説明

易引き裂き性包装袋

【課題】 内容物を包装するために必要な耐内容物性及びヒートシール性を保持しながら、且つ良好な引き裂き性、保形性、保香性を兼ね備え、さらに高速成膜化が可能である積層フィルムからなる包装袋を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材フィルム上に、少なくとも接着剤層とシーラント層とをこの順に積層した積層体からなる包装袋であって、該シーラント層は、ヒートシール性樹脂層上に易引き裂き性付与層を有する積層フィルムからなる層であり、該ヒートシール性樹脂層はポリオレフィン系樹脂からなる層であり、該易引き裂き性付与層はシクロオレフィンコポリマーと結晶性樹脂とを含む樹脂組成物からなる層であり、前記ヒートシール性樹脂層が最内層となるように製袋して得られることを特徴とする包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易引き裂き性を示す包装袋に関し、更に詳しくは、内容物を包装するために必要な耐内容物性及びヒートシール性を保持しながら、且つ良好な引き裂き性、保形性、保香性を兼ね備えた包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スタンディングパウチ等の、樹脂フィルム積層体からなる自立性包装袋への需要が高まっている。このような自立性包装袋を形成するために用いられる樹脂フィルム積層体には、耐内容物性やヒートシール性だけでなく、その自立性形状を維持するための腰や強度を提供することが要求される。
【0003】
該要求を満たす樹脂フィルム積層体としては、優れた耐内容物性(内容物保持性及び耐薬品性等)及びヒートシール性を示すポリオレフィンフィルムに、自立を可能にするようにある程度の厚みを持たせたものが多く用いられている。
【0004】
しかしながら、このような厚みのあるポリオレフィンフィルムは、高いシール強度を提供する点では好ましいものの、引き裂き性に劣り、引き裂き時にフィルムが伸びてしまい、袋の開封を困難にする。
【0005】
この問題に対し、例えば、ポリオレフィンにエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)を混合することによって引き裂き性を改善することが提案されているが(特許文献1)、所望の易引き裂き性が得られるまでEVAを配合すると、引き裂き性が改善される代わりに、耐内容物性及びヒートシール性が低下してしまい、また共押出多層インフレーション法による製造に適さず、高速成膜化性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−237281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決し、内容物を包装するために必要な耐内容物性及びヒートシール性を保持しながら、且つ良好な引き裂き性、保形性、保香性を兼ね備え、さらに高速成膜化が可能である積層フィルムからなる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々研究の結果、基材フィルム上に、少なくとも接着剤層とシーラント層とをこの順に積層した積層体からなる包装袋であって、該シーラント層は、ヒートシール性樹脂層上に易引き裂き性付与層を有する積層フィルムからなる層であり、該ヒートシール性樹脂層はポリオレフィン系樹脂からなる層であり、該易引き裂き性付与層はシクロオレフィンコポリマーと結晶性樹脂とを含む樹脂組成物からなる層であり、該結晶性樹脂は、190℃でのメルトフローレートが15〜60g/10分である低密度ポリエチレンであって、該樹脂組成物中に1〜10質量%の割合で存在し、前記ヒートシール性樹脂層が最内層となるように製袋して得られることを特徴とする包装袋が、上記の目的を達成することを見出した。
【0009】
本発明によれば、上記シーラント層を形成する積層フィルムにおいて、易引き裂き性付与層の上にさらに、ポリオレフィン系樹脂からなるラミネート層を設けることもできる。本発明の包装袋を形成する積層体において、易引き裂き性付与層と接着剤層との間にラミネート層が存在することにより、層間の密着性を一層高めることができる。
【0010】
本発明において、ヒートシール性樹脂層及びラミネート層を形成するポリオレフィン系樹脂としては、包装袋としての柔軟性、易引き裂き性付与層とのなじみ性、層間密着性、及び共押出多層インフレーション法への適用等の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を特に好ましく使用することができる。
【0011】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.基材フィルム上に、少なくとも接着剤層とシーラント層とをこの順に積層した積層体からなる包装袋であって、該シーラント層は、ヒートシール性樹脂層上に易引き裂き性付与層を有する積層フィルムからなる層であり、該ヒートシール性樹脂層はポリオレフィン系樹脂からなる層であり、該易引き裂き性付与層はシクロオレフィンコポリマーと結晶性樹脂とを含む樹脂組成物からなる層であり、該結晶性樹脂は、190℃でのメルトフローレートが15〜60g/10分である低密度ポリエチレンであって、該樹脂組成物中に1〜10質量%の割合で存在し、前記ヒートシール性樹脂層が最内層となるように製袋して得られることを特徴とする包装袋。
2.シーラント層を形成する積層フィルムが、さらに易引き裂き性付与層上にラミネート層を有し、該ラミネート層は、ポリオレフィン系樹脂からなる層であることを特徴とする、上記1に記載の包装袋。
3.ヒートシール性樹脂層を形成するポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする、上記1又は2に記載の包装袋。
4.ラミネート層を形成するポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする、上記2又は3に記載の包装袋。
