝し、酵母細胞表面にディスプレイされたFAPを、MG−2pを用いて、輝度および結合親和性の増大に対してスクリーニングした。示した点突然変異を有する、L5−MGをディスプレイする酵母細胞および変異体(図14)を、96ウェルマイクロプレートのフォーマットにおいて、TCM蛍光(励起554nm/発光660nm)に対してPBS+中アッセイした。データを、免疫染色したc−mycエピトープのFACS分析によって決定された、発現されたFAPの数に対して標準化する。
【0152】
L5−MG E52Dに結合しているダイドロンのスペクトルの特徴付け
ダイドロンは全て溶液中で遊離であり、活性化するポリペプチドの非存在下でMGの量子収量が非常に低いことと一致して、MGによるCy3蛍光の>99%の消光(表2)、およびMGに関連するスペクトル範囲において本質的に検出できない蛍光を示した(非特許文献2)。結合していないTCMダイドロンの蛍光の量子収量は<0.0005であり、ドナーの非常に直接的な発光は効率的に消光され、FAPが活性化するダイドロンの検出を妨害しない。
【0153】
【表2】
【0154】
a可溶性ダイドロン/L5−MG E52D複合体の決定。b励起620nmで決定されたMG励起ピークに対する量子収量。c非特許文献40を参照されたい。d細胞表面にディスプレイされたTCM30nMのL5−MG E52D L91S対L5−MG E52D蛍光の比率として図13におけるデータから。e(染色された集団の中央値−非染色の対照の中央値)としてデータから算出された分子および約数。fL5−MG E52Dをディスプレイする酵母細胞表面結合性ダイドロンに対して決定。g合計の吸収で標準化したダイドロンの蛍光(530〜800nm)を、合計の吸収で標準化したCy3.29の蛍光によって除して算出。MGの吸収のピークをダイドロンの標準化に用いた。
【0155】
TCMダイドロンを哺乳動物の生存細胞の細胞質中に注射すると、同様の画像化条件下のポジティブのシグナルに比べて本質的に検出できない、低レベルの蛍光を生成した。
【0156】
ダイドロンの、酵母細胞表面がディスプレイするscFvに対する結合親和性を、以下の通り決定した。L5−MG E52Dを発現するJAR200酵母細胞を、指摘されたダイドロン濃度の存在下、修飾されたPBS+バッファー中細胞107個/mlに懸濁した。Safire2プレート蛍光光度計で蛍光強度を読み取った。表2に報告したKD値を、ここに示す1サイト(site)の双曲線結合曲線に対するGraphPad Prism4ソフトウエアの適合を用いて決定した。これらの条件下で1nM未満のKD値を正確に決定することはできない。蛍光レベルがプラトーであることは、MGバンドの635nmのレーザー励起を用いたフローサイトメトリー分析において見られた相対的な蛍光シグナルに緊密に対応した(表3)。
【0157】
【表3】
【0158】
PBS+バッファー中ダイドロン100nMのスペクトルを記載した通りに取り、PBS+バックグラウンドおよび波長依存性の光電子増倍管の感度に対して補正した。遊離のダイドロンの蛍光は、L5−MG E52D FAPが活性化するダイドロンに比べて大幅に低減される。比較として、遊離TCMの最大蛍光は572nmで16,430であるが、同じ実験においてFAP結合したTCMの蛍光は676nmで1,675,000である。
【0159】
過剰のL5−MG E52Dの存在下の色素分子の単一濃度で、MGプローブで正規化した励起スペクトル(710nm検出)は、Cy3励起がCy3数に正比例して増大する寄与を明らかにしており、これらの簡単な修飾が、MG単独に比べて構築体の全体の励起の標本(cross-section)を実質的に増強することを示している(図11Aおよび表2)。標本(cross-section)の増強の大きさは、Cy3の吸光度(ε=150,000M-1cm-1)と良好に相関する(非特許文献41)。MG励起ピークにおける全てのダイドロンの量子収量は本質的に一定であった。対応する蛍光発光スペクトルは、結合しているMG色素から近赤外発光へのCy3の励起のほとんど完全な移動(>99%)を示し、増大する世代のダイドロンと一緒に用いる場合の、プローブ構築体の輝度における本質的な増大を示している(図11B)。Cy3励起およびMG励起の相対的な量子収量は、ドナーの励起は競合する放射性および非放射性のプロセスにはほとんど失われないことを指摘している(表4)。これらの知見は、ダイドロンにおける本質的に非蛍光性または自己消光性のドナーであっても、明るい蛍光に対して高度に効率的な増感性の構造を生成し得る概念を支持するものである(非特許文献42および非特許文献43)。
【0160】
【表4】
【0161】
E52D FAPに結合している場合、MG−2pおよび全てのダイドロンMGアクセプターの吸収はほぼ2倍増大し、これらの吸収最大は赤色シフトし、約642nmで合体し、アクセプターの光物理的性質はFAPの結合ポケットによって特異的に調整され、ドナーとは大きく無関係であることを示唆している。これとは対照的にFAPに結合しているダイドロンおよび遊離のCy3のドナー波長での吸収スペクトルには同様の特徴があり、Cy3の光物理学は大幅に変更されないことを示唆している。
【0162】
生存細胞表面上に発現されるダイドロン/L5−MG E52D蛍光モジュール
