説明

易引裂き性多層フィルム、その製造方法及び該フィルムを用いた包装材

【課題】 食品、薬品、工業部品等を包装する包装材に関するものであって、縦・横両方向の易引裂き性、ヒートシール性、包装機械適性、ラミネート強度の経時低下、ラミネート外観不良等がない良好な多層フィルム、その製造方法及び該フィルムからなる包装材を提供すること。
【解決手段】 環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)を表面に有する単層又は多層のフィルム(I)の前記樹脂層(A)上に、アルミニウムを主成分とする層(II−1)及び/又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)が積層されてなることを特徴とする易引裂き性多層フィルム、及びこれを用いてなる包装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品、工業部品等を包装する包装材に関するものであって、縦・横両方向の易引裂き性、ヒートシール性、包装機械適性、ラミネート適性、包装機械適性等も良好な易引き裂き性多層フィルム、その製造方法及び該フィルムを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のユニバーサルデザイン化傾向の中で、社会的弱者(高齢者、幼児、障害者等)に対しての配慮として、消費者が開封しやすい方式、例えば易開封性、易引裂き性が重要視されつつある。しかしながら、易開封性、易引き裂き性を向上しようとすると、包装材本来の機能であるヒートシール性、耐ピンホール性、低温下での耐衝撃強度が低下することによる輸送時や店頭での陳列時における破袋、内容物のこぼれ等の問題があった。
【0003】
易引裂き性を付与したフィルムとしては、セロハン/ポリエチレンの積層体からなる袋が実用化されている。しかしセロハンは吸湿性があるため、湿度による物性変化が大きく、寸法安定性に劣り、カールが発生したり、さらにブロッキングが発生したりする等、ラミネート加工や印刷加工、製袋加工、包装機械適性に問題があった。
【0004】
内容物の保護(耐湿性等の向上)のために、セロハン代替としてポリエステルフィルムが提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、縦・横両方向の易引裂き性は保持できていない。又、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂層からなる包装袋も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、ポリスチレンは一般的に防湿性に乏しく、粉体や錠剤等の吸湿性が大きい内容物の包装には、変色や内容成分の劣化等が発生するため、保存期間に制限があった。さらに耐熱性、耐溶剤性や耐油性にも劣り、包装適性や印刷加工適性にも問題があった。
【0005】
これらの易引裂き性に優れる材料は、主として延伸を施しているため、配向結晶化が進み、融点やガラス転移点が上昇し、ヒートシール適性には劣る。そのため、防湿性とシール適正との性能バランスを図るためには、シール適性を有する低融点、低剛性のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂からなるシーラントフィルムが必要になる。つまり、アルミ箔又はアルミ蒸着層/セロハン/シーラントフィルム、易引き裂き性ポリエステル/アルミ箔又はアルミ蒸着層/シーラントフィルム、アルミ箔又はアルミ蒸着層/易引裂き性ポリスチレン/シーラントフィルム等の構成が必要となる。当然シーラントフィルムの種類や厚みによって易引き裂き適性は左右され、構成によっては簡便には裂け性が発現しづらい、または発現しない場合も多々あった。更にアルミ箔やアルミニウム蒸着層とその他の樹脂層等の間の密着性が悪いと、層間剥離(デラミ)が起こりやすくなり、開封時に表面のアルミ層のみが剥がれてしまい、内容物の取出しが困難になる場合もある。
【0006】
この様なデラミを防止するために、アルミ層とその他の樹脂層との間には、アンカーコート層を設けることが通常行なわれているが(例えば、特許文献3参照)、この様な多層フィルムはその生産工程数が多くなり、生産効率の面では劣ることになる。
【0007】
近年の社会的要求の観点からは、易開封が可能な包装材のユニバーサルデザイン対応・包装適性の優れた包材開発は喫緊の課題である点を鑑みると、縦横両方向に易引裂き性を有し、包装機械適制も良好で、シール性、ラミネート適性をバランスよく兼備し、且つ生産性をも良好な包装材が希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−233374号公報
【特許文献2】特開2002−240209号公報
【特許文献3】特開2009−166884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、食品、薬品、工業部品等を包装する包装材に関するものであって、縦・横両方向の易引裂き性、ヒートシール性、包装機械適性、ラミネート強度の経時低下、ラミネート外観不良等がない良好な多層フィルム、その製造方法及び該フィルムからなる包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、環状ポリオレフィン系樹脂を一定量以上含有する樹脂層に、アルミニウム層又は融点が150℃以上の樹脂層を積層させてなる多層フィルムを用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)を表面に有する単層又は多層のフィルム(I)の前記樹脂層(A)上に、アルミニウムを主成分とする層(II−1)及び/又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)が積層されてなることを特徴とする易引裂き性多層フィルムとその製造方法、及びそれを用いた包装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多層フィルムは、縦・横両方向の易引裂き性、ヒートシール性、ラミネート強度、耐ピンホール性等の機能発現が可能であると共に、その生産性も良好である。