5.結晶性樹脂が、樹脂組成物中に2〜5質量%の割合で存在することを特徴とする、上記1〜4のいずれかに記載の包装袋。
6.結晶性樹脂の190℃でのメルトフローレートが20〜60g/10分であることを特徴とする、上記1〜5のいずれかに記載の包装袋。
7.シーラント層を形成する積層フィルムが、共押出多層インフレーション法により成膜されることを特徴とする、上記1〜6のいずれかに記載の包装袋。
8.スタンディングパウチまたはガセットパウチ形式の包装袋であることを特徴とする、上記1〜7のいずれかに記載の包装袋。
【発明の効果】
【0012】
シクロオレフィンコポリマーは、その溶融成膜時に、高い分子間力が働き、ポリマー間で凝集を引き起こす。その結果、膜の至る所で樹脂塊が瘤状に盛り上がり、いわゆる「だま」が生じ、均一な膜表面を得ることが難しい。そして、この傾向は、インフレーション法による成膜時には一層顕著になり、該法により得られるシクロオレフィンコポリマー膜は、その表面全体に無数のだまを有する。
【0013】
しかしながら、本発明に従って、シクロオレフィンコポリマーに流度の高い低密度ポリエチレンを極微量混合することによって、シクロオレフィンコポリマー分子同士の不均一な凝集が抑制されることが分かった。そしてこの効果は、ポリオレフィン系樹脂からなるヒートシール性樹脂層と共押出することにより一層高まり、成膜時のだまの発生を防ぎ、平滑な膜表面が得られることが分かった。さらに、インフレーション法による成膜時にも十分な効果が発揮され、該法による場合にも、均一な層表面を有する積層フィルムを得ることができた。
【0014】
このようにして得られた積層フィルムをシーラント層として有する本発明の包装袋は、ポリオレフィン系樹脂からなるヒートシール性樹脂層を有するため、種々の薬品や飲食品等の内容物に対して耐内容物性を有し、また優れたヒートシール性を示すと同時に、シクロオレフィンコポリマーからなる易引き裂き性付与層を有するため、高い引き裂き性及び直線カット性を示す。
【0015】
また、本発明の包装袋は、そのシーラント層が好適な曲げ弾性率を有するため、自立及び保形に必要な適度な腰を有する。
さらに、本発明の包装袋は、ヒートシール性樹脂層と易引き裂き性付与層とのなじみ性がよく、優れた層間密着性を示す。
【0016】
さらにまた、シーラント層中のシクロオレフィンコポリマーが高い分子間力を有し、主鎖間の距離が近い密な層構造を形成するため、本発明の包装袋は、薬品や飲食品等の内容物の香気成分の透過を防ぎ、優れた保香性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の包装袋を形成する積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【図2】本発明の包装袋を形成する積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【図3】本発明の包装袋を形成する積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
<1>本発明の包装袋を形成する積層体の層構成
図1は、本発明の包装袋を形成する積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【0019】
本発明の包装袋を形成する積層体としては、図1に示すように、基材フィルム1、接着剤層2、易引き裂き性付与層3、ヒートシール性樹脂層4からなることを基本構造とする積層体を挙げることができる。
【0020】
また、別の例として、図2に示すように、接着剤層2と易引き裂き性付与層3との間に、さらにラミネート層5を有する積層体を挙げることができる。
さらに、別の例として、図3に示すように、基材フィルム1と接着剤層2との間に、印刷層6、第2の接着剤層7、包装資材フィルム8を有する積層体を挙げることができる。
【0021】
<2>ヒートシール性樹脂層
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定した。
【0022】
本発明のヒートシール性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂から成る。該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン又はエチレン系コポリマー、及びポリプロピレン又はポリプロピレン系コポリマー等の、好適な耐内容物性及びヒートシール性を提供する樹脂が使用される。
【0023】
具体的には、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン−メチルアクリレートコポリマー(EMA)、エチレン−エチルアクリレートコポリマー(EEA)、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー(EMMA)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレンコポリマー又はこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、優れたシール強度を示しつつ、易引き裂き性付与層とのなじみが特によく、押出成膜時に良好な層間密着性が得られる点から、直鎖状低密度ポリエチレンを特に好ましく使用することができる。
【0024】
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒から得ることができる、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのコポリマーである。ここで、炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、などが挙げられる。これらモノマーを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法を用いて重合する。通常は、短鎖分布として炭素1000個あたり、3〜25個の短鎖分岐を有するが、炭素数約20個を超えるような長鎖分岐は有しない。通常、直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、エチレン由来の構造単位は約99.9〜90モル%であり、α−オレフィン由来の構造単位は約0.1〜10モル%である。本発明では、構造均一性に優れる点で、メタロセン触媒で調製された直鎖状低密度ポリエチレンを好適に使用することができる。
