説明

易引き裂き性多層延伸フィルム

【課題】引き裂き性に優れ、手で容易に引き裂け、かつ、引き裂いた方向と同じ方向に直線的に引き裂くことができる多層フィルムの提供と、フィルムを製袋加工する際に、皺や変形がない等の加工適性に優れる多層フィルムの提供。
【解決手段】一方の表面層が、ビカット軟化温度が110℃〜155℃であるスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)と隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層された少なくとも2層からなることを特徴とする多層延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品などの易開封性の袋に最適な、引き裂き性に優れる多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、雑貨の包装に各種フィルムが使用されている。フィルムから作られている包装材料は、使用する場合に容易に開封する目的として、従来からセロファンが多く用いられてきた。セロファンとポリエチレンをラミネートした積層フィルムを、セロファンを袋の外側に、ポリエチレンフィルムを袋の内側になるように位置させて、2枚の積層フィルムをヒートシールして包装用袋としており、他のフィルムを表面素材として使用した袋に比べて端部からカットでき、易開封の袋として使用されている。
しかしながら、その袋の開封性は不十分であり、引き裂いた方向とは別方向に引き裂け、内容物がこぼれて、取り出しにくい。
【0003】
セロファンはもともとセルロースから作られており、水分を多く吸収しやすく、水蒸気を透過しやすい性質を持つものである。水分を吸収することによって、セロファンは寸法変化を起こし、ラミネート加工する場合に積層フィルムが大きくカールしてしまい、その積層フィルムを製袋加工する際のロスが多かった。また、セロファンからなる積層フィルムによって内容物を包装した際には、水蒸気を透過しやすいことによって、内容物が湿ってしまい、例えば粉薬等を入れた袋においては粉薬まで湿り、開封後取り出しづらく、薬の変質の危険性もあった。
セロファンはその吸湿度によって、フィルムの剛性や耐衝撃性が異なり、製袋時やラミネートの加工時にロスを生じたり、衝撃によって破れ易かったり、折った部分でピンホールが発生していた。これらは、積層フィルムとして製袋加工した際においても、内容物がこぼれ、特に医薬品の場合には内容物の変質にもつながっていた。
【0004】
セロファンの代わりに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルムを使用する試みも実施されたが、これらのフィルムは、もともとのフィルムの剛性が低いこと等から、袋とした場合に必ずしも容易に開封できなかった。その為に袋に切り欠き部やノッチをいれたりしていたが、袋のどこからでも容易に開封できるものではなく、加工段階で内容物に傷をつけてしまう等の問題点もあった。
これらの問題点を解消するために、セロファンの代わりに熱可塑性樹脂フィルムとして一般のポリスチレン樹脂からなる2軸延伸ポリスチレンフィルムを使用し、ヒートシール性のあるポリオレフィンフィルムとの積層フィルムを作り、積層フィルムをヒートシールして易開封の袋とした技術の開示がある(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、ポリスチレンとポリオレフィンとの融点差が小さく、ヒートシールしにくいという問題点があった。上述したセロファンとポリエチレンからなる積層フィルムは、医薬品包装用袋として普及しているが、これらを製袋する機械は、基本的に溶融しないセロファンを念頭に設計された機械である為、ヒートシール温度が合わず、ヒートシールした部分が収縮して良好な袋にならない。袋になったものでも、ポリスチレン樹脂の溶融により、フィルムを作る樹脂が固化し、易開封できなかった。良好な袋を得るためにヒートシール温度を下げて製袋すると、製袋速度が遅くなり、効率が低下した。この為、実際にこれらの目的で使用されるには至っていない。
【0006】
これらの問題を解決する為に、ヒートシール樹脂として特殊なポリオレフィンを使用することにより、ポリスチレンとポリオレフィンの融点差を大きくした積層フィルムがあり、これにより効率的に袋を作ることもなされている(特許文献2)。
しかしながら、開示されているポリオレフィンの融点は、70℃〜105℃であり、一般的なポリスチレンとの積層フィルムは、良好にヒートシールすることができなかった。一般的なポリスチレンは、その軟化温度が105℃程度で、ほとんど有効な融点差とすることができず、ヒートシールの効率は上がらなかった。一般に普及された製袋機の設定温度では、ヒートシールに不具合を生じ、良好な袋とする場合、特殊なヒートシール温度を下げた製袋機とする必要があり、これを普及するまでには至っていない。
【0007】
ポリスチレン系樹脂として、高度のシンジオタクチック構造を有する結晶性スチレン系重合体を用いた樹脂組成物を使用することにより、積層フィルム中のポリスチレン樹脂のビカット軟化点と、ポリオレフィンの融点との差を大きくする積層フィルムがあり、この積層フィルムをヒートシールすることにより、効率的に袋を作ることも開示されている(特許文献3)。
しかしながら、シンジオタクチック構造を有するポリスチレンは、結晶性があるため、積層フィルムにするためにポリオレフィンとラミネートする場合や、得られた積層フィルムを製袋する場合に、各々の工程で熱がフィルムに伝わり、フィルムが不透明化したり、部分的に白化したりして、得られた袋も実用に耐えなかった。シンジオタクチック構造を有するポリスチレンを透明なフィルムとするときにも、専用の設備が必要となり、工程上の管理が難しく、均一な透明フィルムを得ることが困難であり、高コストであった。この為、やはりこれを普及するまでには至っていない。
【0008】
ポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルム等の一般に広く用いられるフィルムと、ポリスチレンフィルム等の引き裂き易いフィルムとを積層し、この積層されたフィルムを基材フィルムとして易開封性を狙った発明があるが(特許文献4)、これらは、一般の破れにくさを狙ったフィルムを用いていることから、相反する性能を持ったフィルムの重ね合わせに過ぎず、引き裂き性や引き裂き直進性は不十分であった。
【特許文献1】特開昭63−79号公報
【特許文献2】特開平11−171196号公報
【特許文献3】特開平5−338089号公報
【特許文献4】特開平10−166529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、手で容易に引き裂け、かつ、引き裂いた方向と同じ方向に直線的に引き裂くことができる多層フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、また、フィルムを製袋加工する際に、皺や変形がない等の加工適性に優れる多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)一方の表面層が、ビカット軟化温度が110℃〜155℃であるスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)と隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層された、少なくとも2層からなることを特徴とする多層延伸フィルム。
