説明

易水溶性電解質薬物のための水性徐放性薬物送達システム

【課題】水溶性薬物のイオン化された型を含有する液体徐放性懸濁液剤形の提供。
【解決手段】医薬として許容し得るイオン交換マトリックス及び該イオン交換マトリックスに会合された水溶性電解質薬物を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含む分散相を含有する液体型放出制御薬剤組成物。該イオン交換マトリックスの表面電荷は、電解質薬物の表面電荷とは反対である。該分散相は更に、低分子量を有する非電解質の可溶性成分、並びに拡散制御膜及び実質的に拡散性対イオンを含まない分散媒を含有し、更に水と会合し水活性を妨げることが可能である賦形剤を含有する。その結果薬物溶解は投与前に阻害される。更に当該組成物の調製法及び治療法も示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年11月26日に出願された米国特許仮出願第60/429,202号に対する米国特
許法施行規則119条(e)項の下で権利が付与され優先権の恩恵を請求する2003年11月26日に
出願された米国特許出願第10/724,276号の一部継続出願であり、これら出願は各々その全
体が、本明細書に引用により組み込まれている。
【0002】
(1. 発明の分野)
本発明は、水溶性薬物のイオン化形態を含む、徐放性懸濁液剤形に関する。
【背景技術】
【0003】
(2. 発明の背景)
固形経口剤形に対し、液体製剤は、用量の柔軟性及び嚥下の容易さというはっきりした
利点を有する。加えて、通常数個の錠剤又はカプセル剤が必要であるような、比較的大量
の分散された固形物を、液体の単一容量中で、投与することが可能である。更に、便利で
摂取が容易な液体剤形で利用可能である徐放性製剤の必要性が認められている。しかし、
徐放能を有する液体経口懸濁剤の製剤は、限定された成功を収めるのみである。実際に、
24時間の徐放性プロファイルを有する液体経口懸濁剤は、実現が極めて困難である。これ
は一部は、液体分散系内に存在する場合に徐放性粒子の安定性を維持する際に示される課
題、分散相からの薬物の徐放実現の困難さ、更には分散媒中の低い遊離薬物濃度の実現を
試みる場合に遭遇する問題点のためである。
【0004】
従来、徐放が可能である液体経口剤形の製剤を実現する試みは、液体剤形の分散相から
の薬物放出の制御に焦点を当てている。薬物の放出速度を制御するひとつの方法は、薬物
-分散相及び連続相を形成するために、薬物を液体媒体へ分散させることに関連している
。単純な従来の医薬懸濁剤は、分散媒中で低い溶解度を有する分散された薬物相からなる
液体剤形である。そのようなシステムは、経口投与又は非経口投与にかかわらず、連続相
に低濃度の薬物を有し、それ自身の溶解プロセスの速度により、少なくとも部分的に制御
された、薬物の固有の徐放をもたらす。
【0005】
基本的なイオン交換技術は、固形剤形の徐放を実現するために利用される方法であり、
及び同様に該技術を液体懸濁剤製剤において利用する様々な試みが成されている。例えば
Keatingの米国特許第2,990,332号、及びY. Raghunathanらの論文(J. Pharm. Sci., 70: 3
79-84 (1981))は、薬物の塩型をイオン交換樹脂などの担体樹脂上に吸着させることによ
り、薬物の放出速度を制御する方法を開示している。しかし、吸着された薬物の放出速度
は、対イオンにより置き換えられる速度で制御され得るのみである。T.Tarvainenらの論
文(Biomaterials 20:2177-83 (1999))は、薬物の陽イオン型及び中性型が、多孔質ポリ(
フッ化ビニリデン)-ポリ(アクリル酸)膜上に吸着された製剤を開示している。この参照文
献によると、陽イオン性薬物の放出速度は、溶媒のイオン強度により左右される。Hom-ma
らの米国特許第6,247,174 B1号は、イオン交換樹脂カルシウム-アルギン酸塩が、ごくわ
ずかに水に溶ける医薬品の送達のための担体である、固形経口剤形を開示している。
【0006】
しかし、従来のイオン交換樹脂薬物複合体により繰り返される問題点は、迅速な対イオ
ン交換の速度であり、これは、薬物が余りにも早く放出されること、すなわちイオン交換
樹脂から制御できない様式で放出されることを引き起こす。
多孔質膜を通る拡散は、固形剤形の徐放を実現する古典的方法のひとつであり、及びペ
ンキネティックシステムは、従来のイオン交換樹脂薬物複合体の拡散制御を提供するため
に、膜コートを利用する。例えば、Kelleherらの米国特許第4,996,047号は、水-不透過性
拡散障壁層でコーティングされた薬物-イオン交換樹脂複合粒子を開示している。S. Moty
ckaらの論文(J. Pharm. Sci, 74:643-46 (1985))及びM.G. Moldenhauyerらの論文(J. Pha
rm. Sci, 79:659-66 (1990))は、陰イオン樹脂とテオフィリンとの間で形成された複合体
を含有する粒子の懸濁剤を開示しており、ここで該粒子は、エチルセルロース、パラフィ
ン又は両方でコーティングされ、及び該コーティングは、薬物の放出速度を制御している
。Eichelらの米国特許第5,376,384号によると、水溶性薬物コアが、水和可能な拡散障壁
によりコーティングされた薬物製剤は、固形剤形からの薬物の延長され、遅延され及び持
続された送達を提供すると言われている。
【0007】
しかしペンキネティックイオン交換システムは20年前に導入されたにもかかわらず、市
場に存在するこの技術を利用する製品は1種のみであり、これは恐らく、イオン交換樹脂
の適性不良(すなわち、疎水性及び膨潤性);複雑な製剤及び製造プロセスが必要なこと;
並びに、長期安定性の問題点;のためであろう。イオン交換技術並びに液体経口剤形の調
製における拡散膜又はコーティングの適用に関連した問題点を回避するために採用される
従来の方法は、様々な含浸剤又は溶媒和剤の使用である。
【0008】
例えば、Chowらの米国特許第4,859,461号は、薬物-イオン交換樹脂製剤を開示しており
、これによると、スルホン酸陽イオン交換樹脂粒子及び含浸剤は、粒子の被覆性の改善に
有用であるとされている。Raghunathanの米国特許第4,221,778号は延長された放出の医薬
調合剤を開示しており、イオン交換薬物樹脂複合体粒子の膨潤を遅延させるために含浸剤
又は溶媒和剤が添加され、水-透過性拡散障壁コーティングが薬物の放出速度を遅延させ
る。(同様に欧州特許第171,528号;第254,811号、及び第254,822号を参照のこと)。Kogan
らの米国特許第5,186,930号は、内側にワックスコーティングを及び外側に拡散制御性ポ
リマーコーティングを伴う、マルチコーティングされた薬物-樹脂粒子を開示している。
この特許によると、ワックスコーティングは、ポリマーコーティングを通る薬物の漏出、
並びに樹脂の膨潤により引き起こされる薬物ダンピング(dumping)とそれに続くポリマー
コーティングの亀裂の防止に有用であると言われている。Scheumakerの米国特許第4,762,
709号は、コーティングされた第一の薬物-イオン交換樹脂粒子が、このコーティングされ
た第一の薬物-イオン交換樹脂粒子中の第一の薬物と同じ電荷を持つコーティングされな
い第二の薬物-イオン交換樹脂成分と共に、液体担体中に懸濁されている製剤を開示して
いる。この参考文献に従うと、第二の薬物がコーティングされた第一の薬物-イオン交換
樹脂中に第一の薬物と共に含まれる場合と比べ、第二の薬物がコーティングされない薬物
-イオン交換樹脂複合体中に存在する場合に、コーティングされた第一の薬物-イオン交換
樹脂粒子からの第一の薬物の放出速度は増大する。このイオン交換技術を基にした製品は
Tussionex(登録商標)(ヒドロコドンポリスチレクス及びクロルフェニラミンポリスチレク
ス)ペンキネティック(登録商標)長期放出懸濁剤(Celltech Pharmaceuticals社)であり、
これは最近米国食品医薬品局(FDA)により認可された。
【0009】
水性溶媒中に分散されたコーティングされたビーズからなる放出制御懸濁剤剤形の物理
安定性を維持する挑戦も続いている。詳細には、コアビーズは「乾燥」しており、かつそ
の成分は親水性であるので、コーティングを超えたビーズへの水の拡散は、著しい膨潤、
及びビーズの「内側」での高い浸透圧の発生を生じる。この膨潤は次に、全てのコーティ
ングの破壊及びビーズコーティングに依存する放出制御機構の確実な失敗につながる。
【0010】
徐放性液体剤形の、特により良い薬理特性及び安定性を伴う剤形、並びに市場に訴える
剤形の必要性が、依然存在する。分散相に活性成分を含有し、分散媒中に低い遊離薬物濃
度を有し、及び患者への投与後の分散相からの薬物の徐放を提供することが可能である医
薬として許容し得る懸濁液体剤形を実現するという課題が依然存在する。特に、高度に水
溶性な電解質薬物の1日1回又は1日2回投与に適した、徐放性液体剤形の必要性が存在し続
ける。
本出願の第二節の全ての参考文献の引用は、該参考文献が、本出願の先行技術であるこ
とを承認するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、易水溶性電解質薬物のための水性徐放性薬物送達システムを提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(3. 発明の要旨)
本発明は、分散媒中で低い遊離薬物濃度を伴う安定した徐放性懸濁液剤形は、浸透圧を
制御することにより、及び熱力学的静電気的相互作用を利用することにより、懸濁剤の分
散相中に水溶性電解質薬物を閉じ込めることで実現することができるという発見に一部基
づいている
【0013】
本発明者らは、高度に可溶性な薬物を放出制御が可能である物質でコーティングされ、
かつ水性分散媒中に含浸された薬物を含有するビーズを含む薬物送達システムにより示さ
れた課題を克服している。特に本発明者らは、ビーズの成分の操作及び懸濁媒体の選択に
より、ビーズへの最初の水浸透を排除することができ、かつ薬物は、患者へ投与するまで
、分散相中に隔離され続けることができることを明らかにしている。更に本発明者らは、
浸透圧のシフトを制御することにより、コーティングを無傷のまま維持するという従来の
課題を克服し、かつ高分子多孔質膜又は非孔質膜を使用して放出制御を容易に実現するこ
とができることを明らかにしている。加えて本発明の薬物送達システムを利用する製品は
、薬物が分散相内に閉じ込められ続け、かつあらゆる機能性コーティングは無傷で維持さ
れるので、長い貯蔵期間を有する。
【0014】
そのようなものとして、本発明は、以下の特徴を有する徐放性懸濁液剤形を包含してい
る:インビトロ(例えば、瓶又は保管庫内)及びインビボの両方において、放出制御に十分
な期間、コーティングの物理的完全性を維持する能力;水活性を制御し、その結果製品内
のビーズの外側に存在する水を、ビーズの内側よりも少ない活性にすること;及び、一旦
薬物が投与された場合に、遊離の溶解した薬物の存在は、拡散に利用可能な貯蔵庫内に存
在すること。特に本発明は、製造時のビーズ内の可溶性非電解質成分(複数可)の包含を意
図している。このような成分は、水がビーズに吸収された時に溶解し、かつ貯蔵庫の外へ
拡散し、かつ浸透圧を低下させ、これによりビーズの膨潤を低下させ、かつビーズコーテ
ィングの完全性を喪失する。従って本発明は、ビーズが水を吸収する時に薬物-負荷され
たビーズの外側に移行された塊であり、これによりビーズの内側の圧力を低下させ、かつ
ビーズコーティングの崩壊を防止し、かつ薬物の放出制御を促進することが可能である賦
形剤の使用を包含している。
【0015】
本発明者らは、分散媒への高濃度の不活性で高度に水和された賦形剤の添加が分散相中
の薬物の溶解を妨げ得ること、並びに分散媒中の遊離薬物の濃度が極めて低く、事実上存
在しないという驚くべき発見もなした。そのようなものとして、本発明は、高度に水和さ
れ、かつ水と強度に会合し、かつ分散相の薬物複合体と水との会合を妨害することが可能
である高濃度の不活性成分を添加することにより、分散媒中の水活性を低下させることも
意図している。そのようなものとして、分散媒中の水は、薬物負荷されたビーズへ十分に
引きつけられず、これにより投与前の薬物の溶解を排除する、及び懸濁剤の分散相中に薬
物を閉じ込める。
【0016】
本発明者らは、薬物が親水コロイドの拡散二重層内の対イオンで存在するという効力に
よって懸濁剤の分散相中に閉じ込められ得ること、並びに分散相及び分散媒中の薬物分布
が分散媒中の同様に帯電された(薬物に対して)非-拡散性高分子電解質の存在によって操
作することができることも明らかにした。この結果は、高濃度から低濃度の領域へと移動
する活性成分の天然の傾向を機械的に「制止する」ことを試みる、従来の方法(例えば、
薬品のコーティング)において示された課題を回避することが可能な効果的かつ熱力学的
に安定した薬物「結合」機構である。
【0017】
従って本発明は、分散媒中で低い遊離薬物濃度を有し、患者へ投与した場合に徐放性薬
物放出を提供することが可能な、熱力学的に安定した液体投薬薬物の懸濁剤を包含してい
る。本発明は、薬物の表面電荷とは反対の表面電荷を有する医薬として許容し得るイオン
交換マトリックスにより、懸濁剤の分散相内に閉じ込められた薬物を含有する徐放性薬物
製剤の新規種類を包含している。このような液体製剤は、24時間から、最大48時間にわた
る徐放を実現することが可能である。そのようなものとして、本発明は、1日1回投与され
ることのみを必要とし、投与の容易さを確実にする、液体剤形を包含している。ある実施
態様において、分散媒は、イオン交換マトリックスから薬物を交換することが可能である
拡散性対イオンを実質的に含まない。本発明により、比較的低分子量を有する可溶性非電
解質成分も、この薬物複合体中に含まれても良いことは想定される。好ましくは、薬物-
イオン交換マトリックス複合体は、ビーズである。本発明により、分散相は任意に、多孔
質又は非孔質の高分子膜により膜-コーティングされ得ることも想定される。更に分散媒
は任意に、薬物と同じ電荷を伴う高分子電解質を含有することができることも想定される
。膜を通じて拡散することが不可能である分散媒中で同様に帯電した高分子電解質の包含
は、より低分子量の薬物を、(ドナン膜作用により)静電気力により既に閉じ込められた分
散相へ更に推し進める。薬物「放出」は、懸濁剤が、例えば高濃度の水及び薬物と同じ電
荷を持つ小型イオンを有する胃液又は腸液中のような環境中に配置されたときに、該小型
イオンが拡散二重層を浸すにつれて、誘発される。代替的実施態様において、分散媒は、
水と密に会合することが可能な高度に水和された賦形剤(複数)も含有し、これにより分散
媒中の水活性を制限し、かつ投与前の薬物の溶解を妨げる。
【0018】
そのようなものとして、本発明のひとつの実施態様において、薬物は、熱力学的に安定
した静電気相互作用を介して、懸濁剤の分散相内に閉じ込められる。任意に分散相は膜-
コーティングされ、及び代替的実施態様において、薬物は、ドナン膜作用を介して懸濁剤
の分散相内に閉じ込められる。好ましい実施態様において、薬物は、熱力学的に安定した
静電気相互作用及びドナン膜作用により懸濁剤の分散相内に閉じ込められる。他の好まし
い実施態様において、薬物は、分散媒中の水と強く会合する分散媒中の高度に水和された
成分により、懸濁剤の分散相に閉じ込められる。結果的に、水は、薬物負荷されたビーズ
の成分へより少なく引きつけられる。全ての実施態様において、薬物放出は、患者への投
与後に活性化される。様々な実施態様において、徐放は、患者の体の状態が、浸透作用、
静電気相互作用及び/又はドナン膜作用を崩壊した場合に、実現される。特定の実施態様
において、徐放は、患者の体が、薬物のイオン交換マトリックス及び/又は膜を通る拡散
を可能にした場合に、実現される。ある種の実施態様において、患者の胃液は、剤形の投
与後に分散媒を希釈し、及び該膜は水和されてより多孔質となり始め、ビーズからの薬物
の溶解及び分散をもたらす。
【0019】
本発明は、分散媒中の遊離薬物の量が、分散媒及び分散相中の薬物の総モル量を基に10
%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは0.5%未満、最も好ましくは0.05%未満であ
る液体型放出制御組成物を意図している。このような実施態様において、分散媒は実質的
に遊離薬物を欠いており、かつ徐放性製剤は、1年よりも長く、好ましくは約2年よりも長
く、好ましくは約3年よりも長く、最も好ましくは4年よりも長く物理的及び化学的に安定
している。
【0020】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックスに会合された水溶性電解質薬物を含
み、該イオン交換マトリックスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷と反対である、分散
相;並びに
(b)拡散性対イオンを実質的に含まない分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0021】
別の実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックス及びこのイオン交換マトリックスに
会合された水溶性電解質薬物を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、該イ
オン交換マトリックスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷とは反対である、分散相;並
びに
(b)拡散性対イオンを実質的に含まない分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0022】
別の実施態様において、分散媒は電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を更に含
有する。
別の実施態様において、分散媒は分散媒中の水を引きつける高度に水和された賦形剤を
更に含有する。
別の実施態様において、分散相は膜-コーティングされている。特定の実施態様におい
て、膜は高分子系である。該膜は、多孔質又は非孔質であることができる。特に好ましい
実施態様において、この膜は、薬物の拡散を制御する。
【0023】
別の実施態様において、イオン交換マトリックスと薬物の間の相互作用は、薬物の放出
及び/又は分散媒中の遊離薬物の量を制御する。
更に別の実施態様において、分散媒は、電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を
含み、及びこの分散相は膜-コーティングされ、ここで薬物の拡散及びイオン交換薬物複
合体の膨潤は、ドナン膜作用により制御される。
更に別の実施態様において、分散相は、水がビーズに吸収された時にビーズの溶解及び
拡散が可能であり、かつビーズの内側の浸透圧を低下させる、低分子量の非電解質可溶性
賦形剤(複数可)を含む、薬物-負荷されたビーズを含む。
【0024】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックスと会合された水溶性電解質薬物を含
有し、該イオン交換マトリックスの表面電荷が電解質薬物の表面電荷とは反対である、分
散相;並びに
(b)前記電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を含む分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0025】
別の実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックス及びそのイオン交換マトリックスに
会合された水溶性電解質薬物を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、該イ
オン交換マトリックスの表面電荷が電解質薬物の表面電荷とは反対である、分散相;並び