L5−MG E52D蛍光モジュールのin vitroの分光学的性質は、細胞壁上に融合タンパク質として蛍光団を活性化するscFvを発現する生酵母細胞の懸濁液にダイドロン(300nM)を直接加えた場合に再現される。フローサイトメトリーは532nmで励起した場合の輝度における段階的上昇、および635nmで励起した場合のほとんど一定の輝度(図15)を明らかにしており、励起スペクトル、および620nmの励起で測定される一定の量子収量に見られる違いに十分対応している。635nm対532nmで励起した酵母細胞の間の染色比を分析することで、(Cy3)nMG構築体における約2(n=1)、3(n=2)、および7(n=4)倍(a factor of)の特異的な輝度における増大が明らかにされる(表2および表3)。したがって、この取組みは、ドナーアレイによってもたらされる増強された吸光度との直接的な相関において、in vitroおよびin vivoでの分子の輝度を増大する。
【0163】
ダイドロンが媒介するシグナル増幅は、生存細胞の蛍光顕微鏡にも応用することができる。その表面上にL5−MG E52D融合タンパク質を発現する酵母細胞(非特許文献1、配列番号1および2の配列については図4Aを参照されたく、また、scFvアクチベーターと選択性成分との間の有用な融合タンパク質のさらなる例については特許文献1も参照されたい)を、レーザー走査共焦点顕微鏡下で画像化した(図14)。酵母細胞はその表面上を特異的に標識し、561nmの励起で画像化した場合12ビット画像のフルダイナミックレンジを消費する。FAPを発現しない細胞から、または細胞間領域から、蛍光は実質的に検出されない。ダイドロンのいくつかの選択的な退色が、このレーザー照射下で観察され、ダイドロンの増強を約3倍まで低減した。
【0164】
定向進化によるダイドロン蛍光モジュールのさらなる改善
MG−2p/L5−MG E52D蛍光モジュールは中程度の量子収量を有するが、TCMダイドロンはそのシグナルを増幅してEGFPおよびほとんどの小型分子タンパク質タグほどの計算された分子輝度をもたらすことができる(表2)。親和性成熟した本発明者らのL5−MG FAPの中で、本発明者らは、MG−2p/L5−MG蛍光モジュールの量子収量を数倍増大する単一点突然変異を含むが、MG−2pおよびダイドロンをかなりゆるく結合するL5−MG L91Sを特徴付けた。しかし、E25D FAPに比べて、L91SおよびE52D変異を組み合わせると、同様の親和性でTCMに結合し、マイクロプレートのフォーマットにおいて生酵母を用いてアッセイした場合におよそ6倍大きい蛍光を生成するFAPを作り出すように相加的に振舞う(図13)。L5−MG E52D L91Sの改善された蛍光の性質は、非常に低濃度のダイドロンを用いて(図16Aおよび16B)、増殖メディウム(培地)中でさえ(図16Cおよび16D)、生酵母の表面を画像化した場合に明らかである。
【0165】
図16A〜16Dは、改善された蛍光モジュールでの生存細胞の表面画像化を示す。E52D(16A)またはE52D L91S(16B)の変異を有する、L5−MGを発現する酵母細胞を、示されたTCM濃度を用いて同一のCy3励起/発光で、Zeiss510 MetaNLO共焦点顕微鏡上、PBS+中、画像化した。スキャンのプロファイルは、10nM TCMでのE52D L91S二重変異体の蛍光は、10倍高いTCMでのE52D蛍光より約5倍高いことを示している。図14に比べてE52D蛍光モジュールの弱い見かけの蛍光は、異なる顕微鏡の設定によるものであり、TCMの結合の低減のためではない(図13)。FAPを発現しない酵母細胞の亜集団は蛍光を表さず、特異性に対する内部標準を構成する。
【0166】
増殖メディウム(培地)中の酵母のダイドロンベースの画像化。L5−MG E52D L91S scFvの発現を誘発するためにSGR+CAA培地中で増殖させた酵母を、コンカナバリンAでコーティングしたMatTekディッシュに直接加え、TCM50nMを含む同培地1mlで重層した。561/650〜710BP(バンドパス)の励起/発光の設定による取得共焦点画像のシグナルプロファイルプロットは、表面に限定された蛍光を表しており、細胞間バックグラウンドシグナルは非常に低い(図16C)。同一の画像化条件下において、PBS+を増殖メディウム(培地)に置き換えると、本質的に同じ結果が得られ(図16D)、メディウム(培地)において同じことを示す。
【0167】
考察
これらのダイドロンは、特異的な、遺伝的に標的化可能で切換え可能なアクセプター発色団が、共有結合的に結合したドナー分子からのエネルギー移動による効率的な励起に対して増強される、新しいクラスの蛍光検出試薬を代表するものである。これら合成の巨大分子の全体の分子量は、特に遺伝的に標的にされる蛍光プローブの輝度を改善するための代替の取組みに比べると、依然として小さい。さらに、これらダイドロンを活性化するのに必要とされる遺伝的な融合タンパク質は、GFPの半分未満のサイズであり得る(ここでは<13kDa)。本明細書に記載するフローサイトメトリー、マイクロプレートアッセイ、および顕微鏡によって示す通り、これらダイドロンは蛍光団/FAP複合体のin vivoの蛍光を大幅に増強する。TCM/L5−MG E52D L91S蛍光モジュールは、EGFP、および赤色蛍光の二ヒ素(biarsenical)複合体(ReAsH=34)よりほぼ5倍高く(表2)(非特許文献44)、入手可能な最良の単量体の赤色蛍光タンパク質より約10倍明るい(mCherry=16)(非特許文献45)推定された輝度値(160)を有する。ダイドロン蛍光モジュールは、長いストークスシフトおよび近赤外の発光を有し(mCherryおよびRcAsHに対して660nm対610nm)、これにより確実にこれらプローブは感度における実質的な改善をもたらす(非特許文献46)。ダイドロンでは、蛍光団の標的ペプチドに対する結合は、ドナーアレイをまたは結合部位近傍中へ運び、ペプチド−蛍光団全体の親和性を低減するが(表2)、これら複合体の安定性は依然として高い(E52D変異体に対して<20nM)。このような機能的な変形は、scFvまたは他の認識骨格の定向進化によって、補正され、または活用される。
【0168】