(2)一方の表面層が、ビカット軟化温度が110℃〜155℃であるスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)と隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層され、他方の表面層がエチレン系樹脂層(C)からなる少なくとも3層であることを特徴とする多層延伸フィルム。
(3)加熱収縮応力が、流れ方向、巾方向共に0.1MPa〜4MPaであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の多層延伸フィルム。
(4)スチレン系樹脂層(A)が、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、及びスチレン−αメチルスチレン共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の多層延伸フィルム。
(5)スチレン系樹脂層(A)が、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−共役ジエン系共重合樹脂、及びスチレン−脂肪族カルボン酸系共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種を0.5〜35.0重量%含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の多層延伸フィルム。
(6)カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の多層延伸フィルム。
(7)カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が、メチルアクリレートの含有率が9〜25重量%であるエチレン−メチルアクリレート共重合樹脂からなることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の多層延伸フィルム。
(8)各層を構成する樹脂をそれぞれ溶融して共押出しした後に、延伸することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の多層延伸フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、手で容易に引き裂くことができ、かつ、引き裂いた方向と同じ方向に直線的に引き裂くことができる多層フィルムを提供でき、さらにはフィルムを製袋加工する際の皺や変形がない等の加工適性に優れ、易開封包装用のフィルムとして好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、好ましい態様を中心に、以下詳細に説明する。
本発明の多層フィルムは、一方の表面層が特定のビカット軟化温度を有するスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)と隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が、他方の表面又は中間に積層されたフィルムである。スチレン系樹脂層(A)とエチレン系共重合樹脂層(B)以外に他の層が積層されていてもよい。エチレン系共重合樹脂層(B)が本発明のフィルムの中間に積層されている場合、他方の表面には目的に合わせた層を積層すればよく、ヒートシール層が必要な場合は、エチレン系樹脂層(C)を積層させることが好ましい。
【0013】
本発明で使用する、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は、110〜155℃であり、好ましくは113〜147℃、より好ましくは120〜140℃である。
スチレン系樹脂のビカット軟化温度は、ASTM−D−1525に準じて測定される。ビカット軟化温度が110℃より高い場合、フィルムの剛性が適度に高くなり、引き裂き直進性、及びフィルムにノッチを入れないでも、手で容易に引き裂くことができる引き裂き性が特に良好となる。また、このフィルムを用いて包装用の袋を作る際は、製袋加工する時のヒートシールされた部分に熱収縮が起こりにくく、袋のゆがみや、ヒートシール部分のピンホールが起きにくい。フィルムのビカット軟化温度が155℃より低い場合、十分な引き裂き直進性、引き裂き性を付与できる。また、フィルムに適度な強靭性が得られ、フィルムに衝撃が加わったときに簡単に破れず、ピンホールが起きにくい。
スチレン系樹脂のビカット軟化温度によって、フィルムの引き裂き直進性、引き裂き性が左右されるため、ビカット軟化温度は本発明の重要な要件である。
本発明において、スチレン系樹脂層(A)は、スチレンを50重量%以上含有するスチレン系共重合体が好ましい。
【0014】
スチレン系共重合体における、スチレンとの共重合成分としては、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、β−メチルスチレン、ジフェニルエチレン等のスチレン系誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のアルキル置換メタクリレート化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキル置換アクリレート化合物、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、N−置換無水マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロロスチレン、ブロモスチレン等のビニルモノマー等が挙げられ、これらの単量体を単独又は2種以上混合して用いることができる。本発明では、これらのスチレン系樹脂を単独又は2種類以上混合してもよい。
【0015】
これらの中でも、耐熱性と易引き裂き性の観点から、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体、及びスチレンと無水マレイン酸との共重合体が好ましく、耐熱性向上の観点から、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体がより好ましい。スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体は、耐熱性が向上する点、熱溶融加工時のゲル生成が起こりにくい点で特に好ましい。
スチレン共重合体中のスチレンとの共重合成分の含有量は、50重量%以下であれば特に限定されない。例えば、好ましいスチレン共重合体であるスチレンとアクリル酸、及びスチレンとメタクリル酸との共重合体においては、アクリル酸、及びメタクリル酸の共重合割合は、2〜30重量%が好ましい。アクリル酸、及びメタクリル酸の割合を2重量%以上にすることにより、十分な耐熱性が得られる。また、アクリル酸、及びメタクリル酸の割合を30重量%以下にすることにより、熱溶融加工時のゲル生成の頻度を少なくすることができ、十分な延伸安定性とフィルムの二次加工適性が得られる。
【0016】
スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体においては、α−メチルスチレンの共重合割合として、8〜50重量%が好ましい。α−メチルスチレンの割合を8重量%以上にすることにより、十分な耐熱性が得られる。また、α−メチルスチレンの割合を50重量%以下にすることにより、十分な延伸安定性とフィルムの強度、及び袋への加工適性が得られる。
スチレンと無水マレイン酸との共重合体においては、無水マレイン酸の共重合割合として、2〜13重量%が好ましい。無水マレイン酸の割合を2重量%以上にすることにより、十分な耐熱性が得られる。また、無水マレイン酸の割合を13重量%以下にすることにより、熱溶融加工時のゲル生成の頻度を少なくすることができ、十分な延伸安定性とフィルムの袋への加工適性が得られる。
【0017】
本発明では、スチレン系樹脂の製法に関しては特に限定されず、公知の製法を用いることができる。一般的なスチレン系樹脂の重合法としては、例えば、熱や開始剤を用いたラジカル溶液重合、ラジカル懸濁重合、ラジカル乳化重合、有機金属化合物を用いたアニオン重合、遷移金属錯体による配位アニオン重合、ルイス酸を用いたカチオン重合等による方法がある。また、市販の樹脂を使用することができ、例えば、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂としては、PSジャパン社製の商品名:G9001や大日本インキ化学工業社製、リューレックス(登録商標)A−14、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂としては、NOVA社製、DYLARK(登録商標)232、332等が挙げられる。
【0018】
スチレン系樹脂の分子量は特に限定されず、フィルムを製膜する際に十分な溶融粘性が得られるものであればよい。
スチレン系樹脂には、本発明のフィルムの特性を損なわない限り、製膜性や耐衝撃性を与える目的で、スチレン系樹脂層の全重量に対して50重量%以下の範囲で各種樹脂を加えてもよい。各種樹脂としては、スチレン系樹脂と相溶する樹脂であればよく、例えば、ABS樹脂、PPE樹脂、スチレン系エラストマー、ハイインパクトポリスチレン等が挙げられる。相溶性の観点から、スチレン系エラストマー、ハイインパクトポリスチレンが好ましい。
【0019】
スチレン系エラストマーとは、スチレン系樹脂に製膜性や耐衝撃性を与える物質で、一般的に室温でゴム弾性を有する物質であり、分子中に弾性を示すゴム成分(ソフトセグメント)を有するものをいう。スチレン系エラストマーのビカット軟化温度は、汎用ポリスチレンのビカット軟化温度(105℃)よりも低く、一般的には90℃よりも低い。スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−共役ジエン系化合物、スチレン−脂肪族カルボン酸系共重合樹脂等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種を添加することはより好ましい態様である。
フィルムを製膜する際の製膜性、得られるフィルムの耐衝撃性、耐熱性、腰とのバランス、透明性の向上の観点から、スチレン系樹脂層(A)中に、スチレン系エラストマー、又は/及び、ハイインパクトポリスチレンを0.5〜35.0重量%添加することが好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。添加量が0.5重量%以上の場合、フィルムを製膜する際に製膜性が安定し、得られるフィルムの耐衝撃性が向上する。また、添加量が35重量%以下の場合、フィルムの引き裂き性、耐熱性、腰の強さが良好であり、透明性が高い。これらのスチレン系エラストマー、又は/及び、ハイインパクトポリスチレンの添加は、フィルムを作る際に種類や量を選定すればよく、当事者が適宜選択すればよい。
【0020】
スチレン系樹脂層(A)の厚みは好ましくは5〜60μmであり、より好ましくは10〜50μm、更に好ましくは15〜40μmである。スチレン系樹脂層(A)の厚みが5μm以上の場合、フィルムの腰が十分であり、フィルムの加工適性や作業性がよい。スチレン系樹脂層(A)の厚みが60μm以下の場合、フィルムの引き裂き性が向上し、手でより容易に引き裂くことができる。
本発明のフィルムは、一方の表面層であるスチレン系樹脂層(A)に隣接して、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層されている。
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が有する特性としては、スチレン系樹脂層(A)との接着強度と引張り伸度が重要である。接着強度が高く、引張り伸度が低いと、フィルムの引き裂き時に剥離が起こりにくいため、引き裂き性に優れる。
【0021】
本発明のフィルムにおけるエチレン系共重合樹脂層(B)は、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂からなり、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂を50重量%以上含有するものであれば、特に限定されない。
カルボニル基を含有する単量体成分としては、カルボン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられ、エチレン系共重合樹脂としては、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリエチレン樹脂(例えば、無水マレイン酸、カルボン酸による変性ポリエチレン樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等が挙げられる。
【0022】
カルボニル基を含有する単量体成分の含有量は、本発明のフィルムの特性を損なわない限り特に限定されないが、好ましくは0.3〜40重量%であり、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜25重量%である。カルボニル基を含有する単量体成分の含有量が0.3重量%以上の場合、スチレン系樹脂層(A)との接着一体化が十分であり、フィルムの引き裂き時に剥離が起りにくいため引き裂き性に優れる。カルボニル基を含有する単量体成分の含有量が40重量%以下の場合、エチレン系共重合樹脂層(B)の樹脂の吸湿による、製膜時のフィルムへの気泡混入が起こりにくいため好ましい。
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)には、本発明のフィルムの特性を損なわない範囲で、エチレン系樹脂を適宜混合して用いることができる。エチレン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が使用でき、それらの混合物でもよい。また、シングルサイト触媒(メタロセン系触媒)を用いて作られたエチレンとα−オレフィンとの共重合樹脂をこれらに適宜配合することもできる。
【0023】
エチレン系樹脂の配合量は特に限定されないが、スチレン系樹脂層(A)との接着性の観点から50重量%以下が好ましい。エチレン系樹脂を配合することによって、エチレン系共重合樹脂層(B)自体の伸度が下がり、引き裂き性を高めることができる。