(b)前記電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を含む分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0026】
別の実施態様において、分散媒は更に、分散媒中で水を引きつける高度に水和された賦
形剤を含有する。
別の実施態様において、分散相は膜-コーティングされている。特定の実施態様におい
て、膜は高分子系であり、かつ多孔質又は非孔質であることができる。特定の好ましい実
施態様において、膜は、薬物の拡散を制御する。
【0027】
別の実施態様において、イオン交換マトリックスと薬物の間の相互作用は、薬物の放出
及び/又は分散媒中の遊離薬物の量を制御する。
更に別の実施態様において、分散媒は、電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を
含有し、かつこの分散相は膜-コーティングされ、ここで薬物の拡散及びイオン交換薬物
複合体の膨潤は、ドナン膜作用により制御される。
本発明は更に、前記実施態様の分散媒が拡散性対イオンを実質的に含まないことも意図
している。
【0028】
本発明は、液体型放出制御薬剤組成物の製造法にも関する。ひとつの実施態様において
、本発明は:
(a)水溶性電解質薬物をイオン交換マトリックスに会合させ、イオン交換マトリックス
薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、拡散性対イオンを実質的に含まない分
散媒へ分散させること;を含み、
ここで、該イオン交換マトリックスの表面が電解質薬物の電荷とは反対の電荷を有する
、液体型放出制御薬剤組成物の製造法に関する。
【0029】
別の実施態様において、本発明は:
(a)水溶性電解質薬物をイオン交換マトリックスに会合させ、イオン交換マトリックス
薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b) 前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、拡散性対イオンを実質的に含まない分
散媒へ分散する工程;を含み、
ここで、該イオン交換マトリックスの表面は、電解質薬物の電荷とは反対の電荷を有し
;及び
高分子電解質は、電解質薬物の電荷と同じ電荷を有する、液体型放出制御薬剤組成物の
調製法に関する。
【0030】
別の実施態様において、本発明は:
(a)酸-官能性イオン交換マトリックスの酸型をアミン-ベースの薬物の塩基型と会合さ
せ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、拡散性対イオンを実質的に含まない分
散媒に分散させること;を含む、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関する。
【0031】
別の実施態様において、本発明は:
(a)アミン-官能性イオン交換マトリックスの塩基型を酸-ベースの薬物の酸型と会合さ
せ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、拡散性対イオンを実質的に含まない分
散媒に分散させること;を含む、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関する。
【0032】
別の実施態様において、本発明は:
(a)水溶性電解質薬物をイオン交換マトリックスと会合させ、イオン交換マトリックス
薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、高分子電解質を含有する分散媒に分散
させること;を含み、
ここで、該イオン交換マトリックスの表面は、電解質薬物の電荷と反対の電荷を有し;
及び、
高分子電解質は、電解質薬物の電荷と同じ電荷を有する、液体型放出制御薬剤組成物の
調製法に関する。
【0033】
別の実施態様において、本発明は:
(a)酸-官能性イオン交換マトリックスの酸型をアミン-ベースの薬物の塩基型と会合さ
せ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、高分子電解質を含む分散媒に分散する
こと;を含み、
ここで、該高分子電解質が正電荷を有する、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関す
る。
【0034】
別の実施態様において、本発明は:
(a)アミン-官能性イオン交換マトリックスの塩基型を酸-ベースの薬物の酸型と会合さ
せ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にさせること;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、高分子電解質を含む分散媒に分散する
工程;を含み、
ここで、該高分子電解質が負電荷を有する、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関す
る。
【0035】
先の実施態様の全てにおいて、本発明は更に、薬物及びイオン交換マトリックスを含有
する複雑でない水性ゲルの形成を包含している剤形及び方法も意図している。好ましくは
、このような水性ゲルは、スペクテーターイオン(spectator ion)を実質的に含まず、
薬物及びその薬物の電荷と反対の電荷を有するイオン交換マトリックスの反応及び水和に
より、自然発生的に形成される。ある実施態様において、低い水溶解度から限定された水
溶解度までを有する固形の薬物及びイオン交換マトリックスの操作は、最終的に高度に水
溶性の薬物が液体徐放性薬物送達システムに製剤される、安定したコロイド状分散系の形
成を可能にする。特定の実施態様において、得られる水性ゲルは、造粒又は押出/球形化
に適した接着特性を有する粘性がある。他の特定の実施態様において、薬物は、水性ゲル
内に含量均一性を伴い分配される。更に他の特定の実施態様において、薬物とイオン交換
マトリックス及び/又は透過膜との間の静電気相互作用は、薬物放出の速度及び程度に影
響を及ぼす。水性ゲルは、ビーズを形成する糖球上の層状の薬物への水性コーティングプ
ロセスにおいて使用することができることも意図される。このゲルは、即時溶解し容易に
再構成することができる親水性薬物複合体を作製するために乾燥させることもできる。本
発明により意図された方法は、大規模製造に容易に規模拡大することができる。そのよう
なものとして、本発明は、大量に容易に製造される、優れた含量均一性及び高度の親水性
を有する水性ゲルから形成された新規の薬物-負荷されたビーズも包含している。
【0036】
前記実施態様において、本発明は、イオン交換マトリックス薬物複合体の、拡散性対イ
オンを実質的に含まない分散媒への分散も包含している。
別の実施態様において、この分散媒は更に、分散媒中で水を引きつける高度に水和され
た賦形剤を含有する。
別の実施態様において、この分散相は、膜-コーティングされている。特定の実施態様
において、この膜は、高分子系であり、多孔質又は非孔質であることができる。特定の好
ましい実施態様において、この膜は、薬物の拡散を制御する。
【0037】
別の実施態様において、イオン交換マトリックスと薬物の間の相互作用は、薬物の放出
及び/又は分散媒内の遊離薬物の量を制御する。
更に別の実施態様において、分散媒は、電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を
含有し、及び分散相は、膜-コーティングされ、ここで薬物の拡散及びイオン交換薬物複
合体の膨潤は、ドナン膜作用により制御される。
本発明は、症状又は状態に罹患した患者を治療する方法にも関する。このような実施態
様において、本発明は、本発明において説明された液体型放出制御薬剤組成物をそれを必
要とする患者へ投与することを含む、状態又は症状を治療する方法に関する。
【0038】
具体的実施態様において、アルブテロールの塩基型は、水の存在下でアルギン酸と相互
作用することができ、驚くべきことに物理的に安定した水性ゲルを形成し、これは薬物-
負荷されたビーズの形成に使用することができる。より好ましい実施態様において、薬物
-負荷されたビーズは更に、乳糖を含有する。他の実施態様において、これらのビーズは
任意に、ステアリン酸又はその他の押出を促進することができる賦形剤を含有することが
できる。ある好ましい実施態様において、得られるビーズは、EUGRAGIT(登録商標)により
コーティングされ、水及びショ糖を含有する分散媒中に懸濁される。特に好ましい実施態
様において、分散媒は、シロップNF(Syrup NF)を含む。分散媒は更に、保存剤及び他の
不活性添加剤も含有することができる。そのような実施態様において、得られる液体徐放
性生成物は、瓶内で物理安定性を維持することが可能であり、患者へ投与される場合に薬
品の放出制御を実現することが可能である。
本発明は、本発明の非限定的実施態様を例証している、以下の詳細な図面、説明及び例
証的実施例を参照することで、より完全に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(5. 発明の詳細な説明)
(5.1 定義)
本明細書において使用される用語「患者」は、ヒト、家畜及び農役用動物、並びに動物
園、競技用及び愛玩用の動物、例えば家庭用ペット、及び他の飼い馴らされた動物、例え
ば非限定的にウシ、ヒツジ、フェレット、ブタ、ウマ、家禽、ウサギ、ヤギなどを含む、
哺乳類として分類された任意の動物を含むが、これらに限定されるものではない。本明細
書において使用される用語「対象」及び「患者」は、互換的に使用することもできる。患
者は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例え
ば、サル及びヒト)などの哺乳類が好ましい。
【0040】
本明細書において使用される用語「治療する」及び「治療」とは、治療的処置及び予防
的又は防御的手段の両方をいい、ここでこの目的は、望ましくない生理的状態、障害もし
くは疾患を予防もしくは減弱させるか、又は恩恵のあるもしくは望ましい臨床結果を得る
ことである。本発明の目的に関して、恩恵のある又は望ましい臨床結果は、症状の緩和;
状態、障害又は疾患の程度の減弱;状態、障害又は疾患の安定化された(すなわち増悪し
ない)段階;状態、障害又は疾患の進行の遅延もしくは緩徐化;状態、障害又は疾患の段
階の改善;検出可能又は検出不可能のいずれかの、寛解(部分的又は全体のいずれか);又
は、状態、障害もしくは疾患の増強もしくは改善:を含むが、これらに限定されるもので
はない。治療は、過度の副作用レベルを伴わずに、臨床的に重要である細胞反応を誘発す
ることを含む。治療は、治療を受けない場合に予想される生存と比べた、生存の延長も含
む。
【0041】
本明細書において使用される語句「電解質薬物」は、解離又はプロトン化によりイオン
化が可能である薬物の医薬として許容し得るイオン型をいう。
本明細書において使用される用語「拡散性対イオン」は、イオン交換マトリックスから
電解質薬物と置き換え又は交換が可能である、医薬として許容し得るイオンをいう。拡散
性対イオンが正電荷を有する場合、該イオンは本明細書において、拡散性対陽イオンと称
される。拡散性対陽イオンの非限定的例は、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム
又はカルシウムなどである。拡散性対イオンが負の電荷を有する場合、該イオンは本明細
書において拡散性対陰イオンと称される。拡散性対陰イオンの非限定的例は、例えば塩化
物、臭化物、ヨウ化物、及びリン酸である。
【0042】
本明細書において使用される用語「水溶性」は、電解質薬物と結びつけて使用される場
合、生理的に妥当なpHにおいて、水100mL中電解質薬物の約3gよりも大きい溶解度を有す
ることを意味する。特定の実施態様において、用語水溶性は、生理的に妥当なpHにおいて
、水100mL中電解質薬物の約1gよりも大きい溶解度を有することを意味する。
【0043】
本明細書において使用される語句「拡散性対イオンを実質的に含まない」は、分散媒中
の拡散性対イオンの濃度又は存在を説明するために使用される場合、分散媒中の拡散性対
イオンの濃度が、液体1L当たり約0.1〜0.5モル未満、好ましくは液体1L当たり約0.05〜0.
1モル未満、より好ましくは液体1L当たり約0.01〜0.5モル未満、最も好ましくは液体1L当
たり約0.01モル未満であることを意味する。
【0044】
本明細書において使用される語句「アミンの塩基型」は、薬物又はイオン交換マトリッ
クスと結びつけて使用される場合、実質的に全てのアミン-窒素原子がプロトン化されて
いない及び中性電荷を有することを意味する。
本明細書において使用される語句「酸型」は、薬物又はイオン交換マトリックスと結び
つけて使用される場合、実質的に全ての酸基がそれらの非解離の非帯電の酸型であること
を意味する。
【0045】
本明細書において使用される用語「高分子電解質」は、その表面上に電荷を有する分子
を意味する。ある実施態様において、高分子電解質は、本発明に有用なものなどの任意の
拡散制御膜を通り実質的に拡散しないほど十分に大きい分子量を有する。用語「高分子電
解質」は、分子、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマー、コポリマーを包含し、その各々
は有機又は無機若しくはそれらの組合せであることができる。
【0046】
本明細書において使用される用語「親水コロイド」は、分散媒の分子と溶媒和又は会合
することができる大きい有機分子を包含している。親水コロイドは、分散された粒子が、
より多い又はより少ない液体であり、かつそれらがその中に懸濁された液体のある量を誘
引及び吸着する、コロイド状分散系も包含している。
【0047】
本明細書において使用される用語「拡散二重層」は、コロイド状表面の電荷と反対及び
同様の電荷を持つ両方のイオンを含むが、分散相の表面電荷を中和するのに十分な反対に
帯電したイオン(すなわち対イオン)の過剰な濃度を拡散二重層の範囲内に全体的に有する
、コロイド状範囲内に収まるような粒子サイズを通常有する分散された物質のような、分
散又は懸濁された固体又は液体の相の帯電した表面に直ぐ隣接している分子的に動的な領
域を意味する。
【0048】
本明細書において使用される語句「複雑でない(uncomplicated)ゲル」は、一部、水性
ゲル内のスペクテーターイオンの不在を意味する。
本明細書において使用される語句「高度に水和された」は、水の熱力学的活性を制限す
るのに十分な水素結合を有する成分を説明する。
【0049】
(5.2 発明の剤形)
先に提示したように、本明細書において説明及び請求した本発明は、薬物の表面電荷と
反対の表面電荷を有するイオン交換マトリックスにより懸濁剤の分散相中に閉じ込められ
た薬物を含有する徐放性薬物製剤の新規クラスを含む。
本発明は具体的には、水の存在下で、親水コロイドであるイオン交換マトリックス、及
びマトリックスの電荷と反対の電荷を有する薬物を組合せることにより製造される、薬物
-負荷されたビーズを含有する液体徐放性製剤を包含している。
【0050】
本発明の液体徐放性製剤は、約8時間、約12時間、約18時間、最も好ましくは約24時間
から、最大約48時間にわたる、放出制御が可能である。
ある実施態様において、液体徐放性薬物送達システムは薬物を含み、薬物の放出を制御
する物質でコーティングされたビーズを含有している。このコーティングは、薬物が生体
利用可能となり始める前に、それを通り薬物が拡散しなければならない障壁であることが
好ましい。
【0051】
ある実施態様において、薬物はその塩基型である。本発明により意図された親水コロイ
ドは、水との強力なイオン-双極子相互作用により特徴付けられる過度の水和をもたらす
ある種の条件下でイオン化することができる酸性及び塩基性の官能基を有する。そのよう
なものとして、薬物とのイオン交換マトリックス相互作用は、複雑でない水性ゲルの自然
発生的かつ可逆性の形成を生じる。そのような相互作用は、引きつける静電気力の効力に
より、熱力学的安定性を増強する。そのような相互作用によりもたらされた他の利点は、
高い粘度及び電気泳動移動度を含むが、これらに限定されるものではない。この相互作用
から生じる水性ゲルは、造粒及び球形化/押出に適している。好ましい実施態様において
、得られるゲルを用い、ビーズを形成する。得られる薬物-負荷されたビーズは、正確な
制御を必要とするような重要な変量をほとんど伴わずに、非常に容易に製造される。ビー
ズは、含量均一性であり、親水性である。ビーズは、徐放性液体懸濁剤剤形への混和に比
類なく適している。ビーズ上の好適なポリマーコーティングは、薬物複合体が膜を透過す
ることができないことに関連した電気的中和の制約のために、ビーズの内側に薬物を閉じ
込めることができる。薬物は、薬物拡散を増強する他の成分と遭遇するまで、イオン交換
マトリックスに会合し続ける。このようなものとして、ある実施態様において、分散相は
膜-コーティングされる。
【0052】
ある実施態様において、分散媒は、拡散性対イオンを実質的に含まず、任意に分散媒中
の薬物と同じ電荷を伴う高分子電解質を含む。薬物「放出」は、懸濁剤が、例えば高濃度
の水及び薬物と同じ電荷を有する小型イオン(すなわち、イオン交換マトリックスを通る
拡散及び/又はそれの薬物との交換が可能である)を有する胃液又は腸液のような環境中に
配置された場合に誘発される。これらの小型イオン又は対イオンは、イオン交換マトリッ
クス薬物複合体を浸し、電解質薬物の胃腸液の分散相への放出を引き起こす。従って、分
散媒中の電解質薬物の濃度は、イオン交換マトリックスが分散媒への拡散に影響を及ぼす
速度及び程度により、一部影響される。イオン交換マトリックスが拡散に影響を及ぼす速
度及び程度は、薬物の徐放性プロファイルに影響を及ぼすことができる。
【0053】
代替的実施態様において、分散媒は、高度に水和され及び水と会合することが可能であ
る成分(複数可)を含有する。そのような成分は、分散媒から水を引きつけ、その結果ビー
ズの外側及び分散媒の内側の水活性は、ビーズの内側よりも少ない。様々な実施態様にお
いて、分散媒は、製剤が投与され及び分散媒が希釈されるまで、薬物-負荷されたビーズ
への水拡散及び内部浸透圧の発生を排除するのに十分な低い水活性を有する。好ましい実
施態様において、この成分は、ショ糖、デキストロース、マルトース、マンニトール、ソ
ルビトール、グリセリン、又は低分子量ポリエチレングリコールなどの非電解質賦形剤で
あるが、これらに限定されるものではない。あるそのような実施態様において、本発明に
より意図された薬物送達システムは、水(例えば胃液中の水)により活性化される。そのよ
うな実施態様において、分散媒中のビーズの外側の水の活性がビーズの内側の水の活性よ
りも大きい場合、水はコーティングを通って拡散し、ビーズの可溶性成分を溶解し、及び
拡散性遊離薬物の貯蔵庫を作製するであろう。そのような遊離薬物は、薬物の患者への放
出を制御することができるコーティングを透過することができる。
【0054】
そのようなものとして、、薬物の電荷とは反対の電荷を有するイオン交換マトリックス
を含む、懸濁剤の分散相中に閉じ込められた薬物を含有する薬物送達システムのそのよう
な新規クラスを提供することは、本発明の目的である。
ある実施態様において、本発明の組成物、特に分散媒は、電解質薬物の表面電荷と同様
の表面電荷を有する高分子電解質も含有する。理論により制限されるものではないが、本
出願人らは、電解質薬物の分散相からの放出は、高分子電解質と電解質薬物が同じ電荷を
有するので、これらの間の斥力相互作用により制御又は遅延されると考える。この電解質
薬物の「捕獲」は、高い水溶解度を持つイオン化された形の薬物の投与を可能にし、及び
分散媒中の低濃度の電解質薬物を提供する。
【0055】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックスに会合された水溶性電解質薬物を含
み、該イオン交換マトリックスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷と反対である、分散
相;並びに
(b)拡散性対イオンを実質的に含まない分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0056】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックスに会合された水溶性電解質薬物を含
み、該イオン交換マトリックスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷と反対である、分散
相;並びに
(b)該電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を含む分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0057】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックス及び該イオン交換マトリックスに会
合された水溶性電解質薬物を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、該イオ
ン交換マトリックスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷と反対である、分散相;並びに
(b)拡散性対イオンを実質的に含まない分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0058】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックス及び該イオン交換マトリックスに会
合された水溶性電解質薬物を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、該イオ
ン交換マトリックスの表面電荷は、該電解質薬物の表面電荷と反対である、分散相;並び

