説明

易分散性を有する親油化表面処理粉体および該粉体を配合した化粧料

【課題】
易分散性を有する表面処理粉体を提供する。
【解決手段】
特に化粧料に使用可能な表面処理粉体であって、A:一般式(1)のアルキルアルコキシシランと、B:下記一般式(2)の反応性オルガノシリコーンおよびC12〜C22の飽和又は不飽和分岐脂肪酸(塩の形態にあるものも含む)から選ばれる1種の化合物または2種の化合物との混合物A+Bからなる表面処理剤で粉体を表面処理した表面処理粉体。
【化1】


(式中、nは1〜18の整数、mは1〜3の整数、a,bは1〜3の整数、a+b=4である。)
【化2】


(式中、Rは相互に独立にそれぞれ炭素数1〜4の低級アルキル基又は水素原子、Rはアミノ基、水素原子、水酸基及びC1〜C4の低級アルコキシ基の何れか、pは1〜300の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易分散性を示す親油化表面処理粉体に関し、また該表面処理粉体を配合することによって使用感、化粧効果および化粧持続性を向上させた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に配合される粉体は、一次粒子径がナノクラスからおおよそ数百ミクロンのものまであり、粉体は一次粒子径の粒子の集合体として存在している。粉体の一次粒子径は、化粧料に於いて発揮する機能を考慮し、その粉体の化学組成と粒子径の範囲により設定される。例えば、酸化チタンの場合、使用感を向上させたり赤外線遮蔽をするためには、幾何光学的領域である数ミクロンの粒子径に設定され、隠ぺい力や着色力を発揮させるためには可視光線の半波長付近、つまりミー散乱領域の粒子径に設定され、紫外線遮蔽能を発揮させるためには可視光線の波長よりかなり小さいレイリー散乱領域の粒子径に設定されている。
【0003】
粉体粒子は設定された一次粒子径に近い状態で分散されているほど、粉体の持つ機能すなわち、化粧料で求められる、たとえば、隠蔽力、着色力、紫外線散乱効果、透明性、光学特性、皮膚への付着性、感触等の特性を最大限に発揮させる事ができる。しかしながら、粉体の一次粒子径が小さくなるほど比表面積が大きくなり、粒子同士の接触点が増えるため凝集しやすくなり、その結果として分散性が悪化する。この凝集を極力回避し経時でも再凝集させない手段の一つとして、多くの表面処理技術が提案されている。
【0004】
例えば、(1)表面処理剤としてシリコーンオイル(例えば、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはアルキル部分の炭素数が10以下であるアルキルシラン)を溶剤に溶かし、粉体に添加混合して乾燥した後に、これを加熱することにより焼き付けて処理する方法、(2)粉体とオクチルトリエトキシシラン等を有機溶媒中にメディアグラインダーを用いて分散させながら、オクチルトリエトキシシラン等の有機珪素化合物により粉体を表面処理する方法(特許文献1)、(3)アルキルシラン化合物のN−オクチルトリメトキシシランまたはN−オクチルトリエトキシシランと酸化チタンをヘンシェルミキサーにより攪拌混合し加熱により反応を完結させ、ハンマー式粉砕機にて粉砕する方法(特許文献2)、(4)メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン化合物を水中に分散させてエマルジョン化して粉体に混合して、粉体粒子表面を被覆する方法(特許文献3)、(5)金属石けん及び水素基等の反応性基が珪素原子に結合している有機珪素化合物と粉体を混合した後、噴出気流を用いた粉砕機で、表面処理と同時に粉砕して処理するジェット法(特許文献4)、また、(6)粉体の分散性向上のために、表面処理剤としてA層及びB層の表面処理剤をジェット法で被覆処理する方法(特許文献5)等の種々の表面処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−104606号公報
【特許文献2】特開2001−181136号公報
【特許文献3】特開平9−268271号公報
【特許文献4】特公平6−59397号公報
【特許文献5】特開2002−80748号公報
【0006】
しかしながら、親油化表面処理剤の種類、処理量や組み合わせにより粉体の分散状態、換言すると凝集状態が異なる。表面処理剤は官能基を有し、粉体基材と反応する際に重縮合の起こる化合物や常温で固体化する化合物で処理すると粉体粒子のアグリケートやアグロメレートを誘発する。例えば、従来より化粧料粉体の表面処理剤として用いられるメチルハイドロジェンポリシロキサンは、無機粉体粒子表面のOH基や水の存在下で加水分解して樹脂化することで粒子表面を被覆するが、この時凝集が発生し、易分散性が得られないという問題があった(特許文献1、特許文献3)。
【0007】