ドナー化学における変形を、このように、蛍光団/ペプチドの相互作用における変形と組み合わせてダイドロンの性質を改善することができる。所与のドナーアレイの検討において、改善された蛍光団の結合親和性および量子収量を選択することができる。ドナーアレイを、吸光係数を増強するようにデザインすることができるが、特定の蛍光団の多光子の標本(cross-section)を増強するなど、他の光学的性質を改善するようにデザインしてもよい。
【0169】
これらダイドロンの膜透過性の性質により、遺伝子融合に利用可能な細胞外ドメインを露出している原形質膜タンパク質に関与する広範囲の生物学的機能を研究するのに理想的となっている。これらの中には、細胞間シグナル伝達、イオンおよび代謝産物の伝達チャンネル、ならびに細胞認識および接着のタンパク質を媒介する受容体がある。細胞外ドメインの排他的な標識化により、これらタンパク質の検出は、これらの生物学的機能の部位に限定される。これとは対照的に、蛍光タンパク質がこれら同じ細胞外ドメインに融合すると、生合成および細胞内輸送の間の検出に曝され、細胞表面の機能に無関連のバックグラウンドシグナルが生成される(非特許文献1および非特許文献47)。本明細書に記載するダイドロンは、その対応物であるMG−2p同様、洗浄または他の処理なしに細胞メディウム(培地)に直接加えることができ、これら蛍光団を、膜タンパク質に応用されている他の低分子標識化方法と区別している。発現可能なプローブの感度の増強により、細胞生物学の研究における高レベルの過剰発現の必要性が低減され(非特許文献47)、発現レベルに関する人工産物を低減し得る代替の標識化の取組みが提供される。これらダイドロンは組織における細胞間間隙に効率的に浸透するのに十分小型であるので、トランスジェニック動物への注射は潜在的に可能である(非特許文献48)。
【0170】
本明細書に記載するダイドロンは、現在、フローサイトメトリーおよびマイクロプレートアッセイなどの応用に光学的なシグナルの増強をもたらし、個々の蛍光モジュールは合計の励起光束を中程度にするようにされている。さらなる努力により、おそらく、電子求引基をCy3ドナーに加えることによって(非特許文献49)、またはダイドロンの結合のオン/オフ比を増大するためのFAPの定向進化によって連続的に機能的な蛍光モジュールを再生することによって(非特許文献1)、共焦点蛍光顕微鏡では典型的である強力な照射下でのダイドロンの光安定性の改善が対処される。
【0171】
蛍光団を活性化するscFvは、細胞質および他の細胞間を還元する環境において機能し得る内部ジスルフィド結合を含んでおり、定向進化を用いてこのようなジスルフィドを除去し、scFvを細胞内機能に適合させてもよい(非特許文献50および非特許文献51)。次いで、ダイドロンを、有用性が最大になるように細胞中に導入するのが望ましい。マイクロインジェクション、孔形成、ダイドロンの物理化学的性質の修飾、ダイドロンへの輸送シグナルの付加、または原形質膜と融合することができるダイドロン−担体小胞もしくはエマルションの作製を含めた、膜貫通の送達のためのいくつかの取組みが利用可能である。本明細書に示すダイドロンのマイクロインジェクションに際する低活性化は、細胞内の使用は、特異性の問題ではなく、大きく送達の問題に依然としてあることを指摘している。
【0172】
参照によって本明細書に組み込まれる全ての参照に対して、あらゆる対立する用語、概念、または定義に関して、本文書が規制するものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の活性化可能なアクセプター部分に結合している、2つ以上の励起可能なドナー部分を含む化合物であって、前記ドナー部分はその励起エネルギーの少なくとも50%を前記アクセプター部分に伝達し、前記アクセプター部分は、活性化されると、前記ドナー部分が励起されたときに検出可能な蛍光シグナルを生成することを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記ドナー部分は、シアニン色素、ローダミン色素、フルオレセイン色素、アゾ色素、フルオレセイン、ウンベリフェロン、ピレン、レゾルフィン、ローダミン、ヒドロキシエステル、芳香族酸、スチリル色素、テトラメチルローダミン色素、オキサジン、チアジン、金属置換されているプタロシアニン(pthalocyanine)、金属置換されているポルフィリン、多環芳香族色素、およびペリレンジイミン(perylenediimide)からなる群から選択される色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ドナー部分は蛍光色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記ドナー部分はシアニン色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記ドナー部分はCy3であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記アクセプター部分は、マラカイトグリーン、インドシアニングリーン、アセチレン性マラカイトグリーン、およびジメチルインドールレッドから選択されることを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記ドナー部分は無蛍光色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記アクセプター部分はマラカイトグリーンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
50kDa(キロダルトン)未満の平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
