説明

易引裂性キャストフィルム

【課題】フィルム成形性に優れたポリプロピレン樹脂からなる、縦引裂性に優れた未延伸の易引裂性キャストフィルムを提供することを目的としている。
【解決手段】特定のポリプロピレン樹脂(A)と核剤(B)とからなる層を主たる層とする易引裂性キャストフィルムであり、該核剤(B)が、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分で、密度(ASTM D 1505)が0.941〜0.970g/cm3の範囲内にあるポリ
エチレンからなり、該核剤(B)を、キャストフィルムを形成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度(JIS K 7121)が115〜130℃の範囲になるように、ポリプロピレン樹脂(A)に配合することを特徴とする易引裂性キャストフィルムを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装等に適した易引裂性キャストフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
菓子等の食品包装では、包装が容易に開封できるように、縦引裂性のあるフィルムが使用されている。このようなフィルムとして、たとえばポリプロピレン樹脂から形成されたキャストフィルムなどが広く使用されている。
【0003】
しかしながら、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が5g/10分を超えるポリプロピレン樹脂を用いて製造したポリプロピレンキャストフィルムは、分子配向がかかりにくく、縦引裂性に劣っている。そのため、現在の技術では、ポリプロピレンフィルムに分子配向性を持たせるため、MFRが6g/10分以上のポリプロピレン樹脂からなるポリプロピレンフィルムに縦方向の延伸を行なったり、あるいはこのポリプロピレン樹脂を低温度で押出成形を行なったりしている。また、逆に低MFRを有するポリプロピレン樹脂、たとえば3g/10分以下のポリプロピレン樹脂を用いてキャスト法によるフィルム成形を行ない、引裂性の改良を試みている。
【0004】
しかしながら、上記の縦方向に延伸を行なって分子配向性を有するフィルムを調製する方法では、縦延伸を行なうための装置が必要で設備費、その運転費等がかかり、フィルムの生産コストが高くなる。また上記のポリプロピレン樹脂を低温度で押出成形して縦方向に分子配向性を有するフィルムを調製する方法では、安定して厚みの均一なフィルムを製造することは難しい。一方、上記の低MFRのポリプロピレン樹脂を用いて縦方向に分子配向性を有するフィルムを調製する方法では、フィルム成形性が劣る。
【0005】
したがって、フィルム成形性に優れたポリプロピレン樹脂からなる、縦引裂性に優れた未延伸の易引裂性キャストフィルムの出現が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、フィルム成形性に優れたポリプロピレン樹脂からなる、縦引裂性に優れた未延伸の易引裂性キャストフィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が2〜20g/10分の範囲内にあるポリプロピレン樹脂(A)と核剤(B)とからなる層を主たる層とする易引裂性キャストフィルムであり、
該核剤(B)が、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分で、密度(ASTM D 1505)が0.941〜0.970g/cm3の範囲内にあるポリエチレンからなり、
該核剤(B)を、キャストフィルムを形成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度(JIS K 7121)が115〜130℃の範囲になるように、ポリプロピレン樹脂(A)に配合することを特徴とする易引裂性キャストフィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルム成形性に優れたポリプロピレン樹脂(A)からなる、縦引裂
性に優れた未延伸の易引裂性キャストフィルムを提供することができる。本発明に係る易引裂性キャストフィルムは、特別の方法の或いは条件の配向工程を経ずに調製されるので、生産コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の易引裂性キャストフィルムについて具体的に説明する。本発明の易引裂性キャストフィルムは、メルトフローレートと結晶化温度が特定の範囲にあるポリプロピレン樹脂(A)とメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分で、密度(ASTM D 1505)が0.941〜0.970g/cm3の範囲内にあるポリエチレンからなる核剤(B)から形成
されている。
【0010】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、または50モル%以上、好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは93モル%以上のプロピレンと残余が炭素原子数2もしくは4〜20のα−オレフィンとの共重合体である。
【0011】
上記α- オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−
ヘキセン、4−メチル−1− ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テト
ラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。中で
も、エチレン、1−ブテンが好ましい。
【0012】
これらの炭素原子数2および4〜20のα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。本発明で好ましく用いられるポリプロピレン樹脂(A)としては、たとえばプロピレン単独重合体や、少量のエチレン単位を含有するプロピレン共重合体などが挙げられる。
【0013】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(A)は、そのメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が好ましくは2〜20g/10分、特に好ましくは5〜10g/10分の範囲にある。メルトフローレートが上記範囲内にあるポリプロピレン樹脂(A)は、フィルム成形性に優れている。
【0014】
本発明の易引裂性キャストフィルムは、前記ポリプロピレン樹脂(A)に核剤(B)として後述の特定のポリエチレンを添加することにより、後述の核剤(B)を添加しない、通常のポリプロピレン樹脂からなるキャストフィルムの結晶化温度が110℃位であるのを、結晶化温度を115〜130℃、特に120〜127℃の範囲内にすることにより、引裂性のよいキャストフィルムが得られる。
【0015】
なお、上記結晶化温度の値は、JIS K 7121の規格に従って、ポリプロピレン樹脂を一旦融解した後、冷却し、結晶化が開始する温度を測定した値である。
核剤(B)として用いるのポリエチレンは、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分で、密度(ASTM D 1505)が0.941〜0.970g/cm3 の範囲内にあることが望ましい。
【0016】