また、アルキルシランやアクリルシリコーン等の表面処理剤には化合物自体に粉体粒子の分散能(顔料分散能)を有するものがあるが、アルキルアルコキシシラン等の単独処理では、表面処理剤による凝集は少ないものの、易分散性をさらに高める必要があり、一方液体の中では充分な分散性は得られないという問題があった。(特許文献2)。また、脂肪酸処理粉体は一般に炭素数の14以上の直鎖脂肪酸が使用される。これら化合物は常温で固体の性状を示すが60°前後の融点を有する。このような表面処理剤は融点以上の温度で溶解させて粉体を処理するか石鹸化して含粉体水スラリー中に溶解し多価金属塩化させて表面処理をさせるのが一般的である。常温では固体状の物質での処理は凝集が発生し易く分散性は良くなかった(特許文献4,特許文献5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パウダーの混合系でも液体の混合系に於いても、ヘンシルミキサーやプロペラミキサー、ディスパーミキサー等の弱い混合攪拌力によって、容易に分散させることができる親油化表面処理粉体を提供することを目的とする。また、本発明は、該表面処理粉体を配合した使用感や化粧効果、化粧持続性に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)下記一般式(1)にて示されるアルキルアルコキシシランと、(B)下記一般式(2)にて示される反応性オルガノシリコーンと炭素数が12〜22の飽和又は不飽和分岐脂肪酸(塩の形態にあるものも含む)から選ばれる1種の化合物または2種の化合物との混合物(A+B)からなる表面処理剤で粉体を表面処理していることを特徴とする表面処理粉体に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、nは1〜18の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、a,bは1〜3の整数を示し、a+b=4である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは全て相互に独立にそれぞれ炭素数1〜4の低級アルキル基又は水素原子を表し、Rはアミノ基、水素原子、水酸基及び炭素数1〜4の低級アルコキシ基の何れかを表し、pは1〜300の整数である。)
【0014】
上記において、文言「・・・混合物(A+B)からなる表面処理剤」は、「・・・混合物(A+B)のみからなる表面処理剤」のみならず、「(A+B)以外のC等を含みかつ本発明の効果を失わない混合物(A+B+C等)からなる表面処理剤」も含む。
【0015】
以下に、本発明の好ましい態様について記載するが、その任意の組み合わせも特に矛盾がない限り、本発明の好ましい態様である。
(1)表面処理剤が前記アルキルアルコキシシランと前記反応性オルガノシリコーンからなる。
(2) 表面処理剤がアルキルアルコキシシランと前記分岐脂肪酸からなる。
(3)一般式(1)中、nは1〜8である。
(4)一般式(2)中、pは2〜50である。
(5)前記(A):(B)の配合比率(重量)が1.0〜29.0部:29.0〜1.0部である。
【0016】
(6)表面処理される前記粉体と前記表面処理剤の配合比は、粉体100重量部に対して表面処理剤が1〜30重量部である。
(7)前記表面処理粉体を、さらにジェットミルによって粉砕処理をした表面処理粉体である。
(8)前記表面処理粉体が化粧料に使用可能な表面処理粉体である。
【0017】
本発明は、さらに上記のいずれかに記載の表面処理粉体を配合した化粧料に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表面処理粉体は、(A)下記一般式(1)にて示されるアルキルアルコキシシランと(B)上記特定の1種または2種以上の化合物を組み合わせた表面処理剤によって被処理粉体を表面被覆することにより、一次粒子径により近い状態で粉体の表面処理をすることによって得られる。得られた表面処理粉体は易分散性を示すため、パウダー混合系や液体の混合系のいずれの系に於いても容易に分散させることが出来る。その結果、表面処理粉体は、例えば、隠蔽力、着色力、紫外線散乱効果、透明性、光学特性、皮膚への付着性、感触等に優れている。また、該粉体を配合した化粧料は使用感や化粧効果、化粧持続性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
【0020】
(1)粉体
