説明

易分解性芳香族ポリエステル繊維およびその製造方法および繊維構造体および繊維製品

【課題】芳香族ポリエステル繊維であって、自然環境中で分解しやすい易分解性芳香族ポリエステル繊維、およびその製造方法および繊維構造体および繊維製品を提供する。
【解決手段】例えば、エステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/またはエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を共重合した芳香族ポリエステルを含む芳香族ポリエステル繊維に酸性処理を施すことにより、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率を放置前の引張強さ対比70%以下とした後、必要に応じてスポーツウエアなどの繊維製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリエステル繊維であって、自然環境中で容易に分解する易分解性芳香族ポリエステル繊維、およびその製造方法および繊維構造体および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルからなる芳香族ポリエステル繊維は衣料や産業用途など広く用いられているが、芳香族ポリエステル繊維は自然環境中における耐久性が極めて高く容易に分解しないため、廃棄に際しては焼却する必要があった。
【0003】
また、近年では、自然環境中で容易に分解する繊維として、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルからなる脂肪族ポリエステル繊維が注目されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、脂肪族ポリエステル繊維は、通常、芳香族ポリエステル繊維に比べて引張り強さが低いため、展開する用途が限定されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−305234号公報
【特許文献2】特開2000−220030号公報
【特許文献3】特開2002−155437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、芳香族ポリエステル繊維であって、自然環境中で分解しやすい易分解性芳香族ポリエステル繊維、およびその製造方法および繊維構造体および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のエステル形成性スルホン酸金属塩化合物またはエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を共重合した芳香族ポリエステルを含む芳香族ポリエステル繊維に酸性処理を施すことにより、自然環境中で分解しやすい易分解性芳香族ポリエステル繊維が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「芳香族ポリエステル繊維であって、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、放置前の引張強さ対比70%以下であることを特徴とする易分解性芳香族ポリエステル繊維。」が提供される。
【0008】
その際、芳香族ポリエステル繊維を形成する芳香族ポリエステルが、芳香族ポリエステルを構成する全酸成分に対して、下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を0.1モル%以上共重合した芳香族ポリエステルであることが好ましい。
【0009】
式(1)
【化1】

(式中、A1は芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、Mは金属、mは正の整数を示す。)
【0010】
式(2)
【化2】

(式中、A2は芳香族基又は脂肪族基、X3はエステル形成性官能基、X4はX3と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、R1、R2、R3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数を示す。)
【0011】
また、前記芳香族ポリエステル繊維が仮撚捲縮加工糸であることが好ましい。また、前記芳香族ポリエステル繊維が、総繊度10〜200dtex、単繊維繊度4.0dtex以下のマルチフィラメントであることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の易分解性芳香族ポリエステル繊維を含む、織物、編物、不織布、紙、紡績糸、および3次元構造体からなる群より選択される繊維構造体が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記の易分解性芳香族ポリエステル繊維を含む、スポーツウエア、アウトドアウエア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシート表皮材、自動車用フロアマット、吸音材、詰綿、衛生材料、医療材料、包装材料、農業資材、防草シート、人工藻場材、育苗マット、土嚢袋、土木資材、電気・電子部品、建築用シート、化粧製品、美容製品、フェイスパック、マスク、釣り糸、魚網、使い捨て資材、テイバッグ、ワイピングクロス、研磨布、布団側地、布団カバー、枕カバー、ベッドカバー、タオルケット、クッションカバー、タオル、フィルター、工業用ブラシ、歯ブラシ、および化粧筆からなる群より選ばれる繊維製品が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を共重合した芳香族ポリエステルを含む芳香族ポリエステル繊維に酸性処理を施す、前記の易分解性芳香族ポリエステル繊維の製造方法が提供される。
【0014】
式(1)
【化3】

(式中、A1は芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、Mは金属、mは正の整数を示す。)
【0015】
式(2)
【化4】

