説明

易分散安定剤

【課題】手攪拌のような比較的軽い攪拌操作で容易に再分散可能で、かつ懸濁安定性や乳化安定性を発揮できる易分散安定剤を提供する。
【解決手段】結晶セルロースと水溶性ガムと糖類との少なくとも3成分からなり、前記結晶セルロースと前記水溶性ガムとの合計1重量部に対して前記糖類を1重量部を越えて30重量部以下となる割合で用い、前記の3成分を水に分散溶解して高圧ホモジナイザーにて4MPa以上150MPa以下の圧力条件下で磨砕し、次いで乾燥して得られたものであることを特徴とする易分散安定剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の成分等を水中に分散・加工する場合に、食品成分等を安定的に分散させて沈降を防止するための結晶セルロースを用いた安定剤等に関する。具体的には特別な再分散のための設備を用いることなく容易に再分散できて安定化が可能な易分散安定剤、およびそれを用いた粉末食品または液体食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結晶セルロースは、食品の懸濁安定性の改善や乳化安定性の改善またはクラウディ剤としての利用等の目的で、分散安定剤として広く利用されている。また、粘度が低く食感への影響がほとんどないという点からも好んで用いられる。
【0003】
ところで、食品中で結晶セルロースが懸濁安定性や乳化安定性改善効果を発揮するには、結晶セルロース粒子が水中で平均粒径20μm以下に分散して存在しなければならないのであるが(例えば、特許文献1参照)、結晶セルロースを水に投入するだけでは、分散が不十分となって平均粒径が20μmを越えるのが普通である。そのため、結晶セルロース製品の製造では、十分な磨砕による小粒径化のための処理が行われることが多い。
【0004】
しかし、いったん小粒径化されたとしても、最後の乾燥工程で結晶セルロースの凝集と角質化が生じてしまい、その結果、水に投入した場合に十分に再分散されずに、平均粒径が実質的に大きくなってしまうのが実情であった。このような結晶セルロース製品をそのまま食品等の製造工程で投入しても、軽い攪拌程度で平均粒径20μm以下に再分散させることは困難である。
【0005】
そのため、従来、結晶セルロース製品を食品等に利用する場合は、ユーザーサイドにおいて、結晶セルロース製品を食品等に配合する前または配合した後に、強い剪断力で磨砕できる高圧ホモジナイザーや高速攪拌機等の特殊な設備を用いて、結晶セルロースの再分散処理が行われるのが通常であった(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、スプーン等を用いた手攪拌により水に分散して用いる例えばココアのような粉末食品では、各家庭で高圧ホモジナイザーのような設備を分散の際に用いることはあり得ない。また、プロペラ攪拌機のような比較的剪断力の弱い機器で製造される食品等を専門的に製造するユーザーでも、そのような特殊な設備は備えていないのが通常である。そのため、このような食品では、結晶セルロースの懸濁安定性や乳化安定性などの優れた機能を利用することは事実上困難であった。
【0007】
この問題を解決する試みの一つとして、コロイド状微結晶セルロースと澱粉と非増粘性で水溶性の結合材とを含有する安定剤等が開示されている(例えば、特許文献3参照)。ところが、分散性を向上させるための必須成分である澱粉が水に溶解するため、食品に用いた場合に糊状感が出てしまい、食品の口当たりが悪くなる問題があった。
【特許文献1】特開平10−56960号公報
【特許文献2】特開平6−335348号公報
【特許文献3】特開平2−39855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、手攪拌のような比較的軽い攪拌操作で容易に再分散可能で、かつ懸濁安定性や乳化安定性を発揮できる易分散安定剤等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、結晶セルロース複合体と糖類とを、前記結晶セルロース複合体1重量部に対して前記糖類1重量部を越え2重量部未満となる割合で水に分散溶解し、次いで高圧ホモジナイザーにて4MPa以上150MPa以下の圧力条件で磨砕したのち、乾燥して得られることを特徴とする易分散安定剤である。発明の第2は、上記の易分散安定剤を含有する粉末食品である。