説明

易剥離封止材、易剥離封止シートおよび封止方法

【課題】対象物を確実に封止しながら、低温で確実に発泡でき、それによって形成される発泡体を対象物から確実に剥離することのできる封止方法、その方法に用いられる易剥離封止シート、および、それを形成するための易剥離封止材を提供すること。
【解決手段】樹脂と、中実のマトリクス樹脂に熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有し、ナイロン6板に対するせん断接着力が0.050MPa以上である易剥離封止材から形成される易剥離封止シート1を対象物4に貼着することにより、対象物4を封止し、次いで、易剥離封止シート1を発泡させて、発泡後のナイロン6に対するせん断接着力が0.030MPa以下である発泡体5を形成して、発泡体5を対象物4から剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易剥離封止材、易剥離封止シートおよび封止方法、詳しくは、対象物の封止後に剥離する封止方法、その方法に用いられる易剥離封止シート、および、それを形成するための易剥離封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
封止材は、対象物に貼着されることにより、対象物を封止する。近年、そのような封止材を、対象物の使用後に、対象物から剥離して、例えば、対象物を回収して再利用したり、あるいは、封止材とは別に、対象物を廃棄することが実施されている。
【0003】
そのような封止材として、例えば、発泡剤を含有する架橋性ポリマーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、架橋性ポリマーを基材に密着状に積層した後、150℃のオーブンに投入して、架橋性ポリマーを発泡させて発泡体を形成し、続いて、形成された発泡体を、基材から剥離して回収している。
【0004】
また、特許文献1の架橋性ポリマーにおいて、発泡剤として、熱膨張性中空球体が用いられており、かかる熱膨張性中空球体は、ポリ塩化ビニリデンなどのポリマーからなる殻(シェル)と、その殻に内包される低沸点炭化水素(コア)とを含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−212900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1の架橋性ポリマーを発泡させるには、加熱によって、低沸点炭化水素(コア)を熱膨張させるとともに、殻(シェル)を溶融または軟化させる必要がある。殻を十分に溶融または軟化させるためには、架橋性ポリマーを高温で加熱する必要がある。
【0007】
そのため、そのような架橋性ポリマーに封止される対象物には、十分な耐熱性が必要とされる一方、かかる対象物における耐熱性が不十分であれば、そのような対象物(例えば、プラスチックなど)の保護の観点から、低温で加熱する必要がある。
【0008】
そうすると、架橋性ポリマーの十分な発泡、さらには、それに基づく架橋性ポリマー(発泡体)の基材からの剥離を確実に実施することができないという不具合がある。
【0009】
本発明の目的は、対象物を確実に封止しながら、低温で確実に発泡でき、それによって形成される発泡体を対象物から確実に剥離することのできる封止方法、その方法に用いられる易剥離封止シート、および、それを形成するための易剥離封止材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の易剥離封止材は、樹脂と、中実のマトリクス樹脂に熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子とを含有し、発泡前のナイロン6板に対するせん断接着力が、0.050MPa以上であり、発泡後のナイロン6板に対するせん断接着力が、0.030MPa以下であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の易剥離封止材では、発泡倍率が、5倍以上であることが好適である。
【0012】
また、本発明の易剥離封止材は、140℃以下の加熱で発泡することが好適である。
【0013】
また、本発明の易剥離封止材では、前記樹脂が、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることが好適である。
【0014】
また、本発明の易剥離封止シートは、上記した易剥離封止材がシート状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の封止方法は、上記した易剥離封止シートを対象物に貼着することにより、前記対象物を封止する工程、および、前記易剥離封止シートを発泡させて発泡体を形成して、前記発泡体を前記対象物から剥離する工程を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の易剥離封止材から形成される本発明の易剥離封止シートでは、発泡性樹脂粒子において、熱膨張性物質が中実の樹脂に含有されているので、比較的穏やかな条件で、熱膨張性物質を膨張させることができる。そのため、樹脂を確実に発泡させることができる。
【0017】
そして、易剥離封止シートを形成するための易剥離封止材の発泡前のせん断接着力が、特定の下限値以上であるので、易剥離封止シートを対象物に確実に貼着でき、易剥離封止シートによって対象物を確実に封止することができる。
【0018】
また、易剥離封止シートを形成するための易剥離封止材の発泡後のせん断接着力が、特定の上限値以下であるので、発泡体を対象物から確実に剥離することができる。
【0019】
そのため、本発明の封止方法では、易剥離封止シートによって対象物を確実に封止することができながら、封止剥離用樹脂シートを発泡させて発泡体を確実に形成して、発泡体を対象物から確実に剥離することができる。
【0020】
その結果、対象物の使用時には、対象物を易剥離封止シートによって確実に封止できながら、対象物の使用後には、対象物と発泡体とを確実に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の封止方法の一実施形態を説明するための断面図であり、(a)は、封止剥離用樹脂シートと、対象物とを用意する工程、(b)は、対象物を易剥離封止シートによって封止する工程、(c)は、易剥離封止シートを発泡させる工程、(d)は、発泡体を対象物から剥離する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の易剥離封止材は、樹脂と、発泡性樹脂粒子とを含有している。