【0025】
本発明において、ヒートシール性樹脂層を形成するポリオレフィン系樹脂としては、成膜法に応じて適宜に好適な流度を有する樹脂を選択することができるが、共押出多層インフレーション法への適用及び易引裂き性付与層とのなじみ性の点から、190℃でのMFRが、0.5〜6.0g/10分、好ましくは1.0〜4.0g/10分の範囲内のものを好適に使用することができる。MFRが0.5g/10分より小さいと、未溶融物が発生し易くなる。また6.0g/10分より大きいと、樹脂の溶融張力が低くなり、共押出多層インフレーション法による成膜時に、膜が上方に持ち上がらなくなる。なお、本発明において、MFRは、JIS−K−7210(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定する。
【0026】
本発明において使用するのに好適なポリオレフィン系樹脂としては、株式会社プライムポリマー製の「エボリュー(R)」、「ウルトゼックス(R)」及び「ハイゼックス(R)」等が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明において、上記のようなポリオレフィン系樹脂を主成分とし、これに、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0028】
<3>易引き裂き性付与層
次に、本発明のシーラント層における易引き裂き性付与層は、シクロオレフィンコポリマーと結晶性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、該結晶性樹脂は、190℃でのMFRが15〜60g/10分である低密度ポリエチレンであって且つ該樹脂組成物中に1〜10質量%の割合で存在する。
【0029】
a)シクロオレフィンコポリマー
本発明において、シクロオレフィンコポリマー(COC)としては、エチレンとシクロオレフィンとの非晶質コポリマーが使用され、これは、環状オレフィン構造と鎖状オレフィン構造とを有することにより、本発明の包装袋に易引き裂き性及び直線カット性を付与する。
【0030】
シクロオレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができるが、特にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
【0031】
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5 ]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明において、シクロオレフィンコポリマーは、25〜45モル%のエチレンと、55〜75モル%のシクロオレフィンとを、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることにより好適に得られる。
【0033】
本発明において、好適なシクロオレフィンコポリマーとしては、190℃のメルトボリュームフローレート(MVR)が0.5〜6.0cm3/10分、好ましくは1.0〜4.0cm3/10分の範囲内のものを好ましく用いることができる。MVRが0.5cm3/10分より小さいと、未溶融物が発生し易くなる。また6.0cm3/10分より大きいと、樹脂の溶融張力が低くなり、共押出多層インフレーション法による成膜時に、膜が上方に持ち上がらなくなる。なお、本発明において、MVRは、ISO1133(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定した。
具体的には、ポリプラスチック株式会社製の「TOPAS(R)」等が挙げられる。
【0034】
b)結晶性樹脂
シクロオレフィンコポリマーに、少量の高流度の結晶性樹脂を混合することにより、成膜時のシクロオレフィンコポリマー同士の凝集によるだまの形成を防ぎ、均一な表面を得ることができる。また、ヒートシール性樹脂層及びラミネート層を形成するポリオレフィン系樹脂との親和性を高め、良好な層間密着性を得ることができる。
【0035】
本発明において、結晶性樹脂としては、190℃でのMFRが15〜60g/10分、好ましくは20〜60g/10分である低密度ポリエチレンが使用される。該低密度ポリエチレンをシクロオレフィンコポリマーと混合することにより、シクロオレフィンコポリマー同士の凝集が防がれ、成膜時に均一な膜表面が得られ、特に、共押出多層インフレーション法にも適用可能となる。MFRが15g/10分より小さいと、樹脂組成物中に1〜10質量%の割合で添加するだけでは、シクロオレフィンコポリマーの凝集を十分に防ぐことができない。MFRが15g/10分より大きい任意の低密度ポリエチレンを使用することができるが、入手のし易さから、一般的にはMFRが15〜60g/10分のものが使用される。
【0036】
本発明において、低密度ポリエチレンとは、密度0.905〜0.930g/cm3のポリエチレンであって、本発明に好適な流度を有するものであれば、直鎖状のもの(LLDPE)であっても、非直鎖状のものであってもよい。
具体的には、日本ポリエチレン株式会社製の「ノバテック(R)」等が挙げられる。
【0037】
c)樹脂組成物
本発明において、易引き裂き性付与層を形成する、シクロオレフィンコポリマーと低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物において、該低密度ポリエチレンは、該樹脂組成物中に1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%の割合で存在する。
【0038】