(b)電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を含む分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物に関する。
【0059】
このイオン交換マトリックスは、オリゴマー、コ-オリゴマー、ポリマー又はコポリマ
ーなどの高分子量有機化合物;例えばゼオライトなどの多孔質無機ネットワーク固形物;
及び/又は、それらの組合せであることができ、これは、帯電した表面を有し、及び反対
に-帯電したイオンを保持することが可能である。本明細書において使用される語句「陽
イオン交換マトリックス」は、陽イオン形の薬物を保持することが可能であるイオン交換
マトリックスをいう。本明細書において使用される語句「陰イオン交換マトリックス」は
、陰イオン形の薬物を保持することが可能であるイオン交換マトリックスをいう。
【0060】
システムの設計及び適当な成分の選択は、治療的活性成分(薬物)の電荷において予想さ
れる。本発明は、帯電していない塩基又は酸である薬物の;又は、強力な電解質である、
陽イオン性もしくは陰イオン性薬物、更にはそれらのpKaを上回る弱い酸性薬物(陰イオン
)及びそれらのpKaを下回る弱い塩基性薬物(陽イオン)の投与に適している。薬物がイオン
である場合、イオン交換マトリックスは、薬物イオンの電荷とは反対の電荷を有さなけれ
ばならない。薬物が帯電していない塩基又は酸である場合、イオン交換マトリックスは、
それぞれ、酸又は塩基の形である。電解質薬物が陽イオンである場合、負の表面官能性を
有するイオン交換マトリックスが、イオン交換マトリックスとして利用されなければなら
ない。薬物が陰イオンである場合、正の表面官能性を伴うイオン交換マトリックスが、イ
オン交換マトリックスとして利用されなければならない。この場合コアを形成するために
使用することができる好適な医薬構成成分の例は、キトサン、ポリリシン、及びゼラチン
を含むが、これらに限定されるものではない。
【0061】
陽イオン-及び陰イオン-交換マトリックスは、当該技術分野において周知である。有用
な陽イオン交換マトリックスの非限定的例は、例えば、Rohm and Haas社(フィラデルフィ
ア, PA)から入手可能であり、かつ商標名AMBERLITE(商標)IRP69で販売されている、ス
チレン-ジビニルベンゼンコポリマーを含むポリマー主鎖、及びペンダントスルホン酸基
を有する樹脂などの陽イオン交換樹脂;Rohm and Haasから入手可能であり、かつ商標名A
MBERLITE(商標)IRP64及びIRP88で販売されている、カルボキシラート官能性を有する、
メタクリル酸及びジビニルベンゼンコポリマー類;例えばアルギン酸塩、カルポキシメチ
ルセルロース、クロスカルメロース、微晶質セルロース、キサンタンガム、カルボマー94
などのカルボキシビニルポリマー、ゼラチンなどの親水コロイド;又は、それらの任意の
組合せを含む。ひとつの実施態様において、陽イオン交換マトリックスは、アルギン酸塩
、カルポキシメチルセルロース、微晶質セルロース、キサンタンガム、カルボキシビニル
ポリマー、ゼラチン又はそれらの任意の組合せを含む。
【0062】
有用な陰イオン交換マトリックスの非限定的例は、陰イオン交換樹脂、例えば、Rohm a
nd Haas(フィラデルフィア, PA)から入手可能であり、かつ商標名DUOLITE(商標)AP 143で
販売されている、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーを含むポリマー主鎖、及びペン
ダントアンモニウムもしくはテトラアルキルアンモニウム官能基を有する樹脂などの陰イ
オン交換樹脂;及び、非限定的に、キトサン、ポリリジン、又はゼラチンなどの、親水コ
ロイド;並びにそれらの任意の組合せを含む。ひとつの実施態様において、陰イオン交換
マトリックスは、キトサン、ポリリジン、ゼラチン又は任意のそれらの組合せである。
【0063】
ある実施態様において、イオン交換マトリックスは、水に不溶性である。代替的及び好
ましい実施態様において、イオン交換マトリックスは水溶性である。そのような実施態様
において、イオン交換マトリックスは、分散媒により溶媒和化されることが可能であり、
好ましくは親水性コロイドである。本発明は、デンプン、カンテン、セルロース、アルギ
ン酸、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、アカシアゴム、及びアルブミンなどの天
然物質を含むが、これらに限定されるものではない親水コロイドを、湿潤結合剤のように
単純なものから、ミクロスフェア成分のように新規のものまでの範囲に及ぶ適用のために
使用することができることを意図している。非限定的合成物の例は、メチルセルロース、
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸メチル
、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ無水物を含み、これらも、湿式造粒のような伝
統的なものから、機能性コーティング及び生分解性インプラントのようなより最新式のも
のまでの範囲に及ぶ非限定的適用において、広く展開されている。
【0064】
好ましい実施態様において、陽イオン交換マトリックスは、親水性コロイドである。そ
のような実施態様において、陽イオン交換マトリックスは、アルギン酸塩、カルボキシメ
チルセルロース、微晶質セルロース、キサンタンガム、カルボマー94などのカルボキシビ
ニルポリマー、又はそれらの任意の組合せである。ある実施態様において、親水性コロイ
ドを架橋し、膨潤を低下させる。特に好ましい実施態様において、イオン交換物質は、ア
ルギン酸カルシウムである。
【0065】
他の好ましい実施態様において、陰イオン交換マトリックスは、親水性コロイドである
。そのような実施態様において、陰イオン交換マトリックスは、キトサン、ポリリジン、
ゼラチン、又はそれらの任意の組合せである。ある実施態様において、親水性コロイドを
架橋し、膨潤を低下させる。
この水溶性電解質薬物は、イオン交換マトリックスと会合し、イオン交換マトリックス
薬物複合体を形成する。特定の理論に結びつけられるものではないが、本出願者らは、本
発明の利点は、液体徐放性経口用量を製剤する場合に直面する従来の多くの課題を回避す
る、薬物とイオン交換マトリックスの間の静電気相互作用に起因すると考えている。
【0066】
ある実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は、粒子又はビーズの形で
ある。粒子又はビーズは、液体剤形で経口的に投与することができるサイズである。ひと
つの実施態様において、粒子又はビーズは、懸濁剤中で沈降しないようなサイズ及び/又
は密度である。粒子又はビーズは、望ましくない患者属性(patient attribute)を有さな
いことが好ましい。特定の実施態様において、粒子又はビーズの直径は、約0.01μm〜約2
000μmであり;別の実施態様において、約0.1μm〜約1000μmであり;及び別の実施態様
において、約1μm〜約1000μmである。他の実施態様において、粒子又はビーズの直径は
、2000μmよりも大きく、3000μmよりも大きく、又は5000μmよりも大きい。代替的実施
態様において、粒子又はビーズの直径は、2000μmを超えず、1000μmを超えず、好ましく
は500μmを超えず、より好ましくは50μmを超えず、最も好ましくは1μmを超えない。
コアは更に、固形剤形を形成するために有用である医薬として許容し得る加工助剤を含
有することができ、該助剤は、デンプン、酸化チタン、及びシリカなどの増量剤;保存剤
;抗酸化剤などの安定剤;植物油などの滑沢剤;などを含むが、これらに限定されるもの
ではない。
【0067】
好ましい実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は更に、低分子量の可
溶性の非電解質賦形剤を含有する。そのような賦形剤は、水に溶解可能であり、並びにビ
ーズが水を吸収したときにビーズの外へ拡散することが可能であり、これによりビーズ内
部の浸透圧を低下させる。賦形剤は、ビーズをコーティングしている膜を透過するのに十
分な低い分子量を有さなければならない。様々な実施態様において、ビーズに含まれる賦
形剤の量は、薬物放出の速度に影響を及ぼすことができる。様々な実施態様において、賦
形剤は、ビーズ中に約5%〜約10%、約10%〜約20%、約20%〜約30%、約30%〜約40%
、約40%〜約45%で存在する。特に好ましい実施態様において、賦形剤は乳糖である。あ
る種のそのような実施態様において、製造時により多くの乳糖が分散相に混和されるなら
ば、投与後により迅速に薬物がビーズから放出される。様々な実施態様において、乳糖は
、ビーズ中に、約5%〜約10%、約10%〜約20%、約20%〜約30%、約30%〜約40%、約4
0%〜約45%で存在する。ある好ましい実施態様において、乳糖は、ビーズ中に約20%〜
約30%で存在する。本発明により包含された可溶性非電解質賦形剤の他の例は、デキスト
ロース、マルトース、マンニトール、ソルビトール、グリセリン、又は低分子量ポリエチ
レングリコールを含むが、これらに限定されるものではない。
【0068】
ひとつの実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は更に、拡散制御膜コ
ーティングを含む。この膜コーティングは、対イオンのイオン交換マトリックスへの及び
薬物のイオン交換マトリックスの外側への拡散の更なる制御に有用である。従って拡散制
御膜コーティングは、電解質薬物の分散媒への及び/又は患者への投与後の消化管への放
出を制御するのに有用である。本発明は、拡散制御を提供するいずれかの膜-コーティン
グの使用を包含している。このコーティング物質は、単独で使用されるか、互いに混合さ
れるか、並びに可塑剤、顔料、及び他の物質などの他の成分と混合される、非常に多数の
天然又は合成のフィルム形成剤であってよい。コーティングの成分は、水に不溶性であり
、かつ水透過性であることが好ましい。水溶性物質の混和は、コーティングの透過性の変
更に有効であることができる。拡散制御膜は、当該技術分野において公知である。非限定
的例は、エチルセルロース、例えばSURELEASE(登録商標)(Colorcon, ウェストポイント,
PA);メチルメタクリレートポリマー、例えばEUDRAGIT(登録商標)(Rohm Pharma, GmbH,
ウェイテルシュタット, 独国);セルロースエステル、セルロースジエステル、セルロー
ストリエステル、セルロースエーテル、セルロースエステル-エーテル、セルロースアシ
レート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、
セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネ
ート、及びセルロースアセテートブチレートを含む。好ましい実施態様において、コーテ
ィングは、メチルメタクリレートポリマーである。
【0069】
ひとつの実施態様において、拡散制御膜は、エチルセルロース、メチルメタクリレート
、セルロースエステル、セルロースジエステル、セルローストリエステル、セルロースエ
ーテル、セルロースエステル-エーテル、セルロースアシレート、セルロースジアシレー
ト、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セル
ローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブ
チレート、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0070】
ひとつの実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は、イオン交換マトリ
ックス薬物複合体及び拡散制御膜の総質量を基に約1%から最大約75%の拡散制御膜によ
りコーティングされ;別の実施態様においては、5%〜約50%;及び、好ましい実施態様
においては、約10%〜約30%によりコーティングされる。典型的には、より多くのコーテ
ィングは、薬物放出のより長い遅延となる。
ひとつの実施態様において、薬物-負荷されたアルギン酸塩ビーズは、十分なEUDRAGIT(
登録商標)(Rohm)RS 30Dでコーティングされ、コーティング及び薬物-負荷されたアルギン
酸塩ビーズの総質量を基に約20%〜約30質量%のコーティングを有する、コーティングさ
れたビーズを提供する。
【0071】
好ましくは、本発明の分散媒は、低濃度の拡散性対イオンを伴う液体である。好ましい
実施態様において、分散媒は、拡散性対イオンを実質的に含まない。有用な液体は、非-
水性の医薬として許容し得る液体、水、又はそれらの組合せを含む。分散媒のただひとつ
の必要要件は、それが低濃度の拡散性対イオンを有することである。本明細書において使
用される用語「低い」は、それが分散媒中の拡散性対イオン濃度と共に使用される場合、
液体1Lにつき約0.1〜0.5モル未満、好ましくは液体1Lにつき約0.05〜0.1モル未満、より
好ましくは液体1Lにつき約0.01〜0.5モル未満、最も好ましくは液体1Lにつき約0.01モル
未満を意味する。ある実施態様において、拡散性対イオン濃度は、液体1Lにつき0.001〜0
.1モル未満であり、好ましくは液体1Lにつき0.01モルを超えない。ある実施態様において
、分散媒は拡散性対イオンを実質的に含まない。
【0072】
分散媒中の拡散性対イオンの濃度は低いので、電解質薬物による対イオン交換の程度は
、最小化又は排除される。従って電解質薬物のかなりの画分は、イオン交換マトリックス
と会合し続ける、すなわち分散相内であり続ける。ひとつの実施態様において、分散媒中
の遊離薬物の量は、分散媒及び分散相中の薬物の総モル量を基に10%未満であり;別の実
施態様において、分散媒中の遊離薬物の量は、分散媒及び分散相中の薬物の総モル量を基
に5%未満であり;及び、別の実施態様において、分散媒中の遊離薬物の量は、分散媒及
び分散相中の薬物の総モル量を基に0.5%未満であり;更に別の実施態様において、分散
媒中の遊離薬物の量は、分散媒及び分散相中の薬物の総モル量を基に0.05%未満である。
【0073】
前述のように、特定の実施態様において、液体型放出制御薬剤組成物は、電解質薬物と
同じ電荷を有する高分子電解質を更に含有する分散媒を含む。好ましくはこの高分子電解
質は、イオン交換マトリックスからの薬物と置き換わらない。むしろ製剤が水及び薬物と
同じ電荷を有する小型イオンの高濃度に曝されるまで、この高分子電解質は、薬物をマト
リックス内に更に閉じ込める。好ましくは、高分子電解質は、膜を通る拡散が不可能であ
る医薬として許容し得る分子でもある。好ましくは高分子電解質は、分散媒中に存在する
ことができる任意の拡散性対イオンの作用と反対に作用することが可能である。
【0074】
ある好ましい実施態様において、分散媒は更に、高度に水和され、分散媒中の水と会合
することが可能である、高濃度の賦形剤(複数可)を含有する。薬物は水性分散媒中に高度
に可溶性であるが、分散媒中の高度に水和された成分の存在は、薬物-イオン交換マトリ
ックス複合体から薬物を溶解し始めるために必要である、分散媒中の水を引きつける。単
に製剤が投与され及び胃液(大量の水)が希釈するまで、この分散媒は、薬物を溶解し、利
用可能とし始め、並びに膜を透過し及び/又はビーズから拡散し始めるであろう。そのよ
うな実施態様において、分散媒は実質的に遊離薬物を欠いており、好ましくは0.5%未満
の薬物、最も好ましくは0.05%未満の薬物が、分散媒内に存在する。様々な実施態様にお
いて、高度に水和された成分は、分散媒中に、質量/質量基準で、約10%〜約20%、約20
%〜約30%、約30%〜約40%、約40%〜約50%、約50%〜約60%で存在する。好ましくは
この成分は、約60%〜約65%、最大約70%存在する。特定の好ましい実施態様において、
分散媒は、ショ糖、又は他の糖分子を含む。そのような実施態様において、分散媒は、質
量/質量基準で、10%より多いショ糖、好ましくは20%より多いショ糖、より好ましくは3
0%より多いショ糖、更により好ましくは40%より多いショ糖、及び最も好ましくは50%
より多くを含む。最も好ましい実施態様において、分散媒は、約65%のショ糖(すなわち
シロップNF)で、約70%を超えないものを含有する。本発明に包含される賦形剤の他の例
は、デキストロース、マンニトール、フルクトース、ポリエチレングリコール、グリコー
ル、及びグリセリンを含むが、これらに限定されるものではない。当業者は、同様に機能
し得る、他の高度に水和された賦形剤を容易に決定することができる。
【0075】
本発明者らは、液体剤形の調製において、拡散性対イオンの濃度を低く維持し、かつイ
オン交換マトリックス薬物複合体中に薬物を更に捕獲することが可能である高分子電解質
である成分を選択するために、非限定的に食味及び懸濁のような投薬特徴(dosage charac
teristics)に必要な成分を選択することができることを認めている。
【0076】
有用な正帯電した高分子電解質の非限定的例は、アルキルアミノエチル(メタ)アクリレ
ート、ジメチルアミノエチル(エタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジ
メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド
、ビニルピリジン、ビニル-N-エチルピリジン、ビニルベンジルジメチルアミンのアンモ
ニウム及び/又はテトラアルキルアンモニウム塩型;又は、正帯電した親水性コロイド、
例えばキトサン;並びに、それらの任意の組合せを含む、オリゴマー及びポリマーを含む
。特定の実施態様において、正帯電した高分子電解質は、キトサンである。
【0077】
有用な負帯電した高分子電解質の非限定的例は、(メタ)アクリル酸、(エタ)アクリル酸
、イタコン酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニル硫酸、スチレンスルホン酸、
ビニルフェニル硫酸、アルギン酸塩、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カ
ルボキシメチル-ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパ
リン、コンドロイチン硫酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、ゲランガムの塩型、及びそ
れらの任意の混合物を含むオリゴマー及びポリマーを含む。特定の実施態様において、負
帯電した高分子電解質はキサンタンガムである。
【0078】
好ましい実施態様において、高分子電解質分子は更に、拡散性対イオンを含有しない。
膜を通る拡散が不可能である、分散媒中の同様に帯電された高分子量の高分子電解質の
混入は、より低い分子量の薬物を分散相へ推し進め(ドナン膜作用により)、そこで静電気
力により閉じ込められる。
【0079】
この液体型放出制御薬剤組成物は更に、安定剤、分散剤などからなる群より選択される
分散系添加剤を含有することができるが、但しこれらの賦形剤は本発明の意図された働き
に有害に作用しないことを条件とする。
液体型放出制御薬剤組成物は更に、例えば、甘味剤、香味剤、着色剤、増粘剤などのよ
うな、経口液体投与製剤において有用な賦形剤を含有することができるが、但しこれらの
賦形剤は本発明の意図された働きに有害に作用しないことを条件とする。
【0080】
本発明は、電解質薬物と同様の電荷を有する高分子電解質でもある先の実施態様におい
て考察された分散系添加剤及び賦形剤の使用を意図している。非-薬物成分は、浸透圧を
低下させるためにビーズ中に含まれるか又は投与前の薬物溶解を妨げるために分散媒中に
含まれるので、本発明は、先の実施態様において考察されたそのような分散系添加剤及び
賦形剤の使用も包含している。
本発明の剤形の利点は、イオン-捕獲機構、浸透圧調節機構、及び熱力学的平衡機構が
全般的に適用可能であり、かつ元来安定していること、並びにその作用は、当業者が利用
することができる従来の広範に許容された医薬賦形剤の使用を通じ実行され得るという事
実である。
【0081】
例証のために、アルギン酸塩コアビーズを使用する陽イオン-形成薬物(プロプラノロー
ル)の例を各段階の具体例として使用するが、全体の目標は、図3に示すようなコロイド状
分散相の拡散二重層(「DDL」)中に反対に帯電された薬物分子を閉じ込めるために選択さ
れた表面電荷を伴う高分子電解質(複数可)を作製することである。典型的には、分散相は
、直径が100〜2000μm範囲のほぼ球形粒子の形で凝集されるであろう。粒子サイズ及び/
又は膨潤は、架橋及び/又は架橋剤の使用により制限することができる。様々な実施態様
において、架橋は、共有結合を介して実現することができ、例えばAcDiSolは、架橋され
たカルボキシメチルセルロースであり、及び架橋されたゼラチンは、ゼラチンのホルムア
ルデヒドへの曝露により実現され得る。
【0082】
本発明のひとつの実施態様を、図1に示す。薬物の電解性又はイオン性形は、薬物2の電
荷とは反対の電荷を有するイオン交換マトリックスを含む懸濁剤の分散相1中に閉じ込め
られている。分散媒3は、薬物の表面電荷と同じ表面電荷を有する高分子電解質4を含む。
懸濁液2の分散相1中の水溶性電解質薬物の熱力学的に安定した捕獲は、静電気相互作用を
用いて実現され、水溶性薬物が、分散媒3へ拡散することなく、高濃度で分散相1内に閉じ
込められることを可能にする。分散相中の薬物と同様の電荷の高濃度のイオンにより放出
が誘発されるまで、薬物が分散相1中に維持される貯蔵庫が作製される。この誘発は、薬
物が比較的高いイオン強度を有する生理的液体に投与される場合に生じる。分散相1が任
意の拡散制御膜コーティング5を含む場合、対イオン交換及び電解質拡散の速度は阻害さ
れるので、放出速度は更に制御される。
【0083】
同じく例証として、薬物アルブテロールの例を使用し、乳糖を混和する生理的安定した
水性ゲルから製造された薬物-負荷されたビーズを含有する、薬物送達システムの適用性
を明らかにする。典型的にはそのようなビーズは次に、ショ糖を含有する分散媒中に懸濁
される。しかし全体の目的は、帯電された薬物を、水の存在下で薬物の電荷と反対の電荷
を有するイオン交換マトリックスと反応させることによって安定した水性ゲルを作製し、
ビーズ中の浸透圧を軽減するようにビーズを溶解し及びビーズの外へ拡散することが可能
である可溶性非電解質を更に含有するビーズを形成することである。典型的にはそのよう
なビーズは、薬物放出の制御に貢献する高分子膜でコーティングされ、これらのビーズは
、高度に水和され、及び分散媒中のビーズの外側の水活性はビーズの内側の水活性よりも
低いことを確実にすることが可能である非電解質賦形剤を含む分散媒中に懸濁される。
【0084】
本システムにおいて、薬物と同じ表面電荷を持つ高分子電解質の選択は、分散媒中の遊
離薬物濃度を更に低下させるために役立つことができる。これは、ドナン膜作用により生
じ、ここで薬物イオンの移動は、同様に帯電された高分子電解質との反発力により阻害さ
れる(M. R. Franklinらの論文、「レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Scien
ce and Practice of Pharmacy)」(A.R. Gennaro編集, 2000年)57の1118の「薬物吸収、作
用及び配置(Drug Absorption, Action, and Disposition)」参照)。高分子電解質は高い
分子量を有するという事実は、これが薬物-負荷されたビーズ上の拡散制御膜を通り拡散
することができないことを意味する。結果的に膜を超える一定の活性を維持するために、
拡散性薬物は、ビーズへと押される。従ってこの膜は、浸されている電解質の流入及び薬
物の流出の両方を制御する。この機構は、アルギン酸カルシウムマトリックス及び陽イオ
ン性電解質薬物を含有する分散相1に関して、図2に図示されている。経口投与後、分散媒
3は、ナトリウム、カリウム及びプロトンなどの高濃度の対-陽イオンを有する生体液と混
合される。これらの対-陽イオンは、拡散制御膜コーティング5を浸透し、アルギン酸カル
シウムに会合された電解質薬物と置き換わる。その後電解質薬物は、高濃度領域(分散相1
)から移動し、拡散制御膜コーティング5を超え、低薬物濃度領域(分散媒2)へ移動する。
従って液体投薬の、熱力学的安定した、分散媒中に低い遊離薬物濃度を有する薬物懸濁液
は、患者へ投与された場合に、持続した薬物放出を提供する。賢明に選択された場合、懸
濁剤の分散媒中の高分子電解質は、粘度の増加及び沈降の遅延という従来の目的にも役立
つ。
【0085】
液体型放出制御薬剤組成物において使用される高分子電解質の量は、非限定的に、例え
ばイオン交換マトリックス薬物複合体中の電解質薬物の量及び種類;イオン交換マトリッ
クスの種類;使用される場合は、多孔質拡散制御膜の種類;分散媒中で使用される液体の
種類;並びに、高分子電解質に対する電荷密度;などのいくつかの要因に応じ左右される
。ひとつの実施態様において、高分子電解質含量は、電解質薬物の1モル当量当たり、イ
オン電荷約0.1モル当量からイオン電荷約10モル当量の範囲である。本明細書において使
用される語句「イオン電荷1モル当量」は、電解質薬物と同じ電荷を有する塩部位の数を
いう。別の実施態様において、高分子電解質含量は、電解質薬物の1モル当量当たり、イ
オン電荷約0.5モル当量からイオン電荷約5モル当量の範囲である。別の実施態様において
、高分子電解質含量は、電解質薬物の1モル当量当たり、イオン電荷約1モル当量からイオ
ン電荷約3モル当量の範囲である。
【0086】
本発明の実施態様において有用な薬物、及びそれらの推奨される用途は、当該技術分野
において公知であり、「医師用卓上参考書Physician's Desk Reference)」(56版, 2002年
)のような文献において説明されている。当業者は、本発明により意図された剤形に特に
適している電解質薬物を容易に決定することができる。
【0087】
本発明において有用な電解質薬物は、例えば心臓血管薬、β-アゴニスト、呼吸器系薬
、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、アドレナリン作動薬、抗ムスカリン薬及び抗痙攣
薬、骨格筋弛緩薬、利尿薬、片頭痛治療薬、麻酔薬、鎮静薬及び催眠薬、抗てんかん薬、
向精神薬、オピオイド系及び非-オピオイド系鎮痛薬を含む鎮痛薬、解熱薬、中枢神経刺
激薬、抗新生物薬及び免疫抑制薬、抗微生物薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗生物質、
充血除去薬、鎮咳薬、去痰薬などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明において有用な陽イオン-活性薬の非限定的例は、アセトフェナジン、アルブテ
ロール、アミトリプチリン、ベンズトロピン、ビペリデン、ビトレロール(bitolerol)、
ブロモジフェンヒドラミン、ブロムフェニラミン、ブプレノルフィン、カルビノキサミン
、クロルシクリジン、クロルフェニラミン、クロルフェノキサミン、クロルプロマジン、
クレマスチン、クロニジン、コデイン、シクロベンザプリン、シクリジン、シクロベンザ
プリン、シプロヘプタジン、デシプラミン、デキスブロンフェニラミン、デキスクロルフ
ェニラミン、デキストロアンフェタミンジブカイン、デキストロメトルファン、ジサイク
ロミン、ジエチルプロピオン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、ジフェマニル、ジ
フェンヒドラミン、ドキセピン、ドキシラミン、エルゴタミン、フルフェナジン、ハロペ
リドール、ヒドロコドン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシジン、ヒヨスチアミン、イ
ミプラミン、イソプロテレノール、レボプロポキシフェン、リドカイン、マプロチリン、
メクリジン、メペンゾラート、メペリジン、メフェンテルミン、メソリダジン、メタプロ
テレノール、メサドン、メトジラジン、メトスコポラミン、メチセルギド、メトプロロー
ル、モルヒネ、ナロルフィン、ノルトリプチリン、ノスカピン、ノルトリプチレンピリラ
ミン、ニリンドリン(nylindrin)、オルフェナドリン、パパベリン、ペンタゾシン、フェ
ンジメトラジン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、フェンメトラジン、フ
ェネルジン、ピブテロール、プロカイン、プロクロペラジン、プロマジン、プロポキシフ
ェン、プロパノロール、プロトリプチリン、シュードエフェドリン、ピリドスチグミン、
ピリラミン、キニジン、サルメテロール、スコポラミン、テルブタリン、テトラカイン、
トラニルシプロミン、トリヘキシフェニジル、トリメプラジン、トリペレナミン、トリプ
ロリジン及びベラパミルの医薬として許容し得る塩を含む。好ましい実施態様において、
陽イオン活性薬は、コデイン及びモルヒネからなる群より選択される鎮痛薬である。好ま
しい実施態様において、陽イオン活性薬は、コデイン又はモルヒネのような鎮痛薬である