【0023】
樹脂としては、例えば、ゴム、熱可塑性樹脂(ゴムを除く)、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0024】
ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ポリイソブチレンゴム(PIB)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリアミド系ゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルゴム、ポリスルフィドゴムなどの合成ゴム、例えば、天然ゴムなどが挙げられる。
【0025】
ゴムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0026】
ゴムのうち、好ましくは、合成ゴム、さらに好ましくは、PIB、EPDMが挙げられる。
【0027】
PIBは、イソブチレン(イソブテン)の重合により得られる合成ゴムである。
【0028】
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエンの共重合により得られる合成ゴムであり、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)に、さらにジエンを共重合させることにより得られる。
【0029】
ジエンとしては、例えば、5−エチリデン−5−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。好ましくは、5−エチリデン−5−ノルボルネンが挙げられる。
【0030】
EPDMのジエン含量は、例えば、1〜20質量%、好ましくは、3〜10質量%である。
【0031】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーを含み、例えば、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレートなどが挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0035】
上記した樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0036】
樹脂の100℃におけるムーニー粘度は、例えば、0.5〜150ML1+4、好ましくは、1〜100ML1+4である。
【0037】
樹脂の重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)は、例えば、1,000〜1,000,000、好ましくは、10,000〜100,000である。
【0038】
また、樹脂の密度は、例えば、0.8〜2.1g/cm、好ましくは、0.85〜2.0g/cmである。
【0039】
上記した樹脂のうち、好ましくは、ゴムが挙げられる。
【0040】
樹脂の配合割合は、易剥離封止材に対して、例えば、10〜90質量%、好ましくは、10〜50質量%である。
【0041】
発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂マトリクスに、熱膨張性物質が含有(含浸)されている。
【0042】
樹脂マトリクスは、熱膨張性物質を均一に含有でき、さらには、加熱によって硬化しにくい樹脂からなり、そのような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、上記した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
【0044】
熱可塑性樹脂のうち、好ましくは、スチレン系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0045】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系モノマーを含有するモノマーを重合させることにより得られるスチレン系重合体(スチレン系ホモポリマー)である。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、および、α−メチルスチレン、環ハロゲン化スチレン、環アルキル化スチレン、2−ビニルトルエン(o−メチルスチレン)、3−ビニルトルエン(m−メチルスチレン)、4−ビニルトルエン(p−メチルスチレン)などのスチレン誘導体などが挙げられる。これらスチレン系モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。スチレン系モノマーとして、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0046】
スチレン系重合体として、好ましくは、ポリスチレン(ポリスチレンホモポリマー)が挙げられる。
【0047】
また、スチレン系樹脂としては、例えば、上記したスチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合可能な共重合性モノマーとのスチレン系共重合体(スチレン系コポリマー)も挙げられる。
【0048】
共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)と、炭素原子1〜8個を有するアルコールとのエステル(つまり、(メタ)アクリレート)、ジメチルフマレート、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニル、エチレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。共重合性モノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、ブタジエンが挙げられる。
【0049】
スチレン系共重合体として、好ましくは、(メタ)アクリレート−スチレン共重合体(MS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などが挙げられる。スチレン系共重合体として、さらに好ましくは、MS、ASが挙げられる。
【0050】