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、スチレン系樹脂層(A)との接着性を高め、引き裂き性に優れるものとしては、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が好ましく、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂がより好ましい。
エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂におけるアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられるが、エチレン−メチルアクリレート共重合樹脂が好適である。メチルアクリレートの含有率が9〜25重量%のエチレン−メチルアクリレート共重合樹脂が更に好ましい。
【0024】
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、スチレン−ブタジエン−アクリル酸エステル共重合樹脂、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合樹脂等のスチレン系樹脂を5〜50重量%の割合で添加してもよい。エチレン系共重合樹脂層(B)に、スチレン系樹脂を添加することにより、スチレン系樹脂層(A)との接着強度をより高められる上、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)自体の引張り伸度をより下げられることから、多層延伸フィルムの引き裂き性をより向上することができる。スチレン系樹脂を5重量%以上混合することにより、スチレン系樹脂層(A)との接着強度が高まり、スチレン系樹脂を50重量%以下にすることにより、積層フィルムのヒートシール性が向上する。
スチレン−ブタジエン−アクリル酸エステル共重合樹脂としては、スチレン−ブタジエン−メチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合樹脂、例えばPSジャパン社製の商品名:SX−100、大日本インキ化学工業社製のクリアパクト(登録商標)等が挙げられる。
【0025】
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)の厚みは特に限定されないが、スチレン系樹脂層(A)との接着性、フィルムの引き裂き性の観点から、0.5〜60.0μmが好ましい。より好ましくは1.0〜20.0μm、更に好ましくは、2.0〜5.0μmである。カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)の厚みが0.5μm以上である場合、スチレン系樹脂層(A)との接着一体化が十分であり、フィルムの引き裂き時に剥離が起こりにくいため、引き裂き性に優れる。エチレン系共重合樹脂層(B)の厚みが60.0μm以下である場合、コストが低くなる上、エチレン系共重合樹脂層(B)の引き裂き力が適度であるため、フィルムを容易に引き裂きくことができる。
【0026】
スチレン系樹脂層(A)に対するエチレン系共重合樹脂層(B)の厚み比率は特に限定されないが、フィルムの引き裂き性の観点から0.2〜60が好ましく、より好ましくは0.4〜30、更に好ましくは0.6〜20である。
本発明において、スチレン系樹脂層(A)とエチレン系共重合樹脂層(B)との接着強度は1.5N以上が好ましく、より好ましくは5N以上である。接着強度は180°剥離法によって、引張り試験機により測定でき、15mm巾当りの荷重(kgf)で表わす。接着強度が1.5N以上の場合、スチレン系樹脂層(A)との積層一体化が十分であり、フィルムが層間で剥離することがなく、引き裂き性が良好になる。
【0027】
エチレン系共重合樹脂層(B)の引張り伸度は900%以下が好ましく、より好ましくは750%以下である。引張り伸度が900%以下の場合、積層フィルムの引き裂き時に伸び難いため、層間での剥離が起こりにくく、引き裂き性が良好になる。
本発明のフィルムは、一方の表面層が、ビカット軟化温度が110℃〜155℃であるスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)に隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層され、他方の表面層がエチレン系樹脂層(C)からなることが好ましい。エチレン系樹脂層(C)を積層することは、ヒートシール性を付与したり、フィルムの水蒸気透過度をより低くすることができるため、袋等への加工適性が良好であり、袋に加工して使用した場合に内容物の吸湿を少なくすることができる。
【0028】
フィルムの水蒸気透過度(JIS Z0208のカップ法により評価する。40℃×90%の環境条件下でのフィルムを透過した水蒸気の重量で、フィルム厚み40μm当りに換算した値)は、本発明のフィルムの特性を損なわない限り特に限定されないが、フィルムを袋等に加工する場合、内容物の吸湿を防ぎ、長期保存を可能とするためには、好ましくは0〜90g/m・day、より好ましくは0〜70g/m・day、更に好ましくは0〜40g/m・dayである。
本発明のフィルムにおけるエチレン系樹脂層(C)に用いることができるエチレン系樹脂の種類は特に限定されない。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が使用でき、それらの混合物でもよい。また、樹脂の軟化点やヒートシール温度を制御する目的で、ヒートシール性を有するシングルサイト触媒(メタロセン系触媒)を用いて作られたエチレンとα−オレフィンとの共重合樹脂が好ましく、単独もしくは他のエチレン系樹脂との組成物であってもよい。
【0029】
エチレン系樹脂層(C)に用いるエチレン系樹脂の融点は限定されないが、スチレン系樹脂層(A)のスチレン系樹脂のビカット軟化温度より5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低い方がより好ましく、20℃以上低い方が更に好ましい。5℃以上低いと、ヒートシールできる温度範囲が広く得られ、良好な積層フィルムを得ることができる。
エチレン系樹脂層(C)の引張り伸度は、900%以下が好ましく、より好ましくは700%以下である。引張り伸度が900%以下の場合、層間での剥離が起こりにくく、積層されたスチレン系樹脂層(A)が持つ引き裂き性を向上させ、多層フィルムの引き裂き性が良好になる。引張り伸度は、JIS K7113により測定される。
【0030】
エチレン系樹脂層(C)の厚みは、ヒートシール層や水蒸気バリア層として機能すれば、適宜その厚みを選ぶことができる。好ましくは5〜60μmであり、より好ましくは、10〜50μmであり、更に好ましくは15〜40μmである。5μm以上の場合、十分なヒートシール強度が得られ、製袋する際に接着不良やピンホールが発生しにくくなる。50μm以下の場合、コストが低くなる上、引き裂き性が良好になる。
本発明におけるフィルムの熱安定性、機械的安定性、及び耐候性を向上させるために、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤を添加することが好ましい。熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤の例としては、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。