多層フィルム中の樹脂成分として一定量以上の環状ポリオレフィン系樹脂を含有することにより、口中清涼剤、局所刺激剤や薬効成分等を内容物とする場合の揮発成分のフィルムへの吸着や揮散を効果的に抑制できる。更にこの環状ポリオレフィン系樹脂を含有する層に対して樹脂フィルム、アルミ箔のラミネート、アルミニウム蒸着を行なうため、これら表面層とシーラント間でのデラミを効果的に防止することができる。又、この様な表面層を有することにより、高い剛性を維持でき、表面層側からの加熱による熱融着によるヒートシールを実施しても熱源であるシールバーに取られることなく、シール層同士または同種の樹脂容器に安定した融着が可能となる。そのためシール部の収縮やシワの発生が少ない、包装可能な温度領域が広くなり、包装スピードを上げられる等の包装機械適性に優れる。また、縦方向及び横方向ともに易引裂き性を有するため、余分な力を掛けることなく、社会的弱者にも簡単に裂ける易裂け性を有する。さらにシール層にオレフィン系樹脂を用いたイージーピール層を設けることにより、易開封性を付与することも可能である。更に又、本発明の多層フィルムは屈曲疲労等による耐ピンホール性やシール箇所の重なり部分の密封性にも優れており、ガスバリアー性や水蒸気バリアー性等が必須な食品・菓子・医薬品・たばこ・工業薬品・雑貨用等の包装材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の易引裂き性多層フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)を表面に有する単層又は多層のフィルム(I)を用いることが必須である。この様な環状ポリオレフィン系樹脂(a)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0014】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデンテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0015】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
【0016】
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0017】
前記のように、環状ポリオレフィン系樹脂(a)の樹脂層(A)を形成する樹脂成分に対する含有率は、得られる多層フィルムの易引裂き性、ヒートシール性、包装機械適性、ラミネート強度やその経時変化の抑制、内容物からの揮発成分の吸着抑制の観点から、30質量%以上であることを必須とするものである。これよりも低い含有率では、目的とする性能を有する多層フィルムが得られにくい。特に好ましいのは40質量%以上である。
【0018】
また、前記環状ポリオレフィン樹脂(a)のガラス転移点(Tg)は、得られる多層フィルムの内容物からの揮発成分の吸着抑制の観点からは60℃以上であることが好ましい。後述するような、更にイージーピール性等を発現させるためにその他の樹脂層(B)を積層させた多層のフィルム(I)とする場合、共押出積層法による製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点から、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは70℃〜180℃である。この様なTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂(a)としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が30〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、易引裂き性、加工安定性が向上する。尚、本発明におけるガラス転移点、融点は示差走査熱量測定(DSC)にて測定したものである。
【0019】
一方、高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜性時・スリット時の引き取りや巻き取り適性やヒートシール強度とのバランスを考慮し、高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とをブレンドすることも好ましいものである。また包装機械特性(製袋及び物品充填時にシール面にシワや収縮が起こらない、ヒートシール部からピンホール等発生しない観点から、後述するアルミニウムを主成分とする層(II−1)及び/又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)の融点より20℃以上低い融点やガラス点移転(Tg)を有する樹脂種を単独、又は混合して用いることが好ましい。
【0020】