【0089】
本発明において有用な陰イオン活性薬の非限定的例は、アセチルサリチル酸、クロモリ
ン、ジクロフェナク、ジクロフェナク、ジフルニサル、エタクリン酸、フェノプロフェン
、フェンタニル、フルルビプロフェン、フロセミド、ゲンフィブロジル、イブプロフェン
、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ペントバルビタ
ール、フェニトイン、サリチルアミド、サリチル酸、セコバルビタール、スリンダク、チ
オペンタール、テオフィリン及びバロプロ酸の医薬として許容し得る塩を含む。
【0090】
ある実施態様において、有用な薬物は、イオン交換マトリックスとの会合又は反応時に
イオンを形成する、前述の電解質薬物の中性型も含む。
様々な実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は、薬物をイオン型に転
換するのに十分な量のイオン交換マトリックスを含む。任意に、イオン交換マトリックス
薬物複合体は、薬物のイオン型への転換に十分であるよりも多い量のイオン交換マトリッ
クスを含む。
同じく本発明の液体型放出制御組成物の分散相内の2種以上の電解質薬物の使用も、意
図されている。
更に、分散媒中の1種以上の非電解質薬物の使用も意図されている。
【0091】
(5.3 液体剤形の製造法)
本発明は、本発明により意図された液体徐放性薬物製剤の製造法にも関連している。
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)イオン交換樹脂マトリックスを提供する工程;
(b)薬物を前記イオン交換マトリックスと会合させ、イオン交換マトリックス薬物複合
体を形成することを可能にさせる工程;
(c)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を乾燥する工程;及び
(d)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を分散媒と一緒にする工程;
を含む、液体徐放性薬物製剤の製造法に関連している。
【0092】
ひとつの実施態様において、工程(d)の分散媒は、拡散性対イオンを実質的に含まない