本発明に使用する粉体は、無機粉体および有機粉体の何れでも良いが、好ましくは無機粉体が使用される。本発明における表面処理粉体は、特に化粧用表面処理粉体として適合するが、粉体としては、通常化粧品に用いられる粉体として使用可能なものであれば特に制限されない。例えば、窒化硼素、セリサイト、天然マイカ、焼成マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、アルミナ、マイカ、タルク、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化イットリウム、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化クロム、紺青、群青、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ストロンチウム、炭化ケイ素、フッ化マグネシウム、タングステン酸金属塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、クロルヒドロキシアルミニウム、クレー、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、スピネル、ムライト、コージエライト、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、ランタン、サマリウム、タンタル、テルビウム、コーロピウム、ネオジウム、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、シリコーンカーバイト、チタン酸コバルト、チタン酸バリウム、チタン酸鉄、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト、アンチモン含有酸化スズ スズ含有酸化インジウム、マグネタイト、アルミニウム粉、金粉、銀粉、白金粉、銅粉、貴金属コロイド、鉄粉、亜鉛粉、コバルトブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、低次酸化チタン、微粒子酸化チタン、バタフライ状硫酸バリウム、花びら状酸化亜鉛、テトラポット状酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、パール顔料としては酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆タルク、酸化亜鉛被覆シリカ、酸化チタン被覆着色雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、・コンジョウ被覆雲母チタン等のパール顔料が挙げられる。これら粉体は単独でも複数混合または複合化した形態でも使用する事ができる。
【0021】
(2)表面処理剤
本発明で使用する表面処理剤は、(A)下記一般式(1)で示されるアルキルアルコキシシランと、(B)下記一般式(2)で示される反応性オルガノシリコーン及び炭素数が12〜22の飽和又は不飽和分岐脂肪酸(塩の形態にあるものも含む)から選択した1種の化合物又は2種以上の化合物との混合物(A+B)からなり、粉体を表面処理するために用いる。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、nは1〜18の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、a,bは1〜3の整数を示し、a+b=4である。)
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、Rは全て相互に独立に、それぞれ炭素数1〜4の低級アルキル基又は水素原子を表し、Rはアミノ基、水素原子、水酸基及び炭素数1〜4の低級アルコキシ基の何れかを表し、pは1〜300の整数である。)
【0026】
上記アルキルアルコキシシランは表面処理粉体に良好な顔料分散能を付与する機能があり、上記反応性オルガノシリコーンはアルキルアルコキシシランとの複合化処理によってより良好な易分散性を粉体に付与する機能があり、また、上記飽和又は不飽和分岐脂肪酸は肌等の有機物への密着性を向上させる機能があると考えられる。
【0027】
表面処理粉体により良好な顔料分散能を付与するという観点から、本発明で用いるアルキルアルコキシシランの式(1)中のn数は、1〜8が好ましい。例えば、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシランが挙げられる。n数が大きくなるほど顔料分散能は小さくなる傾向にある。粉体表面との反応性の確保という観点から、式(1)中のm数を1〜3に限定する。
【0028】
アルキルアルコキシシランとの複合化処理によってより良好な易分散性を粉体に付与するという観点から、本発明で用いる上記反応性オルガノシリコーンは、pが2〜50の片末端にトリアルコキシ基を有するものが好ましい。例えば、特許3079395号公報や特開平7−196946号公報に記載される化合物が挙げられる。
【0029】