MSは、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、(メタ)アクリル酸メチル含量が、例えば、10〜60質量%である。
【0051】
ASは、アクリロニトリルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、アクリロニトリル含量が、例えば、10〜60質量%である。
【0052】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル(つまり、ポリアクリル酸メチルおよび/またはポリメタクリル酸メチル)、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルが挙げられる。
【0053】
樹脂マトリクスは、中実(つまり、中空ではない)形状をなし、その密度は、例えば、0.9〜2.0g/cm、好ましくは、1.0〜1.5g/cmである。
【0054】
また、樹脂マトリクスのガラス転移温度は、例えば、50〜110℃、好ましくは、80〜90℃である。ガラス転移温度は、DMA法にて測定される。
【0055】
熱膨張性物質は、加熱により膨張する物質であって、具体的には、後述する特定の温度で膨張する、つまり、気化(蒸発あるいは沸騰)する物質であって、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、不燃性ガスなどが挙げられる。
【0056】
炭化水素としては、例えば、飽和炭化水素、不飽和炭化水素が挙げられる。炭化水素として、好ましく、飽和炭化水素が挙げられる。
【0057】
飽和炭化水素としては、例えば、直鎖状アルカン、分枝状アルカン、シクロアルカンなどが挙げられる。
【0058】
直鎖状アルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数1〜7の直鎖状アルカン(脂肪族炭化水素)が挙げられる。
【0059】
分枝状アルカンとしては、例えば、2−メチルプロパン(イソブタン)、2−メチルブタン(イソペンタン)、2,2−ジメチルプロパン(ネオペンタン)、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2,4−ジメチルペンタンなどの炭素数4〜7の分岐状アルカンが挙げられる。
【0060】
シクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの炭素数3〜7のシクロアルカン(脂環族炭化水素)が挙げられる。
【0061】
飽和炭化水素として、好ましくは、直鎖状アルカンが挙げられる。
【0062】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン(CHCl)などのクロロ炭化水素、例えば、ジフルオロメタン(CH)などのフルオロ炭化水素、例えば、フロン22(商標、CHClF)、フロン12(商標、CCl)、フロン113(商標、CClFCClF)などのクロロフルオロ炭化水素などが挙げられる。
【0063】
不燃性ガスとしては、例えば、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0064】
これら熱膨張性物質のうち、好ましくは、炭化水素が挙げられる。
【0065】
熱膨張性物質の沸点は、例えば、−160〜120℃、好ましくは、−50〜100℃、さらに好ましくは、−5〜70℃である。
【0066】
発泡性樹脂粒子は、上記した樹脂マトリクスのモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。あるいは、上記した樹脂マトリクスのモノマーを、溶媒の不存在下で、かつ、熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。
【0067】
好ましくは、樹脂マトリクスのモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させる。
【0068】
溶媒としては、例えば、水などの水性溶媒、例えば、トルエンなどの有機溶媒などが挙げられる。好ましくは、水性溶媒が挙げられる。
【0069】
具体的には、発泡性樹脂粒子は、モノマーを、分散剤が配合され、かつ、熱膨張性物質が吹き込まれた(流入された)水性溶媒中に、水分散させながら、懸濁重合させることにより得る。上記した重合方法によれば、樹脂マトリクスに熱膨張性物質を均一に含有させることができる。
【0070】
このようにして得られる発泡性樹脂粒子は、中実の球状(ビーズ状)または中実のペレット状、好ましくは、中実のビーズ状に形成されている。
【0071】
発泡性樹脂粒子の最大長さの平均値(球状の場合には、平均粒子径)は、例えば、0.2〜4mm、好ましくは、0.4〜2.0mmである。発泡性樹脂粒子の最大長さの平均値が上記範囲を超えると、発泡の均一性が低下する場合がある。発泡性樹脂粒子の最大長さの平均値が上記範囲に満たないと、熱膨張性物質が容易に揮発してしまい、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0072】
そして、この発泡性樹脂粒子では、中実の樹脂マトリクスに熱膨張性物質が含有されている。
【0073】
すなわち、発泡性樹脂粒子は、中実(中空でない)で粒状の樹脂マトリクスの表面から内部にわたって、熱膨張性物質が浸透されている。
【0074】
熱膨張性物質の含有割合は、樹脂マトリクス100質量部に対して、例えば、1〜10質量部、好ましくは、2〜8質量部である。
【0075】
これにより、発泡性樹脂粒子では、低温、具体的には、例えば、140℃以下(具体的には、70〜140℃)、また、120℃以下(具体的には、70〜120℃)、さらには、100℃以下(具体的には、70〜100℃)の温度(熱膨張開始温度)で熱膨張が開始する。
【0076】
また、熱膨張後の発泡性樹脂粒子の密度は、例えば、0.005〜0.5g/cm、好ましくは、0.01〜0.1g/cmである。
【0077】
発泡性樹脂粒子の100℃における熱膨張倍率は、熱膨張性物質の含有割合にもよるが、例えば、2〜200倍、好ましくは、10〜100倍である。
【0078】