(式中、A2は芳香族基又は脂肪族基、X3はエステル形成性官能基、X4はX3と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、R1、R2、R3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数を示す。)
【0016】
その際、前記酸性処理を温度70℃以上の処理浴で行うことが好ましい。また、前記酸性処理を、pHが5.0以下の処理浴で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、芳香族ポリエステル繊維であって、自然環境中で分解しやすい易分解性芳香族ポリエステル繊維、およびその製造方法および繊維構造体および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の易分解性芳香族ポリエステル繊維において、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、放置前の引張強さ対比70%以下(より好ましくは50%以下、特に好ましくは0.5〜20%)である。本発明の易分解性芳香族ポリエステル繊維はかかる特性を有することにより、自然環境中で分解しやすくなる。かかる引張強さ保持率が70%よりも大きい場合は、自然環境中で分解しにくく好ましくない。
【0019】
ここで、前記引張強さ保持率は、下記式により定義するものとする。
引張強さ保持率(%)=ST1/ST0×100
ただし、ST0は温度70℃、湿度90%RHの環境下に放置する前の引張り強さ(N/dtex)であり、ST1は温度70℃、湿度90%RHの環境下に放置した後の引張り強さ(N/dtex)であり、引張り強さはJIS L1013(1998) 7.5により測定するものとする。
【0020】
ここで、前記芳香族ポリエステル繊維を形成する芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートまたはまたはこれらに第3成分を共重合したポリマーが好ましい。すなわち、前記芳香族ポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレンテレングリコール、テトラメチレングリコールなどを主たるグリコール成分とするポリアルキレンテレフタレート系ポリエステル、またはこれに第3成分を共重合したポリマーが好ましい。
【0021】
また、前記芳香族ポリエステルは、特許第4202361号公報に記載されているような、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルや、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルでもよい。また、前記芳香族ポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルでもよいし、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られた芳香族ポリエステルでもよい。
【0022】
また、前記芳香族ポリエステルは、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えた芳香族ポリエステルであってもよく、および/またはグリコール成分の一部を他のジオール化合物で置換えた芳香族ポリエステルであってもよい。
【0023】
その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。
【0024】
また、上記グリコール以外のジオール化合物としては例えばシクロヘキサン−1,4−メタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0025】
さらに、芳香族ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸のごときポリカルボン酸、グリセリン、トリメチp−ルプロパン、ペンタエリスリトールのごときポリオールなどを使用することができる。
【0026】
前記芳香族ポリエステルは任意の方法によって合成される。代表的な芳香族ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。
【0027】
前記芳香族ポリエステルにおいて、固有粘度が0.15〜1.5の範囲内であることが好ましい。芳香族ポリエステルの固有粘度が0.15よりも小さいと、芳香族ポリエステル繊維の引張強さが低下するおそれがある。逆に、芳香族ポリエステルの固有粘度が1.5よりも大きいと芳香族ポリエステル繊維を製造する際の生産性が低下するおそれがある。
【0028】
また、前記芳香族ポリエステルに硫黄(S)が含まれていると、後記のような酸性処理により芳香族ポリエステル繊維の温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、放置前の引張強さ対比70%以下とすることができ好ましい。その際、硫黄(S)は全芳香族ポリエステル重量に対して0.03以上(より好ましくは0.03〜1.0重量%)含まれていることが好ましい。全芳香族ポリエステルに含まれる硫黄の量が該範囲よりも小さいと、後記のような酸性処理を施しても全芳香族ポリエステル繊維のpHが7.0未満にならないおそれがある。
【0029】
前記芳香族ポリエステルに硫黄(S)を含有させる方法としては、前記芳香族ポリエステルに、エステル形成性スルホン酸基含有化合物を共重合させることが好ましい。かかるエステル形成性スルホン酸基含有化合物としてはエステル形成性官能基を有するスルホン酸基含有化合物であれば特に限定する必要はなく、下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を好ましいものとしてあげることができる。
【0030】
式(1)
【化5】

【0031】
式(2)
【化6】

【0032】
上記一般式(1)において、A1は芳香族基または脂肪族基を示し、好ましくは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基または炭素数10以下の脂肪族炭化水素基である。特に好ましいA1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、とりわけベンゼン環である。X1はエステル形成性官能基を示し、具体例として下記式(3)等をあげることができる。
【0033】
式(3)
【化7】