発明の第3は、上記の易分散安定剤を含有する液体食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の易分散安定剤は、水に投入した場合にスプーン等を用いた手攪拌程度でも容易に再分散する。ココアのような粉末食品に用いた場合に、水不溶性成分の懸濁安定性が向上して沈澱が抑制される。また、プロペラ攪拌機のような剪断力の比較的弱い機器で製造されるスープのような液体食品においては、乳化安定性が向上し油の分離が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態例について詳細に説明する。発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、結晶セルロースと水溶性ガムと糖類との少なくとも3成分を用い、結晶セルロースと水溶性ガムの合計1重量部に対して、糖類を1重量部を超えて30重量部となる範囲で比較的大量に用いて、これらを水に溶解分散してから、特定の圧力条件下における強い剪断力をかけて磨砕したのち乾燥することで得られる安定剤は、再度、水に分散溶解した場合に、手攪拌のごとき剪断力の弱い攪拌条件下でも容易に分散すること、その場合に、分散した結晶セルロースの平均粒径が20μm以下となっており、目的とする懸濁安定性や乳化安定性が得られることを見出した。また、この易分散安定剤を粉末食品や液体食品に配合することで、スプーンで手攪拌して食する粉末食品の懸濁安定性やプロペラ攪拌機のような剪断力の弱い機器を用いて製造される液体食品の乳化安定性が改善されることを見出した。
【0012】
易分散安定剤に用いる結晶セルロースは、木材パルプなど天然セルロースを加水分解して得られる結晶セルロースであり、結晶性部分が10重量%を超える(結晶化度が10%を超える)ものを言う。なお、結晶性部分とは、X線回折においてバックグラウンドを生じる非晶性部分に対して、ブラッグ反射のピークを生じる部分をいう。このような結晶セルロースを用いることにより、易分散安定剤を食品等に配合した場合に、懸濁安定性や乳化安定性等の特性が発揮できるようになる。好ましくは結晶化度は30%以上であり、より好ましくは50%以上である。
【0013】
また、再分散の際に水に容易に分散できるようにするためには、結晶セルロースとして、加水分解されたままのスラリー状で未乾燥のものか、または加水分解後に磨砕されたままのスラリー状で未乾燥のものを用いる。未乾燥でウェットな状態のものを用いるのは、乾燥状態をいったん経ることにより生じるセルロース粒子間の強固な水素結合の発生を避けて、再分散の際の易分散性を確保するためである。
【0014】
また、結晶セルロースとしていったん乾燥されたものをあえて用いる場合には、結晶セルロースが加水分解後に未乾燥のスラリー状態で、後述の水溶性ガムまた糖類の比較的少量をあらかじめ混合し、しかるのちに乾燥して得られる結晶セルロース複合体を用いればよい。このような結晶セルロース複合体を用いることが可能なのは、後述の水溶性ガムを混合したり、後述の糖類等を比較的少量混合したりしてから乾燥することで、結晶セルロースの乾燥に伴う水素結合の発生が妨害されるからである。なお、セルロース複合体を用いる場合に、セルロース複合体の各成分の質量比は、後述の易分散安定剤とする場合の質量比の範囲内であってもよいし、また、外れていても良いが、好ましくは結晶セルロース:水溶性ガムまたは糖類=50:50〜95:5(ただし、合計で100)の範囲である。
【0015】
用いることができる結晶セルロース複合体としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名セオラス(登録商標)のRC−591が挙げられる。また、少量のデキストリンをあらかじめ含有したものとしては、旭化成ケミカルズ社製の商品名セオラス(登録商標)のRC−N81、RC−N30等が挙げられる。いずれもデキストリンの含有量は結晶セルロース複合体100重量部に対して90重量部以下である。
【0016】
易分散安定剤に用いる水溶性ガムは、天然に産するか、あるいは発酵法等により得られる水膨潤性または水溶性で増粘性を有するものであれば良く特に限定されない。水溶性ガムを用いることにより、易分散安定剤における結晶セルロースの比率の低下を補償して、懸濁安定性や乳化安定性を高く維持できる。
【0017】