特に剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける・破袋するあるいはシール開始温度が高くなりすぎるあるいはヒートシール直後の強度維持(ホットタック性)等の改善は、Tg100℃未満のCOCを配合することにより、落袋強度や包装機械適性をも向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を含有しないポリエチレン系樹脂(a1)及び/又はポリプロピレン系樹脂(a2)や、低融点や低Tgを有するゴム系エラストマー樹脂等を配合することも有効である。
【0021】
前記ポリエチレン系樹脂(a1)としては、易引裂き性、高ヒートシール強度、耐ピンホール性や、後述する樹脂層(B)を積層させた際の層間強度の維持のために、密度が0.900〜0.950g/cmであるものが好ましく、より好ましくは密度が0.905〜0.945g/cmのものである。
【0022】
前記ポリエチレン系樹脂(a1)としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でもシール性、易引裂き性とのバランスが良好なことからVLDPE、LDPE、LLDPE、MLDPEが好ましい。
【0023】
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
【0024】
LLDPE、MLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
【0025】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
【0026】
前述のようにポリエチレン系樹脂(a1)の密度は0.900〜0.950g/cmであることが好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜125℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)と混合した用いた際の押出加工性が向上する。また、前記ポリエチレン系樹脂(a1)のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
【0027】
このようなポリエチレン系樹脂(a1)は環状ポリオレフィン系樹脂(a)との相溶性も良いため、フィルムとしての透明性も維持することができる。また接着性樹脂等を使用することなく、樹脂層(A)と後述する樹脂層(B)との層間接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。さらに、耐ピンホール性を向上させる場合はLLDPE、MLDPEを用いることが好ましい。
【0028】
又、前記ポリプロピレン系樹脂(a2)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性に優れた包装材として好適に用いることが出来る。
【0029】
また、これらのポリプロピレン系樹脂(a2)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、ヒートシール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
【0030】
又、本発明の易引裂き性多層フィルムのヒートシール性の向上や、更には易開封性を付与させる等のために、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)に、更にポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を積層させてなる多層のフィルム(I)とすることもできる。尚本発明における「主成分とする」とは、当該特定の樹脂又は樹脂混合物を、樹脂成分中65質量%以上で含有する事を言うものであり、好ましくは、80質量%以上で含有する事を言うものである。
【0031】
本発明の多層フィルムを蓋材等として使用する場合、容器の最外層と密着させ、所望の部位に温度をかけることによって、接着させることは一つの目的であるが、更に引剥がした際に容易に凝集破壊又は界面剥離されることによる易開封性を容易に発現させることができる点から、前記ポリオレフィン系樹脂(b)がポリエチレン系樹脂(b1)とポリプロピレン系樹脂(b2)との混合物であることが好ましい。
【0032】
前記ポリエチレン系樹脂(b1)としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、後述するポリプロピレン系樹脂(b2)と併用した際の相溶性の観点と、容易に凝集破壊可能であること、並びに剥がれた後の表面外観性等の観点から、密度が0.91〜0.93g/cmの低密度ポリエチレン、又は密度が0.94〜0.96g/cmの高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。更に、メルトフローレート(190℃、21.18N)が1g/10分以上であることが成膜性の観点からは好ましいものである。
【0033】
前記プロピレン系樹脂(b2)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。得られる多層フィルムにおける易開封性が良好である点、シール強度の調整が容易である点等の観点から、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体又はシングルサイト触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレン共重合体を用いることが好ましい。
【0034】