上記シクロオレフィンコポリマーと上記低密度ポリエチレンとを主成分とする樹脂組成物は、さらに必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を含んでもよい。
【0039】
混合物全体に対して、低密度ポリエチレンの割合が1質量%未満であると、シクロオレフィンコポリマーの凝集の抑止効果が得られず、またヒートシール性樹脂層との相溶性が得られない。
【0040】
一方、低密度ポリエチレンの割合が10質量%より多いと、十分な引き裂き性及び直線カット性が得られない。また、自立及び保形に適当な腰及び強度が得られない。さらに、この腰及び強度の低下を補い、自立性及び保形性を維持するために、ポリオレフィン系樹脂からなるヒートシール性樹脂層やラミネート層の層厚を厚くする必要が生じるが、その結果、積層フィルムの引き裂き性及び直線カット性はさらに低下することになる。また、透明性が低下し、さらに、シクロオレフィンコポリマーからなる主鎖間の距離が大きくなって内容物の香気成分を閉じ込めることができず、保香性が低下する。
【0041】
<4>ラミネート層
シーラント層を形成する積層フィルムにおいて、ヒートシール性樹脂層上に設けた易引き裂き性付与層の上にさらに、ラミネート層を設けてもよい。
【0042】
該ラミネート層は、ヒートシール性樹脂層について上述したものと同様のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。該ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、他フィルムとのラミネートにおける取り扱い性及び接着性を向上させ、且つ、上記易引き裂き性付与層との良好な層間密着性を示す樹脂として、ヒートシール性樹脂層について上述したものと同様の直鎖状低密度ポリエチレンを最も好ましく用いることができる。
【0043】
さらに、本発明において、上記のようなポリオレフィン系樹脂を主成分とし、これに、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0044】
<5>膜厚
シーラント層を形成する積層フィルムは、任意の膜厚を有するものであってよいが、安定した成膜化及び製品コストの観点から好適には、全体として30〜200μmの膜厚を有する。ここで、各層の厚さは、積層フィルムの用途に応じて適宜に設定することができ、例えばフィルムに硬さが必要な場合や易引き裂き性を向上させたい場合は、易引き裂き性付与層を厚くし、また耐衝撃性や耐内容物性を向上させたい場合は、ヒートシール性樹脂層又はラミネート層を厚くすることができる。安定した成膜化、易引き裂き性及び製品コストの観点から、ヒートシール性樹脂層及びラミネート層の膜厚は、望ましくはそれぞれ20〜150μmであり、易引き裂き性付与層の膜厚は、望ましくは10〜30μmである。
【0045】
<6>積層フィルムの成膜
次に、ヒートシール性樹脂層、易引き裂き性付与層及びラミネート層を構成する各樹脂組成物を使用して、シーラント層を形成する積層フィルムを成膜する方法について説明すると、その成膜方法としては、例えば、上記で調製した各樹脂組成物を使用し、これらを、Tダイ共押出法、共押出多層インフレーション法等の方法を用いて成膜化して、上記の各樹脂組成物による樹脂層を多層に積層して、成膜することができる。
【0046】
具体的には、フィードブロック型多層Tダイを使用するフィードブロック法、マルチマニホールド型多層Tダイを使用するマルチマニホールド法等のTダイキャスト成形法、あるいは、共押出多層インフレーション法、更には、多層共押出しラミネート成形法等の成形方法を用いて、上記で調製した各樹脂組成物を使用して成膜化して、ヒートシール性樹脂層及び易引き裂き性付与層の2層、又は、ヒートシール性樹脂層、易引き裂き性付与層及びラミネート層の3層の積層構造からなる積層フィルムを成膜することができる。
【0047】
本発明のシーラント層を形成する樹脂フィルムは、シクロオレフィンコポリマーからなる層を有するにもかかわらず、共押出多層インフレーション法による成膜に適している。該方法によれば、良好な層間密着性及び平滑な膜表面を有する積層フィルムを高速成膜することができるため、高品質の積層フィルムを低いコストで製造できる点において好ましいものである。
【0048】
<7>基材フィルム
本発明において、基材フィルムは、用途に応じて任意に選択することができ、例えば、種々の樹脂フィルム、金属フィルム、ガスバリア性フィルム等が使用される。包装袋が高い強度を有することが要求される場合は、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の強靱な樹脂のフィルムを使用することができる。このような樹脂のフィルムとしては、未延伸フィルム、あるいは、一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。
【0049】
<8>貼り合わせ
本発明において、上記基材フィルム上に、接着剤を塗布して接着剤層を形成し、この上に上記積層フィルムからなるシーラント層を積層して、本発明の包装袋を形成する積層体が得られる。ここで、積層フィルムのヒートシール成樹脂層が、積層体の表層となるようにする。
基材フィルムと接着剤層との間に、又は基材フィルム表面に、包装袋の用途に応じて任意の包装資材フィルムや印刷層が積層されていてもよい。
【0050】
本発明において、接着剤層を形成する接着剤としては、特に限定されず、用途や使用環境などに応じて任意の接着剤を選択して使用することができ、また接着剤に変えて粘着剤を使用することも可能である。従って、本発明でいう接着剤とは、接着剤と粘着剤を含む概念である。
【0051】