ただし、R′は低級アルキル基またはフェニル基、aおよびdは1以上の整数、bは2以上の整数である。
【0034】
また、上記一般式(1)において、X2はX1と同一もしくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子を示し、なかでもエステル形成性官能基であることが好ましい。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、mは正の整数である。なかでもMがアルカリ金属(例えばリチウムまたはナトリウムまたはカリウム)であり、かつmが1であるものが好ましい。
【0035】
上記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物の好ましい具体例としては、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸リチウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸ナトウリム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸リチウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシスフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,5−ビス(ヒドロエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−ナトリウムスルホコハク酸などをあげることができる。上記エステル形成性スルホン酸金属塩化合物は1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0036】
上記一般式(2)において、A2は芳香族基または脂肪族基を示し、上記一般式(1)におけるA1の定義と同じである。X3はエステル形成性官能基を示し、上記一般式(1)におけるX1の定義と同じであり、X4はX3と同一もしくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子を示し、上記一般式(1)におけるX2の定義と同じである。R1、R2、R3およびR4はアルキル基およびアリール基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を示す。nは正の整数であり、なかでも1であるものが好ましい。
【0037】
上記エステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物の好ましい具体例としては、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3―カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3―カルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3―カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3―カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジ(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジ(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3―(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3―(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、4―ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、2,6―ジカルボキシナフタレン―4―スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、α―テトラブチルホスホニウムスルホコハク酸等をあげることができる。上記エステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩は1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0038】
前記ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0039】
上記エステル形成性スルホン酸基含有化合物を芳香族ポリエステルに共重合するには、前述した芳香族ポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で、好ましくは第2段階の反応の初期以前の任意の段階で添加すればよい。2種以上併用する場合、それぞれの添加時期は任意でよく、両者を別々に添加しても、予め混合して同時に添加してもよい。
【0040】
また、前記芳香族ポリエステルは特開2009−161693号公報に記載されているような、常圧カチオン可染性ポリエステルであってもよい。
前記芳香族ポリエステル繊維の繊維形態は特に限定されないが、繊維の表面積を大きくして自然環境中で容易に分解させる上で、短繊維(紡績糸)よりも長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。
【0041】
前記芳香族ポリエステル繊維において、単繊維の断面形状は特に限定されず、丸断面、三角、扁平、くびれ部が3箇所以上のくびれ付扁平、丸中空、三角中空、四角中空、H型、W型、フィン付断面など異型断面いずれでもよい。また、かかるポリエステル繊維には、通常の空気加工、仮撚捲縮加工、撚糸が施されていてもさしつかえない。特に、ポリエステル繊維の嵩を高めて繊維の表面積を大きくして自然環境中で容易に分解させる上で仮撚捲縮加工を施すことは好ましいことである。その際、仮撚捲縮加工糸の捲縮率としては1%以上であることが好ましい。また、国際公開第2008/001920号パンフレットに記載されているような、S方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とを複合させることにより得られた、低トルクの複合糸であってもよい。
【0042】
また、前記芳香族ポリエステル繊維において、単繊維繊度およびフィラメント数としては、繊維の表面積を大きくして自然環境中で容易に分解させる上で、単繊維繊度は小さいほどよく、フィラメント数は大きいほどよい。単繊維繊度としては4.0dtex以下(より好ましくは0.0001〜2.5dtex、さらに好ましくは0.001〜1.5dtex)であることが好ましい。また、フィラメント数30〜50000本(より好ましくは30〜200本)であることが好ましい。また、特公平7−63438号公報に記載されているような極細繊維や、特開2009−024278号公報に記載されているような超極細繊維であってもよい。前記芳香族ポリエステル繊維の総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との掛け算)としては、優れた風合を得る上で10〜200dtexであることが好ましい。
【0043】