炭素数が12〜22の分岐状の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えば、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソベヘン酸等(塩の形態にあるものも含む)が挙げられる。本発明における上記「炭素数が12〜22の飽和又は不飽和分枝脂肪酸」には、これら分岐脂肪酸のCa、Mg、Zn、Zr、Al、Ti等の金属塩も含まれる。特に、飽和分岐脂肪酸のイソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸が好ましい。炭素数12以上としたのは易分散性、凝集防止、皮膚への刺激性の低減の観点からであり、炭素数を22以下に限定したのは顔料への付着性の観点からである。
【0030】
(3)表面処理方法
アルキルアルコキシシランと、反応性オルガノポリシロキサン及び炭素数12〜22の飽和又は不飽和分岐脂肪酸の表面処理剤から選択した1種の化合物又は2種以上の化合物との混合物からなる表面処理剤で粉体を表面処理する方法としては、公知の方法を使用すればよい。本発明において使用する表面処理剤と粉体を一定時間混合接触させることにより粉体を表面処理する。好ましい製法としては、粉体を表面処理した後に、ジェットミルを通す方法である。粉体を表面処理した後に、ジェットミルを通す方法としては、例えば、次の2つ方法が挙げられる。(1)表面処理剤と粉体を乾式法または湿式法にて混合分散した後、ジェットミルを通し加熱乾燥する方法、(2)表面処理剤と粉体を乾式法または湿式法にて混合分散し加熱乾燥した後、ジェットミルを通す方法である。一次粒子径がサブミクロン以上の粉体を被覆する場合は、ジェットミルの代わりピンミルやハンマーミル等の粉砕機を使用することが出来る。
【0031】
上記粉体を混合接触させる際に用いる混合分散機としては、ヘンシルミキサー、リボンブレンダー、Qミル、ニーダー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、バンバリーミキサー、ボールミル、乾式サンドミル、湿式サンドミル、アトライター、ディスパーミキサー、ホモミキサー、エクストルーダー等が挙げられる。更に、この表面処理時にメカノケミカル的な機械力、超音波、プラズマ、火炎、紫外線、電子線、過熱水蒸気等のエネルギーを与えながら処理してもよい。
【0032】
前記混合分散機により表面処理した粉体について、表面処理剤と粉体粒子表面の反応を完結させるために、例えば、100℃〜170℃の温度で3時間〜20時間乾燥する。
【0033】
本説明の特に好ましい形態として、上記粉体を混合接触させた後、ジェットミル粉砕機を使用して表面処理粉体を粉砕すると易分散性は更に向上する。ジェットミルは流動層型、スパイラル型、ジェットオーマイザー型等に大別され、どのタイプのものも使用可能であるが、均一に効率良く処理できる流動層型のものが最も好ましい。
【0034】
ジェット気流は、粉砕機内に設けた1個または複数個の噴出口又は噴出ノズルから噴出させる。またジェット気流に用いる気体としては空気、窒素ガス、ヘリウムガス、スチーム等が挙げられ、処理すべき粉体や表面処理剤の性状に応じて選定すれば良い。
【0035】
本発明の易分散性を示す親油化表面処理粉体は、アルキルアルコキシシランと、反応性オルガノポリシロキサンまたは炭素数12〜22の飽和あるいは不飽和分岐脂肪酸から選択した1種の化合物または2種以上の化合物の混合物からなる表面処理剤による表面処理とジェットミルの粉砕とを組み合わせたプロセスにてより良好に達成可能である。
【0036】
処理される粉体と表面処理剤の配合比は、粉体100重量部に対して表面処理剤を1〜30重量部とすることが好ましい。(A)アルキルアルコキシシランと(B)反応性オルガノポリシロキサンまたは炭素数12〜22の飽和あるいは不飽和分岐脂肪酸(塩の形態にあるものも含む)から選ばれる1種の化合物または2種以上の化合物との配合比率(重量部)は、A:Bが1.0〜29.0:29.0〜1.0が好ましい。更に好ましくは、A:Bが1.0〜19.0:19.0〜1.0である。(B)の2種類以上の処理剤の配合比は特に制限はない。粉体の種類や一次粒子径、比表面積、吸油量等により異なるが、これらの比率を超えると易分散性は劣る傾向にある。
【0037】
(4)化粧料
本発明の親油化表面処理粉体を配合する化粧料としては、特に限定は無い。化粧料の剤型として、例えば、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、及びスプレー状等の従来公知の剤型を選択することができる。具体的には、メークアップ化粧料として、化粧下地、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、スティックファンデーション、プレストパウダー、フェイスパウダー、白粉、口紅、口紅オーバーコート、リップグロス、コンシーラー、頬紅、アイシャドー、アイブロウ、アイライナー、マスカラ、水性ネイルエナメル、油性ネイルエナメル、乳化型ネイルエナメル、エナメルトップコート、エナメルベースコート等、スキンケア化粧料としてはエモリエントクリーム、コールドクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、カーマインローション、液状洗顔料、洗顔フォーム、洗顔クリーム、洗顔パウダー、メイククレンジング、ボディグロス、日焼け止め又は日焼け用クリーム等の紫外線防御化粧料やローション等、頭髪化粧料としては、ヘアーグロス、ヘアクリーム、ヘアーシャンプー、ヘアリンス、ヘアカラー、ヘアブラッシング剤等、制汗化粧料としてはクリームやローション、パウダー、スプレータイプのデオドラント製品等、その他としてや乳液、石鹸、浴用剤、香水等を挙げることができる。