本発明においては、上記のような核剤(B)の配合割合は、キャストフィルムの結晶化温度が115℃未満になるポリプロピレン樹脂の種類、性状等によって異なるが、ポリエチレンを、ポリプロピレン樹脂(A)にブレンドする場合は、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、ポリエチレンを1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは4〜10重量部混合する。
【0017】
キャストフィルムの結晶化温度が115℃未満のポリプロピレン樹脂に核剤(B)を配合したポリプロピレン樹脂は、公知の任意の方法を採用して調製することができ、たとえば、ポリプロピレンに核剤を加えて押出機、ニーダー等を用いて溶融混練することにより得られる。
【0018】
なお、上記溶融混練に際して、キャストフィルムの結晶化温度が115℃未満のポリプロピレン樹脂および核剤(B)の他に、無毒性の紫外線吸収剤、滑剤、静電気防止剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、アンチブロッキング剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲内で配合することができる。
【0019】
上記のようにして得られたポリプロピレン樹脂(A)に核剤(B)として前記ポリエチレンを添加してなるポリプロピレン樹脂は、フィルム成形性に優れ、厚みの均一性に優れた、分子配向性を有するキャストフィルム、すなわち易引裂性のキャストフィルムを提供することができる。
【0020】
本発明の易引裂性キャストフィルムは、上記のようなポリプロピレン樹脂(A)に核剤(B)として前記ポリエチレンを添加してなるポリプロピレン樹脂を用いて、従来公知の押出成形法によって調製することができる。また冷却ロールで冷却後、フィルムを再加熱し、縦軸方向へ1〜20倍、好ましくは2〜10倍、特に好ましくは3〜5倍延伸してもよい。
【0021】
また、本発明の易引裂性キャストフィルムは、当該キャストフィルムを主たる層とする限り、その用途に応じ、更に表面処理、あるいは別の層を積層してマット調、ヒートシール機能等を付加させた改質フィルムないし多層フィルムとすることもできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
MFR(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が7.0g/10分であり、かつ、キャストフィルムの結晶化温度(JIS K 7121)が113℃であるプロピレン単独重合体100重量部と、核剤(B)としてMFR(MFR;ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重)が5.0g/10分であり、かつ、密度が0.97g/cm3 であるポリエチレン5重量部とを1軸押出機を用いて溶融混練してポリプロピレン樹脂を得た。
【0023】
このポリプロピレン樹脂を、240℃でダイから溶融押出して、これを40℃の冷却ドラムに巻き付けて冷却固化して、厚み40μmのキャストフィルムを得た。なおキャストフィルムの引き取り速度は、100m/分であった。そのキャストフィルムの結晶化温度が116℃であった。
【0024】
このフィルムを下記の要領で手で引き裂いて、このフィルムの引裂性を下記の表示で評価した。
引裂試験
サンプルを縦方向に長くA−4の大きさに切る。次いで、長さ方向にサンプルを引き裂くために、サンプルの中央部に2cmの幅で3cmの切れ目を入れる。そして、そのサンプルを平らな台の上に置き、中央部2cm幅の部分を掴み、両サイドを他方の手で押さえて、180度の方向に1m/分の速度でサンプルを引っ張る。
【0025】
引裂性の評価
○: 引っかかりが無く切れるもの
× : 伸びを生じながら切れるもの
また、ポリプロピレン樹脂のフィルム成形性を下記の表示で評価した。
○ : 安定したハイスピードで均一厚さのフィルムが成形できるもの
× : 安定したハイスピードで均一厚さのフィルムの成形が困難であるもの
さらに、フィルムの直線カット性(フィルムを直線的に手で引き裂くことができる性質)を、特開平5−220836号公報に記載されている方法により、求めた。この公報に記載されている式より求めた直線カット性の値が0.8〜1.2の範囲内にあると、直線カット性に優れていると評価できる。
【0026】
結果を第1表に示す。
比較例1
MFR(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が7.0g/10分であり、かつ、キャストフィルムの結晶化温度(JIS K 7121)が113℃であるプロピレン単独重合体を用い、核剤を用いることなしに、実施例1と同様に行なって、厚み40μmのキャストフィルムを得た。
【0027】
得られたキャストフィルムの結晶化温度は113℃であった。このキャストフィルムの引裂性および直線カット性とポリプロピレン樹脂のフィルム成形性を実施例1と同様の方法で評価した。
【0028】
結果を第1表に示す。
比較例2
MFR(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が2.0g/10分であり、かつ、キャストフィルムの結晶化温度(JIS K 7121)が113℃であるプロピレン単独重合体を用い、核剤を用いることなしに、実施例1と同様に行なって、厚み40μmのキャストフィルムを得た。
【0029】
得られたキャストフィルムの結晶化温度は113℃であった。このキャストフィルムの引裂性および直線カット性とポリプロピレン樹脂のフィルム成形性を実施例1と同様の方法で評価した。
【0030】
結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る易引裂性キャストフィルムは、使用時に、容易に開封することができるため、菓子やおにぎり等の食品包装の他、種々の雑貨品の包装に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が2〜20g/10分の範囲内にあるポリプロピレン樹脂(A)と核剤(B)とからなる層を主たる層とする易引裂性キャストフィルムであり、
該核剤(B)が、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃,2.16kg荷重)が0.5〜10g/10分で、密度(ASTM D 1505)が0.941〜0.970g/cm3の範囲内にあるポリエチレンからなり、
該核剤(B)を、キャストフィルムを形成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度(JIS K 7121)が115〜130℃の範囲になるように、ポリプロピレン樹脂(A)に配合することを特徴とする易引裂性キャストフィルム。

【公開番号】特開2006−117956(P2006−117956A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2997(P2006−2997)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【分割の表示】特願平8−284948の分割
【原出願日】平成8年10月28日(1996.10.28)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100081994
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊一郎
【Fターム(参考)】