本発明の芳香族ポリエステル繊維は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。すなわち、エステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/またはエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を共重合した、前記のポリエステルを含むポリエステル繊維に酸性処理を施す。かかる方法によれば、エステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/またはエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物のイオン部がプロトン化され、または、繊維中の酸性基量が増加することにより、自然環境中で分解しやすくなる。
【0044】
芳香族ポリエステル繊維に酸性処理を施す方法としては、例えば、前記芳香族ポリエステル繊維を酢酸やりんご酸などによりpHが5.0以下(好ましくは2.0〜5.0)に調製された浴中に温度70℃以上(好ましくは80〜130℃、特に好ましくは90〜130℃)、時間20〜40分間で浸漬するとよい。その際、芳香族ポリエステル繊維を糸条の状態で浴中に浸漬してもよいし、芳香族ポリエステル繊維を用いて布帛を得た後、布帛の状態で浴中に浸漬してもよい。また、使用する設備としては、公知の液流染色機を用いるとよい。
【0045】
ここで、酸性処理後の芳香族ポリエステル繊維において、酸性基量が繊維中の全ポリエステル重量に対して30eq/T以上(より好ましくは50〜300eq/T)であることが好ましい。酸性基量は、ベンジルアルコールを用いてポリエステルを分解し、その分解生成物を水酸化ナトリウム水溶液でマイクロビュレットを用いて滴定し測定される量である。酸性基量が30eq/T未満であると、自然環境中で分解しにくくなるおそれがある。
【0046】
また、芳香族ポリエステル繊維には、前記酸性処理の前および/または後の工程において、常法の染色加工、精練、リラックス、プレセット、ファイナルセットなどの各種加工を施してもよい。さらには、起毛加工、撥水加工、カレンダー加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0047】
なかでも、前記酸性処理の後の工程において、芳香族ポリエステル繊維に親水加工(吸汗加工)を施すと、さらに自然環境中で分解しやすくなり好ましい。
ここで、かかる親水加工としては、PEGジアクリレートおよびその誘導体やポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの親水化剤を染色時に同浴加工などにより、布帛重量に対して0.25〜0.50重量%付着させることが好ましい。
【0048】
かくして得られた芳香族ポリエステル繊維は、自然環境中で分解しやすくなる。そのメカニズムはまだ十分には解明されていないが、芳香族ポリエステル繊維が酸性化されることと何らかの関係があるのではないかと推定している。
【0049】
次に、本発明の繊維構造体は前記の芳香族ポリエステル繊維を用いてなる、織物、編物、不織布、紙、紡績糸、および3次元構造体からなる群より選択される繊維構造体である。かかる繊維構造体は前記の芳香族ポリエステル繊維を用いているので、自然環境中で分解しやすい。
【0050】
ここで、織物や編物の組織は特に限定されない。例えば、織物の織組織では、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロード、タオル、ベロア等のたてパイル織、別珍、よこビロード、ベルベット、コール天等のよこパイル織などが例示される。なお、これらの織組織を有する織物は、レピア織機やエアージェット織機など通常の織機を用いて通常の方法により製織することができる。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する織物でもよい。
【0051】
また、編物の種類では、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が好ましく例示される。なお、製編は、丸編機、横編機、トリコット編機、ラッシェル編機等など通常の編機を用いて通常の方法により製編することができる。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する編物でもよい。
前記繊維構造体が布帛の場合、布帛の目付としては50g/m以上(より好ましくは100〜250g/m)であることが好ましい。
【0052】
また、かかる布帛が織物である場合には、経糸のカバーファクターおよび緯糸のカバーファクターがいずれも500〜5000(さらに好ましくは、500〜2500)であることが好ましい。なお、本発明でいうカバーファクターCFは下記の式により表されるものである。
経糸カバーファクターCF=(DWp/1.1)1/2×MWp
緯糸カバーファクターCF=(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWは経糸総繊度(dtex)、MWは経糸織密度(本/2.54cm)、DWは緯糸総繊度(dtex)、MWは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0053】
次に、本発明の繊維製品は、前記芳香族ポリエステル繊維を含む、スポーツウエア、アウトドアウエア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシート表皮材、自動車用フロアマット、吸音材、詰綿、衛生材料、医療材料、包装材料、農業資材、防草シート、人工藻場材、育苗マット、土嚢袋、土木資材、電気・電子部品、建築用シート、化粧製品、美容製品、フェイスパック、マスク、釣り糸、魚網、使い捨て資材、テイバッグ、ワイピングクロス、研磨布、布団側地、布団カバー、枕カバー、ベッドカバー、タオルケット、クッションカバー、タオル、フィルター、工業用ブラシ、歯ブラシ、および化粧筆からなる群より選ばれる繊維製品である。
かかる繊維製品は前記の芳香族ポリエステル繊維を含むので、自然環境中で分解しやすい。
【0054】
なお、前記の芳香族ポリエステル繊維を形成する芳香族ポリエステルは自然環境中で分解しやすいという性質を有するので、繊維に限らず、射出成型品、押し出し成型品、真空成型、圧空成型品、などにも使用可能である。具体的には、ペレット、繊維、繊維と他の材料との複合体である繊維構造体、フィルム、シート、3次元構造体などが含まれる。かかる成形品の用途としては、飲料用ボトル製品、ディスプレイ用フィルム材料(液晶、プラズマ、有機EL)、カード(ICカード、IDカード、RFIDなど)、自動車用フィルム材料(内外装、電子部品)、飲料用・食品用フィルムラミネート缶、シュリンク包装、レトルト・パウチ、環境対応型プラスチックトレー用材料、半導体・医療材料・光触媒応用フィルム、美容用フェイスマスク、タッチパネル、メンブレンスイッチ、各種ハウジング、歯車、ギア等の電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装、外装部品等)、日用部品などがあげられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。各測定値は以下の方法で測定される値である。
【0056】
(1)硫黄(S)量(wt%)
ポリエステル繊維5grを加熱したホットプレート上で溶融させ、平板プレートを成形した。次いでリガク社蛍光X線分光分析装置ZSX100e型を用いて、蛍光X線法により成形したプレート中のイオウ原子を定量した。
【0057】
(2)酸性基量(eq/T)
酸性処理を施した後の芳香族ポリエステル繊維を、ベンジルアルコールを用いて分解し、この分解物を0.02Nの水酸化ナトリウム水溶液でフェノールレッドを指示薬として滴定し、1ton当たりの等量を求めた。
【0058】
(3)固有粘度
酸性処理を施した後の芳香族ポリエステル繊維を100℃、60分間、オルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を35℃でウデローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