【0031】
本発明のフィルムには、上記の安定剤以外に、無機系微粒子や有機系微粒子等の微粒子状アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤等、公知の添加剤を、本発明のフィルムの特性を損なわない範囲で配合してもよい。
本発明のフィルムを用いて袋を製造する際、袋に入れる医薬品や食品等が粉状の場合は、充填包装する際に、粉末が帯電して入りにくいのを防いだり、袋から充填された粉末等を取り出し易くするために、各樹脂層に帯電防止剤を練り込んだり、コーティングする方法はより好ましい態様である。
帯電防止剤は、内容物が直接接触する内層側にあることが好ましい。更に、内容物が医薬品であれば、表面に塗布する方法よりも、樹脂への練り込みによる方法がより好ましく、使用する場合に内容物が中に残らない。特に、医薬品の場合は、その摂取量は限定されるため、内層に帯電防止加工することはより好ましい。
【0032】
帯電防止剤を表面にコーティングする際に、必要に応じてコロナ処理等の親水化処理を施し、フィルム表面の濡れ性を適度に調整することは、界面活性剤、帯電防止剤の塗膜均一性の上で、より好ましい態様である。
本発明のフィルムにおいて、ASTM−D1504法に準じて測定した、(ビカット軟化温度+30℃)における加熱収縮応力は、流れ(MD)方向、巾(TD)方向共に0.1MPa〜4.0MPaが好ましく、0.3MPa〜3.0MPaがより好ましい。加熱収縮応力は、後述する方法により測定する。
加熱収縮応力は、延伸フィルムの配向性を表す指標であり、本発明での引き裂き性や引き裂き直進性の良さは、スチレン系樹脂層(A)に含まれるスチレン系樹脂の配向性によるものである。本発明の多層延伸フィルムにおいて得られる加熱収縮応力は、ビカット軟化温度が高いスチレン系樹脂層(A)のスチレン系樹脂の配向性により決まる。加熱収縮応力は、スチレン系樹脂について加熱収縮応力最大値の得られる条件(ビカット軟化温度+30℃)で測定する。加熱収縮応力を0.1MPa以上とすることにより、樹脂の配向が十分得られることから、引き裂き性や引き裂き直進性が向上する。加熱収縮応力を4.0MPa以下とすることにより、製袋加工する際の収縮が起こりにくく、袋にしわが入りにくくなる。(ビカット軟化温度+30℃)における加熱収縮応力は、延伸の際の延伸温度、倍率、延伸後のヒートセットによる配向緩和処理によって、上記範囲の加熱収縮応力差となるように適宜調整することができる。
【0033】
本発明のフィルムの熱収縮率(120℃のシリコーンオイルに10秒間浸漬した時の収縮率)は特に限定されないが、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜7%である。熱収縮率が10%以下であれば、フィルムを袋等へ製袋加工する際に、ヒートシール部での皺等の発生が低減する。
本発明におけるフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜150μmであり、医薬品や食品等の包装用途に用いる場合は、加工性の点から、より好ましくは30〜100μmである。
本発明のフィルムの製膜方法としては、特に限定されないが、構成する層ごとに独立した押出機により各層の樹脂をそれぞれ溶融し、共押出しした後に、サーキューラーダイにより積層一体化し、その後延伸する共押出しインフレーション法、フィードブロック式Tダイ、マルチマニホールド式Tダイにより各層の樹脂を積層一体化した後に延伸する共押出しテンター法等が挙げられる。
【0034】
インフレーション法では、延伸倍率はMD方向、TD方向それぞれに3〜12倍が好ましい。延伸倍率が3倍以上の場合は、延伸配向度が適度で、多層フィルムの耐衝撃性が向上する上、引き裂き性も向上する。延伸倍率が12倍以下の場合は、フィルムの熱収縮率が低く、製袋加工する場合、皺等の発生の問題がない。延伸配向の付与による当該フィルムの特徴である引き裂き性の高さと腰の強さの向上、延伸均一性の観点から、延伸倍率は5〜10倍がより好ましい。
テンター法としては、逐次二軸テンター法、同時二軸テンター法が挙げられ、どちらの方法で延伸製膜を行ってもよい。
【0035】
逐次二軸テンター法では、MDの延伸倍率は1.5〜4.0倍が好ましく、TDの延伸倍率は3.5〜8倍が好ましい。逐次二軸テンター法では、初めにMDを延伸した後、TDを延伸するために、分子配向のバランスを取るために延伸倍率を異なった条件で実施することが好ましい。
同時二軸延伸法では、延伸倍率はMDとTDそれぞれに1.5〜8倍が好ましい。延伸倍率が1.5倍以上の場合は、多層フィルムの耐衝撃性が高くなる上、引き裂き性が向上する。延伸倍率が8倍以下の場合は、配向度が適度であり、フィルムの熱収縮率が低く、製袋加工する場合、皺等の発生の問題がない。延伸配向度の付与による本発明の多層フィルムの引き裂き性向上、延伸均一性の観点から、延伸倍率は2〜6倍がより好ましい。
【実施例】
【0036】
実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例で用いた、評価の測定方法と判定基準は以下のとおりである。
(1)ビカット軟化温度
ASTM−D−1525に準拠して測定する(荷重9.8N、昇温速度5℃/min)。
(2)加熱収縮応力(ORS)
ASTM−D−1504に準拠し、試料フィルムの流れ方向(MD)と巾方向(TD)のそれぞれについて、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度より15℃高い温度のシリコーンオイル浴中で、配向緩和応力のピーク値を測定し、整数に四捨五入して求める。
【0037】
(3)フィルムの引き裂き性
JIS K7128に準拠し、軽荷重引裂試験機(東洋精機製作所製)により試料フィルムの引き裂き強度を測定し、厚み40μm当りの厚み換算値を求める。更に、以下の評価基準により判定する。
(40μm当りの厚み換算値)=(引き裂き強度の測定値)/(厚み)×40
○:100mN以下のもの
△:100mNを越え、150mN以下のもの
×:150mNを越えるもの
(4)製袋品の外観
製袋加工した袋の外観検査を下記の観点で実施した。
○:ヒートシール部分にも全体にも熱収縮による皺や不具合がなく、外観の良い袋である。
△:ヒートシール部分が少し収縮し、外観が劣る袋である。
×:ヒートシール部分や全体に、熱収縮による皺や不具合が発生した袋である。
【0038】
(5)製袋品の引き裂き性(易開封性)
製袋加工した袋5サンプルを、手で引き裂き、最も良い易開封性を示したものを標準とし、以下の評価基準で判定する。
○:簡易に引き裂ける。
△:少し、引き裂くことに抵抗を感じる。
×:なかなか引き裂けない。
(6)製袋品の直線開封性
製袋加工した袋10サンプルを、手で袋の縁側に垂直方向に引き裂き、その開封方向に直線的に引き裂き面が伝播したかどうかを以下の評価基準で判定する。
○:10枚ともに、直線的に引き裂ける。
△:1〜2枚、引き裂き面がずれる。
×:3枚以上で引き裂き面がずれる。
【0039】
(7)水蒸気透過性
JIS Z0208(カップ法)に準拠して、試料フィルムの40℃、90%の条件下での水蒸気透過度を測定し、測定値を40μ当りの数値に換算し、整数の桁で四捨五入して求める。
(8)熱収縮率
ASTM−D−1504に準拠し、試料フィルムのMDとTDのそれぞれについて試料を作製し、120℃のシリコーンオイル浴中に10秒間浸漬し、初めの長さと浸漬後の試料の長さから収縮率(%)を求める。