別の実施態様において、工程(d)の分散媒は、高分子電解質を更に含む。
別の実施態様において、工程(d)は、分散媒への、電解質薬物と同じ電荷を有する高分
子電解質の添加を更に含む。
別の実施態様において、工程(c)は更に、イオン交換マトリックス薬物複合体の多孔質
拡散制御膜によるコーティングを含む。
【0093】
前記工程(a)-(d)の各々は、最終製品の性質及び性能に影響を及ぼす。一部の状況にお
いて、薬物負荷工程は、コアビーズが作製された後で行われてよい。
ひとつの実施態様において、この方法は、水性ゲルの形成に関連している。
別の実施態様において、この方法は、工程(a)及び(b)における分散相の形成時の低分子
量の非電解質可溶性賦形剤の混和が関係している。
別の実施態様において、工程(d)の分散媒は更に、分散媒内の分散相の内側よりも分散
相の外側のより大きい水活性を確実にすることが可能である高度に水和された賦形剤の添
加を含む。
【0094】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)イオン交換樹脂マトリックスを提供する工程;
(b)薬物を水の存在下で前記イオン交換マトリックスと会合させ、イオン交換マトリッ
クス薬物複合体を形成することを可能にし、該イオン交換マトリックス薬物複合体は水性
ゲルである工程;
(c)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を乾燥する工程;及び
(d)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を分散媒と一緒にする工程;
を含む、液体徐放性薬物製剤の製造法に関する。
【0095】
ひとつの実施態様において、工程(d)の分散媒は、拡散性対イオンを実質的に含まない

別の実施態様において、工程(d)の分散媒は更に、高分子電解質を含有する。
別の実施態様において、工程(d)は更に、分散媒への、電解質薬物と同じ電荷を有する
高分子電解質の添加を含む。
別の実施態様において、工程(c)は更に、イオン交換マトリックス薬物複合体の多孔質
拡散制御膜によるコーティングを含む。
【0096】
前記工程(a)-(d)の各々は、最終製品の性質及び性能に影響を及ぼす。一部の状況にお
いて、薬物負荷工程は、コアビーズが作製された後で行われてよい。
別の実施態様において、この方法は、工程(a)及び(b)における分散相の形成時の低分子
量の非電解質可溶性賦形剤の混和に関する。
別の実施態様において、工程(d)の分散媒は更に、分散媒内の分散相の内側よりも分散
相の外側のより大きい水活性を確実にすることが可能である高度に水和された賦形剤の添
加を含む。
【0097】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)水溶性電解質薬物をイオン交換マトリックスと会合させ、イオン交換マトリックス
薬物複合体を形成することを可能にする工程;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、高分子電解質を含有する分散媒へ分散
する工程であって;
該イオン交換マトリックスの表面は、電解質薬物の電荷とは反対の電荷を有し;及び、
高分子電解質は、電解質薬物の電荷と同じ電荷を有する、前記工程;
を含む、液体型放出制御薬剤組成物の製造法に関する。
【0098】
別の実施態様において、本発明は:
(a)酸-官能性イオン交換マトリックスの酸型を、アミン-ベースの薬物の塩基型と会合
させ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にする工程;及び
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、高分子電解質を含有する分散媒へ分散
し;ここで
該高分子電解質は正電荷を有する工程;
を含む、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関する。
【0099】
別の実施態様において、本発明は:
(a)水の存在下で酸-官能性イオン交換マトリックスの酸型を、アミン-ベースの薬物の
塩基型と会合させ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にし、該イ
オン交換マトリックス薬物複合体が水性ゲルである、工程;
(b)水性ゲルを用いビーズを形成する工程;
(c)前記ビーズを膜でコーティングする工程;及び
(d)前記ビーズを分散媒に分散する工程;
を含む、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関する。
【0100】
ある実施態様において、前記方法の工程(a)は更に、膜を通り拡散するのに十分な低い
分子量を有する非電解質可溶性成分の添加を含む。好ましくはこの成分は乳糖である。
ある実施態様において、工程(d)の分散媒は更に、分散媒中のビーズの外側の水活性が
、ビーズの内側の水活性よりも低いように、水と会合することが可能である高度に水和さ
れた賦形剤の添加を含む。
【0101】
水性ゲルのようなイオン交換マトリックス薬物複合体の調製の利点は、そのスペクテー
ターイオンはこの複合体には存在しないことである。水性ゲルベースの製剤は、わずか1
種の賦形剤及び水を含有することができる。水性ゲルから形成された結果的生成物は、非
常に親水性であり、優れた含量均一性を有する。更に、電気的中立の制約は、利用可能な
分子が薬物と交換され、ビーズの外に拡散するように薬物を遊離するまで、薬物がイオン
交換マトリックスにより捕獲されていることを可能にする。
好ましい実施態様において、工程(d)の分散媒は、シロップNFである。
【0102】
別の実施態様において、本発明は:
(a)水の存在下でアミン-官能性イオン交換マトリックスの塩基型を、酸-ベースの薬物
の酸型と会合させ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にし、該イ
オン交換マトリックス薬物複合体が水性ゲルである、工程;
(b)水性ゲルを用いビーズを形成する工程;
(c)前記ビーズを膜でコーティングする工程;及び
(d)前記ビーズを分散媒に分散する工程;
を含む、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関する。
【0103】
ある実施態様において、前記方法の工程(a)は更に、膜を通り拡散するのに十分な低分
子量を有する非電解質可溶性成分の添加を含む。この成分は乳糖であることが好ましい。
ある実施態様において、工程(d)の分散媒は更に、分散媒中のビーズの外側の水活性が
、ビーズの内側の水活性よりも低いように、水と会合することが可能である高度に水和さ
れた賦形剤の添加を含む。
【0104】
好ましい実施態様において、工程(d)の分散媒は、シロップNFである。
薬物のイオン型がイオン交換マトリックス薬物複合体の調製に使用される場合に、該薬
物は、1種以上の対イオンと会合されることは理解されるであろう。例証的対-陽イオンは
、ナトリウム、カリウム、及びリチウム;カルシウム、マグネシウム;アルミニウム及び
亜鉛又は他の同様の金属;アンモニア及び有機アミン、例えば非置換の又はヒドロキシ置
換のモノ-、ジ-又はトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;
ピリジン;N-メチル-N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス
-又はトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、例えばモノ-、ビス-又はトリス-(2-
ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン又はトリス-(ヒドロキシメ
チル)メチルアミン、N,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、例えば
N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン又はトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-
メチル-D-グルカミン;及び、アミノ酸、例えばアルギニン、リジン;などを含むが、こ
れらに限定されるものではない。例証的対-陰イオンは、硫酸イオン、クエン酸イオン、
酢酸イオン、シュウ酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオ
ン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、酸性リン酸イオン、イソニコチン酸イオン、乳酸イ
オン、サリチル酸イオン、酸性クエン酸イオン、酒石酸イオン、オレイン酸イオン、タン
ニン酸イオン、パントテン酸イオン、酒石酸水素イオン、アスコルビン酸イオン、コハク
酸イオン、マレイン酸イオン、ゲンチシン酸イオン、フマル酸イオン、グルコン酸イオン
、グルクロン酸イオン、サッカラートイオン、ギ酸イオン、安息香酸イオン、グルタミン
酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオ
ン、p-トルエンスルホン酸イオン及びパモ酸イオン(すなわち1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒ
ドロキシ-3-ナフトエート))を含むが、これらに限定されるものではない。
薬物のイオン型に会合された対イオンは、拡散性の対イオンと同じ又は異なって良い。
【0105】
別の実施態様において、本発明は:
(a)アミン-官能性イオン交換マトリックスの塩基型を、酸-ベースの薬物の酸型と会合
させ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にする工程;
(b)前記イオン交換マトリックス薬物複合体を、高分子電解質を含有する分散媒に分散
し;ここで、
該高分子電解質は負の電荷を有する工程;
を含む、液体型放出制御薬剤組成物の調製法に関する。
【0106】
有用なイオン交換マトリックスのマトリックスの非限定的例は、先の5.2項に説明され
たものを含む。別の実施態様において、イオン交換マトリックスは、造粒、押出及び/又
は球形化を含むが、これらに限定されるものではない標準の形成法を用い、ビーズに形成
される。
【0107】
ある実施態様において、イオン交換マトリックスは、水和された液体コロイドの沈殿凝
固を含むが、これらに限定されるものではない方法により形成された親水コロイドである
。別の実施態様において、イオン交換マトリックスは、架橋された親水コロイドである。
例えば、カルシウム架橋されたアルギン酸塩は、図6に示すような、アルギン酸ナトリウ
ム液滴様の1又は2%分散系を、2又は4%塩化カルシウム溶液に添加することにより形成す
ることができる。乾燥後、カルシウム架橋されたアルギン酸塩は、多孔質拡散制御膜でコ
ーティングすることができる。得られるアルギン酸カルシウム薬物複合体の構造を図3に
示す。アルギン酸主鎖6は、-OC(O)-アルギン酸ペンダント基8を介してCa2+陽イオン7によ
り架橋される。アルギン酸塩6に対するCa2+陽イオン7の架橋能力のために、固形マトリッ
クスが形成され、これはビーズへ配合することができる。これらのビーズは、濾過により
「収集」され、蒸留水で洗浄され、過剰な塩化カルシウムを除去する。得られるビーズは
、架橋による構造、及び拡散二重層10中に存在するナトリウム対イオンにより中和される
架橋に関連していない負のカルボキシル基9を有する。
【0108】
ある実施態様において、電解質薬物が負荷される前に、イオン交換マトリックスは、好
適な交換可能なイオンが、イオン交換マトリックスの表面に存在するように、最初に活性
化される。陽イオン交換マトリックスに関して、この活性化工程は典型的には、例えば水
性NaOHのような、希水性塩基による処理が関与する。陰イオン交換マトリックスに関して
、この活性化工程は、例えば水性HClのような、希酸による処理が関与する。
【0109】
ある実施態様において、イオン交換マトリックスは、水の存在下で、イオン交換マトリ
ックスの電荷と反対の電荷を有する薬物と相互作用し、自然発生的及び可逆的にスペクテ
ーターイオンを実質的に含まない水性ゲルを形成することができる。典型的には、得られ
るゲルを微晶質セルロース及び他の賦形剤に添加して低剪断遊星型ミキサーに入れ、得ら
れる湿潤塊は、当該技術分野に公知の方法を使用して押出し、球形化し、及び乾燥させる