このような発泡性樹脂としては、市販品(発泡性ビーズ)を用いることができ、例えば、「カネパール」(発泡性ポリスチレンビーズまたは発泡性ポリメチルメタクリレートビーズ、カネカ社製)、「スチロダイヤ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「ヒートポール」(発泡性アクリロニトリル・スチレン系樹脂ビーズ、「クリアポール」(発泡性メチルメタクリレート−スチレン系樹脂ビーズ)(以上、JSP社製)、「エスレンビーズ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「PNビーズ」(特殊発泡ポリスチレンビーズ)(以上、積水化成品工業社製)などが挙げられる。
【0079】
発泡性樹脂粒子の配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、30〜300質量部、好ましくは、50〜200質量部である。
【0080】
発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲に満たないと、発泡倍率が過度に低くなり、樹脂を十分に発泡させることができない場合がある。一方、発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲を超えると、発泡性樹脂粒子が樹脂から脱落する場合がある。
【0081】
そして、易剥離封止材は、例えば、上記した樹脂と発泡性樹脂粒子とを配合して、攪拌混合することにより、調製される。
【0082】
具体的には、上記した樹脂と発泡性樹脂粒子とを、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などによって混練することにより、易剥離封止材を混練物として調製する。
【0083】
この混練では、例えば、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)〜70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、樹脂と発泡性樹脂粒子とを加熱する。
【0084】
これにより、本発明の易剥離封止材を調製する。
【0085】
このようにして得られた易剥離封止材の密度は、例えば、0.5〜1.5g/cm、好ましくは、0.7〜1.3g/cm、さらに好ましくは、0.9〜1.1g/cmである。
【0086】
なお、易剥離封止材には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、充填剤、滑剤、軟化剤、その他の発泡剤(発泡性樹脂粒子を除く発泡剤)、マイクロ波吸収剤、さらには、発泡促進剤、硬化剤、架橋剤、加硫剤、硬化促進剤、架橋促進剤、加硫促進剤、揺変剤、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤、粘着付与剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で添加することもができる。
【0087】
充填剤は、易剥離封止シート(後述)の成形性を向上させるために必要により易剥離封止材に必要により配合される。
【0088】
充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム)、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。充填剤として、好ましくは、炭酸カルシウム、カーボンブラック、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0089】
充填剤は、単独使用または2種併用することができる。
【0090】
また、充填剤の平均粒子径は、例えば、1nm〜100μm、好ましくは、10nm〜10μmである。
【0091】
充填剤の配合割合は、封止剥離用樹脂組成物100質量部に対して、例えば、1000質量部未満、好ましくは、10〜700質量部、さらに好ましくは、20〜500質量部である。
【0092】
滑剤は、易剥離封止シート(後述)に成形する際の成形機と易剥離封止材との摩擦を低減するために、易剥離封止材に必要により配合される。
【0093】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヒマシ油脂肪酸などの高級脂肪酸、例えば、上記した高級脂肪酸の金属塩(具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛などの金属石鹸)などが挙げられる。好ましくは、高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0094】
滑剤は、単独使用または併用することができ、その配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、1〜5質量部である。
【0095】
軟化剤は、易剥離封止材の粘度を調整するために、易剥離封止材に必要により配合される。
【0096】
軟化剤としては、例えば、オイル(例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなど)、ワックス、アスファルトなどが挙げられる。好ましくは、オイルが挙げられる。
【0097】
軟化剤は、単独使用または併用することができ、その配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは、10〜50質量部である。
【0098】
その他の発泡剤は、発泡倍率を調整するために、必要により易剥離封止材に配合される。その他の発泡剤としては、例えば、無機発泡剤、有機発泡剤などが挙げられる。
【0099】
無機発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0100】
有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、例えば、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物、例えば、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物などが挙げられる。
【0101】
その他の発泡剤は、単独使用または併用することができ、その配合割合は、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下であり、通常、5質量部以上である。
【0102】