接着剤の具体例としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニルーエチレン共重合体などのポリ酢酸ビニル系、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそのエステル、あるいはこれらとポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニルなどとの共重合体などのアクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ゴム系、ポリオレフィン系、SBSやSIBS等のポリスチレン系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、その他公知の接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、水分散型、水溶液型、溶剤型、無溶剤型などいずれであっても構わない。
【0052】
<9>包装袋の製造及び使用
本発明の包装袋は、上述の積層体を二つ折にするか、又は積層体2枚を用意し、そのヒートシール性樹脂層の面を対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋として製造すること
ができる。
【0053】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0054】
本発明の包装袋は、種々のパッケージ材料として使用することができる。特に、本発明の包装袋は、易引き裂き性を示しながらも高い腰や強度を有するため、使用フィルム面積に対して内容量が大きいガセットパウチや、底部に自立能を有するスタンディングパウチとして、好適に使用することができる。
【0055】
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0056】
[実施例1]
(1)下記の(イ)、(ロ)、(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製エボリュー(R)SP2020、密度=0.923g/cm3、190℃でのMFR=2.3g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R) 8007F、密度=1.02g/cm3)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LLDPE UJ580、密度=0.925g/cm3、190℃でのMFR=20g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
(ハ)ラミネート層
直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製エボリュー(R)SP2020、密度=0.923g/cm3、190℃でのMFR=2.3g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
【0057】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を50μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を10μmとし、(ハ)の樹脂組成物からなるラミネート層の層厚を50μmとして、総厚110μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。なお、本実施例において、層厚は、SONY(株)製μ−メータにより測定した。
【0058】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、ラミネート層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムPET12(東洋紡績株式会社製エスペット(R)T4102片面処理(厚さ12μm))を貼り合わせ、次いで同様に2液硬化型ウレタン接着剤を塗布し、二軸延伸ナイロンフィルムONy15(三菱樹脂株式会社製サントニール(R)両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、PET12/接着剤層/ONy15/接着剤層/ラミネート層50μm/易引き裂き性樹脂層10μm/ヒートシール性樹脂層50μmの構成を有する。
【0059】
(4)次に、上記で製造した積層体から130mm×170mmの長方形2枚を切り出し、ヒートシール性樹脂層の面を対向して重ね合わせ、その外周周辺の端部をシール温度190℃、1kg/cm2、1秒、シール幅10mmの条件でヒートシールし、三方シール袋として本発明の包装袋を製造した。
その後、内容物として、水200ccを注入し、製袋時と同様の条件でヒートシールし、密封して包装製品とした。
完成した試験袋サンプルの耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0060】
[実施例2]
(1)下記の(イ)、(ロ)、(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製ウルトゼックス(R)2022L、密度=0.919g/cm3、190℃でのMFR=2.0g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R) 6013F、密度=1.02g/cm3)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LLDPE UJ480密度=0.923g/cm3、190℃でのMFR=30g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
(ハ)ラミネート層
直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製ウルトゼックス(R)2022L、密度=0.919g/cm3、190℃でのMFR=2.0g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
【0061】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を60μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を10μmとし、(ハ)の樹脂組成物からなるラミネート層の層厚を60μmとして、総厚130μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。