【0040】
<フィルムの作製方法>
<テンター法>
スチレン系樹脂層(A)、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)、エチレン系樹脂層(C)に用いる樹脂を、下記3台の押出機からそれぞれ供給し、マルチマニホールド方式のTダイから3種3層を積層した状態で押出し、直径250mmφのキャスティングロール上に引き取って冷却してパリソンを得る。次いで、該パリソンを、MD方向に延伸機で延伸した後、テンターによりTD方向に延伸し、巻取ってフィルムを得る。フィルムの厚みは、Tダイのスリット巾と延伸倍率により適宜調整する。押出温度及び延伸温度等については表2及び表3に記載する。
押出機A:スチレン系樹脂層(A)に使用。L/D=32の65mmφのスクリューを有する押出機
押出機B:カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)に使用。L/D=32の50mmφのスクリューを有する押出機
押出機C:エチレン系樹脂層(C)に使用。L/D=32の65mmφのスクリューを有する押出機
ただし、実施例及び比較例において2層構成のフィルムを得る場合は、押出機Bと押出機Cは同一の樹脂を供給し、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)とする。
【0041】
<インフレーション法>
スチレン系樹脂層(A)、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)、エチレン系樹脂層(C)に用いる樹脂を、下記3台の押出機からそれぞれ供給し、3種3層のサーキュラーダイから押出したチューブを、インフレーションして冷却し、所望のフィルムとして巻取る。この際、フィルムの厚みはダイのリップ径と延伸倍率で適宜調整する。押出温度、延伸温度については表2及び表3に記載する。
押出機A:スチレン系樹脂層(A)に使用。L/D=32の65mmφのスクリューを有する押出機
押出機B:カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)に使用。L/D=32の50mmφのスクリューを有する押出機
押出機C:エチレン系樹脂層(C)に使用。L/D=32の65mmφのスクリューを有する押出機
ただし、実施例及び比較例において2層構成のフィルムを得る場合は、押出機Bと押出機Cは同一の樹脂を供給し、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)とする。
【0042】
<袋の作成(製袋)>
試作したフィルムのエチレン系樹脂層(C)側を内側にして折り重ね、三方をヒートシールし、10cm角の包装用袋を作製する。フィルムを折る際の折線をフィルムのMD、TDと水平に、2種の袋を作製する。シール巾7mm、シール時間0.2秒、シール圧力1kg/cm、シール温度は120℃とする。
各実施例及び各比較例において、使用した樹脂を表1に示す。
各実施例及び各比較例の評価結果を、表2、表3、及び表4に示す。
【0043】
[実施例1]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14を用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、2層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度150℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は135℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が20μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系共重合樹脂層(B)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0044】
[実施例2]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14を用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを60重量%と旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を40重量%の重量比で混合して用い、2層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度150℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は135℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が20μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系共重合樹脂層(B)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0045】
[実施例3]
スチレン系樹脂層(A)として、PSジャパン社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンG9001(商品名)を用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1214ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が4μm、エチレン系樹脂層(C)が16μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0046】
[実施例4]
スチレン系樹脂層(A)として、PSジャパン社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンG9001(商品名)、PSジャパン社製のブチルアクリレート/スチレン共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSC004(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に75:10:15の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1214ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度135℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は118℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が4μm、エチレン系樹脂層(C)が16μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0047】