また、これらのポリプロピレン系樹脂(b2)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が120〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が125〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、シール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
【0035】
更に、前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との使用割合としては、(b1)/(b2)で表される質量比として10〜40/60〜90の範囲であることが容易に易開封性を発現できる点から好ましく、特に15〜30/70〜85の範囲であることが好ましい。
【0036】
又、樹脂層(B)には、更に易開封性を容易にしたり、シール強度を調整したりする観点から、ポリブテン系樹脂等のその他のオレフィン系樹脂や、前述の環状ポリオレフィン系樹脂を併用しても良い。このとき、易開封性を損なわない観点から、前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との合計質量が樹脂層(B)中の樹脂成分中に85質量%以上で含まれていることが好ましい。
【0037】
又、本発明の多層フィルムにおいて、樹脂層(B)は単層であっても、2層以上の多層構成を有していても良い。特にフィルムの剛性の維持の観点からは、2層以上を積層させることが好ましく、樹脂層(A)と最外層の間の中間層として、特にメタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン系樹脂や直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがフィルムの機械的強度を維持する観点から好ましいものである。
【0038】
本発明の多層フィルムは、前述の特定の単層又は多層のフィルム(I)の樹脂層(A)上に、アルミニウムを主成分とする層(II−1)及び/又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)が積層されてなる。ここで樹脂フィルム(II2)として用いることができる樹脂シートの樹脂成分は、包装機械特性(製袋及び物品充填時に表面にシワや収縮が起こらない、ヒートシールバーにフィルムが融着しない等)の観点から、融点が150℃以上の樹脂種であることが必要である。又、アルミニウムを主成分とする層(II−1)はアルミ箔からなるものであっても、アルミニウム蒸着で得られるものであっても良い。これらは単独でも、又は2層以上積層して用いるものであっても良い。好ましくは、高耐熱性、高剛性、高光沢を有する二軸延伸樹脂フィルムまたはアルミ箔を単独あるいは組み合わせて使用する。
【0039】
二軸延伸樹脂フィルムとしては、易引裂き性、ラミネート性等の観点から、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易引裂き性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。PET、PA、OPPがコストや入手性の点からより好ましく、PETが最も好ましい。
【0040】
これらの樹脂フィルム(II−2)やアルミ箔をフィルム(I)表面に積層させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
【0041】
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0042】
又、アルミニウムを蒸着させてアルミニウム層を形成させても良い。このアルミニウム蒸着の蒸着手段としては、前述のフィルム(I)に収縮、黄変等の劣化を招来することなくアルミニウムが蒸着できれば特に限定されるものではなく、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)等が挙げられる。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質なアルミニウム蒸着層が形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
【0043】
通常、アルミニウム蒸着を行なう際には、蒸着する面との層間密着性を維持するために、アンカーコート剤が塗布されている。しかしながら、成膜したフィルム(I)の表面に当該アンカーコート剤を均一に塗布し、これを乾燥させることは、作業工程の煩雑さに加え、アンカーコート剤に含まれる有機成分からなる媒体の除去時に発生する揮発成分に拡散の防止、アンカーコート剤塗布・乾燥のための装置の必要性があり、生産性の観点からは、改良が望まれるものである。本発明においては、環状ポリオレフィン(a)を特定量含む樹脂層(A)を表面とし、ここに蒸着を行なうものであるが、この際にアンカーコート剤を使用しなくでも、アルミニウムと当該樹脂層(A)との層間密着性を維持することが可能であり、デラミを防止することができる。
【0044】
特に、樹脂シート(II−2)、アルミ箔をラミネートする際、又はアルミニウム蒸着における層間密着性を高めたい場合や、ラミネート工程、蒸着工程と、フィルム(I)の製造工程とを連続して行なわずに、フィルム(I)のまま保存する場合には、フィルム(I)の樹脂層(A)の表面を化学的、物理的な処理を行なっておくことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0045】
コロナ処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5kV〜40kV、より好ましくは10kV〜30kVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.34kV・A・分/m〜0.4kV・A・分/m、より好ましくは0.344kV・A・分/m〜0.38kV・A・分/mである。