【0038】
また本発明の親油化表面処理粉体を配合する化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料等に用いられる顔料分散剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、皮膜形成剤、保湿剤、増粘剤、染料、防腐剤、顔料、香料等を適宜配合することができる。
また、使用感の向上や粉体の特性向上の目的で、本発明により得られた親油化表面処理粉体の2種以上の粉体を混合または複合化した粉体組成物、油性分散体等として化粧料に配合することも出来る。例えば、使用感を向上させる目的等では親油化処理タルクと顔料級酸化チタンを混合または複合化したり、紫外線遮蔽能を向上させる目的等で親油化処理微粒子酸化チタンと親油化処理顔料級酸化亜鉛とを混合または複合化しても良い。この時の混合や複合化の方法は特に制限は無く、例えば、前記混合分散機を使用して乾式や湿式にて混合または複合化する方法や湿式混合後スプレードライで混合または複合粉体を得る方法等が挙げられる。この際に化粧料に使用可能な液体や固体の成分を固着剤として添加しても構わない。
【0039】
更に、このようにして得られる表面処理無機粉体は、化粧料のみならずプラスチックの添加剤、インク、塗料、トナー(磁性粉)、化学繊維、包装材料、電子材料等の各種分野で広く使用される粉体としても適用可能である。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
ヘンシルミキサーに微粒子酸化チタン(石原産業社製:TTO−S−3)2kg投入して攪拌混合しながら、予め調整した表面処理剤のオクチルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製:Z−6341)300gと反応性オルガノシリコーン(信越化学製:X−24−9171)60gの混合液を添加し30分間攪拌した。次にジェットミル(ドイツアルピネ社製:100AFG型)にて粉砕圧4kg、分級回転数10000rpmの条件にて粉砕した後、熱風乾燥機にて110℃で9時間乾燥し、親油化表面処理粉体を得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1の微粒子酸化チタンを微粒子酸化亜鉛(テイカ社製:MZ−500)に代え、その他の製造条件を同一にして親油化表面処理粉体を得た。
【0043】
(実施例3)
微粒子酸化チタン(テイカ社製:MT−500SA)100gを脱イオン水/IPA=50/50の混合液1500mlに投入し、表面処理剤としてヘキシルトリエトキシシラン(信越化学社製:KBE−3063)8gとイソパルミチン酸6gを加え、サンドグラインダー(DYNO-Mill:1.4Lシルコニアベッセル&ブレード、0.5mmφジルコニアビーズを充填率85%)にて30分間循環により分散させた。この分散液を真空乾燥機にて減圧下100℃で7時間乾燥した後、ジェットミルにて粉砕圧5kg、分級回転数10000rpmの条件にて粉砕して親油化表面処理粉体を得た。
【0044】
(実施例4)
ヘンシルミキサーに酸化チタン(石原産業社製:CR−50)4kgを投入し攪拌混合しながら、予め調整した表面処理剤のメチルトリエトキシシラン(信越化学社製:KBE−13)600gと、反応性オルガノシリコーン(信越化学製:X−24−9171)120gと、IPA100ccの混合液を添加し、減圧下で30分間攪拌した。次に、ジェットミル(ドイツアルピネ社製:100AFG型)にて粉砕圧4kg、分級回転数8000rpmの条件にて粉砕した後、熱風乾燥機にて110℃で9時間乾燥し親油化表面処理粉体を得た。同様の方法にて、黄酸化鉄(チタン工業社製:イエローLL−100P)、赤酸化鉄(チタン工業社製:レッドR−516PS)、黒酸化鉄(チタン工業社製:ブラックBL−100P)の各々について表面処理して各親油化表面処理粉体を得た。
【0045】
(実施例5)
実施例4のジェットミルをアトマイザーに変更してその他の製造条件を同一にして各親油化表面処理粉体を得た。
【0046】
(実施例6)