【0059】
(4)布帛の目付
JIS L 1096により布帛の目付(g/m)を測定した。
【0060】
(5)芳香族ポリエステル繊維の引張強さ保持率
編地から芳香族ポリエステル繊維を抜き取り、下記式により引張強さ保持率を算出した。
引張強さ保持率(%)=ST1/ST0×100
ただし、ST0は温度70℃、湿度90%RHの環境下に放置する前の引張り強さ(N/dtex)であり、ST1は温度70℃、湿度90%RHの環境下に放置した後の引張り強さ(N/dtex)であり、引張り強さはJIS L1013(1998) 7.5により測定するものとする。
【0061】
(6)捲縮率
供試糸条を、周長が1.125mの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が3333dtexのかせを調製した。前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に6gの初荷重を付加し、さらに600gの荷重を付加したときのかせの長さL0を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に30分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、600gの荷重をかけ、1分後にかせの長さL1aを測定し、その後かせから荷重を外し、1分後にかせの長さL2aを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率(CP)を、下記式により算出した。
CP(%)=((L1a−L2a)/L0)×100
【0062】
[実施例1]
三角断面の吐出孔を有する紡糸口金を使用し、ポリエチレンテレフタレート(芳香族ポリエステル)を構成する全酸成分に対してエステル反応性スルホン酸基含有化合物として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.5モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸、延伸した後、公知の仮撚捲縮加工を施すことにより、捲縮率13%のポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度84dtex/72fil、単繊維断面形状:三角断面)を得た。
次いで、28G丸編機を使用し、前記ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度84dtex/72fil)のみを用いてスムース丸編地組織を有する編地を編成した。
次いで、該編地を、酢酸によりpHが4.8に調製された浴中に温度130℃、時間30分間で浸漬することにより、酸性処理を施した。
次いで、該編地に、染色時に浴中吸汗処理を伴う常法の染色仕上げ加工を施した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体)を浴中で編地の重量に対して0.30重量%編地に付着させることにより浴中吸汗処理を行った。
得られた編地において、目付は200g/mであった。また、かかる編地から抜き取った芳香族ポリエステル繊維において、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、表1に示すように低いものであった。
次いで、該編地を用いてスポーツウエア(Tシャツ)を縫製して自然環境中に放置したところ分解しやすいものであった。
【0063】
[実施例2]
丸断面の吐出孔を有する紡糸口金を使用し、ポリエチレンテレフタレートを構成する全酸成分に対してエステル反応性スルホン酸基含有化合物として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2.5モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸、延伸した後、公知の仮撚捲縮加工を施すことにより、捲縮率15%のポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度84dtex/72fil、単繊維断面形状:丸断面)を得た。
次いで、28G丸編機を使用し、前記ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度84dtex/72fil)のみを用いてスムース丸編地組織を有する編地を編成した。
次いで、該編地を、酢酸によりpHが4.8に調製された浴中に温度130℃、時間30分間で浸漬することにより、酸性処理を施した。
次いで、該編地に、染色時に浴中吸汗処理を伴う常法の染色仕上げ加工を施した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体)を浴中で編地の重量に対して0.30重量%編地に付着させることにより浴中吸汗処理を行った。
得られた編地において、目付は200g/mであった。また、かかる編地から抜き取った芳香族ポリエステル繊維において、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、表1に示すように低いものであった。
次いで、該編地を用いてスポーツウエア(Tシャツ)を縫製して自然環境中に放置したところ分解しやすいものであった。
【0064】
[比較例1]
実施例1において、酸性処理を施さないこと以外は実施例1と同様にした。得られた編地において、目付は200g/mであった。また、かかる編地から抜き取った芳香族ポリエステル繊維において、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、表1に示すように高いものであった。
次いで、該編地を自然環境中に放置したところ分解しにくいものであった。
【0065】
[比較例2]
実施例2において、通常のポリエチレンテレフタレート(第3成分を共重合していないポリエチレンテレフタレート)仮撚捲縮加工糸(総繊度84dtex/72fil)のみを用いてスムース丸編地組織を有する編地を編成すること以外は実施例2と同様にした。
得られた編地において、目付は200g/mであった。また、かかる編地から抜き取った芳香族ポリエステル繊維において、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、表1に示すように高いものであった。
次いで、該編地を自然環境中に放置したところ分解しにくいものであった。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、芳香族ポリエステル繊維であって、自然環境中で分解しやすい易分解性芳香族ポリエステル繊維、およびその製造方法および繊維構造体および繊維製品が提供され、これらは廃棄の際に焼却の必要がなく、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステル繊維であって、温度70℃、湿度90%RHの環境下に168時間放置した後の引張強さ保持率が、放置前の引張強さ対比70%以下であることを特徴とする易分解性芳香族ポリエステル繊維。
【請求項2】
芳香族ポリエステル繊維を形成する芳香族ポリエステルが、芳香族ポリエステルを構成する全酸成分に対して、下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を0.1モル%以上共重合した芳香族ポリエステルである、請求項1に記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維。
式(1)
【化1】