10kDa未満の平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記アクセプター部分は、トリアリールメチン(triarylmethine)色素、ジアリールメチン(diarylmethine)色素、およびモノメチン(monomethine)色素からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
リンカーはデンドロンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
デンドリマーまたはデンドロンはPAMAM、PEI、またはPPIデンドロンであることを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、蛍光ドナー部分は1つまたは複数のドナー部分および1つまたは複数のメディエータであり、前記ドナー部分のスペクトルは前記メディエータのスペクトルと重複し、前記メディエータのスペクトルは前記ドナー部分および前記アクセプター部分両方のスペクトルと重複することを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、前記アクセプター部分は、
【化1】
[式中、
R1〜R4は、−H、−CH3、(CH2)n−T、および置換されているアリールであり、
R5は、
【化2】
[式中、
R1〜R5に対してn=0〜6であり、
Tは、−H、−OH、COO−、SO3-、−PO4-、アミド、ハロゲン、置換されている単一もしくは複数個のアリール、エーテル、ポリエーテル、PEG1~30、N、S、もしくはO原子を含んでいる複素環、置換されているアセチレン基、シアノ、および炭水化物基から選択され、任意選択によりダイドロンに結合するためのリンカーを含んでいる]
から選択される置換されているアリールである]
であることを特徴とする化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、前記アクセプター部分は、
【化3】
[式中、
R1は、芳香族、ヘテロ芳香族、ヒドロキシル、アミノ、N−アルキル、N−アルカノリル(alkanolyl)(アルコール、例えば、n−ヒドロキシエチル)であり、
R2は、H、シアノ、芳香族、ヘテロ芳香族、アセチレン性、アルキルであり、
Xは、N、O、またはSであり、
R3およびR4は非存在である、またはアルキル、アリール、もしくはヒドロキシエチルである]
であることを特徴とする化合物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物であって、
R1はジ−C1~3アルキルアミノであり、
R2は置換されているフェニルアセチレン、フェニル、−N−アルキル置換フェニル、−(CH2)nR5置換されているフェニルであり、
nは、1〜5であり、
R5はカルボキシルまたはアミノであり、
XはNであり、
R3およびR4は独立に、C1~3アルキル、アルコキシル、アルカノイル、フェニル、C1~3アルキル置換フェニルであることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、
R2は、−N−(CH3)2−、−N−(CH3)((CH2)nO(CH2)mCOOH)である
[式中、nおよびmは、独立に、1、2、3、または4である]
ことを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項17に記載の化合物であって、
R1は−N−(CH3)2であり、
R2は−O(CH2)3R5−置換されているフェニル、および
【化4】
の1つである、または
R3およびR4はCH3であることを特徴とする化合物。
【請求項20】
前記アクセプター部分は、
【化5】
の1つまたは複数であることを特徴とする請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
【化6】
から選択される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
アクチベーターが化合物に結合しているときにドナー部分が励起されると前記化合物の蛍光の増大を引き起こすアクチベーターに結合している請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする複合体。
【請求項23】
前記蛍光の増大が少なくとも100倍であることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
前記蛍光の増大が少なくとも1000倍であることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項25】
前記アクチベーターは選択性成分に付着していることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項26】
前記選択性成分は、前記アクチベーターおよび前記選択性成分を含む融合タンパク質であることを特徴とする請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
前記選択性成分は前記アクチベーターに架橋結合していることを特徴とする請求項26に記載の複合体。
【請求項28】
前記アクチベーターはscFvフラグメントであることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項29】
前記アクチベーターは配列番号3〜11の1つであることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項30】