ヘンシルミキサーにタルク(浅田製粉社製:JA−46R)4kgを投入し攪拌混合しながら、予め調整した表面処理剤のオクチルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製:Z−6341)200gと反応性オルガノシリコーン(信越化学製:X−24−9171)40gの混合液を添加し、20分間攪拌し熱風乾燥機にて120℃で8時間乾燥した後、ジェットミル(ドイツアルピネ社製:100AFG型)にて粉砕圧5kg、分級回転数5000rpmの条件にて粉砕して親油化表面処理粉体を得た。同様の方法にてセリサイト(三信鉱工社製:FSE)について製造し親油化表面処理粉体を得た。
【0047】
(比較例1)
実施例1の表面処理剤を、オクチルトリエトキシラン300gのみとしその他の製造条件を同一として表面処理粉体を得た。
【0048】
(比較例2)
実施例2の表面処理剤を、反応性オルガノシリコーン300gのみとしその他の製造条件を同一として表面処理粉体を得た。
【0049】
(比較例3)
特開2002−80748号公報記載の実施例1と実施例3、実施例4、実施例5、実施例6について、本発明の実施例で示す表面処理粉体の原料を使用して各マイブリッド処理粉体を得た。
【0050】
(試験・評価方法)
以下に実施例および比較例で製造した表面処理粉体について評価した。試験方法を以下に示す。なお、試験の評価系は液体系と粉体系の2水準とし、さらに各出発原料の一次粒子径により幾何光学的領域の一次粒子径を有する体質顔料の評価、ミー散乱領域の一次粒子径を有する着色顔料の評価、レイリー散乱領域の粒子径を有する微粒子粉体の評価の3つに分類した。以下に、「部」は「重量部」を意味する。
【0051】
(1)液体系での微粒子粉体の評価
シクロメチコン(信越化学工業社:KF995)48部とアルキル変性ポリエーテルシリコ−ン(信越化学工業社:KF−6038)2部をディスパーに投入し、回転数3000rpmで攪拌しながら表面処理粉体10部を投入し、更にディスパー回転数3000rpmで3分間攪拌した後、水40部を加え、更にディスパー回転数3000rpmで3分間攪拌し乳化物を調製した。この乳化物をバーコータ#3にてTAC透明フィルムに塗布し、室温下3時間乾燥後、SPFアナライザー(オプトメトリック社製SPF−290)にてin―vitroSPF値を測定し、分光光度計(島津製作所製 UV−3150)にて560nm透過率を測定した。
【0052】
(2)粉体系での微粒子粉体の評価
タルク(浅田製粉社:JA−46R)90gと表面処理粉体10gをジューサーミキサーにて10秒間混合攪拌した。次にスクワランを5g添加した後さらに10秒混合攪拌して評価試料を調製した。SPFアナライザーにてin―vitroSPF値を測定した。
【0053】
(3)液体系での着色顔料の評価
シクロメチコン(信越化学工業社:KF995)63部とアルキル変性ポリエーテルシリコ−ン(信越化学工業社:KF−6038)2部をディスパーに投入し、回転数3000rpmで攪拌しながら、表面処理粉体20部を投入し、更にディスパー回転数3000rpmで3分間攪拌した後、水15部を加え、更にディスパー回転数3000rpmで3分間攪拌し乳化物を調製した。この乳化物をバーコータ#3にて隠蔽力試験紙へ塗布し、室温下3時間乾燥後、明度(L*値)と彩度(C*値)の測色(日本電色社:SZ−Σ90)と光沢値(日本電色社:GC−Σ90)を測定した。なお、酸化チタン、黄酸化鉄、赤酸化鉄については隠ぺい力試験紙の白色面を測定し、黒酸化鉄については黒色面を測色した。測定値は小数点以下を四捨五入した。
【0054】
(4)粉体系での着色顔料の評価
タルク(浅田製粉社:JA−46R)95gと表面処理粉体5gをジューサーミキサーに投入し、10秒間混合攪拌して評価試料とした。酸化チタンの評価の場合は、前記配合に更に無処理黒酸化鉄を1g添加して混合した。各試料について明度と彩度を測色した。
【0055】
(5)液体系での体質顔料の評価
シクロメチコン(信越化学工業社:KF995)63部とアルキル変性ポリエーテルシリコ−ン(信越化学工業社:KF−6038)2部をディスパーに投入し、回転数3000rpmで攪拌しながら、表面処理粉体20部を投入し、更にディスパー回転数3000rpmで3分間攪拌した後、水15部を加えて、更にディスパー回転数3000rpmで3分間攪拌し乳化物を調製した。この乳化物をバーコータ#3にてTAC透明フィルムへ塗布し、室温下3時間乾燥後に、光沢値(日本電色社:GC−Σ90)を測定した。
【0056】
(6)粉体系での体質顔料の評価
赤酸化鉄(チタン工業社:R−516PS)3gと表面処理粉体97gをジューサーミキサーに投入し、10秒間混合攪拌した後明度と彩度を測色した。評価結果を以下に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から分かるように、本発明の親油化処理表面処理粉体はSPF値と透明性に優れ、処理される粉体と表面処理剤の配合比は、粉体100重量部に対して表面処理剤を1〜30重量部である。