【0046】
本発明において、フィルム(I)の樹脂層(A)に環状ポリオレフィン系樹脂(a)を30質量%以上で含有させたことにより、この様なコロナ処理における処理度が、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を処理した場合よりも向上する。処理度については、例えば濡れ試薬による表面張力の測定によってその高低を判断することが可能であり、フィルム(I)を用いた場合は、45dyne/cm以上にすることが容易であり、50dyne/cm以上にすることもできる。更に経時による処理度の低下も少ない。この様な理由から高いラミネート強度の発現に寄与すると共に、シール部を引き剥がした際のデラミの抑制をするものであると推定される。一方、通常のポリプロピレンフィルムで同様のコロナ処理を行なった場合は、経時変化による処理度の低下が著しく、40dyne/cm程度にしか維持できず、ポリエステルフィルムでも45dyne/cm程度である。更に前述のように、フィルム(I)の表面はコロナ処理からの経時劣化が非常に少なく、フィルム(I)として数ヶ月程度保存してから、前述の方法でアルミニウムを主成分とする層(II−1)及び/又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)を積層することも可能である。
【0047】
本発明の易引裂き性多層フィルムの層構成は、前述のように、アルミニウムを主成分とする層(II−1)、融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)と、フィルム(I)と、が積層されてなるものである。フィルム(I)の全厚として20〜150μmの範囲であると、アルミ箔や樹脂シートのラミネートやアルミニウム蒸着の際の作業性が向上すると共に、安定したシール強度、包装機械適性、優れた耐ピンホール性能、易引き裂き性能等が得られる。より好ましくは30〜130μmである。フィルム(I)が樹脂層(A)の単層フィルムである場合は、全厚が20〜50μmの範囲であることが好ましい。又、樹脂層(A)と樹脂層(B)とを積層させた多層フィルムの場合には、樹脂層(A)のフィルム(I)に対する厚みの割合が20〜80%、好ましくは30〜65%の範囲であると、引裂き性とシール性、更に易開封性や、内容物に揮発性成分を有する場合の吸着を抑える点とのバランスに優れたものとなる。又、アルミ箔、樹脂シートの厚さとしては、目的とする用途に応じて適宜選択するものであるが、フィルム(I)の易引裂き性等の効果を容易に発現できる観点から、5〜50μmの範囲であることが好ましく、特に10〜30μmの範囲のものと使用することが好ましい。アルミニウム蒸着の場合は、10nm〜100nmの範囲とすることが好ましい。
【0048】
前記の各樹脂層(A)、(B)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、フィルム(I)の表面における摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、樹脂層(A)、(B)には、滑剤やアンチブロッキング剤を適宜添加することが好ましい。
【0049】
本発明の多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂層(A)、樹脂層(B)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム(I)を共押出法で製膜した後、樹脂シートやアルミ箔をラミネート、又はアルミニウム蒸着する方法が挙げられる。共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。さらに、本発明で用いる環状ポリオレフィン系樹脂(a)と低密度ポリエチレン系樹脂を用いた場合には、両者間で融点とTgとの差が大きいため、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0050】
本発明の多層フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。特に、内容物に含まれる揮発性成分のフィルムへの収着・吸着が少なく、シール強度の経時低下も少ないため、揮発性成分を含む医薬品や工業薬品用等に好適に用いることができる。
【0051】
前記包装袋は、本発明の多層フィルムのフィルム(I)同士を重ねてヒートシール、あるいはフィルム(I)と表面の樹脂シートやアルミニウム層とを重ね合わせてヒートシールすることにより、フィルム(I)を内側として形成した包装袋であることが好ましい。例えば当該多層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒(ピロー)形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装袋を形成することも可能である。
【0052】
また、フィルム(I)とヒートシール可能な別のフィルム、シート、容器とヒートシールすることにより包装袋・容器・容器の蓋を形成することも可能である。
【0053】
本発明の多層フィルムを用いた包装材は、易引裂き性を有するものであり、特に開封のための工夫は必要としないが、初期の引裂き強度を弱め、開封性を向上させたり、開封部を特定の箇所に限定したりするために、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成してもよい。
【実施例】