水溶性ガムとしては、結晶セルロースと水中における相溶性がよい多糖類が好ましく、例えば、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子ガム、タラガントガム、ガッテーガム、寒天、アルギン酸およびその塩、カラギナン、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、ペクチン、マルメロ等が例示される。
【0018】
水溶性ガムの配合量は、結晶セルロース100重量部に対して0.1重量部〜20重量部とするのがよい。この範囲で懸濁安定性や乳化安定性の向上が明確になり、一方で粘度の上昇が適切な範囲に留まる。より好ましくは0.5重量部〜15重量部である。さらに好ましくは1重量部〜10重量部である。
【0019】
易分散安定剤には、比較的大量の糖類を配合する。糖類を配合することで、再分散性が良好となる一方で、結晶セルロースによる懸濁安定性や乳化安定性の効果も発現可能となる。ここで比較的大量とは、結晶セルロースと水溶性ガムとの合計1重量部に対して、1重量部を越え30重量部以下の割合をいう。糖類が1重量部を超えると、易分散安定剤を用いた場合の再分散性が良好となり、食品などに配合した場合に懸濁安定性や乳化安定性が発現できるようになる。30重量部以下の割合であれば、再分散性が良好となり、結晶セルロースに求められる機能が十分発現するし、また、食品等に易分散安定剤を含有せしめた際に、食品の味や口当たりに影響しにくい。好ましくは2重量部以上20重量部以下の割合であり、より好ましくは3重量部以上10重量部以下の割合である。
【0020】
配合できる糖類としては、水溶性の糖類を言い、単糖類、オリゴ糖、デキストリンなどが例示できる。糖類のうちでは、甘み、生産性などの観点からデキストリンが好ましく、より好ましくはDE(澱粉の糖化度)5〜40のデキストリンである。
【0021】
易分散安定剤は、このように結晶セルロースと水溶性ガムの合計に対して比較的大量の糖類を配合することを要する。これにより結晶セルロースの再分散性が良好になる理由は定かではないが、後述の製造方法における磨砕後の乾燥処理において、比較的大量の糖類が結晶セルロースをいわば包み込む状態となり、結晶セルロースどうしがお互いに分離されることで、結晶セルロース間の水素結合が生じにくくなって角質化しにくくなるのではないかと推測している。一方で、このように糖類を比較的大量に配合することで易分散安定剤中の結晶セルロースの比率が低下するため、結晶セルロース由来の懸濁安定性や乳化安定性の効果を大きく低下させるのではないかと予想されたが、意外にもわずかな低下に留まった。
【0022】
易分散安定剤には、上記の3成分の他に、易分散安定剤の効果を損なわない範囲で他の成分を混合しても良い。他の成分としては、例えば、デンプン類、油脂類、蛋白質類、ペプチド、アミノ酸、界面活性剤、保存料、日持向上剤、pH調整剤、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素、消泡剤、発泡剤、抗菌剤、崩壊剤などの成分が適宜配合されていても良い。
【0023】
次に、上記の各成分を用いた易分散安定剤の製造方法について説明する。まず、上記の結晶セルロースと水溶性ガムと糖類とを水に分散溶解する。その際の結晶セルロースと水溶性ガムと糖類とその他の成分とを合わせた濃度は、1重量%以上70重量%以下となるように、水を含めたそれぞれの量を調整するのが好ましい。この範囲で水分散液の取り扱い性が良好で生産性が高く、後の乾燥エネルギー負荷も許容できる範囲に留まる。より好ましくは3重量%以上65重量%以下、最も好ましくは5重量%以上60重量%以下である。
【0024】
次いで、この水分散液を高圧ホモジナイザーを用いて磨砕する。高圧ホモジナイザーとは、原料(液体または液体と固体)を加圧して、間隙(スリット)を通り抜ける際の剪断力を利用して粉砕・分散・乳化を行う装置であり、例えば、商品名:ナノマイザー(ナノマイザー社製)、商品名:マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、商品名:アリート(ニロソアビ社製)、商品名:APVホモジナイザー(APV社製)等の装置が例示される。
【0025】
高圧ホモジナイザーの運転は、運転圧力が4MPa以上150MPa以下の範囲で行う。4MPa以上とすることにより磨砕が十分になされ、懸濁安定性や乳化安定性の改善が見られる。150MPaを越える圧力で運転することもできるが、対応する装置が高価となりコストがかかる割には、懸濁安定性や乳化安定性の向上が頭打ちとなる。好ましくは8MPa以上100MPa以下であり、より好ましくは10MPa以上80MPa以下である。