【0062】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、ラミネート層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:芳香族イソシアネート)を塗布し、二軸延伸ナイロンフィルムONy15(ユニチカ株式会社製エンブレム(R)NX両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、ONy15μm/接着剤層/ラミネート層60μm/易引き裂き性樹脂層10μm/ヒートシール性樹脂層60μmの構成を有する。
【0063】
(4)次に、実施例1と同様にして、三方シール袋として本発明の包装袋を製造し、さらに、水200ccを入れた試験袋サンプルを製造し、その耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0064】
[実施例3]
(1)下記の(イ)、(ロ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製ハイゼックス(R)HZ3300F、密度=0.950g/cm3、190℃でのMFR=1.1g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R) 8007
F、密度=1.02g/cm3)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LDPE LJ802密度=0.918g/cm3、190℃でのMFR=22g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
【0065】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を100μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を15μmとして、総厚115μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。
【0066】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、易引き裂き性付与層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、シリカ蒸着PETフィルムVM−PET12(三菱樹脂株式会社製テックバリア(R)VX片面処理(厚さ12μm))を貼り合わせ、次いで同様に2液硬化型ウレタン接着剤を塗布し、二軸延伸ナイロンフィルムONy15(東洋紡績株式会社製ハーデン(R)N4140両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、ONy15μm/接着剤層/VM−PET12μm/接着剤層/易引き裂き性樹脂層15μm/ヒートシール性樹脂層100μmの構成を有する。
【0067】
(4)次に、実施例1と同様にして、三方シール袋として本発明の包装袋を製造し、さらに、水200ccを入れた試験袋サンプルを製造し、その耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0068】
[実施例4]
(1)下記の(イ)、(ロ)、(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
低密度ポリエチレン(日本ユニカー株式会社製NUC−8000、密度=0.924g/cm3、190℃でのMFR=3.2g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R) 9506F−04、密度=1.02g/cm3)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LDPE LJ803密度=0.921g/cm3、190℃でのMFR=22g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
(ハ)ラミネート層
直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製エボリュー(R)SP2020、密度=0.923g/cm3、190℃でのMFR=2.3g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
【0069】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を70μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を15μmとし、(ハ)の樹脂組成物からなるラミネート層の層厚を45μmとして、総厚130μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。
【0070】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、ラミネート層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムPET12(東レ株式会社製ルミラー(R)片面処理(厚さ12μm))を貼り合わせ、次いで同様に2液硬化型ウレタン接着剤を塗布し、二軸延伸ナイロンフィルムONy15(ユニチカ株式会社製エンブレム(R)NX両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、ONy15μm/接着剤層/PET12μm/接着剤層/ラミネート層45μm/易引き裂き性樹脂層15μm/ヒートシール性樹脂層70μmの構成を有する。
【0071】