前記ドナーはCy3であり、前記デンドロンはPAMAMデンドロンであり、前記アクセプターはマラカイトグリーンであることを特徴とする請求項29に記載の複合体。
【請求項31】
前記化合物はBCMまたはTCMであることを特徴とする請求項29に記載の複合体。
【請求項32】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を、前記化合物のアクチベーターに結合している選択性成分を含む融合タンパク質と接触させてダイドロン複合体を生成するステップと、細胞中の前記ダイドロン複合体を検出するステップとを含むことを特徴とする細胞中の細胞成分を同定する方法。
【請求項33】
前記選択性成分および前記アクチベーターは近接するポリペプチド上にあることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アクチベーターはscFvフラグメントであることを特徴とする請求項32または33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記融合タンパク質は、前記細胞中に導入された遺伝子によって生成されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記アクセプターはマラカイトグリーンであることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記アクチベーターは、配列番号3〜9の1つまたは複数を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物はTCMまたはBCMであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物はTCMおよびBCMの一方であることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記ドナーはCy3であることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記ダイドロン複合体は蛍光画像化によって検出されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項42】
QAVVTQEPSVTVSPGGTVILTCGSSTGAVTSGHYANWFQQKPGQAPRALIFDTDKKYPWTPGRFSGSLLGVKAALTISDAQPEDEAEYYCLLSDVDGYLFGGGTQLTVLS(配列番号4、塩基6−115);
QAVVTQEPSVTVSPGGTVILTCGSSTGAVTSGHYANWFQQKPQAPRALIFETDKKYPWTPGRFSGSLLGVKAALTISDAQPEDEAEYYCSLSDVDGYLFGGGTQLTVLS(配列番号5、塩基6−115);および
QAVVTQEPSVTVSPGGTVILTCGSGTGAVTSGHYANWFQQKPGQAPRALIFDTDKKYPWTPGRFSGSLLGVKAALTISDAQPEDEAEYYCSLSDVDGYLFGGGTQLTVLS(配列番号6、塩基6−115)
から選択される配列を含むことを特徴とするアクチベーターポリペプチド。
【請求項43】
選択性成分のアミノ酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項44】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を、前記化合物のアクチベーターと接触させるステップと、前記ドナー部分を励起するステップとを含むことを特徴とする蛍光シグナルを生成する方法。
【請求項1】
単一の活性化可能なアクセプター部分に結合している、2つ以上の励起可能なドナー部分を含む化合物であって、前記ドナー部分はその励起エネルギーの少なくとも50%を前記アクセプター部分に伝達し、前記アクセプター部分は、活性化されると、前記ドナー部分が励起されたときに検出可能な蛍光シグナルを生成することを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記ドナー部分は、シアニン色素、ローダミン色素、フルオレセイン色素、アゾ色素、フルオレセイン、ウンベリフェロン、ピレン、レゾルフィン、ローダミン、ヒドロキシエステル、芳香族酸、スチリル色素、テトラメチルローダミン色素、オキサジン、チアジン、金属置換されているプタロシアニン(pthalocyanine)、金属置換されているポルフィリン、多環芳香族色素、およびペリレンジイミン(perylenediimide)からなる群から選択される色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ドナー部分は蛍光色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記ドナー部分はシアニン色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記ドナー部分はCy3であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記アクセプター部分は、マラカイトグリーン、インドシアニングリーン、アセチレン性マラカイトグリーン、およびジメチルインドールレッドから選択されることを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記ドナー部分は無蛍光色素であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記アクセプター部分はマラカイトグリーンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