【0054】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0055】
実施例1
樹脂層(A)用の樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL8008T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:70℃;以下、「COC(3)」という。〕70質量部と直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LMDPE」という。〕30質量部との樹脂混合物を用いた。この樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)に供給して溶融押出を行って、全厚が20μmである単層のフィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面側にウレタン系接着剤を2g/mになるよう塗工後、二軸延伸ポリエステル(厚さ12μm)(融点260℃、東洋紡製、以下PET)をドライラミネートし、多層フィルムを得た。
【0056】
実施例2
樹脂層(A)用の樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:145℃;以下、「COC(1)」という。〕50質量部とCOC(3)50質量部との樹脂混合物を用い、実施例1と同様にして全厚が30μmの単層フィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。コロナ処理を施した面に厚さが50nmになる様にアルミ蒸着を行い、更に、このアルミ蒸着面に実施例1と同様にしてPETをドライラミネートして多層フィルムを得た。
【0057】
実施例3
樹脂層(A)用の樹脂として、COC(1)40質量部、COC(3)50質量部及びLMDPE10質量部の樹脂混合物を用い、実施例1と同様にして全厚30μmの単層フィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面側にウレタン系接着剤を2g/mになるよう塗工後、12μmのアルミ箔をドライラミネートし、多層フィルムを得た。
【0058】
実施例4
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)20質量部、COC(3)70質量物及びメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「MRCP」という。)10質量部の樹脂混合物を用い、実施例1と同様にして全厚20μmの単層フィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にしてPETをドライラミネートして多層フィルムを得た。
【0059】
実施例5
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)40質量部、COC(3)40質量部、LMDPE20質量部の樹脂混合物を用い、実施例1と同様にして全厚20μmの単層フィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例2と同様にして厚さが50nmになる様にアルミ蒸着を施し、更にPETをドライラミネートして多層フィルムを得た。
【0060】
実施例6
樹脂層(A)用樹脂として、COC(3)60質量部、高密度ポリエチレン〔密度:0.960g/cm、融点128℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「HDPE」という。〕40質量部の樹脂混合物を用い、実施例1と同様にして全厚30μmの単層フィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例2と同様に、アルミ蒸着、PETラミネートを行なって多層フィルムを得た。
【0061】
実施例7
樹脂層(A)用樹脂としてCOC(1)10質量部、COC(3)70質量部、LMDPE10質量部、MRCP10質量部の樹脂混合物を用い、実施例1と同様にして全厚20μmの単層フィルムを得た後、表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例1と同様にしてPETをドライラミネートして多層フィルムを得た。
【0062】
実施例8
シール層用樹脂として、プロピレン−エチレンコポリマー〔MFR:8g/10分(230℃、21.18N)、融点:138℃;以下、「COPP」という。〕80質量部と低密度ポリエチレン〔密度:0.905g/cm、MFR:5.3g/10分(190℃、21.18N)、融点100℃;以下、「LDPE」という。〕20質量部との混合物を用い、中間層用樹脂としてMRCPを用い、樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部とCOC(3)50質量部との樹脂混合物を用いた。これらを、樹脂層(A1)用押出機、中間層用押出機、シール層用押出機に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成がシール層/中間層/(A)の3層構成で、各層の厚さが10μm/26μm/14μm(合計50μm)である共押出多層フィルムを得た。樹脂層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例2と同様に、アルミ蒸着、PETラミネートを行なって多層フィルムを得た。
【0063】
実施例9