マイクロ波吸収剤は、照射されたマイクロ波を吸収する成分であって、例えば、導電性物質、磁性体、極性樹脂などが挙げられる。なお、以下で説明するマイクロ波吸収剤は、上記した充填剤で例示した成分(具体的には、カーボンブラック)や、樹脂で例示した成分(具体的には、CR、エポキシ樹脂、フェノール樹脂など)を含んでいてもよい。つまり、そのような成分は、充填剤や樹脂の作用と、マイクロ波吸収剤の作用との両方の作用を発現する。
【0103】
導電性物質としては、例えば、カーボン系物質、金属系物質、ポリマー系物質などが挙げられる。
【0104】
カーボン系物質としては、例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、例えば、天然グラファイト、合成グラファイト(人工グラファイト)などのグラファイトなどが挙げられる。
【0105】
金属系物質としては、例えば、金属、金属酸化物など挙げられる。
【0106】
金属としては、例えば、銅、銀、金、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、インジウム、または、それらの合金(黄銅、ステンレスなど)などが挙げられる。
【0107】
金属酸化物としては、上記した金属の酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなど)などが挙げられる。
【0108】
導電性物質のうち、好ましくは、カーボン系物質が挙げられる。
【0109】
導電性物質の配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、35〜350質量部である。
【0110】
磁性体としては、例えば、強磁性体、反磁性体などが挙げられ、好ましくは、強磁性体が挙げられる。
【0111】
強磁性体は、磁場によりその方向に強く磁化し、磁場を取り除いても残留磁化を残す磁性体であり、そのような強磁性体として、例えば、軟質磁性体、硬質磁性体が挙げられる。
【0112】
軟質磁性体としては、例えば、軟質磁性フェライト(ソフトフェライト)、軟質磁性鉄類などが挙げられる。
【0113】
軟質磁性フェライトは、下記組成式(1)で表される鉄酸化物である。
【0114】
AO・Fe (1)
(Aは、2価の遷移元素または第12属元素を示す。)
上記組成式(1)において、Aで示される2価の遷移元素としては、例えば、主遷移元素が挙げられ、そのような主遷移元素としては、例えば、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどが挙げられる。
【0115】
上記した2価の遷移元素は、単独または2種以上併用することができる。
【0116】
上記組成式(1)において、Aで示される第12属元素としては、例えば、Zn、Cd、Hgなどが挙げられる。これら第12属元素は、単独または2種以上併用することができる。
【0117】
軟質磁性フェライトとして、具体的には、Ni−Cu−Znフェライト(NiO/CuO/ZnO・Fe、以下同様)、Ni−Znフェライト、Ni−Cuフェライト、Mn−Znフェライトなどが挙げられる。
【0118】
軟質磁性鉄類としては、例えば、β鉄、鉄合金などが挙げられる。
【0119】
鉄合金としては、例えば、鉄中にSi、Ni、Alなどが微量(例えば、鉄合金中10質量%以下)含まれる合金であって、具体的には、Fe−Si(Si含有鉄合金、以下同一。ケイ素鋼)、Fe−Ni、Fe−Si−Alなどが挙げられる。
【0120】
硬質磁性体としては、例えば、α鉄、硬質磁性フェライト(ハードフェライト)、合金(硬質磁性フェライトを除く)などが挙げられる。
【0121】
硬質磁性フェライトとしては、例えば、下記組成式(2)で表される鉄酸化物である。
【0122】
B・Fe (2)
(Bは、アルカリ土類金属を示す。)
上記組成式(2)において、Bで示されるアルカリ土類金属としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raなどが挙げられる。好ましくは、Baが挙げられる。
【0123】
硬質磁性フェライトとして、具体的には、Baフェライトなどが挙げられる。
【0124】
合金は、例えば、遷移元素を含み、具体的には、必須成分として、主遷移元素を含み、任意成分として内遷移元素を含んでいる。
【0125】
主遷移元素としては、上記した主遷移元素と同様のものが挙げられる。
【0126】
内遷移元素としては、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどが挙げられる。
【0127】
合金としては、具体的には、Fe−Al−Ni−Co(Al、NiおよびCoの合金、以下同様、アルニコ合金)、Sm−Co、Nd−Fe−Bなどが挙げられる。
【0128】
強磁性体としては、好ましくは、硬質磁性フェライトが挙げられる。
【0129】
磁性体としては、好ましくは、上記した軟質磁性フェライト、硬質磁性フェライトなどのフェライトが挙げられる。
【0130】
磁性体の配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、35〜350質量部である。
【0131】
極性樹脂は、例えば、シアノ基、ヒドロキシル基(水酸基)、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、塩素などの極性基を有する樹脂である。
【0132】
極性樹脂としては、例えば、極性ゴム、熱可塑性極性樹脂(ゴムを除く)、熱硬化性極性樹脂などが挙げられる。
【0133】
極性ゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの合成極性ゴムが挙げられる。
【0134】
熱可塑性極性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド(具体的には、ナイロン6、ナイロン66など)などが挙げられる。
【0135】
熱硬化性極性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0136】
極性樹脂の配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、10〜90質量%、好ましくは、10〜50質量%である。
【0137】
そして、上記により得られた本発明の易剥離封止材(混練物)を、例えば、カレンダー成形、押出成形、射出成形あるいはプレス成形などの成形方法によって、シート状に形成する。