【0026】
この高圧ホモジナイザー処理により、結晶セルロースの平均粒径を20μm以下とすることができる。なお、高圧ホモジナイザーのパス回数は1回で良いが、複数回パスさせても良い。また、高圧ホモジナイザー工程の前または後の工程に、高速攪拌機などの高い剪断力のかかる別の装置による処理工程を付け加えても良い。
【0027】
各成分の水への分散と高圧ホモジナイザー処理とは、上記のように、全部の成分を混合して一括して行っても良いが、成分ごとに水に分散し、成分ごとに高圧ホモジナイザーによる磨砕処理を行い、しかるのち全部の成分を高圧ホモジナイザーや高速攪拌機または各種のミルを用いて均一に混合するようにしてもよい。
【0028】
このようにして得られた組成物を最後に乾燥する。これにより各成分を複合化する。複合化により、理由は不明であるが複合化された粉末を水に再投入した際に、水への分散特性が飛躍的に向上する。乾燥方法としては、噴霧乾燥法など食品工業で用いられる一般的な乾燥方法であれば良く、具体的な例として噴霧乾燥法、凍結乾燥法、ドラム乾燥法等が挙げられる。また、乾燥条件もそれぞれの乾燥方法に適した条件を適宜選択すればよい。こうして得られた乾燥物は、必要に応じて粉砕処理や分級処理を行うことができ、目的とする易分散安定剤が得られる。
【0029】
なお、易分散安定剤を再分散した場合の結晶セルロースの平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(商品名:LA910、堀場製作所社製)を用い、得られた積算体積50%の粒径を平均粒径として求めることができる。なお、この測定に適する易分散安定剤の分散液は、プロペラ攪拌機を用いて、水道水(25℃)495gを400rpmで攪拌しながら易分散安定剤5gを投入し、さらに10分間攪拌して得ることができる。
【0030】
次に、易分散安定剤を用いるのに適した食品について説明する。易分散安定剤は粉末食品または液体食品に用いるのが好ましい。これらの食品は、手攪拌程度の攪拌で混合されて用いられたり、または、高圧ホモジナイザーのような高い剪断力を用いずに製造されるのが通常だからである。
【0031】
ここにいう粉末食品とは、粉末状で販売され、食用または飲用に供される際に様々な温度の水に投入して用いられるものをいう。例えば、粉末ココア、粉末コーヒー、抹茶等の粉末飲料、粉末スープ、粉末ラーメンスープ等の粉末食品のほか、生理活性素材粉末や野菜粉末や香辛料粉末を含む粉末状の健康食品等が挙げられる。また、液体食品とは、剪断力が比較的弱いプロペラ攪拌等を用いた分散・攪拌を経て製造される食品であって、液体状態で販売されるものをいう。例えば、タレ、ドレッシング、スープ、ラーメンスープ等が挙げられる。これらの食品に易分散安定剤を用いることにより、容易に再分散可能でありながら、懸濁安定性または乳化安定性等に優れた食品を得ることができる。
【0032】
易分散安定剤を含有した粉末食品を製造するには、従来の粉末食品に上記易分散安定剤を0.1〜99重量%の範囲で必要な特性を発揮する量を加えて混合すればよい。また、同じく易分散安定剤を含有した液体食品を製造するには、液体食品に用いる原料の液体調味料等を添加してプロペラ攪拌機などで混合攪拌する工程において、易分散安定剤を0.1〜70重量%の範囲で必要な特性を発揮する量を添加し、さらに易分散安定剤が均一に分散するまで混合攪拌すればよい。
【実施例1】
【0033】
以下、実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの具体的態様に限定されるものではない。
[実施例1]
【0034】
60℃の温水10kgを用意し、軽く攪拌しながら、結晶セルロース80重量%とカラヤガム10重量%とデキストリン10重量%とからなる乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−N81、旭化成ケミカルズ社製)を1.5kg加えたあと、デキストリン(商品名パインデックス#3、松谷化学工業社製)2.4kgを加え、更に20分間攪拌した。
【0035】
この分散溶解液を、高圧ホモジナイザー(APV社製)にて8MPaの圧力で1パスして磨砕したのち、スプレードライヤーで入り口温度が90℃から100℃、出口温度が70℃から80℃の条件で噴霧乾燥して易分散安定剤を得た。この易分散安定剤の平均粒径は12.8μmであった。