[実施例5]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14を用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度150℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は135℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が4μm、エチレン系樹脂層(C)が16μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0048】
[実施例6]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は128℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0049】
[実施例7]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に90:5:5の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度148℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は131℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0050】
[実施例8]
スチレン系樹脂層(A)として、α−メチルポリスチレンの共重合比率が35重量%のα−メチルスチレン/スチレン共重合樹脂を用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0051】
[実施例9]
スチレン系樹脂層(A)、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)、エチレン系樹脂層(C)全てについて、実施例7と同じ樹脂構成とし、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度148℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は131℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が4μm、エチレン系樹脂層(C)が26μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0052】
[実施例10]
スチレン系樹脂層(A)、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)、エチレン系樹脂層(C)全てについて、実施例7と同じ樹脂構成とし、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度148℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は131℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が48μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表2にまとめた。
【0053】
[実施例11]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、宇部丸善ポリエチレン社製のポリエチレン樹脂、UBEポリエチレン(登録商標)C410を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0054】
[実施例12]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、住友化学社製のエチレン/メチルメタクリレート共重合樹脂、アクリフト(登録商標)WK307を用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0055】
[実施例13]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メタクリル酸共重合樹脂、ニュクレル(登録商標)N1207Cを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0056】
[実施例14]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、住友化学社製のエチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、エバテート(登録商標)H2031を用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0057】
[実施例15]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを90重量%とPSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)を10重量%の重量比で混合して用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0058】
[実施例16]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−14、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に80:10:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを70重量%とPSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)を30重量%の重量比で混合して用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層構成のフィルムをテンター法にて延伸温度145℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0059】
[実施例17]
スチレン系樹脂層(A)、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)、エチレン系樹脂層(C)全てについて、実施例3と同じ樹脂構成とし、3層構成のフィルムをインフレーション法にて延伸温度150℃、MD3.0倍、TD5.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は126℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
この袋は、外観が良好で、ヒートシール線の任意の位置から、ヒートシール線にほぼ垂直の方向に容易に手で引き裂くことができた。また、ヒートシールされていないフィルム側からも、それぞれ側面にほぼ垂直方向に容易に手で引き裂くことができた。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0060】
[比較例1]