【0059】
【表2】

【0060】
表2から分かるように、本発明の親油化処理表面処理微粒子粉体はSPF値に優れ、従来品より易分散性である。
【0061】
【表3】

【0062】
表3から分かるように、本発明の親油化処理表面処理顔料級粉体は着色力と光沢に優れ、従来品より易分散性である。

【0063】
【表4】

【0064】
表4から分かるように、本発明の親油化処理表面処理顔料級粉体は着色力に優れ、従来品より易分散性である。
【0065】
【表5】

【0066】
表5から分かるように、本発明の親油化処理表面処理体質顔料は光沢に優れ、従来品より易分散性である。

【0067】
【表6】

【0068】
表6から分かるように、本発明の親油化処理表面処理体質顔料は着色力に優れ、従来品より易分散性に優れる。
【0069】
(製造例)
製造例1:2WAYパウダーファンデーションの製造
表7に示す組成のパウダーファンデーションを下記の方法により製造した。
【0070】
【表7】

【0071】
製法:
上記成分(1)〜(5)をヘンシルミキサー混合した。これを高速ブレンダーに移し、成分(6)〜(10)を加熱混合し均一にしたものを加えて更に混合し均一にした。これを粉砕機に通し、フルイをかけ粒度を揃えた後、アルミ皿に表面プレス圧12MPaで圧縮成形して2WAYパウダーファンデーションを製造した。
【0072】
本発明の親油化表面処理粉体を配合した化粧料は、従来のものと比較して、使用感、化粧効果、化粧持続性に優れていた。