50kDa(キロダルトン)未満の平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
10kDa未満の平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記アクセプター部分は、トリアリールメチン(triarylmethine)色素、ジアリールメチン(diarylmethine)色素、およびモノメチン(monomethine)色素からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
リンカーはデンドロンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
デンドリマーまたはデンドロンはPAMAM、PEI、またはPPIデンドロンであることを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、蛍光ドナー部分は1つまたは複数のドナー部分および1つまたは複数のメディエータであり、前記ドナー部分のスペクトルは前記メディエータのスペクトルと重複し、前記メディエータのスペクトルは前記ドナー部分および前記アクセプター部分両方のスペクトルと重複することを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、前記アクセプター部分は、
【化1】
[式中、
R1〜R4は、−H、−CH3、(CH2)n−T、および置換されているアリールであり、
R5は、
【化2】
[式中、
R1〜R5に対してn=0〜6であり、
Tは、−H、−OH、COO−、SO3-、−PO4-、アミド、ハロゲン、置換されている単一もしくは複数個のアリール、エーテル、ポリエーテル、PEG1~30、N、S、もしくはO原子を含んでいる複素環、置換されているアセチレン基、シアノ、および炭水化物基から選択され、任意選択によりダイドロンに結合するためのリンカーを含んでいる]
から選択される置換されているアリールである]
であることを特徴とする化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、前記アクセプター部分は、
【化3】
[式中、
R1は、芳香族、ヘテロ芳香族、ヒドロキシル、アミノ、N−アルキル、N−アルカノリル(alkanolyl)(アルコール、例えば、n−ヒドロキシエチル)であり、
R2は、H、シアノ、芳香族、ヘテロ芳香族、アセチレン性、アルキルであり、
Xは、N、O、またはSであり、
R3およびR4は非存在である、またはアルキル、アリール、もしくはヒドロキシエチルである]
であることを特徴とする化合物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物であって、
R1はジ−C1~3アルキルアミノであり、
R2は置換されているフェニルアセチレン、フェニル、−N−アルキル置換フェニル、−(CH2)nR5置換されているフェニルであり、
nは、1〜5であり、
R5はカルボキシルまたはアミノであり、
XはNであり、
R3およびR4は独立に、C1~3アルキル、アルコキシル、アルカノイル、フェニル、C1~3アルキル置換フェニルであることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物であって、
R2は、−N−(CH3)2−、−N−(CH3)((CH2)nO(CH2)mCOOH)である
[式中、nおよびmは、独立に、1、2、3、または4である]
ことを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項17に記載の化合物であって、
R1は−N−(CH3)2であり、
R2は−O(CH2)3R5−置換されているフェニル、および
【化4】
の1つである、または
R3およびR4はCH3であることを特徴とする化合物。
【請求項20】
前記アクセプター部分は、
【化5】
の1つまたは複数であることを特徴とする請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
【化6】
から選択される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
アクチベーターが化合物に結合しているときにドナー部分が励起されると前記化合物の蛍光の増大を引き起こすアクチベーターに結合している請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする複合体。
【請求項23】
前記蛍光の増大が少なくとも100倍であることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
前記蛍光の増大が少なくとも1000倍であることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項25】
前記アクチベーターは選択性成分に付着していることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項26】
前記選択性成分は、前記アクチベーターおよび前記選択性成分を含む融合タンパク質であることを特徴とする請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
前記選択性成分は前記アクチベーターに架橋結合していることを特徴とする請求項26に記載の複合体。
【請求項28】
前記アクチベーターはscFvフラグメントであることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項29】