(4)次に、実施例1と同様にして、三方シール袋として本発明の包装袋を製造し、さらに、水200ccを入れた試験袋サンプルを製造し、その耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0072】
[実施例5]
(1)下記の(イ)、(ロ)、(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
低密度ポリエチレン(株式会社日本ポリエチレン製ノバテックLF342M、密度=0.924g/cm3、190℃でのMFR=1.0g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R)6013F、密度=1.02g/cm3、190℃でのMFR=2.3g/10分)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LDPE UF350密度=0.921g/cm3、190℃でのMFR=20g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
(ハ)ラミネート層
直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製エボリュー(R)SP2020、密度=0.923g/cm3、190℃でのMFR=2.3g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
【0073】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を20μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を15μmとし、(ハ)の樹脂組成物からなるラミネート層の層厚を105μmとして、総厚140μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。
【0074】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、ラミネート層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムPET12(東レ株式会社製ルミラー(R)片面処理(厚さ12μm))を貼り合わせ、次いで同様に2液硬化型ウレタン接着剤を塗布し、エチレン・ビニルアルコールコポリマーフィルムEVOH15(株式会社クラレ製エバール(R)EF−XL両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、EVOH15μm/接着剤層/PET12μm/接着剤層/ラミネート層105μm/易引き裂き性樹脂層15μm/ヒートシール性樹脂層20μmの構成を有する。
【0075】
(4)次に、実施例1と同様にして、三方シール袋として本発明の包装袋を製造し、さらに、水200ccを入れた試験袋サンプルを製造し、その耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0076】
[実施例6]
(1)下記の(イ)、(ロ)、(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
エチレン・プロピレンブロックコポリマー(サンアロマー株式会社製PF380A、密度=0.90g/cm3、190℃でのMFR=1.0g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R) 6013F、密度=1.02g/cm3、190℃でのMFR=2.3g/10分)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LLDPE UJ480密度=0.923g/cm3、190℃でのMFR=30g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
(ハ)ラミネート層
エチレン・プロピレンブロックコポリマー(サンアロマー株式会社製PF380A、密度=0.90g/cm3、190℃でのMFR=1.0g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
【0077】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を60μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を20μmとし、(ハ)の樹脂組成物からなるラミネート層の層厚を60μmとして、総厚140μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。
【0078】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、ラミネート層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムPET16(東洋紡株式会社製E5100片面処理(厚さ16μm))を貼り合わせ、次いで同様に2液硬化型ウレタン接着剤を塗布し、二軸延伸ナイロンフィルムONy15(株式会社興人製ボニール(R)RX両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、ONy15μm/接着剤層/PET16μm/接着剤層/ラミネート層60μm/易引き裂き性樹脂層20μm/ヒートシール性樹脂層60μmの構成を有する。
【0079】
(4)次に、実施例1と同様にして、三方シール袋として本発明の包装袋を製造し、さらに、水200ccを入れた試験袋サンプルを製造し、その耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0080】
[実施例7]
(1)下記の(イ)、(ロ)、(ハ)の樹脂組成物を調製した。
(イ)ヒートシール性樹脂層
エチレン・プロピレンブロックコポリマー(ダウケミカル株式会社製D114、密度=0.90g/cm3、190℃でのMFR=0.6g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