【0073】
製造例2:乳化型ファンデーションの製造
表8に示す組成のW/O型リキッドファンデーションを下記の方法により製造した。
【0074】
【表8】

【0075】
製法:
上記成分(7)〜(11)を予め混合し粉砕した。70℃にて成分(1)〜(6)を均一に溶解混合した油相に予め粉砕した成分(7)〜(11)の混合物を加えホモディスパーで均一に分散した。成分(12)〜(16)を70℃で均一に混合溶解した水相を前記油相に徐添し、ホモミキサーで均一分散後、冷却し成分(17)を加え乳化粒子を整えリキッドファンデーションを製造した。
【0076】
本発明の親油化表面処理粉体を配合した化粧料は、従来のものと比較して、使用感、化粧効果、化粧持続性に優れていた。
【0077】
製造例3:乳化型サンスクリーンクリームの製造
表9に示す組成の乳化型サンスクリーンクリームを下記の方法により製造した。
【0078】
【表9】

【0079】
(製法)
成分(1)〜(7)の油相成分を75℃で溶解した後、成分(8)を添加した。成分(9)〜(13)の水相成分を75℃で溶解し、均一化したものを油相成分に添加しホモミキサーで乳化した。最後に成分(14)を加え冷却しサンスクリーンクリームを製造した。
【0080】
本発明の親油化表面処理粉体を配合した化粧料のIn-vitro SPF値は23で従来品は17であった。また、本発明の親油化表面処理粉体を配合した化粧料は使用感、化粧効果、化粧持続性も優れていた。
【0081】
製造例4:UVカットパウダーファンデーションの製造
表10に示す組成のパウダーファンデーションを下記の方法により製造した。
【0082】
【表10】

【0083】
(製法)
上記成分(1)〜(6)を混合し粉砕機を通して粉砕した。これを高速ブレンダーに移し、成分(7)〜(11)を加熱混合し均一にしたものを加えて更に混合し均一にした。これを粉砕機に通し、フルイをかけ粒度を揃えた後、アルミ皿に表面プレス圧10MPaで圧縮成形してUVカットパウダーファンデーションを製造した。
【0084】
本発明の親油化表面処理粉体を配合した化粧料のIn-vitro SPF値は15で、従来品は7であった。また、本発明の親油化表面処理粉体を配合した化粧料は使用感、化粧効果、化粧持続性も優れていた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)にて示されるアルキルアルコキシシランと、(B)下記一般式(2)にて示される反応性オルガノシリコーンおよび炭素数が12〜22の飽和又は不飽和分岐脂肪酸(塩の形態にあるものも含む)から選ばれる1種の化合物または2種以上の化合物との混合物からなる表面処理剤で粉体を表面処理していることを特徴とする表面処理粉体。
【化1】

(式中、nは1〜18の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、a,bは1〜3の整数を示し、a+b=4である。)
【化2】

(式中、Rは全て相互に独立にそれぞれ炭素数1〜4の低級アルキル基又は水素原子を表しRはアミノ基、水素原子、水酸基及び炭素数1〜4の低級アルコキシ基の何れかを表し、pは1〜300の整数である。)

【請求項2】
前記表面処理剤が前記アルキルアルコキシシランと前記反応性オルガノシリコーンからなることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理粉体。

【請求項3】
前記 表面処理剤が前記アルキルアルコキシシランと前記分岐脂肪酸からなることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理粉体。

【請求項4】
前記一般式(1)中、nは1〜8であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表面処理粉体。

【請求項5】
前記一般式(2)中、pは2〜50であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表面処理粉体。

【請求項6】

前記(A):(B)の配合比率(重量)が1.0〜29.0部:29.0〜1.0部であることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の表面処理粉体。
【請求項7】
表面処理される前記粉体と前記表面処理剤の配合比は、粉体100重量部に対して表面処理剤を1〜30重量部であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の表面処理粉体。

【請求項8】
前記表面処理粉体を、さらにジェットミルによって粉砕処理をしたことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の表面処理粉体。

【請求項9】

前記表面処理粉体が化粧料に使用可能な表面処理粉体であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の表面処理粉体。

【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の表面処理粉体を配合した化粧料。


【公開番号】特開2010−241732(P2010−241732A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92709(P2009−92709)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(391024700)三好化成株式会社 (17)
【Fターム(参考)】