【0110】
薬物負荷は、例えば、水性分散系又は十分に極性のある非水性分散系中の電解質薬物と
のイオン置換;酸-官能性イオン交換マトリックスを、アミン-ベース薬物の塩基型と会合
させ、イオン交換マトリックス薬物複合体を形成することができること;並びに、遊離-
塩基-官能性イオン交換マトリックスを、薬物の酸型と会合させ、イオン交換マトリック
ス薬物複合体を形成することを可能にさせること;というような、当該技術分野において
公知の方法により実現することができる。
【0111】
例証のために、前述のカルシウム架橋したアルギン酸塩ビーズを、塩酸プロプラノロー
ルのような薬物の濃縮された溶液と接触させることができる。濃度勾配のために、プロト
ン化されたプロプラノロール陽イオンはビーズへ拡散して、及びナトリウム対イオンと置
き換わる。慣習的実験により、当業者は、親和性の特異的結合試験及びイオン交換マトリ
ックスの能力を介して測定することができ、それにより薬物負荷工程を制御することがで
きる。負荷後、カルシウム架橋されたアルギン酸塩ビーズを、濾過により収集して、蒸留
水で洗浄し、未結合の塩酸プロプラノロール及び塩化ナトリウムを除去する。
【0112】
同じく例証のために、前述のアルギン酸を、水の存在下で、アルブテロールのような薬
物の塩基型と組合せることができる。これらの成分は、不均質な水性ゲルを自然発生的及
び可逆的に形成するであろう。当業者は、スペクテーターイオンを実質的に含まない水性
ゲルの形成が可能であるイオン交換マトリックス及び薬物の特徴を容易に決定することが
できる。得られるゲルは、造粒及び/又は球形化及び/又は押出し、得られるビーズを乾燥
させ、及び任意にコーティングすることができる。特定の実施態様において、乳糖などの
賦形剤は、ビーズへ混和される。
【0113】
イオン交換マトリックスを電解質薬物と接触又は負荷させる方法は、例えば電解質薬物
及びイオン交換マトリックスの液相のバルク混合;イオン交換物質の薬物-含有液のカラ
ムを通る落下を可能にすること;並びに、イオン交換マトリックス床を通る電解質薬物の
液相の循環;を含む。液相中の薬物濃度の変化は、薬物負荷の進行を量的にモニタリング
するために使用することができる。
【0114】
前述のように、本発明は、酸-官能性イオン交換マトリックスをアミン-ベースの薬物の
遊離-塩基型と、又は遊離-塩基-官能性イオン交換マトリックスを薬物の酸型と接触又は
負荷させる方法に関する。薬物の非イオン性型を含むイオン交換マトリックス薬物複合体
を調製することの利点は、非-水性溶媒は、例えばメタノール、エタノール、プロパノー
ル、塩化メチレン、グリコールなどを使用することができることであるが、但し該溶媒は
、イオン交換マトリックス及び任意の多孔質拡散制御膜と有害に相互作用しないことを条
件とする。
【0115】
一旦接触工程が完了したならば、溶液相は任意に、追加の薬物が補充され、再度別の接
触工程で使用することができる。別の実施態様において、液相に存在する対イオンは、こ
の液相を、例えばサイズ排除クロマトグラフィー又はサイズ排除濾過において使用される
もののようなサイズ選択樹脂と接触させることにより、除去される。その後精製された液
相は、先に説明したように再使用することができる。
【0116】
前述のように、イオン交換マトリックス薬物複合体は、乾燥され、任意に拡散制御膜で
コーティングされる。乾燥は、当該技術分野において公知の従来の乾燥装置において行う
ことができる。流動床システムは、ビーズが同じユニット内で乾燥及びコーティングされ
るので、特に適している。
任意の拡散制御膜は、電解質薬物の分散相からの放出を制御するのに十分な量で、イオ
ン交換マトリックス薬物複合体へ適用される。
【0117】
固形剤形のコーティング法は、当該技術分野において公知である(S. C. Porter, 「レ
ミントン:調剤の科学と実践」57の894-902の「医薬剤形コーティング(Coating of Pharm
aceutical Dosage Forms)」参照(A.R. Gennaro編集, 2000年, その内容全体は本明細書に
引用により組み込まれている)。本発明において有用なコーティング法は、上噴、下噴及
び斜噴を含む流動床技術;並びに、パンコーティングを使用する方法を含む。
【0118】
ひとつの実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は、拡散制御膜を備え
るスプレーにより、噴霧コーティングされる。別の実施態様において、イオン交換マトリ
ックス薬物複合体は、拡散制御膜及び溶媒を備えるスプレーで、噴霧コーティングされる
。拡散制御膜を噴霧するために有用な溶媒の非限定的例は、水;有機溶媒、例えばメタノ
ール、エタノール、プロパノール及びジクロロメタンなど;並びにそれらの組合せを含む
。コーティングは、溶液又は懸濁液として適用されてよい。
【0119】
別の実施態様において、本発明は、先に説明されたようなイオン交換マトリックス薬物
複合体;任意に拡散制御膜;及び、高分子電解質を含有する、液体型放出制御薬剤組成物
の固相に関する。そのような固形物は、例えば液体型放出制御薬剤組成物の分散媒の液体
成分を、減圧下で蒸発させることにより調製することができる。
【0120】
液体型放出制御薬剤組成物の固相は、使用前に医薬として許容し得る液体中に分散する
ことができる。医薬として許容し得る液体の非限定例は、脱イオン水;本発明の意図され
た働きと干渉しない非-水性液体、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビト
ール液など;並びに、それらの任意の混合物を含む。ある好ましい実施態様において、こ
の液体は更に、ショ糖のような高度に水和された賦形剤を含有する。そのようなものとし
て、好ましい実施態様において、液体はシロップNFである。
【0121】
本発明は、噴霧コーティング又は流動床技術を使用し、イオン交換マトリックス薬物複
合体を形成する方法にも関する。ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)種を提供する工程;
(b)陽イオン-形成する電解質薬物を種の上に付着させ、電解質薬物層を形成することを
可能にする工程;
(c)塩基を電解質薬物層上に付着させ、塩基層を形成することを可能にする工程;
(d)アルギン酸を塩基層上に付着させ、アルギン酸層を形成することを可能にする工程
;及び
(e)多孔質-拡散制御膜を、アルギン酸層上に付着させ、多層アルギン酸カルシウム薬物
前駆体を形成することを可能にする工程;
を含む、多層アルギン酸カルシウム薬物前駆体を形成する方法に関する。
【0122】
前述の実施態様を図7に示している。
別の実施態様において、工程(e)の方法は更に、アルギン酸カルシウム薬物前駆体を、
拡散性対イオンを実質的に含まない水と混合し、アルギン酸カルシウム薬物複合体を形成
する工程を含む。
別の実施態様において、工程(e)の方法は更に、アルギン酸カルシウム薬物複合体を、
医薬として許容し得る液体に分散し、医薬として有効な濃度のアルギン酸カルシウム薬物
複合体を含有する分散系を提供する工程を含む。ひとつの実施態様において、分散液は、
正帯電した高分子電解質を含有する。
【0123】
別の実施態様において、工程(e)の方法は更に、アルギン酸カルシウム薬物複合体の医
薬として許容し得る液体への分散;及び、正帯電した高分子電解質の分散液への添加を含
む。
ひとつの実施態様において、種は糖である。
【0124】
理論により限定されるものではないが、先の実施態様において、本出願人らは、多層ア
ルギン酸カルシウム薬物前駆体は、以下のプロセスにより、アルギン酸カルシウム薬物複
合体を形成すると考える。典型的には乾燥ビーズである多層アルギン酸カルシウム薬物前
駆体は、水性環境に含浸される。水がビーズへ拡散し、拡散制御膜層によりある程度制御
される。水は拡散制御膜を浸透するにつれて、アルギン酸は水和する。アルギン酸が水和
し続けるにつれて、水は、水酸化カルシウム層へ到達し、この「湿潤された」相のpHは上
昇し、カルシウムイオンはアルギン酸層へ拡散し始め、カルシウム架橋が発生し始める。
得られるアルギン酸カルシウム-ゲルは、塩基と反応及び架橋し続け、水は水溶性陽イオ
ン薬物に到達する。この陽イオン薬物は、水中に溶解し、アルギン酸層へ拡散し、アルギ
ン酸カルシウムマトリックス内に捕獲される。
先に説明した実施態様の利点は、全ての電解質薬物が、アルギン酸カルシウム薬物前駆
体に固定され続けることである。
【0125】
液体型放出制御薬剤組成物中のイオン交換マトリックス樹脂薬物複合体の濃度は、例え
ば特定の薬物、イオン交換マトリックス樹脂薬物複合体中の薬物の含量;治療される状態
又は症状;並びに、患者の年齢などに応じ、広範に変動することができる。ひとつの実施
態様において、液体型放出制御薬剤組成物中のイオン交換マトリックス樹脂薬物複合体の
濃度は、液体型放出制御薬剤組成物の総質量を基に約5%〜約90質量%であり;別の実施
態様において、イオン交換マトリックス樹脂薬物複合体の質量は、液体型放出制御薬剤組
成物の総質量を基に約10%〜約50%の範囲であり;並びに、別の実施態様において、イオ
ン交換マトリックス樹脂薬物複合体の質量は、液体型放出制御薬剤組成物の総質量を基に
約20%〜約40%の範囲である。
【0126】
(5.4 液体剤形の投与法)
それらの有用性を限定するものではないが、本発明の液体徐放性剤形は、それを必要と
する患者への経口投与に有用である。
高度に水溶性の電解質薬物の1日1回又は1日2回の投与に適した徐放性液体剤形を提供す
ることは、本発明の別の目的である。特に本発明は、約24時間、最大48時間の期間にわた
る薬物の放出が可能である、徐放性液体剤形を提供することを包含している。
【0127】
ひとつの実施態様において、本発明は、それを必要とする患者へ液体型放出制御薬剤組
成物を投与することを含む、疾患、障害、状態又は症状の治療法に関連しており、該薬剤
組成物は:
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックス及び該イオン交換マトリックス上に
吸着された水溶性電解質薬物を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、該イ
オン交換マトリックスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷とは反対である、分散相;並
びに
(b)電解質薬物と同じ電荷を有する高分子電解質を含む分散媒;
を含有する。
【0128】
本発明は、液体型放出制御薬剤組成物を、それを必要とする患者へ投与することを含む
、疾患、状態又は症状を治療する方法に関連しており、該薬剤組成物は:
(a)医薬として許容し得るイオン(in)-交換マトリックス及び電解質薬物、及び可溶性非
電解質成分を含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、該イオン交換マトリッ
クスの表面電荷が該電解質薬物の表面電荷とは反対である、分散相;
(b)拡散制御膜;並びに
(c)高度に水和された賦形剤を含有する分散媒:を含む。
【0129】
好ましい実施態様において、イオン交換マトリックス薬物複合体は、アルギン酸、アル
ブテロール及び乳糖を含有し;拡散制御膜はEUGRAGIT(登録商標)であり;並びに、分散媒
はシロップNFである。
【0130】
固形経口剤形に対し;液体製剤は、用量の柔軟性及び嚥下の容易さという際だった利点
を有する。それに加えて、液体の単独容量で、通常はいくつかの錠剤又はカプセル剤を必
要とするような、比較的大量の分散された固形物を投与することが可能である。
本発明の剤形は、長期投与が必要な患者(例えば嚥下障害の患者又はモルヒネを投与さ
れている癌患者など)の治療に有用である。
ある実施態様において、液体型放出制御薬剤組成物は、それを必要とする患者への投与
前に、振盪される。
【0131】
別の実施態様において、液体型放出制御薬剤組成物は更に、脱イオン水、薬剤組成物の
意図された働きと干渉しない医薬として許容し得る液体、又はそれらの任意の組合せの添
加により、希釈される。
別の実施態様において、本発明は、先に説明した実施態様のいずれかにおいて説明され
たようなイオン交換マトリックス薬物複合体を含有し、任意に拡散制御膜を有する液体型
放出制御薬剤組成物の固相;並びに、分散媒、任意に更に高分子電解質又は高度に水和さ
れた賦形剤を含む、キットに関連している。
【0132】
ひとつの実施態様において、本発明は:
(a)液体型放出制御薬剤組成物の固相を提供すること;
(b)前記固相を、医薬として許容し得る液体に分散し、医薬として有効な濃度の固相を
含有する分散系を形成すること;及び
(c)前記分散系を、それを必要とする患者へ投与すること:を含む、液体型放出制御薬
剤組成物を、それを必要とする患者へ投与することを含む、状態又は症状を治療する方法
に関連している。
【0133】
特定の理論に結びつけられるものではないが、この放出制御組成物は、患者へ投与され
、及び懸濁剤が比較的高濃度の水及び薬物と同じ電荷を有する小型イオンを伴う環境へ配
置された時に、薬物放出は誘発される。これらの内在性イオンは、イオン交換物質の表面
に対して対イオンであるが、これらは拡散二重層へ拡散してこれを浸し、その範囲及び厚
さを減少させる。ナトリウムもしくはカリウムなどの正電荷、又は塩素もしくはリン酸な
どの負電荷を有する内在性拡散性対イオンは、一般に薬物よりも高い電荷密度を有し、及
び薬物よりもより高濃度で存在する。この結果は、これらのイオンはその静電気捕獲から
の薬物を本質的含まず、凝集されたイオン交換マトリックス薬物複合体の外へこれを拡散
することを可能にする。
薬物放出は、水がコーティング又は膜を水和した場合の、水又は胃液の流入によっても
誘発され、これによりその多孔度が増し、水をビーズ内に入り、薬物の溶解を促進するこ
とが可能になる。
【0134】
状態、疾患、又は障害に関連した1種以上の症状の治療、予防、管理又は改善に有効で
ある本発明の組成物の量は、標準の臨床技術により決定することができる。例えば、1種
以上の症状の治療、予防、管理又は改善において有効である組成物の用量は、この組成物
の当業者に公知の動物モデルへの投与により決定することができる。加えて、インビトロ
アッセイを、至適用量範囲の確定を補助するために、任意に利用することができる。好ま
しい有効量の選択は、当業者に公知であるいくつかの要因の考察を基に、当業者により決
定することができる(例えば、臨床試験により)。そのような要因は、治療又は予防される
べき疾患、関連した症状、患者の体重、患者の免疫状態、及び投与された医薬組成物の正
確さを反映するために当業者に公知の他の要因を含む。この製剤において使用される正確
な投与量は、症状の重症度に応じて決まり、医師の判断及び各患者の状況に従い決定され
るべきである。有効量は、インビトロ又は動物モデル試験システムに由来した用量-反応
曲線から推定することができる。
【0135】
最も好ましい実施態様において、本発明の剤形は、8時間、12時間、好ましくは18時間
、最も好ましくは24時間、最大48時間の期間にわたり薬物の放出制御が可能である。その
ような実施態様において、患者は、1日1回投与されることのみが必要である。本発明は、
線形放出プロファイルを実現することが可能である剤形、好ましくは一定速度の放出を伴
う剤形、最も好ましくはゼロ次放出プロファイルを有する剤形を包含している。
【0136】
下記実施例は、本発明の理解を補助するために示しており、本明細書に説明されかつ請
求された本発明を特別に限定するものとして構成されるものではない。当業者の範囲内で
あり得る、現在公知の又は以後開発される全ての同等物の置き換えを含む、本発明のその
ような変更、並びに製剤の変更もしくは実験デザインの小さい変更は、本発明の範囲内で
ある。
【実施例】
【0137】
(6. 実施例)
(6.1 実施例1)
実施例1は、アルギン酸カルシウム塩酸プロプラノロールイオン交換マトリックス薬物
複合体の製造法を説明している。
脱イオン水中のアルギン酸ナトリウム2%分散系を調製し、その500mLを、図6に示すよ
うな、約1mL/分の速度で21ゲージ針を通りポンプ送出される流量ポンプにより、25℃の脱
イオン蒸留水中の2%塩化カルシウムを含有する攪拌溶液1000mLへ添加した。得られた混
合物を、更に約1時間約25℃で攪拌した。この混合物を濾過し、ビーズを蒸留水1750mL容
量で3回洗浄し、過剰な塩化カルシウムを除去した。得られたビーズは架橋による構造を
有し、架橋に関与しない負のカルボキシル基を、拡散二重層中に存在するナトリウム及び
/又はカルシウム対イオンにより中和した。
【0138】
このようにして得た乾燥したビーズを、2.5%w/v塩酸プロプラノロール溶液2000mLに浸
し、約25℃で3日間攪拌した。得られた薬物を負荷されたビーズを、濾過により収集し、
薬物濃度が無視できるようになるまで、容量1250mLの蒸留水で複数回洗浄した(例えば4回
の洗浄)。薬物を負荷された球体は、約25℃で風乾した。
【0139】
(6.2 実施例2)
実施例2は、例証的電解質薬物塩酸プロプラノロール、並びにアルギン酸ナトリウム、
キサンタンガム、及びゲランガムを含有する例証的イオン交換マトリックスが関与する平
衡結合試験の結果を説明している。
【0140】
本試験は、ふたつのコンパートメントのプレキシガラス透析セル(Hollenbeck laborato
ry社)及びふたつのセルコンパートメント間にセルロースメンブレン(分子量カットオフ値
6000ダルトン)Bel-Art Products(Pequannock, NJ)が配置されたもので行った。アルギン
酸ナトリウム試験のために、ひとつのコンパートメント(「薬物コンパートメント」)に、
脱イオン水中の塩酸プロプラノロール0/97×10-2モル溶液15mLを充填し、他方のコンパー
トメント(「ポリマーコンパートメント」)には、脱イオン蒸留水中のアルギン酸ナトリウ
ム0.0877%w/v溶液15mLを充填した。透析セルを、平衡に到達するまで(30時間)、25℃の
恒温水浴中で80RPMで振盪した。この溶液を薬物コンパートメントから取出し、遊離薬物
及びポリマー-結合した薬物の濃度を高速液体クロマトグラフィー("HPLC")により測定し
た。
【0141】
アルギン酸ナトリウムを使用する塩酸プロパノロールの結合試験の結果は、表1に示し
た。
【表1】