(式中、A1は芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、Mは金属、mは正の整数を示す。)
式(2)
【化2】

(式中、A2は芳香族基又は脂肪族基、X3はエステル形成性官能基、X4はX3と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、R1、R2、R3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数を示す。)
【請求項3】
芳香族ポリエステル繊維が仮撚捲縮加工糸である、請求項1または請求項2に記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維。
【請求項4】
芳香族ポリエステル繊維が、総繊度10〜200dtex、単繊維繊度4.0dtex以下のマルチフィラメントである、請求項1〜3のいずれかに記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維を含む、織物、編物、不織布、紙、紡績糸、および3次元構造体からなる群より選択される繊維構造体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維を含む、スポーツウエア、アウトドアウエア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシート表皮材、自動車用フロアマット、吸音材、詰綿、衛生材料、医療材料、包装材料、農業資材、防草シート、人工藻場材、育苗マット、土嚢袋、土木資材、電気・電子部品、建築用シート、化粧製品、美容製品、フェイスパック、マスク、釣り糸、魚網、使い捨て資材、テイバッグ、ワイピングクロス、研磨布、布団側地、布団カバー、枕カバー、ベッドカバー、タオルケット、クッションカバー、タオル、フィルター、工業用ブラシ、歯ブラシ、および化粧筆からなる群より選ばれる繊維製品。
【請求項7】
下記一般式(1)で表わされるエステル形成性スルホン酸金属塩化合物および/または下記一般式(2)で表わされるエステル形成性スルホン酸ホスホニウム塩化合物を共重合した芳香族ポリエステルを含む芳香族ポリエステル繊維に酸性処理を施す、請求項1に記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維の製造方法。
式(1)
【化3】

(式中、A1は芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、Mは金属、mは正の整数を示す。)
式(2)
【化4】

(式中、A2は芳香族基又は脂肪族基、X3はエステル形成性官能基、X4はX3と同一
もしくは異なるエステル形成性官能基または水素原子、R1、R2、R3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数を示す。)
【請求項8】
前記酸性処理を温度70℃以上の処理浴で行う、請求項7に記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項9】
前記酸性処理を、pHが5.0以下の処理浴で行う、請求項7または請求項8に記載の易分解性芳香族ポリエステル繊維の製造方法。

【公開番号】特開2012−112049(P2012−112049A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259066(P2010−259066)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】