【0138】
混練物の成形では、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、例えば、常温(20℃)あるいは70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、混練物を加熱する。
【0139】
また、混練物をシート状に成形する場合には、そのシート(封止剥離用樹脂シート)の厚みが、特に限定されず、後述する対象物によって適宜設定され、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.2〜5mmである。
【0140】
これによって、本発明の易剥離封止材から、本発明の易剥離封止シートを形成することができる。
【0141】
このようにして得られる易剥離封止シートのナイロン6板に対するせん断接着力は、0.050MPa以上であり、好ましくは、0.060MPa以上、さらに好ましくは、0.100MPa以上、とりわけ好ましくは、0.150MPa以上であり、通常、10.000MPa以下である。
【0142】
また、易剥離封止シートのABS板に対するせん断接着力は、例えば、0.040MPa以上、好ましくは、0.050MPa以上、さらに好ましくは、0.075MPa以上、とりわけ好ましくは、0.100以上であり、通常、10.000MPa以下である。
【0143】
さらに、易剥離封止シートの冷間圧延鋼板に対するせん断接着力は、例えば、0.060MPa以上、好ましくは、0.070MPa以上、さらに好ましくは、0.080MPa以上であり、とりわけ好ましくは、0.100以上であり、通常、10.000MPa以下である。
【0144】
なお、上記した易剥離封止シートの各板に対するせん断接着力は、易剥離封止シートが発泡する前の各板に対するせん断接着力である。
【0145】
易剥離封止シートの上記した各板に対するせん断接着力が、上記した下限値以上であれば、易剥離封止シートを対象物に確実に貼着でき、易剥離封止シートによって対象物の部品(後述)を確実に封止することができる。
【0146】
易剥離封止シートにおけるナイロン6板、ABS板および冷間圧延鋼板に対するせん断接着力は、易剥離封止シートを平板状の上記した各板に貼着し、その後、3日間放置し、その後、易剥離封止シートと各板とを、速度50mm/分で引っ張るせん断試験に供し、得られた強度ピークとして求められる。
【0147】
図1は、本発明の封止方法の一実施形態を説明するための断面図を示す。
【0148】
次に、本発明の封止方法の一実施形態について、図1を参照して説明する。
【0149】
まず、この方法では、図1(a)に示すように、易剥離封止シート1と、対象物4が設けられた積層体2とをそれぞれ用意する。
【0150】
易剥離封止シート1は、平面視で対象物4(後述)を含むサイズに、外形加工(切断)されている。
【0151】
積層体2は、基板3と、その上に積層される対象物4とを備えている。
【0152】
基板3は、略平板形状に形成されている。
【0153】
対象物4は、基板3の上面に設けられており、平面視において、基板3に含まれるように配置されている。
【0154】
対象物4を含む積層体2は、例えば、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ、掃除機、テレビ、電池などの家電製品、例えば、パソコン、プリンター、複写機、固定電話、携帯電話などの事務用品、例えば、バンパー、バッテリー容器などの自動車、例えば、家具などの生活用品、例えば、住宅構造材、例えば、液晶パネル、半導体、プリント配線板、集積回路、二次電池容器などのエレクトロニクス製品などの用途に使用される。
【0155】
次いで、この方法では、図1(a)の矢印および図1(b)に示すように、封止剥離用発泡性シート1を、対象物4に貼着する。
【0156】
具体的には、易剥離封止シート1を、基板3の上面(対象物4から露出する基板3の上面)に、対象物4を被覆するように、貼着する。
【0157】
易剥離封止シート1を対象物4に貼着するには、易剥離封止シート1を積層体2に圧着する。
【0158】
また、必要により、易剥離封止シート1を積層体2に加熱圧着することもできる。加熱圧着の温度は、例えば、上記した発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満の温度である。
【0159】
これにより、積層体2の対象物4を、封止剥離用発泡性シート1によって封止する。
【0160】
そして、この対象物4は、その目的に応じて、所定期間(特に制限されず、例えば、数年間、さらには、数十年間程度の使用期間あるいは製品寿命)、使用される。
【0161】
そして、対象物4の使用後、図1(c)に示すように、封止剥離用発泡性シート1を発泡させて発泡体5を形成する。
【0162】
詳しくは、対象物4は、上記した用途での所定期間の使用後に、回収して再利用される対象物であり、また、製品寿命の経過後に、封止剥離用発泡性シート1とは分別して廃棄される対象物などである。
【0163】
易剥離封止シート1を発泡させるには、封止剥離用発泡性シート1および積層体2を、例えば、140℃以下の温度(具体的には、70〜140℃)に加熱する。また、封止剥離用発泡性シート1および積層体2を、さらには、120℃以下の温度(具体的には、70〜120℃)、さらには、100℃以下の温度(具体的には、70〜100℃)で、加熱することにより、封止剥離用発泡性シート1を発泡させることもできる。
【0164】
なお、易剥離封止シート1および積層体2を、上記温度を超えて加熱すると、対象物4が熱可塑性樹脂(プラスチック)などからなる場合に、かかる対象物4が加熱により軟化または溶融することを防止できない場合がある。
【0165】
また、易剥離封止シート1は、加熱により発泡することから、熱発泡性樹脂シートとされる。
【0166】
これにより、発泡体5を形成する。
【0167】
このようにして形成される発泡体5は、その密度が、例えば、0.02〜1.5g/cm、好ましくは、0.05〜1.3g/cm、さらに好ましくは、0.06〜0.2g/cmである。なお、発泡体の密度は、JIS Z8807に準拠して測定される。
【0168】
発泡体5の発泡倍率、つまり、易剥離封止シート1の発泡時の体積発泡倍率は、例えば、2倍以上、好ましくは、3倍以上、さらに好ましくは、さらには、5倍以上、とりわけ好ましくは、10倍以上であり、通常、例えば、100倍以下、好ましくは、50倍以下である。