前記アクチベーターは配列番号3〜11の1つであることを特徴とする請求項22に記載の複合体。
【請求項30】
前記ドナーはCy3であり、前記デンドロンはPAMAMデンドロンであり、前記アクセプターはマラカイトグリーンであることを特徴とする請求項29に記載の複合体。
【請求項31】
前記化合物はBCMまたはTCMであることを特徴とする請求項29に記載の複合体。
【請求項32】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を、前記化合物のアクチベーターに結合している選択性成分を含む融合タンパク質と接触させてダイドロン複合体を生成するステップと、細胞中の前記ダイドロン複合体を検出するステップとを含むことを特徴とする細胞中の細胞成分を同定する方法。
【請求項33】
前記選択性成分および前記アクチベーターは近接するポリペプチド上にあることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アクチベーターはscFvフラグメントであることを特徴とする請求項32または33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記融合タンパク質は、前記細胞中に導入された遺伝子によって生成されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記アクセプターはマラカイトグリーンであることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記アクチベーターは、配列番号3〜9の1つまたは複数を含むポリペプチドであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物はTCMまたはBCMであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物はTCMおよびBCMの一方であることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記ドナーはCy3であることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記ダイドロン複合体は蛍光画像化によって検出されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項42】
QAVVTQEPSVTVSPGGTVILTCGSSTGAVTSGHYANWFQQKPGQAPRALIFDTDKKYPWTPGRFSGSLLGVKAALTISDAQPEDEAEYYCLLSDVDGYLFGGGTQLTVLS(配列番号4、塩基6−115);
QAVVTQEPSVTVSPGGTVILTCGSSTGAVTSGHYANWFQQKPQAPRALIFETDKKYPWTPGRFSGSLLGVKAALTISDAQPEDEAEYYCSLSDVDGYLFGGGTQLTVLS(配列番号5、塩基6−115);および
QAVVTQEPSVTVSPGGTVILTCGSGTGAVTSGHYANWFQQKPGQAPRALIFDTDKKYPWTPGRFSGSLLGVKAALTISDAQPEDEAEYYCSLSDVDGYLFGGGTQLTVLS(配列番号6、塩基6−115)
から選択される配列を含むことを特徴とするアクチベーターポリペプチド。
【請求項43】
選択性成分のアミノ酸配列をさらに含むことを特徴とする請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項44】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を、前記化合物のアクチベーターと接触させるステップと、前記ドナー部分を励起するステップとを含むことを特徴とする蛍光シグナルを生成する方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D−1】
【図4D−2】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B−1】
【図7B−2】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図15】
【図14】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D−1】
【図4D−2】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B−1】
【図7B−2】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図15】
【図14】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【公表番号】特表2012−518072(P2012−518072A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551166(P2011−551166)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/024320
【国際公開番号】WO2010/096388
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/024320
【国際公開番号】WO2010/096388
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】
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