中間層用樹脂としてLMDPEを用い、樹脂層(A)用樹脂としてCOC(3)70質量部とHDPE30質量部との樹脂混合物を用い、実施例8と同様にしてシール層/中間層/(A)の3層構成で、各層の厚さが10μm/25μm/15μm(合計50μm)である共押出多層フィルムを得た。樹脂層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例3と同様にして、アルミ箔をラミネートし、多層フィルムを得た。
【0064】
実施例10
シール層用樹脂として実施例8と同様の樹脂混合物を用いた。樹脂層(A)用樹脂としてCOC(3)70質量部、HDPE10質量部、及びLMDPE20質量部の樹脂混合物を用いた。中間層を設けないこと以外は実施例8と同様にして、シール層/樹脂層(A)の2層構成で、各層の厚さが10μm/20μm(全厚30μm)の共押出多層フィルムを得た。樹脂層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例3と同様にしてアルミ箔をラミネートして多層フィルムを得た。
【0065】
実施例11
シール層用樹脂としてプロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体(MFR(230℃)6g/10min、密度0.89g/cm。以下EPBという。)70質量部とLDPE30質量部との樹脂混合物を用いた。樹脂層(A)用樹脂として、COC(3)30質量部とLMDPE70質量部との樹脂混合物を用いた。実施例10と同様にして2層構成の共押出多層フィルムを得た。樹脂層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例3と同様にしてアルミ箔をラミネートして多層フィルムを得た。
【0066】
実施例12
シール層用樹脂としてCOC(3)20質量部、COPP60質量部、及びLDPE20質量部の樹脂混合物を用いた。中間層用樹脂としてLMDPE50質量部、MRCP50質量部の樹脂混合物を用いた。樹脂層(A)用樹脂としてCOC(1)50質量部、COC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。実施例8と同様にして3層構成で各層の厚みが10μm/30μm/20μm(全厚60μm)の共押出多層フィルムを得た。樹脂層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。処理面に実施例2と同様に、アルミ蒸着、PETラミネートを行なって多層フィルムを得た。
【0067】
比較例1
LMDPEからなる全厚30μmの単層フィルムの表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmに調整した。処理面に実施例2と同様に、アルミ蒸着、PETラミネートを行なって多層フィルムを得た。
【0068】
比較例2
シール層用樹脂としてLMDPEを用いた。表面層用樹脂としてLMDPE90質量物とCOC(3)10質量部との樹脂混合物を用い、実施例10と同様にして2層構成でそれぞれの厚さが20μm/20μm(全厚40μm)の共押出多層フィルムを得た。表面層にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmに調整した。得られた多層フィルムをそのまま評価した。
【0069】
比較例3
比較例2で得られた多層フィルムに実施例3と同様にしてアルミ箔をラミネートして多層フィルムを得た。
【0070】
引裂き性試験
得られた多層フィルムを、JIS K7128に準拠して、それぞれ63mm×76mmの大きさの試験片に切り出し、エルメンドルフ引裂試験機(テスター産業株式会社製)を用いて、引裂強さを測定した。得られた引裂強さから、下記の基準によって引き裂き性を評価した。
○:引裂強さが200未満。
×:引裂強さが200以上。
【0071】
包装機械適性
上記で得られた多層フィルムをフィルム(I)が内面(シール面)になるように自動包装機にて、下記横ピロー包装を行い、製袋した。
包装機:フジ機械株式会社 FW3410
【0072】
横シール:速度30袋/分、縦ヒートシール温度150℃、エアーゲージ圧4kg/cm、横ヒートシール温度を10℃刻みで変更しながらシール層同士をシールした。縦200mm×横150mmの平袋とした。
【0073】
収縮・シワ試験
横(合掌貼り)シール、縦シールを行なった平袋のシール部の外観観察により収縮およびヒートシールバーへのフィルム融着状況およびシワ等の入り具合により評価した。
○:シール部の収縮、シールバーへの融着およびシワ等なし
△:シール部の収縮、シールバーへの融着およびシワ等若干あり
×:シール部の収縮、シールバーへの融着およびシワ等あり
【0074】
横シール性
上記条件で製袋したフィルムを23℃で自然冷却後、15mm幅の短冊状に試験片を切り出した。この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。得られたヒートシール強度の値から、下記の基準によってヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が300g/15mm幅以上。
×:ヒートシール強度が300g/15mm幅未満。
【0075】
表面張力の経時変化
上記で得られたフィルム(I)の片面にコロナ放電処理を施し、処理直後の濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmに調整した。コロナ処理済フィルムを24℃、50%湿度の恒温室に、1ヶ月放置した後、濡れ試薬による表面張力を測定した。
○:表面張力 40dyne/cm以上。
×:表面張力 40dyne/cm未満。
【0076】
ラミネート外観、強度