【0169】
発泡倍率が上記した下限値以上であれば、後で説明するが、発泡体5を基板2から円滑に剥離することができる。
【0170】
なお、発泡倍率は、[易剥離封止シート(発泡前の易剥離封止シート)の密度]/[発泡体(発泡後の易剥離封止シート)の密度]として算出される。
【0171】
そして、発泡体5(つまり、発泡後の易剥離封止シート1)のナイロン6板に対するせん断接着力は、0.030MPa以下であり、好ましくは、0.020MPa以下、さらに好ましくは、0.010MPa以下、とりわけ好ましくは、0.050MPa以下であり、通常、0MPa以上である。
【0172】
また、発泡体5のABS板に対するせん断接着力は、例えば、0.100MPa以下、好ましくは、0.050MPa以下、さらに好ましくは、0.025MPa以下、とりわけ好ましくは、0.010MPa以下であり、通常、0MPa以上である。
【0173】
さらに、発泡体5の冷間圧延鋼板に対するせん断接着力は、例えば、0.050MPa以下、好ましくは、0.030MPa以下、さらに好ましくは、0.025MPa以下、とりわけ好ましくは、0.015MPa以下であり、通常、0MPa以上である。
【0174】
発泡体5の上記した各板に対するせん断接着力が、上記した上限値以下であれば、次に説明するが、発泡体5を対象物4から円滑に剥離することができる。
【0175】
発泡体5におけるナイロン6板、ABS板および冷間圧延鋼板に対するせん断接着力は発泡体5と上記した各板とを、速度50mm/分で引っ張るせん断試験に供し、得られた強度ピークとして求められる。
【0176】
その後、この方法では、図1(c)の矢印および図1(d)に示すように、発泡体5を、対象物4から剥離する。つまり、発泡体5を、積層体2から引き剥がす。
【0177】
これにより、発泡体5と、対象物4を含む積層体2とを分離することできる。これによって、対象物4を回収して再利用したり、あるいは、対象物4を、発泡体5とは別に、廃棄することができる。
【0178】
そして、上記した発泡性樹脂シート1では、発泡性樹脂粒子において、熱膨張性物質が中実の樹脂に含有されているので、比較的穏やかな条件、具体的には、低温(例えば、140℃以下)の加熱で、熱膨張性物質を膨張させることができる。そのため、樹脂を確実に発泡させることができる。
【0179】
そして、易剥離封止シート1のせん断接着力が、特定の下限値以上であるので、易剥離封止シート1が対象物4に確実に貼着でき、易剥離封止シート1によって対象物4を確実に封止することができる。
【0180】
また、発泡体5のせん断接着力が、特定の上限値以下であるので、発泡体5を対象物4から確実に剥離することができる。
【0181】
そのため、上記の封止方法では、易剥離封止シート1によって対象物4を確実に封止することができながら、封止剥離用樹脂シート1を発泡させて発泡体5を確実に形成して、発泡体5を対象物4から確実に剥離することができる。
【0182】
その結果、対象物4の使用時には、対象物4を易剥離封止シート1によって確実に封止できながら、対象物4の使用後には、対象物4と発泡体5とを確実に分離することができる。
【0183】
なお、上記した実施形態では、封止剥離用樹脂シート1の発泡と、発泡体5の剥離とを、順次実施しているが、例えば、それらを同時に実施することもできる。
【0184】
また、上記した実施形態では、本発明の易剥離封止シートを、加熱により発泡する熱発泡性樹脂シートとして説明しているが、例えば、マイクロ波の照射によって発泡するマイクロ波発泡性樹脂シートとすることもできる。
【0185】
そのような易剥離封止シート1を、マイクロ波発泡性樹脂シートとするには、上記した添加剤のうち、マイクロ波吸収剤を、易剥離封止材に必須成分として配合する。
【0186】
そして、マイクロ波発泡性樹脂シートである易剥離封止シート1に、マイクロ波が照射されると、マイクロ波がマイクロ波吸収剤に吸収され、それによって、マイクロ波吸収剤が加熱される。すると、その加熱により、発泡性樹脂粒子における熱膨張性物質が膨張するので、それによって、樹脂を確実に発泡させることができる。これによって、発泡体を確実に得ることができる。
【0187】
とりわけ、この発泡性樹脂粒子では、熱膨張性物質が中実の樹脂マトリクスに含有されているので、導電性物質がマイクロ波に低い照射出力(例えば、260W以下)で照射されて、マイクロ波吸収剤が低温(例えば、140℃以下、より具体的には、70〜130℃)で加熱されても、熱膨張性物質を確実に膨張させることができる。
【0188】
そのため、マイクロ波発泡性樹脂シートである易剥離封止シート1を、それが封止する対象物4とともに加熱炉などに投入して高温で加熱しなくても、マイクロ波の照射によって発泡できるので、例えば、熱可塑性樹脂(プラスチック)などからなる対象物4を回収して再利用する場合に好適に用いることができる。
【0189】
一方、易剥離封止シート1を、熱発泡性樹脂シートとして加熱により発泡させれば、簡易な方法によって、発泡体5を形成することができる。
【実施例】
【0190】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0191】
(易剥離封止シートの作製)
実施例1、2、および、比較例1〜4
各成分を、表1の配合処方に従って、ミキシングロールにて、50℃で、回転数10分−1、10分間混練することにより、易剥離封止材を混練物として調製した。
【0192】
次いで、調製した易剥離封止材を、温度50℃、圧力50kg/cmで、5分間プレスすることにより、厚み1mmの易剥離封止シートを作製した。
【0193】
(評価)
1. 発泡倍率
各実施例および各比較例の易剥離封止シートを、直径19mmの円形状にそれぞれ打ち抜き、それらを130℃のオーブンに投入して、20分間加熱することにより、易剥離封止シートをそれぞれ発泡させて、発泡体を得た。
【0194】
そして、発泡前後(発泡前の易剥離封止シートおよび発泡後の発泡体)の密度を、JIS Z8807に準拠してそれぞれ測定し、それらから発泡体の発泡倍率をそれぞれ算出した。それらの結果を表1に示す。
2. せん断接着力
各実施例および各比較例について、下記2−1.〜2−6.のせん断接着力を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0195】
2−1.易剥離封止シートのナイロン6板に対するせん断接着力