【0036】
次に、粉末食品として、純ココア(商品名バンホーテンココア、バンホーテン社製)7g、砂糖52g、クリーミングパウダー(商品名ネスレブライト、ネスレ社製)10g、上記で得た易分散安定剤20gをポリエチレン袋に入れ、よく混合して粉末ミルクココアAを得た。
【0037】
これを300mLのガラスビーカーに30gとり、沸騰したお湯170gを加えて、スプーンで30秒間かき混ぜたのち、25℃雰囲気下で6時間経過後にココア懸濁状態の評価を以下の通り行った。評価は、ガラスビーカーを横から目視観察して行い、層分離も沈澱も観察されないは良好(○)とし、ビーカーの上下で濃度の違いが観察されて層分離が発生している場合はやや不良(△)とし、沈澱が観察される場合は不良(×)とする3段階で実施した。その結果、層分離も沈澱も観察されず、良好(○)であった。また、粉末ミルクココアAで作ったココア飲料を試飲して官能評価したところ、糊状感もなく良好な口当たりであった。結果を表1にまとめた。
[実施例2]
【0038】
60℃の温水30kgを用意し、軽く攪拌しながら、結晶セルロース80重量%とカラヤガム10重量%とデキストリン10重量%とからなる乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−N81、旭化成ケミカルズ社製)を0.5kg加えたあと、デキストリン(商品名パインデックス#3、松谷化学工業社製)12.5kgを加え、更に20分間攪拌した。
【0039】
この分散溶解液を、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイディクス社製)にて135MPaの圧力で1パスして磨砕したのち、スプレードライヤーで入り口温度が90℃から100℃、出口温度が70℃から80℃の条件で噴霧乾燥して易分散安定剤を得た。この易分散安定剤の平均粒径は8.5μmであった。
【0040】
次に、粉末食品として、純ココア(商品名バンホーテンココア、バンホーテン社製)7g、砂糖52g、クリーミングパウダー(商品名ネスレブライト、ネスレ社製)10g、上記で得た易分散安定剤35gをポリエチレン袋に入れ、よく混合して粉末ミルクココアBを得た。
【0041】
これを300mLのガラスビーカーに30gとり、沸騰したお湯170gを加えて、スプーンで30秒間かき混ぜたのち、25℃雰囲気下で6時間経過後にココア懸濁状態の評価を以下の通り行った。評価は、ガラスビーカーを横から目視観察して行い、層分離も沈澱も観察されないは良好(○)とし、ビーカーの上下で濃度の違いが観察されて層分離が発生している場合はやや不良(△)とし、沈澱が観察される場合は不良(×)とする3段階で実施した。その結果、層分離も沈澱も観察されず、良好(○)であった。また、粉末ミルクココアAで作ったココア飲料を試飲して官能評価したところ、糊状感もなく良好な口当たりであった。結果を表1にまとめた。
[比較例1]
【0042】
粉末食品として、純ココア(商品名バンホーテンココア、バンホーテン社製)7g、砂糖52g、クリーミングパウダー(商品名ネスレブライト、ネスレ社製)10g、結晶セルロース80重量%とカラヤガム10重量%とデキストリン10重量%からなる乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−N81、旭化成ケミカルズ社製)15gをポリエチレン袋に入れ、よく混合して粉末ミルクココアCを得た。
【0043】
これを実施例1と同様にして評価したところ、沈澱の発生が観察され不良(×)であった。結果を表1にまとめた。
[比較例2]
【0044】
実施例1の結晶セルロース複合体に代えて、カルボキシメチルセルロースナトリウムを11重量%含有する乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−591、旭化成ケミカルズ社製)1.5kgを用い、かつデキストリンは1.2kgを加えた以外は実施例1と同様にして比較安定剤組成物Eを得た。この安定剤組成物Eの平均粒径は28.0μmであった。この比較安定剤組成物Eを実施例1の易分散安定剤に代えて用いた以外は実施例1と同様にして、粉末ミルクココアDを得た。これを実施例1と同様にして評価したところ、沈澱の発生が観察され不良(×)であった。結果を表1にまとめた。