スチレン系樹脂層(A)として、PSジャパン社製のポリスチレン、PSJ−ポリスチレン685(商品名)を用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井化学社製の酸変性エチレン樹脂、アドマー(登録商標)SF730を用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層のフィルムをテンター法にて延伸温度130℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は106℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が5μm、エチレン系樹脂層(C)が15μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
しかしながら、製袋品ができたものの、フィルムの収縮が大きく、品位の悪いものになった。また、引き裂き性、引き裂き直進性も悪かった。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0061】
[比較例2]
スチレン系樹脂層(A)として、大日本インキ化学工業社製のスチレン/メタクリル酸共重合樹脂、リューレックス(登録商標)A−031、PSジャパン社製のスチレン/ブタジエン/アクリル酸エステル共重合樹脂、PSJ−ポリスチレンSX−100(商品名)、PSジャパン社製のハイインパクトポリスチレン、PSJ−ポリスチレンHT478(商品名)を順に70:20:10の重量比で混合して用い、カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)として、三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACを用い、エチレン系樹脂層(C)として、旭化成ケミカルズ社製のポリエチレン樹脂、サンテック(登録商標)L1640を用い、3層のフィルムをテンター法にて延伸温度148℃、MD2.2倍、TD4.0倍の延伸倍率で延伸製膜した。なお、スチレン系樹脂層(A)のビカット軟化温度は108℃で、得られた積層フィルムの厚みは、スチレン系樹脂層(A)が20μm、エチレン系共重合樹脂層(B)が2μm、エチレン系樹脂層(C)が18μmであった。
次いで、積層フィルムのエチレン系樹脂層(C)側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
しかしながら、製袋品ができたものの、フィルムの収縮が大きく、品位の悪いものになってしまった。また、引き裂き性、引き裂き直進性も悪かった。実験条件、及び評価結果を表3にまとめた。
【0062】
[比較例3]
基材フィルムとしてセロファン(二村化学社製、太閤(登録商標)PF−3、厚み21μm)を用い、片面を放電加工した後にイミン系アンカーコート剤(東洋モートン社製、EL−420(商品名))を乾燥塗布量で約4mg/mとなるように塗布し乾燥した後、エチレン系共重合樹脂として三井・デュポンポリケミカル社製のエチレン/メチルアリレート共重合樹脂、エルバロイ(登録商標)1218ACをダイ温度320℃で、厚み20μmとなるように上記セロファン上に押出し、ポリラミネーション加工の積層フィルムとした。次いで、得られたフィルムのエチレン系共重合樹脂側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
製袋品の品位は良好であったが、引き裂き性が悪かった。また、一部のサンプルでは、ヒートシール部側からの開封でも、開封した場合、まっすぐに切れず、引き裂き面が曲がってしまった。評価結果を表4にまとめた。
【0063】
[比較例4]
基材フィルムとしてポリプロピレン製フィルム(東京セロファン社製、トーセロOP(登録商標)、厚み20μm)を用い、これを比較例3と同じ方法でポリラミネーション加工により、積層フィルムとした。次いで、得られたフィルムのエチレン系共重合樹脂側を折り合わせて重ねた後、温度120℃、0.2秒でフィルムのMDとTDに沿ってヒートシールして、三方シール袋を作製した。
製袋品は袋のヒートシール面に皺が入り、外観が損なわれていた。また、引き裂き性が悪かった。特に、フィルム側からは手での引き裂きはほとんどできず、ノッチをハサミで入れた場合にようやく引き裂くことができた。また、ヒートシール部側からの開封でも、開封した場合まっすぐに切れず、引き裂き面が曲がった。評価結果を表4にまとめた。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、易開封性のフィルム、および、易開封性の袋の分野に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面層が、ビカット軟化温度が110℃〜155℃であるスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)と隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層された少なくとも2層からなることを特徴とする多層延伸フィルム。
【請求項2】
一方の表面層が、ビカット軟化温度が110℃〜155℃であるスチレン系樹脂層(A)からなり、スチレン系樹脂層(A)と隣接してカルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が積層され、他方の表面層がエチレン系樹脂層(C)からなる少なくとも3層であることを特徴とする多層延伸フィルム。
【請求項3】
加熱収縮応力が、流れ方向、巾方向共に0.1MPa〜4MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層延伸フィルム。
【請求項4】
スチレン系樹脂層(A)が、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、及びスチレン−αメチルスチレン共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【請求項5】
スチレン系樹脂層(A)が、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−共役ジエン系共重合樹脂、及びスチレン−脂肪族カルボン酸系共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種を0.5〜35.0重量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【請求項6】
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【請求項7】
カルボニル基を有する単量体成分を含むエチレン系共重合樹脂層(B)が、メチルアクリレートの含有率が9〜25重量%であるエチレン−メチルアクリレート共重合樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層延伸フィルム。
【請求項8】
各層を構成する樹脂をそれぞれ溶融して共押出しした後に、延伸することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層延伸フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−290287(P2007−290287A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122338(P2006−122338)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】