【0142】
塩酸プロプラノロールのアルギン酸ナトリウムとの結合等温線は、r対Dfのプロットと
して図4に示し、ここでrは、ポリマー1g当たりの結合した薬物のモル数であり、及びDf
、このシステム中の遊離薬物のモル濃度である。図4は、陽イオン交換マトリックスガム
及びゲランガムに関するデータも含む。得られたラングミュア型薬物-ポリマー相互作用
等温線は、結合の程度が3種全ての陽イオン交換マトリックスに関する遊離薬物濃度と共
に増大し、かつこの結合能が制限されていることを示している。
【0143】
図5は、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム又はゲランガムとの塩酸プロプラノロ
ールに関するr/(Df)の結合データのスキャッチャードプロットを示している。ただ1種の
結合部位を有する複合体生成又は位置特異的結合試験において、スキャッチャードプロッ
トは、勾配が会合定数(K)でありかつ横座標との切片が結合能(a)と等しい1本の直線であ
る。図5は、該プロットが試験した濃度範囲では1本の直線ではないことを示している。こ
れらのプロットの屈折は通常、競合的相互作用、1種よりも多い結合部位の存在、又はそ
れらの両方を示すと見なされる。しかしこの場合、非線形は、会合が拡散二重層において
非特異的中和であることを考えると、驚くべきことではない。
【0144】
特にアルギン酸ナトリウムに関して、このデータは、ふたつの異なる「結合部位」でモ
デル化する(例えば2本の直線)ことができることは明らかである。各スキャッチャードプ
ロットの最初の部分の勾配及び切片は、線形回帰により決定した。残差法を用い、高い薬
物濃度範囲における第二の親和定数(K2)及び結合能(n2)を決定した。次にこのモデルを使
用すると、総薬物結合能(nT)は、n1及びn2の和と等しかった。このモデルは、DDLの幹(St
em)層及びGuoy-Chapman層と称されるより拡散性の領域中の残余における結合薬物の一部
の位置と一致するであろう(これらの層は、「レミントン:調剤の科学と実践」20版, Alf
onso Gennaro, Lippincott Williams & Wilkinsの文献(2000))の21章300頁の「コロイド
状分散」;「物理薬剤学(Physical Pharmacy)」4版, Alfred Martin, Lea & Febiger の
文献(1993)の15章405頁「コロイド(Colloids)」に説明される)。これらのパラメータ概算
は、表2に提示した。
【0145】
【表2】

【0146】
表2の結果は、低い塩酸プロプラノロール濃度範囲で、第1の親和定数(K1)が異なるイオ
ン交換マトリックスに関して類似していることを示している。この結果は、アルギン酸ナ
トリウムが試験した3種のイオン交換マトリックスの高及び低の両方の塩酸プロプラノロ
ール濃度範囲で、最高の総結合能を有することも示している。
【0147】
結合試験の結果は、薬物及びイオン交換マトリックスであるポリマーの静電気会合を明
らかにし、従ってイオン交換マトリックス薬物複合体を含有する剤形の実現可能性を明ら
かにしている。結合試験の結果は、イオン交換マトリックス薬物複合体の製剤に関するい
くつかの基本情報も提供する。例えば、塩酸プロプラノロール(MW=295.84)60mg(2.02×1
0-4モル)投与量を含有する溶液が10%遊離薬物濃度の任意に選択された制限に合致するた
めには、薬物の少なくとも1.82×10-4モルと会合するのに十分な能力を有するイオン交換
マトリックスを必要とするであろう。アルギン酸ナトリウムに関して、最大結合能は、1.
48ミリモル/gであり(表2)、そのためアルギン酸ナトリウム約123mgの量は、最大結合条件
下で薬物のこの投与量を収容するのに十分であると考えられる。これは、最大15mLの投薬
容積は、問題がない(例えば、コロイド濃度0.82%w/v)という事実を考えると、妥当な量
であるように見える。
【0148】
(6.3 実施例3:イオン交換マトリックス薬物複合体のコーティング)
イオン交換マトリックス薬物複合体のコーティングは、5〜30g範囲の固形物を加工処理
するために有用である、図8に示された流動床コーターを用いて行った。典型的には、イ
オン交換マトリックス薬物複合体約8gを、流動床コーターに充填した。投入口温度は約40
℃に設定し、床温度は約30℃に設定した。Eudragit(登録商標)RS 30 D (8.34g)及びクエ
ン酸トリエチル(1.67)を含有する水性分散体を調製し、該分散体を、噴霧速度0.97ml/分
及び噴霧空気圧力約30psigで適用した。適用が完了した後、コーティングされた粒子を、
流動床コーター内の気流下で乾燥させた。乾燥したコーティングされた粒子は典型的には
、適用されたコーティング及びイオン交換マトリックス薬物複合体の総質量を基にコーテ
ィング約20〜30質量%を含んだ。
【0149】
(6.4 実施例4:インビトロ試験)
実施例4は、分散相(例えばビーズ)中のコーティングの完全性及びイオン交換マトリッ
クスの完全性の両方が維持されることを示す、インビトロ実現可能性試験の結果を説明す
る。プロパノロールの塩型(塩酸プロパノロール)を、モデル活性成分として使用した。プ
ロパノロールは弱塩基性薬物であり、報告されたpKaは9.4である。プロプラノロールは、
pH7.4又はそれ未満でプロトン化され、正帯電する。
【0150】
インビトロ試験は、従来のUSP装置2を37℃で利用し、攪拌速度100RPMで行った。Eudrag
it(登録商標)RS 30 D及び塩酸プロプラノロール160mgと同等物でコーティングされたCa-
アルギン酸塩薬物を負荷された球体を、手で振盪することにより、高分子電解質及び懸濁
化剤の両方として有用な親水コロイドを含有する懸濁媒(15mL)中に分散させ、該懸濁液を
、模倣胃液(SGF(すなわち放出媒体)500mLへ直接添加した。2時間攪拌した後、十分量の三
塩基性リン酸ナトリウムを次に添加し、pHを7.5に変えた、すなわちこの媒体が残り10時
間は腸液を模倣するように効果的に変更した。
【0151】
異なる分散媒を含有する8種の懸濁液を調製し、先に説明されたように試験した。分散
媒中で使用した親水コロイド高分子電解質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース("HP
MC")(F1及びF2)、キサンタンガム(F3及びF4)、アルギン酸プロピレングリコール(F5)、キ
トサン(F6)及びゼラチン(F7)を含む。イオン含量、pH;分散媒粘度;及び、分散媒へ放出
された薬物の割合;測定し、結果を表3に提示した。イオン含量は、親水コロイド中に存
在する拡散性対陽イオンK+、Na+及びCa2+ の和であり;pHは、コアからの薬物放出の程度
を示した、すなわちより低い分散媒のpHは、より大きい薬物放出の程度となり;並びに、
粘度は、親水コロイドの懸濁化剤としての有効性の指標である。懸濁媒への薬物放出の程
度も、表3に示した。
【0152】
【表3】

【0153】
表3の結果は、分散媒中の拡散性対イオンの濃度がイオン交換マトリックス薬物複合体
からの薬物イオンの放出の程度に強力に影響と及ぼすことを示している。この結果は、懸
濁化剤などの添加剤がイオン性薬物の放出の程度を最小化するために、低含量の拡散性対
イオンを含有しなければならないことを示している。
【0154】
表3の結果は、強力な陰イオン性高分子電解質アルギン酸プロピレングリコール(F5)が
陽イオン性薬物塩酸プロパノロールの最高の放出の程度を有する懸濁液を提供したことも
示している。この結果は、イオン交換マトリックス薬物複合体中の薬物イオンの電荷とは
反対の電荷を有する高分子電解質懸濁化剤などの添加剤が、分散媒中の遊離薬物濃度レベ
ルに影響することも示している。
【0155】
(6.5 実施例5)
実施例5は、薬物アルブテロールが負荷されたコアアルギン酸ビーズの製造法を説明し
ている。アルギン酸ビーズの配合を、表4に示す。
【表4】

【0156】
等量のアルブテロール及びアルギン酸と共に、5%の目標薬物負荷を使用した。アルブ
テロール基剤(base)及びアルギン酸散剤を、ビーカーに入れ、水100mLを添加した。この
混合物を、磁気攪拌子及び攪拌機を用い攪拌した。追加の水50mLを添加して、ビーカーの
側面を洗い落とし、均質なゲルが形成されるまで攪拌を継続した。
【0157】
微晶質セルロース及び乳糖を低剪断ミキサーのボールに入れ、スパチュラを用い予備配
合を行った。その後低速で攪拌しながら、薬物-含有ゲルを添加した。ゲルの全量を添加
し、湿潤塊を形成した。得られた物質を、スクリーンサイズ1mmのラジアルスクリーン付
属部品を用いて押出した。その後押出物を、750rpmで約30秒間球形化し、次に45℃の対流
炉において一晩乾燥させた。
【0158】
(6.6 実施例6)
実施例6は、薬物アルブテロールが負荷されたメタクリル酸(カルボポール)コアビーズ
の製造法を説明している。
コアメタクリル酸(カルボポール)ビーズの配合を、表5に示す。
【表5】