(ロ)易引き裂き性付与層
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製TOPAS(R) 6013F、密度=1.02g/cm3)100質量部、及び低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテック(R)LDPE LJ803密度=0.921g/cm3、190℃でのMFR=22g/10分)2質量部を含む混合物を十分に混錬して、樹脂組成物を調製した。
(ハ)ラミネート層
エチレン・プロピレンブロックコポリマー(ダウケミカル株式会社製D114、密度=0.90g/cm3、190℃でのMFR=0.6g/10分)100質量部からなる樹脂組成物を調製した。
【0081】
(2)次に、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これらを、上吹き空冷インフレーション共押出成膜機に付し、(イ)の樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂層の層厚を50μmとし、(ロ)の樹脂組成物からなる易引き裂き性付与層の層厚を5μmとし、(ハ)の樹脂組成物からなるラミネート層の層厚を50μmとして、総厚105μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、だまの無い平滑な膜表面を有し、また優れた透明性を示していた。
【0082】
(3)次に、上記で製造した積層フィルムを使用し、ラミネート層表面へコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムPET16(東洋紡株式会社製E5100片面処理(厚さ16μm))を貼り合わせ、次いで同様に2液硬化型ウレタン接着剤を塗布し、二軸延伸ナイロンフィルムONy15(東洋紡株式会社製ハーデン(R)N1200両面処理(厚さ15μm))を貼り合わせた。
得られた積層体は、ONy15μm/接着剤層/PET16μm/接着剤層/ラミネート層50μm/易引き裂き性樹脂層5μm/ヒートシール性樹脂層50μmの構成を有する。
【0083】
(4)次に、実施例1と同様にして、三方シール袋として本発明の包装袋を製造し、さらに、水200ccを入れた試験袋サンプルを製造し、その耐落下性、引き裂き性の確認を行った。
【0084】
[評価]
実施例1〜7で製造した試験袋サンプルについて、落下耐性及び引き裂き性を下記のように評価した。
落下耐性:実施例1〜7の試験袋サンプルを、高さ120cmからコンクリート面へ5回自由落下させ、テスト後の袋の状態確認を行った。
引き裂き性:5人のパネラーが試験袋サンプルの任意の箇所から素手でカットし、無理なく開封できた場合には3点、カットはできたが不満が残る場合は2点、引っかかりが生じ、美麗にカットできなかった場合は1点とし、その平均点を算出した。
結果を以下の表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
[試験結果]
上記表1に示したとおり、本発明の積層フィルムをシーラントフィルムとして有する袋は、耐落下衝撃性に優れ、内容物を取り出す際に必要な易引き裂き性を有し、優れた物性を有した袋であることが確認された。
【符号の説明】
【0087】
1.基材フィルム
2.接着剤層
3.易引き裂き性付与層
4.ヒートシール性樹脂層
5.ラミネート層
6.印刷層
7.第2の接着剤層
8.包装資材フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、少なくとも接着剤層とシーラント層とをこの順に積層した積層体からなる包装袋であって、
該シーラント層は、ヒートシール性樹脂層上に易引き裂き性付与層を有する積層フィルムからなる層であり、
該ヒートシール性樹脂層はポリオレフィン系樹脂からなる層であり、
該易引き裂き性付与層はシクロオレフィンコポリマーと結晶性樹脂とを含む樹脂組成物からなる層であり、
該結晶性樹脂は、190℃でのメルトフローレートが15〜60g/10分である低密度ポリエチレンであって、該樹脂組成物中に1〜10質量%の割合で存在し、
前記ヒートシール性樹脂層が最内層となるように製袋して得られることを特徴とする、上記包装袋。
【請求項2】
シーラント層を形成する積層フィルムが、さらに易引き裂き性付与層上にラミネート層を有し、該ラミネート層は、ポリオレフィン系樹脂からなる層であることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
ヒートシール性樹脂層を形成するポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装袋。
【請求項4】
ラミネート層を形成するポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の包装袋。
【請求項5】
結晶性樹脂が、樹脂組成物中に2〜5質量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
結晶性樹脂の190℃でのメルトフローレートが20〜60g/10分であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項7】
シーラント層を形成する積層フィルムが、共押出多層インフレーション法により成膜されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項8】
スタンディングパウチまたはガセットパウチ形式の包装袋であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11588(P2012−11588A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147942(P2010−147942)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】