各実施例および各比較例の易剥離封止シートを、25×25mmのサイズにそれぞれ切断して、それらをナイロン6板の表面に載置し、その後、2kgローラを1往復させることにより、易剥離封止シートをナイロン6板に貼着した。貼着後、易剥離封止シートおよびナイロン6板を、3日間放置した。
【0196】
その後、易剥離封止シートとナイロン6板と、引張り試験機で速度50mm/分で引っ張るせん断試験を実施し、その測定により得られた強度ピークを、易剥離封止シートのナイロン6板に対するせん断接着力として求めた。
【0197】
2−2.易剥離封止シートのABS板に対するせん断接着力
ナイロン6板に代えて、ABS板に、易剥離封止シートを貼着した以外は、上記2−1.と同様に処理して、易剥離封止シートのABS板に対するせん断接着力を求めた。
2−3.易剥離封止シートの冷間圧延鋼板に対するせん断接着力
ナイロン6板に代えて、冷間圧延鋼板に、易剥離封止シートを貼着した以外は、上記2−1.と同様に処理して、易剥離封止シートの冷間圧延鋼板に対するせん断接着力を求めた。
【0198】
2−4.発泡体のナイロン6板に対するせん断接着力
各実施例および各比較例の易剥離封止シートを、25×25mmのサイズにそれぞれ切断して、それらをナイロン6板の表面に載置し、その後、2kgローラを1往復させることにより、易剥離封止シートをナイロン6板に貼着した。貼着後、易剥離封止シートおよびナイロン6板を、3日間放置した。
【0199】
その後、易剥離封止シートおよびナイロン6板を、130℃のオーブンに投入して、20分間加熱することにより、易剥離封止シートを発泡させて、発泡体を得た。
【0200】
その後、発泡体とナイロン6板とを、引張り試験機で速度50mm/分で引っ張るせん断試験を実施し、測定により得られた強度ピークを、発泡体のナイロン6板に対するせん断接着力として求めた。
【0201】
2−5.発泡体のABS板に対するせん断接着力
ナイロン6板に代えて、ABS板に、易剥離封止シートを貼着した以外は、上記2−4.と同様に処理して、発泡体のABS板に対するせん断接着力を求めた。
2−6.発泡体の冷間圧延鋼板に対するせん断接着力
ナイロン6板に代えて、冷間圧延鋼板に、易剥離封止シートを貼着した以外は、上記2−4.と同様に処理して、発泡体の冷間圧延鋼板に対するせん断接着力を求めた。
【0202】
【表1】

【0203】
なお、表1中、易剥離封止材の配合処方の欄の数値は、各成分の質量部数を示す。
【0204】
表1中、各成分の略称を以下に詳説する。
Oppanol B50:ポリイソブチレンゴム(PIB)、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)340,000、密度0.92g/cm、BASF社製
Oppanol B12:ポリイソブチレンゴム(PIB)、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)51,000、密度0.92g/cm、BASF社製
EPT4021:エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ジエン含量8.1質量%、重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)、ムーニー粘度(100℃)24ML1+4、密度0.86g/cm、三井化学社製
K−BS:商品名「カネパールK−BS」、発泡性ポリスチレンビーズ、樹脂マトリクスのガラス転移温度85℃(DMA法)、炭化水素含有、平均粒子径0.6mm、熱膨張開始温度70℃、密度(熱膨張前)1.00g/cm、膨張倍率45倍(100℃)、カネカ社製
セルマイクSX:4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、有機発泡剤、分解温度160℃、三協化成社製
F−36:商品名「マツモトマイクロスフェアーF−36」、熱膨張カプセル、発泡開始温度75〜85℃、最大膨張温度120〜130℃、平均粒子径10〜16μm、シェル:アクリロニトリル系コポリマー、松本油脂製薬社製
♯50:商品名「旭♯50」、カーボンブラック、平均粒子径70nm、旭カーボン社製
ハイジライトH32:水酸化アルミニウム、平均粒子径18nm、昭和電工社製
重質炭酸カルシウム:平均粒子径3.2μm、丸尾カルシウム社製
SZ−P:商品名、ステアリン酸亜鉛、日油社製
PW−380:パラフィン系オイル、出光興産社製
ジシアネックス325:商品名、ジシアンジアミド(発泡助剤)、Air Products&Chemicals.Inc社製
【符号の説明】
【0205】
1 易剥離封止シート
4 対象物
5 発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
中実のマトリクス樹脂に熱膨張性物質が含有されている発泡性樹脂粒子と
を含有し、
発泡前のナイロン6板に対するせん断接着力が、0.050MPa以上であり、
発泡後のナイロン6板に対するせん断接着力が、0.030MPa以下である
ことを特徴とする、易剥離封止材。
【請求項2】
発泡倍率が、5倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の易剥離封止材。
【請求項3】
140℃以下の加熱で発泡することを特徴とする、請求項1または2に記載の易剥離封止材。
【請求項4】
前記樹脂が、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の易剥離封止材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の易剥離封止材がシート状に形成されていることを特徴とする、易剥離封止シート。
【請求項6】
請求項5に記載の易剥離封止シートを対象物に貼着することにより、前記対象物を封止する工程、および、
前記易剥離封止シートを発泡させて発泡体を形成して、前記発泡体を前記対象物から剥離する工程
を備えていることを特徴とする、封止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−188460(P2012−188460A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50443(P2011−50443)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】