【0159】
等量のアルブテロール及びアルギン酸であると共に、2.5%の目標薬物負荷を使用した
。カルボポール974Pを供給業者の情報を基に使用した。この等級は、架橋度がより大きく
かつ経口のためにデザインされている。
【0160】
微晶質セルロース及び乳糖を低剪断ミキサーのボールに入れ、スパチュラを用い予備配
合を行った。その後低速で攪拌しながら、薬物-含有ゲルを添加した。ゲルの全量に加え
水10mLを添加し、湿潤塊を形成した。得られた物質を、スクリーンサイズ1mmのラジアル
スクリーン付属部品を用いて押出した。その後押出物を、750rpmで約30秒間球形化し、次
に45℃の対流炉において一晩乾燥した。
【0161】
(6.7 実施例7)
実施例7は、例証的なコーティングされたアルギン酸ビーズが関与した試験の結果を説
明している。
これらのビーズを、可塑剤としてクエン酸トリエチルをコーティング固形物の10%のレ
ベルで含有するEudragit RS30Dにより、ミニ-流動床処理機においてコーティングした。
最終生成物は、コーティングレベル35%を目標とし、滑らかな艶のある表面を有する、均
等にコーティングされたビーズを生じた。
【0162】
物理安定性の大雑把な評価として、コーティングされたビーズ試料1gを、水10mLに入れ
た。典型的には水中に分散される場合、ビーズは水を吸収し、数時間以内に破裂し、ペー
スト様物質を生成する。分散媒はわずかに「濁る」が、これらのビーズは、それらの完全
性を4日間以上維持した。懸濁されたビーズ試料を、顕微鏡用スライド上に配置し、過剰
な水を吸収綿棒で取り除いた。検鏡下で、若干の水が依然揺動(pendular)状態で存在し、
毛管力でビーズを一緒に保持していた。しかしこれらのビーズは、明らかに無傷であり、
コーティングの輝く表面さえ依然明らかであった。アルギン酸ベースのビーズは、水中で
それらの球形の完全性を維持し、機能性コーティングも無傷のように見えた。
【0163】
同様にカルボポールビーズは、水に曝された場合、無傷を維持した。しかしその挙動は
わずかに異なった。75分間にわたる観察で、これらのビーズは、最終的には水中で膨潤し
、コーティングはその完全性を喪失した。しかし例えコーティングがその完全性を喪失し
たとしても、膨潤した各ビーズは依然、無傷であり続けるように見えた。撹拌後であって
も、各ビーズの不連続の特性は維持された。
【0164】
(6.8 実施例8)
実施例8は、コーティングされたビーズの物理安定性及び該ビーズからのアルブテロー
ルの放出制御を評価するために行った試験の結果を説明している。
以下のアッセイ測定は、アルブテロール錠に関するUSPの方法を基にした方法を用いて
、HPLCで行った。放出試験は、100RPMで作動するパドルを備えたUSP装置2を用いて行った
。最初にpH1.2の緩衝液750mLを各容器に入れた。1.5時間後、pH調節液250mLを添加して、
pHを6.8とし、容量を1000mLとした。自動試料採取機を、以下の時点で、試料約1mLを採取
するようにプログラムした:5、30、60、90分;4、8、12、16、20、24時間。5分の時点は
、「即時」放出されるアルブテロール量を判定するために含まれる。この早い時点は、懸
濁剤剤形の分散媒中の遊離薬物濃度、更には試料が乾燥ビーズである場合のコーティング
の有効性を決定する。
【0165】
各々35%Eudragit RS30Dでコーティングされた、表4及び5に示された2種の製品を、ア
ルブテロール放出について試験し、結果を図9に示した。製剤及び標的コーティング質量
を基に、試験した各試料は、アルブテロール32.5mgを含有した。
【0166】
両方の製品は、24時間を超える持続型の薬物放出を明らかにした。カルボポール-ベー
スの製剤は、ほぼ「ゼロ」時であるプロファイルを示し、この製品は、アルギン酸ベース
の製剤よりも、より遅く薬物を放出する。
シロップNF(すなわち65%w/wショ糖)中の懸濁剤を分析した場合、初期のクロマトグラ
ムにおいてアルブテロールピークは認められず、これは本質的に全ての薬物はビーズの内
側に留まることを示している。
【0167】
追加の試料を、液体10mL中にアルブテロール約50mgを含有する懸濁剤としての放出試験
のために調製した。アルギン酸ベースの製品に関して、ビーズ量1.5gを各システムに使用
し、一方でより低い効能のカルボポール-ベースのビーズ3.0g量を使用した。3種の溶媒を
使用した:水、シロップ剤、50:50混合液(「50%シロップ」)。これらの調製物を、試験
前に48時間静置した。
【0168】
この溶解結果を放出率(%)に変換し、効能は図9において24時間で放出された量を基に
概算した。次に各懸濁剤製品に関する結果を、図5に、乾燥ビーズについて得られた適当
な平均値に対しプロットした。カルボポール-ベースの製品の結果を図10に示す一方で、
アルギン酸塩ベースの製品の結果を図11に示した。
【0169】
これらふたつの製剤の挙動は、極めて類似している。各場合において、水中に懸濁され
たビーズは、アルブテロール放出に何らかの制御を提供しなかった。シロップ中に懸濁さ
れた同じビーズからの放出は、乾燥ビーズについて認められたものよりも遅いが、50%シ
ロップ中の懸濁剤は、乾燥ビーズを模倣するものに近かった。
【0170】
これらの結果を基に、シロップ溶媒のEudragitコーティングの透過性に対する作用は存
在する。理論により限定されるものではないが、これは恐らくシロップそれ自身の高浸透
圧及び濃ショ糖液における釣り合った低い水活性によるものであろう。
【0171】
(6.9 実施例9)
実施例9は、コーティングされたビーズの性能、物理安定性及びそこからのアルブテロ
ール放出制御に対する分散媒中の水活性の影響を評価するために行った試験の結果を記載
している。
乳糖-含有ビーズで製造された製品の性能に対する溶媒中の水の活性の影響を、アルギ
ン酸塩システムを用いて試験した。3種のシステムを溶媒として試験し、懸濁剤を調製し
、室温で7日間保管した。
【0172】
最初に水中50%w/wショ糖を試験した。安定性は、ショ糖-含有溶媒中で明らかにされて
おり、先の結果を基に、40〜50%ショ糖溶媒中に懸濁されたビーズからのアルブテロール
放出は、コーティングされたビーズ単独から認められたものとは劇的には異ならなかった
。試験したその他の2種のシステムは、メチルセルロース分散系であった。これらの製品
に関する結果を図8に示す。
【0173】
コーティングされたビーズのプロファイルと比べ、50%w/wショ糖溶媒の懸濁剤におい
て、放出は若干遅かった。この作用は一貫して認められ、理論により制限されることなく
、本出願人らは、高浸透圧溶媒中においては追加の硬化(curing)が生じると考えた。コー
ティング中の残留水は、高張性環境における赤血球収縮と同様に、濃縮されたショ糖溶液
へと拡散し得る。アルブテロールのアルギン酸塩ビーズ製剤を、乳糖濃度10、20、30及び
40%w/wで調製した。この乳糖のレベルは、放出速度及び安定性の両方に作用する可能性
がある。例えば図13において、アルブテロール放出は、30%乳糖の製品が、20%レベルの
製品と比較した場合に、より速い。
【0174】
図12及び13において該ビーズのために使用したコーティングシステムは、Eudragit RL
及びEudragit RSの二重組合せを基にしており;該RLシステムは、RSシステムよりもより
透過性である。これらの結果を基に、これらのポリマーの比を調節して、懸濁剤の内相の
特徴を操作することができることは明らかである。
【0175】
図14には、20%の全体コーティングレベルにて、様々な比のポリマーでコーティングさ
れたビーズの放出プロファイルを示す。
図15及び16には、水、並びに代表的緩衝液中での、様々な比のポリマーでコーティング
されたビーズの放出プロファイルを示す。
【0176】
これに類似している徐放性懸濁剤のデザインの最適化は、物理的安定性及び放出制御に
関して、ビーズ製剤中の乳糖レベル;機能性コーティングシステムにおける非透過性ポリ
マー(Eudragit RS)に対する透過性ポリマー(Eudragit RL)の比;可塑剤レベル;並びに、
溶媒中のショ糖濃度;の最小の考察が必要である。このような変量は、当業者には明らか
であろう。
【0177】
本発明は、本発明のいくつかの態様を例示として意図される、本実施例で開示された具
体的な実施態様の範囲に限定されず、機能的に同等であるあらゆる実施態様は、本発明の
範囲内である。実際、本明細書において示され説明されたものに加え、本発明の様々な修
飾が、当業者には明らかであり、添付された「特許請求の範囲」内に収まることが意図さ
れている。
多くの参考文献が引用されており、それらの内容全体は本明細書に引用により組み込ま
れている。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、液体型で、制御された薬物放出が、多孔質拡散制御膜5によりコーティングされているアルギン酸カルシウムマトリックス薬物複合体を含有する分散相1を含む、本発明のひとつの実施態様を示す。
【図2】図2は、多孔質拡散制御膜5によりコーティングされているアルギン酸カルシウムマトリックス薬物複合体を含有する分散相1から、電解質薬物を放出するプロセスを示す。
【図4】図4は、プロプラノロールのイオン交換マトリックスと、アルギン酸ナトリウム(◆)、キサンタンガム(■)及びゲランガム(●)との相互作用から得た、25℃でのラングミュア相互作用等温線を示す。
【図5】図5は、プロプラノロールのイオン交換マトリックスと、アルギン酸ナトリウム(◆)、キサンタンガム(■)及びゲランガム(●)との相互作用から得た、25℃でのスキャッチャードプロットを示す。
【0179】
【図6】図6は、CaCl2水溶液へのアルギン酸ナトリウム水性懸濁液の制御された添加により、ビーズの形状のアルギン酸カルシウムを調製する方法を示す。
【図7】図7は、水と接触した時にアルギン酸カルシウム薬物複合体を形成する、多層化されたアルギン酸カルシウム薬物前駆体を示す。
【図8】図8は、小型の流動床コーターの図を示す。
【図9】図9は、コーティングされたビーズからのアルブテロール放出プロファイルを示す。
【図10】図10は、様々なコーティングされたアルブテロール/アルギン酸塩/乳糖ビーズ懸濁剤における、アルブテロール放出プロファイルを示す。
【0180】
【図11】図11は、様々なコーティングされたアルブテロール/カルボポール/乳糖ビーズ懸濁剤における、アルブテロール放出プロファイルを示す。
【図12】図12は、徐放性懸濁剤からのアルブテロール放出における、分散媒成分の作用を示す。
【図13】図13は、徐放性懸濁剤からのアルブテロール放出における、ビーズ製剤中の乳糖レベルの作用を示す。
【図14】図14は、徐放性懸濁剤からのアルブテロール放出における、コーティングレベルの作用を示す。
【図15】図15は、水中に放出された懸濁剤における、様々なコーティングされたビーズからの、アルブテロールの放出プロファイルを示す。
【図16】図16は、典型的緩衝液システム中の放出と比較した、水中に放出された懸濁剤における、様々なコーティングされたビーズからの、アルブテロール放出の差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックス、及び前記イオン交換マトリックス
に会合された水溶性電解質薬物とを含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、
前記イオン交換マトリックスの表面電荷が、前記電解質薬物及び非電解質可溶性低分子量
賦形剤の表面電荷と反対である、分散相;並びに
(b)分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物。
【請求項2】
前記交換マトリックス薬物複合体が、拡散制御膜コーティングを更に含有する、請求項
1記載の組成物。
【請求項3】
前記拡散制御膜が、エチルセルロース、メチルメタクリレート、セルロースエステル、
セルロースジエステル、セルローストリエステル、セルロースエーテル、セルロースエス
テル-エーテル、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシ
レート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、
セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びそれらの
組合せからなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記拡散制御膜が、エチルセルロース、メチルメタクリレート、又はそれらの組合せで
ある、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記電解質薬物が、アルブテロールである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記イオン交換マトリックスが、アルギン酸である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記イオン交換マトリックスが、前記賦形剤として乳糖を含む、請求項1記載の組成物

【請求項8】
前記分散媒が、高濃度の高度に水和された賦形剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記高度に水和された賦形剤が、ショ糖である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記分散媒が、シロップNFを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記イオン交換マトリックス薬物複合体が、粒子又はビーズである、請求項1記載の組
成物。
【請求項12】
甘味剤、香味剤、着色剤、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される賦形剤
を更に含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
安定剤、分散剤、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される分散系添加剤を
更に含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
(a)医薬として許容し得るイオン交換マトリックスと前記イオン交換マトリックスに会
合された水溶性電解質薬物とを含有するイオン交換マトリックス薬物複合体を含み、前記
イオン交換マトリックスの表面電荷が、前記電解質薬物の表面電荷と反対である、分散相
;並びに
(b)高濃度の高度に水和された賦形剤を含む、分散媒;
を含有する、液体型放出制御薬剤組成物。
【請求項15】
前記交換マトリックス薬物複合体が、拡散制御膜コーティングを更に含有する、請求項
14記載の組成物。
【請求項16】
前記拡散制御膜が、エチルセルロース、メチルメタクリレート、セルロースエステル、
セルロースジエステル、セルローストリエステル、セルロースエーテル、セルロースエス
テル-エーテル、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシ
レート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、
セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びそれらの
組合せからなる群より選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記拡散制御膜が、エチルセルロース、メチルメタクリレート、又はそれらの組合せで
ある、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記電解質薬物が、アルブテロールである、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記イオン交換マトリックスが、アルギン酸である、請求項19記載の組成物。
【請求項20】
前記イオン交換マトリックスが、非電解質可溶性低分子量賦形剤を更に含有する、請求
項14記載の組成物。
【請求項21】
前記低分子量賦形剤が、乳糖である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記高度に水和された賦形剤が、ショ糖である、請求項14記載の組成物。
【請求項23】
前記イオン交換マトリックス薬物複合体が、粒子又はビーズである、請求項14記載の組
成物。
【請求項24】
甘味剤、香味剤、着色剤、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される賦形剤
を更に含有する、請求項14記載の組成物。
【請求項25】
安定剤、分散剤、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される分散系添加剤を
更に含有する、請求項14記載の組成物。
【請求項26】
アルブテロール、アルギン酸、及び乳糖を含む拡散制御膜でコーティングされた親水性
ビーズを含有し、前記ビーズが質量/質量ベースで65%ショ糖である分散媒中に懸濁され
る、液体型放出制御薬剤組成物。
【請求項27】
(a)酸-官能性イオン交換マトリックスの酸型をアミン-ベースの薬物の塩基型と会合さ
せ、水性ゲルであるイオン交換マトリックス薬物複合体を形成することを可能にさせるこ
と;
(b)前記水性ゲルを用いビーズを形成させること;及び
(c)前記ビーズを高度に水和された賦形剤を含有する分散媒中に分散させること;
を含む、液体型放出制御薬剤組成物の製造法。
【請求項28】
前記水性ゲルが、非電解質可溶性低分子量賦形剤を更に含有する、請求項27記載の方法

【請求項29】
請求項1記載の液体型放出制御薬剤組成物を、それを必要とする患者へ投与することを
含む、状態又は症状の治療法。
【請求項30】
前記電解質薬物が、アルブテロールである、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記イオン交換マトリックスが、アルギン酸である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記低分子量賦形剤が、乳糖である、請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記高度に水和された賦形剤が、ショ糖である、請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−188443(P2012−188443A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128413(P2012−128413)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【分割の表示】特願2008−515675(P2008−515675)の分割
【原出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(507402392)ユーピーエム ファルマセウチカルス インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】