[実施例3]
【0045】
60℃の温水30kgを用意し、軽く攪拌しながら、結晶セルロース80重量%とカラヤガム10重量%とデキストリン10重量%とからなる乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−N81、旭化成ケミカルズ社製)を0.5kg加えたあと、デキストリン(商品名パインデックス#3、松谷化学工業社製)10kgを加え、更に20分間攪拌した。
【0046】
この分散溶解液を、高圧ホモジナイザー(APV社製)にて15MPaの圧力で1パスして磨砕したのち、スプレードライヤーで入り口温度が90℃から100℃、出口温度が70℃から80℃の条件で噴霧乾燥して易分散安定剤を得た。この易分散安定剤の平均粒径は12.2μmであった。
【0047】
次に液体食品として、70℃の温水341gを用意し、これをプロペラ攪拌機を用いて400rpmで攪拌しながら、粗製ラード220g、調味料である商品名:チキンエキスS(ジェイティーフーズ社製)150g、同じく商品名:白豚湯(ジェイティーフーズ社製)70g、商品名:ポークエキスBL(ジェイティーフーズ社製)50g、濃い口醤油42g、商品名:エキストラートYP(ジェイティーフーズ社製)17g、ニボシエキス(ジェイティーフーズ社製)7gを加えたのち、続いて、あらかじめ混合した砂糖23g、食塩20g、核酸系調味料6g、キサンタンガム2g、上記で得た易分散安定剤15gを加え、攪拌しながらさらに加熱を続けて85℃に達したのち、さらに85℃で10分間攪拌して、液体食品である濃縮豚骨ラーメンスープEを得た。
【0048】
これらを300mLのガラスビーカーに200gとり、25℃雰囲気下で6時間経過後の乳化状態評価を以下の通り行った。ガラスビーカーを横から目視観察し、全体が均一で層分離が観察されず、大きな油球の発生も観察されない場合は良好(○)とし、大きな油球の発生による油分離は観察されないが、ビーカーの上下で濃度差が観察され層分離が発生している場合はやや不良(△)とし、層分離も油分離とも観察される場合を不良(×)とする段階で評価した。結果、層分離も油分離も観察されず良好な結果となった。結果を表2にまとめた。
[実施例4]
【0049】
60℃の温水10kgを用意し、軽く攪拌しながら、結晶セルロース80重量%とカラヤガム10重量%とデキストリン10重量%とからなる乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−N81、旭化成ケミカルズ社製)を1.5kg加えたあと、デキストリン(商品名パインデックス#3、松谷化学工業社製)3kgを加え、更に20分間攪拌した。
【0050】
この分散溶解液を、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイディクス社製)にて110MPaの圧力で1パスして磨砕したのち、スプレードライヤーで入り口温度が90℃から100℃、出口温度が70℃から80℃の条件で噴霧乾燥して易分散安定剤を得た。この易分散安定剤の平均粒径は8.7μmであった。
次に液体食品として、70℃の温水341gを用意し、これをプロペラ攪拌機を用いて400rpmで攪拌しながら、粗製ラード220g、調味料である商品名:チキンエキスS(ジェイティーフーズ社製)150g、同じく商品名:白豚湯(ジェイティーフーズ社製)70g、商品名:ポークエキスBL(ジェイティーフーズ社製)50g、濃い口醤油42g、商品名:エキストラートYP(ジェイティーフーズ社製)17g、ニボシエキス(ジェイティーフーズ社製)7gを加えたのち、続いて、あらかじめ混合した砂糖23g、食塩20g、核酸系調味料6g、キサンタンガム2g、上記で得た易分散安定剤24gを加え、攪拌しながらさらに加熱を続けて85℃に達したのち、さらに85℃で10分間攪拌して、液体食品である濃縮豚骨ラーメンスープFを得た。
【0051】
これらを300mLのガラスビーカーに200gとり、25℃雰囲気下で6時間経過後の乳化状態評価を以下の通り行った。ガラスビーカーを横から目視観察し、全体が均一で層分離が観察されず、大きな油球の発生も観察されない場合は良好(○)とし、大きな油球の発生による油分離は観察されないが、ビーカーの上下で濃度差が観察され層分離が発生している場合はやや不良(△)とし、層分離も油分離とも観察される場合を不良(×)とする段階で評価した。結果、層分離も油分離も観察されず良好な結果となった。結果を表2にまとめた。