上記で得られた多層フィルムを、フィルム(I)が内面(シール面)になるように10cm×10cmの正方形状大きさのサンプルを重ね合わせ、シール温度200℃、シール圧力 0.2MPa、シール時間 1秒、シール幅幅8mm、の条件で3方向をシールし、袋を作成した。袋に20mlの100%エタノール溶液を注入し、上記シール条件で封入した。エタノール注入袋を24℃、50%湿度の恒温室で、1ヶ月放置した後、溶液を取り出し、フィルム外観やシール強度(ラミネート強度)を測定した。
【0077】
フィルム外観:
○:フィルム外観変化なし。
×:フィルム(I)と(II)との間に水脹れ状浮きが発生。
【0078】
ラミネート強度(シール強度)
テスト前後の袋のシール強度を上記条件で測定し、シール強度の低下率をラミネート強度の代用評価法として数値化した。
〇:シール強度の低下率が10%未満。
×:シール強度の低下率が10%以上。
【0079】
上記で得られた結果を表1〜2に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の多層フィルムは、易引裂き性、高ヒートシール強度、揮発性成分の吸着抑制等をも有する。また、優れた包装機械適性、屈曲による耐ピンホール性、低温耐衝撃性をも有する。したがって、本発明の多層フィルムは、食品、菓子、医薬品、たばこ、工業薬品、工業部品、雑貨、等を包装する包装材に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)を表面に有する単層又は多層のフィルム(I)の前記樹脂層(A)上に、アルミニウムを主成分とする層(II−1)及び/又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)が積層されてなることを特徴とする易引裂き性多層フィルム。
【請求項2】
前記環状オレフィン系樹脂(a)がノルボルネン系重合体である請求項1記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(A)が、更にポリエチレン系樹脂(a1)及び/又はポリプロピレン系樹脂(a2)を含有するものである請求項1又は2記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項4】
前記フィルム(I)が、更にポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を有する多層フィルムである請求項1〜3の何れか1項記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂(b)がポリエチレン系樹脂(b1)とポリプロピレン系樹脂(b2)との混合物である請求項4記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレン系樹脂(b1)が高密度ポリエチレンである請求項5記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系樹脂(b2)がエチレン−プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体である請求項5又は6記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項8】
前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との使用割合が、(b1)/(b2)で表される質量比として10〜40/60〜90の範囲である請求項5〜7の何れか1項記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項9】
前記樹脂フィルム(II−2)が二軸延伸樹脂フィルムである請求項1〜8の何れか1項記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項10】
前記樹脂フィルム(II−2)が二軸延伸ポリエステルフィルムである請求項9記載の易引裂き性多層フィルム。
【請求項11】
環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)を表面に有する単層又は多層のフィルム(I)を(共)押出法で製造した後、得られたフィルム(I)の樹脂層(A)表面をコロナ処理してからアルミニウムを蒸着することを特徴とする易引裂き性多層フィルムの製造方法。
【請求項12】
環状ポリオレフィン系樹脂(a)を樹脂成分として30質量%以上含有する樹脂層(A)を表面に有する単層又は多層のフィルム(I)を(共)押出法で製造した後、得られたフィルム(I)の樹脂層(A)表面をコロナ処理してからアルミニウム箔又は融点が150℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルム(II−2)をラミネートすることを特徴とする易引裂き性多層フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項記載の易引裂き性多層フィルムからなることを特徴とする包装材。
【請求項14】
前記フィルム(I)が内側となるように製袋された包装袋である請求項13記載の包装材。
【請求項15】
内容物に揮発性成分を含む医薬品用又は工業薬品用である請求項13又は14記載の包装材。

【公開番号】特開2013−75439(P2013−75439A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216921(P2011−216921)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】