[実施例5]
【0052】
60℃の温水30kgを用意し、軽く攪拌しながら、結晶セルロース80重量%とカラヤガム10重量%とデキストリン10重量%とからなる乾燥状態の結晶セルロース複合体(商品名セオラス(登録商標)RC−N81、旭化成ケミカルズ社製)を1kg加えたあと、デキストリン(商品名パインデックス#3、松谷化学工業社製)8kgを加え、更に20分間攪拌した。
【0053】
この分散溶解液を、高圧ホモジナイザー(APV社製)にて50MPaの圧力で1パスして磨砕したのち、スプレードライヤーで入り口温度が90℃から100℃、出口温度が70℃から80℃の条件で噴霧乾燥して易分散安定剤を得た。この易分散安定剤の平均粒径は11.8μmであった。
【0054】
次に液体食品として、70℃の温水341gを用意し、これをプロペラ攪拌機を用いて400rpmで攪拌しながら、粗製ラード220g、調味料である商品名:チキンエキスS(ジェイティーフーズ社製)150g、同じく商品名:白豚湯(ジェイティーフーズ社製)70g、商品名:ポークエキスBL(ジェイティーフーズ社製)50g、濃い口醤油42g、商品名:エキストラートYP(ジェイティーフーズ社製)17g、ニボシエキス(ジェイティーフーズ社製)7gを加えたのち、続いて、あらかじめ混合した砂糖23g、食塩20g、核酸系調味料6g、キサンタンガム2g、上記で得た易分散安定剤30gを加え、攪拌しながらさらに加熱を続けて85℃に達したのち、さらに85℃で10分間攪拌して、液体食品である濃縮豚骨ラーメンスープGを得た。
【0055】
これらを300mLのガラスビーカーに200gとり、25℃雰囲気下で6時間経過後の乳化状態評価を以下の通り行った。ガラスビーカーを横から目視観察し、全体が均一で層分離が観察されず、大きな油球の発生も観察されない場合は良好(○)とし、大きな油球の発生による油分離は観察されないが、ビーカーの上下で濃度差が観察され層分離が発生している場合はやや不良(△)とし、層分離も油分離とも観察される場合を不良(×)とする段階で評価した。結果、層分離も油分離も観察されず良好な結果となった。結果を表2にまとめた。
[比較例3]
【0056】
実施例3で加えたデキストリンを10kgから17.5kgに変更し、かつ高圧ホモジナイザー(マイクロフルイディクス社製)の圧力を140MPaに変更した以外は実施例3と同様にして比較安定剤組成物Kを得た。この比較安定剤組成物Kの平均粒径は8.3μmであった。この比較安定剤組成物K12gを、実施例3の易分散安定剤に代えて用いた以外は実施例3と同様にして濃縮豚骨ラーメンスープHを得た。これを実施例3と同様にして評価したところ、底面から5%の高さ部分で層分離および上部に油分離が観察され不良(×)であった。結果を表2にまとめた。
[比較例4]
【0057】
実施例3で加えたデキストリンを10kgから7.5kgに変更し、かつ高圧ホモジナイザー(APV社製)の圧力を2.5MPaに変更した以外は実施例3と同様にして比較安定剤組成物Lを得た。この比較安定剤組成物Lの平均粒径は64μmであった。この比較安定剤組成物L44gを、実施例3の易分散安定剤に代えて用いた以外は実施例3と同様にして濃縮豚骨ラーメンスープHを得た。これを実施例3と同様にして評価したところ、底面から13%の高さ部分で層分離および上部に油分離が観察され不良(×)であった。結果を表2にまとめた。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶セルロースと水溶性ガムと糖類との少なくとも3成分からなり、前記結晶セルロースと前記水溶性ガムとの合計1重量部に対して前記糖類を1重量部を越えて30重量部以下となる割合で用い、前記の3成分を水に分散溶解して高圧ホモジナイザーにて4MPa以上150MPa以下の圧力条件下で磨砕し、次いで乾燥して得られたものであることを特徴とする易分散安定剤。
【請求項2】
請求項1記載の易分散安定剤を含有することを特徴とする粉末食品。
【請求項3】
請求項1記載の易分散安定剤を含有することを特徴とする液体食品。

【公開番号】特開2008−113572(P2008−113572A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297587(P2006−297587)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】